説明

補助電極付き細胞試験用基板

【課題】本発明は基板全体に均一な電圧を印加することが可能な細胞試験用基板を提供することを目的とする。
【解決手段】上記課題は、基材と、前記基材上に配置された電極とを備える細胞試験用基板であって、前記電極は、主電極と、前記主電極に導電可能に接続された補助電極とを含み、前記主電極上には、細胞接着性領域と、前記細胞接着性領域に隣接する細胞接着阻害性領域とが配置されていることを特徴とする前記細胞試験用基板によって解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助電極の付いた細胞試験用基板及び細胞試験用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、様々な動物や植物の細胞培養が行われており、また、新たな細胞の培養法が開発されている。細胞培養の技術は、細胞の生化学的現象や性質の解明、有用な物質の生産などの目的で利用されている。さらに、培養細胞を用いて、人工的に合成された薬剤の生理活性や毒性を調べる試みがなされている。
【0003】
一部の細胞(特に多くの動物細胞)は、何かに接着して生育する接着依存性を有しており、生体外の浮遊状態では長期間生存することができない。このような接着依存性を有した細胞の培養には、細胞が接着するための担体が必要であり、一般的には、コラーゲンやフィブロネクチンなどの細胞接着性タンパク質を均一に塗布したプラスチック製の培養皿が用いられている。これらの細胞接着性タンパク質は、培養細胞に作用し、細胞の接着を容易にし、細胞の形態に影響を与えることが知られている。
【0004】
生体内で接着した状態で生存している細胞の機能を評価するためには、細胞を接着させた状態で培養する必要がある。細胞間の相互作用を評価する場合も、接着した状態の細胞を共培養して相互作用を評価することが好ましい。しかし、担体上の特定の領域のみを細胞接着性をすることにより、その領域に細胞を接着させることはできても、2種以上の細胞をそれぞれ別の領域に接着させることは困難であった。したがって、特定の条件で細胞接着性を改変することができ、細胞ごとに接着させる領域と接着させない領域を制御できるような技術が求められていた。
【0005】
一方、細胞の遊走は免疫応答や受精後の胚形態形成、組織修復及び再生などの様々な段階に関与している。また、癌やアテローム動脈硬化症、関節炎などの疾患の進行においても極めて重要な役割を持つ。具体的には、血管内皮を通しての細胞の遊走は、炎症、アテローム性動脈硬化症、癌の転移といった状態の病態生理における重要な現象である。そのため、インビトロでの細胞遊走を測定する方法は、長年に渡って開発されてきた。
【0006】
細胞遊走アッセイに関してすでに市販されている装置としては、古典的なボイデンチャンバ、細胞培養インサート、FluoroBlock(登録商標)(BD Biosciences)、Cell Motility HitKit(登録商標)(Cellomics)がある。しかし、こうした装置では、接着した細胞の遊走方向を制御して、定量的に細胞遊走をアッセイすることは困難である。したがって、接着した細胞を特定の領域に制御して遊走させることにより細胞遊走を試験するための技術も求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−203128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは既に、細胞接着阻害性領域と前記細胞接着阻害性領域に隣接する細胞接着性領域とを有する細胞試験用基板に電圧を印加することにより、細胞接着阻害性領域を細胞接着性領域に改変できることを見出しており、この技術を応用した異なる細胞の共培養や、細胞遊走試験について特許出願済みである(特願2009−239588号、及び特願2009−239711号)。
【0009】
本発明者らによる上記特許出願に係る発明によれば、異なる細胞の共培養、細胞間の相互作用の評価、細胞遊走試験などを簡便に実施することが可能となる。しかしながら、細胞試験用基板のサイズを大きくすると、電圧印加端子からの距離に応じて電圧降下が生じてしまう。そのため、基板全体に均一な電圧を印加する点において未だ改良の余地が残されている。
【0010】
したがって、本発明は基板全体に均一な電圧を印加することが可能な細胞試験用基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが鋭意検討した結果、細胞試験用基板に補助電極を取り付けることにより、基板全体に均一な電圧を印加できることを見出した。なお、補助電極を使用する発明としては、例えば特許文献1に開示されているものが知られている。しかしながら、特許文献1は有機EL素子における電圧降下を問題としており、本発明とは技術分野が大きく異なる。また、本発明では細胞接着阻害性領域を均一に細胞接着性領域に改変させることを目的としているのに対して、特許文献1では輝度のムラを解消することを目的としており、その目的も大きく異なっている。
【0012】
具体的には、本発明は以下を包含する。
(1)基材と、
前記基材上に配置された電極と
を備える細胞試験用基板であって、
前記電極は、主電極と、前記主電極に導電可能に接続された補助電極とを含み、
前記主電極上には、細胞接着性領域と、前記細胞接着性領域に隣接する細胞接着阻害性領域とが配置されている
ことを特徴とする前記細胞試験用基板。
(2)補助電極の抵抗が主電極の抵抗よりも小さい、(1)に記載の細胞試験用基板。
【0013】
(3)主電極が透明電極である、(1)又は(2)に記載の細胞試験用基板。
(4)基材上に配置された対向電極を更に備え、前記対向電極が前記電極と電気的に絶縁されて配置されている、(1)〜(3)のいずれかに記載の細胞試験用基板。
(5)補助電極と対向電極とが同一の物質である、(4)に記載の細胞試験用基板。
【0014】
(6)(1)〜(3)のいずれかに記載の細胞試験用基板と、
前記細胞試験用基板上の1又は複数の部分領域を底面とし上方に開放された1又は複数の凹部の側壁を形成する側壁部材と
を備える細胞試験用容器であって、
前記凹部の底面を構成する部分領域は、主電極上に配置された細胞接着性領域と、前記細胞接着性領域に隣接する細胞接着阻害性領域とを含む前記細胞試験用容器。
(7)細胞試験用基板と側壁部材とが接触する位置に補助電極が配置されており、前記補助電極が接着材料を含み、前記細胞試験用基板と前記側壁部材とが前記補助電極を介して接合されている、(6)に記載の細胞試験用容器。
【0015】
(8)(4)又は(5)に記載の細胞試験用基板と、
前記細胞試験用基板上の1又は複数の部分領域を底面とし上方に開放された1又は複数の凹部の側壁を形成する側壁部材と
を備える細胞試験用容器であって、
前記凹部の底面を構成する部分領域は、主電極上に配置された細胞接着性領域と、前記細胞接着性領域に隣接する細胞接着阻害性領域と、対向電極と含む前記細胞試験用容器。
(9)補助電極が、凹部の底面を構成する部分領域の周縁の外に配置されている、(6)又は(8)に記載の細胞試験用容器。
(10)側壁部材が、厚さ方向に延びる複数の貫通孔が形成された板状体である、(6)〜(9)のいずれかに記載の細胞試験用容器。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基板全体に均一な電圧を印加することができ、それにより細胞接着阻害性領域を均一に細胞接着性領域に改変させることが可能な細胞試験用基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明者らが既に出願している細胞試験用基板を使用した細胞試験用容器を示す(特願2009−239588号、及び特願2009−239711号)。
【図2】補助電極を備えた細胞試験用容器を示す。
【図3】細胞試験用基板と側壁部材とを示す。
【図4a】複数の凹部が形成された細胞試験用容器を上方から見た図を示す。
【図4b】図4aの一部を拡大した図を示す。
【図4c】図4bの断面図を示す。
【図5】補助電極を介して側壁部材が配置された細胞試験用容器の断面図を示す。
【図6】補助電極が断続的に配置された細胞試験用基板を上方から見た図を示す。
【図7a】細胞試験用基板に対向電極を備えた細胞試験用容器を上方から見た図を示す。
【図7b】図7aの断面図を示す。
【図8】各凹部に異なる主電極、補助電極及び対向電極が配置されている細胞試験用容器を上方から見た図を示す。
【図9a】電圧を印加する前の細胞試験用容器の断面図を示す。
【図9b】電圧を印加して細胞接着阻害性領域を細胞接着性領域に改変した状態を示す。
【図9c】細胞接着性領域に改変された領域へ細胞が遊走した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明者らが既に出願している細胞試験用基板を使用した細胞試験用容器を示す。主電極11上の細胞接着性領域16と細胞接着阻害性領域17とを含むように側壁部材14が配置され、凹部15が形成される。対向電極13は細胞試験用容器10とは別個に設けられている。
【0019】
図2は、本発明の補助電極付き細胞試験用基板29を使用した細胞試験用容器20の一実施形態を示す。図2に示すように、細胞試験用基板29は、基材上に配置された主電極21と、主電極に導電可能に接続された補助電極22とを含み、主電極上には、細胞接着性領域26と、細胞接着性領域に隣接する細胞接着阻害性領域27とが配置されている。細胞試験用容器20は、細胞試験用基板29上の1又は複数の部分領域を底面とし上方に開放された1又は複数の凹部25の側壁を形成する側壁部材24を備えており、凹部25の底面を構成する部分領域が、主電極21上に配置された細胞接着性領域26と、細胞接着性領域に隣接する細胞接着阻害性領域27とを含んでいる。
【0020】
側壁部材24は、細胞試験用基板29と一体となって、細胞や細胞培養液などを収容することができる1又は複数の凹部25を細胞試験用基板上に作成することができる。凹部25が複数作成される場合には、凹部の底面を構成する部分領域のそれぞれに、主電極上に配置された細胞接着性領域26と、細胞接着性領域に隣接する細胞接着阻害性領域27とが含まれる。
【0021】
凹部は細胞や細胞培養液などを収容することができるものであればどのような形状であってもよい。そのため、側壁部材は、例えば、両端が開口した中空の多角柱(三角柱、四角柱、五角柱、六角柱など)や円柱の形状であってもよく、また、複数の凹部を形成する場合にはこれらが連結した形状であってもよい。厚さ方向に延びる複数の貫通孔が形成された板状体を側壁部材として使用することも可能である。この場合、貫通孔の形状は、細胞の培養や観察などが容易であればどのような形状であってもよい。基板表面と側壁とが成す角度が90度であることが好ましいが、90度未満であってもよく、また90度を超えていてもよい。
【0022】
厚さ方向に延びる複数の貫通孔が形成された板状体として、例えば、6ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、96ウェル、384ウェル、1536ウェルのマルチウェルプレートであって、各ウェルの底部が存在しないもの(つまり、底が抜けているマルチウェルプレート)を使用することもできる。複数の凹部を有することにより、異なる細胞や異なる条件を用いた試験を一度に実施することが可能となる。
【0023】
図3は、細胞試験用基板30と側壁部材34(両端が開口した96ウェルのマルチウェルプレート)とを示す。細胞試験用基板30上に側壁部材34を接合することにより、細胞や細胞培養液などを収容することができる複数の凹部を有する細胞試験用容器とすることができる。
【0024】
形成可能な凹部の数は細胞試験用基板の大きさに依存するが、基板のサイズが大きくなっても補助電極を使用することにより、基板全体に均一な電圧を印加することができる。細胞試験用基板のサイズは特に制限されないが、長さ×幅が10mm×10mm〜1000mm×1000mmであることが好ましく、20mm×20mm〜200mm×200mmであることがより好ましい。例えば、マイクロプレートのANSI/SBS規格で定まっているサイズ、長さ×幅が127.76mm×85.48mmに合わせることが考えられる(規格については、例えば特開2007−316064号公報を参照されたい)。
【0025】
図4aは細胞試験用容器40を上方から見た図である。細胞試験用基板上に側壁部材44が配置されることにより96個の凹部45が形成されている。補助電極42は凹部の底面を構成する部分領域の周縁の外に配置されている。図4bは図4aの一部を拡大した図である。側壁部材44は細胞接着性領域46と細胞接着阻害性領域47とを含むように配置されており、細胞接着性領域上には細胞49が接着している。図4cは図4bの断面図である。基材48上に主電極41が配置されており、補助電極42が主電極上に配置されている。主電極上には細胞接着性領域46と細胞接着阻害性領域47とが存在しており、両領域を含むように側壁部材44が配置され、凹部45が形成されている。凹部の内部には細胞培養液が導入されており、細胞接着性領域上には細胞49が接着している。
【0026】
補助電極が接着材料を含む場合、例えば、補助電極が金属微粒子と接着材料を含む導電性ペーストである場合には、細胞試験用基板と側壁部材とが接触する位置に補助電極を配置することにより、補助電極を介して細胞試験用基板と側壁部材を接合することができる。補助電極が接着剤の機能を果たすことにより、細胞試験用基板と側壁部材とを接合する更なる工程を省略することができ、細胞試験用容器の作成プロセスを簡素化することができる。
【0027】
例えば、細胞試験用容器の断面を示す図5のように、細胞試験用基板59と側壁部材54とが接触する位置に補助電極52が配置されており、前記基板と側壁部材とが補助電極を介して接合される。
【0028】
補助電極に包含させることができる接着材料としては特に制限されるものではないが、例えば、導電フィラーを樹脂バインダーに混合した接着剤や、低融点金属などが挙げられる。接着剤としては例えば、ドータイトやスリーボンド3300シリーズ、低融点金属としては、例えばハンダなどが挙げられる。
【0029】
補助電極が透明電極ではない場合には、細胞を観察する観点から、凹部の底面を構成する細胞試験用基板上の一定の領域(部分領域)における細胞接着性領域と細胞接着阻害性領域とが隣接する領域(観察領域)の外に補助電極が配置されていることが好ましい。更には、凹部の底面を構成する部分領域の周縁の外に補助電極が配置されていることが好ましい。前記周縁の外であって側壁部材の下部領域に補助電極が配置されていてもよい。
【0030】
補助電極は主電極と導電可能に接続されていればよいため、補助電極及び主電極が基材上にどのような順番で積層されていてもよい。また、補助電極は主電極に連続して接続している必要はなく、断続的に接続されていてもよい。そのため、図6に示す細胞試験用基板60のように、複数の補助電極62が間隔をあけて主電極61に接続されていてもよい。
【0031】
本発明の細胞試験用容器の別の実施形態では、細胞試験用基板が、電極と電気的に絶縁されて基材上に配置されている対向電極を更に備える。例えば、図7aの細胞試験用容器の一部拡大図に示すように、側壁部材74は細胞接着性領域と、細胞接着阻害性領域と、対向電極73とを含むように配置されており、細胞接着性領域上には細胞が接着している。図7bは図7aの断面図である。基材(ガラス板)78上に補助電極72と対向電極73とが配置され、主電極71が補助電極72と導電可能に接続し、且つ対向電極73と電気的に絶縁された位置に配置される。細胞接着性領域76と、細胞接着阻害性領域77と、対向電極73とを含むように側壁部材74が配置され、凹部が形成されている。凹部の内部には細胞培養液が導入されており、細胞接着性領域上には細胞が接着している。補助電極と対向電極とが同一の物質である場合には、基材上に補助電極と対向電極とを一度に形成することができるため、作成プロセスを簡素化することができる。
【0032】
細胞試験用容器が複数の凹部を有する場合には、図8に示すように、電極(主電極81、及び前記主電極に導電可能に接続された補助電極82)と、対向電極83とが基材88上に複数配置され、前記複数の電極と対向電極とがそれぞれ電気的に絶縁されて配置され、凹部の底面を構成する細胞試験用基板上の部分領域に主電極81及び対向電極83の一対が包含されるように側壁部材が配置されていてもよい。凹部ごとに異なる電極及び対向電極が配置されることで、凹部ごとに異なる電圧を印加することが可能となる。
【0033】
本発明の細胞試験用基板及び細胞試験用容器を使用することで、細胞の培養、異なる細胞の共培養、細胞間の相互作用の評価、細胞遊走試験などの細胞を使用した様々な試験を実施することができる。
【0034】
(基材)
本発明の細胞試験用基板に用いられる基材としては、基材上に電極を配置可能なものであれば特に制限されない。例えば、ガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミナ、サファイア、セラミクス、フォルステライト、感光性ガラス、セラミック、シリコン、エラストマー、プラスチック(例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂)で代表される無機材料や有機材料などを挙げることができる。導電性の基材を電極として使用してもよい。その形状も限定されず、例えば、平板、平膜、フィルム、多孔質膜などの平坦な形状、シリンダ、スタンプ、マルチウェルプレート、マイクロ流路などの立体的な形状、ならびに表面に凹凸が形成された形状が挙げられる。フィルムを使用する場合、その厚さは特に制限されないが、通常0.1〜1000μm、好ましくは1〜500μm、より好ましくは10〜200μmである。
【0035】
特に、細胞の大きさよりも小さい1nm〜10μm程度の微細な凹凸が表面に付加された基材を用い、細胞接着性領域も同様の形状となる場合には、接着した細胞の形状や挙動を制御して、試験を効果的に行うことが可能である。微細な凹凸とは例えば、ラインパターンの場合、深さ1nm〜10μm、ライン凸部の幅1nm〜10μm、ライン凹部の幅1nm〜10μmのことを指す。
【0036】
(主電極)
主電極としては導電性の物質であれば特に制限されない。例えば、金属(金、銀、銅など)、金属酸化物(酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)など)、導電性ナノファイバー(カーボンナノチューブなど)、導電性の有機材料(ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)など)が挙げられる。細胞を観察する観点から、電圧印加後も透明である透明電極を使用することが好ましい。透明電極としては、例えば、ITO,IZO、ZnOなどの金属酸化物、PEDOTなどの導電性高分子、Agナノワイヤーやカーボンナノチューブをバインダーに分散させた材料、Agなどの金属材料を格子状に形成して開口部を持たせた膜などが挙げられる。主電極は電極材料を基材上に成膜して、その後パターニングすることにより形成することが好ましい。
【0037】
透明電極は一般的に金属電極と比べて抵抗が大きい。本発明の細胞試験用基板に用いられる透明電極の抵抗は、例えばITOの場合は、膜質・膜厚・透過率にもよるが、通常、シート抵抗が1〜1000Ω/□であり、具体的には5〜500Ω/□、より具体的には10Ω/□程度である。膜厚150nmでシート抵抗が10Ω/□の場合、電気抵抗率は、1.5×10−6 Ω・mとなる。シート抵抗や電気抵抗率は、例えば、三菱化学アナリテック(株)のロレスタを用いて測定することができる。金属酸化物膜、金属微粒子や金属ファイバーがバインダーに分散された膜、金属が絶縁体物に埋め込まれた膜、導電性の有機材料、イオン液体等のイオン導電性の材料等であることが好ましい。例えば、金属膜には金を用いてもよく、金属酸化物膜にはITOを用いてもよい。導電膜は透明であることが好ましい。
【0038】
(補助電極)
補助電極としては導電性の物質であれば特に制限されない。例えば、主電極として使用可能な物質を使用することができる。補助電極の抵抗は主電極の抵抗よりも小さいことが好ましい。また、補助電極と主電極との抵抗の差が大きいほど好ましい。補助電極の抵抗がより小さく、また、抵抗の差が大きいほど主電極を単独で使用した場合に生じる電圧降下を改善することができる。具体的には、金、銀、銅などの導電率の高い金属を補助電極として使用することが好ましい。また、接着材料を含む導電性ペーストを使用してもよい。
【0039】
補助電極の抵抗は、1×10−8〜1×10−6 Ω・mであることが好ましく、1×10−8〜5×10−7 Ω・mであることがより好ましく、1×10−8〜1×10−7 Ω・mであることが特に好ましい。主電極と補助電極の抵抗率の比(主電極/補助電極)は、1〜1,000であることが好ましく、5〜1,000であることがより好ましく、10〜1,000であることが特に好ましい。シート抵抗や電気抵抗率は、例えば、三菱化学アナリテック(株)のロレスタを用いて測定することができる。
【0040】
(対向電極)
対向電極としては導電性の物質であれば特に制限されない。例えば、主電極及び補助電極として使用可能な物質を使用することができる。好ましくは、補助電極と同一の物質が使用される。この場合、基材上に補助電極と対向電極とを一度に形成することができるため、細胞試験用基板の作成プロセスを簡素化することができる。
【0041】
(電極の形成)
基材上における主電極、補助電極及び対向電極の形成は、公知のパターニング技術を利用できる。公知のパターニング技術としては、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法およびコンタクトプリンティング法などの各種印刷法による方法、各種リソグラフィー法を用いる方法、ならびにインクジェット法による方法、他に微細な溝を彫刻などする立体整形の手法などが挙げられる。具体的には、絶縁性材料からなる基材、例えばガラス基材に、導電性材料、例えば金属膜または金属酸化物膜を成膜し、これをフォトリソグラフィー技術などの公知の技術を用いてパターニングすることにより、主電極、補助電極及び対向電極を形成することができる。
【0042】
基材上への主電極、補助電極及び対向電極の成膜は、公知の方法で行うことができる。例えば、マイクロ波プラズマCVD(Chemical vapor deposit)法、ECRCVD(Electric cyclotron resonance chemical vapor deposit)法、ICP(Inductive coupled plasma)法、直流スパッタリング法、ECR(Electric cyclotron resonance)、スパッタリング法、イオン化蒸着法、アーク式蒸着法、レーザー蒸着法、EB(Electron beam)蒸着法、抵抗加熱蒸着法などが挙げられる。成膜は、塗布により実施してもよい。スピンコートや各種の印刷方式も使用できる。
【0043】
主電極、補助電極及び対向電極の膜の厚さは、通常、単分子膜〜100μm程度であり、好ましくは2nm〜1μm、より好ましくは5nm〜500nmである。
【0044】
上記のような主電極、補助電極及び対向電極のパターニングは、具体的には、成膜した金属膜または金属酸化物膜に、レジスト塗布、フォトマスクを介した露光、現像およびエッチングを行って実施することができる。
【0045】
(細胞接着性領域及び細胞接着阻害性領域)
本発明において細胞接着性とは、細胞が接着すること、または細胞が接着しやすいことを意味する。細胞接着阻害性とは、細胞が接着しにくいこと、または細胞が接着しないことを意味する。従って、細胞接着性領域と細胞接着阻害性領域とがパターン化された細胞試験用基板上に細胞を播くと、細胞接着性領域には細胞が接着するが、細胞接着阻害性領域には細胞が接着しないため、基板表面には細胞がパターン状に配列されることになる。
【0046】
細胞接着性は、接着しようとする細胞によって異なる場合もあるため、細胞接着性とは、ある種の細胞に対して細胞接着性であることを意味する。従って、細胞試験用基板上には、複数種の細胞に対する複数の細胞接着性領域が存在する場合、すなわち細胞接着性が異なる細胞接着性領域が2水準以上存在する場合もある。
【0047】
本発明の細胞試験用基板における、細胞接着性領域および細胞接着阻害性領域の構造としては、例えば、以下の2つの形態が挙げられる。
【0048】
第一の形態は、細胞接着性領域が、炭素酸素結合を有する有機化合物を含む細胞接着阻害性の親水性膜に酸化処理および/または分解処理を施して細胞接着性とした領域である形態である。この形態では、電極が形成された基材表面に炭素酸素結合を有する有機化合物を含む細胞接着阻害性の親水性膜を形成し、次いで、細胞の接着が望まれる領域に対して酸化処理および/または分解処理を施すことにより当該領域に細胞接着性を付与して細胞接着性領域に改変する。前記処理を施さない部分は細胞接着阻害性領域である。
【0049】
第二の形態は、細胞接着性領域が、炭素酸素結合を有する有機化合物を低密度で含む親水性膜で形成されている形態である。この形態は、炭素酸素結合を有する有機化合物を高密度で含む親水性膜が細胞接着阻害性を有するのに対して、前記化合物を低密度で含む親水性膜は細胞接着性を有することを利用したものである。電極が形成された基材表面に前記化合物が結合しやすい第一領域と結合しにくい第二領域とを設け、該基材表面に前記化合物の膜を形成すると、第一領域は細胞接着阻害性領域となり、第二領域は細胞接着性領域となる。
【0050】
さらに、本発明の細胞試験用基板においては、主電極上の細胞接着阻害性領域が、電極及び/又は補助電極への電圧印加、好ましくは正電圧の印加によって細胞接着性に改変可能である。電圧の印加によって細胞接着性に改変された領域は、上記のように炭素酸素結合を有する有機化合物を含む細胞接着阻害性の親水性膜に酸化処理および/または分解処理を施して得られる細胞接着性領域とは、詳細な表面性状が異なる場合がある。
【0051】
細胞接着阻害性領域は、好ましくは、炭素酸素結合を有する有機化合物により形成される親水性膜により形成される。当該親水性膜は、水溶性や水膨潤性を有する、炭素酸素結合を有する有機化合物を主原料とする薄膜であり、酸化される前は細胞接着阻害性を有し、酸化および/または分解された後は細胞接着性を有しているものであれば特に限定されない。
【0052】
本発明において炭素酸素結合とは、炭素と酸素との間に形成される結合を意味し、単結合に限らず二重結合であってもよい。炭素酸素結合としてはC−O結合、C(=O)−O結合、C=O結合が挙げられる。
【0053】
主原料としては、水溶性高分子、水溶性オリゴマー、水溶性有機化合物、界面活性物質、両親媒性物質などが挙げられ、これらが相互に物理的または化学的に架橋し、電極が形成された基材と物理的または化学的に結合することにより親水性薄膜となる。
【0054】
具体的な水溶性高分子材料としては、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体、ポリアクリル酸およびその誘導体、ポリメタクリル酸およびその誘導体、ポリアクリルアミドおよびその誘導体、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、双性イオン型高分子、多糖類などを挙げることができる。分子形状は、直鎖状、分岐を有するもの、デンドリマーなどを挙げることができる。より具体的には、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体、例えば、Pluronic F108、Pluronic F127、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メタクリロイルオキシエチルフォスフォリルコリン)、メタクリロイルオキシエチルフォスフォリルコリンとアクリルモノマーの共重合体、デキストラン、およびヘパリンが挙げられるがこれらには限定されない。
【0055】
具体的な水溶性オリゴマー材料や水溶性低分子化合物としては、アルキレングリコールオリゴマーおよびその誘導体、アクリル酸オリゴマーおよびその誘導体、メタクリル酸オリゴマーおよびその誘導体、アクリルアミドオリゴマーおよびその誘導体、酢酸ビニルオリゴマーの鹸化物およびその誘導体、双性イオンモノマーからなるオリゴマーおよびその誘導体、アクリル酸およびその誘導体、メタクリル酸およびその誘導体、アクリルアミドおよびその誘導体、双性イオン化合物、水溶性シランカップリング剤、水溶性チオール化合物などを挙げることができる。より具体的には、エチレングリコールオリゴマー、(N−イソプロピルアクリルアミド)オリゴマー、メタクリロイルオキシエチルフォスフォリルコリンオリゴマー、低分子量デキストラン、低分子量ヘパリン、オリゴエチレングリコールチオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、2−〔メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル〕トリメトキシシラン、およびトリエチレングリコール−ターミネーティッド−チオールが挙げられるがこれらには限定されない。
【0056】
親水性膜は、処理前は高い細胞接着阻害性を有し、酸化処理および/または分解処理後は細胞接着性を示すものであることが望ましい。
【0057】
親水性膜の平均厚さは、0.8nm〜500μmが好ましく、0.8nm〜100μmがより好ましく、1nm〜10μmがより好ましく、1.5nm〜1μmが最も好ましい。平均厚さが0.8nm以上であれば、タンパク質の吸着や細胞の接着において、基板表面の親水性薄膜で覆われていない領域の影響を受けにくいため好ましい。また、平均厚さが500μm以下であればコーティングが比較的容易である。
【0058】
電極が形成された基材表面への親水性膜の形成方法としては、基材へ親水性有機化合物を直接吸着させる方法、基材へ親水性有機化合物を直接コーティングする方法、基材へ親水性有機化合物をコーティングした後に架橋処理を施す方法、基材への密着性を高めるために多段階式に親水性薄膜を形成させる方法、基材との密着性を高めるために基材上に下地層を形成し、次いで親水性有機化合物をコーティングする方法、基板表面に重合開始点を形成し、次いで親水性ポリマーブラシを重合する方法などを挙げることができる。
【0059】
上記成膜方法のうち特に好ましい方法としては、多段階式に親水性薄膜を形成させる方法、ならびに、電極が形成された基材との密着性を高めるために基材上に下地層を形成し、次いで親水性有機化合物をコーティングする方法を挙げることができる。これらの方法を用いると、親水性有機化合物の基材への密着性を高めることが容易だからである。本明細書では「結合層」という用語を用いる。結合層とは、多段階式に親水性有機化合物の薄膜を形成する場合には最表面の親水性薄膜層と基材との間に存在する層を意味し、基材表面に下地層を設け当該下地層の上に親水性薄膜層を形成する場合には当該下地層を意味する。結合層は、結合部分(リンカー)を有する材料を含む層であることが好ましい。リンカーとリンカーに結合させる材料の末端の官能基の組み合わせとしては、エポキシ基と水酸基、フタル酸無水物と水酸基、カルボキシル基とN−ハイドロキシスクシイミド、カルボキシル基とカルボジイミド、アミノ基とグルタルアルデヒドなどが挙げられる。それぞれの組み合わせにおいて、いずれがリンカーであってもよい。これらの方法においては、親水性材料によるコーティングを行う前に、基材上にリンカーを有する材料により結合層を形成する。結合層における前記材料の密度は結合力を規定する重要な因子である。前記密度は、結合層の表面における水の接触角を指標として簡便に評価することができる。例えば、エポキシ基を末端に有するシランカップリング剤(エポキシシラン)を例にとると、エポキシシランを付加した基材表面の水接触角が典型的には45°以上、望ましくは47°以上であれば、次に酸触媒存在下エチレングリコール系材料等を付加することによって十分な細胞接着阻害性を有する基板を作ることができる。
【0060】
なお、本発明において水接触角とは、23℃において測定される水接触角を指す。
細胞接着性領域は、例えば、炭素酸素結合を有する有機化合物を含む細胞接着阻害性の親水性膜に酸化処理および/または分解処理を施して細胞接着性とした領域により形成される。
【0061】
本発明において「酸化」とは狭義の意味であり、有機化合物が酸素と反応して酸素の含有量が反応以前よりも多くなる反応を意味する。
【0062】
本発明において「分解」とは有機化合物の結合が切断されて1種の有機化合物から2種以上の有機化合物が生じる変化を指す。「分解処理」としては典型的には、酸化処理による分解、紫外線照射による分解などが挙げられるがこれらには限定されない。「分解処理」が酸化を伴う分解(つまり酸化分解)である場合、「分解処理」と「酸化処理」とは同一の処理を指す。
【0063】
紫外線照射による分解とは、有機化合物が紫外線を吸収し、励起状態を経て分解することを指す。なお、有機化合物が、酸素を含む分子種(酸素、水など)とともに存在している系中に紫外線を照射すると、紫外線が化合物に吸収されて分解が起こる以外に、該分子種が活性化して有機化合物と反応する場合がある。後者の反応は「酸化」に分類できる。そして活性化された分子種による酸化により有機化合物が分解する反応は、「紫外線照射による分解」ではなく「酸化による分解」に分類できる。
【0064】
以上のように「酸化処理」と「分解処理」は操作としては重複する場合があり、両者を明確に区別することはできない。そこで本明細書では「酸化処理および/または分解処理」という用語を使用する。
【0065】
酸化処理および/または分解処理の方法としては、親水性膜を紫外線照射処理する方法、光触媒処理する方法、酸化剤で処理する方法などが挙げられる。本発明では、細胞接着性領域と細胞接着阻害性領域とをそれぞれ形成することから、親水性膜をパターン状に部分的に酸化処理および/または分解処理する。部分的に酸化処理および/または分解処理する場合は、フォトマスクやステンシルマスクなどのマスクを用いたり、スタンプを用いたりするとよい。また、紫外線レーザなどのレーザを用いた方式などの直描方式で酸化処理および/または分解処理を施してもよい。
【0066】
紫外線照射処理の場合は、波長185nmや254nmの紫外線を出す水銀ランプや波長172nmの紫外線を出すエキシマランプなどのVUV領域からUV−C領域の紫外線を出すランプを光源として用いることが好ましい。光触媒処理する場合は、波長365nm以下の紫外線を出す光源を用いることが好ましく、波長254nm以下の紫外線を出す光源を用いることがより好ましい。光触媒としては、酸化チタン光触媒、金属イオンや金属コロイドで活性化された酸化チタン光触媒を用いるのが好ましい。酸化剤としては、有機酸や無機酸を特に制限なく用いることができるが、高濃度の酸は取り扱いが難しいので、10%以下の濃度に希釈して用いるとよい。最適な紫外線処理時間、光触媒処理時間、酸化剤処理時間は、用いる光源の紫外線強度、光触媒の活性、酸化剤の酸化力や濃度などの諸条件に応じて適宜決定することができる。
【0067】
細胞接着性領域は、炭素酸素結合を有する有機化合物を低密度で含む親水性膜により形成されていてもよい。この態様では、細胞接着性領域と細胞接着阻害性領域とは、ともに炭素酸素結合を有する有機化合物を含む親水性膜で形成されている。2つの領域は前記有機化合物の密度が相違する。同密度が高いほど細胞は接着しにくくなる傾向がある。細胞接着性領域では、前記有機化合物の密度が、細胞が接着できる程度に低い。一方、細胞接着阻害性領域では、前記有機化合物の密度が、細胞が接着できない程度に高い。
【0068】
親水性有機化合物の密度を制御する方法としては、親水性有機化合物の薄膜と電極が形成された基材表面との間に結合層を設け、当該結合層の親水性有機化合物との結合力を調整する方法が挙げられる。ここで「結合層」とは上記で定義した通りであり、上記で説明した好ましい材料から構成され得る。結合層の結合力は、結合層におけるリンカーを有する材料の密度が高いほど強くなり、同密度が低いほど弱くなる。結合層におけるリンカーを有する材料の密度は、上述の通り、結合層の表面における水の接触角を指標として簡便に評価することができる。
【0069】
本発明のこの実施形態では、細胞接着性領域の結合層における、リンカーを有する材料の密度は低い。細胞接着性領域における、親水性有機化合物の薄膜を形成する前の結合層の表面の水接触角は、リンカーを有する材料としてエポキシ基を末端に有するシランカップリング剤を使用する場合を例にとると、典型的には、10°〜43°、望ましくは15°〜40°である。このような結合層を形成する方法としては、リンカーを有する材料の被膜(結合層)を電極が形成された基材表面に形成した後、当該結合層の表面を酸化処理および/または分解処理する方法が挙げられる。結合層表面を酸化処理および/または分解処理する方法としては、結合層表面を紫外線照射処理する方法、光触媒処理する方法、酸化剤で処理する方法などが挙げられる。結合層表面の全面を酸化処理および/または分解処理してもよいし、部分的に処理してもよい。部分的な処理は、フォトマスクやステンシルマスクなどのマスクを用いたり、スタンプを用いることにより行うことができる。また、紫外線レーザなどのレーザを用いた方式などの直描方式で酸化処理および/または分解処理を施してもよい。諸条件などについても、親水性膜の酸化処理および/または分解処理により細胞接着性領域を形成する方法の場合と同様の条件を適用できる。こうして形成された結合層上に親水性有機化合物の薄膜を形成することにより、細胞接着性領域が形成できる。
【0070】
本発明のこの実施形態では、細胞接着阻害性領域の結合層における、リンカーを有する材料の密度は高い。細胞接着阻害性領域における、親水性有機化合物の薄膜を形成する前の結合層の表面の水接触角は、リンカーを有する材料としてエポキシ基を末端に有するシランカップリング剤を使用する場合を例にとると、典型的には45°以上、望ましくは47°以上である。このような結合層は、リンカーを有する材料の被膜を電極が形成された基材表面に形成することにより得られる。結合層表面を部分的に酸化処理および/または分解処理した場合には、処理を受けない残余の部分が前記水接触角を有する結合層となる。こうして形成された結合層上に親水性有機化合物の薄膜を形成することにより、細胞接着阻害性領域が形成できる。
【0071】
(細胞接着性領域と細胞接着阻害性領域との比較)
細胞接着性領域(結合層が存在する場合には結合層も含む)の炭素量は、細胞接着阻害性領域(結合層が存在する場合には結合層も含む)の炭素量と比較して低いことが好ましい。具体的には、細胞接着性領域の炭素量が、細胞接着阻害性領域の炭素量に対して20〜99%であることが好ましい。この範囲内に該当することは、親水性膜の厚さ(結合層が存在する場合には結合層の厚さと親水性膜の厚さの合計)が10μm以下の場合に特に好適である。「炭素量(atomic concentration、%)」は下記に定義する通りである。
【0072】
また、細胞接着性領域(結合層が存在する場合には結合層も含む)における炭素のうちで酸素と結合している炭素の割合(%)の値は、細胞接着阻害性領域(結合層が存在する場合には結合層も含む)における炭素のうちで酸素と結合している炭素の割合(%)の値に対して小さい値であることが好ましい。具体的には、細胞接着性領域における炭素のうちで酸素と結合している炭素の割合(%)の値が、細胞接着阻害性領域における炭素のうちで酸素と結合している炭素の割合(%)の値に対して35〜99%であることが好ましい。この範囲内に該当することは、親水性膜の厚さ(結合層が存在する場合には結合層の厚さと親水性膜の厚さの合計)が10μm以下の場合に特に好適である。「酸素と結合している炭素の割合(atomic concentration、%)」は下記に定義する通りである。
【0073】
(親水性薄膜の評価方法)
本発明の親水性薄膜(結合層が存在する場合には結合層も含む)の評価手法としては、接触角測定、エリプソメトリー、原子間力顕微鏡観察、電子顕微鏡観察、オージェ電子分光測定、X線光電子分光測定、各種質量分析法などを用いることができる。これらの手法の中で、最も定量性に優れているのはX線光電子分光測定(XPS/ESCA)である。この測定方法で求められるのは相対的定量値であり、一般的に元素濃度(atomic concentration、%)で算出される。以下、本発明におけるX線光電子分光分析方法を詳細に説明する。
【0074】
本発明において親水性薄膜の「炭素量」は、「X線光電子分光装置を用いて得られるC1sピークの解析値から求められる炭素量」と定義される。また、本発明において親水性薄膜の「酸素と結合している炭素の割合」は、「X線光電子分光装置を用いて得られるC1sピークの解析値から求められる酸素と結合している炭素の割合」と定義される。具体的な測定は、特開2007−312736に記載されるとおりに実施できる。
【0075】
(パターンの形状)
本発明の細胞試験用基板では、細胞接着性領域と細胞接着阻害性領域とがパターン化されて配置されていることが好ましい。パターンの形状は、二次元のパターンであれば特に制限されず、細胞の種類、形成させる組織などによって選択することができる。例えば、ライン状、ツリー状(樹状)、網目状、格子状、円形、四角形のパターン、円形および四角形などの図形の内部がすべて細胞接着性領域または細胞接着阻害性領域となっているパターンなどを形成することができる。
【0076】
細胞接着性領域と細胞接着阻害性領域のパターンは、細胞接着性領域と細胞接着阻害性領域とが隣接しているように形成される。細胞接着性領域と細胞接着阻害性領域とが隣接していることにより、まず細胞接着性領域に細胞を接着させて培養した後、電極への電圧の印加により細胞接着阻害性領域が細胞接着性領域に改変すると、改変された領域に細胞が遊走できるようになる。したがって、細胞接着性領域に改変される領域をパターンニングにより予め決定して、細胞遊走試験において細胞を遊走させる領域および方向を制御することができる。
【0077】
本発明の細胞試験用基板は、上記のように製造することができ、一実施形態においては、電極が形成された基材の全面に、炭素酸素結合を有する有機化合物を含む細胞接着阻害性の親水性膜を形成する工程、および該基材上において細胞接着性領域と細胞接着阻害性領域とが隣接するように、親水膜をパターン状に酸化処理および/または分解処理して細胞接着性に改変させる工程を含む方法により製造できる。
【0078】
(細胞)
細胞試験用基板に播種する細胞としては、血球系細胞やリンパ系細胞などの浮遊細胞でもよいし接着性細胞でもよいが、本発明は、接着性を有する細胞に対して好適に使用される。また遊走する性質を有する細胞に対して好適に使用される。そのような細胞としては、例えば、肝がん細胞、グリオーマ細胞、結腸癌細胞、腎がん細胞、膵がん細胞、前立腺がん細胞、大腸がん細胞、乳癌細胞、肺がん細胞、卵巣がん細胞などのがん細胞、肝臓の実質細胞である肝細胞、クッパー細胞、血管内皮細胞や角膜内皮細胞などの内皮細胞、線維芽細胞、骨芽細胞、砕骨細胞、歯根膜由来細胞、表皮角化細胞などの表皮細胞、気管上皮細胞、消化管上皮細胞、子宮頸部上皮細胞、角膜上皮細胞などの上皮細胞、乳腺細胞、ペリサイト、平滑筋細胞や心筋細胞などの筋細胞、腎細胞、膵ランゲルハンス島細胞、末梢神経細胞や視神経細胞などの神経細胞、軟骨細胞、骨細胞などが挙げられる。これらの細胞は、組織や器官から直接採取した初代細胞でもよく、あるいは、それらを何代か継代させたものでもよい。さらにこれら細胞は、未分化細胞である胚性幹細胞、多分化能を有する間葉系幹細胞などの多能性幹細胞、単分化能を有する血管内皮前駆細胞などの単能性幹細胞、分化が終了した細胞の何れであってもよい。また、細胞は単一種を培養してもよいし二種以上の細胞を共培養してもよい。
【0079】
目的の細胞を含む培養試料は、予め、生体組織を細かくして液体中に分散させる分散処理や、生体組織中の目的の細胞以外の細胞その他細胞破片等の不純物質を除去する分離処理などを行っておくことが好ましい。
【0080】
細胞試験用基板への細胞の播種に先だって、目的とする細胞を含む培養試料を、予め、各種の培養方法で予備培養して、目的とする細胞を増やすことが好ましい。予備培養には、単層培養、コートディシュ培養、ゲル上培養などの通常の培養方法が採用できる。予備培養において、細胞を支持体表面に接着させて培養する方法の一つに、いわゆる単層培養法として既に知られている手段がある。具体的には、例えば、培養容器に培養試料と培養液を収容して一定の環境条件に維持しておくことにより、特定の生細胞のみが、培養容器などの支持体表面に接着した状態で増殖する。使用する装置や処理条件などは、通常の単層培養法などに準じて行う。細胞が接着して増殖する支持体表面の材料として、ポリリシン、ポリエチレンイミン、コラーゲンおよびゼラチンなどの細胞の接着や増殖が良好に行われる材料を選択したり、ガラスシャーレ、プラスチックシャーレ、スライドガラス、カバーガラス、プラスチックシートおよびプラスチックフィルムなどの支持体表面に、細胞の接着や増殖が良好に行われる化学物質、いわゆる細胞接着因子を塗布しておくことも行われる。
【0081】
予備培養後に、培養容器中の培養液を除去することで、培養試料中の支持体表面に接着しない塊状や線維状の不純物等の不要成分が除去され、支持体表面に接着した生細胞のみを回収できる。支持体表面に接着した生細胞の回収には、EDTA−トリプシン処理などの手段が適用できる。
【0082】
上記のように予備培養した細胞を、培養液中の細胞試験用基板上に播種する。細胞の播種方法や播種量については特に制限はなく、例えば、朝倉書店発行「日本組織培養学会編組織培養の技術(1999年)」266〜270頁等に記載されている方法が使用できる。細胞を細胞試験用基板上で増殖させる必要がない程度に十分な量で、細胞が単層で接着するように播種することが好ましい。通常、培養液1ml当り10〜10個のオーダーで細胞が含まれるように播種するのが好ましく、また、基板1cm当り10〜10個のオーダーで細胞が含まれるように播種するのが好ましい。具体的には、400mmあたり2×10個程度で播種する。
【0083】
細胞を播種した細胞試験用基板を培養液中で培養することにより、細胞を細胞接着性領域に接着させることが好ましい。培養液としては、当技術分野で通常用いられる細胞試験用培地であれば特に制限なく用いることができる。例えば、用いる細胞の種類に応じて、MEM培地、BME培地、DME培地、αMEM培地、IMDM培地、ES培地、DM−160培地、Fisher培地、F12培地、WE培地およびRPMI1640培地など、朝倉書店発行「日本組織培養学会編組織培養の技術第三版」581頁に記載されているような基礎培地を用いることができる。さらに、基礎培地に血清(ウシ胎児血清等)、各種増殖因子、抗生物質、アミノ酸などを加えてもよい。また、Gibco無血清培地(インビトロジェン社)などの市販の無血清培地などを用いることができる。
【0084】
細胞を培養する時間は、培養時の細胞操作の有無などに左右されるが、通常6〜96時間、好ましくは12〜72時間である。培養する温度は、通常37℃である。CO細胞培養装置などを利用して、5%程度のCO濃度雰囲気下で培養するのが好ましい。培養した後、細胞試験用基板を洗浄することにより、接着していない細胞が洗い流され、細胞接着性領域にのみ細胞を接着させることができる。
【0085】
(細胞遊走試験)
上記のように、本発明の細胞試験用基板上に細胞を播種して培養し、細胞接着性領域に細胞を接着させた後、電極に電圧を印加して、主電極上の細胞接着阻害性領域を細胞接着性領域に改変させ、その後の細胞の移動を観察することにより、細胞遊走を試験することができる。
【0086】
図9は細胞試験用容器90への電圧の印加と、その後の細胞の遊走を示している。図9aは対向電極93を用いて電圧を印加する前の状態を示す。図9bでは、電圧が印加されて細胞接着阻害性領域97が細胞接着性領域96に改変する。図9cでは細胞接着性領域96に改変された領域へ細胞が遊走する。なお、図9bでは電圧を印加したことによる変化を明確に表現するために細胞接着阻害性領域97(例えば、親水性膜)が消失したように表現してあるが、実際には親水性膜の分解物などが残存していると推定される。また、図9aにおける接着性領域95においても、親水性膜の酸化処理および/または分解処理などにより生じる分解物などが残存していると推定される。
【0087】
換言すれば、細胞遊走試験法は、
(i)本発明の細胞試験用基板に細胞を播種し、細胞接着性領域に細胞を接着させる工程、
(ii)電極に電圧を印加することによって主電極上の細胞接着阻害性領域を細胞接着性領域に改変させる工程、
(iii)細胞接着性領域に接着していた細胞の、工程(ii)で細胞接着性領域に改変した領域への移動を観察する工程
を含む。
【0088】
(i)の工程においては、細胞を播種した後、細胞培養を行い、細胞接着性領域に細胞を接着させることが好ましく、さらに細胞試験用基板を洗浄することにより、接着していない細胞を洗い流し、細胞接着性領域にのみ細胞を接着させることが好ましい。
【0089】
(ii)の工程において、電極に印加する電圧は、正電圧であることが好ましい。正電圧を印加することにより、細胞接着阻害性領域を効果的に細胞接着性領域に改変できるとともに、特に透明電極(ITO膜など)からなる主電極が黒変するのを防止でき、細胞遊走の観察を良好に実施できる。
【0090】
印加する電圧は、当業者であれば適宜決定することができるが、通常1〜10V、好ましくは1.5〜5Vであり、より好ましくは2〜2.3Vであり、印加する時間は、通常0.5〜60分間、好ましくは1〜10分間、より好ましくは1.5〜3分間である。
【0091】
印加する電圧は、電極が接している溶媒の種類や、電極の材質、電極の形状によって、適切な値が変わるが、通常、細胞接着阻害性領域を細胞接着性領域に改変可能な電圧以上で、細胞に悪影響を与えない程度に低い電圧を加えるのがよい。
【0092】
本発明の細胞試験用基板及び細胞試験用容器は細胞遊走試験以外にも、細胞の培養、異なる細胞の共培養、細胞間の相互作用の評価などの細胞を使用した様々な試験に利用することができる。
【実施例】
【0093】
実施例
1.細胞試験用容器の作製
長さ×幅が125mm×85mmの無アルカリガラス基材上に補助電極(Ag)を膜厚100nmでスパッタ成膜し、ウェル部を避けるようにグリッド状にフォトリソグラフィーによってパターニングした。次いで、透明電極(ITO)を膜厚150nmで全面にスパッタ成膜した。
【0094】
(一段階目の反応)
トルエン39.0g及びエポキシシランTSL8350(GE東芝シリコーン製)750μlの混合液を攪拌しながら触媒量のトリエチルアミンを加え、さらに室温で数分間攪拌した。UV洗浄したITO基材を、上記のエポキシシラン溶液に浸漬し、19時間室温で振盪した。その後、下地処理された基材をエタノールで洗浄し、次いで水洗し、乾燥した。
【0095】
(二段階目の反応)
ポリエチレングリコール15gを攪拌しながら、触媒量の濃硫酸をゆっくり添加し、さらに室温で数分間攪拌した。上記のエポキシシラン処理された基材を上記のポリエチレングリコールに浸漬し、80℃で60分間反応させた。反応後、基材をよく水洗いし、次いで乾燥した。これにより親水性薄膜が形成された基板が得られた。
【0096】
(酸化処理)
表面全域に酸化チタン系光触媒を塗布したフォトマスクを作製した。あらかじめ露光機の照度を350nmの波長で計測し、露光時間の設定の目安とした。照度は25mW/cmであった。親水性薄膜が形成されたITO基板と上記触媒付き石英板を、親水性薄膜とフォトマスクの光触媒層が対向するように設置し、フォトマスクの裏面側から光が照射されるよう露光機内に設置した。120秒間露光し、酸化処理を行った。
【0097】
得られた細胞試験用基板に96ウェルプレート(縦8×横12ウェル)の枠を接着剤で接合することにより細胞試験用容器を作成した。
【0098】
2.細胞培養
細胞試験用容器をエチレンオキサイドガスで滅菌した。各ウェルの中に5x10個のウシ血管内皮細胞を播種した。10%血清を含むDMEM培地を用いて、37℃、5%CO濃度のインキュベータ内で24時間培養した。位相差顕微鏡で観察したところ、細胞は酸化処理された部分にのみコンフルエントの状態で接着していた。
【0099】
3.電圧印加
以下、96ウェルプレート(縦8×横12ウェル)の各ウェルの位置を(縦の位置,横の位置)で示す。縦方向には、上からA,B,C,D,E,F,G,Hと文字で表し、横方向には、左から順番に1から12番まで番号をつけて表す。例えば、縦方向の上から2番目で横方向の左から11番目のウェルの位置を(B,11)と表す。
【0100】
電圧印加端子をウェル(A,12)の近傍に接続し、対向電極をウェルA(E,2)及びウェルB(D,11)に差し入れた状態で2Vを2分間かけた。ウェルA及びウェルBの両方において細胞遊走が観測された。これは、ウェルA及びウェルBで均一に電圧がかかったため、細胞にダメージに与えるような高い電圧を加えることなく、均一にPEGを脱離できたためと考えられる。
【0101】
比較例
補助電極は設けずに、実施例と同様に細胞培養用容器を作製した。ウェルA及びウェルBに対向電極を差し入れた状態で2.4Vを2分間かけた。ウェルAでは細胞遊走が観測されたが、ウェルBでは細胞遊走が観測されなかった。これは、ウェルA及びウェルBで電圧のかかり方が不均一であったため、より電圧が高いウェルB内で細胞にダメージを与えてしまい、細胞が遊走しなかったと考えられる。
【符号の説明】
【0102】
10,20,40,50,70,80,90 細胞試験用容器
30,60 細胞試験用基板
11,21,31,41,51,61,71,81 主電極(ITO電極)
22,32,42,52,62,72,82 補助電極
13,43,73,83,93 対向電極
14,24,34,44,54,74 側壁部材
15,25,45,85 凹部
16,26,46,76,95,96 細胞接着性領域
17,27,47,77,97 細胞接着阻害性領域(親水性膜)
38,48,58,78,88 基材(ガラス板)
39 電圧印加端子
49,99 細胞
29,59 細胞試験用基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に配置された電極と
を備える細胞試験用基板であって、
前記電極は、主電極と、前記主電極に導電可能に接続された補助電極とを含み、
前記主電極上には、細胞接着性領域と、前記細胞接着性領域に隣接する細胞接着阻害性領域とが配置されている
ことを特徴とする前記細胞試験用基板。
【請求項2】
補助電極の抵抗が主電極の抵抗よりも小さい、請求項1に記載の細胞試験用基板。
【請求項3】
主電極が透明電極である、請求項1又は2に記載の細胞試験用基板。
【請求項4】
基材上に配置された対向電極を更に備え、前記対向電極が前記電極と電気的に絶縁されて配置されている、請求項1〜3のいずれかに記載の細胞試験用基板。
【請求項5】
補助電極と対向電極とが同一の物質である、請求項4に記載の細胞試験用基板。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の細胞試験用基板と、
前記細胞試験用基板上の1又は複数の部分領域を底面とし上方に開放された1又は複数の凹部の側壁を形成する側壁部材と
を備える細胞試験用容器であって、
前記凹部の底面を構成する部分領域は、主電極上に配置された細胞接着性領域と、前記細胞接着性領域に隣接する細胞接着阻害性領域とを含む前記細胞試験用容器。
【請求項7】
細胞試験用基板と側壁部材とが接触する位置に補助電極が配置されており、前記補助電極が接着材料を含み、前記細胞試験用基板と前記側壁部材とが前記補助電極を介して接合されている、請求項6に記載の細胞試験用容器。
【請求項8】
請求項4又は5に記載の細胞試験用基板と、
前記細胞試験用基板上の1又は複数の部分領域を底面とし上方に開放された1又は複数の凹部の側壁を形成する側壁部材と
を備える細胞試験用容器であって、
前記凹部の底面を構成する部分領域は、主電極上に配置された細胞接着性領域と、前記細胞接着性領域に隣接する細胞接着阻害性領域と、対向電極と含む前記細胞試験用容器。
【請求項9】
補助電極が、凹部の底面を構成する部分領域の周縁の外に配置されている、請求項6又は8に記載の細胞試験用容器。
【請求項10】
側壁部材が、厚さ方向に延びる複数の貫通孔が形成された板状体である、請求項6〜9のいずれかに記載の細胞試験用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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