説明

補強された膜電極組立体の製造方法および補強された膜電極組立体

【課題】固体高分子形燃料電池におけるシールの信頼性、機械的強度および取扱性を向上させる膜電極組立体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明による膜電極組立体の製造方法は、アノード側とカソード側とでガス拡散層の大きさが異なる膜電極接合体を用意し、該膜電極接合体の外周縁に型成形により樹脂枠を設けるに際し、該型成形に用いられる上部型および下部型のそれぞれに突起部または凹部および凸部を設け、当該樹脂枠材料のガス拡散層および/または電極層への侵入を最小限に抑制し、かつ、大きなガス拡散層等の外周縁部の反り変形を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子形燃料電池のための補強された膜電極組立体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高効率のエネルギー変換装置として、燃料電池が注目を集めている。燃料電池は、用いる電解質の種類により、アルカリ形、固体高分子形、リン酸形等の低温作動燃料電池と、溶融炭酸塩形、固体酸化物形等の高温作動燃料電池とに大別される。これらのうち、電解質としてイオン伝導性を有する高分子電解質膜を用いる固体高分子形燃料電池(PEFC)は、コンパクトな構造で高出力密度が得られ、しかも液体を電解質に用いないこと、低温で運転することが可能なこと等により簡易なシステムで実現できるため、定置用、車両用、携帯用等の電源として注目されている。
【0003】
固体高分子形燃料電池は、高分子電解質膜の片面を燃料ガス(水素等)に、その反対面を酸化剤ガス(空気等)に暴露し、高分子電解質膜を介した化学反応により水を合成し、これによって生じる反応エネルギーを電気的に取り出すことを基本原理としている。高分子電解質膜の両面に多孔質触媒電極を配置し、これを熱プレス等で一体形成したものを一般に膜電極接合体(MEA)と呼ぶ。MEAは独立して取り扱うことができ、MEAとセパレータとの間にパッキンを配置して、反応ガスの外部漏洩を防止している。高分子電解質膜は、イオン伝導性を有するが、通気性および電子伝導性がないことにより、燃料極と酸素極とを物理的かつ電子的に隔絶する働きをもつ。高分子電解質膜の大きさが多孔質触媒電極より小さい場合には、MEAの内側で、多孔質触媒電極同士が電気的に短絡し、また酸化剤ガスと燃料ガスとが混合(クロスリーク)するため、電池としての機能を失うことになる。さらにメタノール等の液体燃料を直接供給するタイプの燃料電池の場合には、液体燃料が燃料極側から酸素極側へ漏出することにより、電池としての機能が損なわれる。このため、高分子電解質膜の面積は、多孔質触媒電極の面積と同等またはそれ以上にする必要がある。そこで通常は、高分子電解質膜を多孔質触媒電極の周縁部を越えて延在させ、それをパッキンとセパレータとで挟持することによりガスシールおよび支持構造を構成している。
【0004】
ところで、高分子電解質膜は極めて薄いフィルム状の素材であるためその取扱いが難しく、電極との接合時、複数の単電池を積層してスタックとして組み合わせる組立作業時等の際に、反応ガスのシーリングにとって重要なその周縁部に、しわが発生してしまうことがしばしば生じる。このようなしわが発生した状態の高分子電解質膜を用いて組み立てられた単電池、あるいはスタックでは、しわが発生した部位から反応ガスが漏洩する可能性が高い。また、しわ等が全くない状態であっても、高分子電解質膜は、スタックを構成する全構成部材の中で最も機械的強度の低い部材であるため、損傷を受けやすい。したがって、固体高分子形燃料電池の信頼性、保守性等の向上を図るためには、高分子電解質膜部位を補強することが望まれる。さらに、上述したように高分子電解質膜の周縁部での電気的短絡を防止するため、従来、高分子電解質膜が電極層の端部を越えて横に延在するように電極層より面積が大きな電解質膜を組み込んだMEAが製造されている。しかしながら、電解質膜と電極層の大きさが異なるMEAを製作する場合、これらを別々に切り出して位置合わせをする必要があるため、工程数の増大により生産性の低下を招くことになる。
【0005】
ガス拡散電極と同サイズの、またはガス拡散電極より大きな、高分子電解質膜を有するMEAの周縁部に熱可塑性ポリマーを射出成形や圧縮成形等の手段で適用することにより、該熱可塑性ポリマーが、ガス拡散支持体のシーリング端部の内部に含浸され、かつ、ガス拡散支持体の双方の周囲領域と高分子電解質膜とを包み込み、よって熱可塑性ポリマーの流体不浸透性シールを有する一体化された膜電極組立体を形成する方法が知られている(特許文献1)。
【0006】
また、高分子電解質膜を有効に補強し、燃料電池構造体の取扱作業性を大幅に向上させるため、高分子電解質膜の両面に固定される多孔質体の外周縁部に枠部材を圧入し、多孔質体と枠部材とを強固かつ確実に一体化する方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2005−516350号公報
【特許文献2】特開平10−199551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の方法において、ガス拡散電極より大きな高分子電解質膜を有するMEAの周縁部に熱可塑性ポリマーを射出成形で適用すると、ガス拡散電極の周縁部を越えて延在する電解質膜が、射出成形時の樹脂流れによって移動して表面に露出し、或いはガス拡散電極のエッジ部分の電解質膜部分に負荷がかかって破損が生じる等に起因して、ガスが漏洩するおそれがある。また、成形樹脂の成形圧、浸透圧によっては、樹脂がガス拡散電極内に過度に侵入する。ガス拡散電極内に過度に侵入した樹脂は、当該MEAが燃料電池セルに組み込まれた際に、MEAの電解質膜を圧迫し、或いはセルの締結圧を分散させる結果、MEAを損傷し、その性能を低下させるおそれがある。一方、ガス拡散電極の周辺部分は、型内の空間が非常に狭いため、成形樹脂がガス拡散電極の一部に到達することがなく、シール部分の形状が精密に成形できない場合もある。
【0009】
また、特許文献1に記載の方法において、ガス拡散電極と同サイズの高分子電解質膜を有するMEAの周縁部に熱可塑性ポリマーを射出成形で適用する場合であって、アノード側とカソード側とでガス拡散電極の大きさが異なる場合には、大側ガス拡散電極に接合している高分子電解質膜が、成形樹脂の流れによってガス拡散電極から剥離することもある。さらに、大側ガス拡散電極に接合している高分子電解質膜の上部の型空間が狭いため、樹脂の充填不良が発生しやすい。
【0010】
特許文献2に記載の方法においては、多孔質体の外周縁部に枠部材を十分に圧入させ強固に一体化させることが難しく、枠部材とMEAとの境界面を確実にシールすることが極めて困難であるため、接合部からのガス漏洩、セルの破壊等の問題が起こり得る。
【0011】
したがって、本発明の目的は、MEAに補強用の樹脂枠を設けるに際し、ガス拡散層および/または電極層への成形樹脂の侵入を制御することにある。特に、アノード側とカソード側とでガス拡散層の大きさが異なるMEAに補強用の樹脂枠を設けるに際し、樹脂流れによるMEA大側の周縁部の反り変形(メクレ)を防止し、また、高分子電解質膜のガス拡散層および/または電極層からの剥離を防止しつつ、MEAと樹脂枠の厚さ中心を一致させることにある。全体として、本発明は、固体高分子形燃料電池におけるシールの信頼性、機械的強度および取扱性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によると、
(1)高分子電解質膜と、該電解質膜の一方の面側に設けられた第1の電極層と、該第1の電極層の該電解質膜とは反対側に設けられた第1のガス拡散層と、該電解質膜の他方の面側に設けられた第2の電極層と、該第2の電極層の該電解質膜とは反対側に設けられた第2のガス拡散層とを含む膜電極接合体であって、該第1のガス拡散層および該第1の電極層が、該第1のガス拡散層の外周縁全体が該電解質膜の外周縁の範囲内に収まると共に該第1の電極層の外周縁全周に亘って該第1の電極層の外周縁と該電解質膜の外周縁との間に該電解質膜の表面領域が残るように該電解質膜の表面上に配置されており、かつ、該第2のガス拡散層が、該電解質膜の外周縁全周に亘って該表面領域とは反対側の少なくとも一部にまで延在している膜電極接合体を用意し、そして
該膜電極接合体に対して、型成形により、該電解質膜の外周縁の全部ならびに該第1および第2のガス拡散層の外周縁の少なくとも該第1および第2の電極層の近傍を包囲し、かつ、該表面領域の少なくとも一部に固着するように樹脂枠を設けるに際し、
該型成形に用いられる上部型および下部型のそれぞれに突起部を設け、該突起部が、該第1および第2のガス拡散層のそれぞれを少なくとも部分的に圧縮し、かつ、該第1のガス拡散層の当該圧縮部分が該第2のガス拡散層の当該圧縮部分より該膜電極組立体の中心部からみて遠位となるように配置されていることにより、当該樹脂枠材料の該第1のガス拡散層および/または該第1の電極層への侵入が最小限に抑制され、かつ、該電解質膜、該第2の電極層および該第2のガス拡散層の外周縁部の反り変形が防止されることを特徴とする
固体高分子形燃料電池用の補強された膜電極組立体の製造方法が提供される。
【0013】
また本発明によると、
(2)該突起部が、該第1のガス拡散層の外周縁近傍を圧縮するように配置されている、(1)に記載の方法が提供される。
【0014】
また本発明によると、
(3)該突起部が、額縁状に、連続的または断続的に配置されている、(1)または(2)に記載の方法が提供される。
【0015】
また本発明によると、
(4)高分子電解質膜と、該電解質膜の一方の面側に設けられた第1の電極層と、該第1の電極層の該電解質膜とは反対側に設けられた第1のガス拡散層と、該電解質膜の他方の面側に設けられた第2の電極層と、該第2の電極層の該電解質膜とは反対側に設けられた第2のガス拡散層とを含む膜電極接合体であって、該第1のガス拡散層および該第1の電極層が、該第1のガス拡散層の外周縁全体が該電解質膜の外周縁の範囲内に収まると共に該第1の電極層の外周縁全周に亘って該第1の電極層の外周縁と該電解質膜の外周縁との間に該電解質膜の表面領域が残るように該電解質膜の表面上に配置されており、かつ、該第2のガス拡散層が、該電解質膜の外周縁全周に亘って該表面領域とは反対側の少なくとも一部にまで延在している膜電極接合体を用意し、そして
該膜電極接合体に対して、型成形により、該電解質膜の外周縁の全部ならびに該第1および第2のガス拡散層の外周縁の少なくとも該第1および第2の電極層の近傍を包囲し、かつ、該表面領域の少なくとも一部に固着するように樹脂枠を設けるに際し、
該型成形に用いられる上部型および下部型に、該膜電極接合体の一部または全部が湾曲して該電解質膜の該表面領域が斜面を形成するようにそれぞれ凹部および凸部を設けたことにより、当該樹脂枠材料の流動先端部が該表面領域に当たることを特徴とする
固体高分子形燃料電池用の補強された膜電極組立体の製造方法が提供される。
【0016】
また本発明によると、
(5)高分子電解質膜と、該電解質膜の一方の面側に設けられた第1の電極層と、該第1の電極層の該電解質膜とは反対側に設けられた第1のガス拡散層と、該電解質膜の他方の面側に設けられた第2の電極層と、該第2の電極層の該電解質膜とは反対側に設けられた第2のガス拡散層とを含む膜電極接合体であって、該第1のガス拡散層および該第1の電極層が、該第1のガス拡散層の外周縁全体が該電解質膜の外周縁の範囲内に収まると共に該第1の電極層の外周縁全周に亘って該第1の電極層の外周縁と該電解質膜の外周縁との間に該電解質膜の表面領域が残るように該電解質膜の表面上に配置されており、かつ、該第2のガス拡散層が、該電解質膜の外周縁全周に亘って該表面領域とは反対側の少なくとも一部にまで延在している膜電極接合体を用意し、そして
該膜電極接合体に対して、型成形により、該電解質膜の外周縁の全部ならびに該第1および第2のガス拡散層の外周縁の少なくとも該第1および第2の電極層の近傍を包囲し、かつ、該表面領域の少なくとも一部に固着するように樹脂枠を設けるに際し、
該型成形に用いられる上部型および下部型のうち該第2のガス拡散層に近い型の、該第2のガス拡散層の外周縁部の外側に突起部を配置したことにより、当該樹脂枠材料の流動先端部が該電解質膜と該第2の電極層との界面に当たらないことを特徴とする
固体高分子形燃料電池用の補強された膜電極組立体の製造方法が提供される。
【0017】
また本発明によると、
(6)該突起部がテーパー形状を有することにより、該型成形時の該流動先端部の進路変更が促進される、(5)に記載の方法が提供される。
【0018】
また本発明によると、
(7)該突起部が、額縁状に、連続的または断続的に配置されている、(5)または(6)に記載の方法が提供される。
【0019】
また本発明によると、
(8)(1)〜(7)のいずれか1項に記載の方法により製造された、固体高分子形燃料電池用の補強された膜電極組立体が提供される。
【0020】
また本発明によると、
(9)該膜電極接合体の厚さ中心と該樹脂枠の厚さ中心とが実質的に一致している、(7)に記載の固体高分子形燃料電池用の補強された膜電極組立体が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、MEAに補強用の樹脂枠を設けるに際し、ガス拡散層および/または電極層への成形樹脂の過度の侵入が防止される。特に、本発明によると、アノード側とカソード側とでガス拡散層の大きさが異なるMEAに補強用の樹脂枠を設けるに際し、樹脂流れによるMEA大側の周縁部の反り変形(メクレ)が防止され、また、高分子電解質膜のガス拡散層および/または電極層からの剥離が防止されつつ、得られる補強された膜電極組立体においてMEAと樹脂枠の厚さ中心が一致する。したがって、本発明によると、固体高分子形燃料電池におけるシールの信頼性、機械的強度および取扱性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による方法において膜電極接合体を型にセットした状態を示す部分横断面図である。
【図2】本発明の別態様による方法において膜電極接合体を型にセットした状態を示す部分横断面図である。
【図3】本発明の別態様による方法において膜電極接合体を型にセットした状態を示す部分横断面図である。
【図4】図3に示した方法において得られた膜電極組立体を示す部分横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。なお、各図面は、発明を理解しやすいように模式的に描かれたものであり、図示した各部材の大きさの相対的な関係(比率)は、実施態様における実際の大きさの関係を正確に表示したものではないことに留意されたい。
【0024】
本発明は、MEAに補強用の樹脂枠を設けるに際し、ガス拡散層および/または電極層への成形樹脂の侵入を制御する方法として、高分子電解質膜と、該電解質膜の一方の面側に設けられた第1の電極層と、該第1の電極層の該電解質膜とは反対側に設けられた第1のガス拡散層と、該電解質膜の他方の面側に設けられた第2の電極層と、該第2の電極層の該電解質膜とは反対側に設けられた第2のガス拡散層とを含む膜電極接合体であって、該第1のガス拡散層および該第1の電極層が、該第1のガス拡散層の外周縁全体が該電解質膜の外周縁の範囲内に収まると共に該第1の電極層の外周縁全周に亘って該第1の電極層の外周縁と該電解質膜の外周縁との間に該電解質膜の表面領域が残るように該電解質膜の表面上に配置されており、かつ、該第2のガス拡散層が、該電解質膜の外周縁全周に亘って該表面領域とは反対側の少なくとも一部にまで延在している膜電極接合体を用意し、そして該膜電極接合体に対して、型成形により、該電解質膜の外周縁の全部ならびに該第1および第2のガス拡散層の外周縁の少なくとも該第1および第2の電極層の近傍を包囲し、かつ、該表面領域の少なくとも一部に固着するように樹脂枠を設けるに際し、該型成形に用いられる上部型および下部型のそれぞれに突起部を設け、該突起部が、該第1および第2のガス拡散層のそれぞれを少なくとも部分的に圧縮し、かつ、該第1のガス拡散層の当該圧縮部分が該第2のガス拡散層の当該圧縮部分より該膜電極組立体の中心部からみて遠位となるように配置されていることにより、当該樹脂枠材料の該第1のガス拡散層および/または該第1の電極層への侵入が最小限に抑制され、かつ、該電解質膜、該第2の電極層および該第2のガス拡散層の外周縁部の反り変形が防止されることを特徴とする、固体高分子形燃料電池用の補強された膜電極組立体の製造方法を提供する。
【0025】
本発明による、樹脂枠材料のガス拡散層および/または電極層への侵入を抑制または防止する手段の一つを、図1に示す。図1は、膜電極接合体10を型にセットした状態を示す部分横断面図である。図1には、膜電極接合体10の一部である高分子電解質膜130と、第1の電極層120と、第1のガス拡散層110と、該電解質膜の他方の面側に設けられた第2の電極層140と、第2のガス拡散層150が示され、さらに型成形のための上部型100および下部型160が示されている。上部型100には突起部170が設けられている。型成形に際しては、矢印Pが示す方向からの加圧により、ガス拡散層110の突起部170が当たる部分が少なくとも部分的に圧縮される。したがって、破線矢印Iが示す樹脂枠材料の流れに起因する、主としてガス拡散層110および/または電極層120の内部への樹脂枠材料の侵入が抑制または防止される。一方、下部型160には突起部180が設けられている。型成形に際しては、矢印Pが示す方向からの加圧により、ガス拡散層150の突起部180が当たる部分が少なくとも部分的に圧縮される。したがって、破線矢印Iが示す樹脂枠材料の流れに起因する、主としてガス拡散層150および/または電極層140の内部への樹脂枠材料の侵入が抑制または防止される。
【0026】
本発明によると、電解質膜130、第2の電極層140および第2のガス拡散層150の外周縁部が、矢印Pが示す方向からの加圧により上方に反り返ること(反り変形)がないように、ガス拡散層110の圧縮部分がガス拡散層150の圧縮部分より膜電極組立体10の中心部からみて遠位(図1において左方)となるように、突起部170、180が配置される。樹脂枠をMEAに強固に一体化するためには、ガス拡散層および/または電極層の外周縁部に樹脂枠材料を一定程度侵入させてアンカー効果を発揮させる必要がある。一方、ガス拡散層および/または電極層の樹脂枠材料が侵入した部分はガス拡散機能が損なわれるため、固体高分子形燃料電池の有効反応領域を縮小させない観点から、樹脂枠材料の侵入領域を極力小さくすることが要請される。したがって、アノード側とカソード側とでガス拡散層の大きさが異なるMEAの場合、小さいガス拡散層(図1中第1のガス拡散層110)の外周縁近傍を圧縮するように、突起部170を配置することが望まれる。ここで、小さいガス拡散層の外周縁近傍とは、個別具体的な材料の特性および形状にも依存するが、概ねその端部から約5mm内方までの範囲をさす。しかしながら、本発明者らは、第1のガス拡散層110の外周縁近傍に突起部170を配置するだけでは、矢印Pが示す方向からの加圧で突起部170により圧縮された部分の歪みが緩和される作用により、大きいガス拡散層(図1中第2のガス拡散層150)等の外周縁部が上方に反り返ることを観測した。大きいガス拡散層等の外周縁部が上方に反り返った状態で型成形された成形品(樹脂枠で補強された膜電極組立体)は、ガスリーク、電気的短絡等を引き起こすおそれがある。本発明者らは、第1のガス拡散層110の圧縮部分が第2のガス拡散層150の圧縮部分より膜電極組立体の中心部からみて遠位となるように下部型160に突起部180を設けることにより、第2のガス拡散層150等の外周縁部の反り変形が防止されることを見出した。特定の理論に拘束されるものではないが、突起部170により圧縮された部分の歪みが緩和される作用が、突起部170よりやや内方に配置された突起部180により圧縮された部分の歪みが緩和される作用により打ち消される結果、第2のガス拡散層150等の外周縁部の反り変形が防止されると考えられる。
【0027】
このような反り変形が防止される突起部180の配置条件としては、個別具体的な材料の特性および形状にも依存するが、突起部170の頂部に対応する下部型位置から内方へ約3mm以内、好ましくは0.5〜2mmの範囲内とすればよい。また、突起部の形状としては、図1に示したような断面が半円状のものの他、三角形、四角形、台形等であってもよい。突起部の高さは、MEAの厚さの5〜85%、好ましくは10〜30%の範囲内とすればよい。また、突起部の幅は、MEAの厚さの50〜1500%、好ましくは125〜1000%の範囲内とすればよい。突起部は、型に対して額縁状に、連続的または断続的に配置することができる。突起部を断続的に配置する場合には、上部型と下部型とで配置場所を対応させることが好ましい。一例として、ガス拡散層にカーボンペーパーを用いた厚さ400μmのMEAの場合、高さ80μm、幅1mmの半円状断面を有する上部突起部を、上部型の、小さい拡散層の外周縁端部から1mm内方に対応する位置に配置し、かつ、高さ80μm、幅1mmの半円状断面を有する下部突起部を、下部型の、上部突起部の頂部から1mm内方に対応する位置に配置する態様が挙げられる。
【0028】
本発明による、樹脂枠材料のガス拡散層および/または電極層への侵入を抑制または防止する別の手段を、図2に示す。図2は、膜電極接合体20を型にセットした状態を示す部分横断面図である。図2には、膜電極接合体20の一部である高分子電解質膜230と、第1の電極層220と、第1のガス拡散層210と、該電解質膜の他方の面側に設けられた第2の電極層240と、第2のガス拡散層250が示され、さらに型成形のための上部型200および下部型260が示されている。上部型200と下部型260には、膜電極接合体20が第1のガス拡散層210のほぼ中央部を頂点として全体的に湾曲するように、それぞれ凹部とそれに対応する凸部とが設けられている。型成形に際しては、図示したように、樹脂枠材料の流動先端部(破線矢印I)が高分子電解質膜230の表面領域(斜面)に当たる。したがって、型成形に際して、樹脂流れによる高分子電解質膜230のガス拡散層250および/または電極層240からの剥離が防止されると共に、第2のガス拡散層250等の外周縁部の反り変形(メクレ)も防止される。さらに、樹脂枠材料の流動先端部(破線矢印I)が最初に高分子電解質膜230の表面領域(斜面)に当たることにより、ガス拡散層210および/または電極層220に当たる際の樹脂枠材料の流動速度、すなわち押圧が低下するので、ガス拡散層210および/または電極層220の内部への樹脂枠材料の侵入も抑制または防止される。なお、図2に示した態様では、膜電極接合体20が全体にわたって湾曲しているが、樹脂枠材料の流動先端部が当たる高分子電解質膜230の表面領域(斜面)が形成される限り、膜電極接合体20の一部、例えば周縁部のみが湾曲するように、上部型200と下部型260にそれぞれ凹部と凸部を設けてもよい。
【0029】
上部型200と下部型260に設ける凹凸部は、膜電極接合体20の大きさにもよるが、概ね凸部の高さHが、対応する膜電極接合体部分の厚さTの5〜50%の範囲内となるようにすることで、上述の効果を得ることができる。また、型成形後、成形樹脂枠の収縮応力と膜電極接合体の反発力とが打ち消しあうことにより、補強された膜電極組立体の全体としての変形(反り、歪み)が防止される。なお、図2では膜電極接合体20に成形樹脂枠が水平面に対してほぼ平行に取り付けられているが、樹脂枠の取付け角度に特に制限はなく、用途に応じて所望の角度を設定することができる。
【0030】
さらに本発明は、MEAに補強用の樹脂枠を設けるに際し、ガス拡散層および/または電極層への成形樹脂の侵入を制御する別の方法として、高分子電解質膜と、該電解質膜の一方の面側に設けられた第1の電極層と、該第1の電極層の該電解質膜とは反対側に設けられた第1のガス拡散層と、該電解質膜の他方の面側に設けられた第2の電極層と、該第2の電極層の該電解質膜とは反対側に設けられた第2のガス拡散層とを含む膜電極接合体であって、該第1のガス拡散層および該第1の電極層が、該第1のガス拡散層の外周縁全体が該電解質膜の外周縁の範囲内に収まると共に該第1の電極層の外周縁全周に亘って該第1の電極層の外周縁と該電解質膜の外周縁との間に該電解質膜の表面領域が残るように該電解質膜の表面上に配置されており、かつ、該第2のガス拡散層が、該電解質膜の外周縁全周に亘って該表面領域とは反対側の少なくとも一部にまで延在している膜電極接合体を用意し、そして該膜電極接合体に対して、型成形により、該電解質膜の外周縁の全部ならびに該第1および第2のガス拡散層の外周縁の少なくとも該第1および第2の電極層の近傍を包囲し、かつ、該表面領域の少なくとも一部に固着するように樹脂枠を設けるに際し、該型成形に用いられる上部型および下部型のうち該第2のガス拡散層に近い型の、該第2のガス拡散層の外周縁部の外側に突起部を配置したことにより、当該樹脂枠材料の流動先端部が該電解質膜と該第2の電極層との界面に当たらないことを特徴とする固体高分子形燃料電池用の補強された膜電極組立体の製造方法を提供する。この方法によると、高分子電解質膜のガス拡散層および/または電極層からの剥離を防止しつつ、膜電極接合体と樹脂枠の厚さ中心を一致させることができる。
【0031】
本発明による、樹脂枠材料の流動先端部が高分子電解質膜と第2の電極層との界面に当たらないようにする手段の一つを、図3に示す。図3は、膜電極接合体を型にセットした状態を示す部分横断面図である。図3には、膜電極接合体30の一部である高分子電解質膜330と、第1の電極層320と、第1のガス拡散層310と、該電解質膜の他方の面側に設けられた第2の電極層340と、第2のガス拡散層350が示され、さらに型成形のための上部型300および下部型360が示されている。下部型360には、第2のガス拡散層350の外周縁部の外側に、突起部370が設けられている。このように下部型370を配置したことにより、樹脂枠材料の流動先端部(破線矢印I)が高分子電解質膜330と第2の電極層340との界面に当たらないようにすることができる。したがって、型成形に際して、樹脂流れによる高分子電解質膜330のガス拡散層350および/または電極層340からの剥離が防止される。
【0032】
図3に示した態様により得られる補強された膜電極組立体の例を、図4に示す。図4は、樹脂枠で補強された膜電極組立体を示す部分横断面図である。図4には、膜電極接合体30の一部である高分子電解質膜330と、第1の電極層320と、第1のガス拡散層310と、該電解質膜の他方の面側に設けられた第2の電極層340と、第2のガス拡散層350と、樹脂枠400が示されている。本発明によると、膜電極接合体30の厚さ中心と樹脂枠400の厚さ中心とが、突起部370に対応する凹部を除き、ほぼ一致する(一点鎖線C)。膜電極接合体30と樹脂枠400の厚さ中心がほぼ一致することにより、樹脂枠で補強された膜電極組立体を更に積層して燃料電池スタックを作製するに際し、膜電極接合体30のアノード部位とカソード部位をほぼ均等に圧縮することが可能となる。
【0033】
このような高分子電解質膜のガス拡散層および/または電極層からの剥離を防止しつつ、膜電極接合体と樹脂枠の厚さ中心を一致させることができる突起部370の配置条件としては、個別具体的な材料の特性および形状にも依存するが、第2のガス拡散層の外周縁端部から外方へ約0mm以上、好ましくは0.05〜0.5mmの間隔を置いて配置することが好ましい。型成形に際し、この間隔により生じる空隙部に樹脂枠材料が流れ込み、MEAと樹脂枠とをより強固に一体化させることができる。また、突起部370の形状に特に制限はないが、図3に示したように断面がテーパー状であると、樹脂枠材料の流れを乱さずにその流動先端(破線矢印I)を円滑に変位させることができるので好ましい。突起部の高さは、MEAの厚さの20〜85%、好ましくは30〜50%の範囲内とすればよい。また、突起部の幅は、好ましくは有効なテーパーを設けるに十分な幅が確保される限りにおいて、最小限に留めておくことが好ましい。突起部は、型に対して額縁状に、連続的または断続的に配置することができる。一例として、ガス拡散層にカーボンペーパーを用いた厚さ400μmのMEAの場合、高さ150μm、幅(基底部)2mmのテーパーを有する突起部を、第2のガス拡散層の外周縁端部から外方へ0.3mmの間隔を置いて配置する態様が挙げられる。
【0034】
本発明による膜電極組立体に用いられる高分子電解質膜は、イオン伝導性が高く、電子絶縁性であり、かつ、ガス不透過性であるものであれば、特に限定はされず、公知の高分子電解質膜であればよい。代表例として、含フッ素高分子を骨格とし、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン基等の基を有するプロトン(H)伝導性の樹脂が挙げられる。高分子電解質膜の厚さは、抵抗に大きな影響を及ぼすため、電子絶縁性およびガス不透過性を損なわない限りにおいてより薄いものが求められ、具体的には、5〜50μm、好ましくは10〜30μmの範囲内に設定される。高分子電解質膜の代表例としては、側鎖にスルホン酸基を有するパーフルオロポリマーであるナフィオン(登録商標)膜(デュポン社製)およびフレミオン(登録商標)膜(旭硝子社製)が挙げられる。また、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜にイオン交換樹脂を含浸させた補強型高分子電解質膜であるGORE−SELECT(登録商標)(ジャパンゴアテックス社製)を好適に用いることもできる。
【0035】
本発明による膜電極組立体に用いられる電極層は、触媒粒子とイオン交換樹脂を含むものであれば特に限定はされず、従来公知のものを使用することができる。触媒は、通常、触媒粒子を担持した導電材からなる。触媒粒子としては、水素の酸化反応あるいは酸素の還元反応に触媒作用を有するものであればよく、白金(Pt)その他の貴金属のほか、鉄、クロム、ニッケル等、およびこれらの合金を用いることができる。導電材としては炭素系粒子、例えばカーボンブラック、活性炭、黒鉛等が好適であり、特に微粉末状粒子が好適に用いられる。代表的には、表面積20m/g以上のカーボンブラック粒子に、貴金属粒子、例えばPt粒子またはPtと他の金属との合金粒子を担持したものがある。特に、アノード用触媒については、Ptは一酸化炭素(CO)の被毒に弱いため、メタノールのようにCOを含む燃料を使用する場合には、Ptとルテニウム(Ru)との合金粒子を用いることが好ましい。電極層中のイオン交換樹脂は、触媒を支持し、電極層を形成するバインダーとなる材料であり、触媒によって生じたイオン等が移動するための通路を形成する役割をもつ。このようなイオン交換樹脂としては、先に高分子電解質膜に関連して説明したものと同様のものを用いることができる。アノード側では水素やメタノール等の燃料ガス、カソード側では酸素や空気等の酸化剤ガスが触媒とできるだけ多く接触することができるように、電極層は多孔性であることが好ましい。また、電極層中に含まれる触媒量は、0.01〜1mg/cm、好ましくは0.1〜0.5mg/cmの範囲内にあることが好適である。電極層の厚さは、一般に1〜20μm、好ましくは5〜15μmの範囲内にあることが好適である。
【0036】
本発明による膜電極組立体に用いられるガス拡散層は、導電性および通気性を有するシート材料である。代表例として、カーボンペーパー、カーボン織布、カーボン不織布、カーボンフェルト等の通気性導電性基材に撥水処理を施したものが挙げられる。また、炭素系粒子とフッ素系樹脂から得られた多孔性シートを用いることもできる。例えば、カーボンブラックを、ポリテトラフルオロエチレンをバインダーとしてシート化して得られた多孔性シートを用いることができる。ガス拡散層の厚さは、一般に50〜500μm、好ましくは100〜200μmの範囲内にあることが好適である。
【0037】
電極層とガス拡散層と高分子電解質膜とを接合することにより膜電極接合体を作製する。接合方法としては、高分子電解質膜を損なうことなく接触抵抗が低い緻密な接合が達成されるものであれば、従来公知のいずれの方法でも採用することができる。接合に際しては、まず電極層とガス拡散層を組み合わせてアノード電極またはカソード電極を形成した後、これらを高分子電解質膜に接合することができる。例えば、適当な溶媒を用いて触媒粒子とイオン交換樹脂を含む電極層形成用コーティング液を調製してガス拡散層用シート材料に塗工することによりアノード電極またはカソード電極を形成し、これらを高分子電解質膜にホットプレスで接合することができる。また、電極層を高分子電解質膜と組み合わせた後に、その電極層側にガス拡散層を組み合わせてもよい。電極層と高分子電解質膜とを組み合わせる際には、スクリーン印刷法、スプレー塗布法、デカール法等、従来公知の方法を採用すればよい。
【0038】
本発明による膜電極組立体に用いられる樹脂枠のための樹脂材料は、燃料電池の使用環境において十分な安定性、具体的には耐熱性、耐酸性、耐加水分解性、耐クリープ性等、を示すことが前提条件となる。また、該樹脂材料は、型成形に適した特性を具備していること、特に成形時の流動性が高いことが好ましい。さらに、該樹脂材料が熱可塑性樹脂である場合には、その成形収縮が小さいことが好ましく、また熱硬化性樹脂である場合には、その硬化収縮が小さいことが好ましい。熱可塑性樹脂の具体例としては、液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリウレタン、ポリオレフィン等のプラスチックまたはエラストマーが挙げられる。熱硬化性樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等のプラスチックまたはエラストマーが挙げられる。
【0039】
本発明による膜電極組立体に用いられる樹脂枠は、型成形により設けられる。型成形には、射出成形、反応射出成形、トランスファー成形、直圧成形、注型成形等が含まれ、当業者であれば、用いる樹脂の性状に応じた成形法を適宜選択することができる。樹脂枠が設けられるMEAは数百μmレベルの薄さであることから、樹脂枠を画定する型をこれに適合するように製作する必要はある。また、強度の低いMEAが型締め時に潰れるのを防ぐため、型に入れ子構造を設けてMEA部分の厚さを調整することが好ましい。さらに、型締め時にMEAがずれないよう型にMEA固定用の吸引機構を設けることが好ましい。特に、射出成形、反応射出成形およびトランスファー成形は、インサートの配置、成型、成型品の取出し等の一連の作業が全自動で可能である点で有用である。
【0040】
上述のようにして得られた膜電極組立体を、従来公知の方法に従い、そのアノード側とカソード側が所定の側にくるようにセパレータ板および冷却部と交互に10〜100セル積層することにより燃料電池スタックを組み立てることができる。
【符号の説明】
【0041】
10、20、30 膜電極接合体
100、200、300 上部型
110、210、310 第1のガス拡散層
120、220、320 第1の電極層
130、230、330 高分子電解質膜
140、240、340 第2の電極層
150、250、350 第2のガス拡散層
160、260、360 下部型
170、180、370 突起部
400 樹脂枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子電解質膜と、該電解質膜の一方の面側に設けられた第1の電極層と、該第1の電極層の該電解質膜とは反対側に設けられた第1のガス拡散層と、該電解質膜の他方の面側に設けられた第2の電極層と、該第2の電極層の該電解質膜とは反対側に設けられた第2のガス拡散層とを含む膜電極接合体であって、該第1のガス拡散層および該第1の電極層が、該第1のガス拡散層の外周縁全体が該電解質膜の外周縁の範囲内に収まると共に該第1の電極層の外周縁全周に亘って該第1の電極層の外周縁と該電解質膜の外周縁との間に該電解質膜の表面領域が残るように該電解質膜の表面上に配置されており、かつ、該第2のガス拡散層が、該電解質膜の外周縁全周に亘って該表面領域とは反対側の少なくとも一部にまで延在している膜電極接合体を用意し、そして
該膜電極接合体に対して、型成形により、該電解質膜の外周縁の全部ならびに該第1および第2のガス拡散層の外周縁の少なくとも該第1および第2の電極層の近傍を包囲し、かつ、該表面領域の少なくとも一部に固着するように樹脂枠を設けるに際し、
該型成形に用いられる上部型および下部型のそれぞれに突起部を設け、該突起部が、該第1および第2のガス拡散層のそれぞれを少なくとも部分的に圧縮し、かつ、該第1のガス拡散層の当該圧縮部分が該第2のガス拡散層の当該圧縮部分より該膜電極組立体の中心部からみて遠位となるように配置されていることにより、当該樹脂枠材料の該第1のガス拡散層および/または該第1の電極層への侵入が最小限に抑制され、かつ、該電解質膜、該第2の電極層および該第2のガス拡散層の外周縁部の反り変形が防止されることを特徴とする
固体高分子形燃料電池用の補強された膜電極組立体の製造方法。
【請求項2】
該突起部が、該第1のガス拡散層の外周縁近傍を圧縮するように配置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該突起部が、額縁状に、連続的または断続的に配置されている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
高分子電解質膜と、該電解質膜の一方の面側に設けられた第1の電極層と、該第1の電極層の該電解質膜とは反対側に設けられた第1のガス拡散層と、該電解質膜の他方の面側に設けられた第2の電極層と、該第2の電極層の該電解質膜とは反対側に設けられた第2のガス拡散層とを含む膜電極接合体であって、該第1のガス拡散層および該第1の電極層が、該第1のガス拡散層の外周縁全体が該電解質膜の外周縁の範囲内に収まると共に該第1の電極層の外周縁全周に亘って該第1の電極層の外周縁と該電解質膜の外周縁との間に該電解質膜の表面領域が残るように該電解質膜の表面上に配置されており、かつ、該第2のガス拡散層が、該電解質膜の外周縁全周に亘って該表面領域とは反対側の少なくとも一部にまで延在している膜電極接合体を用意し、そして
該膜電極接合体に対して、型成形により、該電解質膜の外周縁の全部ならびに該第1および第2のガス拡散層の外周縁の少なくとも該第1および第2の電極層の近傍を包囲し、かつ、該表面領域の少なくとも一部に固着するように樹脂枠を設けるに際し、
該型成形に用いられる上部型および下部型に、該膜電極接合体の一部または全部が湾曲して該電解質膜の該表面領域が斜面を形成するようにそれぞれ凹部および凸部を設けたことにより、当該樹脂枠材料の流動先端部が該表面領域に当たることを特徴とする
固体高分子形燃料電池用の補強された膜電極組立体の製造方法。
【請求項5】
高分子電解質膜と、該電解質膜の一方の面側に設けられた第1の電極層と、該第1の電極層の該電解質膜とは反対側に設けられた第1のガス拡散層と、該電解質膜の他方の面側に設けられた第2の電極層と、該第2の電極層の該電解質膜とは反対側に設けられた第2のガス拡散層とを含む膜電極接合体であって、該第1のガス拡散層および該第1の電極層が、該第1のガス拡散層の外周縁全体が該電解質膜の外周縁の範囲内に収まると共に該第1の電極層の外周縁全周に亘って該第1の電極層の外周縁と該電解質膜の外周縁との間に該電解質膜の表面領域が残るように該電解質膜の表面上に配置されており、かつ、該第2のガス拡散層が、該電解質膜の外周縁全周に亘って該表面領域とは反対側の少なくとも一部にまで延在している膜電極接合体を用意し、そして
該膜電極接合体に対して、型成形により、該電解質膜の外周縁の全部ならびに該第1および第2のガス拡散層の外周縁の少なくとも該第1および第2の電極層の近傍を包囲し、かつ、該表面領域の少なくとも一部に固着するように樹脂枠を設けるに際し、
該型成形に用いられる上部型および下部型のうち該第2のガス拡散層に近い型の、該第2のガス拡散層の外周縁部の外側に突起部を配置したことにより、当該樹脂枠材料の流動先端部が該電解質膜と該第2の電極層との界面に当たらないことを特徴とする
固体高分子形燃料電池用の補強された膜電極組立体の製造方法。
【請求項6】
該突起部がテーパー形状を有することにより、該型成形時の該流動先端部の進路変更が促進される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
該突起部が、額縁状に、連続的または断続的に配置されている、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により製造された、固体高分子形燃料電池用の補強された膜電極組立体。
【請求項9】
該膜電極接合体の厚さ中心と該樹脂枠の厚さ中心とが実質的に一致している、請求項8に記載の固体高分子形燃料電池用の補強された膜電極組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−40290(P2011−40290A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187130(P2009−187130)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(000107387)ジャパンゴアテックス株式会社 (121)
【Fターム(参考)】