説明

補強用パネルおよび補強構造

【課題】施工後の厚さ寸法を抑えることができるとともに施工性を向上させることができる補強用パネルおよび補強構造を提供すること。
【解決手段】屋外側に開口部を有する縦枠材2を備えて壁パネル1が構成され、開口部を介して締め付けられるビス8で固定面部が柱11に固定されることで、縦枠材2を含めた壁パネル1の厚さ寸法を小さくすることができ、施工後の外壁10の厚さ寸法を抑えることができる。さらに、屋外側から柱11間に介装した壁パネル1を屋外側からの固定作業のみによって取り付けることができるので、既存建築物の耐震補強工事における施工性を向上させることができ、屋内側の内装材14を壊す必要がないことから施工コストを低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強用パネルおよび補強構造に関し、詳しくは、枠材および折板から構成されたパネルを躯体に固定することで建築物を補強するための補強用パネル、この補強用パネルを用いて既存建築物を補強する補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄板軽量形鋼からなる枠材と薄板軽量面材からなる折板とをねじ止めして形成される壁パネルを用い、この壁パネルを鋼製の柱および梁に固定することで耐震性を高めた建築構造物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載された壁パネルでは、一対のフランジとウェブとを有した断面コ字形の溝形鋼から枠材が構成され、この枠材の一方のフランジに折板が固定され、枠材のウェブが柱や梁に固定されている。
一方、2枚の金属板の間に不燃無機質板体を挟み込んだ壁パネルを用い、この壁パネルを柱の屋外側側面に固定することで耐火性や断熱性を高めた建物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−235812号公報
【特許文献2】特開2006−9271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の壁パネルを用いた耐力壁では、壁の見込み方向に沿って枠材である溝形鋼のウェブが配置されていたり、柱の屋外側側面に壁パネルが固定されたりするため、耐力壁の壁厚が増大してしまうという問題がある。特に、既存建築物の壁に後からパネルを取り付けて耐震補強を行う場合などにおいて、壁厚が増大することで外装材が納まらなくなったり、補強した壁と屋内外の仕上げや設備等とが干渉したりなど、様々な問題を生じることとなる。さらに、特許文献1に記載の壁パネルの枠材では、一対のフランジのうちの一方に折板が固定され、他方のフランジが折板の反対側に位置するため、他方のフランジが邪魔になって枠材を柱等に固定しにくく、特に耐震補強工事においては施工性の点で不都合を生じることとなる。
【0005】
本発明の目的は、施工後の厚さ寸法を抑えることができるとともに施工性を向上させることができる補強用パネルおよび補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の補強用パネルは、互いに対向する少なくとも一対の枠材と当該一対の枠材に渡って固定される折板とを少なくとも備え、建築物の躯体に固定されて当該建築物を補強するための補強用パネルであって、前記一対の枠材は、前記折板が固定される一方側の側面部と、この側面部に連続して他方側に延び前記躯体に固定される固定面部と、前記側面部に対向する他方側にて開口する開口部と、を少なくとも有した開断面で構成され、前記折板の側から前記躯体間に介装されるとともに、前記固定面部を貫通する固着具によって前記枠材が当該躯体に固定されることを特徴とする。
【0007】
以上の本発明によれば、折板が固定される側面部に対向する他方側に開口部を有する枠材を採用することで、枠材自体の見込み寸法を小さくすることができるとともに、補強用パネルを躯体間に介装して枠材を躯体に固定することで、補強用パネルが躯体の側面から突出しないようにでき、施工後の厚さ寸法を抑えることができる。さらに、躯体間に介装した補強用パネルを躯体に固定する際には、他方側に開口した枠材の開口部を介して固着具を締め付けることができるので、補強用パネルの固定作業の作業性が良好にでき、特に既存建築物に後から補強用パネルを取り付ける耐震補強工事における施工性を向上させることができる。さらに、補強用パネルの他方側だけから固定作業を行うことができるので、既存建築物の壁等に補強用パネルを取り付ける場合において、一方側の仕上げ材等を壊すことなく耐震補強工事を実施することができ、さらに施工性が向上できかつ施工コストを低減させることができる。
【0008】
この際、本発明の補強用パネルでは、前記一対の枠材は、上下方向に延びる一対の縦枠材であって、これら一対の縦枠材の上端間に渡って上枠材が設けられ、一対の縦枠材の下端間に渡って下枠材が設けられ、前記上枠材および下枠材は、前記折板が固定される一方側の側面部と、この側面部に連続して他方側に延びる固定面部とを少なくとも有して構成され、前記一対の躯体と交差して延びる上部躯体および下部躯体に前記固定面部が固定されることが好ましい。
このような構成によれば、縦枠材のみならず上枠材および下枠材においても見込み寸法を抑えつつ、補強用パネルの四辺を躯体に固定することで、固定強度を高めて補強効果を向上させることができる。
【0009】
さらに、本発明の補強用パネルでは、前記上枠材および下枠材の少なくとも一方は、前記固定面部の側面部とは他方側に対向する対向面部を有し、この対向面部に形成された孔に挿通されて締め付けられる固着具によって前記固定面部が前記上部躯体または下部躯体に固定されてもよい。
また、本発明の補強用パネルでは、前記上枠材および下枠材の少なくとも一方は、前記固定面部の側面部とは他方側に対向する対向面部と、この対向面部よりも他方側に前記固定面部を延長するとともに当該対向面部側に折り返して形成される延出面部とを有し、この延出面部を貫通して締め付けられる固着具によって前記上部躯体または下部躯体に固定されてもよい。
これらの構成によれば、上枠材や下枠材において、対向面部に形成した孔に挿通した固着具を締め付けたり、対向面部よりも他方側に延長した延出面部を貫通して固着具を締め付けたりすることで、補強用パネルの他方側だけから固定作業を行うことができ、施工性をより一層向上させることができる。
【0010】
また、本発明の補強用パネルでは、前記躯体は、前記建築物の外壁を構成する外壁躯体であって、前記外壁の屋内側に前記折板が位置し、前記外壁の屋外側に前記枠材が位置した状態で当該枠材が前記外壁躯体に固定されることが好ましい。
このような構成によれば、外壁の屋外側から補強用パネルを取り付けることができるので、内装材や屋内の設備機器等を壊したりすることなく外装材を取り外すだけで補強用パネルの固定作業を実施することができ、施工性の向上および施工コストの低減をさらに促進させることができる。
【0011】
この際、本発明の補強用パネルでは、前記枠材の屋外側に断熱材が取り付けられていることが好ましい。
このような構成によれば、補強用パネルの屋外側に断熱材を取り付けることで、金属製の枠材や折板が外気に曝されて熱橋になるのを防ぎ、屋内の温度変化を抑制することができ、外壁の断熱性を向上させることができる。特に、冬季において、補強用パネルの枠材や折板が冷やされると、その屋内面に結露が発生しやすくなってしまうが、屋外側に断熱材を取り付けることで、補強用パネルの冷却を防いで結露を防止することができる。
【0012】
さらに、本発明の補強用パネルでは、前記折板の屋内側から前記枠材と躯体との間まで連続する気密材が設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、折板の屋内側から枠材と躯体との間まで気密材を連続させることで、気密ラインを連続して形成することができ、外壁の気密性を向上させることができる。さらに、補強用パネルの屋内側に沿って気密ラインが形成されることから、補強用パネルに内気が接するのを防ぐことができ、結露をさらに抑制して補強用パネルの錆び発生を防止することができる。
【0013】
一方、本発明の補強構造は、前記いずれかの補強用パネルを用いて既存建築物を補強する補強構造であって、前記既存建築物の壁の一方側の仕上げ材を取り外すことなく、他方側の仕上げ材を一旦取り外した当該壁の躯体に前記補強用パネルが他方側から固定されたことを特徴とする。
このような構成によれば、壁の一方側の仕上げ材を取り外すことなく、他方側だけから補強用パネルの取付作業を実施できることから、耐震補強工事の施工性を向上させることができるとともに、施工コストを低減させることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のような本発明の補強用パネルおよび補強構造によれば、補強用パネルが躯体の側面から突出しないようにして施工後の厚さ寸法を抑えることができるとともに、補強用パネルの他方側だけから固定作業を行うことができるので、耐震補強工事における施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の補強用パネルを示す斜視図である。
【図2】前記補強用パネルを用いて補強した外壁を示す横断面図である。
【図3】前記外壁を示す縦断面図である。
【図4】前記補強用パネルの固定構造を示す斜視図である。
【図5】前記補強用パネルの固定構造を拡大して示す横断面図である。
【図6】前記補強用パネルの固定構造を拡大して示す縦断面図である。
【図7】前記補強用パネルの取付手順を示す図である。
【図8】前記補強用パネルの変形例を示す断面図である。
【図9】前記補強用パネルの他の変形例を示す断面図である。
【図10】図9の補強用パネルの組立手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3に示すように、本発明の補強用パネルとしての壁パネル1は、薄板軽量形鋼(リップ溝形鋼)からなる一対の枠材としての縦枠材2と、これら一対の縦枠材2の上端間に渡って架設される上枠材3と、縦枠材2の下端間に渡って架設される下枠材4と、上枠材3と下枠材4とに渡って架設される中間枠材5と、これらの縦枠材2、上枠材3、下枠材4および中間枠材5の一方側の面にねじ6で接合される薄板鋼板からなる折板7とを備えて構成されている。このような壁パネル1は、図2および図3に示すように、既存建築物の外壁10に取り付けられて当該建築物を耐震補強するために用いられ、外壁10の躯体としての左右一対の柱11および上下の梁12,13に固定されるようになっている。この外壁10は、柱11および梁12,13の屋内側に固定され石膏ボード等からなる内装材14と、柱11および梁12,13の屋外側に固定されサイディング等からなる外装材15とを備えて構成されている。
【0017】
壁パネル1は、外壁10から外装材15を取り外した状態で、屋外側から左右一対の柱11および上下の梁12,13で囲まれた部分に介装され、一対の縦枠材2が固着具としてのビス8で柱11に固定され、上枠材3が上部躯体である上側の梁12にビス8で固定され、下枠材4が下部躯体である下側の梁13にビス8で固定されることで、取り付けられるようになっている。ここで、固着具としては、もちろん釘でもよい。ここで用いる固定具は斜めに施工することから形鋼に先孔を設けておくと施工性が向上し、かつ施工後の本数チェックにも有効である。また、壁パネル1の屋外側側面には、発泡ウレタンなどから板状に成形された断熱材9が取り付けられている。この際、縦枠材2、上枠材3および下枠材4と断熱材9との接合は接着剤、両面テープ、クリップ等を用いるとよい。この断熱材9は、折板7の屋外側に対向して折板7よりも若干小さな平面寸法を有した主断熱材91と、縦枠材2に沿って設けられて主断熱材91と柱11との隙間を塞ぐ縦断熱材92と、上枠材3に沿って設けられて主断熱材91と梁12との隙間を塞ぐ上断熱材93と、下枠材4に沿って設けられて主断熱材91と梁13との隙間を塞ぐ下断熱材94とに分割されている。
【0018】
縦枠材2は、図4および図5に示すように、折板7が固定される一方側(屋内側)の側面部としてのウェブ21と、このウェブ21の両端部に連続して他方側(屋外側)に延びる一対のフランジ22と、これら一対のフランジ22から折り返す一対のリップ部23とを有するとともに、一対のリップ部23間にて屋外側に開口する開口部24を有した断面略コ字形(C字形)に形成されている。そして、縦枠材2の一対のフランジ22のうち、壁パネル1の外側に位置するフランジ22が固着具としてのビス8によって柱11に固定される固定面部22Aとされている。この固定面部22Aは、図5(A)に示すように、屋内外方向に平行つまりウェブ21に直交して設けられ、柱11の側面に面接触した状態で固定されるものでもよいし、図5(B)に示すように、屋内外方向よりも開口部24側に傾斜して設けられ、柱11の側面との間に楔状のスペーサ11Aを介して固定されるものでもよい。このようなスペーサ11Aを介して固定面部22Aを柱11に固定するようにすれば、柱11間の誤差等を吸収して固定面部22Aを柱11に緊結することができ、がたつきなく壁パネル1が取り付けられるようになっている。
【0019】
上枠材3は、図4および図6(A)に示すように、折板7が固定される屋内側の側面部31と、この側面部31に連続して屋外側に延びて梁12に固定される固定面部32と、この固定面部32から折れ曲がって側面部31の屋外側に対向する対向面部33と、を有して下向きに開口した断面略コ字形に形成されている。また、上枠材3の対向面部33には、ビス8を挿通させる大きさの孔34が所定間隔で形成され、この孔34に挿通させたビス8を締め付けることで固定面部32が梁12に固定されるようになっている。下枠材4は、図4および図6(B)に示すように、折板7が固定される屋内側の側面部41と、この側面部41に連続して屋外側に延びて梁13に固定される固定面部42と、側面部41の屋外側に対向する対向面部43と、固定面部42を対向面部43よりも屋外側に延長するとともに屋内側に折り返して対向面部43に連続する延出面部44と、を有して上向きに開口した断面略F字形に形成されている。この下枠材4は、延出面部44を貫通するビス8によって梁13に固定されるようになっている。
【0020】
中間枠材5は、縦枠材2と同様に屋外側に開口したリップ溝形鋼から構成されている。そして、折板7は、縦枠材2間に渡る横方向に延びて交互に設けられる山部71と谷部72とを有して形成され、谷部72がねじ6で縦枠材2および中間枠材5に接合され、折板7の上下の端縁がそれぞれ上枠材3と下枠材4とにねじ6で接合されている。この折板7の屋内側には、折板7の山部71と内装材14とに挟まれる気密材としての気密シート16が設けられている。この気密シート16の左右の両端部16Aは、縦枠材2と柱11との間に挟まれるとともに屋外側に延びて設けられ、気密シート16の上端部16Bは、上枠材3と梁12との間に挟まれるとともに屋外側に延びて設けられ、気密シート16の下端部16Cは、下枠材4と梁13との間に挟まれるとともに屋外側に延びて設けられている。従って、壁パネル1と外壁10の柱11、梁12,13および内装材14とは気密シート16によって区画され、これらの間に気密ラインが形成されることから、屋内外の気密性が確保されるようになっている。
【0021】
以上の壁パネル1の外壁10に取り付けて建築物を耐震補強する施工手順を図7に基づいて説明する。
先ず、図7(A)に示すように、外壁10の外装材15および中桟17を屋外側に取り外し、柱11や梁12,13を露出させる。この際、内装材14を取り外さず、壁パネル1の取付作業を屋外側からのみ実施する。
次に、断熱材9のうち主断熱材91のみを取り付けた壁パネル1を準備し、図7(B)に示すように、折板7の屋内側に気密シート16を当てがいつつ、屋外側から屋内側に向かって壁パネル1を押し込み、柱11および梁12,13の間に介装し、内装材14と折板7との間、縦枠材2と柱11との間、上枠材3と梁12との間および下枠材4と梁13との間にそれぞれ気密シート16を挟み込んで保持する。
【0022】
外壁10の躯体内部に壁パネル1を介装したら、縦枠材2の開口部24からビス8を固定面部22Aに向かってねじ込み、固定面部22Aに貫通させたビス8を柱11に螺合することで、縦枠材2を柱11に固定する。さらに、上枠材3の孔34からビス8を固定面部32に向かってねじ込み、固定面部32に貫通させたビス8を梁12に螺合することで、上枠材3を梁12に固定し、下枠材4の延出面部44を貫通させたビス8を梁13に螺合することで、下枠材4を梁13に固定する。
このように各枠材2,3,4を柱11や梁12,13に固定して壁パネル1を取り付けたら、図7(C)に示すように、主断熱材91と柱11との隙間に縦断熱材92を取り付け、これと同様に主断熱材91と梁12との隙間に上断熱材93を取り付け、主断熱材91と梁13との隙間に下断熱材94を取り付ける。さらに、柱11および梁12,13の屋外側側面に外装材15を固定することで、耐震補強工事の施工が完了する。
【0023】
以上のような本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
すなわち、屋外側に開口部24を有する縦枠材2を備えて壁パネル1が構成され、開口部24を介して締め付けられるビス8で固定面部22Aが柱11に固定されることで、縦枠材2を含めた壁パネル1の厚さ寸法を小さくすることができ、施工後の外壁10の厚さ寸法を抑えることができる。さらに、屋外側から柱11および梁12,13の躯体間に介装した壁パネル1を屋外側からの固定作業のみによって取り付けることができるので、居住者の生活ペースを乱すことなく、同時に作業者の作業ペースを乱すこともなく作業が実施できる。従って、既存建築物の耐震補強工事における施工性を向上させることができ、屋内側の内装材14を壊す必要がないことから施工コストを低減させることができる。
【0024】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では、既存建築物の耐震補強のために壁パネル1を用いる場合を例示したが、本発明の補強用パネルは、新築の建築物に取り付けられてもよいし、外壁10等の壁以外に、床や屋根等に取り付けられてもよい。
また、前記実施形態では、外壁10に壁パネル1を取り付ける補強構造を説明したが、本発明の補強用パネルは、外壁10に限らず、図8に示すように、建築物内部の間仕切り壁等の内壁1Aとして利用されてもよいし、図9および図10に示すように、建築物の収納部等の開口を塞ぐ戸や襖などに代わる内壁1Bとして利用されてもよい。
【0025】
図8において、内壁1Aは、一対の枠材としての左右の縦枠材2Aと、これらの縦枠材2Aに渡って固定される折板7と、この折板7の側にて縦枠材2Aおよび折板7を覆って固定される一方側の面材である石膏ボード7Aと、折板7の反対側にて縦枠材2Aおよび中間枠材5Aを覆って固定される他方側の面材である石膏ボード9Aとを備えて構成されている。縦枠材2Aは、内壁1Aの厚さ方向に延びるウェブ21と、このウェブ21の両端部に連続する一対のフランジ22と、これら一対のフランジ22から折り返す一対のリップ部23と、一方側のリップ部23から突出する突出片部25とを有して形成されている。突出片部25は、一方側のフランジ22と所定の段差だけ壁厚方向内方に位置して形成されており、この段差部分に位置して突出片部25にねじ6で固定される折板7が縦枠材2Aよりも一方側に突出しないようになっている。石膏ボード7A,9Aは、縦枠材2Aの一方側および他方側のフランジ22にそれぞれビス8Aによって固定されている。このような内壁1Aは、図示しない上枠材および下枠材を建築物内部の梁や天井、床等に固定することで、建築物の補強用パネルとして利用することができ、縦枠材2Aから折板7が突出しないことから、内壁1Aの厚さ寸法を抑制することができる。
【0026】
図9および図10において、内壁1Bは、一対の枠材としての左右の縦枠材2Bと、これらの縦枠材2Bに渡って固定される折板7と、この折板7の一方側を覆って接着固定される一方側の面材である厚紙7Bと、折板7の他方側を覆って接着固定される他方側の面材である厚紙9Bとを備えて構成されている。縦枠材2Bは、内壁1Bの厚さ方向に延びるウェブ21と、このウェブ21の両端部に連続する一対のフランジ22と、一方側のフランジ22から折り返すリップ部23と、他方側のフランジ22から折り返す折返し部26と、この折返し部26からウェブ21側に延びる固定片部27と、を有して断面略G字形に形成されている。縦枠材2Bの一方側のフランジ22には、所定間隔で孔22Bが形成され、図10(A)に示すように、リップ部23と固定片部27との間に折板7を挿入してから、図10(B)に示すように、孔22Bから挿通したねじ6を折板7および固定片部27に締め付けることで、縦枠材2Bと折板7とが固定されるようになっている。さらに、図10(C)に示すように、一方側のフランジ22にシール22Cを貼り付けることで孔22Bを塞げばよい。このような内壁1Bは、図示しない上枠材および下枠材を建築物内部における収納部等の上レール(かもい)や下レール(敷居)等に固定することで、建築物の補強用パネルとして利用することができ、縦枠材2Bから折板7が突出しないことから、内壁1Bの厚さ寸法を抑制することができる。
【0027】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0028】
1…壁パネル(補強用パネル)、2…縦枠材(枠材)、3…上枠材、4…下枠材、7…折板、8…ビス(固着具)、9…断熱材、10…外壁、11…柱(外壁躯体)、12…梁(上部躯体)、13…梁(下部躯体)、14…内装材(仕上げ材)、15…外装材(仕上げ材)、16…気密シート(気密材)、21…ウェブ(側面部)、22A…固定面部、24…開口部、31,41…側面部、32,42…固定面部、33,43…対向面部、34…孔、44…延出面部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する少なくとも一対の枠材と当該一対の枠材に渡って固定される折板とを少なくとも備え、建築物の躯体に固定されて当該建築物を補強するための補強用パネルであって、
前記一対の枠材は、前記折板が固定される一方側の側面部と、この側面部に連続して他方側に延び前記躯体に固定される固定面部と、前記側面部に対向する他方側にて開口する開口部と、を少なくとも有した開断面で構成され、
前記折板の側から前記躯体間に介装されるとともに、前記固定面部を貫通する固着具によって前記枠材が当該躯体に固定されることを特徴とする補強用パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の補強用パネルにおいて、
前記一対の枠材は、上下方向に延びる一対の縦枠材であって、これら一対の縦枠材の上端間に渡って上枠材が設けられ、一対の縦枠材の下端間に渡って下枠材が設けられ、
前記上枠材および下枠材は、前記折板が固定される一方側の側面部と、この側面部に連続して他方側に延びる固定面部とを少なくとも有して構成され、前記一対の躯体と交差して延びる上部躯体および下部躯体に前記固定面部が固定されることを特徴とする補強用パネル。
【請求項3】
請求項2に記載の補強用パネルにおいて、
前記上枠材および下枠材の少なくとも一方は、前記固定面部の側面部とは他方側に対向する対向面部を有し、この対向面部に形成された孔に挿通されて締め付けられる固着具によって前記固定面部が前記上部躯体または下部躯体に固定されることを特徴とする補強用パネル。
【請求項4】
請求項2に記載の補強用パネルにおいて、
前記上枠材および下枠材の少なくとも一方は、前記固定面部の側面部とは他方側に対向する対向面部と、この対向面部よりも他方側に前記固定面部を延長するとともに当該対向面部側に折り返して形成される延出面部とを有し、この延出面部を貫通して締め付けられる固着具によって前記上部躯体または下部躯体に固定されることを特徴とする補強用パネル。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の補強用パネルにおいて、
前記躯体は、前記建築物の外壁を構成する外壁躯体であって、
前記外壁の屋内側に前記折板が位置し、前記外壁の屋外側に前記枠材が位置した状態で当該枠材が前記外壁躯体に固定されることを特徴とする補強用パネル。
【請求項6】
請求項5に記載の補強用パネルにおいて、
前記枠材の屋外側に断熱材が取り付けられていることを特徴とする補強用パネル。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の補強用パネルにおいて、
前記折板の屋内側から前記枠材と躯体との間まで連続する気密材が設けられていることを特徴とする補強用パネル。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の補強用パネルを用いて既存建築物を補強する補強構造であって、
前記既存建築物の壁の一方側の仕上げ材を取り外すことなく、他方側の仕上げ材を一旦取り外した当該壁の躯体に前記補強用パネルが他方側から固定されたことを特徴とする補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−72604(P2012−72604A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218521(P2010−218521)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】