説明

補給管理サーバ及び補給管理サーバの補給管理プログラム及び補給管理サーバの補給管理方法

【課題】物資の備蓄量を高い精度で推定し、推定備蓄量に基づいて補給量を予測する最適予測方式を提供する。
【解決手段】
残存状態算出処理部120は物資の残存状態を伝播させながら時間Δtごとに時刻tn(nは整数)における物資の残存状態を処理装置により計算して残存状態記憶部730に記憶し、補給管理情報受信部110は物資の時刻tm(mはnまたはnのうちの任意の整数)における残量観測値211を含む補給管理情報201を受信し、残存状態算出処理部120は補給管理情報受信部110が補給管理情報201を受信した場合に、補給管理情報201が示す物資の時刻tmにおける残量観測値201を入力して、残量観測値211に基づいて時刻tmにおける物資の残存状態を、観測前の残存状態から観測後の残存状態に処理装置により更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、物資の備蓄量(残存数)を推定することで最適補給量を予測して提供する分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、医療施設及び診療物品業者双方の診療物品の在庫量を管理するために、診療計画に基づいて診療物品の消費数量を予測し、予測した消費数量に基づいて在庫量を予測し、予測した在庫量に基づいて発注量を予測する在庫管理支援装置がある(特許文献1参照)。また、非定常的な需要を有する商品に対して適切な安全在庫を算出するために、需要予測処理を行って需要予測データを得て、誤差等を加味して安全在庫を求め、求めた安全在庫に基づき受発注を行う安全在庫計算装置がある(特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−091187号公報
【特許文献2】特開2004−359514号公報
【特許文献3】特開平7−123589号公報
【特許文献4】特開2007−226717号公報
【特許文献5】特開平5−002403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
宇宙ステーション補給機(H−II Transfer Vehicle=HTV)は、宇宙ステーションに長期滞在している宇宙飛行士の水や食料、衣類等の日用品、各種実験装置などを補給する輸送業務を目的とした無人の軌道間輸送機である。宇宙ステーション補給機における物資の補給のために、宇宙ステーションと基地との間で備蓄量に関する情報伝達が行われるが、宇宙ステーションから基地に伝達される情報には、情報を伝達する際の電波のエラー等による伝達の誤りによる誤差や備蓄量の数量計測の誤りによる誤差等が含まれてしまう。また、このような宇宙ステーション補給機における物資の補給は、店舗や施設における物品の補給と比較すると、補給回数や補給にかかる時間に大きな制約があり、また補給のためのコストも多大なものとなるという制約がある。したがって、宇宙ステーション補給機における物資補給量の予測は、上述したような誤差を吸収し、最適な補給量に近づけることのできる精度の高い予測を行うことが必要である。しかし、従来の在庫管理方法では、宇宙ステーション補給機における物資補給に対応するだけの十分な精度を有する最適予測方式が講じられない状況であるという課題がある。
【0004】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、例えば宇宙ステーション補給機における物資補給の予測に対応できるような、高い精度を有する最適予測方式を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る補給管理サーバは、
複数の対象物を消費するシステムにおける複数の対象物の残存状態に基づき複数の対象物の補給を管理する補給管理サーバにおいて、
複数の対象物の残存状態を伝播させながら時間Δtごとに時刻tn(nは整数)における複数の対象物の残存状態を処理装置により計算して記憶装置に記憶し、記憶装置に記憶された時刻tnにおける複数の対象物の残存状態を処理装置により出力する残存状態算出処理部と
複数の対象物の時刻tm(mはnまたはnのうちの任意の整数)における残量観測値を含む補給管理情報を受信器により受信する補給管理情報受信部と、
を備え、
残存状態算出処理部は、
補給管理情報受信部が補給管理情報を受信した場合に、補給管理情報が示す複数の対象物の時刻tmにおける残量観測値を処理装置により入力して、残量観測値に基づいて時刻tmにおける複数の対象物の残存状態を、観測前の残存状態から観測後の残存状態に処理装置により更新して記憶装置に記憶することを特徴とする。
【0006】
上記補給管理サーバは、さらに、残存状態算出処理部が出力した複数の対象物の残存状態に基づいて、将来の所定時刻における複数の対象物の補給量を処理装置により算出して出力する補給量シミュレート部を備えたことを特徴とする。
【0007】
上記補給管理サーバは、さらに、
複数の対象物の減少程度を示す減少パラメータの値を記憶した減少パラメータ記憶部と、
複数の対象物の残存数を示す状態ベクトルの初期値X0と、複数の対象物の減少関係を示す共分散行列の初期値P0と記憶する初期値記憶部とを備え、
上記残存状態算出処理部は、
減少パラメータ記憶部が記憶した減少パラメータの値を複数の対象物の減少数をもとめる状態方程式に代入して得られるシステム行列Fnに基づいて、残存状態を伝播させる状態伝播部と、
複数の対象物の残量観測値を示す観測方程式に用いられる観測行列Hmに基づいて、時刻tmにおける複数の対象物の残存状態を更新する状態更新部と
を有するカルマンフィルタ
を備えたことを特徴とする。
【0008】
上記カルマンフィルタの状態伝播部は、システム内で生じるシステムノイズwnを伝播させるとともに、
上記カルマンフィルタの状態更新部は、システムから補給管理サーバまでに生じる観測ノイズvnを伝播させる
ことを特徴とする。
【0009】
上記カルマンフィルタの状態伝播部は、
初期値記憶部が記憶した状態ベクトルの初期値X0と、状態方程式を解いて得られるシステム行列Fnとに基づいて、複数の対象物の残存状態を伝播させながら時間Δtごとに状態ベクトルXnを処理装置により求める状態ベクトル伝播計算部と、
共分散行列の初期値P0と、システム行列Fnと、システムノイズwnが含まれたシステムノイズ共分散Qnとに基づいて、複数の対象物のシステムノイズwnを伝播させながら時間Δtごとに共分散行列Pnを処理装置により求める共分散行列伝播計算部と
を備えたことを特徴とする。
【0010】
上記カルマンフィルタの状態更新部は、
状態ベクトルXnと時刻tnにおける残量観測値を示す観測値ベクトルYnとの関係を示す観測行列Hnと、観測前の共分散行列Pn(−)と、観測ノイズvnが含まれた観測ノイズ共分散Rnとに基づいてカルマンゲインKnを処理装置により求めるカルマンゲイン計算部と、
カルマンゲイン計算部が求めたカルマンゲインKnと、観測値ベクトルYnと、観測行列Hnと、観測前の状態ベクトルXn(−)とに基づいて観測後の状態ベクトルXn(+)を処理装置により求める状態ベクトル更新計算部と、
カルマンゲイン計算部が求めたカルマンゲインKnと、観測行列Hnと、観測前の共分散行列Pn(−)とに基づいて観測後の共分散行列Pn(+)を処理装置により求める共分散行列更新計算部と
を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る補給管理サーバの補給管理プログラムは、
複数の対象物を消費するシステムにおける複数の対象物の残存状態に基づき複数の対象物の補給を管理する処理をコンピュータに実行させる補給管理サーバの補給管理プログラムにおいて、
残存状態算出処理部が、複数の対象物の残存状態を伝播させながら時間Δtごとに時刻tn(nは整数)における複数の対象物の残存状態を処理装置により計算して記憶装置に記憶し、記憶装置に記憶された時刻tnにおける複数の対象物の残存状態を処理装置により出力する残存状態算出処理と、
補給管理情報受信部が、複数の対象物の時刻tm(mはnまたはnのうちの任意の整数)における残量観測値を含む補給管理情報を受信器により受信する補給管理情報受信処理とを備え、
残存状態算出処理は、
補給管理情報受信処理において補給管理情報を受信した場合に、補給管理情報が示す複数の対象物の時刻tmにおける残量観測値を処理装置により入力して、残量観測値に基づいて時刻tmにおける複数の対象物の残存状態を、観測前の残存状態から観測後の残存状態に処理装置により更新して記憶装置に記憶することを特徴とする。
【0012】
上記補給管理サーバの補給管理プログラムは、さらに、
補給量シミュレート部が、残存状態算出処理により出力した複数の対象物の残存状態に基づいて、将来の所定時刻における複数の対象物の補給量を処理装置により算出して出力する補給量シミュレート処理
を備えたことを特徴とする。
【0013】
上記補給管理サーバの補給管理プログラムは、さらに、
減少パラメータ記憶部が、複数の対象物の減少程度を示す減少パラメータの値を記憶する減少パラメータ記憶処理と、
初期値記憶部が、複数の対象物の残存数を示す状態ベクトルの初期値X0と、複数の対象物の減少関係を示す共分散行列の初期値P0とを記憶する初期値記憶処理とを備え、
上記残存状態算出処理は、
状態伝播部が、減少パラメータ記憶処理により記憶した減少パラメータの値を複数の対象物の減少数をもとめる状態方程式に代入して得られるシステム行列Fnに基づいて、残存状態を伝播させる状態伝播処理と、
状態更新部が、複数の対象物の残量観測値を示す観測方程式に用いられる観測行列Hmに基づいて、時刻tmにおける複数の対象物の残存状態を更新する状態更新処理と
を有するカルマンフィルタ処理
を備えたことを特徴とする。
【0014】
上記カルマンフィルタ処理の状態伝播処理は、システム内で生じるシステムノイズwnを伝播させるとともに、
上記カルマンフィルタ処理の状態更新処理は、システムから補給管理サーバまでに生じる観測ノイズvnを伝播させる
ことを特徴とする。
【0015】
上記カルマンフィルタ処理の状態伝播処理は、
状態ベクトル伝播計算部が、初期値記憶処理により記憶された状態ベクトルの初期値X0と、状態方程式を解いて得られるシステム行列Fnとに基づいて、複数の対象物の残存状態を伝播させながら時間Δtごとに状態ベクトルXnを処理装置により求める状態ベクトル伝播計算処理と、
共分散行列伝播計算部が、共分散行列の初期値P0と、システム行列Fnと、システムノイズwnが含まれたシステムノイズ共分散Qnとに基づいて、複数の対象物のシステムノイズwnを伝播させながら時間Δtごとに共分散行列Pnを処理装置により求める共分散行列伝播計算処理とを備えたことを特徴とする。
【0016】
上記カルマンフィルタ処理の状態更新処理は、
カルマンゲイン計算部が、状態ベクトルXnと時刻tnにおける残量観測値を示す観測値ベクトルYnとの関係を示す観測行列Hnと、観測前の共分散行列Pn(−)と、観測ノイズvnが含まれた観測ノイズ共分散Rnとに基づいてカルマンゲインKnを処理装置により求めるカルマンゲイン計算処理と、
状態ベクトル更新計算部が、カルマンゲイン計算処理により求められたカルマンゲインKnと、観測値ベクトルYnと、観測行列Hnと、観測前の状態ベクトルXn(−)とに基づいて観測後の状態ベクトルXn(+)を処理装置により求める状態ベクトル更新計算処理と、
共分散行列更新計算部が、カルマンゲイン計算処理により求められたカルマンゲインKnと、観測行列Hnと、観測前の共分散行列Pn(−)とに基づいて観測後の共分散行列Pn(+)を処理装置により求める共分散行列更新計算部とを備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る補給管理サーバの補給管理方法は、
複数の対象物を消費するシステムにおける複数の対象物の残存状態に基づき複数の対象物の補給を管理する補給管理サーバの補給管理方法において、
残存状態算出処理部が、複数の対象物の残存状態を伝播させながら時間Δtごとに時刻tn(nは整数)における複数の対象物の残存状態を処理装置により計算して記憶装置に記憶し、記憶装置に記憶された時刻tnにおける複数の対象物の残存状態を処理装置により出力する残存状態算出処理ステップと、
補給管理情報受信部が、複数の対象物の時刻tm(mはnまたはnのうちの任意の整数)における残量観測値を含む補給管理情報を受信器により受信する補給管理情報受信ステップとを備え、
残存状態算出処理ステップは、
補給管理情報受信ステップにおいて補給管理情報を受信した場合に、補給管理情報が示す複数の対象物の時刻tmにおける残量観測値を処理装置により入力して、残量観測値に基づいて時刻tmにおける複数の対象物の残存状態を、観測前の残存状態から観測後の残存状態に処理装置により更新して記憶装置に記憶することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る補給管理サーバは、
複数の対象物を消費するシステムにおける複数の対象物の残存状態に基づき複数の対象物の補給を管理する補給管理サーバであり、残存状態算出処理部が複数の対象物の残存状態を伝播させながら時間Δtごとに時刻tn(nは整数)における複数の対象物の残存状態を処理装置により計算して記憶装置に記憶し、記憶装置に記憶された時刻tnにおける複数の対象物の残存状態を処理装置により出力し、
補給管理情報受信部が複数の対象物の時刻tm(mはnまたはnのうちの任意の整数)における残量観測値を含む補給管理情報を受信器により受信し、
また、残存状態算出処理部は、補給管理情報受信部が補給管理情報を受信した場合に、補給管理情報が示す複数の対象物の時刻tmにおける残量観測値を処理装置により入力して、残量観測値に基づいて時刻tmにおける複数の対象物の残存状態を、観測前の残存状態から観測後の残存状態に処理装置により更新して記憶装置に記憶する構成であるので、残存状態を伝播させながら残存状態の誤差を補正して更新することができるので、最適な残存状態を得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、以下の実施の形態に係る補給管理サーバ100の外観の一例を示す図である。
【0020】
図1において、補給管理サーバ100は、システムユニット910、CRT(Cathode・Ray・Tube)やLCD(液晶)の表示画面を有する表示装置901、キーボード902(Key・Board:K/B)、マウス903、FDD904(Flexible・Disk・ Drive)、コンパクトディスク装置905(CDD)、プリンタ装置906、スキャナ装置907などのハードウェア資源を備え、これらはケーブルや信号線で接続されている。
【0021】
システムユニット910は、コンピュータであり、ファクシミリ機932、電話器931とケーブルで接続され、また、ローカルエリアネットワーク942(LAN)、ゲートウェイ941を介してインターネット940に接続されている。
【0022】
図2は、以下の実施の形態に係る補給管理サーバ100及びステーション/補給機物資管理装置800のハードウェア資源の一例を示す図である。
【0023】
図2において、補給管理サーバ100及びステーション/補給機物資管理装置800は、プログラムを実行するCPU911(Central・Processing・Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサともいう)を備えている。CPU911は、バス912を介してROM913、RAM914、通信ボード915、表示装置901、キーボード902、マウス903、FDD904、CDD905、プリンタ装置906、スキャナ装置907、磁気ディスク装置920と接続され、これらのハードウェアデバイスを制御する。磁気ディスク装置920の代わりに、光ディスク装置、メモリカード読み書き装置などの記憶装置でもよい。
【0024】
RAM914は、揮発性メモリの一例である。ROM913、FDD904、CDD905、磁気ディスク装置920の記憶媒体は、不揮発性メモリの一例である。これらは、記憶装置あるいは記憶部の一例である。
【0025】
通信ボード915、キーボード902、スキャナ装置907、FDD904などは、入力部、入力装置の一例である。
【0026】
また、通信ボード915、表示装置901、プリンタ装置906などは、出力部、出力装置の一例である。
【0027】
通信ボード915は、ファクシミリ機932、電話器931、LAN942等に接続されている。通信ボード915は、LAN942に限らず、インターネット940、ISDN等のWAN(ワイドエリアネットワーク)などに接続されていても構わない。インターネット940或いはISDN等のWANに接続されている場合、ゲートウェイ941は不用となる。
【0028】
また、通信ボード915は、アンテナ916を備えている。アンテナ916は、受信器・送信器の一例であり、例えば宇宙を介しての電波情報の送受信を行う。
【0029】
磁気ディスク装置920には、オペレーティングシステム921(OS)、ウィンドウシステム922、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。プログラム群923のプログラムは、CPU911、オペレーティングシステム921、ウィンドウシステム922により実行される。
【0030】
上記プログラム群923には、以下に述べる実施の形態の説明において、「〜部」として説明する機能を実行するプログラムが記憶されている。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。
【0031】
ファイル群924には、以下に述べる実施の形態の説明において、「〜の判定結果」、「〜の計算結果」、「〜の処理結果」として説明する情報やデータや信号値や変数値やパラメータが、「〜ファイル」、「〜データベース」、「〜データ」の各項目として記憶されている。「〜ファイル」、「〜データベース」、「〜データ」は、ディスクやメモリなどの記録媒体に記憶される。ディスクやメモリになどの記憶媒体に記憶された情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、読み書き回路を介してCPU911によりメインメモリやキャッシュメモリに読み出され、抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示などのCPUの動作に用いられる。抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示のCPUの動作の間、情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、メインメモリやキャッシュメモリやバッファメモリに一時的に記憶される。
【0032】
また、以下に述べる実施の形態の説明において説明するフローチャートの矢印の部分は主としてデータや信号の入出力を示し、データや信号値は、RAM914のメモリ、FDD904のフレキシブルディスク、CDD905のコンパクトディスク、磁気ディスク装置920の磁気ディスク、その他光ディスク、ミニディスク、DVD(Digital・Versatile・Disk)等の記録媒体に記録される。また、データや信号は、バス912や信号線やケーブルその他の伝送媒体によりオンライン伝送される。
【0033】
また、以下に述べる実施の形態の説明において「〜部」として説明するものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」、「〜手段」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。すなわち、「〜部」として説明するものは、ROM913に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。或いは、ソフトウェアのみ、或いは、素子・デバイス・基板・配線などのハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等の記録媒体に記憶される。プログラムはCPU911により読み出され、CPU911により実行される。すなわち、プログラムは、以下に述べる「〜部」としてコンピュータを機能させるものである。あるいは、以下に述べる「〜部」の手順や方法をコンピュータに実行させるものである。
【0034】
実施の形態1.
本実施の形態では、宇宙飛行士により水・食料・日用品等の物資が消費される宇宙ステーション(システムの一例)において、物資(水・食料・日用品:複数の対象物の一例)の残存状態に基づいて物資の補給を管理する補給管理サーバ100について説明する。補給管理サーバ100は、宇宙ステーションにおける物資の残存量と消費量とをシミュレートすることで最適補給量を予測して、予測した結果情報を提供する。
【0035】
図3は、実施の形態1に係る最適補給量予測システム990の機能ブロック図である。図3を用いて、実施の形態1に係る最適補給量予測システム990の機能ブロックについて説明する。
【0036】
最適補給量予測システム990は、ステーション/補給機物資管理装置800と補給管理サーバ100とを備えている。
【0037】
ステーション/補給機物資管理装置800は、宇宙ステーションの物資の備蓄量や、宇宙ステーションと宇宙ステーションに補給物資を輸送する宇宙ステーション補給機(Vehicle)との間でやりとりされる補給物資を管理する装置である。実施の形態1において、ステーション/補給機物資管理装置800が管理する物資は、水・食料・日用品(複数の対象物の一例)であるものとする。ステーション/補給機物資管理装置800は、宇宙ステーションの物資の管理者により宇宙ステーションの物資(水・食料・日用品)の備蓄量(以下、残存数ともいう)が入力され、入力された物資の備蓄量に基づいて補給管理情報201を生成し、補給管理サーバ100へ送信する。また、ステーション/補給機物資管理装置800は、送信した補給管理情報201に基づいて補給管理サーバ100において算出された予測補給量202を受信する。ステーション/補給機物資管理装置800は、宇宙ステーションに搭載される装置であるが、例えば宇宙ステーション補給機(Vehicle)に搭載されていてもよい。
【0038】
補給管理サーバ100は、ステーション/補給機物資管理装置800から物資の備蓄量203を含む補給管理情報201を受信して、受信した備蓄量203を含む補給管理情報201に基づいて物資の補給を管理する。補給管理サーバ100は、物資の残存数と共分散の状態を示す物資の残存状態を伝播させるとともに、ステーション/補給機物資管理装置800から送信される補給管理情報201に基づいて、物資の残存状態を更新し、物資の残存状態の最適な推定値を算出する。
【0039】
本実施の形態では、時刻tn(tとも表す)の物資(水・食料・日用品)の残存状態を、状態ベクトルXn(Xとも表す)と共分散行列Pn(Pとも表す)との両方により表す。ベクトルとは1次元行列を意味するものとする。また、行列とは2次元以上の行列を意味するものとする。nは、1時間毎または1日毎など、一定時間Δt毎に加算される整数である(n=1,2,3,・・・)。物資(水・食料・日用品)の残存状態を表す状態ベクトルは、水の残存数・食料の残存数・日用品の残存数を元とする3次元ベクトルにより表される。ここで、残存数とは予測された残存数を意味するものとする。物資(水・食料・日用品)の残存状態を表す共分散行列は、水・食料・日用品の誤差の関連状態を表す3×3行列により表される。つまり、共分散行列は、水・食料・日用品のうちの2つの物資間(水と食料、食料と日用品、日用品と水)の誤差の共分散を元として3×3行列により表わしたものである。つまり、共分散行列は、物資(水・食料・日用品)の残存状態の精度を表すものである。
【0040】
ステーション/補給機物資管理装置800は、物資情報入力処理部810、物資管理情報送受信部820、補給管理情報表示処理部830、表示部840を備える。
【0041】
物資情報入力処理部810は、宇宙ステーション(システムの一例)の物資(水・食料・日用品)の備蓄量203を入力する。宇宙ステーションの物資(水・食料・日用品)の備蓄量203は、宇宙ステーションの管理者が計数により、あるいは宇宙ステーションに搭載された物資保管装置等のセンサによる自動計数により割り出される。そして、物資情報入力処理部810は、管理者等の手入力やあるいは宇宙ステーションの物資保管装置等からの自動入力により、宇宙ステーションの物資(水・食料・日用品)の備蓄量203を入力する。物資情報入力処理部810は、入力した宇宙ステーションの物資(水・食料・日用品)の備蓄量203を物資管理情報送受信部820へ出力する。このとき、計数された(割り出された)備蓄量203には、計数誤り(数え間違い)や入力誤り等の誤差(以下、システムノイズ(システム誤差)という)が含まれている可能性がある。
【0042】
物資管理情報送受信部820は、物資情報入力処理部810から備蓄量203を入力する。物資管理情報送受信部820は、入力した物資の備蓄量203を含む情報を補給管理情報201として補給管理サーバ100に送信する。また、物資管理情報送受信部820は、補給管理サーバ100から物資の補給量の予測値である予測補給量202を受信する。
【0043】
補給管理情報表示処理部830は、物資管理情報送受信部820により受信された予測補給量202を入力し、予測補給量202を表示装置等に表示するための情報を生成する。表示部840は、補給管理情報表示処理部830により生成された情報を用いて予測補給量202を表示装置等に表示する。
【0044】
補給管理サーバ100は、補給管理情報送受信部110(補給管理情報受信部の一例)、残存状態算出処理部120、補給量シミュレート部130、出力部140、減少パラメータ記憶部710、初期値記憶部720、残存状態記憶部730を備えている。
【0045】
減少パラメータ記憶部710は、物資(水・食料・日用品)の減少程度を示す減少パラメータの値を記憶する。減少パラメータとは、物資(水・食料・日用品)が単位時間当たりに減少する係数であり、予め設定される値である。減少パラメータは、後述する状態方程式に用いられる。
【0046】
初期値記憶部720は、物資(水・食料・日用品)の残存数を示す状態ベクトルの初期値X0と、物資(水・食料・日用品)の減少関係を示す共分散行列の初期値P0とを記憶する。
【0047】
残存状態記憶部730は、後述する残存状態算出処理部120により算出される物資(水・食料・日用品)の残存状態を記憶する。物資(水・食料・日用品)の残存状態は、上述したように、物資(水・食料・日用品)の残存数を示す状態ベクトルと物資(水・食料・日用品)の減少関係を示す共分散行列との両方により表される。
【0048】
補給管理情報送受信部110(補給管理情報受信部の一例)は、ステーション/補給機物資管理装置800から送信された補給管理情報201を受信する。補給管理情報201は、ステーション/補給機物資管理装置800において入力された備蓄量203を含む情報である。しかし、補給管理情報201が宇宙ステーションから補給管理サーバ100に伝達される際には、電波のエラー等による誤差(補給管理情報201を伝送・保管中に生じるステーション/補給機物資管理装置800や最適補給量予測システム990の処理装置やメモリなどの誤動作、誤報告、誤送受信、ノイズ等を含む)(以下、観測ノイズ(観測誤差)という)が含まれる。すなわち、宇宙を介して伝達された補給管理情報201に含まれる備蓄量203には、宇宙ステーションから補給管理サーバ100に伝達される際の電波のエラー等による誤差(以下、観測ノイズ(観測誤差)という)が含まれる。つまり、補給管理情報送受信部110にて受信される補給管理情報201に含まれる備蓄量203は、観測ノイズとを含んだ値である。そこで、観測ノイズを含んで送信された物資(水・食料・日用品)の備蓄量203(受信した備蓄量203)を、物資(水・食料・日用品)の観測された残存数である物資(水・食料・日用品)の残量観測値211とする。
【0049】
補給管理情報送受信部110は、物資(水・食料・日用品)の時刻tm(mはnまたはnのうちの任意の整数)(nとmの関係については残存状態算出処理部120の機能説明にて述べる)における残量観測値211を含む補給管理情報201を受信器により受信する。
【0050】
残存状態算出処理部120は、物資(複数の対象物)の残存状態を伝播させながら時間Δtごとに時刻tn(nは整数)における物資(複数の対象物)の残存状態を処理装置により計算して残存状態記憶部730(記憶装置)に記憶する。残存状態算出処理部120は、残存状態記憶部730(記憶装置)に記憶された時刻tnにおける物資(複数の対象物)の残存状態を処理装置により出力する。また、残存状態算出処理部120は、補給管理情報送受信部110が補給管理情報201を受信した場合に、補給管理情報201が示す物資の時刻tm(tとも表す)(mはnまたはnのうちの任意の整数)における残量観測値211を処理装置により入力して、残量観測値211に基づいて時刻tmにおける物資の残存状態を、観測前の残存状態から観測後の残存状態に処理装置により更新して残存状態記憶部730(記憶装置)に記憶する。
【0051】
つまり、残存状態算出処理部120は、物資の残存状態をΔtごとに伝播して観測前の物資の残存状態を算出するとともに、ステーション/補給機物資管理装置800から送信される補給管理情報201に含まれる時刻tmの物資の残量観測値211を観測値として、残量観測値211に基づいて時刻tmにおける物資の残存状態を観測前の物資の残存状態から観測後の物資の残存状態(推定値)に補正して更新する。
【0052】
ここで、nとmの関係について説明する。例えば、nとmの関係が2n=mであるとする。具体的には、例えば、Δt=1日であり毎日6時に物資の残存状態を算出して伝播させるとする。残存状態算出処理部120は、毎日6時に物資の残存状態を算出して、算出した物資の残存状態をシステム出力(システム出力値ともいう)として出力するとともに、1日おきの6時に送信される物資の残量観測値211に基づいてその時刻のシステム出力の物資の残存状態を補正して更新する。
【0053】
あるいは、nとmの関係がm=nであるとする。具体的には、例えば、Δt=1日であり毎日6時に物資の残存状態を算出して伝播させるとする。残存状態算出処理部120は、毎日6時に物資の残存状態を算出してシステム出力として出力する。また、毎日送信される残量観測値211に基づいてシステム出力の物資の残存状態を補正して更新させる。
【0054】
このように、補給管理サーバ100では、nとmの関係を定期的に同期させてもよいが、同期させずにランダムに送信される残量観測値211に基づいてシステム出力の物資の残存状態を補正して更新しても構わない。
【0055】
また、残存状態算出処理部120は、補給量シミュレート部130からのシミュレート指示を入力した場合に、現在の時刻の物資の残存状態を基に、現在の時刻からシミュレート指示に設定された将来の所定時刻まで物資の残存状態を処理装置により伝播させて、その結果から予測補給量202を算出して、シミュレート結果として補給量シミュレート部130に出力する。
【0056】
補給量シミュレート部130は、予測補給量202を残存状態算出処理部120に算出させるためのシミュレート指示を生成して残存状態算出処理部120に出力する。また、補給量シミュレート部130は、残存状態算出処理部120より、出力したシミュレート指示に対応するシミュレート結果を入力する。補給量シミュレート部130は、入力したシミュレート結果に含まれる予測補給量202を出力部140に出力する。あるいは、補給量シミュレート部130は、予測補給量202をステーション/補給機物資管理装置800に送信する。例えば、補給量シミュレート部130は、今日から10日後の予測補給量202を残存状態算出処理部120に算出させることができる。その10日分の計算においては、残量観測値211の入力はない。
【0057】
出力部140は、残存状態記憶部730に記憶された物資(水・食料・日用品)の残存状態を表示装置等の出力装置に出力する。つまり、残存状態記憶部730に記憶された物資の残存状態とは、残存状態算出処理部120により算出された物資の残存状態の推定値の状態遷移のことである。したがって、出力部140は、このような物資の残存状態の推定値の状態遷移をグラフや表にして出力してもよい。また、出力部140は、補給量シミュレート部130から予測補給量202を入力して表示装置等の出力装置に出力する。補給管理サーバ100の管理者等は、表示装置に表示された物資(水・食料・日用品)の残存状態の状態遷移や予測補給量202を確認することができ、例えば、物資補給管理に関する対策を検討することができる。
【0058】
残存状態算出処理部120は、カルマンフィルタ121を備える。カルマンフィルタ121は、状態伝播部122と状態更新部123とを備える。
【0059】
状態伝播部122は、減少パラメータ記憶部710が記憶している減少パラメータの値を物資(水・食料・日用品)の減少数をもとめる状態方程式に代入し、代入した状態方程式により得られるシステム行列Fn(Fとも表す)に基づいて、物資の残存状態を伝播させる。また、状態伝播部122は、物資の残存状態を伝播させる際に、宇宙ステーション(システム)内で生じる物資の計数誤りや入力誤り等の擾乱要因であるシステムノイズwn(wとも表す)を伝播させる。
【0060】
ここで、状態方程式とは、カルマンフィルタ121を用いてシステムの状態(残存状態)を推定するためのシステム出力を表す式である。つまり、カルマンフィルタ121を用いてシステムの状態を推定するためには、対象のシステムモデル(ここでは、宇宙ステーションおける物資の消費モデル)における想定に合致するような宇宙ステーションおける物資の減少状態の遷移(減少状態の過程)を与えなければならない。このような想定に合致するような物資の減少状態の遷移(減少状態の過程)が、システム出力である。状態方程式が表す想定に合致するような宇宙ステーションおける物資の減少状態の遷移(減少状態の過程)は、システムノイズwnを加味したものである。この実施の形態では、状態方程式(式1)は、以下のように表す。以下では、簡単のためシステム行列Fnを定数Fとして表している。
【0061】
【数1】

状態伝播部122は、状態ベクトル伝播計算部1221と共分散行列伝播計算部1222とを備える。状態ベクトル伝播計算部1221は、初期値記憶部720が記憶した状態ベクトルの初期値X0(Xとも表す)と、状態方程式を解いて得られるシステム行列Fnとに基づいて、物資の残存状態を伝播させながら時間Δtごとに状態ベクトルXnを処理装置により求める。共分散行列伝播計算部1222は、共分散行列の初期値P0(Pとも表す)と、システム行列Fnと、システムノイズwnが含まれたシステムノイズ共分散Qn(Qとも表す)とに基づいて、物資のシステムノイズwnを伝播させながら時間Δtごとに共分散行列Pnを処理装置により求める。状態ベクトル伝播計算部1221と共分散行列伝播計算部1222との詳細処理については、後述する。
【0062】
状態更新部123は、物資(水・食料・日用品)の残量観測値211を示す観測方程式に用いられる観測行列Hm(Hとも表す)に基づいて、時刻tm(tとも表す)における物資(水・食料・日用品)の残存状態を更新する。状態更新部123は、宇宙ステーション(システム)から補給管理サーバ100までに生じる、例えば電波のエラー等による観測ノイズvnを伝播させる。
【0063】
観測方程式とは、ある時刻tnにおける物資の残量観測値211(観測値(測定値)ともいう)Yn(Yとも表す)と、時刻tnにおけるシステム出力の物資の残存数Xnとの関係を表す式である。この実施の形態では、観測方程式(式2)は、以下のように表す。
【0064】
【数2】

【0065】
状態更新部123は、カルマンゲイン計算部1231と、状態ベクトル更新計算部1232と、共分散行列更新計算部1233とを備える。カルマンゲイン計算部1231は、状態ベクトルXnと時刻tnにおける残量観測値211を示す観測値ベクトルYnとの関係を示す観測行列Hn(Hとも表す)と、観測前の共分散行列Pn(−)(P(−)とも表す)と、観測ノイズvn(vとも表す)が含まれた観測ノイズ共分散Rn(Rとも表す)とに基づいてカルマンゲインKn(Kとも表す)を処理装置により求める。状態ベクトル更新計算部1232は、カルマンゲイン計算部1231が求めたカルマンゲインKnと、観測値ベクトルYnと、観測行列Hnと、観測前の状態ベクトルXn(−)(X(−)とも表す)とに基づいて観測後の状態ベクトルXn(+)(X(+)とも表す)を処理装置により求める。共分散行列更新計算部1233は、カルマンゲイン計算部1231が求めたカルマンゲインKnと、観測行列Hnと、観測前の共分散行列Pn(−)とに基づいて観測後の共分散行列Pn(+)(P(+)とも表す)を処理装置により求める。カルマンゲイン計算部1231と状態ベクトル更新計算部1232と共分散行列更新計算部1233との詳細処理については、後述する。
【0066】
図4は、実施の形態1にかかる補給管理サーバの補給管理方法の処理動作を表すフローチャートである。図4を用いて、補給管理サーバの補給管理方法の処理動作について説明する。補給管理サーバによる補給管理方法は、記憶装置に記憶された補給管理プログラムが処理装置により読み出され、処理装置により実行されることにより実現される。
【0067】
S101にて、補給管理サーバ100が起動し、補給管理方法が開始される。
【0068】
<補給管理情報受信ステップ:S102>
補給管理情報送受信部110は、受信器(受信装置)を用いてステーション/補給機物資管理装置800からの補給管理情報201を受信する。補給管理情報201には、物資(水・食料・日用品)の時刻tmにおける残量観測値211が含まれる。補給管理情報送受信部110は、受信した補給管理情報201から処理装置を用いて時刻tmにおける残量観測値211を入力し、入力した時刻tmにおける物資の残量観測値211を残存状態算出処理部120に出力する。時刻tmにおける物資の残量観測値211は、時刻tmにおける観測方程式Ym=HmXm+vm(式2)で表されるYmである。
【0069】
<残存状態算出処理ステップ(カルマンフィルタステップ):S103,S104>
カルマンフィルタは、時間ステップをひとつ進めるため(すなわち、tnからt(n+1)(tn+1とも表す)に時間を進めるため)に伝播(予測)と更新の2つの処理を行う。伝播の処理では、tnの物資の残存状態(推定状態)からt(n+1)の物資の残存状態(推定状態)を算出する。また、更新の処理では、t(n+1)の残量観測値を用いて、t(n+1)の物資の残存状態(推定状態)を補正してより正確な物資の残存状態を推定する。つまり、残存状態算出処理部120は、物資の残存状態を伝播させながら時間Δtごとに時刻tn(nは整数)における物資の残存状態を処理装置により計算して残存状態記憶部730に記憶する。
【0070】
また、時刻tmに残量観測値211がS102において受信されれば、残存状態算出処理部120は、物資の時刻tm(mはnまたはnのうちの任意の整数)における残量観測値211を入力して、残量観測値211に基づいて時刻tmにおける物資の残存状態を、時刻tmの観測前の残存状態から時刻tmの観測後の残存状態に処理装置により更新する。
【0071】
ここで、時刻tmの観測前の残存状態とは、残存状態算出処理部120の状態伝播部122の状態伝播処理により算出した時刻tmにおける残存状態のことである。時刻tmの観測後の残存状態とは、残存状態算出処理部120の状態更新部123により、時刻tmの観測前の残存状態に対して状態更新処理を施して補正した後の時刻tmにおける残存状態のことである。
【0072】
ここで、残存状態算出処理ステップにおいて、mはnまたはnのうちの任意の整数であるとしているが、nとmは同期していなくても構わない。実施の形態1では、例えば、nとmが等しい場合は、物資の状態伝播と状態更新は同じタイミングで行われることになる。つまりΔtが24時間とすると、1日(24時間)ごとに物資(水・食料・日用品)の残存状態を伝播させて残存状態記憶部730に記憶すると同時に、1日(24時間)ごとに物資(水・食料・日用品)の残存状態を更新させて残存状態記憶部730に記憶する。また、例えば、2n=mとなる関係の場合には、Δtが24時間とすると、1日(24時間)ごとに物資(水・食料・日用品)の残存状態を伝播させて残存状態記憶部730に記憶するとともに、1日(24時間)おきに物資(水・食料・日用品)の残存状態を更新させて残存状態記憶部730に記憶することになる。しかし、このようにnとmとを同期するように構成しなくとも、任意の時刻に補給管理情報201を受け取って、受け取った時刻の物資の残存状態を更新するように構成しても良い。以下では簡単のため、n=mの場合の残存状態算出処理について説明する。
【0073】
図5は、残存状態算出処理部120のカルマンフィルタ121における状態伝播処理と状態更新処理の詳細を示すフローチャートである。図5を用いて、状態伝播処理と状態更新処理について説明する。
【0074】
<状態伝播ステップ(状態伝播処理):S103>
状態伝播部122が処理を開始する(S103)。状態ベクトル伝播計算部1221は、初期値記憶部720に記憶した状態ベクトルの初期値X0と、状態方程式(式1)から得られるシステム行列Fnとに基づいて、物資の残存状態を伝播させながら時間Δtごとに状態ベクトルXnを以下の(式3)を用いて処理装置により求める(状態ベクトル伝播計算ステップ:S1031)。また、共分散行列伝播計算部1222は、共分散行列の初期値P0と、システム行列Fnと、システムノイズwnが含まれたシステムノイズ共分散Qn(システムノイズの共分散行列)とに基づいて、物資のシステムノイズwnを伝播させながら時間Δtごとに共分散行列Pnを以下の(式4)を用いて処理装置により求める(共分散行列伝播計算ステップ:S1032)。システムノイズの共分散行列Qnとは、システムノイズの分散値に、システムノイズにおける物資(水・食料・日用品)の関連状態を示す3×3行列をかけたものである。
【0075】
【数3】

【0076】
このように、時刻t(n+1)において状態ベクトル伝播計算部1221は、前の時刻tnの観測後の状態ベクトルXn(+)(前の時刻の推定値)から時刻tnの観測前の状態ベクトルXn+1(−)(今の時刻の推定値(観測前))を求めて状態ベクトルを伝播する(式3)。時刻t(n+1)において状態ベクトル伝播計算部1221は、求めた観測前の状態ベクトルX(n+1)(−)を残存状態記憶部730に記憶する(残存状態記憶ステップ:S1033)。また、時刻t(n+1)において共分散行列伝播計算部1222は、時刻tnの観測後の共分散行列Pn(+)から時刻t(n+1)の観測前の共分散行列P(n+1)(−)を求めて共分散行列を伝播する(式3)。時刻tnにおいて共分散行列伝播計算部1222は、求めた観測前の共分散行列P(n+1)(−)を残存状態記憶部730に記憶する(残存状態記憶ステップ:S1033)。つまり、時刻t(n+1)における状態伝播処理により、観測前の状態ベクトルX(n+1)(−)と、その精度を示す観測前の共分散行列P(n+1)(−)とが記憶される。
【0077】
<状態更新ステップ(状態更新処理):S104>
残量観測値211が受信された時刻に状態更新部123が処理を開始する(S104)。カルマンゲイン計算部1231は、状態ベクトルXnと時刻tnにおける残量観測値211を示す観測値ベクトルYnとの関係を示す観測行列Hnと、観測前の共分散行列Pn(−)と、観測ノイズvnが含まれた観測ノイズ共分散Rn(観測ノイズの共分散行列)とに基づいてカルマンゲインKnを以下の(式5)を用いて処理装置により求める(カルマンゲイン計算ステップ:S1041)。観測ノイズの共分散行列Rnとは、観測ノイズの分散値に、観測ノイズにおける物資(水・食料・日用品)の関連状態を示す3×3行列をかけたものである。状態ベクトル更新計算部1232は、カルマンゲイン計算部1231が求めたカルマンゲインKnと、観測値ベクトル(時刻tnの残量観測値211)Ynと、観測行列Hnと、観測前の状態ベクトルXn(−)とに基づいて観測後の状態ベクトルXn(+)を以下の(式6)を用いて処理装置により求める(状態ベクトル更新計算ステップ:S1042)。共分散行列更新計算部1233は、カルマンゲイン計算部1231が求めたカルマンゲインKnと、観測行列Hnと、観測前の共分散行列Pn(−)とに基づいて観測後の共分散行列Pn(+)を以下の(式7)を用いて処理装置により求める(共分散行列更新計算ステップ:S1043)。
【0078】
【数4】

【0079】
このように、カルマンゲイン計算部1231は、時刻tnにおけるカルマンゲインKnを算出する。状態ベクトル更新計算部1232は、状態ベクトルXnを観測前の状態ベクトルXn(−)から観測後の状態ベクトルXn(+)に更新する(残存状態更新ステップ:S1044)。共分散行列更新計算部1233は、共分散行列Pnを観測前の共分散行列Pn(−)から観測後の共分散行列Pn(+)に更新する(残存状態更新ステップ:S1044)。
【0080】
例えば、時刻t(n+1)においては、カルマンゲイン計算部1231は、時刻t(n+1)におけるカルマンゲインK(n+1)を算出する。状態ベクトル更新計算部1232は、状態ベクトルを観測前の状態ベクトルX(n+1)(−)(Xn+1(−)とも表す)から観測後の状態ベクトルX(n+1)(+)(Xn+1(+)とも表す)に更新する(残存状態更新ステップ:S1044)。共分散行列更新計算部1233は、共分散行列を観測前の共分散行列P(n+1)(−)(Pn+1(−)とも表す)から観測後の共分散行列P(n+1)(+)(Pn+1(+)とも表す)に更新する(残存状態更新ステップ:S1044)。つまり、時刻t(n+1)における状態更新処理により、観測後の状態ベクトルX(n+1)(+)と、その精度を示す観測後の共分散行列P(n+1)(+)とが残存状態記憶部730に記憶される。ここで、状態更新処理により観測後の状態ベクトルX(n+1)(+)の精度は観測前より上がっているはずであるから、観測後の共分散行列P(n+1)(+)は観測前の共分散行列P(n+1)(−)より値が低い。
【0081】
次に、図4に戻り、補給量シミュレート処理について説明する。ここでは、補給量シミュレート処理は、残存状態算出処理ステップの次に行う構成となっているがこれに限られない。例えば、補給量シミュレート処理は、補給管理サーバ100の管理者等からの補給量シミュレート要求を入力すると起動されるように構成しても良い。
【0082】
<補給量シミュレートステップ(補給量シミュレート処理):S105>
補給量シミュレート部130は、現在の時刻から将来の所定時刻までの物資の残存状態の伝播処理(以下、この処理を状態予測シミュレーションという)を行うためのシミュレート指示を処理装置により生成して、残存状態算出処理部120のカルマンフィルタ121の状態伝播部122に出力する。補給量シミュレート部130は、シミュレート指示に状態予測シミュレーションを行いたい将来の所定時刻を設定する。補給量シミュレート部130は、将来の所定時刻として、システム値として予め設定された値を設定してもよいし、例えば管理者により入力される値を設定してもよい。
【0083】
状態伝播部122は、シミュレート指示を入力すると、現在の時刻から将来の所定時刻までの物資の残存状態の状態予測シミュレーションを行う。状態伝播部122は、残存状態記憶部730に記憶された現在の時刻の物資の残存状態をもとに、(式3)および(式4)を用いて将来の所定時刻まで物資の残存状態を伝播させて状態予測シミュレーションを行う。状態予測シミュレーションでは、補給管理サーバ100が残量観測値を受信しないため、物資の残存状態を補正する状態更新処理は行われない。このときの状態伝播部122の処理について説明する。
【0084】
状態予測シミュレーション時のS1033では、状態伝播部122は、時刻tnの状態ベクトルXn(+)と共分散行列Pn(+)とを時刻t(n+1)の状態ベクトルX(n+1)(−)と共分散行列P(n+1)(−)に伝播させて残存状態記憶部730に記憶する。状態予測シミュレーションでは物資の残存状態を補正する状態更新処理は行われないので、状態伝播部122は、残存状態記憶部730に記憶した状態ベクトルX(n+1)(−)と共分散行列P(n+1)(−)とを観測後の状態ベクトルX(n+1)(+)と観測後の共分散行列P(n+1)(+)とに読み替えて入力し、将来の所定時刻まで状態予測シミュレーションを続行する。
【0085】
状態予測シミュレーションでは、補給管理サーバ100が残量観測値を受信しないため、物資の残存状態を補正する状態更新処理は行われない。しかし、例えば、補給量シミュレート部130が、ダミーの残量観測値を状態予測シミュレーションの状態伝播処理と同期させてカルマンフィルタ121の状態更新部123に出力することにより、状態予測シミュレーションにおいても状態更新処理を行うようにしてもよい。
【0086】
状態伝播部122は、状態予測シミュレーションの結果である現在の時刻から将来の所定時刻まで物資の残存状態の遷移に基づいて、予測補給量202を算出する。状態伝播部122は、算出した予測補給量202をシミュレート結果として補給量シミュレート部130に出力する。
【0087】
あるいは、状態伝播部122は、状態予測シミュレーションの結果である現在の時刻から将来の所定時刻まで物資の残存状態の遷移をシミュレート結果として補給量シミュレート部130に出力してもよい。この場合、補給量シミュレート部130は、入力したシミュレート結果に基づいて予測補給量202を算出する。
【0088】
補給量シミュレート部130は、状態伝播部12からシミュレート指示に対応するシミュレート結果を入力する。補給量シミュレート部130は、入力したシミュレート結果に含まれる予測補給量202を出力部140に出力する。あるいは、補給量シミュレート部130は、算出した予測補給量202を出力部140に出力する。また、補給量シミュレート部130は、予測補給量202をステーション/補給機物資管理装置800に送信する。
【0089】
実施の形態1に係る補給管理サーバ100では、複数の対象物である物資として水・食料・日用品を一例として3次元の物資の残存状態を予測(推定)する方法について説明したが、燃料・衣料・酸素等の他の物資でも構わない。また、3次元の物資に他の物資を加えて4次元、5次元、・・・N次元(Nは自然数)の物資についても、実施の形態1の補給管理サーバ100と同様の構成で残存状態を予測(推定)することができる。また、物資を消費するシステムとしては、宇宙ステーションシステムだけでなく、店舗(コンビニ、百貨店等)や施設の在庫管理システム、あるいは災害時における救援物品の補給を行う被災地復興システム等にも適応することができる。
【0090】
以上のように、実施の形態1に係る補給管理サーバ100によれば、伝播による残存状態(真の値(システム出力)と受信した備蓄量(残量観測値(観測値))とから、システムノイズと観測ノイズとを吸収した高い精度の推定備蓄量(推定値)を予測することができるので、宇宙ステーション補給機における物資補給の予測にも対応できる高い精度を有する最適予測方式を提供することができる。
【0091】
また、実施の形態1に係る補給管理サーバ100によれば、補給量シミュレート処理により、高い精度で予測(推定)された備蓄量の残存状態の状態遷移をもとに、予測補給量を算出することができる。
【0092】
また、実施の形態1に係る補給管理サーバ100によれば、物資の残存状態の推定値の状態遷移をグラフや表にしたり、予測補給量をグラフや表にしたりして表示装置等に出力することができるので、補給管理サーバ100の管理者等が、表示装置に表示された物資(水・食料・日用品)の残存状態の状態遷移や予測補給量202をもとに有効な物資補給管理に関する対策を講じることができる。
【実施例】
【0093】
実施の形態1で説明した補給管理サーバ100を用いて、具体的な数値を用いて、物資の残存状態の推定シミュレーションを行う場合について説明する。
【0094】
本実施例では、補給管理サーバ100を用いて、所定の時間(Time0.0からTime3.0まで)の物資の残存状態の推定シミュレーションを行うものとする。具体的な各数値について以下に説明する。
【0095】
まず、減少パラメータ記憶部710に記憶する減少パラメータA及び初期値記憶部720に記憶する状態ベクトルの初期値X0と初期値X0の精度を表す共分散行列の初期値P0とは、以下の値とする。
【0096】
【数5】

【0097】
補給管理サーバ100において、上記の減少パラメータA及び状態ベクトルの初期値X0と共分散行列の初期値P0の数値に基づいた真の値(理論値)は以下の式となる。
【0098】
【数6】

【0099】
図6は、(式8)〜(式10)から導かれる物資の残存状態の理論値(Time0.0〜3.0)をグラフ化した図である。
【0100】
実施の形態1で述べた状態方程式(式1)では、(式8)〜(式10)の各q(t)に加えられるシステムノイズwnとして、ここでは正規分布N(0,0.01)(正規分布N(0(平均),0.01(分散))を示す)にしたがう正規乱数をΔt=0.01ごとに各q(t)に加えるものとする。図7は、状態方程式(式1)から得られるTime0.0からTime3.0までの値(システム出力)をグラフ化した図である。すなわち、図7のグラフは、図6に示す物資の残存状態の理論値に擾乱ノイズであるシステムノイズwnを加えたものである。
【0101】
図8は、Time0.0からTime3.0までの観測値(残量観測値)をグラフ化した図である。実施の形態1で説明したように、残量観測値には観測ノイズvnとシステムノイズwnとの両方が含まれる。残量観測値は、実施の形態1で述べた観測方程式Yn=HnXn+vn(式2)で表されるYnである。観測方程式(式2)に示すように、残量観測値Ynに加えられている観測ノイズvnは、ここではN(0,0.3)にしたがう正規乱数をΔt=0.01ごとに加えられているものとする。
【0102】
また、残存状態算出処理部120の状態伝播部122が行う状態伝播処理の間隔Δtは、Δt=0.01とする。また、残存状態算出処理部120の状態更新部123の状態更新の間隔Δtは、Δt=0.02とする。すなわち、実施の形態1で説明した2n=mの関係である。
【0103】
また、状態伝播部122の共分散行列伝播計算部1222が共分散行列伝播計算処理に用いるシステムノイズ共分散行列Qnと、状態更新部123の共分散行列更新計算部1233が共分散行列更新計算処理に用いる観測ノイズ共分散行列Rnとは、以下の数値となる。
【0104】
【数7】

【0105】
以上のような具体的な数値を設定して、補給管理サーバ100を用いた補給管理方法により、Time0.0からTime3.0までの物資(水・食料・日用品)の残存状態の推定シミュレーションを行う。図9は、実施例における具体的な数値を設定した推定シミュレーションにより残存状態算出処理部120から出力された物資の観測値の残存状態の推定値(Time0.0〜Time3.0)をグラフ化したものである。図8の観測値と図9のカルマンフィルタ処理後の値とを比べると、補給管理サーバ100を用いた補給管理方法によれば、物資の残存状態の推定値は、より理論値(あるいはシステム出力)に近づくことがわかる。
【0106】
図10は、推定シミュレーションにより算出された物資の残存状態の推定値の誤差の精度を示す共分散行列の値を示す図である。共分散行列は、残量観測値に基づいて状態の更新(補正)が行われると分散値が小さくなり、物資の残存状態の推定値の精度が上がることを示している。図10において、交互に共分散行列の値が上下しているのは、実施例の具体的な数値を設定した推定シミュレーションにおいては、状態伝播処理の行われる時刻tnと状態更新処理の行われる時刻tmとの関係が2n=mの関係であるためである。つまり、交互に共分散行列の値が上下しているのは、時刻tnの場合は共分散行列の値は大きくなり、時刻tmにて補正が入ると共分散行列の値が小さくなり、これを繰り返しているからである。つまり、図10のグラフは、Time0.0からTime3.0までの共分散行列の値を示す1本の折れ線グラフとなっており、状態伝播部122が行う状態伝播処理の間隔ΔtはΔt=0.01であり、状態更新部123の状態更新の間隔Δtは、Δt=0.02であるため、時間1.0の間には、100回の状態伝播処理が行われ、50回の状態更新処理が行われていることを示している。
【0107】
以上のように、実施の形態1の補給管理サーバ100によれば、宇宙ステーション補給機における物資補給の予測に対応できるような高い精度を有する最適予測方式を提供することができる。補給量シミュレート部130による状態予測シミュレーションは、Time3.0以降となる。
【0108】
ここで、実施の形態1に係る補給管理サーバ100の特徴点について説明する。宇宙ステーション等のシステムにおける物資の消費においては、複数の対象物である物資は、単独で減少していくものではなく、複数の物資間に減少の関連性(減少関係)が存在する。例えば、食料の消費が増加すれば、それに対応して水の消費も増加する等の関連性である。実施の形態1に係る補給管理サーバ100の補給管理方式では、この複数の物資間の減少関係に着目し、複数の物資間の減少関係を加味した上で物資の備蓄量の予測(あるいは補給予測)を可能とする点が特徴点である。
【0109】
また、実施の形態1に係る補給管理サーバ100では、物資の備蓄量の予測(あるいは補給予測)にカルマンフィルタを用いる点が特徴である。
【0110】
また、実施の形態1に係る補給管理サーバ100では、宇宙ステーションの物資の備蓄量の予測(あるいは補給予測)にカルマンフィルタを用いる点が特徴である。
【0111】
また、実施の形態1に係る補給管理サーバ100では、無線通信を利用しなければならない宇宙ステーションの物資の備蓄量の予測(あるいは補給予測)にカルマンフィルタを用いる点が特徴である。
【0112】
また、実施の形態1に係る補給管理サーバ100では、宇宙通信という無線通信を利用しなければならない宇宙ステーションの物資の備蓄量の予測(あるいは補給予測)にカルマンフィルタを用いる点が特徴である。
【0113】
また、実施の形態1に係る補給管理サーバ100は、物資の備蓄量の予測(あるいは補給予測)をする際に、2種類の誤差(上述したシステム誤差と観測誤差)を考慮することができる点が特徴である。すなわち、実施の形態1に係る補給管理サーバ100は、物資の備蓄量の予測(あるいは補給予測)をする際に、2重に誤差を考慮することができる点が特徴である。
【0114】
実施の形態1の説明において、ステーション/補給機物資管理装置800における物資情報入力処理部810、物資管理情報送受信部820、補給管理情報表示処理部830、表示部840は、それぞれ独立した機能ブロックとして構成されているが、ひとつの機能ブロックとしてもよい。また、例えば、物資情報入力処理部810と物資管理情報送受信部820とをひとつの機能ブロックとし、補給管理情報表示処理部830と表示部840とをひとつの機能ブロックとしてもよい。あるいは、全ての機能ブロックを独立した機能ブロックとしても良い。あるいは、これらの機能ブロックを、他のどのような組み合わせで構成しても構わない。
【0115】
また、補給管理サーバ100における補給管理情報送受信部110、残存状態算出処理部120、補給量シミュレート部130、出力部140、減少パラメータ記憶部710、初期値記憶部720、残存状態記憶部730は、それぞれ独立した機能ブロックとして構成されているが、ステーション/補給機物資管理装置800の機能ブロックと同様に、補給管理サーバ100における機能ブロックをどのような組み合わせで構成しても構わない。
【0116】
実施の形態1に係る補給管理サーバ及び補給管理サーバの補給管理プログラム及び補給管理サーバの補給管理方法は、処理装置、記憶装置等のハードウェアが用いられており、ソフトウェアによる情報処理がハードウェアを用いて具体的に実現されたものである。すなわち、上述した補給管理サーバ及び補給管理サーバの補給管理プログラム及び補給管理サーバの補給管理方法は、自然法則を利用したハードウェアの動作により実現を図っているものであり、自然法則を利用した技術的創作に該当するものである。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】実施の形態1に係る補給管理サーバ100の外観の一例を示す図である。
【図2】実施の形態1に係る補給管理サーバ100及びステーション/補給機物資管理装置800のハードウェア資源の一例を示す図である。
【図3】実施の形態1に係る最適補給量予測システム990の機能ブロック図である。
【図4】実施の形態1に係る補給管理サーバ100の補給管理方法の処理動作を表すフローチャートである。
【図5】実施の形態1に係る残存状態算出処理部のカルマンフィルタにおける状態伝播処理と状態更新処理の詳細を示すフローチャートである。
【図6】実施例において(式8)〜(式10)から導かれる物資の残存状態の理論値(Time0.0〜3.0)をグラフ化した図である。
【図7】実施例において状態方程式(式1)から得られるTime0.0からTime3.0までのシステム出力をグラフ化した図である。
【図8】実施例におけるTime0.0からTime3.0までの観測値(残量観測値)をグラフ化した図である。
【図9】実施例における具体的な数値を設定した推定シミュレーションにより出力された物資の残存状態の推定値(Time0.0〜Time3.0)をグラフ化したものである。
【図10】実施例における具体的な数値を設定した推定シミュレーションにより出力された物資の残存状態の推定値(Time0.0〜Time3.0)の精度を示す共分散行列の値を示す図である。
【符号の説明】
【0118】
100 補給管理サーバ、110 補給管理情報送受信部、120 残存状態算出処理部、121 カルマンフィルタ、122 状態伝播部、123 状態更新部、130 補給量シミュレート部、140 出力部、201 補給管理情報、202 予測補給量、203 備蓄量、211 残量観測値、700 記憶装置、710 減少パラメータ記憶部、720 初期値記憶部、730 残存状態記憶部、800 ステーション/補給機物資管理装置、810 物資情報入力処理部、820 物資管理情報送受信部、830 補給管理情報表示処理部、840 表示部、901 表示装置、902 キーボード、903 マウス、904 FDD、905 CDD、906 プリンタ装置、907 スキャナ装置、910 システムユニット、911 CPU、912 バス、913 ROM、914 RAM、915 通信ボード、916 アンテナ、920 磁気ディスク装置、921 OS、922 ウィンドウシステム、923 プログラム群、924 ファイル群、931 電話器、932 ファクシミリ機、940 インターネット、941 ゲートウェイ、942 LAN、990 最適補給量予測システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の対象物を消費するシステムにおける複数の対象物の残存状態に基づき複数の対象物の補給を管理する補給管理サーバにおいて、
複数の対象物の残存状態を伝播させながら時間Δtごとに時刻tn(nは整数)における複数の対象物の残存状態を処理装置により計算して記憶装置に記憶し、記憶装置に記憶された時刻tnにおける複数の対象物の残存状態を処理装置により出力する残存状態算出処理部と
複数の対象物の時刻tm(mはnまたはnのうちの任意の整数)における残量観測値を含む補給管理情報を受信器により受信する補給管理情報受信部と、
を備え、
残存状態算出処理部は、
補給管理情報受信部が補給管理情報を受信した場合に、補給管理情報が示す複数の対象物の時刻tmにおける残量観測値を処理装置により入力して、残量観測値に基づいて時刻tmにおける複数の対象物の残存状態を、観測前の残存状態から観測後の残存状態に処理装置により更新して記憶装置に記憶することを特徴とする補給管理サーバ。
【請求項2】
上記補給管理サーバは、さらに、残存状態算出処理部が出力した複数の対象物の残存状態に基づいて、将来の所定時刻における複数の対象物の補給量を処理装置により算出して出力する補給量シミュレート部を備えたことを特徴とする請求項1記載の補給管理サーバ。
【請求項3】
上記補給管理サーバは、さらに、
複数の対象物の減少程度を示す減少パラメータの値を記憶した減少パラメータ記憶部と、
複数の対象物の残存数を示す状態ベクトルの初期値X0と、複数の対象物の減少関係を示す共分散行列の初期値P0と記憶する初期値記憶部とを備え、
上記残存状態算出処理部は、
減少パラメータ記憶部が記憶した減少パラメータの値を複数の対象物の減少数をもとめる状態方程式に代入して得られるシステム行列Fnに基づいて、残存状態を伝播させる状態伝播部と、
複数の対象物の残量観測値を示す観測方程式に用いられる観測行列Hmに基づいて、時刻tmにおける複数の対象物の残存状態を更新する状態更新部と
を有するカルマンフィルタ
を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の補給管理サーバ。
【請求項4】
上記カルマンフィルタの状態伝播部は、システム内で生じるシステムノイズwnを伝播させるとともに、
上記カルマンフィルタの状態更新部は、システムから補給管理サーバまでに生じる観測ノイズvnを伝播させる
ことを特徴とする請求項3記載の補給管理サーバ。
【請求項5】
上記カルマンフィルタの状態伝播部は、
初期値記憶部が記憶した状態ベクトルの初期値X0と、状態方程式を解いて得られるシステム行列Fnとに基づいて、複数の対象物の残存状態を伝播させながら時間Δtごとに状態ベクトルXnを処理装置により求める状態ベクトル伝播計算部と、
共分散行列の初期値P0と、システム行列Fnと、システムノイズwnが含まれたシステムノイズ共分散Qnとに基づいて、複数の対象物のシステムノイズwnを伝播させながら時間Δtごとに共分散行列Pnを処理装置により求める共分散行列伝播計算部と
を備えたことを特徴とする請求項3または4記載の補給管理サーバ。
【請求項6】
上記カルマンフィルタの状態更新部は、
状態ベクトルXnと時刻tnにおける残量観測値を示す観測値ベクトルYnとの関係を示す観測行列Hnと、観測前の共分散行列Pn(−)と、観測ノイズvnが含まれた観測ノイズ共分散Rnとに基づいてカルマンゲインKnを処理装置により求めるカルマンゲイン計算部と、
カルマンゲイン計算部が求めたカルマンゲインKnと、観測値ベクトルYnと、観測行列Hnと、観測前の状態ベクトルXn(−)とに基づいて観測後の状態ベクトルXn(+)を処理装置により求める状態ベクトル更新計算部と、
カルマンゲイン計算部が求めたカルマンゲインKnと、観測行列Hnと、観測前の共分散行列Pn(−)とに基づいて観測後の共分散行列Pn(+)を処理装置により求める共分散行列更新計算部と
を備えたことを特徴とする請求項3〜5いずれかに記載の補給管理サーバ。
【請求項7】
複数の対象物を消費するシステムにおける複数の対象物の残存状態に基づき複数の対象物の補給を管理する処理をコンピュータに実行させる補給管理サーバの補給管理プログラムにおいて、
残存状態算出処理部が、複数の対象物の残存状態を伝播させながら時間Δtごとに時刻tn(nは整数)における複数の対象物の残存状態を処理装置により計算して記憶装置に記憶し、記憶装置に記憶された時刻tnにおける複数の対象物の残存状態を処理装置により出力する残存状態算出処理と、
補給管理情報受信部が、複数の対象物の時刻tm(mはnまたはnのうちの任意の整数)における残量観測値を含む補給管理情報を受信器により受信する補給管理情報受信処理と
を備え、
残存状態算出処理は、
補給管理情報受信処理において補給管理情報を受信した場合に、補給管理情報が示す複数の対象物の時刻tmにおける残量観測値を処理装置により入力して、残量観測値に基づいて時刻tmにおける複数の対象物の残存状態を、観測前の残存状態から観測後の残存状態に処理装置により更新して記憶装置に記憶することを特徴とする補給管理サーバの補給管理プログラム。
【請求項8】
上記補給管理サーバの補給管理プログラムは、さらに、
補給量シミュレート部が、残存状態算出処理により出力した複数の対象物の残存状態に基づいて、将来の所定時刻における複数の対象物の補給量を処理装置により算出して出力する補給量シミュレート処理
を備えたことを特徴とする請求項7記載の補給管理サーバの補給管理プログラム。
【請求項9】
上記補給管理サーバの補給管理プログラムは、さらに、
減少パラメータ記憶部が、複数の対象物の減少程度を示す減少パラメータの値を記憶する減少パラメータ記憶処理と、
初期値記憶部が、複数の対象物の残存数を示す状態ベクトルの初期値X0と、複数の対象物の減少関係を示す共分散行列の初期値P0とを記憶する初期値記憶処理とを備え、
上記残存状態算出処理は、
状態伝播部が、減少パラメータ記憶処理により記憶した減少パラメータの値を複数の対象物の減少数をもとめる状態方程式に代入して得られるシステム行列Fnに基づいて、残存状態を伝播させる状態伝播処理と、
状態更新部が、複数の対象物の残量観測値を示す観測方程式に用いられる観測行列Hmに基づいて、時刻tmにおける複数の対象物の残存状態を更新する状態更新処理と
を有するカルマンフィルタ処理
を備えたことを特徴とする請求項7または8記載の補給管理サーバの補給管理プログラム。
【請求項10】
上記カルマンフィルタ処理の状態伝播処理は、システム内で生じるシステムノイズwnを伝播させるとともに、
上記カルマンフィルタ処理の状態更新処理は、システムから補給管理サーバまでに生じる観測ノイズvnを伝播させる
ことを特徴とする請求項9記載の補給管理サーバの補給管理プログラム。
【請求項11】
上記カルマンフィルタ処理の状態伝播処理は、
状態ベクトル伝播計算部が、初期値記憶処理により記憶された状態ベクトルの初期値X0と、状態方程式を解いて得られるシステム行列Fnとに基づいて、複数の対象物の残存状態を伝播させながら時間Δtごとに状態ベクトルXnを処理装置により求める状態ベクトル伝播計算処理と、
共分散行列伝播計算部が、共分散行列の初期値P0と、システム行列Fnと、システムノイズwnが含まれたシステムノイズ共分散Qnとに基づいて、複数の対象物のシステムノイズwnを伝播させながら時間Δtごとに共分散行列Pnを処理装置により求める共分散行列伝播計算処理と
を備えたことを特徴とする請求項9または10記載の補給管理サーバの補給管理プログラム。
【請求項12】
上記カルマンフィルタ処理の状態更新処理は、
カルマンゲイン計算部が、状態ベクトルXnと時刻tnにおける残量観測値を示す観測値ベクトルYnとの関係を示す観測行列Hnと、観測前の共分散行列Pn(−)と、観測ノイズvnが含まれた観測ノイズ共分散Rnとに基づいてカルマンゲインKnを処理装置により求めるカルマンゲイン計算処理と、
状態ベクトル更新計算部が、カルマンゲイン計算処理により求められたカルマンゲインKnと、観測値ベクトルYnと、観測行列Hnと、観測前の状態ベクトルXn(−)とに基づいて観測後の状態ベクトルXn(+)を処理装置により求める状態ベクトル更新計算処理と、
共分散行列更新計算部が、カルマンゲイン計算処理により求められたカルマンゲインKnと、観測行列Hnと、観測前の共分散行列Pn(−)とに基づいて観測後の共分散行列Pn(+)を処理装置により求める共分散行列更新計算部と
を備えたことを特徴とする請求項3〜5いずれかに記載の補給管理サーバの補給管理プログラム。
【請求項13】
複数の対象物を消費するシステムにおける複数の対象物の残存状態に基づき複数の対象物の補給を管理する補給管理サーバの補給管理方法において、
残存状態算出処理部が、複数の対象物の残存状態を伝播させながら時間Δtごとに時刻tn(nは整数)における複数の対象物の残存状態を処理装置により計算して記憶装置に記憶し、記憶装置に記憶された時刻tnにおける複数の対象物の残存状態を処理装置により出力する残存状態算出処理ステップと、
補給管理情報受信部が、複数の対象物の時刻tm(mはnまたはnのうちの任意の整数)における残量観測値を含む補給管理情報を受信器により受信する補給管理情報受信ステップと、
を備え、
残存状態算出処理ステップは、
補給管理情報受信ステップにおいて補給管理情報を受信した場合に、補給管理情報が示す複数の対象物の時刻tmにおける残量観測値を処理装置により入力して、残量観測値に基づいて時刻tmにおける複数の対象物の残存状態を、観測前の残存状態から観測後の残存状態に処理装置により更新して記憶装置に記憶する
ことを特徴とする補給管理サーバの補給管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−237674(P2009−237674A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79926(P2008−79926)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(591102095)三菱スペース・ソフトウエア株式会社 (148)