説明

製剤包装体

【課題】むせるおそれや苦味を強く感じるおそれを低減し、且つ、口腔内での違和感を低減して製剤を服用することができ、服用に際して煩雑な作業を要しないと共に、必要量を服用できたか否かの管理が容易な製剤包装体を提供する。
【解決手段】製剤包装体11は、重畳された可食フィルム1がシールされて形成された周状のシール部2を備える袋状収容体3と、経口摂取用の薬物成分を含有し袋状収容体3に収容された製剤5とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製剤包装体に関するものであり、特に、経口摂取される製剤が包装された製剤包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
経口摂取される製剤が包装された製剤包装体として、従来、散剤や錠剤等の製剤が一回に服用すべき量ごとにグラシン紙やアルミシートに区分収容された分包薬が実施されている。また、薄いシート状のオブラートに製剤を包んでから服用することも、旧来より行われている。
【0003】
上記の従来技術は、公然に実施されているものであり、出願人は、この従来技術が記載された文献を、本願出願時においては知見していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、分包薬の場合は、包装を開封して製剤を口中に投入する際に、製剤をこぼしたり飛散させたりし易く、全量を服用できないことがあった。また、製剤が散剤や細かな顆粒剤の場合など、服用の際にむせたり咳き込んだりすることがあった。加えて、苦味の強い薬の場合、そのままでは飲み込み難いという問題もあった。
【0005】
一方、シート状のオブラートで製剤を包んで服用する場合は、散剤等でもむせ難く苦味も感じ難いという利点があるが、オブラートが折り畳まれて製剤が包まれた全体が嵩張り、口腔内での違和感が大きく飲み込み難いという問題があった。また、服用のたびにシート状のオブラートで製剤を包む作業が煩雑であるという問題もあった。加えて、シート状のオブラートに製剤を包む作業中に、製剤をこぼしたり飛散させたりすることがあり、必要量を服用できたか否かが分からなくなってしまうこともあった。
【0006】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、むせるおそれや苦味を強く感じるおそれを低減し、且つ、口腔内での違和感を低減して製剤を服用することができ、服用に際して煩雑な作業を要しないと共に、必要量を服用できたか否かの管理が容易な製剤包装体の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる製剤包装体は、「重畳された可食フィルムがシールされて形成された周状のシール部を備える袋状収容体と、経口摂取用の薬物成分を含有し、前記袋状収容体に収容された製剤とを」具備している。
【0008】
「可食フィルム」は、可食性のフィルム形成剤を用いて形成することができ、可食性のフィルム形成剤としては、例えば、キチン、キトサン、カゼイン、カゼインナトリウム、ゼラチン、コラーゲン、大豆タンパク、卵白、デンプン、ペクチン、アラビノキシラン、大豆多糖類、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、寒天、グルコマンナン、ガラクトマンナン、キサンタンガム、プルラン、ツェイン、セラック等の天然高分子、デキストリン、エーテル化デンプン、エステル化デンプン、ヒプロメロース(HPMC;旧日本薬局方名「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、水溶性ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の半合成高分子、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコールポリビニルアルコール共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド(PAA)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)等の合成高分子を使用することができる。また、複数種類のフィルム形成剤を適宜配合して使用することもできる。
【0009】
「可食フィルム」は、上記の可食性のフィルム形成剤に加えて、他の成分を含有させて形成させることもできる。例えば、可塑剤として、クエン酸トリエチル、グリセリン、ソルビトール、トリアセチン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプルピレン(5)グリコール、ポリソルベート、マクロゴール、モノステアリン酸グリセリン、マンニトール等を含有させることにより、可食フィルムの柔軟性を高め、ひび割れや破れ等の発生を防止することができる。また、スクラロース、アスパルテーム、ステビア、キシリトール、カンゾウ等の矯味剤やスペアミントフレーバー、レモンフレーバー、メントール等の香料を含有させることにより、袋状収容体に味付けや香り付けをし、収容される製剤の味や臭いをマスキングすることができる。更に、乳化剤や着色剤等を含有させて可食フィルムを形成することもできる。
【0010】
「シール」は、外部加熱による加熱圧着や、電波や超音波を用いた内部加熱による加熱圧着により行うことができる。或いは、糊化した高粘度のデンプン等を接着剤とした圧着や、可食フィルムの周縁部に水等を塗布し部分的に溶解させて圧着する等、加熱を伴わない圧着により行うこともできる。なお、凹型と凸型を用いてシールすることにより、エンボス圧着加工を行うこともできる。また、シール部の「周状」は、ある程度の幅を有する周状であっても、幅が小さく線に近い周状であっても良い。
【0011】
可食フィルムの「重畳」としては、二枚の可食フィルムが重ね合わされた態様、一枚の可食フィルムが折り返されて重ね合わされた態様を例示することができる。また、袋状収容体の形状は特に限定されず、平面視で四角形、三角形、五角形、六角形等の多角形状や、円形、楕円形とすることができる。
【0012】
「製剤」の剤形は特に限定されず、散剤(粉末剤)、顆粒剤、丸剤、錠剤、液剤、練剤等を用いることができる。また、後述のフィルム状製剤やその粉砕剤を用いることもできる。更に、製剤に含有される「薬物成分」は、経口摂取用であれば特に限定されず、いわゆる西洋薬の医薬品の成分に加え、生薬や生薬を組み合わせた漢方薬の成分とすることができる。なお、本発明では、「製剤」は医薬品に限定されるものではなく、ビタミンやミネラル等不足しがちな栄養成分の補給を目的とした食品のうち、顆粒剤、錠剤など通常の食品の形態ではない栄養補助食品をも含む意で用いている。
【0013】
なお、製剤として液剤を収容する場合は、液剤に対して不溶性のフィルム形成剤を用いて可食フィルムを形成する、或いは、液剤に対して不溶性の層を可食フィルムの内側にコーティングすることが望ましい。例えば、液剤が水系の場合、水溶性高分子を架橋構造とすることにより水に難溶とした可食フィルムを使用することができる。或いは、水溶性の可食フィルムの内側に疎水性材料をコーティングしても良く、疎水性材料としては、セラック、蜜蝋、サトウキビ蝋、カルナウバ蝋、ロジン等の天然樹脂を使用することができる。
【0014】
上記の構成により、本発明によれば、重畳された可食フィルムが周状にシールされることにより、シール部より内側に中空の空間を有する袋状収容体が形成され、この中空の空間に製剤を収容することができる。そして、製剤が収容された袋状収容体が可食フィルムによって構成されているため、袋状収容体ごと製剤を服用することができる。これにより、製剤が散剤や細かな顆粒剤であっても、むせるおそれを低減して服用することができ、苦味の強い製剤であってもその苦味を強く感じることなく服用することができる。また、袋状収容体を構成する可食フィルムは薄く形成することができ、しかも、周状にシールされることにより可食フィルムは袋状となっており、従来のシート状オブラートのように製剤を包装するために折り畳まれることがないため、嵩張らず口腔内での違和感を小さいものとすることができる。
【0015】
また、本発明の製剤包装体では、所定量の製剤が既に袋状収容体に収容された状態となっており、従来のシート状のオブラートのように服用に先立って製剤を包装する煩雑な作業を必要としない。これにより、服用したいときに直ちに手軽に服用することができる。
【0016】
加えて、従来は、分包薬を開封して内容物を口中に投入する際や、シート状のオブラートに製剤を包む際に、製剤をこぼしたり飛散させたりすることがあった。これに対し、本発明では、予め所定量の製剤を袋状収容体に収容しておくことができ、且つ、収容された製剤の全量を袋状収容体ごと服用することができるため、必要量を服用できたか否かの管理を極めて容易に行うことができる。
【0017】
更に、可食性のフィルム形成剤の種類の選択や組み合わせにより、可食フィルムの溶解性を変化させることができる。これにより、薬物成分を主に体内のどこで吸収させるかを、製剤ではなく袋状収容体によって調整することが可能となる。例えば、一般的に口腔内の粘膜から薬物成分が吸収される場合、胃や腸など体内で吸収される場合よりも速やかに効果が現れる。そこで、下痢、吐き気、心臓疾患、低血糖などの症状に対し即効性が要求される製剤の場合は、ゼラチン、プルラン、アルギン酸ナトリウム等の水溶性の高い可食フィルムで袋状収容体を構成させることにより、口腔内の水分によって袋状収容体を溶解または崩壊させ、薬物成分を口腔内の粘膜から速やかに吸収させることができる。このとき、舌下薬として用い、薬物成分を舌下の粘膜から吸収させることもできる。また、口腔内で吸収させることにより、薬物成分が胃酸等の影響を受けることを防止することができる。
【0018】
また、水溶性の高いフィルム形成剤で可食フィルムを形成した場合は、袋状収容体は口腔内の水分によって自然に溶解または崩壊し易く、病人、高齢者、小児、嚥下機能の低い人であっても、製剤を服用し易いものとなる。このとき、可食フィルムはゼリー状となって製剤を包み込み、または製剤と絡み合うように作用するため、製剤が喉を通り易いものとなる。そして、可食フィルムの水溶性を更に高めることにより、水なしで服用することも可能となり、場所を問わず服用できる携帯性に優れた製剤とすることもできる。
【0019】
逆に、可食フィルムの水溶性を低下させることにより、袋状収容体を口腔内で溶け難いものとし、薬物成分を穏やかに作用させることもできる。また、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE等の胃溶性の可食性フィルム形成剤や、メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーLD、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート等の腸溶性の可食性フィルム形成剤を用いて可食フィルムを形成することにより、製剤自体に溶解性を調整するための処理がなされていなくても、製剤を胃溶性や腸溶性にすることができる。
【0020】
この際、可食フィルムは、空隙が多数形成された多孔質構造とすることができる。これにより、難水溶性で口腔内で溶解し難い可食フィルムで袋状収容体が構成されている場合であっても、口腔内で水分を空隙内に吸収して可食フィルムの柔軟性が増し、袋状収容体が飲み込み易いものとなる。また、可食フィルムは、積層構造とすることもできる。例えば、袋状収容体の内側となる層を難水溶性の可食フィルムで構成させ、外側に多孔質の可食フィルム層を積層することにより、口腔内の水分を吸収して袋状収容体の外表面が柔軟となり飲み込み易いものとなる。或いは、難水溶性の層の外側に水溶性の高い層を積層して可食フィルムを構成させることにより、口腔内の水分によって袋状収容体の外表面が溶けてゼリー状となるため、飲み込み易いものとなる。
【0021】
また、可食性のフィルム形成剤で形成されたフィルムは酸素透過性の低いものが多いため、そのような可食フィルムで袋状収容体を構成させた場合は、収容された製剤の酸化を防止することができる。更に、セルロースやコラーゲン等の水蒸気透過性の低いフィルム形成剤で可食フィルムを形成した場合は、製剤自体の吸湿性が高い場合であっても、袋状収容体によって製剤の吸湿を抑制することができる。
【0022】
ここで、可食フィルムを袋状にすることなく、可食フィルムのみに薬物成分を含有させた剤形の製剤も想定し得るが、その場合は製造段階でフィルム形成剤を含む溶媒に薬物成分を溶解または懸濁させる工程を経ることが必要となり、場合によっては加熱も必要となる。そのため、例えば乳酸菌や酵素など、溶媒への溶解や加熱によって変質・劣化するおそれのある成分によって製剤を構成させることは難しい。これに対し、本発明は、可食フィルムにより形成された袋状収容体に製剤が収容される態様であるため、溶媒への溶解や加熱によって変質・劣化し易い薬物成分によっても製剤を構成させることができる。加えて、本発明によれば、可食フィルムに薬物成分を含有させる場合に比べて、多量の製剤を袋状収容体に収容させることが可能であるため、薬物成分を一度に多く摂取する必要がある製剤に適している。
【0023】
本発明にかかる製剤包装体は、「前記可食フィルムは、少なくとも前記シール部で、内側にフィルム第二層が積層された二重構造とされ、前記フィルム第二層は、ゼラチン、カゼインナトリウム、ツェイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、加工デンプン、プルラン、アラビノキシラン、大豆タンパクから選ばれる少なくとも一種のフィルム形成剤を含有する」ものとすることができる。
【0024】
「フィルム第二層」は可食フィルムの全体にわたって積層されるものであっても、シール部を含み部分的に積層されるものであっても良い。ここで、シール部を含む部分的なフィルム第二層の積層は、例えば、塗布、吹付け、グラビア印刷により行うことができる。なお、可食フィルムは、部分的または全体的に二重構造とされる場合に限定されず、部分的または全体的に三重以上に積層される構成とすることもできる。
【0025】
上記に列挙したフィルム形成剤は、何れも外部加熱による圧着性(ヒートシール性)が比較的高く、特に、ゼラチン、カゼインナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ツェインはヒートシール性に優れている。従って、本発明によれば、可食フィルムが少なくともシール部で二重構造とされ、内側となるフィルム第二層がヒートシール性の高いフィルム形成剤で形成されることにより、作業性の高い加熱圧着によって容易に袋状収容体を形成し、効率良く製剤包装体を製造することができる。また、ヒートシール性に優れたフィルム形成剤を用いることにより、シール部を強固なものとすることができるため、袋状収容体に収容される製剤が微細な散剤であっても袋状収容体から漏出するおそれを低減することができる。
【0026】
本発明にかかる製剤包装体は、「前記製剤は、前記薬物成分及び可食性のフィルム形成剤を含有してフィルム状に形成されたフィルム状製剤である」ものとすることができる。
【0027】
フィルム状製剤に含有させる「薬物成分」は、フィルム形成剤を含む液媒体に溶解または懸濁させることが可能な製剤に由来するものとすることができ、散剤や顆粒状の製剤の他、液状の製剤を用いることができる。また、薬物成分は医薬品の成分に限定されるものではなく、ビタミンやミネラル等の栄養補助食品の成分であっても良い。更に、薬物成分はいわゆる西洋薬の成分に限定されず、生薬成分であっても良い。ここで、フィルム形成剤に含有させる生薬成分としては、生薬の乾燥粉末、エキス抽出液、エキス抽出液を凍結乾燥や噴霧乾燥等により乾燥させて得た乾燥エキス剤等に由来するものとすることができる。なお、生薬には、ウイキョウ、ウコン、ガジュツ等のように食薬区分において非医薬品とされている(「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」に掲載されている)ものや、樹皮を原材料とした場合は医薬品(「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に掲載されている)である一方、葉や実を原材料とした場合は非医薬品とされているオウバクなど、原材料とする植物の部位や抽出物・精製物であるか等によって、医薬品と非医薬品に分けられている生薬もある。本発明の薬物成分は、医薬品として分類されている生薬成分に限定されず、このように非医薬品として分類されている生薬成分をも含むものである。
【0028】
フィルム状製剤を形成させる「可食性のフィルム形成剤」としては、上記に例示した可食性のフィルム形成剤を用いることができ、フィルム状製剤を形成させる可食性のフィルム形成剤と、袋状収容体を構成する可食フィルムを形成させる可食性のフィルム形成剤とは、同一の種類であっても異なる種類であっても構わない。
【0029】
可食性のフィルム形成剤に薬物成分を含有させてフィルム化し、薄いフィルム状の製剤とすることにより、嚥下機能の低い人でも服用し易い製剤とすることができる。しかしながら、薬物成分を含有させることによってフィルムの強度が低下する場合や、薬物成分の含有率等によっては保存日数の経過に伴って吸湿しべたつきが生じる場合がある。従って、上記構成の本発明によれば、可食性のフィルム形成剤を用いて製造されたフィルム状製剤を、更に可食フィルムによって形成された袋状収容体に収容することにより、フィルム状製剤の可食性及び服用のし易さを損なうことなく、フィルム強度を補うと共に、保存性を高めることができる。
【0030】
また、本発明によれば、袋状収容体を構成する可食フィルムの溶解性を調整することにより、フィルム状製剤の口腔内での溶解性・崩壊性をコントロールすることができる。例えば、フィルム状製剤の製造に際しては、フィルム形成剤として水に易溶性のものを使用し溶媒として水を用いる方が、水に難溶性のフィルム形成剤を使用し液媒体として有機溶媒等を用いる場合より、溶媒の取り扱いや作業環境の整備が容易であることが多い。本発明によれば、水溶性のフィルム形成剤を用いて製造した水溶性のフィルム状製剤であっても、胃溶性や腸溶性の可食フィルムで形成された袋状収容体に収容させることにより、胃溶性や腸溶性の製剤にすることができる。
【0031】
本発明にかかる製剤包装体は、「前記袋状収容体は、外周の少なくとも一部が曲線状に形成されている」ものとすることができる。かかる形状としては、略円形、略楕円形、及び、角部が略円弧状の略四角形を例示することができる。
【0032】
上記の構成により、本発明の袋状収容体は尖った角部が少ない、或いは、尖った角部を有しない形状となるため、袋状収容体ごと服用した際の口腔内での違和感がより小さいものとなる。
【0033】
本発明にかかる製剤包装体は、「前記袋状収容体は、最長部分の長さが5mm〜50mmに形成されている」ものとすることができる。
【0034】
袋状収容体が小さい場合は、充分な量の製剤を収容させることができない。一方、袋状収容体が大きい場合は口腔内での違和感が大きなものとなる。従って、上記構成の本発明によれば、収容できる製剤の量と口腔内での違和感という、相反する関係の調和を図ることができる。より望ましい袋状収容体の最長部分の長さは10mm〜20mmである。なお、最長部分の長さを最大50mとすることにより、袋状収容体の形状や製剤の種類にもよるが、概ね1000mgまでの製剤を収容させることができる。
【0035】
本発明にかかる製剤包装体は、「前記袋状収容体は、少なくとも一方向に複数が連設されている」ものとすることができる。
【0036】
「連設」される袋状収容体の数は特に限定されない。また、列数も限定されず、一方向にのみ連設された一列形態や、二方向に連設された二列や三列等の複数列の形態とすることができる。
【0037】
上記の構成により、複数の袋状収容体が連設された形態が製剤包装体の一単位となるため、一個単位の場合に比べ、流通過程での取扱いや需要者による保存・携帯が便利なものとなる。なお、隣接する袋状収容体間にミシン目等の切り離し手段を設けておくことにより、一個ずつ袋状収容体を切り離して服用することができる。
【発明の効果】
【0038】
以上のように、本発明の効果として、むせるおそれや苦味を強く感じるおそれを低減し、且つ、口腔内での違和感を低減して製剤を服用することができ、服用に際して煩雑な作業を要しないと共に、必要量を服用できたか否かの管理が容易な製剤包装体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の最良の一実施形態である製剤包装体について、図1乃至図6を用いて説明する。ここで、図1は本実施形態の製剤包装体の構成を示す(a)平面図、(b)X−X線断面図、及び(c)A範囲拡大断面図であり、図2は本実施形態の製剤包装体の製造方法を示す工程図であり、図3は袋状収容体の他の実施形態を示す拡大断面図であり、図4はシール部について説明する平面図であり、図5は袋状収容体の他の外形形状を例示する平面図であり、図6は複数の袋状収容体が連設された構成を例示する平面図である。なお、図1(b),(c)及び図3は、構成を明示するため厚さ方向の寸法を誇張して表しており、図1(c)及び図3では製剤を省略して図示している。また、図3は図1(b)のA範囲に相当する部分を拡大した断面図である。
【0040】
本実施形態の製剤包装体11は、図1に示すように、重畳された可食フィルム1がシールされて形成された周状のシール部2を備える袋状収容体3と、経口摂取用の薬物成分を含有し袋状収容体3に収容された製剤5とを具備している。すなわち、重畳された可食フィルム1が周状にシールされることによって、シール部2より内側で可食フィルム1間には中空の収容空間4が形成され、この収容空間4に製剤5が収容される。
【0041】
このような構成の製剤包装体11は、例えば、図2に示す方法で製造することができる。本実施形態の製剤包装体の製造方法は、可食性のフィルム形成剤を液媒体に溶解させ高粘度の溶液を調製する工程S1と、高粘度溶液を常温または高温状態で脱泡する工程S2と、脱泡後の溶液を基面上に流延する工程S3と、流延された溶液を乾燥させて可食フィルムを形成させる工程S4と、形成された可食フィルムを基面から剥離する工程S5と、可食フィルムを重畳させ周状に加熱圧着して袋状収容体3を形成すると共に袋状収容体3の中に所定量の製剤を収容する工程S6と、製剤が収容された袋状収容体をシール部の略中央で切断する工程S7とを具備している。
【0042】
より詳細に説明すると、工程S1では、フィルム形成剤と液媒体とを混合し、ダマがなくなるまで充分撹拌する。このとき、可塑剤、矯味剤、乳化剤等の添加剤を添加することもできる。また、液媒体としては、フィルム形成剤や添加剤の溶解性により、水、温水、希酸、希アルカリ、アルコール等の有機溶媒を使用することができ、加熱下で溶解させることもできる。
【0043】
工程S3では、平滑な平面にベースフィルム(例えば、PP、PET製)を固定して基面とし、調製されたフィルム形成剤溶液を基面上に均一に流延する。なお、可食フィルムの厚さは、フィルム形成剤溶液の粘度、流延速度等に依存するため、所望の厚さとなるように適宜調整を行う。
【0044】
工程S5では、例えば、重畳させた可食フィルム間に所定量の製剤を位置させ、その周縁部を周状に一度で加熱圧着することにより、製剤が収容された袋状収容体を形成することができる。或いは、周状のシール部の一部を除いて加熱圧着して一部が開口した袋状収容体を形成した上で、開口部から製剤を充填し、最後に開口部(シール部の残部)を加熱圧着することにより、製剤が収容された袋状収容体を形成することもできる。また、袋状収容体を形成して製剤を収容する工程S5と切断する工程S6とは、例えば、四方シール包装機やピロー包装機等の製袋充填機を使用することにより、一連の動作として行わせることができる。
【0045】
また、他の実施形態の袋状収容体3bとして、図3(a)に示すように、フィルム第一層1aと、フィルム第一層1aの内側に全体的に積層されたフィルム第二層1bとの二重構造とされた可食フィルム1により構成させたものを例示することができる。このとき、例えば、ゼラチン、カゼインナトリウム、ポリビニルアルコール等のように、ヒートシール性は高いが水蒸気透過性も高いフィルム形成剤でフィルム第二層1bを形成した場合、コラーゲン、セルロース、寒天、高分子デンプン等の水蒸気透過性の低いフィルム形成剤でフィルム第一層1aを形成することにより、フィルム第二層1bが有するヒートシール性で強固なシール部2を形成させると共に、フィルム第一層1aによって袋状収容体3bに収容された製剤の吸湿を抑制することができる。
【0046】
或いは、図3(b)に示す袋状収容体3cのように、フィルム第一層1aにおいてシールされる部分のみにフィルム第二層1bを積層させ、フィルム第二層1bの有するヒートシール性によって強固なシール部2を形成させることができる。
【0047】
なお、「周状」のシール部2は、図1及び図4(a)に示すように、可食フィルム1の外周縁に沿って形成されるもの、すなわち、収容空間4を構成する未シール部を除く全面がシールされて形成されるものに限定されず、図4(b)に示すように、可食フィルム1の周縁部に未シール部を残しつつ周状(環状)に形成されるものであっても良い。また、シール部2の内周2cの形状は図1及び図4(a),(b)に示すような矩形に限定されず、図4(c)に示すような円形をはじめ、楕円、三角形等の種々の形状とすることができる。この場合であっても、図4(c)に示すように、収容空間4を構成する未シール部を除く全面がシールされてシール部2が形成されるものであっても、図4(d)に示すように、可食フィルム1の周縁部に未シール部を残しつつ周状(環状)にシール部2が形成されるものであっても良い。
【0048】
また、袋状収容体3の外形の形状は、図1に示した矩形に限定されず、例えば、略円形(図5(a)参照)、略楕円形(図5(b)参照)、角部が略円弧状の略四角形(図5(c)参照)とすることができる。このように、袋状収容体3を尖った角部のない丸みを帯びた形状とすることにより、口腔内で違和感の少ないものとなる。なお、角部が略円弧状の略四角形の場合は、円形や楕円形の場合に比べ、切除されて無駄となる可食フィルム1の量を低減しつつ、丸みを帯びた形状とすることができる。なお、図5(a),(b)では、シール部2の内周2cがそれぞれ円形及び楕円形に形成されている場合を例示したが、これに限定されず、矩形の可食フィルムの四辺に沿って圧着した後に、円形や楕円形の刃体でカットすることにより、袋状収容体3の外形は丸みを帯びた形状であってもシール部2の内周2cの形状は角部を有する形状とすることもできる。
【0049】
更に、図6(a),(b)に示すように、袋状収容体3の複数が連設される構成とすることもできる。これらの場合において、隣接する袋状収容体3間に不連続な切断線7を設ければ、ここで切断することによって袋状収容体3を一個ずつ切り離し服用することができる。なお、図6(a)では、図4(a)または(b)に例示した外形が四角形の袋状収容体を一方向に複数連設した構成を例示している。また、図6(b)では、図5(c)に例示した角部が丸みを帯びた四角形の袋状収容体を一方向に複数連設した構成を例示している。
【0050】
或いは、図6(c)に示すように、袋状収容体3を複数連設した上で、シール部2の内周2cを外側から囲むように不連続な切断線7を設けることもできる。この場合は、切断線7より内側の部分を袋状収容体3の他の部分から切り離し、服用する。このように、隣接する袋状収容体3の境界とは別に切断線7を設けることにより、袋状収容体3の外形とは無関係に服用される部分の形状を設定することができる。図6(c)では、図4(c)または図4(d)に例示した外形が四角形でシール部2の内周2cの形状が円形である袋状収容体3を連設した場合について、切断線7を円形に形成した場合を例示している。このように袋状収容体3に関しては四角形とすることによって複数を連設し易くすると共に、切り離されて服用される部分の形状は口腔内での違和感の少ない形状とすることができる。また、袋状収容体3の境界とは別に切断線7を設けることにより、袋状収容体3の大きさに関わらず、服用される部分の大きさを設定することができる。これにより、袋状収容体3は取り扱いのし易い大きさに設定すると共に、服用される部分の大きさはなるべく小さくして口腔内での違和感を低減させることもできる。
【0051】
なお、切断線7は種々の形状に形成することができ、例えば、図5(b),(c)で袋状収容体3の外形形状として例示した形状と同様の形状とすることができる。
【0052】
また、図6では複数の袋状収容体3が一列に配設された場合を例示したが、これに限定されず、二列や三列等の複数列に配設される構成とすることもできる。
【0053】
以下、本実施形態の製剤包装体における袋状収容体の具体的な実施例1〜5について説明する。表1に、本実施例1〜5の袋状収容体の原料組成(質量%)を示す。これらの実施例の袋状収容体は、厚さ20〜40μmの可食フィルムにより、外形を約19mm×約30mmの矩形状に形成し、シール部の幅は約3mmとした。
【0054】
【表1】

【0055】
何れの実施例においてもシール部における圧着状態は良好であり、製剤として散剤や細かな顆粒剤を収容した場合であっても、袋状収容体の外に製剤が漏出することはなかった。
【0056】
また、実施例1〜5の袋状収容体について、次の方法で水中における崩壊性を評価した。その結果を表2に示す。
<崩壊試験>
シャーレに入れた室温(20〜25℃)の精製水に、製剤を収容していない袋状収容体一枚を浮かべて静置し、浮かべた瞬間から崩壊が視認されるまでの所要時間を測定した。更に、袋状収容体の重量のばらつきを補正するため、袋状収容体の重量で除算した値、すなわち単位重量当たりの崩壊時間(sec/mg)を崩壊性の指標とした。なお、それぞれ3枚の袋状収容体について測定を行い、その平均値を使用した。
【0057】
【表2】

【0058】
表2から明らかなように、水に対する袋状収容体の崩壊性は、フィルム形成剤の種類によって大きく異なり、製剤を主に体内のどこで吸収させるかを袋状収容体によって調整することができると考えられた。例えば、口腔内の粘膜から薬物成分を吸収させたい製剤の包装には、フィルム形成剤としてPVAを用いた袋状収容体(実施例1)やゼラチンを用いた袋状収容体(実施例3)のように、水に対する崩壊性の高い袋状収容体が適している。一方、フィルム形成剤としてツェインを用いた袋状収容体(実施例5)のように水に崩壊し難い袋状収容体に製剤を収容させれば、服用に際して用いる水や湯或いは唾液によっては袋状収容体が崩壊し難く、飲み込むように服用することにより、薬物成分を胃や腸など体内で吸収させることができる。
【0059】
また、水によって崩壊する袋状収容体であっても、フィルム形成剤としてPVP(実施例2)及びカゼインNa(実施例4)を使用した袋状収容体は、実施例1,3の袋状収容体に比べて水に対する崩壊速度が遅く、薬物成分をゆっくりと吸収させ穏やかに作用させることができると考えられた。従って、フィルム形成剤の種類によって袋状収容体の溶解性を調整することにより、薬物成分を作用させる場所(口腔内・胃・腸等)に加え、薬物成分を作用させる速度をコントロールできると考えられた。
【0060】
加えて、実施例1,3の袋状収容体は水に対する崩壊性が高いため、口腔内の水分によって容易に溶解または崩壊する。そのため、ごく少量の水でも製剤を服用することができ、人によっては水なしでも服用することができた。ここで、実施例1の袋状収容体に微細な粉末状の消化酵素ビオヂアスターゼ30mgが収容された製剤包装体を、種々の年齢層の30人に、約20mlの水と共に服用してもらい、服用しやすさを四段階で評価してもらった。その結果、大変服用し易い8人、服用し易い12人、やや服用しにくい8人、服用し難い2人であり、個人差はあるものの被験者のうちの三分の二から服用し易いという評価が得られた。また、約20mlという少量の水で、全員が袋状収容体ごと製剤を服用することができた。
【0061】
次に、製剤としてフィルム状製剤を収容させた製剤包装体について説明する。ここでは、薬物成分として生薬成分、及び可食性のフィルム形成剤として水溶性のフィルム形成剤を含有したフィルム状製剤について例示する。
【0062】
本実施形態のフィルム状製剤は、可食性の水溶性フィルム形成剤及び生薬成分を混合した混合液を調製し、脱泡処理の後、混合液を基面上に流延し乾燥させ、形成されたフィルムを基面から剥離することによって製造することができる。ここで、生薬成分と水溶性フィルム形成剤との混合液の調製は、例えば、水溶性フィルム形成剤及び生薬の乾燥エキスを水に溶解させることにより行うことができる。或いは、生薬のエキス抽出液を溶媒としてフィルム形成剤を溶解させて混合液とすることができる。また、或いは、フィルム形成剤の水溶液に生薬の乾燥粉末を分散させて混合液とすることもできる。更に、混合の際には、可塑剤、矯味剤等の添加剤を添加することもできる。
【0063】
以下、本実施形態のフィルム状製剤の具体例について説明する。本実施形態のフィルム状製剤の組成は、製剤の全乾燥質量に対する乾燥固形分として、オウバク91.91質量%、グリセリン4.60質量%、寒天2.76質量%、クコシ末0.74質量%であった。また、フィルム状製剤の厚さは約150μmとした。
【0064】
製造されたフィルム状製剤の水分含有率を日本薬局方で規定された生薬試験法に基づいて求めたところ、9.6質量%であった。このフィルム状製剤を、包装されていない状態で常温の室内で放置したところ、三週間経過した頃からべたつき始め、一カ月経過した時点ではハンドリングに支障をきたす程度のべたつきを生じた。これは、本例のフィルム状製剤では生薬成分であるオウバクの含有率が90質量%以上と極めて高いために、フィルム状製剤の吸湿性が生薬成分の吸湿性の影響を受けたものと考えられた。一方、このフィルム製剤を上記の実施例1〜5の袋状収容体に収容して製剤包装体としたところ、何れの場合も吸湿によるべたつきを抑制することができ、フィルム状製剤単独の場合より保存性及び保形性を改善することができた。
【0065】
加えて、フィルム状製剤が袋状収容体に包装されていることにより、服用の際に、高含有率で含有されるオウバク独特の苦味を感じる程度が低減された。また、実施例1,3の袋状収容体に収容した場合は、フィルム状製剤自体が口腔内で溶解または崩壊し易いことに加え、袋状収容体も口腔内で溶解または崩壊し易いため、製剤包装体全体が口腔内で溶解または崩壊し易いものとなった。一方、実施例5の袋状収容体に収容した場合、水溶性の高いフィルム製剤が口腔内では溶解または崩壊し難い製剤となった。
【0066】
以上のように、上記の実施例によれば、可食性の袋状収容体ごと製剤を服用することができ、製剤として微細な粉末状の消化酵素を収容しても、むせたり咳き込んだりすることなく服用することができた。また、実施例1〜5の袋状収容体は、何れもサイズが約19mm×約30mm(シール部の幅約3mm)とコンパクトで、シート状のオブラートのように折り畳まれる部分がなく、約30mgの消化酵素を収容した状態での厚さも約0.2mmと薄いため、嵩張らず口腔内での違和感の小さいものであった。
【0067】
加えて、予め袋状収容体に所定量が収容された製剤を袋状収容体ごと全量服用することができるため、必要量を服用できたか否かの管理が極めて容易なものとなった。また、従来のシート状のオブラートのように服用に際して煩雑な作業が不要で、手軽に服用することができた。
【0068】
また、実施例1〜4の袋状収容体は、口腔内の水分により溶解または崩壊して製剤を包み込むように作用するため、製剤が喉を通り易いものとなった。特に、実施例1,3の袋状収容体は水に対する崩壊性が高く、嚥下機能の低い人であっても服用し易いと考えられた。また、実施例1,3の袋状収容体は人によっては水なしで服用することも可能であり、水溶性を更に高めることにより、場所を問わず服用できる携帯性に優れた製剤包装体となると考えられた。
【0069】
更に、フィルム形成剤として、ヒートシール性に優れるPVA,PVP,ゼラチン,カゼインNa,ツェインを使用したことにより、シール部が強固に形成され、収容された製剤の漏出が効果的に防止された。また、実施例1〜5の袋状収容体はそれぞれ水に対する崩壊性が異なり、薬物成分を主に吸収させる場所(口腔内・胃・腸)や吸収速度を、フィルム形成剤の種類によって調整できると考えられた。
【0070】
加えて、製剤としてフィルム状製剤を用いた場合は、袋状収容体によってフィルム状製剤の強度や耐吸湿性を補うことができると共に、フィルム状製剤の口腔内での優れた溶解性・崩壊性を損なうことなく包装することや(実施例1,3)、水溶性のフィルム状製剤でありながら、その薬物成分を主に体内で吸収させるものとすることができた(実施例5)。
【0071】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0072】
例えば、上記の実施形態では、フィルム形成剤を含む高粘度の溶液を流延する前に脱泡する工程を経る製造方法を例示したが、これに限定されず、脱泡することなく流延することもできる。これにより、可食フィルムに細かな空隙が多数形成されるため、空隙内への水分の吸収により、水溶性の可食フィルムを口腔内でより溶解または崩壊し易いものとすることができる。或いは、水分の吸収により難水溶性の可食フィルムの口腔内での柔軟性を高め、飲み込み易い製剤包装体とすることができる。
【0073】
また、可食フィルムには薬物成分が含有されない場合を例示したが、これに限定されない。例えば、製剤に含まれる薬物成分と同種の薬物成分を可食フィルムにも含有させることにより、一つの製剤包装体に含有される薬物成分の量を増加させることができる。或いは、製剤に含まれる薬物成分とは異なる種類の薬物成分を可食フィルムに含有させることにより、可食フィルムに含有される薬物成分と袋状収容体に収容された製剤の薬物成分との相乗効果を図ることができる。なお、袋状収容体が丸みを帯びた形状となるように周囲を切除し、切除された部分を廃棄する場合は、可食フィルムには薬物成分を含有させない方が薬物成分の廃棄の問題がなく望ましい。また、可食フィルムが薬物成分を含有しない場合は、薬物成分を含有する場合よりもフィルム強度が高く、薬物成分の吸湿性等に可食フィルムが影響を受けることがないため、袋状収容体の性状が安定したものとなる。
【0074】
更に、袋状収容体に収容させる製剤として、散剤及びフィルム状製剤の場合を例示したが、製剤の剤形はこれに限定されるものではない。例えば、漢方薬の丸剤には非常に小さな粒を一回に数多く服用するものがあり、一回量を数えるのが大変であると共に、計数中に丸剤が転がりこぼしてしまうこともあった。これに対し、本発明では、予め丸剤を計数または計量して袋状収容体に収容しておくことができるため、使用者は袋状収容体ごと服用すれば足り、煩雑な手間を要さず容易に丸剤を服用することができる。
【0075】
また、可食インキを用いた印刷、金・銀等の可食性金属の箔押し加工、可食性の色箔の箔押し加工を可食フィルムに施すことにより、袋状収容体に文字情報や記号等を表示することができる。これにより、例えば、白い散剤など外見上で区別し難い製剤であっても、袋状収容体の表示によって識別することが可能となり、誤った服用を防止することができる。なお、可食性の色箔の箔押しは、セラック、ツェイン等の可食性の接着材に可食性の色素等が混合された着色層が設けられた箔押し材を、可食フィルムに加熱圧着することにより行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本実施形態の製剤包装体の構成を示す(a)平面図、(b)X−X線断面図、及び(c)A範囲拡大断面図である。
【図2】本実施形態の製剤包装体の製造方法を示す工程図である。
【図3】袋状収容体の他の実施形態を示す拡大断面図である。
【図4】シール部について説明する平面図である。
【図5】袋状収容体の他の外形形状を例示する平面図である。
【図6】複数の袋状収容体が連設された構成を例示する平面図である。
【符号の説明】
【0077】
1 可食フィルム
1a フィルム第一層(可食フィルム)
1b フィルム第二層(可食フィルム)
2 シール部
4 収容空間
3,3b,3c 袋状収容体
5 製剤
7 不連続な切断線
11 製剤包装体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重畳された可食フィルムがシールされて形成された周状のシール部を備える袋状収容体と、
経口摂取用の薬物成分を含有し、前記袋状収容体に収容された製剤と
を具備することを特徴とする製剤包装体。
【請求項2】
前記可食フィルムは、少なくとも前記シール部で、内側にフィルム第二層が積層された二重構造とされ、
前記フィルム第二層は、ゼラチン、カゼインナトリウム、ツェイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、加工デンプン、プルラン、アラビノキシラン、大豆タンパクから選ばれる少なくとも一種のフィルム形成剤を含有する
ことを特徴とする請求項1に記載の製剤包装体。
【請求項3】
前記製剤は、前記薬物成分及び可食性のフィルム形成剤を含有してフィルム状に形成されたフィルム状製剤であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の製剤包装体。
【請求項4】
前記袋状収容体は、外周の少なくとも一部が曲線状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の製剤包装体。
【請求項5】
前記袋状収容体は、最長部分の長さが5mm〜50mmに形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の製剤包装体。
【請求項6】
前記袋状収容体は、少なくとも一方向に複数が連設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載の製剤包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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