説明

製品を識別する方法

【課題】多層フォトニック構造により製品を識別する方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態において、製品を識別する方法は、複数の多層フォトニック構造を作製する段階であって、上記複数の多層フォトニック構造の各々は一意的な強度変化特性を有するという段階と、上記複数の多層フォトニック構造の内のひとつの多層フォトニック構造であって、上記一意的な強度変化特性を生成するというひとつの多層フォトニック構造を、被覆内に取入れる段階と、上記複数の多層フォトニック構造の内のひとつの多層フォトニック構造の上記一意的な強度変化特性に対応する電子的コードを生成する段階と、を含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は概略的に製品を識別する方法に関し、更に詳細には、多層フォトニック構造により製品を識別する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両などの如き製品は一般的に、製造プロセスの間において、通し番号、および、車両識別番号(VIN)などの如き識別用目印によりマーク付けされる。上記識別用目印は、製造の日付などの如き製品に関する情報を提供し得ると共に、上記製品の耐用寿命の全体にわたり該製品の追尾を助力し得る。たとえば上記識別用目印は、在庫目録の追尾、盗難された部材の復元、製造場所の識別などに対して有用である。しかし、斯かる識別は製品と一体的であることから、識別用目印を利用するためには、その製品が入手可能とされる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
故に、製品を識別するための代替的な方法に対する要望が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態において、製品を識別する方法は、複数の多層フォトニック構造を作製する段階であって、上記複数の多層フォトニック構造の各々は一意的な強度変化特性を有するという段階と、上記複数の多層フォトニック構造の内のひとつの多層フォトニック構造であって、上記一意的な強度変化特性を生成するというひとつの多層フォトニック構造を、被覆内に取入れる段階と、上記複数の多層フォトニック構造の内のひとつの多層フォトニック構造の上記一意的な強度変化特性に対応する電子的コードを生成する段階と、を含み得る。
【0005】
別実施形態において、製品を識別する方法は、一意的な強度変化特性を生成する多層フォトニック構造を含む被覆を配備する段階と、上記被覆を、製品の少なくとも一部分に対して適用する段階と、上記製品の識別用目印を、上記一意的な強度変化特性と相関させる段階と、を含み得る。
【0006】
更に別の実施形態において、製品を識別する方法は、製品からサンプルを収集する段階であって、上記サンプルは一意的な強度変化特性を有する多層フォトニック構造を含むという段階と、上記多層フォトニック構造に対して基準光を送出し、上記一意的な強度変化特性を生成する段階と、上記一意的な強度変化特性を検出する段階と、電子的データベースに対して照会を行い、上記製品の識別用目印を決定する段階と、上記電子的データベースから上記製品の上記識別用目印を検索読取し、該製品を識別する段階と、を含み得る。
【0007】
これらの特徴、および、本明細書中に記述される実施形態により提供される付加的な特徴は、図面と併せて以下の詳細な説明を考慮すれば更に十分に理解されよう。
【0008】
図面中に示される実施形態は本質的に例証的かつ例示的であり、各請求項により限定される主題を制限することを意図していない。代表的実施形態に関する以下の詳細な説明は、同様の構造は同様の参照番号で表されるという以下の各図と併せて読破されたときに理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本明細書中に示され且つ記述されたひとつ以上の実施形態に係る製品を識別する方法のフローチャートである。
【図2】本明細書中に示され且つ記述されたひとつ以上の実施形態に係る多層フォトニック構造の概略図である。
【図3】本明細書中に示され且つ記述されたひとつ以上の実施形態に係る多層フォトニック構造を備える被覆を有する車両の概略図である。
【図4】本明細書中に示され且つ記述されたひとつ以上の実施形態に係る強度変化特性を示すグラフである。
【図5】本明細書中に示され且つ記述されたひとつ以上の実施形態に係る製品を識別する方法のフローチャートである。
【図6】本明細書中に示され且つ記述されたひとつ以上の実施形態に係る製品を識別する方法のフローチャートである。
【図7】本明細書中に示され且つ記述されたひとつ以上の実施形態に係る製品を識別する方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、製品を識別する方法の一実施形態のフローチャートである。該方法は、複数の多層フォトニック構造を作製する段階を含み得る。複数の多層フォトニック構造の各々は、一意的な強度変化特性を生成すべく調整され得る。該一意的な強度変化特性は、反射率変化特性、目標変化特性、または、それらの組み合わせとされ得る。上記一意的な強度変化特性を生成する多層フォトニック構造は、被覆内へと取入れられ得る。上記一意的な強度変化特性に対応する電子的コードが生成され得る。本明細書中においては、製品を識別する方法が更に詳細に記述される。
【0011】
製品を識別する上記方法を記述する上では、上記多層フォトニック構造に入射する光が参照される。“光”という語句は、電磁スペクトルの種々の波長、特に、電磁スペクトルの紫外(UV)、赤外(IR)および可視の部分における波長を指していることを理解すべきである。更に、“一意的”という語句は、与えられた分類、状況、特徴またはモデルに対し、発生頻度が限られることを意味する。
【0012】
次に図2を参照すると、多層フォトニック構造の一実施形態20が概略的に示される。本明細書において更に詳細に記述される如く、本明細書中に記述される上記多層フォトニック構造は概略的に、交互的に配置された、比較的に高屈折率を有する材料(たとえば高屈折率材料nH)製の複数の層、および、比較的に低屈折率を有する材料(たとえば低屈折率材料nL)製の複数の層を備える。詳細には、上記高屈折率材料nHは低屈折率材料nLと比較して相対的に高い屈折率を有し、且つ、低屈折率材料nLは高屈折率材料nHと比較して相対的に低い屈折率を有する。
【0013】
図2に示された如く、高屈折率材料nHは概略的に、高屈折率層番号を表す下付き文字が追随するnH(たとえば、nH1)により表される。同様に、低屈折率材料nLは概略的に、低屈折率層番号を表す下付き文字が追随するnL(たとえば、nL1)により表される。多層フォトニック構造120の第1層122は、基材126から最も遠い層であり、且つ、高屈折率材料nH1から成る。多層フォトニック構造120の最終層124は、基材126に最も近い層であり、且つ、高屈折率材料nHxから成る。各ドットは、中間層nHi、nLiが任意の合計数x+yの層を達成すべく反復され得ることを表しており、その場合、xは高屈折率材料nHによる層の総数であり、且つ、yは低屈折率材料nLによる層の総数である。示された如く、多層フォトニック構造120の実施形態は、低屈折率材料nLよりも一層だけ多い高屈折率材料nHを備え、すなわち、x=y+1である。故に各層の総数は、層合成プロセスにより製造され得る、たとえば約9から約39まで、約5から約99まで、または、約3から(数)百番台の奇数までなどの如き、任意の奇数とされ得る。本明細書中に記述される一実施形態において、各層の厚みは変化せしめられることで、一意的な強度変化特性を有する多層フォトニック構造120がもたらされ得る。故に、上記構造の各層は、該構造における他の任意の層の厚みから独立した厚みを有し得ることを理解すべきである。図2に示された如く、各層の厚みは概略的にtjにより表され、その場合に下付き文字jは、固有の厚みを有する層を表している。下付き文字jは1からx+yまでの範囲であり、且つ、tkおよびtk+1は各中間層の厚みである。多層フォトニック構造120の各層は基材126上に載置され、該基材は、ガラス、ポリマ材料、セラミック材料、金属製材料、複合材料、および/または、それらの種々の組み合わせを含み得る。たとえば、多層フォトニック構造120の各層は、約1.52の屈折率を有するガラス製の基材126上に載置され得る。
【0014】
次に図2および図3を参照すると、一意的な強度変化特性を生成する多層フォトニック構造120は、後時的に車両140の如き製品に対して適用される塗料もしくは同様の被覆内に取入れられ得る。たとえば、多層フォトニック構造120は、複数の薄片128または個別的な粒子へと形成もしくは構成されると共に、有機もしくは無機の結合剤の如き液体担体中へと取入れられ、且つ、製品に対して塗付され得る塗料もしくは同様の被覆系の如き被覆142中に使用されることで、多層フォトニック構造120の光学特性を上記製品に対して付与し得る。たとえば、本明細書中に記述される多層フォトニック構造120は先ず、基材126上へと載置され得る。その後、多層フォトニック構造120は個別的な粒子もしくは薄片128へと破断される。一実施形態において、載置された多層フォトニック構造120は先ず、個別的な粒子へと破断される前に、基材126から分離され得る。たとえば、基材126は、該基材126が撓曲可能なポリマ基材、撓曲可能な合金などであるときに、多層フォトニック構造120から剥離され得る。代替的に、基材126は適切な溶液に溶解されることで、多層フォトニック構造120を残置し得る。多層フォトニック構造120が基材126から剥離されても良い。別実施形態においては、基材126から多層フォトニック構造120を分離することなく、多層フォトニック構造120および基材126は両者ともに、個別的な粒子へと破断される。
【0015】
多層フォトニック構造120は、種々の公知技術を用いて、複数の薄片128もしくは個別的な粒子へと小寸化され得る。たとえば多層フォトニック構造120は、粉砕手段により粉砕もしくは回転されることで、該多層フォトニック構造120は破砕されると共に、一切の結果的な薄片128の粒子サイズが減少され得る。一実施形態においては、多層フォトニック構造120が個別的な粒子へと小寸化されるときに、該多層フォトニック構造120に対して顔料が混合される。多層フォトニック構造120の薄片128もしくは個別的な粒子は、約0.5ミクロン〜約10ミクロンの平均厚み、および、約10ミクロン〜約50ミクロンの平均直径を有し得る。本明細書中で用いられる如く、平均厚みとは、少なくとも3つの異なる厚み測定値から求められた平均値を意味し、且つ、平均直径という語句は、少なくとも3つの異なる直径測定値から求められた平均値として定義される。
【0016】
多層フォトニック構造120が薄片128へと小寸化された後、多層フォトニック構造120は、塗料もしくは被覆系の如き被覆142内へと取入れられ得る。たとえば、(顔料を備えるもしくは備えない)多層フォトニック構造120の個別的な粒子がポリマ媒体中で無作為に配向される如く、愛多層フォトニック構造120は上記ポリマ媒体中に分散され得る。その後、多層フォトニック構造120の個別的な粒子を含む塗料もしくは被覆の如き被覆142は、吹き付け、静電帯電、粉末被覆などにより製品上に載置され得る。
【0017】
次に図1を参照すると、製品を識別する準備的段階のフローチャート100が示される。フローチャート100中に列挙された各段階は特定の順番で配列され且つ記述されるが、各準備的段階が実施される順序は変更され得ることを理解すべきである。
【0018】
再び図2を参照すると、多層フォトニック構造120の実施形態は強度変化特性を生成すべく調整され得、すなわち、多層フォトニック構造120は、少なくともひとつの区別可能な特性を有する所望の強度変化特性を生成し得る。詳細には多層フォトニック構造120は、上記層の各々の厚みt1、t2、…、tk、tk+1、…、tx+yを調節することにより調整され得る。上記厚みは、たとえば、約0.05nm〜約500nmなどの如き、任意の値とされ得る。たとえば、一実施形態において多層フォトニック構造120は、“全方向性の多層フォトニック構造を製造する方法”と称され2009年2月19日にファイルされた米国特許出願第12/389,256号に記述された方法を利用して一意的な強度変化特性へと調整され、該米国特許出願第12/389,256号は言及したことにより本明細書中に援用される。
【0019】
一実施形態において、多層フォトニック構造120の強度変化特性をモデル化する方程式の系を解くために、変換マトリクス法(transfer matrix method)が採用され得る。一実施形態において上記強度変化特性は、上記構造に入射する光の角度(たとえば、入射角)と、偏光の度合いと、問題となる単一もしくは複数の波長と、多層フォトニック構造120の各層の厚みtjと、上記高屈折率材料および低屈折率材料、伝送媒体、および、入射媒体の夫々の屈折率とに依存する。上記変換マトリクス法は、ユーザからの種々の入力であって、特定の多層フォトニック構造120の複数の特性に関する種々の入力を受信して、強度変化特性を決定すべくプログラムされたソフトウェアを備えるコンピュータにより実施され得る。斯かるソフトウェアは、フォトニック計算機(photonics calculator)と称され得る。
【0020】
上記層の各々の厚みt1、t2、…、tk、tk+1、…、tx+yは、上記フォトニック計算機により算出された強度変化特性を、所望の強度変化特性と比較することにより決定され得る。詳細には、上記フォトニック計算機と併せて、最適化もしくは曲線適合処理が行われ得る。一実施形態においては、上記フォトニック計算機により算出された強度変化特性と、所望の強度変化特性と、の間の二乗差の合計が最小化される。コンピュータ・システム上で実行されるコンピュータ・ソフトウェアにより実現されるオプティマイザにより、最小二乗適合法が実施され得る。本明細書においては、多層フォトニック構造120をモデル化して最適化する特定の方法が記述されるが、本明細書中に記述される実施形態は、多層フォトニック構造120を調整して所望の強度変化特性を生成し得る任意の方法によりモデル化されて最適化され得ることを理解すべきである。
【0021】
多層フォトニック構造120はまた、適切な高屈折率材料nHおよび低屈折率材料nLを選択することによっても調整され得る。一実施形態において、nLおよびnHに対する夫々の値は、これらの値が一般的に入手可能な材料と同一である如く選択される。たとえば、nLおよびnHの値がシリカ(SiO2、屈折率1.46)およびチタニア(TiO2、屈折率2.36)に対する屈折率を近似する如く、nLの値は1.46と選択され得ると共に、nHに対する値は2.29と選択され得る。故に、nLおよびnHに対して1.46および2.29を夫々採用する多層フォトニック構造は、シリカおよびチタニア、または、同一もしくは類似の屈折率を有する他の材料から構成され得る。nLおよびnHに対する他の値であって、他の材料の屈折率に対応するという他の値が選択され得ることを理解すべきである。以下に示される表1は、本明細書中に記述される多層フォトニック構造において利用され得る可能的な材料と、それらの対応屈折率との非排他的なリストを含んでいる。
【0022】
【表1】

【0023】
たとえば、多層フォトニック構造120は、高屈折率材料nH、低屈折率材料nL、および、所望の強度変化特性を選択することにより調整され得る。一実施形態において、上記層の各々の厚みt1、t2、…、tk、tk+1、…、tx+yの初期解は、所望の強度変化特性のピーク(または最大値)の波長の四分の一波長に設定される。上記初期解から開始し、上記オプティマイザは反復的に、上記フォトニック計算機から出力された強度変化特性を上記所望の強度変化特性と比較する。斯かる比較に基づき、上記オプティマイザは、上記フォトニック計算機により使用された次続的な解を供給することで、次続的に出力される強度変化特性を生成する。上記の解を求める段階および比較する段階は、出力された強度変化特性が上記所望の強度変化特性に収束するまで反復される。別実施形態は、乱数発生器を利用して上記初期解を生成する。更なる実施形態は、層の異なる部分集合に対して異なる初期解を提供し得る。たとえば、強度変化特性は、3つの異なる波長にて3個の最大値を備え得る。その場合に多層フォトニック構造30は、各区画の複数の層が、上記最大値の内のひとつの最大値の四分の一波長に基づく初期解厚みを有する如く、3つの区画へと分割され得、すなわち、区画1の各層は、ひとつの最大値に対応する初期解厚みを以て開始し、区画2の各層は、もうひとつの最大値に対応する初期解厚みを以て開始し、且つ、区画3の各層は、更なる最大値に対応する初期解厚みを以て開始する。
【0024】
上記一意的な強度変化特性は、反射率変化特性、透過率変化特性、または、それらの組み合わせとされ得る。本明細書中で用いられる如く、反射率とは、多層フォトニック構造120に入射して該多層フォトニック構造120により反射される光の割合または百分率であって、該構造に入射する光の波長の関数としてプロットされ得るという割合または百分率を指している。本明細書中で用いられる如く、透過率とは、多層フォトニック構造120に入射して該多層フォトニック構造120を透過もしくは通過される光の割合または百分率であって、該構造に入射する光の波長の関数としてプロットされ得るという割合または百分率を指している。
【0025】
本明細書中に記述される製品を識別する方法の特定実施形態は、調整された反射率および/または透過率を利用して一意的な強度変化特性を生成するが、本明細書中に記述される方法は、代替例において、強度変化特性を生成するために吸収率を利用し得ることを理解すべきである。本明細書中で用いられる如く、吸収率とは、上記多層フォトニック構造120に入射して反射も透過もされない光の割合または百分率であって、上記反射率および透過率から決定されるという割合または百分率を指している。故に、一意的な強度変化特性の実施形態は、反射率、透過率、吸収率、または、それらの任意の組み合わせを含み得る。
【0026】
再び図1を参照すると、製品を識別する方法は、本明細書中において上述された如く、各々が一意的な強度変化特性を有する複数の多層フォトニック構造120(図2)を作製する段階102と、複数の多層フォトニック構造120の内のひとつの多層フォトニック構造であって、上記一意的な強度変化特性を生成するというひとつの多層フォトニック構造を、被覆内に取入れる段階104とを含み得る。特定実施形態は、多層フォトニック構造120を塗料もしくは被覆内へと取入れることを記述するが、本開示内容の各実施形態は、たとえば、製品の表面に対して装着された単層の材料もしくはビニルなどの如き薄寸体もしくは包装材内へと取入れられた多層フォトニック構造120も含み得ることを銘記されたい。
【0027】
一実施形態において、製品を識別する上記方法は、一意的な強度変化特性に対応する電子的コードを生成する段階106を含み得る。上記電子的コードは、強度変化特性を表すアナログもしくはデジタルのデータであって、たとえば、RAM、ROM、フラッシュ・メモリ、ハードドライブ、または、機械可読命令を記憶し得る任意のデバイスの如き、電子的記憶装置に記憶され得るというアナログもしくはデジタルのデータである。故に上記電子的コードは、連続的な強度変化特性を擬態する実質的に連続的な変化特性、または、上記強度変化特性の一群の個別的な複数のサンプルに対応する数値的数字の集合とされ得る。
【0028】
上記構造の反射率、透過率または吸収率の如き強度変化特性は、多層フォトニック構造120に入射する光の波長の関数としてプロットされ得る。図4は、約900nm〜約1,600nmの間における異なる波長におけるピーク130、132、134、136、138を備える、この場合には反射率変化特性である、強度変化特性を示している。図4においては5個のピークが示されるが、強度変化特性におけるピークの個数は制限されないことを銘記されたい。ひとつの強度変化特性において許容され得るピークの個数を制限し得るひとつの実用的な考察は、所望の半値全幅(FWHM)である。FWHMとは、強度変化特性の大きさが、最大強度の大きさの1/2以上となる波長間隔である。強度変化特性ピークの個数はFWHMに反比例し、すなわち、FWHMが大きいほどピークの個数は減少し、且つ、FWHMが小さいほどピークの個数は増加する。たとえば、図4に示された、約100nmのFWHMを備える実施形態において、第1反射率ピーク130は約950nmに中心合わせされ、第2反射率ピーク132は約1,100nmに中心合わせされ、第3反射率ピーク134は約1,250nmに中心合わせされ、第4反射率ピーク136は約1,400nmに中心合わせされ、且つ、第5反射率ピーク138は約1,550nmに中心合わせされる。更に、ピークの個数は、たとえば約400nm〜約2,100nmの間における如く、強度変化特性のスペクトル帯域幅を広げることにより増加され得ることを銘記されたい。幾つかの実施形態において、上記強度変化特性は、電磁スペクトルの可視部分においては定数を含み得るかもしくは変化特性を含まない一方、電磁スペクトルの非可視部分(たとえば赤外および紫外)を変化させ得る。故に、ひとつの一意的な強度変化特性は、電磁スペクトルの非可視部分においてのみ、別の一意的な強度変化特性から変化し得る。
【0029】
一実施形態において、上記電子的コードは、上記強度変化特性の各ピークの個別的なサンプリングに対する複数の数字の集合である。たとえば、依然として図4を参照すると、上記電子的コードは、反射率変化特性のピーク130、132、134、136、138の各々に対応する数字による5桁の英数字コードへとデジタル化され得る。本明細書中で用いられる如く、“英数字”という語句は、文字、数字、句読点、機械可読コードもしくは記号などの符号を意味する。
【0030】
更なる実施形態において、英数字による各桁は、反射率変化特性のピーク130、132、134、136、138の内のひとつのピークの量子化に基づき得る。たとえば、図4には、25%反射率、50%反射率、75%反射率、および、100%反射率という4つの閾値レベルが示される。上記反射率変化特性は、反射率値が、該反射率変化特性の該当部分が超過する最大の閾値に基づく1個の数字へと変換される、という閾値演算により量子化され得る。故に、一実施形態において、第1反射率ピーク130は100%に対応し、第2反射率ピーク132は50%に対応し、第3反射率ピーク134は75%に対応し、第4反射率ピーク136は25%に対し、且つ、第5反射率ピーク138は50%に対応する。その場合、量子化値は、“42312”の如き英数字コードへと変換され得る。本例は、量子化値を複数の数字へと変換することを記述しているが、量子化値は、本明細書中に記述された任意の手法でデジタル化されて電子的コードを生成し得ることを銘記されたい。本明細書中に上述された如く、上記反射率変化特性は、任意数のピークを有し得る。更に、上記電子的コードは、任意数の波長からサンプリングされた任意数の数字を備え得ることを銘記されたい。結果として、幾つかの実施形態において、上記電子的コードにおける数字の個数は、反射率変化特性のピークの個数には依存しない。
【0031】
再び図1を参照すると、製品を識別する方法は、容器内に塗料を装填する段階108を含み得る。詳細には、一実施形態において、一意的な強度変化特性を生成する多層フォトニック構造120(図2)を含む塗料もしくは被覆が、容器内に装填される。該容器は、たとえば、金属、プラスチック、または、塗料もしくは被覆に対して非反応的である他の任意の材料の如き材料を備え得る。本明細書中で用いられる如く、“容器”という語句は、搬送、長期の貯蔵または短期の貯蔵のために所定体積を確保し得るデバイスであって、たとえば、塗装装置のための缶、ドラム、タンク、供給缶などの如きデバイスを意味する。
【0032】
製品を識別する方法は、電子的コードを表すコード化目印を容器に対して適用する段階110を含み得る。上記コード化目印は、たとえば、印刷された英数字コード、バーコード、無線識別タグなどの如き、人間可読もしくは機械可読の記号コードである。上記コード化目印は概略的に、上記容器内に貯蔵された被覆中に取入れられた多層フォトニック構造120(図2)の電子的コードに対応する。故に、幾つかの実施形態において、上記コード化目印は、一意的な強度変化特性も表している。
【0033】
次に図5を参照すると、製品を識別する各段階のフローチャート200が示される。フローチャート200中に列挙された各段階は特定の順番で配列され且つ記述されるが、各段階が実施される順序は変更され得ることを理解すべきである。
【0034】
図3および図5を集合的に参照すると、製品を識別する方法は、多層フォトニック構造120を備える被覆142を配備する段階202と、該被覆142を、車両140の如き製品の少なくとも一部分に対して適用する段階204とを含み得る。本明細書中に記述された如く、被覆系、塗料、透明被覆、または、単層材料とされ得る被覆142は、上記製品の全体もしくは一部分において、該製品に対して適用され得る。たとえば、一実施形態において被覆142は、車両140において頻繁に衝撃される領域に対してのみ適用され得る。詳細には、車両140において、頻繁に衝撃される領域とは、衝突により破損され得る車両140の部分であって、たとえば、フェンダ、バンパ、ドア、グリル、ヘッドランプ、尾灯などの如き部分である。
【0035】
再び図5を参照すると、車両を識別する方法は、製品の識別用目印を、一意的な強度変化特性に対して相関させる段階206を含み得る。一実施形態においては、電子的コードが生成され、上記強度変化特性および上記識別用目印に対して対応付けが為され得る。上記電子的コードは、たとえば、製造情報、型式番号、車両登録情報、権利情報、または、車両識別番号(VIN)などの如き、識別用目印に対して直接的に対応する複数の数字を含み得る。上記識別用目印がVINであるとき、製造者、車両種類、製造部門、車両製造元、車両型式、車体形式、または、連続番号の如き車両識別用目印は、上記電子的コードの一部とされ得る。詳細には、上記電子的コードは、その車両を識別する上記VINにおいて使用されたコードと同一のコード、または、該コードの一部分を備え得る。故に、上記電子的コードが一意的な強度変化特性も表すとき、その車両は上記強度変化特性により識別され得る。
【0036】
別実施形態において、上記電子的コードは電子的データベース内に記憶され得る。該電子的データベースは、演算デバイスによりアクセス可能な電子的記憶装置内に記憶された電子的データを備える。更なる実施形態において、上記電子的コードは、上記電子的データベース内に記憶されると共に、対応する識別用目印と相関され得る。故に上記電子的コードは、上記電子的データベースを介し、上記識別用目印に対してインデックス付けされ得、すなわち、上記電子的コードは上記電子的データベースにおいて上記識別用目印を見出すべく使用され得、且つ/又は、上記識別用目印は上記データベースにおいて上記電子的コードを見出すべく使用され得る。
【0037】
本明細書中に記述された実施形態において、上記電子的データベースはポータルを介してアクセス可能である。該ポータルは、上記電子的データベースにおける情報に対するアクセスおよび該情報の制御を提供する。一実施形態において、上記ポータルは、インターネット・サーバ上に存在すると共に、ワールド・ワイド・ウェブを介して利用可能である。故に、上記電子的データベースにより構成された情報は、たとえば、パーソナルコンピュータまたはモバイル・デバイスなどの如き、インターネットが可能なデバイスを通してインターネットに接続することにより、アクセスおよび制御され得る。
【0038】
次に図6を参照すると、製品を識別する各段階のフローチャート300が示される。フローチャート300中に列挙された各段階は特定の順番で配列され且つ記述されるが、各段階が実施される順序は変更され得ることを理解すべきである。製品を識別する方法は、一意的な強度変化特性を有する多層フォトニック構造120(図1)を備えるサンプルを、製品から収集する段階302を含み得る。
【0039】
たとえば、図3に示された如く、製品から直接的に、車両140の被覆142の如きサンプル144が収集され得る。別実施形態においては、製品と衝突した物体からサンプル144が収集され得る。故に、車両140が、たとえば、衝突の間において、別の車両、ガードレール、建築物、岩石などの如き物体上に被覆142のサンプル144を与えるなら、該サンプル144が回収され得る。
【0040】
再び図6を参照すると、製品を識別する方法は、多層フォトニック構造120(図1)に対して基準光を送出して強度変化特性を生成する段階304と、該強度変化特性を検出する段階306とを含み得る。
【0041】
図7に概略的に示された一実施形態においては、たとえば、多層フォトニック構造120の全スペクトル幅にわたる波長を送出する光源などの、広帯域の光源150が、多層フォトニック構造120に対して基準光152を送出する。図7には示されないが、多層フォトニック構造120は、薄片128(図3)の形態とされ得る。基準光152は多層フォトニック構造120と相互作用する。基準光152と多層フォトニック構造120との間の相互作用により、相互作用光154が生成される。該相互作用光154は、該相互作用光154の強度変化特性を生成する光検出器156により受け入れられる。図7は反射率の測定を概略的に示すが、同様の様式で透過率および吸収率も測定され得ることを銘記されたい。更に、付加的な広帯域の光源および/または光検出器を加えることにより、複数の強度変化特性が測定され得る。上記強度変化特性が一旦検出されたなら、本明細書中に記述された如く、上記強度変化特性をデジタル化および/または量子化することにより、電子的コードが検索読取され得る。
【0042】
再び図6を参照すると、製品を識別する方法は、上記電子的コードを電子的データベースに対して照会し、製品の識別用目印を決定する段階308を含み得る。たとえば上記電子的データベースは、コンピュータの電子的記憶装置内に記憶されたデータベースであって、上記識別用目印および上記強度変化特性に対応する電子的コードに対するというデータベースを手作業により検索することにより、すなわち、画面上で上記データベースを視認することにより、または、上記データベースを有形媒体上に印刷することにより、照会され得る。上記電子的データベースはまた、コンピュータ・プログラムにより実施されるアルゴリズムにより検索されることでも照会され得る。たとえば、上記コンピュータ・プログラムへの上記電子的コードの入力時に、上記識別用目印は自動的に画面上に表示され得る。
【0043】
製品を識別する方法はまた、上記電子的データベースから製品の識別用目印を検索読取し、その製品を識別する段階310も含み得る。詳細には、上記電子的データベースが一旦照会されたなら、上記強度変化特性に対して相関された一切の情報は、たとえば、電子的記憶装置に対してダウンロードされ、表示デバイス上で視認され、または、有形媒体上に印刷されるなどして、検索読取され得る。
【0044】
次に、本明細書中に記述される製品を識別する方法は、一意的な強度変化特性を生成する多層フォトニック材料の光学特性を利用することを理解すべきである。たとえば、一意的な強度変化特性を生成する多層フォトニック材料を備える被覆により車両が処理され得、すなわち、上記強度変化特性は、その車両を識別すべく使用され得る電子的コードと相関される。上記電子的コードは、塗料の色の如き不完全な識別子から、車両のVINの如き完全な識別子にわたり得る。もし、車両が、その被覆の一部分を衝突の間において他の車両上に与えてから走り去るとすると、すなわち、衝突して逃げるとすると、その多層フォトニック構造が分析されることで、行方不明の車両が特定され得る。詳細には、上記被覆は、強度変化特性を露呈する光学的分析のためにサンプリングされ得る。上記強度変化特性は次に、単独で、または、他の情報と組み合わされて利用されることで、行方不明の車両が特定され得る。
【0045】
本明細書中で“実質的に”および“約”という語句は、任意の量的な比較、値、測定値、または、他の表現に由来し得る本来的な不確実性の程度を表すべく使用され得ることを銘記されたい。これらの語句はまた、本明細書において、量的表現が、問題となる主題の基本機能の変化に帰着することなく、述べられた基準から変動し得る程度を表すためにも使用される。
【0046】
本明細書においては特定の実施形態が図示かつ記述されたが、権利請求された主題の精神および有効範囲から逸脱せずに、他の種々の変更および改変が為され得ることを理解すべきである。更に、本明細書においては権利請求された主題の種々の見地が記述されたが、斯かる見地は組み合わされて使用される必要はない。故に、添付の各請求項は、権利請求された主題の有効範囲内である全ての変更および改変を網羅することが意図される。
【符号の説明】
【0047】
120 多層フォトニック構造
142 被覆
144 サンプル
150 広帯域の光源
152 基準光
154 相互作用光
156 光検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の多層フォトニック構造を作製する段階であって、前記複数の多層フォトニック構造の各々は一意的な強度変化特性を有するという段階と、
前記複数の多層フォトニック構造の内のひとつの多層フォトニック構造であって、前記一意的な強度変化特性を生成するというひとつの多層フォトニック構造を、被覆内に取入れる段階と、
前記複数の多層フォトニック構造の内のひとつの多層フォトニック構造の前記一意的な強度変化特性に対応する電子的コードを生成する段階とを有する、
製品を識別する方法。
【請求項2】
前記一意的な強度変化特性は、反射率変化特性、目標変化特性、または、それらの組み合わせである、請求項1に記載の製品を識別する方法。
【請求項3】
前記複数の多層フォトニック構造は各々、高屈折率材料および低屈折率材料の交互的な層を備える、請求項1に記載の製品を識別する方法。
【請求項4】
前記被覆を容器内に装填する段階と、
前記電子的コードを表すコード化目印を前記容器に適用する段階とを更に有する、請求項1に記載の製品を識別する方法。
【請求項5】
一意的な強度変化特性を生成する多層フォトニック構造を備える被覆を配備する段階と、
前記被覆を、製品の少なくとも一部分に対して適用する段階と、
前記製品の識別用目印を、前記一意的な強度変化特性と相関させる段階とを有する、製品を識別する方法。
【請求項6】
前記一意的な強度変化特性に対応する電子的コードを生成する段階と、
前記製品の前記識別用目印を、前記電子的コードと相関させる段階とを更に有する、請求項5に記載の製品を識別する方法。
【請求項7】
前記一意的な強度変化特性が前記電子的コードに従いインデックス付けされる如く、前記電子的コードを電子的データベースに記憶する段階を更に有する、請求項6に記載の製品を識別する方法。
【請求項8】
前記電子的コードは数字を備え、且つ、前記一意的な強度変化特性の量子化ピークは前記数字に対応する、請求項7に記載の製品を識別する方法。
【請求項9】
前記製品は車両である、請求項5に記載の製品を識別する方法。
【請求項10】
前記識別用目印は、製造者、車両種類、製造部門、車両製造元、車体形式、車両型式、および、連続番号の内の少なくともひとつである、請求項9に記載の製品を識別する方法。
【請求項11】
前記被覆は、前記車両の頻繁に衝撃される領域に対して適用される、請求項10に記載の製品を識別する方法。
【請求項12】
製品からサンプルを収集する段階であって、前記サンプルは一意的な強度変化特性を有する多層フォトニック構造を備えるという段階と、
前記多層フォトニック構造に対して基準光を送出し、前記一意的な強度変化特性を生成する段階と、
前記一意的な強度変化特性を検出する段階と、
電子的データベースに対して照会を行い、前記製品の識別用目印を決定する段階と、
前記電子的データベースから前記製品の前記識別用目印を検索読取し、該製品を識別する段階とを有する、
製品を識別する方法。
【請求項13】
前記一意的な強度変化特性は、反射率変化特性、目標変化特性、または、それらの組み合わせである、請求項12に記載の製品を識別する方法。
【請求項14】
前記一意的な強度変化特性を表す電子的コードを検索読取する段階であって、前記電子的データベースは前記電子的コードを以て照会されるという段階を更に有する、請求項12に記載の製品を識別する方法。
【請求項15】
前記識別用目印は、製造者、車両種類、製造部門、車両製造元、車両型式、車体形式、および、連続番号の内の少なくともひとつである、請求項12に記載の製品を識別する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−64202(P2012−64202A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−173805(P2011−173805)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(507342261)トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド (135)
【Fターム(参考)】