説明

製品吊上治具

【課題】インサートを製品中に深く埋設した際にも、軸のブレを押さえて安定して製品を吊上げることができる吊上治具を提供する。
【解決手段】 製品に埋設された吊上用インサートとの契合部分(2)に接続してスペーサー部分(4)を有し、スペーサ部分(4)に接続する吊上治具シャフト(1)を介してワイヤーとの係合部分(3)を有する吊上治具である。つり上げ治具(11)を埋設するコンクリート製品には、スペーサ部分(4)の形状に合致したつり上げ用インサートの上方の空間(15)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品吊上治具、特にはコンクリート製品吊上治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、製造後に運搬・設置する必要のある大型のコンクリート製品を製造する際には、吊上のために製品内部に吊上用インサートを埋設して製造していた。しかし、吊上用インサートは通常プラスチック製であり、コンクリート製品内の異物として残存するため、コンクリート製品の長期的な強度に悪影響を与えるおそれがあった。そのため、インサートを埋設する深さをより深くすることが試みられている。
研究の結果、埋設されたインサートの上端の表面が、製品の表面から25mm以上の深さにある場合には、プラスチック製のインサートを使用してもコンクリート製品の長期的な性能の劣化をもたらさないことが見いだされた。
しかし、インサートを製品の表面から25mmも深く埋設すると、これと係合させて製品を吊り上げるための吊上治具のシャフトが長くなり、シャフトに大きな力がかかるため、吊上作業中にシャフトが動いて製品が安定せず危険であり、またシャフトが損傷する危険も大きくなるという課題が生じた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、インサートを製品中に深く埋設した際にも、安定して製品を吊上げることができる吊上治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、製品中に埋設された吊上用インサートの上方の空間の形状に対応した形状のスペーサー部分を、吊上用インサートとの係合部分およびワイヤーとの係合部分との間に有する、吊上治具を提供する。
「埋設された吊上用インサートの上方の空間の形状」とは、埋設された吊上用インサートの上方に広がる、埋設されたインサートの上端が外部に現れる面(以下、「インサートの埋設面」と呼ぶ)と、製品表面から深さ方向に伸びる凹部の側面とにより形成される空間の形状をいう。これは後述の図2を参照すれば明瞭に理解することができ、インサートの埋設面14と、埋設部分の製品の側面13により形成される空間15が、「埋設された吊上用インサートの上方の空間」である。
「埋設された吊上用インサートの上方の空間の形状」は任意であり、たとえば円柱、角柱、円錐台、角錐台などの形状であることができるが、好ましくは円柱または円錐台形状であり、最も好ましくは上面が大きなすり鉢状の円錐台形状である。なお、円錐台形状とは、円錐を円錐の底面とほぼ平行な面で切断し、頂部方向の部分を取り除いた形状を言う。一般的には円錐台の底面および上面はほぼ円形であり、底面に直角な平面による断面は略台形である。
スペーサー部分はこの空間の形状に対応した形状を有する。したがって、スペーサー部分の形状も任意であり、たとえば円柱、角柱、円錐台、角錐台などの形状であることができるが、好ましくは円柱または円錐台形状であり、最も好ましくはすり鉢状の円錐台形状である。
また本発明の治具は、典型的にはコンクリート製品について使用されるが、インサートを深く埋設して製造される任意の構造物、たとえばプラスチック製品についても使用できる。
【0005】
吊上用インサートとは、製品中に埋設され、吊上治具と係合する手段を有するものをいう。多くの形状および構造のインサートが公知である。
インサートは製品中に埋設されている。典型的には前述のように、製品の表面から25mm以上の深さで埋設されている。
吊上用インサートとの係合部分とはインサートと係合するための吊上治具の部分をいい、ワイヤーとの係合部分とはワイヤーと係合するための吊上治具の部分をいう。
本発明の治具の特徴はスペーサー部分にあり、インサートとの係合部位およびワイヤーとの係合部位の形状および構造に関わりなくすべての公知のインサートと吊上治具との組み合わせにおいて有用である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の治具を使用することにより、吊上作業時の製品の挙動が安定し、作業を安全に行うことができる。また、吊上治具のシャフトにかかる力を低減し、吊上治具の劣化および破損を防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明にかかる吊上治具の例を図1に示す。
本発明の治具1は、吊上用インサートとの係合部分2と、ワイヤーとの係合部分3を有し、その間にスペーサー部分4を有する。該スペーサー部分4は、吊上用インサートの埋設面と、製品表面から深さ方向に伸びる凹部の側面とにより形成される形状を有する。
【0008】
次に、本発明におけるインサートの埋設状態の例を図2に示す。
インサート11はコンクリート製品10中に埋設されている。典型的には、インサート11の埋設面14と製品の表面12とは25mm以上離れている。この際、インサート11の埋設面と、埋設部分の製品側面13とにより空間15が形成される。
図2のインサート11と、図3に示す従来技術の吊上治具を係合すると、治具のシャフト部分が細いため、吊上時にインサート11の上方の空間15内で軸の方向がぶれ、吊上られる製品が安定せず、作業に危険が生ずる。また、吊上治具のシャフトに過大な力が作用し、破損する恐れも大きくなる。
これに対し、本発明の吊上治具1では、スペーサー部分が空間15を満たし、吊上治具の動きを禁止する。そのため、安全に作業をすることができる。
スペーサーの材質は特に制限するものではないが、製品との接触により損傷せず、また製品を傷つけないものであることが望まれる。製品がコンクリート製品である場合には、金属製、特には鉄製のスペーサーが好適に使用される。また製品がプラスチック製品である場合には、プラスチック製、特にはナイロン製のスペーサーが好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明にかかる吊上治具の例を示す図である。
【図2】インサートの埋設状態の例を示す図である。
【図3】従来技術の吊上治具の例を示す図である。
【符号の説明】
【0010】
1:吊上治具シャフト
2:吊上用インサートとの係合部分
3:ワイヤーとの係合部分
4:スペーサー部分
10:コンクリート製品
11:インサート
12:製品の表面
13:埋設部分の製品側面
14:インサートの埋設面
15:空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品に埋設された吊上用インサートの上方の空間の形状に対応した形状のスペーサー部分を、吊上用インサートとの係合部分およびワイヤーとの係合部分との間に有する、吊上治具。
【請求項2】
吊上用インサート上の空間の形状が、円錐台である、請求項1記載の治具。
【請求項3】
製品がコンクリート製品である、請求項1記載の治具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−98878(P2007−98878A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294493(P2005−294493)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(598140021)京新工業株式会社 (7)
【出願人】(505255231)
【Fターム(参考)】