説明

製塩装置

【課題】加熱手段が不要で、取り扱いが容易であり、装置の簡素化及び小型化を図ることができる製塩装置を提供する。
【解決手段】製塩装置10は、原料塩水SWを収容する気密性の処理槽11と、処理槽11内の原料塩水SWを加熱濃縮するための水蒸気導入部12と、を備え、処理槽11内の原料塩水SWから発生する水蒸気を回収し、圧縮昇温させた状態で水蒸気導入部12へ供給する圧縮ポンプP1と、圧縮ポンプP1を駆動するインバーター制御の電動機Mとを備えている。水蒸気導入部12には、蒸気トラップ弁22付きの排水経路23が設けられている。処理槽11内の上部空間と圧縮ポンプPとは吸気経路17によって接続され、圧縮ポンプP1と水蒸気導入部12とは送気経路18によって接続されている。吸気経路17及び送気経路18にはそれぞれ流量調整バルブ19,20が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋から採取した天然海水を原料として食塩を製造する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海水などの原料塩水を加熱濃縮する処理槽と、この処理槽を加熱する水蒸気導入部と、を備えた製塩装置が知られている。従来の製塩装置においては、水蒸気導入部で加熱された処理槽内の原料塩水から発生する水蒸気は冷却手段を経由して凝縮された後、所定の排水経路に排出されている。
【0003】
一方、処理対象物から発生する水蒸気を圧縮して当該処理対象物の加熱源として利用する技術が提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−116956号公報
【特許文献2】特開平5−277000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、従来の製塩装置においては、処理槽内の原料塩水から発生する水蒸気は冷却手段によって凝縮された後、排水されているため、水蒸気が持つ熱は排熱として捨てられている。また、処理槽の水蒸気導入部に高温水蒸気を供給するための水蒸気発生手段だけでなく、処理槽内の原料塩水から発生する水蒸気を廃棄する際の冷却手段が必要であるため、構造の複雑化、装置の大型化を招来している。
【0006】
一方、引用文献1,2記載の発明においては、処理対象物から発生する水蒸気を圧縮して当該処理対象物の加熱源として利用するので、省エネルギの点においては有効であるが、処理対象物の加熱用の水蒸気を発生させるためのボイラなどが必要である。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、加熱手段が不要で、取り扱いが容易であり、装置の簡素化及び小型化を図ることができる製塩装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の製塩装置は、天然海水などの原料塩水を収容する処理槽と、前記処理槽内の原料塩水を加熱するため前記処理槽に付設された水蒸気導入部と、前記処理槽内から回収した水蒸気を圧縮昇温させた状態で前記水蒸気導入部へ供給する圧縮ポンプと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
このような構成とすれば、処理槽内の原料塩水から発生する水蒸気を回収し、圧縮ポンプで圧縮昇温させた状態で水蒸気導入部へ供給することにより、当該処理槽内の原料塩水を加熱濃縮することが可能となるので、加熱手段が不要であり、取り扱いも容易である。また、処理槽内の原料塩水から発生した水蒸気を廃棄しないので、冷却手段も不要となり、装置の簡素化及び小型化を図ることができる。
【0010】
ここで、前記水蒸気導入部で生成した熱水を、前記圧縮ポンプから前記水蒸気導入部へ供給される水蒸気に混入させる給水手段を設けることが望ましい。このような構成とすれば、水蒸気導入部へ導入された水蒸気が凝縮して発生する熱水を有効利用することができるため、加熱効率の向上を図ることができる。また、外部からの給水手段などが不要となるため、装置の簡素化及び小型化に有効である。
【0011】
さらに、前記圧縮ポンプとしてスクリューポンプを使用すれば装置の小型化を図る上で有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、加熱手段が不要で、取り扱いが容易であり、装置の簡素化及び小型化を図ることができる製塩装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態である製塩装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すように、本実施形態の製塩装置10は、天然海水などの原料塩水SWを収容する気密性の処理槽11と、処理槽11内の原料塩水SWを加熱濃縮するための水蒸気導入部12と、を備え、処理槽11内の原料塩水SWから発生する水蒸気を回収し、圧縮昇温させた状態で水蒸気導入部12へ供給する圧縮ポンプP1と、圧縮ポンプP1を駆動するインバーター制御の電動機Mとを備えている。圧縮ポンプP1はスクリューポンプを使用しているが、これに限定するものではない。
【0015】
処理槽11内の上部空間と圧縮ポンプP1とは吸気経路17によって接続され、圧縮ポンプP1と水蒸気導入部12とは送気経路18によって接続されている。吸気経路17及び送気経路18にはそれぞれ流量調整バルブ19,20が設けられている。また、送気経路18を通過する水蒸気の温度、圧力及び流量をそれぞれ計測するため、温度計14、圧力計15及び流量計16が送気経路18に配備されている。
【0016】
さらに、水蒸気導入部12の下方には、蒸気トラップ弁22付きの排水経路23が接続され、排水経路23の下流に熱水回収容器24が設けられている。また、熱水回収容器24から送気経路18へ熱水を供給するための給水経路13が設けられ、給水経路13の途中にポンプP2が配備され、熱水回収容器24の上方にはオーバーフロー配管25が接続されている。
【0017】
製塩装置10を稼働させる場合、初めに処理槽11内に比較的少量の原料塩水SWを収容した状態で電動機Mを始動し圧縮ポンプP1を作動させる。このとき、処理槽11内の原料塩水SWは常温であり、水蒸気は少ないので、吸気経路17を経由して吸い込まれた空気が圧縮ポンプP1で圧縮昇温された状態で送気経路18を経由して水蒸気導入部12へ供給され、処理槽11内の原料塩水SWの加熱に供される。
【0018】
この後は時間の経過に伴って処理槽11内の原料塩水SWが昇温して水蒸気が発生し始め、吸気経路17を経由して吸い込まれた水蒸気が圧縮ポンプP1によって圧縮され130℃〜160℃程度まで昇温した状態で送気経路18を経由して水蒸気導入部12へ供給されるようになるので、処理槽11内の原料塩水SWが効率良く加熱される。なお、処理槽11内の原料塩水SWが高温となった後は、適宜、処理槽11内へ原料塩水SWを補給することができる。
【0019】
このように、製塩装置10では、原料塩水SWの加熱濃縮工程中に処理槽11で発生する水蒸気を圧縮ポンプP1で圧縮昇温させた状態で水蒸気導入部12へ供給し、原料塩水SWの加熱源として利用するので、ボイラや電熱ヒータなどの加熱手段が不要であり、取り扱いも容易である。また、製塩装置10は、処理槽11から排出された水蒸気を凝縮、排水するための冷却設備を必要としないので、装置の簡素化及び小型化を図ることができる。
【0020】
また、圧縮ポンプP1によって圧縮昇温した水蒸気は、圧力に対してその水蒸気温度が高温となり顕熱のロスとなるので、水蒸気導入部12内の水蒸気が凝縮して発生した熱水を熱水回収容器24に回収し、ポンプP2を用いて給水経路13を経由して送気経路18内へ送り込んで水蒸気量を増加させ、飽和水蒸気化した状態で水蒸気導入部12へ供給することにより、加熱効率の向上を図っている。
【0021】
さらに、製塩装置10においては、温度計14、圧力計15及び流量計16の測定値に基づいて電動機Mの回転数をインバーター制御することにより圧縮ポンプP1の出力を調節したり、流量調整バルブ19,20の開度調節を行ったりすることができるため、作業条件や稼働状況に応じた設定を行うことができ、安定した運転を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の製塩装置は、天然海水などを原料として食塩を製造する製塩産業の分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0023】
10 製塩装置
11 処理槽
12 水蒸気導入部
13 給水経路
14 温度計
15 圧力計
16 流量計
17 吸気経路
18 送気経路
19,20 流量調整バルブ
22 蒸気トラップ弁
23 排水経路
24 熱水回収容器
25 オーバーフロー配管
M 電動機
P1 圧縮ポンプ
P2 ポンプ
SW 原料塩水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然海水などの原料塩水を収容する処理槽と、前記処理槽内の原料塩水を加熱するため前記処理槽に付設された水蒸気導入部と、前記処理槽内の原料塩水から発生する水蒸気を回収して圧縮昇温させた状態で前記水蒸気導入部へ供給する圧縮ポンプと、を備えたことを特徴とする製塩装置。
【請求項2】
前記水蒸気導入部で生成した熱水を、前記圧縮ポンプから前記水蒸気導入部へ供給される水蒸気に混入させる給水手段を設けた請求項1記載の製塩装置。
【請求項3】
前記圧縮ポンプがスクリューポンプであることを特徴とする請求項1または2記載の製塩装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−116721(P2012−116721A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269429(P2010−269429)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(398018777)株式会社弁天 (15)
【出願人】(399102839)博多港管理株式会社 (16)