説明

製本用糊付装置、製本装置、および、画像形成システム

【課題】糊塗布ローラで糊を加熱し過ぎることなく、本文用紙の背表紙側を糊塗布ローラと平行な方向に向けて当接させて糊を塗布することができる製本用糊付装置、製本装置、および、画像形成システムを提供することを課題とする。
【解決手段】製本用糊付装置360は、本文用紙の背表紙側Bに塗布するホットメルト接着剤Pを収容する糊収容部364と、糊収容部364の内側で、水平な回転軸U回りに保持され、ホットメルト接着剤Pを周面363に付着させる糊塗布ローラ362とを備える。周面363は、糊塗布ローラ362の回転角度によって、ホットメルト接着剤の上面よりも上方に露出可能な円筒面363cと、ホットメルト接着剤Pから常に露出しない平面363fとで形成され、平面363fが上方に位置した際に、全ての周面363がホットメルト接着剤P内に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製本用糊付装置、製本装置、および、画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
製本装置では、一般に、束ねた本文用紙の背表紙側(背部側)に糊塗布ローラで糊を塗布し、表紙用紙を貼り付けて製本している。
【0003】
製本装置を構成する従来の製本用糊付装置では、主に装置の小型化を図るために、糊塗布ローラの軸方向長さを本文用紙(冊子本文)の厚みに対応させた長さにし、糊塗布ローラのローラ面を背表紙長手方向に沿って転がらせながら本文用紙の背表紙側に糊を塗っている。
【0004】
ここで、糊の塗布にかかる時間を短縮するために、例えば特許文献1では、糊塗布ローラの軸方向長さを本文用紙の長手方向に対応させた長さにし、本文用紙の背表紙側を糊塗布ローラと平行な方向に向けてこの背表紙側を糊塗布ローラの外周面に当接させて糊を塗布することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−25758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の提案では、円柱状の糊塗布ローラを水平方向に向けて糊槽に浸すとともに、糊塗布ローラの上部を糊槽から常に露出させ本文用紙の背表紙側に当接できるようにしている。従って、糊槽から露出している糊塗布ローラ部分には常に薄膜状に糊が付着しているので、糊の蒸発が常に進行してしまう。更に、長時間にわたって使用すると、糊塗布ローラの表面に糊が焦げ付いたものが堆積してしまう。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、糊塗布ローラで糊を加熱し過ぎることなく、本文用紙の背表紙側を糊塗布ローラと平行な方向に向けて当接させて糊を塗布することができる製本用糊付装置、製本装置、および、画像形成システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る製本用糊付装置の第1の特徴は、本文用紙の背表紙側に塗布するホットメルト接着剤を収容する糊収容部と、前記糊収容部の内側で、前記ホットメルト接着剤の上面と平行である水平な回転軸に回転可能に保持され、前記糊収容部に収容されたホットメルト接着剤を前記回転軸に平行な周面に付着させる長尺状の糊塗布部材と、を備え、前記糊塗布部材の前記周面は、前記糊塗布部材の回転角度によって、前記ホットメルト接着剤の上面よりも上方に露出可能な塗布部と、前記ホットメルト接着剤から常に露出しない非塗布部とで形成され、前記非塗布部が上方に位置した際に、全ての周面が前記ホットメルト接着剤内に位置することにある。
【0009】
本発明に係る製本用糊付装置の第2の特徴は、前記糊塗布部材の回転軸周りの周面形状は、円柱の一部が切り欠かれた断面D字形状であることにある。
【0010】
本発明に係る製本装置の第1の特徴は、請求項1または2に記載の製本用糊付装置を備え、本文用紙を束ねてなる用紙束と表紙用紙とを貼り付けて製本することにある。
【0011】
本発明に係る画像形成システムの第1の特徴は、少なくとも本文用紙に画像を形成する画像形成装置と、前記画像形成装置の用紙搬送方向下流側に後処理装置として設けられた請求項3に記載の製本装置と、を備えたことにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る製本用糊付装置の第1の特徴によれば、非塗布部が上方に位置した際に、糊塗布部材の全ての周面がホットメルト接着剤内に位置するので、糊塗布ローラでホットメルト接着剤を加熱し過ぎることなく、本文用紙の背表紙側を糊塗布ローラと平行な方向に向けて塗布部に当接させてホットメルト接着剤を塗布することができる。
【0013】
本発明に係る製本用糊付装置の第2の特徴によれば、糊塗布ローラを簡易な形状にすることができ、回転ローラを製造する鋳型を改良することで糊塗布ローラを容易に製造することができる。
【0014】
本発明に係る製本装置の第1の特徴によれば、本文用紙の背表紙側に塗布されたホットメルト接着剤で、本文用紙を束ねてなる用紙束と表紙用紙とを貼り付けて容易に製本することができる。
【0015】
本発明に係る画像形成システムの第1の特徴によれば、画像形成から製本まで連続して行う上で、本発明に係る製本用糊付装置や製本装置によって得られる効果を奏する画像システムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態における画像形成システムの概略全体構成図である。
【図2】本発明の一実施形態における製本装置の用紙搬送部、カット部及び搬送切替機構の構成図である。
【図3】本発明の一実施形態の画像形成システムの制御ブロック構成図である。
【図4】本発明の一実施形態における製本装置の各工程毎の動作を示す模式的な側面図である。
【図5】本発明の一実施形態における製本用糊付装置の模式的な斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態で、(a)は、糊塗布ローラが待機位置に位置するときにおける製本用糊付装置の断面図、(b)は、糊塗布ローラが塗布位置に位置するときにおける製本用糊付装置の断面図である。
【図7】本発明の一実施形態における画像形成システムの制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、すでに説明したものと同一または類似の構成要素には同一または類似の符号を付し、その詳細な説明を適宜省略している。
【0018】
また、図面は模式的なものであり、寸法比などは現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法比などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0019】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための例示であって、この発明の実施の形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。この発明の実施の形態は、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【0020】
また、以下の説明では、用紙としてどのサイズの用紙であっても適用可能である。また、以下の実施の形態では、例えば孔版印刷やインクジェットで印刷するが、他の手法で印刷してもよく、本発明では印刷形式は特に限定されない。また、製本する印刷物の種類や枚数も特に限定されるものではない。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態(以下、本実施形態という)における画像形成システム100の概略全体構成図である。図2は、本実施形態における製本装置300の用紙搬送部310、カット部330及び搬送切替機構338の構成図である。図3は本実施形態の画像形成システム100の制御ブロック構成図である。図4は、本実施形態における製本装置300の各工程毎の動作を示す模式的な側面図である。
【0022】
図1、図4に示すように、本発明の実施形態に係る画像形成システム100は、表紙用紙410及び本文用紙420に印刷を行い、印刷済みの表紙用紙410及び本文用紙420に対して製本処理を施すことにより、冊子(製本物)440を作製するシステムである。換言すれば、画像形成システム100は、表紙用紙410及び本文用紙420に印刷を行う画像形成装置200と、この画像形成装置200に隣接した用紙搬送方向下流の位置に設けられ印刷済みの表紙用紙410及び本文用紙420に対して製本処理を施す製本装置300との組み合わせで構成されている。
【0023】
(画像形成装置)
画像形成システム100における画像形成装置200には、インクジェット方式の画像形成部230が設けられており、この画像形成部230は、表紙画像データ及び本文画像データに基づいて表紙用紙410及び本文用紙420に印刷を行うものである。また、画像形成部230は、ブラックK、シアンC、マゼンタM、イエローYの各色のインクを吐出する複数のライン型のインクヘッドを備えている。
【0024】
画像形成部230の用紙搬送方向上流には、表紙用紙410が積載収容された第1給紙部210及び、本文用紙420が収容された第2給紙部220が設けられている。また、第2給紙部220には、第1給紙トレイ220a、第2給紙トレイ220b、第3給紙トレイ220cが設けられており、様々な用紙種類、用紙サイズの本文用紙420を収容することが可能である。この第1給紙部210及び第2給紙部220から、図示しない給紙ローラで1枚ずつ捌きながら画像形成部230へ所定のタイミングで順次給紙搬送することが可能である。なお、必ずしも表紙用紙410を第1給紙部210に、本文用紙420を第2給紙部220に収容する必要はなく、いずれの給紙部に収容しても問題ない。
【0025】
画像形成部230の用紙搬送方向下流には循環搬送路250が設けられ、印刷された用紙はこの循環搬送路250を介して、さらに下流に設けられた排紙部280へと排紙される。なお、排紙部280へ排紙される用紙は、後述する製本処理を行わない場合に利用される。また、循環搬送路250には図示しない経路切り替え用フラッパが設けられ、排紙部280へ搬送する経路と、反転部240へ搬送する経路とを切り替え可能になっている。反転部240に搬送された用紙は表裏反転され、スイッチバックすることで再度画像形成部230へと搬送される。これにより、表紙用紙410及び本文用紙420に両面印刷を行うことが可能となる。
【0026】
片面印刷又は両面印刷された表紙用紙410及び本文用紙420は、画像形成部230の用紙搬送方向下流に設けられた連絡搬送部260を介して、製本装置300へと搬送される。なお、連絡搬送路260と循環搬送路250には、経路切り替え用のフラッパが設けられ、適宜経路が選択される。
【0027】
画像形成装置200の上面には、入力パネル270が設けられている。この入力パネル270には、冊子作成実行を指示するスタートボタン、クリーニング動作のON/OFFが選択できるクリーニングモード選択や、用紙サイズの選択など各種設定を行うタッチパネルなどが設けられている。スキャナ等から読み込ませた画像データを用いて冊子を形成する場合、この入力パネル270から各種設定を行うことも可能だが、通常、通信インターフェイスを介して接続されたパーソナルコンピュータからジョブデータを受信し、ジョブデータに含まれる操作信号によりユーザの設定を受け付ける(図示省略)。なお、画像形成システム100にPC(パーソナルコンピュータ)を接続し、入力パネル270からでなくPC画面から入力するようにしてもよい。
【0028】
(製本装置)
画像形成システム100における製本装置300には、画像形成装置200側の連絡搬送路260から送り出された印刷済みの表紙用紙410及び本文用紙420を搬送する用紙搬送部310が設けられている。この用紙搬送部310に隣接する位置に、表紙用紙410を適当なサイズに断裁するカット部330が設けられており、後述する搬送切替機構338により、表紙用紙410をカット部330へと搬送し、カット動作を実行する。表紙用紙410及び本文用紙420は、それぞれ用紙搬送部310を介して、成形部380及び本文整合部350へと搬送される。なお、用紙搬送部310には、成形部380と本文整合部350との搬送経路を切り替える機構が設けられている(図示省略)。
【0029】
本文整合部350には、搬送されてきた本文用紙420を順次積載する整合トレイ352が設けられている。この整合トレイ352には、本文用紙420の用紙搬送方向の位置決めを行う整合突当フェンス354と、本文用紙420の幅方向の位置を整合する整合サイドフェンス356が設けられ、全ての本文用紙420が搬送され収容された時に、整合サイドフェンス356の整合動作によって本文用紙420の位置が整い、用紙束430(図4参照)として収容される。この時、本文整合部350に設けられた用紙束厚さ検出センサ358により、束として保持された状態で用紙束430(図4参照)の厚さが測定される。また、本文整合部350の整合トレイ352は、本文用紙420を搬送収容する整合位置と、用紙束430をクランプ部370へ受け渡す受渡位置とで、図示しない回動機構により回動自在に設けられている。
【0030】
クランプ部370には、本文整合部350が受渡位置に回動された状態で用紙束430をクランプする機構が設けられており、図示しない移動機構により本文整合部350から用紙束430を受け取る受渡位置と、成形部380へ受け渡す綴じ位置との間で移動可能に設けられている。また、受渡位置に位置されたクランプ部370の近傍には、製本用糊塗布装置360が設けられている。製本用糊付装置360には、ホットメルト接着剤P(ホットメルト糊。図6参照)を収容する糊収容部(糊槽)364と、ホットメルト接着剤Pを用紙束430に塗布するための糊塗布ローラ362とが設けられている。
【0031】
成形部380には、用紙搬送部310から搬送された表紙用紙410を所定の位置に位置決めして載置する表紙載置台384が設けられている。また、クランプ部370によって綴じ位置に運ばれてくる用紙束430と、表紙戯置台384に載置された表紙用紙410とを成形するくるみ綴じ部382が設けられている。
【0032】
冊子排出部390には、成形部380で綴じられて成形された冊子440(図4(f)参照)が、成形部380から搬送され、複数収容可能になっている。なお、本実施形態では、成形部380からの搬送は、冊子440の自由落下を利用している。
【0033】
図2に示すように、用紙搬送部310には用紙搬送方向上流から順に、第1搬送ローラ312、第2搬送ローラ 314、搬送基準ローラ316、搬送基準補助ローラ322の順にローラ対が配置されている。なお、搬送基準ローラ316には表紙用紙410の搬送量を制御するための搬送基準エンコーダ318が設けられ、搬送基準ローラ316と搬送基準補助ローラ322の間には、表紙用紙410の用紙搬送方向長さを検出するための表紙用紙サイズセンサ320が設けられている。
【0034】
第1搬送ローラ312と第2搬送ローラ314の間には、搬送切替機構338が設けられ、第1搬送ローラ312と第2搬送ローラ314との間で搬送可能にする通常搬送経路338aと、第2搬送ローラ314とカット部330との間で搬送可能にするカット用搬送経路338bとの2つの経路を、図示しない駆動機構を用いて切替支点338cを中心に回動することで切替可能になっている。
【0035】
カット部330には、搬送経路切替機構338に近い位置から、カット補助ローラ336と、カッター334と、屑入れ332が設けられている。カッター334は、シャトルカッターであり、刃が表紙用紙410の幅方向に往復移動することで裁断を行うことができる。カット補助ローラ336は、表紙用紙410をカッター334で裁断する際に、表紙用紙410を保持する役目を持っている。屑入れ332は、カットされた時に不要となる表紙用紙不要部分を収容できるようになっている。また、ユーザが屑入れ332に収容された表紙用紙不要部分を装置外へ破棄できるように、取り外し可能に設置されている。
【0036】
(製本用糊付装置)
図5は、本実施形態における製本用糊付装置360の模式的な斜視図である。図6(a)は、糊塗布ローラ362が待機位置(後述参照)に位置するときにおける製本用糊付装置360の断面図、図6(b)は、糊塗布ローラ362が塗布位置(後述参照)に位置するときにおける製本用糊付装置360の断面図である。
【0037】
上述したように、製本用糊付装置360は、ホットメルト接着剤Pを収容する糊収容部364と、ホットメルト接着剤Pを用紙束430に塗布するための糊塗布ローラ362とを備えている。
【0038】
糊塗布ローラ362は長尺状であり、糊収容部364の内側に水平な回転軸U回りに保持されている。ここで、糊収容部364の内側とは、平面視で糊収容部364の内側に位置していれば良く、側面視では塗布位置で上部が糊収容部364よりも上方に出ていてもホットメルト接着剤Pを塗布する上で支障がない限り問題がないことを意味している。この糊塗布ローラ362は、ローラ長手方向に沿った形状のヒータ(熱源)を内蔵しており、糊収容部364に収容されたホットメルト接着剤Pを周面363に付着させるようになっている。
【0039】
すなわち、糊収容部364内のホットメルト接着剤Pの上面PUの高さ位置が回転軸Uの中心C(ここで、回転軸U、中心Cは上面PUと平行である)から所定高さ範囲内では、回転軸Uの回転角度θを切り換えることによって、周面363の一部がホットメルト接着剤Pの上面よりも上方に露出した塗布位置V(図6(b)参照)と、周面363が全てホットメルト接着剤P内に位置する待機位置W(図6(a)参照)と、が切り換わるように、周面363の形状が決められている。
【0040】
本実施形態では、糊塗布ローラ362は、半径Hhの円柱状の回転ローラがいわゆるDカットされてなる形状(断面形状がD状)とされている。すなわち、糊塗布ローラ362の回転軸周りの周面形状は、円柱の一部が切り欠かれた断面D字形状となっている。従って、糊塗布ローラ362の周面363は全周にわたって回転軸Uの中心Cに対して平行になっている。ここで、糊塗布ローラ362の周面363は、円筒面363cと平面363fとで構成されており、円筒面363cが塗布部を形成し、平面363fが非塗布部を形成している。
【0041】
そして、本実施形態では、平面363fから回転軸Uの中心Cまでの距離がHsであり、上記の所定高さ範囲内は、Hs〜Hhの範囲内となる。すなわち、ホットメルト接着剤Pの上面PUの高さ位置が回転軸UからHs〜Hhの範囲内である場合、回転軸Uの位置を180°切り換えることで、図6(a)に示したように糊塗布ローラ362の周面363(円筒面363cおよび平面363f)が全てホットメルト接着剤P内に埋没した待機位置Wと、図6(b)に示したように糊塗布ローラ362の円筒面363cの一部がホットメルト接着剤Pの上面PUよりも上方に露出した塗布位置Vと、が切り換えられる構成になっている。
【0042】
なお、製本用糊付装置360には、糊塗布ローラ362の停止位置を検出するためのローラ位置検出センサ365(図3参照)が設けられている。糊塗布ローラ362を回転駆動させる駆動モータ366(図3参照)にはステップモータ(ステッピングモータ)が用いられており、糊塗布ローラ362の回転角度が制御可能となっている。ローラ位置検出センサ365としては、回転軸Uが回転した角度に基づいて糊塗布ローラ362の回転角度を求めるものであってもよいし、図5に示すように、糊塗布ローラ362の軸方向両端側の何れかの外壁面に突起367を設け、この突起367の位置を外部から検出することで糊塗布ローラ362の回転角度を判断するものであってもよい。このように糊塗布ローラ362の回転角度を検出することによって、糊塗布ローラ362を待機位置Wや塗布位置Vに正確に停止させることが可能になる。
【0043】
ホットメルト接着剤Pの加熱はヒータ368によって行う。使用するホットメルト接着剤Pは、例えば150℃で充分に溶融して使用可能となる接着剤であり、この場合、ヒータ368によって糊塗布ローラ362の表面温度を180℃にする。
【0044】
(制御部)
図3に示すように、画像形成システム100には、制御部290が設けられており、表紙用紙410のカット長さを算出するカット長算出手段292、用紙サイズ等を記憶する記憶手段294、および、製本用糊付装置360の駆動を制御する糊付装置制御手段296が設けられている。
【0045】
この制御部290は、入力パネル270、搬送基準エンコーダ318、表紙用紙サイズセンサ320、用紙束厚さ検出センサ358による入力情報を元に、画像形成装置200および製本装置300の各部を制御している。
【0046】
糊付装置制御手段296は、クランプ部370で本文用紙420をクランプする動作に伴い、糊塗布ローラ362を回転させて塗布位置Vで停止させ、本文用紙420の背表紙側Bへのホットメルト接着剤Pの塗布終了後、糊塗布ローラ362を回転させて待機位置Wで停止させるように、上記の駆動モータ366を制御している。
【0047】
(作用、効果)
次に本実施形態の画像形成システム100の動作について、図を用いて説明する。図7は、本実施形態における画像形成システム100の制御フロー図である。
【0048】
まず、入力パネル270にて、図示しない冊子作成を実行するスタートボタンを押すと、糊塗布ローラ362のヒータ368の発熱が開始されるとともに、本文印刷動作が実行される。ヒータ368に関しては、糊塗布ローラ362の周面363のうち、用紙束430の背表紙側Bが当接する円筒面363cが所定温度(例えば150℃)になるように、糊付装置制御手段296によって温度制御される(S1)。
【0049】
本文印刷動作では、第1給紙トレイ220aに収納された本文用紙420のうち1枚ずつ捌かれ、画像形成部230によって本文画像データに基づき画像が形成される。画像が形成された本文用紙420は、図1および図4(a)に示すように、連絡搬送路260及び用紙搬送部310を通過して本文整合部350へと搬送される(S2)。
【0050】
本文整合部350では、整合トレイ352に順次本文用紙420が積載されていき、図4(b)に示すように全ての本文用紙420が積載された後に整合サイドフェンス356にて、本文用紙420の幅方向の紙揃えを行う(S3)。次に、整合された本文用紙420は、用紙束430として纏められた状態で、用紙束厚さ検出センサ358により、用紙束厚さが検出される(S4)。
【0051】
本文用紙420の印刷が終了すると、次に、表紙用紙410の印刷が実行される(S5)。その際、第1給紙部210から表紙用紙410が1枚だけ捌かれ給紙され、本文用紙420と同様に画像形成され、用紙搬送部310へと搬送される。
【0052】
そして、表紙用紙410のカット長算出処理(S6)を以下のようにして行う。図2に示すように、用紙搬送部310に表紙用紙410が搬送されると、各ローラ対は正転駆動され、表紙用紙410を用紙搬送方向下流へと搬送する(図2のA方向へ搬送)。表紙用紙410の先端が表紙用紙サイズセンサ320により検出されると、搬送基準エンコーダ318によりパルス数が計測される。表紙用紙410の後端が表紙用紙サイズセンサ320によって検出されると、各ローラの駆動が停止され、表紙用紙410の搬送量により表紙用紙長さを算出する。ここで、カット長算出手段292は、表紙用紙長さ、本文用紙長さ、用紙束厚さから、カット長さを算出する。具体的には、表紙用紙長さから、本文用紙長さ×2及び用紙束長さを引いたものが、カット長さとなる。
【0053】
そして、表紙用紙410のカット処理(S7)を行い、図4(c)に示すように表紙用紙410はカット済み表紙用紙410aとして、成形部380へと搬送される。
【0054】
次に、図4(d)に示すように、整合トレイ352が用紙束430を積載した状態で、整合位置から受渡位置に移動し、クランプ部370に用紙束430が受け渡される。これと併行して、糊付装置制御手段296からの制御信号により駆動モータ366が駆動され、糊塗布ローラ362が回転して塗布位置V(図6(b)参照)で停止する(S8)。
【0055】
そして、クランプ部370は用紙束430をクランプしたまま、受渡位置から、綴じ位置へと移動する。この移動の際に、製本用糊付装置360の糊塗布ローラ362と用紙束430の背表紙側Bとが接触し、糊塗布ローラ362の円筒面363cの露出部分に付着しているホットメルト接着剤Pが用紙束430の背表紙側Bに塗布されることになる(S9)。
【0056】
塗布が終了すると、糊付装置制御手段296からの制御信号により駆動モータ366が駆動され、糊塗布ローラ362が回転して待機位置Wで停止する(S10)。
【0057】
図4(e)に示すように、クランプ部370が綴じ位置まで移動すると、ホットメルト接着剤が塗布された用紙束430と、カット済み表紙用紙410aとが位置合わせされて貼り付けられ、くるみ綴じ部382により綴じられて、冊子440が完成する。完成した冊子440は綴じ部382から自由落下し、図4(f)に示すように冊子排出部390へと排出される(S11)。なお、S10とS11とは同時に併行して行われてもよい。
【0058】
そして、所望の冊数に到達しているかどうか判断し、到達していない場合は、上記動作を繰り返すことになる(S12)。なお、S8の動作をS7よりもやや前に行って、予め塗布位置Vにしておくことも可能である。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によれば、回転軸Uの回転角度を切り換えることによって、糊塗布ローラ362の周面363の一部がホットメルト接着剤Pの上面PUよりも上方に露出した塗布位置Vと、糊塗布ローラ362の周面363が全てホットメルト接着剤P内に位置する待機位置Wと、が切り換わるように周面363の形状が決められている。従って、ホットメルト接着剤Pを塗布する際には糊塗布ローラ362を塗布位置Vに回転移動させ、塗布終了後には糊塗布ローラ362を待機位置Wに回転移動させることにより、製本用糊付装置360で、糊塗布ローラでホットメルト接着剤Pを加熱し過ぎることなく、本文用紙の背表紙側Bを糊塗布ローラ362と平行な方向に向けて周面363(円筒面363c)に当接させてホットメルト接着剤Pを塗布することができる。
【0060】
また、このような製本用糊付装置360を用いると、待機位置Wでは糊塗布ローラ362の周面363がホットメルト接着剤Pに全て埋没している。従って、周面363に焦げ付きが生じることが回避され、糊塗布ローラ362の寿命を延ばすことができる。また、ホットメルト接着剤Pの劣化(接着力だけでなく変色や粘土変化なども含む)を防止することができ、しかも、ホットメルト接着剤Pの揮発を抑えることで作業現場での異臭の発生を押さえることができる。
【0061】
また、ホットメルト接着剤Pは、製本用糊付装置360を構成する金属部品に比べて空気中への放熱量が少ない。従って、ヒータ368からの放熱を抑えることができ、省電力効果を奏する製本用糊付装置360とすることができる。
【0062】
また、この糊塗布ローラ362の形状は、回転ローラがDカットされてなる形状とされている。従って、糊塗布ローラ362を簡易な形状にすることができ、回転ローラを製造する鋳型を改良することで糊塗布ローラ362を容易に製造することができる。
【0063】
また、このような製本用糊付装置360を備えた製本装置300により、本文用紙420の背表紙側Bに塗布されたホットメルト接着剤Pで本文用紙420と表紙用紙410とを貼り付けて容易に製本することができる。
【0064】
更に、画像形成装置200と、画像形成装置200の用紙搬送下流側このような製本装置300と、を備えた画像形成システム100とすることで、後処理装置として製本装置300を備えた画像形成システム100とすることができ、画像形成から製本まで連続して行う上で、これらの効果を奏するシステムが実現される。
【0065】
また、以上の説明では、画像形成装置200で印刷された本文用紙420を表紙用紙410にホットメルト接着剤Pで糊付けして製本することで説明したが、本文用紙420が、1枚毎にバラバラなものではなく複数の小冊子からなっていても、同様にホットメルト接着剤Pをこの複数の小冊子の背表紙側Bに塗布して製本装置300で製本することができる。
【0066】
なお、レーザ光や位置センサなどを用いて、ホットメルト接着剤Pの上面PUの高さ位置が回転軸UからHs〜Hhの範囲内であるときには安全ランプが点灯し、この範囲を外れたときには、警報等を発するか、あるいは、糊付装置制御手段296で必要量のホットメルト接着剤Pを自動的に供給するように制御してもよい。これにより、必要にして充分な量のホットメルト接着剤Pが常に確実に供給される。
【0067】
また、本文用紙420が厚いときには、クランプ部370で本文用紙420を挟んだ状態で糊塗布ローラ362の塗布部である円筒面363cに本文用紙420の背表紙側Bを当接させた際に、回転軸Uと直交する方向に本文用紙420の背表紙側Bを複数回往復移動させることでホットメルト接着剤Pの塗布量を増大させると、充分な接着力を得る上で有効である。
【0068】
また、以上の説明では、糊塗布ローラ362の形状が回転ローラをDカットした形状である例で説明したが、塗布位置Vでは糊塗布ローラの周面の一部がホットメルト接着剤Pから露出して本文用紙420の背表紙側Bにホットメルト接着剤Pを塗布可能であり、待機位置Wでは糊塗布ローラの周面が全てホットメルト接着剤内に位置する限り、周面が多角形状や楕円状などである他の形状の糊塗布ローラであってもよい。
【符号の説明】
【0069】
100 画像形成システム
200 画像形成装置
300 製本装置
360 製本用糊塗布装置
362 糊塗布ローラ(糊塗布部材)
363 周面
363c 平面(非塗布部)
363f 円筒面(塗布部)
364 糊収容部
410 表紙用紙
420 本文用紙
430 用紙束
B 背表紙側
C 中心
P ホットメルト接着剤
PU 上面
U 回転軸
θ 回転角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本文用紙の背表紙側に塗布するホットメルト接着剤を収容する糊収容部と、
前記糊収容部の内側で、前記ホットメルト接着剤の上面と平行である水平な回転軸に回転可能に保持され、前記糊収容部に収容されたホットメルト接着剤を前記回転軸に平行な周面に付着させる長尺状の糊塗布部材と、
を備え、
前記糊塗布部材の前記周面は、前記糊塗布部材の回転角度によって、前記ホットメルト接着剤の上面よりも上方に露出可能な塗布部と、前記ホットメルト接着剤から常に露出しない非塗布部とで形成され、
前記非塗布部が上方に位置した際に、全ての周面が前記ホットメルト接着剤内に位置することを特徴とする製本用糊付装置。
【請求項2】
前記糊塗布部材の回転軸周りの周面形状は、円柱の一部が切り欠かれた断面D字形状であることを特徴とする請求項1に記載の製本用糊付装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製本用糊付装置を備え、本文用紙を束ねてなる用紙束と表紙用紙とを貼り付けて製本することを特徴とする製本装置。
【請求項4】
少なくとも本文用紙に画像を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置の用紙搬送方向下流側に後処理装置として設けられた請求項3に記載の製本装置と、
を備えたことを特徴とする画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−86462(P2013−86462A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231691(P2011−231691)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)