説明

製本装置

【課題】実際の本文の厚みに基づいて製本処理を行うことができる製本装置を提供する。
【解決手段】2次元方向に移動部を移動自在とするX−Yアクチュエータ12と、X−Yアクチュエータ12の移動部に設けられて本文を保持するハンドユニットと、製本のための各工程を実行する複数の製本ユニット16と、本文の厚みを検出する厚み検出手段30と、を備える。製本ユニット16は製本のための作業を行う作動要素と、作動要素を駆動する駆動要素を備える。厚み検出手段30によって検出された厚みに基づき、製本ユニット16において駆動要素を用いて作動要素の位置決めを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉束(以下、本文という)を表紙と合わせて製本を行う製本装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の製本装置の1つの例としては、図10または特許文献1に示す無線綴機が知られている。無線綴機は、エンドレスにチェーンを配し、該チェーンに所定間隔毎にクランパーを取り付けて、チェーンをラウンド経路40に沿って一方向に回転駆動させている。
【0003】
そして、ラウンド経路40の一部に沿って、製本工程に必要な、ミーリングカッター42、ガリカッター44、横糊付け機46、背糊付け機48、表紙繰出し機50、同調機52、プレス成形締機54などの各ユニットが設置される。
【0004】
図示を省略する各クランパーは、固定クランプ板と可動クランプ板とからなっており、弾性体によって両クランプ板を付勢することで、両クランプ板で、丁合機にて丁合された折丁等からなる本文Pを締め付けており、チェーンによって各ユニットを順番に移動するようになっている。例えば、ミーリングカッターによって本文背面を断裁して背面を揃え、ガリカッターによって本文背面に筋溝を入れ、その後、横糊付け機によって背面近傍の両脇に糊を塗布し、背糊付け機によって背面に糊を塗布し、その後に表紙繰出し機によって繰出された表紙Rと本文Pとを合わせて、プレス成型締め機により表紙を本文の背部分に圧着して成形する。
【0005】
また、特許文献2では、印刷機から搬出されてくる用紙を一冊分集積して本文とし、本文を搬送して、引き続き製本処理装置で綴じ処理を行い、印刷機に製本処理装置を連結して印刷から綴じ処理まで一貫して処理する製本処理装置を開示する。
【0006】
本文に識別情報を含む印刷情報が印刷され、表紙に識別情報を含む印刷情報が印刷され、本文と表紙とを印刷機から製本処理装置に搬送する搬送路に設けられた情報読み取り装置によって、前記印刷情報が読み取られており、製本制御装置が情報読み取り装置で読み取った本文の識別情報と表紙の識別情報とを比較し、両者が一致すると、情報読み取り装置で読み取った本文及び表紙の印刷情報に基づいて製本処理装置の幅方向移動部材の幅方向の移動量を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3673510号公報(図11)
【特許文献2】特許第3672719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1で示される従来の製本装置では、以下のような問題がある。オンデマンド出版(POD)のように製本する本の種類が変化し、処理する本文の寸法や紙質等が異なると、それに応じて各ユニットの調整を行う必要がある。よって、同じ種類の製本を大量に行う場合には作業性に与える影響は小さいが、異なる種類の製本を少量行う場合には、各ユニットの調整が頻繁となり、作業性が悪くなる。
【0009】
また、特許文献2で示される従来の製本装置では、本文及び表紙の印刷情報に基づいて製本処理装置の幅方向移動部材の幅方向の移動量を調整しているが、この印刷情報に含まれる寸法の情報は規定値である。しかしながら、実際の本文の厚みは、季節、天候等によって変動するために、印刷された印刷情報に含まれる規定値とは異なる場合がある。
【0010】
そのため、印刷情報に基づいて製本処理装置の幅方向移動部材の幅方向の移動量を調整しても、実際に処理する本文に合致しない調整となってしまい、製本の品質が損なわれる、という問題がある。
【0011】
本発明はかかる問題に鑑みなされたもので、実際の本文の厚みに基づいて製本処理を行うことができ、製本の品質を向上させることができる製本装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するために、本発明は、少なくとも2次元方向に移動部を移動自在とするX−Yアクチュエータと、
X−Yアクチュエータの移動部に設けられて本文を保持するハンドユニットと、
ハンドユニットの可動域において配置された製本ユニットであって、製本のための作業を行う作動要素と、作動要素を駆動する駆動要素とを備える製本ユニットと、
本文の厚みを検出する厚み検出手段と、
を備え、
前記X−Yアクチュエータは、前記移動部を移動させて、本文を保持するハンドユニットを、前記製本ユニットへ移動させると共に、ハンドユニットを移動させた製本ユニットにおける作業の実行のために必要な位置に移動させ、さらに前記厚み検出手段によって検出された厚みに基づき、製本ユニットにおいて、駆動要素を用いて作動要素の位置決めを行うことを特徴とする。
【0013】
特に、前記厚み検出手段によって検出された厚みに基づき、駆動要素を用いて作動要素の幅方向の位置決めを行うことができる。
【0014】
また、前記製本ユニットは、本文の背面にガリ溝を形成するガリカッターユニットと、本文の背面の研磨を行うサンダーカッターユニットとを含み、X−Yアクチュエータは、ガリカッターユニットとサンダーカッターユニットとの順番を入れ替えて、本文を保持するハンドユニットを移動させることが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、厚み検出手段によって検出された厚みに基づき、製本ユニットにおいて、駆動要素を用いて作動要素の位置決めを行うようにしているため、季節、天候、その他の条件などにより本文の厚みが規定値と異なっても、実際の本文の厚みに基づいて個々の本文に対応した製本作業を行うことができ、製本の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による製本装置を示す概略平面図である。
【図2】本発明による製本装置の別例を示す概略平面図である。
【図3】本発明による製本装置のさらに別例を示す概略平面図である。
【図4】製本ユニットの配列例を示す説明図である。
【図5】本発明の製本装置の制御系を表すブロック図である。
【図6】本発明の製本装置の具体例を表す斜視図である。
【図7】図6の製本装置の平面図である。
【図8】表紙供給ユニットの平面図である。
【図9】厚み検出手段の処理を示すフローチャートである。
【図10】従来の製本装置を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1は、本発明によるX−Yアクチュエータを用いた製本装置の概略図である。図において、製本装置10は、概略、X−Yアクチュエータ12と、X−Yアクチュエータ12の移動部12aに設けられたハンドユニット14と、X−Yアクチュエータ12の移動部12aの可動域に配置されたテーブル部15と、テーブル部15に配置された複数の製本ユニット16と、X−Yアクチュエータ12及び各製本ユニット16の制御を行う制御部18(図5)と、制御部18に接続される出力部20(図5)と、表紙に印刷された製本情報を読み取る表紙情報読み取り部22(図5)と、本文に印刷された製本情報を読み取る本文情報読み取り部24と、を備える。
【0019】
X−Yアクチュエータ12は、例えばリニア誘導モータ型X−Yアクチュエータを用いることができ、図示において、X方向に沿ったX軸ステージ12xとY方向に沿ったY軸ステージ12yとZ方向に沿ったZ軸ステージ12zとを備え、移動部12aを高精度に位置決め可能である。尚、ここで、X軸、Y軸は水平面の直交2軸とし、Z軸は鉛直方向に沿った軸とする。
【0020】
Y軸ステージ12yが一対のX軸ステージ12xに対してX方向に沿ってスライド可能に取り付けられ、Z軸ステージ12zがY方向に沿ってスライド可能に取り付けられ、移動部12aがZ軸ステージ12zに対してZ方向に沿ってスライド可能に取り付けられる。
【0021】
このように図1に示した例では、移動部12aは、X−Yアクチュエータ12の作動によって、XYZ軸の3軸方向に自由度があり、3次元上の任意の位置に移動可能となっている。
【0022】
図1に示した例に代えて、図2に示すように、最低限、X軸ステージ12x及びY軸ステージ12yのみを設けることにしてもよい。この場合、移動部12aは、X−Yアクチュエータ12の作動によって、XY軸の2軸方向に自由度があり、2次元上の任意の位置に移動可能となっている。
【0023】
または、図1に示した例に代えて、図3に示すように、さらにZ軸ステージ12zに対してZ軸の周りで回転可能となった回動軸12θを備えることもできる。これによって、移動部12aは、X−Yアクチュエータ12の作動によって、XYZθ軸の3軸及び1軸周りに合計4軸方向で自由度があり、4次元上の任意の位置に移動自在となっている。
【0024】
移動部12aに設けられるハンドユニット14は、本文を締め付ける2つのクランプ板14a、14bを備える。2つのクランプ板14a、14bの間隔はクランプ用アクチュエータである電動モータであるサーボモータ14cによって調整可能となっている。
【0025】
2つのクランプ板14a、14bが初期間隔にあって本文Pを挟んだ状態から、サーボモータ14cが回転することで、2つのクランプ板14a、14bの間隔が狭まり、本文が締め付けられていき、サーボモータ14cによるトルクが所定値に達したときに、十分な締め付け力が得られたものとして、サーボモータ14cが停止される。サーボモータ14cには、サーボモータ14cの回転角度を検出して、その回転角度信号を、サーボモータ14cが回転を開始してから停止するまでのクランプ板14a、14bの移動距離に換算し、それをさらに本文の厚み(初期間隔−移動距離)に換算するための厚み信号として外部に出力する厚み検出手段30としてのエンコーダが設けられる。
【0026】
X−Yアクチュエータ12の移動部12aに設けられたハンドユニット14の可動域に配置されたテーブル部15には、適宜区切りが設けられており、各区切りに製本ユニット16が配置される。また、テーブル部15の所定の位置が入口IN、出口OUTとなっている。
【0027】
製本ユニット16としては、製本のための各工程を実行する任意のユニットとすることができる。好ましくは、いくつかの製本ユニット16の2次元寸法は同じになっているとよい。テーブル部15に設定される製本ユニット16としては、例えば、並製本の場合に、断裁カッターユニット、ガリカッターユニット、サンダーカッターユニット、横糊付けユニット、背糊付けユニット、表紙供給ユニット、プレス成形締ユニット、三方断裁ユニット等を例示することができる。上製本の場合には、さらに、例えば、寒冷紗フィーダユニット、寒冷紗同調ユニット等を加えることができる。
【0028】
各製本ユニット16は、それぞれが実行する工程に応じてその構成は変わるが、基本的に本文に対して作動する作動要素(例えば、カッター、ローラ、ガイド板、プレス板等)と、作動要素を動作させるための駆動要素(例えば、電動モータ、流体圧シリンダ等:図示せず)を備える。作動要素及び駆動要素は、複数の製本ユニットにおいて共通のものとすることもできる。
【0029】
各製本ユニット16は、テーブル部15の各区切りに対して着脱可能に配置することができ、製本ユニット16はテーブル部15の各区切りの基準位置に対して位置決めされ、これによって結果としてX−Yアクチュエータ12に対して位置決めされる。
【0030】
これらの製本ユニット16の配置はX、Y方向に連なるように2次元的に配置され、その配置の順番は任意である。図4(a)〜(c)に配置例を示す。
【0031】
各製本ユニット16の作動要素の向きは、全ての製本ユニット16において同じ方向に揃っている必要はない。図4に例示したようなX−Yアクチュエータ12による移動経路によって、その向きを変えることも可能である。または、図3に示すような4軸の自由度を持ったX−Yアクチュエータ12を用いた場合には、ハンドユニット14で保持される本文の向き自体を変えることもできるので、製本ユニット16の向きを一定に揃えて、その代わりに本文の向きを製本ユニット16に応じて変えることも可能である。
【0032】
また、必ずしも図4に示したように、製本工程の順番に隣接して並べる必要はなく、例えば、作業員が調整、メンテナンス等のために頻繁にアクセスする必要のある製本ユニットに関しては、アクセスしやすい手前の位置に配置するようにして作業性を良好にすることも可能である。また、外部からの補充が必要なもの、例えば、表紙供給ユニットといった製本ユニットに関しては、アクセスしやすい手前の位置に配置するとよい。
【0033】
また、必ずしも図4に示したように、X−Yアクチュエータ12による移動部12aの移動経路が全ての製本ユニット16を経由する必要はなく、例えば、製本条件に応じて、いずれかの製本ユニット16を飛ばすようになっていてもよい。または、製本条件に応じて、製本ユニット16の移動経路を異なるようにしてもよい。
【0034】
図8は、製本ユニット16の中の表紙供給ユニット16Xの具体的な構成を示す図である。表紙供給ユニット16Xは、表紙が蓄積される表紙待機部162と、蓄積された表紙待機部162の中から一枚を吸着して搬送する表紙搬送部164と、表紙搬送部164で搬送された表紙が設置される同調部166と、表紙の傾きを検出するための一対のCCDセンサ168と、を備える。
【0035】
制御部18は、後述の表紙読み取り部22及び本文情報読み取り部24から読み取られた製本情報に応じてX−Yアクチュエータ12の位置制御及び製本ユニット16における動きを制御する。また、制御部18には、厚み検出手段30からの回転角度信号に対応する厚み信号が入力されており、この厚み信号によってハンドユニット14が実際に保持している本文の厚みを求めて、この厚みによって製本ユニット16の動きを制御する。
【0036】
即ち、制御部18は、図5に示すように、制御信号によりX−Yアクチュエータ12を制御して移動部12aの位置を制御する。移動部12aを図4で例示するように、製本条件に基づき決められた移動経路に沿って移動させて、ハンドユニット14を製本ユニット16へと搬送すると共に、各製本ユニット16において、決められた位置にハンドユニット14を固定するか、または製本条件及び厚み検出手段30からの厚み信号に基づき決められた動き(位置、速度(速さ、向き))をハンドユニット14が行うように制御する。
【0037】
また、制御部18は、各製本ユニット16に対して、製本条件及び厚み検出手段30からの厚み信号に基づき作動要素が決められた位置に位置決めを行うように、駆動要素を駆動する。移動部12aの現在位置に応じて、制御信号により各製本ユニット16の駆動要素を駆動させて作動要素の作動の開始、終了を制御する。製本ユニット16は、同期して動作する必要はなく、制御部18からの制御信号に応じて独立的に動作を開始・終了することができる。
【0038】
制御部18には、音響、視覚またはその他の任意の人間が感知できる方法で表示を行う出力部20が接続される。
【0039】
表紙情報読み取り部22は、製本ユニット16の中の表紙供給ユニット16Xに設けられており、表紙供給ユニットによって取り出される表紙に印刷された製本情報を読み取るようになっている。この読み取り動作は、好ましくは自動的に行われるとよい。具体的には、図8の表紙供給ユニット16Xにおいて、表紙情報読み取り部22は、表紙待機部162と、同調部166との間に設けられる。
【0040】
本文情報読み取り部24は、製本ユニット16の入口付近に設けられており、ハンドユニット14によって保持される前の本文に印刷された製本情報を読み取るようになっている。この読み取り動作の起動は、好ましくは手動で行われるとよい。
【0041】
製本装置10は、図示しない印刷機とは独立な装置となっており、印刷機で印刷された本文と表紙とは別々に製本装置10へと運ばれる。そして、印刷機において、本文と表紙がそれぞれ印刷されており、その際に、その内容と共に製本情報が印刷されるようになっている。本文Pは、丁合機によって丁合された折丁または紙葉類、その他の既存の紙葉類等とすることもできる。
【0042】
印刷機で印刷され、表紙情報読み取り部22及び本文情報読み取り部24で読み取られる製本情報としては、ロッド番号またはその他の識別情報、本文の高さ、本文の幅、本文の厚み(ここでの厚みは規定値である)、質量等の寸法、紙質、糊の厚み、経由する製本ユニット、各製本ユニットにおけるX−Yアクチュエータの動き、その他の製本条件情報を含めることができる。バーコードのような1次元コードを用いる場合には、情報量が限られるので、識別情報のみとしてもよく、2次元コードを用いる場合には、より多くの情報を含めることができるため、識別情報のみならず、寸法を含む製本条件情報を含めるようにするとよい。印刷される製本情報の情報量が限定的である場合、残りの必要な情報は、他の記録媒体等を介して制御部18に供給されてもよく、制御部18において、識別情報に基づき残りの情報が抽出可能となっているとよい。
【0043】
製本情報は、後で三方断裁によって切り落とされる本文及び表紙の部分、または、製本後に目立たなくなる部分に印刷されているとよい。
【0044】
以上のように構成されるX−Yアクチュエータを用いた製本装置10においては、入口INに製本処理に供される本文Pが待機されている。また、表紙供給ユニット16Xの表紙待機部162に表紙が待機されている。
【0045】
表紙供給ユニット16Xにおいて、制御部18からの指令によって、その表紙搬送部164が動作し、表紙搬送部164が表紙待機部162で待機された表紙の一番上の表紙を吸着して同調部166の方へと引き出す(図8(b)の仮想線)。すると、制御部18からの指令によって表紙読み取り部22が動作して、取り出された表紙の製本情報が読み取られる。
【0046】
一方、入口INに待機された本文Pは、本文情報読み取り部24によって、その製本情報が読み取られる。この本文情報読み取り部24の起動は、好ましくは作業者によって手動で行われる。
【0047】
これら表紙読み取り部22と本文情報読み取り部24で読み取られた製本情報は、制御部18において、その照合が行われる。
【0048】
照合の一例としては、識別情報が一致しているか否かをみることができる。または、識別情報が、対応する関係にあるか否かをみることとすることができる。即ち、本文とその本文に組み合わせるべき表紙との組合せ表については、制御部18に予め格納されているとよく、その組合せ表を参照して、組み合わせが正しいかどうかを判断するようにしてもよい。
【0049】
制御部18は、判定結果に基づき、その判定結果信号を出力部20に出力し、出力部20は、音響、視覚等による表示を行う。
【0050】
作業員は、組み合わせが正しくないという判定結果が出力部20から出力された場合には、本文を別のものと取り換えて、正しいと思われる本文に対して、再度、本文情報読み取り部24によって製本情報の読み取りを行うことができ、出力部20から正しいという判定結果が出力されるまで、その作業を繰り返すことができる。
【0051】
こうして、作業員の判断を介入させることで、フレキシブルな対応が可能になり、正しい組み合わせに迅速に到達することができ、効率よく製本処理を行うことができるようになる。ハンドユニット14に保持させる前及び製本ユニット16に処理される前に正しい組み合わせかどうか確認することで、本文の品質が損なわれることを防止することができる。
【0052】
正しい組み合わせとされた本文がINの位置に投入されると、制御部18は、X−Yアクチュエータ12によってその移動部12aをINの位置に移動させて、クランプ用アクチュエータ14cを制御して、ハンドユニット14によって待機された本文Pを把持させて、予め決められた締め付け力となるように締め付けさせる。ここで、予め決められた締め付け力は、前述のように読み取られた製本情報から得られた製本条件情報に応じて変更してもよい。そして、厚み検出手段30によって前述のように、ハンドユニット14に保持されて締め付けられた状態にある実際の本文Pの厚みを検出し、X−Yアクチュエータ12によって、予め決められた移動経路に沿って製本ユニット16に本文Pを搬送させる。
【0053】
ここで、本文の厚みを求める制御フローの一例を図9に基づいて説明する。
まず、サーボモータ14cのトルクの値が検出され(ステップ100)、このトルク値があらかじめ決められている規定のトルク値になったかどうかが判定される(ステップ102)。ステップ102において規定のトルク値で無い場合はステップ100に戻り、規定のトルク値になった場合には、サーボモータ14cを停止させて、サーボモータ14cの回転開始から停止までの回転角度を検出する(ステップ104)。この回転角度から、ハンドユニット14の2つのクランプ板14a、14bの初期間隔からの移動距離を計算し、クランプ板14a、14aの現在の間隔に相当する本文Pの厚みを算出する(ステップ106)。これにより、ハンドユニット14に保持された本文の実際の厚みが検出される。
【0054】
好ましくは、制御部18は、表紙の製本情報が読み取られ且つ本文の厚みが検出された時点で、読み取った製本情報から得られた製本条件情報及び検出された実際の本文の厚みに基づき、製本ユニット16に応じて駆動要素を駆動して、作動要素を作動させる。
【0055】
即ち、製本ユニット16において、厚み検出手段30によって検出した本文の厚み、及び製本条件情報に含まれる本文の高さ、幅、紙質等の情報に基づき、作動要素の幅方向の位置決めを行い、または作動要素の高さ方向の位置決めを行う。
【0056】
そして、制御部18の制御に基づき、X−Yアクチュエータ12によって移動部12aのXY座標、XYZ座標、またはXYZθ座標が制御されて、作動要素に対する本文Pの位置決めが行われる。
【0057】
こうして順次決められた製本ユニット16を経て、所定の製本のための工程を実行して、出口OUTにまで達すると、制御部18は、ハンドユニット14による本文Pの保持を解除させ、次の本文Pの処理のために再び入口INへと移動部12aを移動させる。
【0058】
また、1つの製本作業を行っている間、表紙供給ユニット16Xでは、次の表紙が引き出されており、表紙読み取り部22によって製本情報が読み取られているので、制御部18は、その製本情報から得られた製本条件情報に基づき、作業が終わった製本ユニット16を次の本の製本条件に合わせて製本ユニット16の駆動要素を駆動して、作動要素を作動させるようにしてもよい。こうして、効率良く、作業を行うことができる。表紙に印刷される製本情報に、製本条件情報を含めておくと、制御部18は、読み取られた製本条件情報から直接各駆動要素を駆動することができ、処理をより一層効率化することができる。
【0059】
図6及び図7は、本発明によるX−Yアクチュエータを用いた製本装置の具体例である。この例では、断裁カッターユニット16A、ガリカッターユニット16B、サンダーカッターユニット16C、横糊付けユニット16D、背糊付けユニット16E、表紙供給ユニット16X、プレス成形締ユニット16Hがテーブル部15のそれぞれ適当な位置に配置されている。
【0060】
断裁カッターユニット16Aは、本文Pの背面を断裁するためのミーリングカッター170及び本文を両側から押さえ付ける一対のガイド板172を作動要素として備えており、本文PがX−Yアクチュエータ12によって搬送されると、駆動要素によって一対のガイド板172が本文Pを両側から押さえ付けて、駆動要素がミーリングカッター170を回転させつつ背面に沿って動かすようになっている。
【0061】
断裁カッターユニット16Aの一対のガイド板172の幅が、厚み検出手段30により検出された本文Pの厚みに応じて調整される。また、ミーリングカッター170のストロークが、製本条件の本文Pの高さに応じて調整される。
【0062】
ガリカッターユニット16B及びサンダーカッターユニット16Cは、それぞれ本文Pの背面にガリ溝を形成するガリカッター180、本文Pの背面の研磨を行うサンダーカッター182及び本文Pを両側から押さえ付けまたは案内する一対のガイド板184を作動要素として備えており、本文PがX−Yアクチュエータ12によって搬送されると、駆動要素によって一対のガイド板184が本文Pを両側から押さえ、駆動要素がガリカッター180を回転させつつ動かし、駆動要素がサンダーカッター182を回転させるようになっている。
【0063】
ガリカッター180のストロークは、厚み検出手段30により検出された本文Pの厚みに応じて調整され、一対のガイド板184の幅が、本文Pの厚みに応じて調整される。
【0064】
また、サンダーカッター182の回転方向は、製本条件によって異なる。よって、製本条件によって、サンダーカッター182の回転方向が変更される。
【0065】
本文Pは固定的に押さえられて、ガリカッター180、サンダーカッター182が回転しながら動いて、本文Pの背面のそれぞれ溝削、研磨を行うため、従来のように本文が動きながら回転するガリカッターに対して進んでいくのとは異なり、処理面を綺麗に仕上げることができる。特に、従来はガリカッターによってバリが発生していたが、本発明では、そのようなバリの発生を低減することができる。また、従来はガリカッターによってバリが発生するために、その後で、サンダーカッターで研磨を行うことが必須となっていたのに対して、本発明ではガリカッターによるバリの発生を低減することができるために、ガリカッターユニット16Bとサンダーカッターユニット16Cによる処理の順番を入れ替えることもできる。つまり、研磨を行ってからガリ溝を形成するようにすることで、ガリ溝に研磨による粉が入り込むことを防ぐことができ、次の糊塗布作業において糊がガリ溝に入り込んでなじむために、糊盛りを良好にすることができる。
【0066】
横糊付けユニット16Dは、本文の横側面に糊を塗布する一対のローラ190を作動要素として備えており、本文PがX−Yアクチュエータ12によって搬送されると、駆動要素が一対のローラ190を回転させるようになっている。
【0067】
横糊付けユニット16Dの一対のローラ190間の間隔は、厚み検出手段30により検出された本文Pの厚みに応じて調整される。
【0068】
背糊付けユニット16Eは、本文の背面に糊を塗布するローラ192、糊掻き194、修正ローラ196を作動要素として備えており、本文PがX−Yアクチュエータ12によって搬送されると、駆動要素がローラ192を回転させ、駆動要素が糊掻き194を揺動させ、駆動要素が修正ローラ196の上下高さを調整するようになっている。
【0069】
糊掻き194の作動時間及び揺動角度は、製本条件の糊を付ける本の高さ及び糊の厚みに応じて調整される。修正ローラ196の上下高さは、製本条件の糊の厚みに応じて調整される。
【0070】
表紙供給ユニット16Xにおいては、先に製本情報が読み取られた表紙が、表紙搬送部164によって同調部166に載置されている。また、同調部166において、一対のCCDセンサ168が表紙Rの2個所の部分の撮像を行っており、この撮像情報は、制御部18へと送られて、表紙の印刷の傾きが検出される。そして、同調部166においては、検出された傾きに応じて表紙の向きが調整されており、または検出された傾きに応じてX−Yアクチュエータ12の向きが調整されて、X−Yアクチュエータ12によって搬送された本文Pと表紙Rとが合わせられる。
【0071】
プレス成形締ユニット16Hは、一対のプレス板200を作動要素として備えており、本文Pと該本文Pに貼り合わされた表紙RがX−Yアクチュエータ12によって搬送されると、駆動要素が、一対のプレス板200を互いに接近する方向に移動させて、本文と表紙とを合わせて横側から押し付けるようになっている。
【0072】
プレス成形締ユニット16Hの一対のプレス板200の幅が、厚み検出手段30により検出された本文Pの厚みに応じて調整される。
【0073】
こうして、製本情報及び厚み検出手段30により検出された本文Pの厚みに応じて、各製本ユニット16の作動要素の位置決め調整が行われるために、本の種類及び本文の実際の状態に適した位置で作動要素を作動させることができる。季節、天候、その他の条件などにより本文の厚みが規定値と多少異なっても、製本の品質を良好にすることができる。また、製本情報及び厚み検出手段30により検出された本文Pの厚みの情報は、この製本装置10の下流に設けられて後工程を行う任意の機械(例えば三方断裁機)にも転送されて、その機械での処理における調整に用いられるとよい。
【0074】
製本情報及び検出された厚み情報に基づいて、X−Yアクチュエータ12による搬送及び各製本ユニット16の動作を制御部18で制御することで、オンデマンド出版(POD)のような多種類で少量の製本にも柔軟に対応することができる。
【0075】
なお、前記実施の形態においては、厚み検知手段30による本文Pの厚みの検出にサーボモータ14cの回転角度を検出するエンコーダを用いたが、これに限定されるものではなく、厚み検知手段30として、任意の距離センサとしてハンドユニット14の2つのクランプ板14a、14b間の間隔を直接検出するものとしたり、クランプ用アクチュエータとして流体圧シリンダを用いた場合などは、流体圧シリンダのピストンの移動量などを検出する距離センサとしてもよい。
【符号の説明】
【0076】
10 製本装置
12a 移動部
12 X−Yアクチュエータ
14 ハンドユニット
16 製本ユニット
18 制御部
20 出力部
22 表紙情報読み取り部
24 本文情報読み取り部
30 厚み検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2次元方向に移動部を移動自在とするX−Yアクチュエータと、
X−Yアクチュエータの移動部に設けられて本文を保持するハンドユニットと、
ハンドユニットの可動域において配置された製本ユニットであって、製本のための作業を行う作動要素と、作動要素を駆動する駆動要素とを備える製本ユニットと、
本文の厚みを検出する厚み検出手段と、
を備え、
前記X−Yアクチュエータは、前記移動部を移動させて、本文を保持するハンドユニットを、前記製本ユニットへ移動させると共に、ハンドユニットを移動させた製本ユニットにおける作業の実行のために必要な位置に移動させ、さらに前記厚み検出手段によって検出された厚みに基づき、製本ユニットにおいて、駆動要素を用いて作動要素の位置決めを行うことを特徴とする製本装置。
【請求項2】
前記厚み検出手段によって検出された厚みに基づき、駆動要素を用いて作動要素の幅方向の位置決めを行うことを特徴とする請求項1記載の製本装置。
【請求項3】
前記製本ユニットは、本文の背面にガリ溝を形成するガリカッターユニットと、本文の背面の研磨を行うサンダーカッターユニットとを含み、X−Yアクチュエータは、ガリカッターユニットとサンダーカッターユニットとの順番を入れ替えて、本文を保持するハンドユニットを移動させることが可能であることを特徴とする請求項1または2記載の製本装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−106477(P2012−106477A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133668(P2011−133668)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【分割の表示】特願2011−509746(P2011−509746)の分割
【原出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(593048043)芳野マシナリー株式会社 (17)