説明

製本装置

【課題】本文の素材によらずに、本文と表紙との接着強度を十分に確保することができる製本装置を提供する。
【解決手段】本文Pと表紙とを接着する前に本文の背面にガリ溝を形成するガリカッターを備え、ガリ溝P1が形成された本文Pの背面と表紙とを接着させて製本する製本装置において、本文Pの背面のガリ溝P1内にガリ溝幅W1よりも小さい幅W2を持った少なくとも1つの細片P2を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉束(以下、本文という)を表紙と合わせて製本を行う製本装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の製本装置の1つの例としては、特許文献1に示す無線綴機が知られている。図11に示すように、無線綴機は、エンドレスにチェーンを配し、該チェーンに所定間隔毎にクランパーを取り付けて、チェーンをラウンド経路40に沿って一方向に回転駆動させている。
【0003】
そして、ラウンド経路40の一部に沿って、製本工程に必要な、ミーリングカッター42、ガリカッター44、サンダーカッター45、横糊付け機46、背糊付け機48、表紙繰出し機50、同調機52、プレス成形締機54などの各ユニットが設置される。
【0004】
図示を省略する各クランパーは、固定クランプ板と可動クランプ板とからなっており、弾性体によって両クランプ板を付勢することで、両クランプ板で、丁合機にて丁合された折丁等からなる本文Pを締め付けており、チェーンによって各ユニットを順番に移動するようになっている。例えば、ミーリングカッター42によって本文背面を断裁して背面を揃え、ガリカッター44によって本文背面にガリ溝を入れ、サンダーカッター45によって背面の研磨を行い、その後、横糊付け機46によって背面近傍の両脇に糊を塗布し、背糊付け機48によって背面に糊を塗布し、その後に表紙繰出し機50によって繰出された表紙Rと本文Pとを同調機52で合わせて、プレス成型締め機54により表紙を本文の背部分に圧着して成形する。
【0005】
従来、ガリカッターによってガリ溝を形成することで、糊が塗布されたときに、糊がガリ溝内に充填されるので、糊の接触面積を増やすことができ、また、サンダーカッターによって背面を細かく毛羽立出せることで、本文と表紙との接着強度を高めることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3673510号公報(図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本文の素材によっては、本文の表紙との接着強度を十分に確保することができない場合がある。例えば、特に本文が毛羽立ちにくい素材である場合に強度の低下が顕著となる。
【0008】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、本文の素材によらずに、本文と表紙との接着強度を十分に確保することができる製本装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、請求項1記載の発明は、本文と表紙とを接着する前に本文の背面にガリ溝を形成するガリカッターを備え、ガリ溝が形成された本文の背面と表紙とを接着させて製本する製本装置において、本文の背面には、そのガリ溝内にガリ溝幅よりも小さい幅を持った少なくとも1つの細片が形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の製本装置において、前記細片は、本文とガリカッターとの相対位置を本文の背面の長手方向に変位させて、ガリカッターにより本文の背面に複数回溝を切削することによって、形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の製本装置において、前記長手方向の変位量は、ガリカッターによる1回の切削によって形成される溝の幅の2倍より小さいことを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の製本装置において、前記細片の幅は、0.1mm〜1.5mmの範囲にあることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の製本装置において、前記本文を締め付けて搬送する締め付け手段を備え、締め付け手段はその端部から本文の背面が突出するようにして背面近傍を締め付けており、締め付け手段による本文の締め付け地点が、締め付け手段の前記端部よりも引き込んだ位置にあることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、本文を締め付けて搬送する締め付け手段を備え、締め付け手段はその端部から本文の背面が突出するようにして背面近傍を締め付けており、締め付け手段によって搬送された本文の背面に糊が塗布されて、本文の背面と表紙とを接着させて製本する製本装置において、
前記締め付け手段による本文の締め付け地点が、締め付け手段の前記端部よりも引き込んだ位置にあることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の製本装置において、前記締め付け手段による本文の締め付け地点と前記締め付け手段の端部との間の締め付け手段の部分には、本文の一部の変位を可能とする逃げ部が形成されることを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の製本装置において、前記逃げ部は、前記締め付け手段による本文の締め付け地点から前記締め付け手段の前記端部に向かって広がるテーパ面を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ガリ溝内に形成された細片があたかも本文の繊維として機能して、糊となじむために、本文と表紙との間の接着強度を高めることができる。
【0018】
また、本文を締め付けて搬送する締め付け手段による締め付け地点を、締め付け手段の端部よりも引き込んだ位置にあるようにすることで、本文の背面から締め付け地点までの間において、本文に隙間を形成して、背面から糊を本文の内部に浸み込ませることが可能となる。これによって、本文と糊がなじむために、本文と表紙との接着強度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による製本装置の一例を示す概略斜視図である。
【図2】図1の製本装置の平面図である。
【図3】本発明の製本装置の制御系を表すブロック図である。
【図4】ハンドユニットによる本文の締め付け部分の拡大図であり、(a)は本発明による締付部分、(b)は従来の締付部分を表す。
【図5】ガリカッターの一例を表す平面図と斜視図である。
【図6】ガリカッターによってガリ溝が形成された本文の(a)は平面図、(b)及び(c)は、ガリカッターによる溝切削の工程を表す図6(a)の一部の相当拡大図である。
【図7】ガリカッターによってガリ溝が形成された本文の斜視図である。
【図8】別例に係るガリカッターによってガリ溝が形成された本文の(a)は平面図、(b)及び(c)は、ガリカッターによる溝切削の工程を表す図8(a)の一部の相当拡大図である。
【図9】ガリカッターの別例を表す平面図と斜視図である。
【図10】ガリカッターの別例を表す斜視図である。
【図11】従来の製本装置を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図1及び図2は、本発明による製本装置の一例を表す全体概略図である。図において、製本装置10は、概略、X−Yアクチュエータ12と、X−Yアクチュエータ12の移動部12aに設けられたハンドユニット14と、X−Yアクチュエータ12の移動部12aの可動域に配置されたテーブル部15と、テーブル部15に配置された複数の製本ユニット16と、X−Yアクチュエータ12及び各製本ユニット16の制御を行う制御部18(図3)と、を備える。
【0022】
X−Yアクチュエータ12は、例えばリニア誘導モータ型X−Yアクチュエータを用いることができ、図示において、X方向に沿ったX軸ステージ12xとY方向に沿ったY軸ステージ12yとを備える。さらにX−Yアクチュエータ12は、Z方向に沿ったZ軸ステージ12zと、任意にはZ軸ステージ12zに対してZ軸の周りで回転可能となった回動軸を備える。
【0023】
Y軸ステージ12yが一対のX軸ステージ12xに対してX方向に沿ってスライド可能に取り付けられ、Z軸ステージ12zがY軸ステージ12yに対してY方向に沿ってスライド可能に取り付けられ、移動部12aがZ軸ステージ12zに対してZ方向に沿ってスライド可能に取り付けられる。これによって、移動部12aは、X−Yアクチュエータ12の作動によって、XYZ軸の3軸方向で自由度があり、3次元上の任意の位置に移動自在であり、高精度に位置決めされる。また、任意には、移動部12aは、回転軸に対してZ軸の周りで回転可能に取り付けられ、θ軸の1軸周りに合計4軸方向で自由度があり、3次元上の任意の位置に移動自在であり、高精度に位置決めされる。
【0024】
尚、ここで、X軸、Y軸は水平面の直交2軸とし、Z軸は鉛直方向に沿った軸としているが、これに限定されるものではない。例えば、X軸及びY軸とで鉛直面を形成するようにしてもよい。
【0025】
移動部12aに設けられるハンドユニット14は、本文を締め付ける締め付け手段としての2つのクランプ板14a、14bを備える。2つのクランプ板14a、14bは、弾性部材によって互いに接近するように付勢することも可能であるが、好ましくは、2つのクランプ板14a、14bの距離が電動モータ、油空圧シリンダ等のクランプ用アクチュエータ14cによって電力または油空圧により調整可能となっているとよい。
【0026】
X−Yアクチュエータ12の移動部12aに設けられたハンドユニット14の可動域に配置されたテーブル部15には、複数の区切りが設けられており、各区切りに製本ユニット16が配置される。また、テーブル部15の所定の位置が入口IN、出口OUTとなっている。
【0027】
製本ユニット16としては、製本のための各工程を実行するユニットであり、この例の並製本の場合に、断裁カッターユニット16A、ガリカッターユニット16B、サンダーカッターユニット16C、横糊付けユニット16D、背糊付けユニット16E、表紙供給ユニット16X、プレス成形締ユニット16Hがテーブル部15のそれぞれ適当な位置に配置されている。上製本の場合には、さらに、例えば、寒冷紗フィーダユニット、寒冷紗同調ユニット等を加えることができる。
【0028】
各製本ユニット16は、それぞれが実行する工程に応じてその構成は変わるが、基本的に本文に対して作動する作動要素(例えば、カッター、ローラ、ガイド板、プレス板等)と、作動要素を動作させるための駆動要素(例えば、電動モータ、油空圧シリンダ等:図示せず)を備える。
【0029】
制御部18は、製本情報に応じてX−Yアクチュエータ12の位置制御及び製本ユニット16における動きを制御する。即ち、制御部18は、図3に示すように、制御信号によりX−Yアクチュエータ12を制御して移動部12aの位置を制御する。移動部12aを製本条件に基づき決められた移動経路に沿って移動させて、ハンドユニット14を製本ユニット16へと搬送すると共に、各製本ユニット16において、決められた位置にハンドユニット14を固定するか、または製本条件に基づき決められた動き(位置、速度(速さ、向き))を行うように制御する。製本情報としては、ロッド番号またはその他の識別情報、高さ、幅、厚み、質量等の寸法、紙質、糊の厚み、経由する製本ユニット、各製本ユニットにおけるX−Yアクチュエータの動き、その他の製本条件情報を含めることができる。そして、ガリによるガリ溝の設定は、紙質またはその他の条件によって決めることができる。
【0030】
また、移動部12aの現在位置に応じて、制御信号により各製本ユニット16の駆動要素を駆動させて作動要素の作動の開始、終了を制御する。製本ユニット16は、同期して動作する必要はなく、制御部18からの制御信号に応じて独立的に動作を開始・終了することができる。
【0031】
本文と表紙とは別々に製本装置10へと運ばれる。本文Pは、丁合機によって丁合された折丁または紙葉類、印刷機または複写機によって作成された紙葉類、その他の既存の紙葉類(例えば年賀状束、アルバム用紙束)等とすることができる。
【0032】
以上の製本装置10の作用を、各製本ユニット16の構成と共に以下に説明する。
【0033】
まず入口INに製本処理に供される本文Pが待機され、表紙供給ユニット16Xに表紙が待機されている。
【0034】
X−Yアクチュエータ12によってその移動部12aをINの位置に移動させて、クランプ用アクチュエータ14cを制御して、ハンドユニット14によって待機された本文Pを把持させて、予め決められた締め付け力となるように締め付けさせる。ここで、締め付け力は、読み取られた製本情報から得られた製本条件情報から決定される。
【0035】
本文Pは、ハンドユニット14のクランプ板14a、14bによってクランプ板14a、14bの端部から本文の背面が突出するようにして背面近傍が締め付けられ、且つ、その際に、締め付け地点が、クランプ板14a、14bの端部から若干引き込んだ位置となっている。この締め付け部分の拡大図を、図4に示す。好ましくは、クランプ板14a、14bの端部から締め付け地点までの距離D1を1mm以上、好ましくは5mm〜20mmとするとよい。従来の本文の締め付けにおいては、図4(b)に示すように、締め付け手段の端部から締め付け地点までの距離は0であり、可能な限り背面近くを締め付けるようになっているが、ここでは、図4(a)に示すように、クランプ板14の端部から締め付け地点までの距離D1を確保するようにする。さらに好ましくは、図4(a)に示すように、クランプ板14a、14bの端部から締め付け地点までの間に、逃げ部14dが形成されるとよく、逃げ部14dは、締め付け地点から締め付け手段の端部に向かって広がるテーパ面14eを有しており、これによって、本文の背面がテーパ面14eに沿って広がることができるようになっている。
【0036】
そして、X−Yアクチュエータ12によって、予め決められた移動経路に沿って製本ユニット16に本文Pを搬送させる。
【0037】
まず、本文Pは、X−Yアクチュエータ12によって断裁カッターユニット16Aに搬送される。断裁カッターユニット16Aは、本文の背面を断裁するためのミーリングカッター170及び本文を両側から押さえ付ける一対のガイド板172を作動要素として備えており、本文PがX−Yアクチュエータ12によって断裁カッターユニット16Aに到達すると、駆動要素によって一対のガイド板172が本文Pを両側から押さえ付けて、駆動要素がミーリングカッター170を回転させつつ背面に沿って動かすようになっている。
【0038】
次に、本文Pは、X−Yアクチュエータ12によってガリカッターユニット16Bに搬送される。ガリカッターユニット16Bは、本文の背面にガリ溝を形成するガリカッター180、及び本文を両側から押さえ付けまたは案内する一対のガイド板184を作動要素として備えている。
【0039】
ガリカッター180は、図5に示すように、円柱状の本体180Aの周囲にガリ溝の間隔に対応する一定間隔毎に刃180Bが形成されたものとなっている。刃180Bの断面は、正方形、長方形、台形または三角形となっているとよい。
【0040】
本文Pがガリカッターユニット16Bに到達すると、駆動要素によって一対のガイド板184が本文Pを両側から押さえ、駆動要素がガリカッター180を回転させつつ動かすようになっており、これによって、本文Pの背面に溝が一定間隔で形成される。ガリカッター180のストロークは、製本条件の本の幅に応じて調整され、一対のガイド板184の幅が、本文の幅に応じて調整される。
【0041】
次に、ガイド板184による押さえを解除すると、本文Pは、X−Yアクチュエータ12によって背面の長手方向に僅かに変位されて、再び、ガイド板184によって押さえ付けられて、再度、ガリカッター180を回転させつつ動かす。これによって、本文Pには、僅かにずれた位置に溝が新たに形成されることとなる。
【0042】
次に、本文Pは、X−Yアクチュエータ12によってサンダーカッターユニット16Cに搬送される。サンダーカッターユニット16Cは、本文の背面の研磨を行うサンダーカッター182及び本文を両側から押さえ付けまたは案内する一対のガイド板184を作動要素として備えている。尚、図の例では、ガイド板184は、ガリカッターユニット16Bと共通のものとなっているが、これに限るものではない。
【0043】
本文Pがサンダーカッターユニット16Cに到達すると、駆動要素によって一対のガイド板184が本文Pを両側から押さえ、駆動要素がサンダーカッター182を回転させるようになっている。
【0044】
次に、本文Pは、X−Yアクチュエータ12によって横糊付けユニット16Dに搬送される。横糊付けユニット16Dは、本文の横側面に糊を塗布する一対のローラ190を作動要素として備えている。本文Pが横糊付けユニット16Dに到達すると、駆動要素が一対のローラ190を回転させるようになっており、本文の横側面に糊が塗布される。
【0045】
次に、本文Pは、X−Yアクチュエータ12によって背糊付けユニット16Eに搬送される。背糊付けユニット16Eは、本文の背面に糊を塗布するローラ192、糊掻き194、修正ローラ196を作動要素として備えている。本文Pが背糊付けユニット16Eに到達すると、駆動要素がローラ192を回転させ、駆動要素が糊掻き194を揺動させ、駆動要素が修正ローラ196の上下高さを調整するようになっており、本文の背面に糊が塗布される。
【0046】
次に、本文Pは、X−Yアクチュエータ12によって表紙供給ユニット16Xに搬送される。表紙供給ユニット16Xは、表紙が蓄積される表紙待機部162と、表紙待機部162に蓄積された表紙の中から一枚を吸着して搬送する表紙搬送部164と、表紙搬送部164で搬送された表紙が設置される同調部166を備える。表紙搬送部164によって表紙待機部162から取り出された一枚の表紙は、同調部166に載置されている。本文Pが表紙供給ユニット16Xに到達すると、表紙と接着される。
【0047】
次に、本文Pは、X−Yアクチュエータ12によってプレス成形締ユニット16Hに搬送される。プレス成形締ユニット16Hは、一対のプレス板200を作動要素として備えている。本文Pと該本文Pに貼り合わされた表紙Rがプレス成形締ユニット16Hに到達すると、駆動要素が、一対のプレス板200を互いに接近する方向に移動させて、本文と表紙とを合わせて横側から押し付けて、接着を確実にする。
【0048】
以上の手順で説明したように、本製本装置10においては、ガリカッターユニット16Bによって2回の溝切削が行われる。詳述すると、図6(b)に示すように、1回目の溝切削によって大きな間隔をあけて溝が形成され、図6(c)に示すように、2回目の溝切削の際には、移動部12aを変位させて本文Pのガリカッター180に対する相対位置を変位させて行う。変位量は、1回の溝形成によって形成される溝幅に対して、その1倍より大きく2倍よりも小さい量となっている。
【0049】
これによって、図6及び図7に示すように、2回の溝切削により、本文Pには、比較的大きな間隔D(例えば、5〜15mm程度)をあけて比較的大きな溝幅W1のガリ溝P1(幅が1mm〜3mm)が形成されると共に、各ガリ溝P1内に溝幅W1より幅W2の小さい細片P2が形成される。この細片P2が、その後に塗布される糊となじむために、表紙と本文との接着強度を向上させることができる。例えば、本文Pに繊維がなく、毛羽立たないものであっても、細片がその毛羽立ちの代わりとなるために、接着強度を上げることができる。本文の素材が再生紙である場合には、あまり繊維が存在しないが、そのような繊維の全く無いものであっても、接着強度を確保することができる。
【0050】
この細片P2の幅W2は、小さい程、繊維の代わりまたは繊維の補強となり好ましいが、例えば、0.1mm〜1.5mm程度の幅とすると好ましく、0.3〜1.2mm程度、または0.4〜1.0mm程度が最も好ましい。細片の幅をあまり小さくすると細片自体の強度がなくなるが、あまり大きくすると、細片が繊維の代わりにならず、細片の両側に個別のガリ溝ができてガリ溝の数が増えたのと等価になってしまう。ガリ溝の数を増加させることにより、糊との接触面積が増加して本文Pと表紙Rとの接着強度を増加させることが予想されるが、発明者の研究によれば、ガリ溝の数を増加しても、予想に反して接着強度は増加しないことが判明した。これは、ガリ溝の溝底はガリカッターによる切削面となり毛羽立ちが少なく、ガリ溝が形成されていない部分の方が毛羽立ちが多いため、糊との接触面積の増加と毛羽立ちの多い部分の面積の減少とが相殺されてしまうためと考えられる。よって、細片の幅は、ガリ溝のピッチよりは小さいことが望まれる。
【0051】
ガリ溝の深さは、通常のガリ溝と同じ程度であり、例えば、0.3〜1.5mm程度とすることができる。
【0052】
細片P2を形成した場合と細片P2が無い場合との比較を行うと、形成した場合は無い場合に対して4〜6倍の接着強度が得られた。また、本文と表紙との間の接着部分に引張荷重を印加すると、接着部分で剥がれずに本文を構成する紙自体が破れた。これにより、接着部分に、紙自体の引張強度よりも大きな引張強度が得られたことが分かった。
【0053】
図6及び図7の例は、ガリカッターの刃の断面形状が長方形である場合であるが、断面形状を台形にした場合には、図8に示すような大きな台形の断面形状をしたガリ溝P1の中に、断面三角形の細片P2を形成することができる。この場合、断面台形のガリ溝P1及び断面三角形の細片P2の斜面によって、糊の接触面積を確保することができて、好適となる。また、この場合、溝幅を台形の最大値とすると、移動部12aを変位させて本文Pのガリカッター180に対する相対位置を変位させる変位量は、1回の溝形成によって形成される溝幅に対して、その1倍以下の量となっている。
【0054】
また、背糊付けユニット16Eによって本文の背面に糊付けされる際に、逃げ部14dによって、本文Pの背面に隙間を形成することができ、背面から糊が内部に浸透して糊と本文Pとがなじむために、表紙Rと本文Pとのより一層の接着強度の向上を図ることができる。尚、締め付け地点がクランプ板14a、14bの先端よりも引き込んでいても、その他のユニットにおいて、ガイドが本文を締め付けることができるので、他のユニットにおける処理に支障はない。また、本文に締め付け跡が残ることもない。
【0055】
以上の例では、X−Yアクチュエータ12を用いてハンドユニット14を移動させているために、正確に本文の位置を制御することができる。そのため、非常に僅かな変位量を精度よく制御することができ、従って細片P2を精度よく形成することができる。
【0056】
但し、図6及び図8に示したように2回の切削を行う代わりに、ガリカッター180の刃180Bの形状を図9に示すような形状にすることにより、一度の切削で細片P2を形成するようにすることも可能である。
【0057】
または、図10に示すようなガリカッター180とすることもできる。このガリカッター180は、円盤状の本体180Aの周囲に刃180Bを設けて、刃180Bの形状を一度の切削で細片P2を形成することができる形状としており、本体180Aの中心を直交する軸の周りを回転することができるようになっている。このガリカッター180を用いた場合には、図11に示すようなラウンド経路40に沿って各ユニットをクランパーで締め付けた本文を移動するような装置であっても、同様に、細片を形成することが可能である。
【0058】
尚、以上の例では、隣り合うガリ溝同士の間隔(ピッチ)は一定間隔であったが、これに限るものではなく、異なる間隔であってもよい。また、溝は、本文の背面の長手方向に対して直交する方向に平行な直線である必要はなく、傾斜する直線であってもよく、または曲線であってもよい。図10に示すようなガリカッター180を用いた場合のように、刃の移動軌跡に合わせて円弧状になるようにしてもよい。
【0059】
また、以上の例では、1つのガリ溝内に1つの細片が形成されていたが、これに限るものではなく、1つのガリ溝内に複数の細片を形成することも可能である。これは、ガリカッター180によって3回以上の切削を行うか、または、その形状に合致した刃を有するガリカッターを使用することで、同様に形成することができる。
【0060】
また、以上の例では、各ガリ溝内に細片が形成されていたが、これに限るものではなく、複数のガリ溝のうちの少なくとも一部のガリ溝に細片を形成することでも接着強度を向上させることができる。
【0061】
また、以上の例では、ガリカッターユニット16Bでガリ溝を形成した後、サンダーカッターユニット16Cで処理を行っていたが、この順番は入れ替えることも可能であり、または、ガリカッターとサンダーカッターとを備えたカッターを用いて1つのユニットに纏めることも可能である。また、断裁カッターユニット16Aとガリカッターユニット16Bとを、ガリカッターと断裁カッターとを備えたカッターを用いて1つのユニットに纏めることも可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 製本装置
14a、14b クランプ板(締め付け手段)
180 ガリカッター
P 本文
R 表紙
P1 ガリ溝
P2 細片
W1 ガリ溝幅
W2 細片の幅
D1 本文の背面から締め付け地点までの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本文と表紙とを接着する前に本文の背面にガリ溝を形成するガリカッターを備え、ガリ溝が形成された本文の背面と表紙とを接着させて製本する製本装置において、
本文の背面には、そのガリ溝内にガリ溝幅よりも小さい幅を持った少なくとも1つの細片が形成されることを特徴とする製本装置。
【請求項2】
前記細片は、本文とガリカッターとの相対位置を本文の背面の長手方向に変位させて、ガリカッターにより本文の背面に複数回溝を切削することによって、形成されることを特徴とする請求項1記載の製本装置。
【請求項3】
前記長手方向の変位量は、ガリカッターによる1回の切削によって形成される溝の幅の2倍より小さいことを特徴とする請求項2記載の製本装置。
【請求項4】
前記細片の幅は、0.1mm〜1.5mmの範囲にあることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の製本装置。
【請求項5】
前記本文を締め付けて搬送する締め付け手段を備え、締め付け手段はその端部から本文の背面が突出するようにして背面近傍を締め付けており、締め付け手段による本文の締め付け地点が、締め付け手段の前記端部よりも引き込んだ位置にあることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の製本装置。
【請求項6】
本文を締め付けて搬送する締め付け手段を備え、締め付け手段はその端部から本文の背面が突出するようにして背面近傍を締め付けており、締め付け手段によって搬送された本文の背面に糊が塗布されて、本文の背面と表紙とを接着させて製本する製本装置において、
前記締め付け手段による本文の締め付け地点が、締め付け手段の前記端部よりも引き込んだ位置にあることを特徴とする製本装置。
【請求項7】
前記締め付け手段による本文の締め付け地点と前記締め付け手段の端部との間の締め付け手段の部分には、本文の一部の変位を可能とする逃げ部が形成されることを特徴とする請求項6記載の製本装置。
【請求項8】
前記逃げ部は、前記締め付け手段による本文の締め付け地点から前記締め付け手段の前記端部に向かって広がるテーパ面を有することを特徴とする請求項7記載の製本装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−179837(P2012−179837A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45101(P2011−45101)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(593048043)芳野マシナリー株式会社 (17)