説明

製紙用の不織布

【課題】製紙機械の乾燥部分に有用な不織の製紙布の提供。
【解決手段】製紙布は、原材料の紙料からなるスパイラル巻きの縦方向(MD)のベース層を備える。そのMDベース層は、一対の平行なシリンダー周りに必要な長さおよび必要な幅になるまで巻いて形成する。そのスパイラル巻きMD層の上に横方向(CD)層を載せる。CD層は、同じ原材料の紙料あるいは異なる原材料の紙料で構成することができる。スパイラル巻きMD層は、また、巻きが反対方向の他のMD層に組み合わせ、さらにCD層に組み合わせることができる。布の中立線が紙側に向くようにするのが良い。紙シートおよび布を乾燥シリンダー周りに旋回させるとき、紙シートの伸びを減じることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は製紙技術に関する。より具体的には、この発明は、製紙機械の乾燥部分で用いる乾燥布に関する。
【発明の背景】
【0002】
製紙プロセスにおいて、セルロースを含む繊維状のウェブは、製紙機械の成形部分を移動する成形布上に繊維状のスラリー、つまりセルロース繊維の水性分散液を堆積させることによって形作る。スラリーからは成形布を通して多量の水が排水され、成形布の表面に
セルロースを含む繊維状のウェブを残す。
【0003】
新しく作られたセルロースを含む繊維状のウェブは、成形部分からプレス部分へと移る。プレス部分には、連続したプレスニップがある。セルロースを含む繊維状のウェブは、プレス布、あるいは、しばしばはそのようなプレス布の2つの間に支持されたプレスニップを通って行く。プレスニップにおいて、セルロースを含む繊維状のウェブは、圧縮力を受けて水を搾り出し、さらに、ウェブ中のセルロース繊維を互いに付着し、セルロースを含む繊維状のウェブを紙シートに変える。一枚あるいは複数枚のプレス布が水を受け入れ、理想的には、水を紙シートに戻すことがない。
【0004】
紙シートは、最後に乾燥部分に移る。乾燥部分には、少なくとも一連続の回転乾燥ドラムあるいはシリンダがあり、それらのドラムあるいはシリンダの内部はスチームで加熱される。新しく作られた紙シートは、乾燥布によって連続したドラムのそれぞれの周りを順次曲がりくねるようにして進む。乾燥布は、紙シートをドラム表面に密着させるように保持する。加熱ドラムは、蒸発によって紙シートの水分量を低減し、好ましいレベルにする。
【0005】
成形、プレス、乾燥の布は、すべて製紙機械上で無端ループの形態であり、コンベヤのように働くことが分かるであろう。さらに、紙の製造は、かなりの速度で進行する連続的なプロセスであることが理解されるであろう。すなわち、繊維状のスラリーが、成形部分の成形布上に連続的に堆積し、また同時に、新しく作られた紙シートは、乾燥部分から出た後、ロールに連続的に巻き取られる。
【0006】
この発明は、特に、乾燥部分に用いる乾燥布に関する。乾燥部分のシリンダーは、上下の列あるいは段をなすように配列される。下段のシリンダーは、上段のシリンダーに対して厳密に垂直になるというよりはむしろ互い違いに配される。紙シートが乾燥部分を進むとき、紙シートは上段と下段とを交互に進む。たとえば、紙シートは、最初に2つの段の一方の乾燥シリンダーの周り、その後に他方の乾燥シリンダーの周りを通るように乾燥部分を順次連続的に進む。
【0007】
製造速度を増し、紙シートへの乱れを最小限にするため、単一走行の乾燥部分を用いてシートを運び、そのシートを高速度で乾燥する。単一走行の乾燥部分では、図5に示すように、上段および下段の乾燥シリンダー200の周りを曲がりくねる道のりで進む単一の乾燥布199を用いて紙シート198を運ぶ。その上に、たくさんの回転ロールを用いる。それらの回転ロールは、中実あるいは中空である。
【0008】
単一走行の乾燥部分において、乾燥布は紙シートを保持し、2つの段の一方の乾燥シリンダーに直接当たるようにして紙シートを直接乾燥する。通常、直接当たるのは上段であり、乾燥布は下段で紙シートを乾燥シリンダーの周りを運ぶ。乾燥布のリターン走行は上部の乾燥シリンダーの上方である。他方、単一走行の乾燥部分の中には、反対の配置を取る。すなわち、乾燥布が下段の乾燥シリンダーに直接当たるように紙シートを保持し、紙シートを上部シリンダーの周りを運ぶ。この場合、乾燥布のリターン走行は下段のシリンダーの下方である。どちらの場合においても、移動する乾燥布が乾燥シリンダーに接近する狭い空間において、移動する乾燥布の裏側面に沿って運ばれるエアによって圧縮ウエッジが形成される。圧縮ウエッジではエア圧が増大する結果、エアが乾燥布を通して外側に流れる。このエアの流れは、引き続いて乾燥布の表面から紙シートを離すように作用する。いわゆる「ドロップオフ(断崖)」現象である。ドロップオフは、端にクラックを生じることにより、紙製品の質を低下させる。ドロップオフは、また、それがもしも紙シートの破損をもたらすなら、機械の効率をも低下させる。
【0009】
多くの紙工場では、この問題に対処するため、乾燥ロールに溝加工をしたり、あるいは乾燥ロールに真空源を追加したりしている。それらの対応手段は両方ともに異なる方法でエアを圧縮ウエッジにトラップし、それを乾燥布を通過させずに取り除くことができる。しかし、両方ともに高価である。
【0010】
現代の成形布は、製造すべき紙の品質に応じて、取り付けるべき製紙機械の要求に適合するように広範囲な多様性をもって製造される。一般に、それらの成形布は、モノフィラメントで織ったベース布を備え、また、それらは、単一の層あるいは多層である。糸は、通常、たとえばポリアミドやポリエステル樹脂のような合成樹脂の一つから押出し成形され、製紙機械の布技術の分野の当業者がこの目的で用いる。
【0011】
現代の製紙機械の布は、幅が5フィート(1m50cm)から33フィート(10m)を越え、長さが40フィート(12m)から400フィート(120m)を越え、そして、重さは約100ポンド(45kg)から3,000ポンド(1360kg)を越える。それらの布はすり減るので、交換が必要である。布を交換するとき、機械を休ませ、すり減った布を取り除き、布を取り付けるための準備をし、新しい布を取り付ける。多くの布が無端であるのに、今日用いられる布の多くは機械上で縫い合わせを行う。布を取り付けるとき、布の本体を機械に引っ張り、布の端部を連結して無端のベルトに形作る。
【0012】
いろいろな長さや幅の布をより速くかつ効率的に製造するという要求に応えるため、最近では布をスパイラル巻き技術を用いて製造するようになっている。その技術は、レックスフェルトほかの米国特許第5,360,656号に示されている。その特許の内容を参照によって、ここに一体に組み込む。
【0013】
米国特許第5,360,656号は、層の中に縫い通したステープル材料を含む1あるいは2以上の層をもつベース布を備える布について示している。ベース布は、織り布をスパイラル状に巻いたストリップ(細長い片)から構成される少なくとも1層を備える。そのストリップの幅はベース布の幅よりも小さい。ベース布は、縦方向すなわち紙の進行方向に無端で循環する。スパイラル状に巻いたストリップの縦糸が、布の縦方向と角度をもつ。織り布のストリップは、織り機のパイルなしの織りにすることができる。その織り機は、製紙布の製造で一般に用いるものよりも狭い。
【0014】
ベース布は、比較的に狭い織り布ストリップをスパイラル状に巻いて連結した複数の巻きを備える。布ストリップは、縦および横の各糸で織られる。スパイラル状に巻いた布ストリップの隣接する巻きは、互いに境を接し、そして、スパイラル状に連続する縫合が作られ、その縫合は縫付け、ステッチ、溶融あるいは溶接(たとえば、超音波)あるいは接着剤で閉じられる。他の方法として、隣り合うスパイラル巻きの縦に沿った端部分を重ねるように配置することができる。その配置の場合、端部分の厚さを薄くし、重なり合う領域の厚さが大きくならないようにすべきである。さらに別の方法として、縦糸の間の間隔をストリップの端部で増大させ、隣り合うスパイラル巻きを重なり合うように配置するとき、重なり合う領域で縦糸の間の間隔が変化しないようにすることができる。
【0015】
どの場合でも、織りベース布は、結果的に、無端ループの形態で、内部表面、縦方向(MD)および横方向(紙の進行方向に対して直角)をもつ。その時、織りベース布の横の幅は、その縦方向(MD)に対して平行になるように整えられる。織りベース布の縦方向とスパイラル状に連続する縫合との間の角度は、比較的に小さく、普通は10°以下である。同じ理由で、織りベース布のストリップの縦糸は、織りベース布の縦方向(MD)に対して同じような比較的に小さな角度を作る。同様に、織り布ストリップの横糸、それは縦糸に対して直角をなすものであるが、その横糸は、織りベース布の横方向(紙の進行方向に対して直角)に対して同じような比較的に小さな角度を作る。要約すると、織り布ストリップの縦糸も横糸も織りベース布の縦方向(MD)あるいは横方向(紙の進行方向に対して直角)と一直線になることはない。
【0016】
そのようなベース布を含む布は、多軸の布と称することができる。今までの普通の布が3軸、つまり、縦方向(MD)の軸、横方向(CD)の軸、および布の厚さ方向であるz−方向の軸をもつのに対し、多軸の布は、それら3軸だけでなく、スパイラル巻きの層(1あるいは複数)における糸構成の方向で定まる少なくともさらに2軸をもつ。さらに、多軸の布のz−方向には、多数の流路がある。したがって、多軸の布には、少なくとも5軸がある。多軸構造のために、1層よりも多くの層をもつ多軸の布は、糸構成が互いに平行であるベース布の層をもつものに比べて、製紙プロセス中の圧縮に応じるネスティングおよび/またはつぶれに対してすぐれた耐性を示す。
【0017】
この発明は、一般的な織り乾燥布に取って代わるものを提供する。この発明は、原材料の紙料から直接製造することができる、不織の乾燥布である。この考え方によれば、布の集合体要素を取り込むことができるし、布の作動特性についてより大きな設計上の制御をすることができる。さらに、この発明の布については、スパイラル巻き技術を用いて製造することができる。それは、上に述べたと同様であり、単に織り材料のストリップを原材料の紙料要素と置き換えさえすれば良い。
【発明の開示】
【発明のサマリー】
【0018】
したがって、その布を製紙機械の成形、プレスおよび乾燥の各部分に適用することを見出すことができるかも知れないが、この発明は乾燥布に関する。
【0019】
この発明は、製紙機械の乾燥部分に用いるための不織の製紙布に関する。その布は、第1の原材料の紙料から作ったスパイラル巻きの縦方向(MD)層をもつ。そのスパイラル巻きのMD層は、第1の原材料の紙料のMD構成要素を一対の平行なロールの周りに必要な長さおよび必要な幅になるまで巻くことによって作る。第2の原材料の紙料のCD構成要素からなる横方向(CD)層を、そのスパイラル巻きMD層の上に載せ組み合わせる。それを行う場合、布がその布の紙側に向けた中立線(ニュートラルライン)をもつようにするのが好ましい。布のz−方向つまり厚さ方向にこの中立線を配置すれば、布を製紙機械のシリンダー周りに旋回させるとき、支持する紙シートの伸びを減じることができる。
【0020】
この発明の他の実施例では、布が第1の原材料の紙料からなる第1のスパイラル巻きの縦方向(MD)層をもつ。その第1のスパイラル巻きのMD層は、第1の原材料の紙料のMD構成要素を第1の方向に一対の平行なロールの周りに必要な長さおよび必要な幅になるまで巻くことによって作る。第2の原材料の紙料からなる第2のスパイラル巻きのMD層は、第2の原材料の紙料のMD構成要素を第1の方向と反対の第2の方向に巻くことによって作る。第2のスパイラル巻きのMD層は、第1のスパイラル巻きMD層の上に載せ組み合わせる。それを行う場合、布がその布の紙側に向けた中立線をもつようにするのが好ましい。そうすれば、上に述べたように、布を製紙機械のシリンダー周りに旋回させるとき、紙シートの伸びを同様に減じることができる。
【0021】
この発明のさらに他の実施例では、第1および第2のスパイラル巻きのMD層(あるいはより多くの)に加えて、1層のCD層が備わり、それらMD層の上に載り(あるいはそれらにサンドイッチ状に挟まり)組み合わされる。
【0022】
この発明の他の考え方には、スパイラル巻きのMD層が布の紙側を形作り、CD層が布の機械側を形作ることを含む。第1の原材料の紙料と第2の原材料の紙料とを同じにすることができる。MD構成要素およびCD構成要素は、好ましくは、扁平なフィラメント、円形のフィラメント、テクスチャード加工フィラメント、かさ高けん縮フィラメント(bulk-crimped filaments)、成形フィラメント、中空フィラメント、フィルム、不織材料、あるいは織り材料のセグメントである。原材料の紙料としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、あるいは他の重合体物質の中の一つが好ましい。布の透気度および透水性は、MD構成要素のピッチで決まる。スパイラル巻きのMD層にCD構成要素を組み合わせるために、ピッチ部材をもつ回転シリンダーを用い、スパイラル巻きのMD層上にCD構成要素を直接載せる。CD構成要素を組み合わせるために、加熱接着プロセスを用いることもできる。
【0023】
CD構成要素には、MD関連の通路あるいは溝があり、布のエア制御をしやすくしている。
【0024】
以下、この発明について、図面をしばしば参照しながらより詳しく説明する。
【好ましい実施例】
【0025】
この発明は、製紙機械の乾燥部分のための布に関し、いろいろな異なる原材料の紙料を用いる不織製品を提供する。この発明の布は、重合体モノフィラメントあるいはマルチフィラメントの糸を用いて織る一般の乾燥布またはスパイラル−リンク乾燥布の代わりになるものである。
【0026】
特に、この発明の布は、原材料の紙料からなるスパイラル巻きの縦方向(MD)ベース層を含む。そのベース層は、2つの平行なシリンダーの周りに必要な長さおよび必要な幅になるまで巻くことによって作る。このスパイラル巻き技術は、米国特許第5,360,656号が示すものと同様である。その米国特許については、上に述べ参照によってここに組み込んでいる。この発明では、米国特許第5,360,656号が示す織り材料のストリップを原材料の紙料要素と置き換えさえすれば良い。図1は、この発明にしたがって、原材料の紙料からなるスパイラル巻きベース層を製造するための典型的なセットアップ(構成)を示している。図1に示すように、原材料の紙料物質をデリバリシステムを通して送り出す。好ましくは、ハーネス/スプール配列10から送り機構15を通して送り出す。送り機構15は、紙料をシリンダー30(加熱あるいは非加熱)の周りに必要な長さおよび幅に達するまで巻き、スパイラル巻きのベース層20を形作る。このベース層は、本質的に、原材料の紙料からなるスパイラル巻きの層であり、基本的に長さ方向に向いている。原材料の紙料からなる要素(部材)間のピッチは、ゼロにして閉じたシリンダーを形作るか、あるいは適切に離し、布の透気度および透水性を制御することができる。スパイラル巻きのベース層を製造するために、他の多くのセットアップを用いることができること、および、この発明が、このセットアップを用いることに限定されるわけではないことを理解すべきである。
【0027】
このスパイラル巻きのMD層の上には、同様のあるいは同様でない原材料の紙料からなる横方向(CD)層を載せ、たくさんの方法のいずれかによってそれをMD層と結合させる。図3は、この発明にしたがって、スパイラル巻きベース層に対し、原材料の紙料からなるCD層を結合させるための典型的なセットアップ(構成)を示している。図3に示すように、スパイラル巻きの層20を2つのシリンダー30の周りに回転させ、原材料の紙料からなるCD部材を送り機構40でMD層に取り付ける。
【0028】
図4は、この発明にしたがって、スパイラル巻きベース層に対し、原材料の紙料からなるCD層を結合させるための他のセットアップ(構成)例を示している。図4に示すように、スパイラル巻きの層20を2つのシリンダーの周りに回転させ、原材料の紙料からなるCD部材35を送り機構40からコンベヤ手段43を通して送り込み、付着手段44によってMD層に取り付ける。この例では、布の内側と外側との向きを変えることにより、MD層が布の紙側、CD層が布の機械(つまり、摩耗)側になるようにする。
【0029】
スパイラル巻きのMD層の上にCD部材(構成要素)を載せるとき、いろいろな方法を適用することができる。たとえば、ピッチ部材あるいは型をもつ回転シリンダーを用いる方法があり、ピッチ部材あるいは型があることにより、スパイラル巻きのMD層上にCD構成要素を直接載せることができる。
【0030】
原材料の紙料からなる各MD巻きを隣接するものに結合する。その結合手段はいろいろあるが、たとえば、接着剤による付着、加熱溶融、雄/雌止め(スナップ)、両部材を結合するための結合方法(縫込み、編みなど)を適用することができる。また、隣り合う巻きの間に溶融、溶解可能な層を塗り、ついで熱を加えることにより隣り合う巻き同士を結合することができる。
【0031】
同様に、原材料の紙料からなるMDスパイラルを、同様のあるいは同様でない原材料の紙料からなり、垂直に取り付けたCD部材に結合する。その結合手段はいろいろあり、たとえば、接着剤による付着、加熱溶融、雄/雌止め(スナップ)、CDおよびMDの両部材を結合するための結合方法(縫込み、編みなど)を適用することができる。また、CD層とMD層との間に溶融、溶解可能な層を塗り、ついで熱を加えることにより層同士を結合することができる。この結合構造は、MD部材とCD部材から構成される不織の布を形作る。その不織の布は、製紙布に必要な安定性と完全性とを備える。
【0032】
また、この発明の他の実施例では、最初のスパイラル巻きMD層と反対方向に巻いたもう一つのスパイラル巻きMD層と結合し、MDおよびCDにおける必要な安定性を得る。このプロセスは拡大して行うことができ、布を形成する上で必要とされる多くのスパイラル巻きの層について、上述したやり方で互いに重ね合わせることができる。
【0033】
これの変形として、2つの(あるいはそれ以上の)MD層に加えてCD層を含ませることができる。CD層は、MD層の上に載せるか、あるいはそれらの間にサンドイッチ状に挟み、すべての層を適切に互いに重ね合わせる。
【0034】
この発明の布を製造するとき、その中立線を布の紙側に向かって方向づける(すなわち、オフセットあるいは偏倚)ようにするのが好ましい。そうすれば、シートおよび布を乾燥シリンダーの周りに通すために一般的な乾燥布を用いるときに比べて、紙シートの伸びを減じることができる。図2は、製紙機械の乾燥部分に取り付けられた、この発明による不織の布を示している。また、図2Aは、図2に示すこの発明の布をまっすぐに伸ばした図である。その布は、スパイラル巻きMD層20およびCD層35を備え、図に示すように(破線で)布の一方の側にオフセットした中立線60をもつ。
【0035】
そのようなオフセット中立線を得る一つの方法は、厚さがMD層と同等あるいはより厚いCD層を当てることである。これによれば、乾燥シリンダーに巻き付けるとき、曲げ特性を示す構造を得ることができ、それによって、布の他方の側に対立する布の一方の側のMDにおける距離の変化がより大きくなる。これは紙シートの製造に有利である。紙が布側に対し中立線のより近くに接触するとき、布およびしたがって紙の伸びが、乾燥シリンダーの周りに巻き付ける布として通常のものを用いるときに比べて、小さくなるからである。
【0036】
この発明の布は、無端の形態に製造することもできるが、好ましくは、縫合によって互いに結合するようにするのが良い。それには、公知の方法を適用することができる。
【0037】
この発明で用いる原材料の紙料としては、ポリエステル、ポリオレフィン(ポリプロピレン)、ポリフェニレンサルファイド(PPS、商品名リトン(RYTON)として入手可能である)、ポリアミド、あるいは他の重合体物質が好ましい。他の例としては、この出願人の会社(オールバニ インターナショナル コーポレイション)が商品名サーモネチックス(THERMONETICS)として販売する乾燥布用であり、同じ会社がもつ米国特許第5,169,499号に示す、改質した熱、加水分解および汚染に対して耐性のあるポリエステルの多種のものがある。その米国特許第5,169,499号の内容を参照によってここに組み入れる。さらに、ポリ(シクロヘキサンジメチレン テレフタレート−イソフタレート)(PCTA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)およびその他のものをも用いることができる。いわゆる当業者が理解するように、複数の材料を組み合わせて用いることもできる。
【0038】
この発明によるプロセスでは、原材料の紙料部材を用いるが、その部材として、扁平なフィラメント、円形のフィラメント、テクスチャード加工フィラメント、かさ高けん縮フィラメント(bulk-crimped filaments)、成形フィラメント(さねはぎ、四面体、楕円、矩形など)、中空フィラメント、フィルム(孔があいたもの、あるいは孔があいてないもの)、不織材料(すなわち、糸による接合、溶融接合など)、あるいは織り材料のセグメントである。扁平フィラメントは、MDおよびCDの両部分に利用することができるし、また、反対のスパイラル巻き層の場合に、それらスパイラル巻き層の一つあるいはすべてのもの利用することができることに留意されたい。当業者が理解するように、布のどの層にも複数の部材を組み合わせて用いることができる。
【0039】
CD部材あるいは構成要素のいくつかあるいはすべてに対し、MD関連の通路あるいは溝を設けることにより、布のエア制御をしやすくすることができる。
【0040】
いわゆる当業者にとって、この発明の開示内容からいろいろな変形をすることができることは自明である。そのような変形は、特許請求の範囲に定める考え方の範囲内にある。
特許請求の範囲の請求項は、そのような範囲を示している。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明にしたがって、原材料の紙料からなるスパイラル巻きベース層を製造するためのセットアップ(構成)を示している。
【図2】製紙機械の乾燥部分に取り付けられた、この発明による不織の布を示している。
【図2a】図2に示すこの発明の布をまっすぐに伸ばした図である。
【図3】この発明にしたがって、原材料の紙料からなるスパイラル巻きベース層に対し、原材料の紙料からなるCD層を結合させるためのセットアップ(構成)を示している。
【図4】この発明にしたがって、原材料の紙料からなるスパイラル巻きベース層に対し、原材料の紙料からなるCD層を結合させるための他のセットアップ(構成)を示している。
【図5】単一走行の乾燥部分の断面図である。
【符号の説明】
【0042】
10 ハーネス/スプール配列
15 送り機構
20 スパイラル巻き層(MD層)
30 シリンダー
35 CD部材
40,42 送り機構
43 コンベヤ手段
44 付着手段
60 中立線



【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の各構成を備える不織の製紙布。
・第1の原材料の紙料からなり、必要な長さおよび必要な幅をもつスパイラル巻きの縦方向(MD)層
・第2の原材料の紙料からなる横方向(CD)部材を含み、前記スパイラル巻きのMD層の上に載り、そのMD層に組み合わさったCD層
【請求項2】
前記スパイラル巻きのMD層が、一対の平行なシリンダーの周りに前記第1の原材料の紙料からなるMD部材を巻き付けて形成したものである、請求項1の製紙布。
【請求項3】
前記布がその布の紙側に向けた中立線をもち、それにより、前記布を製紙機械のシリンダー周りに旋回させるとき、紙シートの伸びを減じる、請求項1の製紙布。
【請求項4】
前記スパイラル巻きのMD層が前記布の紙側を構成し、前記CD層が前記布の機械側を構成する、請求項1の製紙布。
【請求項5】
前記第1の原材料の紙料が、前記第2の原材料の紙料と同じである、請求項1の製紙布。
【請求項6】
前記布が、製紙機械の乾燥部分で用いる乾燥布である、請求項1の製紙布。
【請求項7】
前記MD部材のいくつかあるいはすべてが、扁平なフィラメント、円形のフィラメント、テクスチャード加工フィラメント、かさ高けん縮フィラメント、成形フィラメント、中空フィラメント、フィルム、不織材料あるいは織り材料のセグメントである、請求項1の製紙布。
【請求項8】
前記CD部材のいくつかあるいはすべてが、扁平なフィラメント、円形のフィラメント、テクスチャード加工フィラメント、かさ高けん縮フィラメント、成形フィラメント、中空フィラメント、フィルム、不織材料あるいは織り材料のセグメントである、請求項1の製紙布。
【請求項9】
前記CD部材のいくつかあるいはすべてが、MD関連の通路あるいは溝を含む、請求項8の製紙布。
【請求項10】
前記第1の原材料の紙料が、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、あるいはその他の重合体物質の中の一つである、請求項1の製紙布。
【請求項11】
前記第2の原材料の紙料が、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、あるいはその他の重合体物質の中の一つである、請求項1の製紙布。
【請求項12】
前記スパイラル巻きのMD層の上に直接前記CD部材を配置するために、ピッチ部材をもつ回転シリンダーを用いて前記スパイラル巻きのMD層に前記CD部材を組み合わせる、請求項1の製紙布。
【請求項13】
前記CD層が、加熱接合によって前記スパイラル巻きのMD層に組み合わさっている、請求項1の製紙布。
【請求項14】
次の各構成を備える不織の製紙布。
・第1の原材料の紙料からなる第1のスパイラル巻きの縦方向(MD)層であって、その第1のスパイラル巻きのMD層が、一対の平行なシリンダーの周りに第1の方向に前記第1の原材料の紙料からなるMD部材を必要な長さおよび必要な幅になるまで巻き付けて形成したもの
・第2の原材料の紙料からなる第2のスパイラル巻きのMD層であって、前記第2の原材料の紙料からなるMD部材を前記第1の方向と反対の第2の方向に巻き付けて形成したもの
・前記第2のスパイラル巻きのMD層が、前記第1のスパイラル巻きのMD層の上に載り組み合わさっていること
【請求項15】
前記布がその布の紙側に向けた中立線をもち、それにより、前記布を製紙機械のシリンダー周りに旋回させるとき、紙シートの伸びを減じる、請求項14の製紙布。
【請求項16】
前記第1のスパイラル巻きのMD層が前記布の紙側を構成し、前記第2のMD層が前記布の機械側を構成する、請求項14の製紙布。
【請求項17】
前記第1の原材料の紙料が、前記第2の原材料の紙料と同じである、請求項14の製紙布。
【請求項18】
前記布が、製紙機械の乾燥部分で用いる乾燥布である、請求項14の製紙布。
【請求項19】
前記MD部材のいくつかあるいはすべてが、扁平なフィラメント、円形のフィラメント、テクスチャード加工フィラメント、かさ高けん縮フィラメント、成形フィラメント、中空フィラメント、フィルム、不織材料あるいは織り材料のセグメントである、請求項14の製紙布。
【請求項20】
前記第1の原材料の紙料が、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、あるいはその他の重合体物質の中の一つである、請求項14の製紙布。
【請求項21】
前記第2の原材料の紙料が、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、あるいはその他の重合体物質の中の一つである、請求項14の製紙布。
【請求項22】
前記第2のスパイラル巻きのMD層が、加熱接合によって前記第1のスパイラル巻きのMD層に組み合わさっている、請求項14の製紙布。
【請求項23】
次の各構成を備える不織の製紙布。
・第1の原材料の紙料からなる第1のスパイラル巻きの縦方向(MD)層であって、その第1のスパイラル巻きのMD層が、一対の平行なシリンダーの周りに第1の方向に前記第1の原材料の紙料からなるMD部材を必要な長さおよび必要な幅になるまで巻き付けて形成したもの
・第2の原材料の紙料からなる第2のスパイラル巻きのMD層であって、前記第2の原材料の紙料からなるMD部材を前記第1の方向と反対の第2の方向に巻き付けて形成したもの
・横方向(CD)層であって、第3の原材料の紙料からなるCD部材を巻いて形成したもの
・前記の各層が互いに重ね合わさっていること
【請求項24】
前記CD層が、前記スパイラル巻きのMD層の上に載るか、あるいはサンドイッチ状に挟まっている、請求項23の製紙布。
【請求項25】
前記布がその布の紙側に向けた中立線をもち、それにより、前記布を製紙機械のシリンダー周りに旋回させるとき、紙シートの伸びを減じる、請求項23の製紙布。
【請求項26】
前記スパイラル巻きのMD層が前記布の紙側を構成し、前記CD層が前記布の機械側を構成する、請求項23の製紙布。
【請求項27】
前記第1の原材料の紙料が、前記第2の原材料の紙料と同じである、請求項23の製紙布。
【請求項28】
前記第3の原材料の紙料が、前記第1の原材料の紙料あるいは前記第2の原材料の紙料、またはそれらの両方と同じである、請求項27の製紙布。
【請求項29】
前記布が、製紙機械の乾燥部分で用いる乾燥布である、請求項23の製紙布。
【請求項30】
前記MD部材のいくつかあるいはすべてが、扁平なフィラメント、円形のフィラメント、テクスチャード加工フィラメント、かさ高けん縮フィラメント、成形フィラメント、中空フィラメント、フィルム、不織材料あるいは織り材料のセグメントである、請求項25の製紙布。
【請求項31】
前記原材料の紙料が、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、あるいはその他の重合体物質の中の一つである、請求項23の製紙布。
【請求項32】
前記CD部材のいくつかあるいはすべてが、扁平なフィラメント、円形のフィラメント、テクスチャード加工フィラメント、かさ高けん縮フィラメント、成形フィラメント、中空フィラメント、フィルム、不織材料あるいは織り材料のセグメントである、請求項26の製紙布。
【請求項33】
前記CD部材のいくつかあるいはすべてが、MD関連の通路あるいは溝を含む、請求項32の製紙布。
【請求項34】
前記巻きMD層およびCD層が、加熱接合によって積層されている、請求項23の製紙布。



【図1】
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【図2a】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−528281(P2006−528281A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517219(P2006−517219)
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/018522
【国際公開番号】WO2004/113609
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(597098947)オルバニー インターナショナル コーポレイション (31)
【Fターム(参考)】