説明

複写機の紙搬送部用ダンパ

【課題】 小型でしかも衝撃音の発生を防止できる複写機の紙搬送部用ダンパを提供すること。
【解決手段】 せん断ピン26がカバー22の壁部2214に結合され、粘性体28がカバー22の第3孔2212に注入される。次に、Oリング30を介して第2軸部2406がカバー22の第3孔2212に挿入され、せん断ピン26の軸部2604が軸状部材24のせん断ピン挿入孔2416に挿入される。これにより第2軸部2406の外周面と第3孔2212の内周面との間の環状の第1の隙間32に粘性体28が封入され、第2軸部2406の先端と壁部2214の内面との間の環板状の第2の隙間34に粘性体28が封入され、せん断ピン26の軸部2604の先端とせん断ピン挿入孔2416の底面との間の円板状の第3の隙間36に粘性体28が封入される。粘性体28はシリコーン化合物である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複写機の紙搬送部に用いられるダンパに関する。
【0002】
【従来の技術】複写機では、感光体ドラム上に現像された像が転写部において紙へ転写された後、紙は紙搬送部により定着部、排出部へと送り出される。また、両面複写の場合は、紙の片面への転写、定着が行われた後、排出部に送られずに、別の紙搬送部を通った後、残りの片面への転写、定着が行われ、排出部へ送り出される。前記紙搬送部は、固定搬送部と、固定搬送部に対して揺動可能に設けられた可動搬送部からなり、可動搬送部は、閉じた状態で固定搬送部と協働等して紙の搬送を行ない、開いた状態で、固定搬送部との間に空間を確保されるように構成されている。そして、紙詰まりの際には可動搬送部を開き、詰まった紙を取り除けるようにしている。このような可動搬送部は、複写機本体側に揺動可能に支持されたフレームとしてのガイド板を備え、紙詰まりの際にはこのガイド板が上方に持ち上げられるように構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら従来の紙搬送部では、詰まった紙を取り除いた後、可動搬送部を固定搬送部上に降ろす時に、可動搬送部の重量により勢いが付き、衝撃音が発生する問題があった。そこで、ダンパを可動搬送部の取り付け部に介在させることも考えられるが、大型化してしまうことから何ら対策が施されていないのが現状である。本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、小型でしかも衝撃音の発生を防止できる複写機の紙搬送部用ダンパを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため本発明は、固定搬送部と、固定搬送部に対して揺動可能に設けられた可動搬送部からなり、可動搬送部は、閉じた状態で固定搬送部と協働等して紙の搬送を行ない、開いた状態で、固定搬送部との間に空間を確保するように構成された複写機の紙搬送部において、前記可動搬送部は、複写機本体側にダンパを介して揺動可能に支持されたフレームを備え、前記ダンパは、複写機本体側に取着されるカバーと、カバーに結合される軸状部材を備え、前記カバーの内部には円状の内周面が延在形成され、前記軸状部材は、前記内周面の内側に挿入され、内周面と同軸上で内周面との間に閉塞された環状の第1の隙間を形成する軸部を備え、前記カバーと軸状部材の間には、前記内周面の内側で内周面と同軸上に前記軸部が位置するように支持手段が設けられ、前記フレームは前記軸状部材と一体に回転するように軸状部材に連結され、前記第1の隙間には粘性体が封入され、前記粘性体はシリコーン化合物であることを特徴とする。また、本発明は、前記第1の隙間に臨む軸状部材の軸部の外周面には、軸部の長手方向に延在する溝が複数設けられていることを特徴とする。また、本発明は、前記軸状部材の軸部が前記カバーの内周面の内側に挿入された状態で、軸部の先端面と、この先端面に臨む内周面奥部の壁面との間に第2の隙間が形成され、前記シリコーン化合物はこの第2の隙間にも封入されることを特徴とする。また、本発明は、前記第2の隙間に臨む軸部の先端面には、軸部の半径方向に延在する溝が複数設けられていることを特徴とする。また、本発明は、前記軸部の先端には孔が前記外周面と同軸状に形成され、カバーの端部にはせん断ピンが取着され、前記軸状部材の軸部が前記カバーの内周面の内側に挿入された状態で、前記軸部の先端の孔にせん断ピンが挿入され、軸部の先端の孔の奥面とせん断ピンの先端面との間に第3の隙間が形成され、前記シリコーン化合物はこの第3の隙間にも封入されることを特徴とする。また、本発明は、前記第3の隙間に臨むせん断ピンの先端面には、せん断ピンの半径方向に延在する溝が複数設けられていることを特徴とする。また、本発明は、前記シリコーン化合物が、シリコーンオイルまたはシリコーン生ゴムまたはシリコーンバウシングパテであることを特徴とする。また、本発明は、前記シリコーンオイルまたはシリコーン生ゴムまたはシリコーンバウシングパテが、単体あるいは補強剤、増粘剤等の充填剤を配合した形で使用されることを特徴とする。
【0005】本発明では、可動搬送部を緩やかに揺動させる時にはダンパにおいて小さい抵抗が生じるが、急激に揺動しようとする時には抵抗が急激に増大する。したがって、可動搬送部を開き、詰まった紙を取り除いてから閉じる時に、従来のように、可動搬送部の揺動速度が急激に増大せず、衝撃音の発生を防止できる。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は紙搬送部の正面図、図2は同平面図、図3はダンパ部分の拡大平面図、図4はダンパ部分の断面図を示す。図1に示す紙搬送部12は、固定搬送部14と、固定搬送部14上において揺動可能に設けられた可動搬送部16を備えている。固定搬送部14は、複写機本体18に取着されたガイド板1402と、ガイド板1402に取着された駆動ローラ1404を備え、可動搬送部16は、複写機本体18に揺動可能に取り付けられたガイド板1602(特許請求の範囲のフレームに相当)と、ガイド板1602に回転可能に取り付けられた従動ローラ1604を備え、従動ローラ1604は、可動搬送部16が固定搬送部14上に合わされた状態で駆動ローラ1404に弾接し、駆動ローラ1404が回転駆動することで従動ローラ1604もこれに追従して回転するように構成されている。
【0007】前記可動搬送部16のガイド板1602の基部両端には支軸1610が突設され、この支軸1610はダンパ20を介して複写機本体18に揺動可能に支持されている。前記ダンパ20は、図4に示すように、カバー22や軸状部材24、せん断ピン26、粘性体28などにより構成されている。
【0008】前記カバー22は、図5(A)、(B)に示すように、フランジ2202と筒部2204を備える。前記フランジ2202の外縁寄りにはボルト挿通孔2206が形成され、筒部2204の反対に位置するフランジ2202の端面には、内径の大きい第1孔2208と、この第1孔2208より内径の小さい第2孔2210が開放状に形成され、さらに、第2孔2210よりも小さい内径でフランジ2202と筒部2204にわたり第3孔2212が形成されている。また、筒部2204の先端の壁部2214には雌ねじ2216が貫通形成されている。なお、第3孔2212の内周面が特許請求の範囲の円状の内周面に相当している。
【0009】前記軸状部材24は、図6(A)、(B)に示すように、フランジ2402を挟んで第1軸部2404と第2軸部2406が同軸上に形成されている。前記フランジ2402には、複写機本体18側の壁部1802の孔1804に挿入される挿入部2408が形成されている。前記第1軸部2404には嵌合孔2412が形成され、嵌合孔2412にはキー溝2414が形成されている。前記第2軸部2406(特許請求の範囲の軸部に相当)には、第2軸部2406の先端面からせん断ピン挿入孔2416が同軸上に所定の深さで形成されている。前記第2軸部2406の外周面には周方向に等間隔をおいて4つのV溝2418が第2軸部2406の延在方向に沿って延在形成され、せん断ピン挿入孔2416の周囲の第2軸部2406の環状の先端面には、第2軸部2406の半径方向に延在する溝2419が4つ形成されている。
【0010】せん断ピン26は、図7(A)、(B)に示すように、頭部2602と軸部2604を備えている。軸部2604には雄ねじ2606が形成され、また、軸部2604の端面には十字状の溝2608が形成されている。
【0011】このようなカバー22、軸状部材24、せん断ピン26などからなるダンパ20は次のように組み立てられ、可動搬送部16のガイド板1602を揺動可能に支持している。すなわち、図4に示すように、カバー22の雌ねじ2216に雄ねじ2606を螺合させてせん断ピン26がカバー22の壁部2214に結合される。次に、粘性体28がカバー22の第3孔2212に注入される。次に、軸状部材24の第2軸部2406のフランジ2402寄り部分にOリング30が装着され、第2軸部2406がカバー22の第3孔2212に挿入される。これにより、せん断ピン26の軸部2604が軸状部材24のせん断ピン挿入孔2416に挿入される。
【0012】この状態で軸状部材24は、フランジ2402の外周面がカバー22の第1孔2208により回転可能に支持され、せん断ピン挿入孔2416の内周面がせん断ピン26の軸部2604により回転可能に支持され、第2軸部2406の長手方向両端がカバー22とせん断ピン26により回転可能に支持される。すなわち、本実施の形態では、第2軸部2406を第3孔2212の内周面の内側で内周面と同軸上に支持する支持手段が、前記フランジ2402の外周面、カバー22の第1孔2208、せん断ピン挿入孔2416の内周面、せん断ピン26の軸部2604により構成されている。また、第2軸部2406の外周面と第3孔2212の内周面との間の環状の第1の隙間32に粘性体28が封入され、第2軸部2406の先端と壁部2214の内面との間の環板状の第2の隙間34に粘性体28が封入され、さらに、せん断ピン26の軸部2604の先端とせん断ピン挿入孔2416の底面との間の円板状の第3の隙間36に粘性体28が封入されることになる。
【0013】このようにカバー22、軸状部材24、せん断ピン26などを組み付けた後、軸状部材24の挿入部2408にワッシャ38を装着し、複写機本体18側の壁部1802の孔1804に、ワッシャ38を装着した軸状部材24の挿入部2408を挿入し、フランジ2202のボルト挿通孔2206に挿通したボルト40によりナット42を介してフランジ2202を壁部1802に締結する。これにより、軸状部材24のフランジ2402の側面はワッシャ38が介在することから壁部1802には直接接触しなくなる。そして、可動搬送部16のガイド板1602の支軸1610を軸状部材24の嵌合孔2412に嵌合し、キー溝2414、キー44を介して支軸1610と軸状部材24が一体回転するように結合する。
【0014】前記粘性体28としては、シリコーンオイル、シリコーン生ゴム、シリコーンバウシングパテ等のシリコーン化合物が用いられる。シリコーンオイルは、ジメチルシリコーンオイルに代表されるもので、粘度が105センチストークス以上のものが使用される。シリコーン生ゴムは、分子量が105〜106、粘度が106〜108センチストークスの粘稠な高分子体であり、ジメチルシリコーン生ゴム、メチルビニルシリコーン生ゴム、メチルフェニルビニルシリコーン生ゴム、フロロシリコーン生ゴム等が挙げられる。シリコーンバウンシングパテは、ジメチルシロキサンをホウ酸を触媒として重合してなるホウ素含有シロキサンポリマーで、ゆっくり変形させると粘性流体のように振る舞い、早く変形させると剛体のように振る舞うダイラタンシー現象を示す。これらシリコーンオイル、シリコーン生ゴムおよびシリコーンバウシングパテは、単体あるいは補強剤、増粘剤等の充填剤を配合した形で使用される。前記充填剤としてはシリカ微粉末が挙げられる。前記シリコーン化合物の種類、前記隙間の大きさ、溝の数等を調整することにより、必要とする回転トルクを得ることができる。
【0015】本実施の形態では、粘性体28としてのシリコーン化合物が前記隙間32、34、36に封入され、軸状部材24がカバー22に対して回転変位する際に抵抗を生じ、軸状部材24および支軸1610に抵抗として作用する。この場合、第1の隙間32に臨む第2軸部2406の外周面に4つのV溝2418が形成され、また、第2の隙間34に臨む第2軸部2406の先端面に4つの溝2419が形成され、また、第3の隙間36に臨むせん断ピン26の軸部2604の端面に十字状の溝2608が形成されているので、各隙間32、34、36においてシリコーン化合物の抵抗としての機能がより効率良く発揮される。
【0016】本実施の形態によれば、軸状部材24の第2軸部2406、すなわち可動搬送部16を緩やかに揺動させる時にはダンパ20において小さい抵抗が生じるが、急激に揺動しようとする時には抵抗が急激に増大する。したがって、紙詰まりの際には可動搬送部16を開き、詰まった紙を取り除いてから閉じる時に、従来のように、可動搬送部16の揺動速度が急激に増大することがなくなり、衝撃音の発生を防止できる。しかも、ダンパ20は、カバー部材22と軸状部材24とで形成される隙間32、34、36にシリコーン化合物を封入する簡単な構造であるため、小型化でき、したがって、紙搬送部12を大型化することなくダンパ20を組み込むことができる。
【0017】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように本発明は、固定搬送部と、固定搬送部に対して揺動可能に設けられた可動搬送部からなり、可動搬送部は、閉じた状態で固定搬送部と協働等して紙の搬送を行ない、開いた状態で、固定搬送部との間に空間を確保するように構成された複写機の紙搬送部において、前記可動搬送部は、複写機本体側にダンパを介して揺動可能に支持されたフレームを備え、前記ダンパは、複写機本体側に取着されるカバーと、カバーに結合される軸状部材を備え、前記カバーの内部には円状の内周面が延在形成され、前記軸状部材は、前記内周面の内側に挿入され、内周面と同軸上で内周面との間に閉塞された環状の第1の隙間を形成する軸部を備え、前記カバーと軸状部材の間には、前記内周面の内側で内周面と同軸上に前記軸部が位置するように支持手段が設けられ、前記フレームは前記軸状部材と一体に回転するように軸状部材に連結され、前記第1の隙間には粘性体が封入され、前記粘性体はシリコーン化合物である構成とした。そのため、可動搬送部が急激に揺動しようとする時にはダンパの抵抗が急激に増大し、小型でしかも衝撃音の発生を防止できる複写機の紙搬送部用ダンパが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】紙搬送部の正面図である。
【図2】紙搬送部の平面図である。
【図3】ダンパ部分の拡大平面図である。
【図4】ダンパ部分の断面図である。
【図5】(A)はカバーの側面図、(B)はカバーの断面正面図である。
【図6】(A)は軸状部材の断面正面図、(B)は軸状部材の側面図である。
【図7】(A)はせん断ピンの側面図、(B)はせん断ピンの断面正面図である。
【符号の説明】
12 紙搬送部
16 可動搬送部
20 ダンパ
22 カバー
24 軸状部材
26 せん断ピン
28 粘性体
32,34,36 隙間
2418,2419,2608 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】固定搬送部と、固定搬送部に対して揺動可能に設けられた可動搬送部からなり、前記可動搬送部は、閉じた状態で固定搬送部と協働等して紙の搬送を行ない、開いた状態で、固定搬送部との間に空間を確保するように構成された複写機の紙搬送部において、前記可動搬送部は、複写機本体側にダンパを介して揺動可能に支持されたフレームを備え、前記ダンパは、複写機本体側に取着されるカバーと、カバーに結合される軸状部材を備え、前記カバーの内部には円状の内周面が延在形成され、前記軸状部材は、前記内周面の内側に挿入され、内周面と同軸上で内周面との間に閉塞された環状の第1の隙間を形成する軸部を備え、前記カバーと軸状部材の間には、前記内周面の内側で内周面と同軸上に前記軸部が位置するように支持手段が設けられ、前記フレームは前記軸状部材と一体に回転するように軸状部材に連結され、前記第1の隙間には粘性体が封入され、前記粘性体はシリコーン化合物である、ことを特徴とする複写機の紙搬送部用ダンパ。
【請求項2】 前記第1の隙間に臨む軸状部材の軸部の外周面には、軸部の長手方向に延在する溝が複数設けられていることを特徴とする請求項1記載の複写機の紙搬送部用ダンパ。
【請求項3】 前記軸状部材の軸部が前記カバーの内周面の内側に挿入された状態で、軸部の先端面と、この先端面に臨む内周面奥部の壁面との間に第2の隙間が形成され、前記シリコーン化合物はこの第2の隙間にも封入されることを特徴とする請求項1または2記載の複写機の紙搬送部用ダンパ。
【請求項4】 前記第2の隙間に臨む軸部の先端面には、軸部の半径方向に延在する溝が複数設けられていることを特徴とする請求項3記載の複写機の紙搬送部用ダンパ。
【請求項5】 前記軸部の先端には孔が前記外周面と同軸状に形成され、カバーの端部にはせん断ピンが取着され、前記軸状部材の軸部が前記カバーの内周面の内側に挿入された状態で、前記軸部の先端の孔にせん断ピンが挿入され、軸部の先端の孔の奥面とせん断ピンの先端面との間に第3の隙間が形成され、前記シリコーン化合物はこの第3の隙間にも封入されることを特徴とする請求項1乃至4に何れか1項記載の複写機の紙搬送部用ダンパ。
【請求項6】 前記第3の隙間に臨むせん断ピンの先端面には、せん断ピンの半径方向に延在する溝が複数設けられていることを特徴とする請求項5記載の複写機の紙搬送部用ダンパ。
【請求項7】 前記シリコーン化合物は、シリコーンオイルまたはシリコーン生ゴムまたはシリコーンバウシングパテであることを特徴とする請求項1乃至6に何れか1項記載の複写機の紙搬送部用ダンパ。
【請求項8】 前記シリコーンオイルまたはシリコーン生ゴムまたはシリコーンバウシングパテは、単体あるいは補強剤、増粘剤等の充填剤を配合した形で使用されることを特徴とする請求項7記載の複写機の紙搬送部用ダンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2000−16636(P2000−16636A)
【公開日】平成12年1月18日(2000.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−183924
【出願日】平成10年6月30日(1998.6.30)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】