説明

複合バスバー、配線器具および固定方法

【課題】複雑な配線経路にも対応でき、また、電気的に接続される部品位置の精度が粗く、ネジ穴部が接続される部品の取り付け精度が悪い場合でも、確実かつ簡便な接続を実現することができて、加工コストおよび作業コストの低減を図ることができると共に、配線材の振動の発生を抑制し、絶縁性を向上して電力供給系の破損の危険性を防止することができる複合バスバーを提供する。
【解決手段】インバータをはじめとする電力変換器の内部部品40,41を相互に接続する複合バスバー10であって、銅あるいはアルミニウムからなる剛体のバスバー10aと、形状が柔軟に変形できる編組線10bとを具備し、バスバー10aの一端と編組線10bの一端とが面状接合部10cを形成して接合されており、前記面状接合部10cに近接して設けられたバスバー10aの係合部または編組線10bの係合部が内部部品41の筐体51に固定される固定具30に係合可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ装置をはじめとする電力変換器の部品同士を電気的に接続するバスバーの接続方式およびその固定方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インバータ装置をはじめとする電力変換器においては、電力を通電する方法として、電線の代わりに銅バスバー(あるいは、アルミニウム・バスバー)により部品同士を接続する方式が広く用いられている。このような、銅バスバーで複数の部品を接続する場合には、部品と銅バスバーをネジ止めする方式が多く用いられている。その場合には、剛体である部品の位置と剛体である銅バスバーのネジ穴位置は比較的高い位置精度が要求される。
電力変換器の内部配線において、剛体である銅バスバーだけで部品相互を接続する場合には、バスバーそのものと部品の位置には比較的高い精度が必要とされる。また、バスバーの配線路に貫通部分があるような複雑な配線経路の場合には、バスバー形状に制約が必要となる場合や作業が難しくなるほか、他の部品との絶縁の確保も難しくなるという問題があった。
【0003】
このため、例えば、特許文献1には、機器同士の相対位置に十分な自由度をもたせることができる配線材が示されており、図8に示すように、各機器を接続するための接続孔2aが設けられた2つの接続端子2と、この各端子2間を連結する板状のバスバー4と網状導体5とからなる配線材本体3とを備えた配線材1が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−157722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術では、網状導体5の柔軟性により機器同士の相対位置に十分な自由度をもって電気的な接続が可能であるものの、部品を接続する2つの接続端子2が固定されるのみで、他の部分は移動可能であるので、配線材に振動が発生し、また、バスバー4と網状導体5との接合部の構造が脆弱であって、配線材に振動が発生すると脆弱な接続部が破損し、電力供給系統の断線などの重大なトラブルが発生する問題点があった。
【0006】
本発明は、複雑な配線経路にも対応でき、また、電気的に接続される部品位置の精度が粗く、ネジ穴部が接続される部品の取り付け精度が悪い場合でも、確実かつ簡便な接続を実現することができて、加工コストおよび作業コストの低減を図ることができると共に、配線材の振動の発生を抑制して破損を防止し、絶縁性を向上して、電力供給系の破損の危険性を防止することができる複合バスバー及び配線器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の複合バスバーは、インバータをはじめとする電力変換器の内部部品の相互を接続する複合バスバーであって、銅あるいはアルミニウムからなる剛体のバスバーと、形状が柔軟に変形できる編組線とを具備し、前記バスバーの一端と前記編組線の一端とが面状接合部を形成して接合されており、前記面状接合部に近接して設けられた前記バスバーの係合部または前記編組線の係合部が前記内部部品の筐体に固定される固定具に係合可能であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の配線器具は、インバータをはじめとする電力変換器の内部部品の相互を接続する複合バスバーと、前記内部部品の筐体に固定され、前記複合バスバーを固定する固定具と、を備えた配線器具であって、
前記複合バスバーは、銅あるいはアルミニウムからなる剛体のバスバーと、形状が柔軟に変形できる編組線とを具備し、前記バスバーの一端と前記編組線の一端とが面状接合部を形成して接合されており、前記面状接合部に近接して設けられた前記バスバーの係合部または前記編組線の係合部が前記内部部品の筐体に固定される固定具に係合可能であり、
前記固定具は、前記内部部品の筐体に固定され、前記複合バスバーの前記面状接合部に近接して設けられた前記バスバーの係合部または前記編組線の係合部を固定して、前記複合バスバーの振動を抑制することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の配線器具では、更に、前記固定具は、前記複合バスバーの前記面状接合部の付近で前記バスバーと前記編組線の双方を同時に固定する機能を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の配線器具では、更に、前記固定具は、前記複合バスバーの面状接合部に近接して設けられた前記バスバーの係合部を挿入して固定する隙間部と、前記前記複合バスバーの面状接合部に近接して設けられた前記網組線の係合部を固定する結束線または網組線カバーを備えており、前記隙間部及び前記結束線または前記網組線カバーにより前記複合バスバーを固定し、前記面状接合部の平面に垂直な方向の振動を抑制することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の複合バスバーの面状接合部の固定方法は、前記バスバーの一端と前記編組線の一端を溶接にて面状に接合することを特徴とする。また、本発明の複合バスバーの面状接合部の固定方法は、前記バスバーの一端と前記編組線の一端を金属材で圧着して面状に接合することを特徴とする。また、本発明の複合バスバーの面状接合部の固定方法は、前記バスバーの一端と前記編組線の一端をリベット締結することにより面状に接合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、部品間を接続する銅バスバーの一端を編組線と接合することで、編組線を取り付けるネジ穴が柔軟に可動できるため、編組線と接続される部品の位置精度が悪い場合でも確実にネジで締結できるため、加工コストの低減と歩留まりの向上を実現できるという効果がある。
【0013】
また、該バスバーの一端が編組線により柔軟に可動することで、配置・配線時の作業性が向上できるため、作業コストの低減が図れるという効果がある。
【0014】
また、該バスバーと該編組線が面状に接合される付近において、絶縁材から成る固定具で該バスバーと該編組線を同時に固定することで、振動抑制ならびに該編組線絶縁性向上を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施例1の配線器具による内部部品接続の構成例を表した図である。
【図2】図2は、本発明の実施例1の複合バスバーの構造を示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施例1の固定具の構造を示す斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施例2の配線器具による内部部品接続の構成例を表した図である。
【図5】図5は、本発明の実施例2の複合バスバーの構造を示す斜視図である。
【図6】図6は、本発明の実施例2の固定具の構造を示す斜視図である。
【図7】図7は、本発明の実施例3の固定具の構造を示す斜視図である。
【図8】図8は、従来技術の配線材1を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0017】
本発明の実施例1について、図1〜図3により説明する。図1は、部品40と部品41を導体である複合バスバー10で接続する構成を示すものである。導体である複合バスバー10はバスバー10aと編組線10bから成り、バスバー10aと編組線10bは面状に接合され一体化している。部品40は破線で示す筐体50(一部のみ記載)の裏側に配置され、また、部品41は筐体51(一部のみ記載)の上側に配置されている。
【0018】
導体である複合バスバー10のうち、バスバー10aの一端は部品40に締結され筐体50に設けられた貫通穴50aと、筐体51に設けられた貫通穴51aを貫通している。バスバー10aの他の一端は編組線10bの一端と面状に接合されており、編組線10bの他の一端を部品41と締結することで、部品40と部品41を導体である複合バスバー10で接続するものである。このようにすることで、編組線10bの持つ柔軟性により、部品40と部品41の位置精度が悪い場合でも、確実に導体である複合バスバー10を固定することが出来る。
【0019】
図2は、複合バスバー10の構造をより詳細に説明する斜視図である。図2において、複合バスバー10は、バスバー10aと編組線10bから成り、バスバー10aの一端と編組線10b一端とはそれぞれの幅広面が面状に接合された面状接合部10cを形成して一体化している。また、編組線10bの他端はネジ部10dにより部品41に接続され、バスバー10aの他端はネジ部10eにより部品40に接続される。
【0020】
複合バスバー10の面状接合部10cに近接して、バスバー10aには、取付具20との係合部10fが形成され、バスバー10aの係合部10fが取付具20の隙間部20cに挿入されて固定される。
【0021】
図3は、導体である複合バスバー10を固定する固定具の構造をより詳細に説明する斜視図である。固定具20は、貫通穴20aと20bにより筐体41にネジ締結され固定されている。固定具20のうち隙間部20cの隙間内にバスバー10aの係合部10fの幅広面を矢印方向に挿入して挟み込むことで、バスバー10aを固定する。
【0022】
本実施例によれば、導体10を貫通穴50aと51aに通す場合、編組線10bの持つ柔軟性により簡単に通すことが出来るため、作業性が向上できるという効果がある。また、固定具20を絶縁体で構成することにより、振動抑制と共に絶縁性も同時に向上できるという効果がある。
【0023】
なお、本実施の形態におけるバスバー10aと編組線10bの面状の接合方法としては、金属端子による圧着、溶接、ネジ止め、リベット止め等により実現されるものである。
【実施例2】
【0024】
本発明の実施例2について、図4〜図6により説明する。図4は部品40と部品41を導体である複合バスバー10で接続する構成を示すものである。導体である複合バスバー10はバスバー10aと編組線10bから成り、バスバー10aと編組線10bは面状に接合され一体化している。部品40は破線で示す筐体50(一部のみ記載)の裏側に配置され、また、部品41は筐体51(一部のみ記載)の上側に配置されている。
【0025】
導体である複合バスバー10のうち、バスバー10aの一端は部品40に締結され筐体50に設けられた貫通穴50aと、筐体51に設けられた貫通穴51aを貫通している。バスバー10aの他の一端は編組線10bの一端と面状に接合されており、編組線10bの他の一端を部品41と締結することで、部品40と部品41を導体である複合バスバー10で接続するものである。このようにすることで、編組線10bの持つ柔軟性により、部品40と部品41の位置精度が悪い場合でも、確実に導体である複合バスバー10を固定することが出来る。
【0026】
図5は、複合バスバー10の構造をより詳細に説明する斜視図である。図5において、複合バスバー10は、バスバー10aと編組線10bから成り、バスバー10aの一端と編組線10b一端とはそれぞれの幅広面が面状に接合された面状接合部10cを形成して一体化している。また、編組線10bの他端はネジ部10dにより部品41に接続され、バスバー10aの他端はネジ部10eにより部品40に接続される。
【0027】
複合バスバー10の面状接合部10cに近接して、バスバー10aには、取付具20との係合部10fが形成され、バスバー10aの係合部10fが取付具20の隙間部20cに矢印方向に挿入されて固定される。また、複合バスバー10の面状接合部10cに近接して、編組線10bには、取付具20との係合部10gが形成される。
【0028】
導体である複合バスバー10は固定具20により固定されるもので、その固定具20の構造を図6に示す。固定具20は、貫通穴20aと20bにより筐体41にネジ締結され固定されている。固定具20のうち隙間部20cにバスバー10aの係合部10fを挟み込むことで、バスバー10aを固定する。
【0029】
また、結束線30は固定具20に設けた空間20dを通し、編組線10bと固定具20を結束することで、編組線10bを固定することができる。つまり、固定具20により導体である複合バスバー10のうち、拘束力の少ないバスバー10aと編組線10bの面状接合部10cの付近で、同時にバスバー10aと編組線10bを固定することができ、導体である複合バスバー10の振動を抑制することができる。
【0030】
本実施例によれば、導体10を貫通穴50aと51aに通す場合、編組線10bの持つ柔軟性により簡単に通すことが出来るため、作業性が向上できるという効果がある。
また、固定具20を絶縁体で構成することにより、更に、振動抑制と共に絶縁性を同時に向上できるという効果がある。
【0031】
なお、本実施の形態におけるバスバー10aと編組線10bの面状の接合方法としては、金属端子による圧着、溶接、ネジ止め、リベット止め等により実現されるものである。
【実施例3】
【0032】
本発明の実施例3について図7を用いて説明する。図7は本発明の実施例3の固定具の構造を示す斜視図である。
【0033】
図7において、導体である複合バスバー10は固定具20により固定されるもので、その固定具20の構造を図7に示す。固定具20は、貫通穴20aと20bにより筐体41にネジ締結され固定されている。固定具20は、編組線カバー31を備えており、編組線10bの係合部10gを固定具20上に載置し、編組線カバー31により編組線10bの係合部10gを固定具20との間で固定することができる。つまり、固定具20により導体10のうち、拘束力の少ないバスバー10aと編組線10bの面状接合部10cの付近で、編組線10bを編組線カバー31により固定することができ、導体である複合バスバー10の振動を抑制することができる。
【0034】
図7には、実施例1あるいは実施例2の隙間部20c、結束線30を示しておらず、編組線カバー31のみを備えたものを例示しているが、編組線カバー31に加えて、隙間部20cまたは結束線30をも備えるようにして。複合バスバー10の固定をより確実にすることもできる。
【0035】
本実施例によれば、導体10を貫通穴50aと51aに通す場合、編組線10bの持つ柔軟性により簡単に通すことが出来るため、作業性が向上できるという効果がある。また、固定具20を絶縁体で構成することにより、振動抑制と共に絶縁性も同時に向上できるという効果がある。
【0036】
なお、本実施の形態におけるバスバー10aと編組線10bの面状の接合方法としては、金属端子による圧着、溶接、ネジ止め、リベット止め等により実現されるものである。
【符号の説明】
【0037】
1 配線材
2 接続端子
2a 接続孔
3 配線材本体
4 バスバー
4a 転換部
5 網状導体
10 複合バスバー(導体)
10a バスバー
10b 編組線
10c 面状接合部
10d ネジ部
10e ネジ部
10f 係合部
10g 係合部
20 固定具
20a 貫通穴
20b 貫通穴
20c 隙間部
20d 空間
30 結束線
31 編組線カバー
40 部品1(バスバーで締結)
41 部品2(編組線で締結)
50 筐体1(部品40を固定)
51 筐体2(部品41を固定)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータをはじめとする電力変換器の内部部品の相互を接続する複合バスバーであって、銅あるいはアルミニウムからなる剛体のバスバーと、形状が柔軟に変形できる編組線とを具備し、前記バスバーの一端と前記編組線の一端とが面状接合部を形成して接合されており、前記面状接合部に近接して設けられた前記バスバーの係合部または前記編組線の係合部が前記内部部品の筐体に固定される固定具に係合可能であることを特徴とする複合バスバー。
【請求項2】
インバータをはじめとする電力変換器の内部部品の相互を接続する複合バスバーと、前記内部部品の筐体に固定され、前記複合バスバーを固定する固定具と、を備えた配線器具であって、
前記複合バスバーは、銅あるいはアルミニウムからなる剛体のバスバーと、形状が柔軟に変形できる編組線とを具備し、前記バスバーの一端と前記編組線の一端とが面状接合部を形成して接合されており、前記面状接合部に近接して設けられた前記バスバーの係合部または前記編組線の係合部が前記内部部品の筐体に固定される固定具に係合可能であり、
前記固定具は、前記内部部品の筐体に固定され、前記複合バスバーの前記面状接合部に近接して設けられた前記バスバーの係合部または前記編組線の係合部を固定して、前記複合バスバーの振動を抑制することを特徴とする配線器具。
【請求項3】
請求項2に記載の配線器具において、
前記固定具は、前記複合バスバーの前記面状接合部の付近で前記バスバーと前記編組線の双方を同時に固定する機能を有することを特徴とする配線器具。
【請求項4】
請求項3に記載の配線器具において、
前記固定具は、前記複合バスバーの面状接合部に近接して設けられた前記バスバーの係合部を挿入して固定する隙間部と、前記前記複合バスバーの面状接合部に近接して設けられた前記網組線の係合部を固定する結束線または網組線カバーを備えており、前記隙間部及び前記結束線または前記網組線カバーにより前記複合バスバーを固定し、前記面状接合部の平面に垂直な方向の振動を抑制することを特徴とする配線器具。
【請求項5】
請求項1に記載の複合バスバーの面状接合部の固定方法において、
前記バスバーの一端と前記編組線の一端を溶接にて面状に接合することを特徴とする固定方法。
【請求項6】
請求項1に記載の複合バスバーの面状接合部の固定方法において、
前記バスバーの一端と前記編組線の一端を金属材で圧着して面状に接合することを特徴とする固定方法。
【請求項7】
請求項1に記載の複合バスバーの面状接合部の固定方法において、
前記バスバーの一端と前記編組線の一端をリベット締結することにより面状に接合することを特徴とする固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−4378(P2013−4378A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135677(P2011−135677)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】