説明

複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料、それを含有する電子写真感光体、及びそれを使用した画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジ

【課題】画像欠陥のない高品質なプリントを長期間実現し、また、あらゆる環境下においても、安定した画質の出力を実現することができる電子写真感光体ならびに画像形成装置を提供する。
【解決手段】ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料と下記一般式(a)で示されるアゾ化合物とが複合され、Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.5°,9.9°,12.5°,16.3°,18.6°,25.1°,28.3°の位置に回折ピークを有することを特徴とする複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料。


(但し式(a)中、Aはアゾ化合物の残基であり、Hは水素原子を表し、この残基Aは、1つまたはそれ以上のヘテロ原子を介してn個の水素に結合しており、そしてこれらのヘテロ原子は、NおよびOからなる群から選ばれ、残基Aの一部を形成している。nは、1から9の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用感光材料、光電変換素子用材料、有機半導体素子用材料として有用な複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料、ならびに高感度で、繰り返し使用、およびいかなる環境においても安定して画像出力ができる高安定な電子写真感光体、それを用いた画像形成装置、画像形成装置用プロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いたレーザープリンターやデジタル複写機は、商用印刷物のプリントを行うニーズが増しているため、これまで以上にプリント品質や過酷な使用条件における信頼性への要求が高まっている。
このようなレーザープリンターやデジタル複写機の画像形成装置に使用される電子写真感光体は、十分な帯電機能と光減衰機能を安定して発揮することにより、プリント品質の向上や信頼性の向上につながる。
【0003】
現在、電子写真感光体は、有機系の感光材料を用いたものが、コスト、生産性及び低環境負荷等の理由から一般に広く用いられている。その重要な構成物質として、電荷発生物質と電荷輸送物質が挙げられるが、これらの材料の特性は帯電機能や光減衰機能といった電子写真特性に大きく影響する。本発明に関する電荷発生物質においては、感光体に露光される光信号の波長に感度を有することが第一に要求される。現在、露光手段としてはレーザーダイオードやLEDが主に用いられ、発振波長は650nmから780nmの長波長光が最もよく使用されており、この波長領域に光感度を有する電荷発生物質として、特にフタロシアニン顔料が広く実用化されている。
【0004】
このフタロシアニン顔料は、無金属フタロシアニン顔料、銅フタロシアニン顔料、チタニルフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料など様々な種類が実用に供されているが、そのなかでもヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が光感度の環境依存性が小さく、安定して用いられることが知られている。ヒドロキシガリウムフタロシアニンの例としては、例えば特許文献1(特第3166293号公報)に記載されている。
しかしながら、フタロシアニン顔料を電子写真感光体の電荷発生層に用いた場合の課題として、電子の蓄積によりを意図しない静電潜像を発現してしまい、プリント品質の低下につながることが挙げられ、ヒドロキシガリウムフタロシアニンを用いた場合も例外ではなかった。
【0005】
このような課題を解決するために、電荷発生層内に電子受容性物質を添加する技術が開示されている。例えば特許文献2(特開2006−18267号公報)、特許文献3(特開2005−208618号公報)等では、電荷発生物質にガリウムフタロシアニンを用いた場合において、電荷発生層用塗工液に電子受容性物質を溶解して塗工することで、電荷発生層中さらには下引き層中に電子受容性物質を分子分散状態で含有させている。しかしこの場合、電子受容性物質の溶解性が乏しかったり、層中で濃度勾配を生じたりし、電荷発生物質と電子受容性物質との接触が不十分となり、発生電子を効率よく電子受容性物質に渡せず、感度向上は十分ではない。また特許文献4(特開2008−015532号公報)、特許文献5(特開2007−034210号公報)等では、フタロシアニン系顔料を電荷発生物質に用いた電荷発生層中に、多環キノン顔料などの電子受容性物質を添加することで、増感や残留電位の抑制を狙っているが、塗工液に電子受容性物質を添加し電荷発生層を形成しているため、電子受容性物質が存在する場所は成り行きとなり、電荷発生層内で電子受容性物質が電荷発生物質に十分接しておらず、飛躍的な感度向上や、プリント枚数が非常に多い場合、十分な残留電位抑制効果は望めなかった。
また、顔料を混合する技術が開示されている。対応露光波長領域の拡大や高感度化や電位安定性の向上を狙い、例えば無金属フタロシアニンとフルオレノン系アゾ顔料を混合して用いる特許文献6(特開2001−290296号公報)、フタロシアニン化合物とアゾ顔料を混合して用いる特許文献7(特第3758246号公報)、金属フタロシアニンとペリレン混成顔料の特許文献8(特第3994638号公報)、キナクリドン顔料とチタニルフタロシアニン顔料を混合して用いる特許文献9(特開2007−334099号公報)など、2種以上の顔料の混合が提案されている。
【0006】
特に、ガリウムフタロシアニンに関しては、特許文献10(特第4194184号公報)、特許文献11(特第3880225号公報)、特許文献12(特第3792909号公報)、特許文献13(特開平7−128888号公報)にアゾ顔料とガリウムフタロシアニン顔料を混合して用いることにより、対応波長領域の拡大や光感度の向上を狙った技術が開示されている。しかしこれらはいずれも、顔料の分散段階で顔料を混合する、もしくはそれぞれの分散液を混合するという手段であり、これによって形成された電荷発生層においては、混合した顔料間は分子レベルでは距離をもって存在するため、各顔料の特性の良いところは引き出せるものの、顔料間の相乗効果は引き出せず、飛躍的な効果は得られない。特許文献14(特開2006−072304号公報)においては、フタロシアニンの結晶変換工程において、電子受容性物質を共存させることで、フタロシアニン顔料と電子受容性物質を複合化しているが、用いられている電子受容性物質は一般的に溶解性の乏しいものが多い。電子受容性物質の溶解性が乏しい場合、結晶変換工程で共存させたとしても、電荷発生物質と電子受容物質とが分子レベルで十分に接する事が難しく、たとえ顔料の表面近傍に電子受容性物質が存在していたとしても十分な効果は得られない。また、もし電子受容性物質に溶解性が優れるものを用いると、複合化されたとしても、有機溶剤で分散して電荷発生層用塗工液を得る際に、電子受容性物質は溶出してしまい所望の効果は得られない。
【0007】
また電荷発生物質の顔料を混晶として用いる技術も開示されている。例えば、特許文献15(特開平09−143386号公報)、特許文献16(特開2006−299269号公報)では、ガリウムフタロシアニンと他のフタロシアニンの混晶を用いているが、効果として分散性の改良などがあるものの、やはり異種分子を組み合わせることによる結晶性の低下は免れず、結果的に感度は十分とはいえない。
また、特許文献17(特第3838385号公報)、特許文献18(特第3635786号公報)、特許文献19(特第3635786号公報)にはフタロシアニン分子に電子吸引性基を導入することで、電子トラップを抑制する技術が開示されている。しかし、この手法によると、フタロシアニン環に構造的な変化が生じるため、所望の結晶型が得られない、もしくは結晶性が低下するなどし、必ずしも十分な感度を発現しない。
【0008】
以上のように、電子写真感光体に用いる電荷発生物質において、広範囲な波長領域で高感度であり、かつ電荷蓄積を生じず電子写真として安定した特性を発揮できるものが望まれ、様々な技術開発が行われている。しかし、いまだこれらの特性を包括的に満足しうるものはなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、新規な電荷発生物質により、電荷発生物質が起因する電子写真感光体内の電荷蓄積を抑制することにより、画像欠陥のない高品質なプリントを長期間実現し、また、あらゆる環境下においても、安定した画質の出力を実現することができる電子写真感光体ならびに画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は下記<1>〜<10>によって解決される。
<1>ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料と下記一般式(a)で示されるアゾ化合物とが複合され、Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.5°,9.9°,12.5°,16.3°,18.6°,25.1°,28.3°の位置に回折ピークを有することを特徴とする複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料。
【0011】
【化1】

(但し式(a)中、Aはアゾ化合物の残基であり、Hは水素原子を表し、この残基Aは、1つまたはそれ以上のヘテロ原子を介してn個の水素に結合しており、そしてこれらのヘテロ原子は、NおよびOからなる群から選ばれ、残基Aの一部を形成している。nは、1から9の整数である。)
<2>前記複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が、下記一般式(I)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物を溶解し、さらに脱エステル化することにより、前記一般式(a)で示されるアゾ化合物とする際に、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を共存させてなることを特徴とする前記<1>に記載の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料。
【0012】
【化2】

[但し式(I)中、Aはアゾ化合物の残基であり、この残基Aは、1つまたはそれ以上のヘテロ原子を介してn個のE基に結合しており、そしてこれらのヘテロ原子は、NおよびOからなる群から選ばれ、残基Aの一部を形成しており、E基は独立してH(水素原子)または次式で示されるカルボエステル基:−C(=O)−O−R0〔式中R0は、炭素数4から10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、またはアラルキル基を表わす。〕を表わす。ただし、E基の全てが同時に水素原子であることはない。nは、1から9の整数である。]
<3>前記一般式(a)および前記一般式(I)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(2)で示される残基Aを有するアゾ化合物であることを特徴とする、前記<1>または<2>に記載の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料。
【0013】
【化3】

(ただし、Bはアゾ化合物の主骨格を示し、Cpはカップラー成分残基であり、mは2又は3の整数を表わす。)
<4>前記Cpが下記一般式(3)乃至(11)の少なくともいずれかで表わされるカップラー成分残基であることを特徴とする前記<3>に記載の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料。
【0014】
【化4】

【0015】
【化5】

【0016】
【化6】

【0017】
【化7】

上記一般式(3)〜(6)中、X、Y1、Z、pおよびqはそれぞれ以下のものを表わす。
X:−OH、−N(R1)(R2)、または−NHSO2−R3。
(ただしここで、R1およびR2は水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、R3は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表わす。)
Y1:水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホン基、置換もしくは無置換のスルファモイル基または−CON(R4)(Y2)。[R4は水素原子、アルキル基もしくはその置換体またはフェニル基もしくはその置換体を表わし、Y2は炭化水素環基もしくはその置換体、複素環基もしくはその置換体、または−N=C(R5)(R6)(但し、R5は炭化水素環基もしくはその置換体、複素環基もしくはその置換体またはスチリル基もしくはその置換体、R6は水素原子、アルキル基またはフェニル基もしくはその置換体を表わすか、あるいはR5およびR6はそれらに結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。)を示す。]
Z:炭化水素環もしくはその置換体または複素環もしくはその置換体。
p:1または2の整数。
q:1または2の整数。
【0018】
【化8】

(上式中、Xは−OH、−N(R1)(R2)、または−NHSO2−R3を表し(ただしここで、R1およびR2は水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、R3は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表わす)、R7は置換もしくは無置換の炭化水素基を表わす。)
【0019】
【化9】

(上式中、Xは−OH、−N(R1)(R2)、または−NHSO2−R3を表し(ただしここで、R1およびR2は水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、R3は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表わす)、Aは、式(8)中に記載された2個のN原子と共にN含有ヘテロ環を形成するに必要な芳香族炭化水素の2価基または窒素原子を環内に含むヘテロ原子含有の2価基を表わす(これらの環は置換または無置換でもよい)。)
【0020】
【化10】

(上式中、Xは−OH、−N(R1)(R2)、または−NHSO2−R3を表し(ただしここで、R1およびR2は水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、R3は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表わす)、R8はアルキル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはそのエステルを表わし、Ar1は炭化水素環基またはその置換体を表わす)
【0021】
【化11】

【0022】
【化12】

(上記式(10)および(11)中、Xは−OH、−N(R1)(R2)、または−NHSO2−R3を表し(ただしここで、R1およびR2は水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、R3は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表わす)、R9は水素原子または置換もしくは無置換の炭化水素基を表わし、Ar2は炭化水素環基またはその置換体を表わす。但し、同時にR9が水素原子でかつAr2がシクロアルキル基又はシクロアルケニル基になることはない。)
<5>前記一般式(2)で示されるアゾ化合物の主骨格Bが下記一般式(12)で示されることを特徴とする前記<3>または<4>に記載の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料。
【0023】
【化13】

(ただし、R11,R12は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基またはそのエステルを表わす。)
<6>前記一般式(2)で示されるアゾ化合物において、Bが下記一般式(13)で示されることを特徴とする前記<3>または<4>に記載の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料。
【0024】
【化14】

(ただし、R19,R20は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルを表わす。)
<7>導電性支持体上に少なくとも感光層を有し、該感光層に少なくとも前記<1>乃至<6>の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を含有することを特徴とする電子写真感光体。
<8>少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及び電子写真感光体を有する画像形成装置において、該電子写真感光体が前記<7>に記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
<9>電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及びクリーニング手段から選ばれる少なくとも1つの手段とが一体となったカートリッジを搭載し、かつ該カートリッジが装置本体に対し着脱自在であることを特徴とする前記<8>に記載の画像形成装置。
<10>電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及びクリーニング手段から選ばれる少なくとも1つの手段とが一体となったカートリッジにおいて、該電子写真感光体が前記<7>に記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
【発明の効果】
【0025】
電子写真感光体内の感光層中に、本発明の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用いることにより、画像欠陥のない高品質なプリントを長期間にわたって出力することができる電子写真感光体ならびに画像形成装置を提供するに至った。
【0026】
ここで、本発明での複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料とは、Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.5°,9.9°,12.5°,16.3°,18.6°,25.1°,28.3°の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の表面上に前記一般式(a)で示されるアゾ化合物が複合化されているものをいい、少なくとも1種の前記一般式(2)で示されるアゾ化合物を、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の共存下で有機溶剤に溶解させ、アゾ化合物とヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料とを分子レベルで接触させた状態で、脱カルボエステル化することにより製造されたものを示す。この手法によれば、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の表面上に、前記一般式(a)で示される可溶性のアゾ化合物を分子レベルで分散させ、そのアゾ化合物をヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の表面上で一般式(2)で示されるアゾ化合物に顔料化することにより、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の表面上にアゾ顔料が分子レベルで複合され、微細な複合状態が形成される。他のフタロシアニン顔料も用いることが出来るが、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は特に、他のフタロシアニン顔料にはみられない大きな効果が見られた。この理由は定かではないが、おそらくヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は他のフタロシアニン顔料に比べ、水素結合性が高いため、本発明で用いるアゾ化合物との親和性が高く、より強い複合状態を形成したためと推測される。また本発明で特に大きな効果が得られるのは電子受容性を有するアゾ化合物である。
また、本発明が他の技術に比べ優れている点は、以下の点である。
まず、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶型は、アゾ化合物を複合化した場合においても、所望の型が得られやすく、かつ、高い結晶性を有することが出来る点である。例えばヒドロキシガリウムフタロシアニンが結晶化する段階で電子受容性物質や他のフタロシアニンを混合し複合化した場合、結晶生成を阻害し、結晶性が低下したり、所望の結晶型が得られなかったりする。
また、分子レベルでの複合状態を形成するため、複合化の効果を最大限に引き出すことが出来る点である。顔料の複合化、混合化の技術として、ミリングをしながら複数の顔料を混合する技術は多数あるが、これらは顔料粒子同士の混合であり十分な複合状態は形成されなかった。また分子レベルでの複合を形成するために可溶性の電子受容性物質をヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料表面に複合化する技術もあるが、塗工液を分散して作製する際に、電子受容性物質が溶出してしまう課題があった。しかし本発明においては、可溶性のアゾ化合物をヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料表面上で顔料化するため、このような問題も生じず、電荷発生層形成後も複合化の効果を得られる。
【0027】
このように、本発明の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用いることで、これまでの様々な課題が克服され、結果的に、高感度で、かつ使用経時、使用環境によらず、非常に電位の安定した電子写真感光体並びに、画質安定性に優れた画像形成装置を提供するに至った。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の電子写真感光体の層構成を表わした図である。
【図2】本発明に用いられる別の電子写真感光体の層構成を表わした図である。
【図3】本発明に用いられる別の電子写真感光体の層構成を表わした図である。
【図4】本発明に用いられる別の電子写真感光体の層構成を表わした図である。
【図5】本発明の電子写真プロセス及び画像形成装置を説明するための図である。
【図6】本発明の別の電子写真プロセス及び画像形成装置を説明するための図である。
【図7】本発明の画像形成装置用プロセスカートリッジを説明するための図である。
【図8】比較合成例2における粉末X線回折スペクトルを示した図である。
【図9】合成例1における粉末X線回折スペクトルを示した図である。
【図10】合成例2における粉末X線回折スペクトルを示した図である。
【図11】合成例3における粉末X線回折スペクトルを示した図である。
【図12】合成例4における粉末X線回折スペクトルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料とは、下記一般式(I)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物を脱カルボエステル化することにより、下記一般式(a)で示されるアゾ化合物とする際にヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を共存させて得られるものである。
【0030】
【化15】

[但し式(I)中、Aはアゾ化合物の残基であり、この残基Aは、1つまたはそれ以上のヘテロ原子を介してn個のE基に結合しており、そしてこれらのヘテロ原子は、NおよびOからなる群から選ばれ、残基Aの一部を形成しており、E基は独立してH(水素原子)または次式で示されるカルボエステル基:−C(=O)−O−R0〔式中R0は、炭素数4から10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、またはアラルキル基を表わす。〕を表わす。ただし、E基の全てが同時に水素原子であることはない。nは、1から9の整数である。]
【0031】
【化16】

[但し式(a)中、Aは一般式(I)と同義であり、Hは水素原子を表わし、nは、1から9の整数である。]
【0032】
より具体的には、アゾ化合物とヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を、有機溶媒中で加熱により脱カルボエステル化することで、目的の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を製造することができる。
ここで用いるヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、アシッドペースト処理を行なった結晶性の低いものでも、またN,N−ジメチルホルムアミドでミリング処理等を行なったV型の結晶型のものでもよい。
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料とアゾ化合物の量比は、任意に選択することが出来るが、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の特性をさらに引き出すことが本発明の目的であるので、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料100部に対して、アゾ化合物は、0.1部〜300部が適している。0.1部以下では複合化の効果が明らかではなく、300部以上では、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の特性が十分に発露しない。
アゾ化合物を、脱カルボエステル化しアゾ顔料にする反応は、加熱によるのが適している。 過熱反応の温度は、70℃から300℃、さらに好ましくは120℃から250℃が適している。70℃以下では反応が十分に進行しない場合があり、また300℃以上では、複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶型等に、悪影響を及ぼす可能性がある。
また、酸性物質を用いる化学的方法も知られているが、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が、化学的に反応したり、結晶型が変化することが知られてるので、本発明の製造方法としては適していない。
ここで用いられる有機溶剤としては、アゾ化合物を過熱反応時に溶解させるものであれば、使用できる。例えば、テトラヒドロフランまたはジオキサン、またはエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、ピリジン、ピコリンまたはキノリン等、及びこれらの混合溶媒が挙げられる。好ましい溶剤は、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドである。
【0033】
本発明において好ましく用いることができるアゾ化合物としては、前記一般式(a)および前記一般式(I)で表されるアゾ化合物の残基Aが、下記一般式(2)で示されるアゾ化合物である。
【0034】
【化17】

(ただし、Bはアゾ化合物の主骨格を示し、Cpはカップラー成分残基であり、mは2又は3の整数を表わす。)
【0035】
また、より好ましくは前記一般式(2)のCpが下記一般式(3)乃至(11)の少なくともいずれかで表わされるカップラー成分残基である。
【0036】
【化18】

【0037】
【化19】

【0038】
【化20】

【0039】
【化21】

【0040】
上記一般式(3)〜(6)中、X、Y1、Z、pおよびqはそれぞれ以下のものを表わす。
X:−OH、−N(R1)(R2)、または−NHSO2−R3。
(ただしここで、R1およびR2は水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、R3は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表わす。)
Y1:水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホン基、置換もしくは無置換のスルファモイル基または−CON(R4)(Y2)。[R4は水素原子、アルキル基もしくはその置換体またはフェニル基もしくはその置換体を表わし、Y2は炭化水素環基もしくはその置換体、複素環基もしくはその置換体、または−N=C(R5)(R6)(但し、R5は炭化水素環基もしくはその置換体、複素環基もしくはその置換体またはスチリル基もしくはその置換体、R6は水素原子、アルキル基またはフェニル基もしくはその置換体を表わすか、あるいはR5およびR6はそれらに結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。)を示す。]
Z:炭化水素環もしくはその置換体または複素環もしくはその置換体。
p:1または2の整数。
q:1または2の整数。
【0041】
【化22】

(上式中、Xは−OH、−N(R1)(R2)、または−NHSO2−R3を表し(ただしここで、R1およびR2は水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、R3は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表わす)、R7は置換もしくは無置換の炭化水素基を表わし、Xは前記と同じである。)
【0042】
【化23】

(上式中、Xは−OH、−N(R1)(R2)、または−NHSO2−R3を表し(ただしここで、R1およびR2は水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、R3は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表わす)、Aは、式(8)中に記載された2個のN原子と共にN含有ヘテロ環を形成するに必要な芳香族炭化水素の2価基または窒素原子を環内に含むヘテロ原子含有の2価基を表わす(これらの環は置換または無置換でもよい)。)
【0043】
【化24】

(上式中、Xは−OH、−N(R1)(R2)、または−NHSO2−R3を表し(ただしここで、R1およびR2は水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、R3は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表わす)、R8はアルキル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはそのエステルを表わし、Ar1は炭化水素環基またはその置換体を表わす。)
【0044】
【化25】

【0045】
【化26】

(上記式(10)および(11)中、Xは−OH、−N(R1)(R2)、または−NHSO2−R3を表し(ただしここで、R1およびR2は水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、R3は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表わす)、R9は水素原子または置換もしくは無置換の炭化水素基を表わし、Ar2は炭化水素環基またはその置換体を表わす。但し、同時にR9が水素原子でかつAr2がシクロアルキル基又はシクロアルケニル基になることはない。
【0046】
また、より好ましくは前記一般式(2)のBが、下記一般式(12)〜(13)で示されるアゾ化合物である。これらのアゾ化合物は一般的にn型の特性を示すため、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料と複合化させた場合、本発明の期待する効果を得るために、非常に有効である。
【0047】
【化27】

(ただし、R11,R12は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基またはそのエステルを表わす。)
【0048】
【化28】

(ただし、R19,R20は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルを表わす。)
【0049】
<アゾ化合物のその他の例>
その他のアゾ化合物例としてはつぎのようなものが挙げられる。
(1)アゾ化合物の主骨格Bが以下の構造のもの
【0050】
【化29】

(ただし、R13,R14,R15は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルを表わす。) 例えば、つぎのような構造のアゾ化合物が1例として挙げられる。
【0051】
【化30】

【0052】
(2)アゾ化合物の主骨格Bが以下の構造のもの
【0053】
【化31】

(ただし、R16,R17,R18は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルを表わす。) 例えば、つぎのような構造のアゾ化合物が1例として挙げられる。
【0054】
【化32】

【0055】
本発明に使用できる前記一般式(a)または前記一般式(I)で示されるアゾ化合物の好ましい化合物としては、アゾ化合物の主骨格が一般式(12)である式(12)−1〜(12)−14、アゾ化合物の主骨格が一般式(13)である式(13)−1〜(13)−5である。
【0056】
以下に化合物例を示す。Eは水素またはカルボエステル基:−C(=O)−O−R1(式中R1は、炭素数4から10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、またはアラルキル基を表わす。
【0057】
<アゾ化合物の主骨格が一般式(12)である化合物の例>
【0058】
【化33】

【0059】
【化34】

【0060】
【化35】

【0061】
<アゾ化合物の主骨格が一般式(13)である化合物の例>
【0062】
【化36】

【0063】
【化37】

【0064】
前記カルボエステル基を有する式(I)の化合物は、例えば欧州特許第648770号公報及び欧州特許第648817号公報、また特表2001−513119号公報に記載されているようにして合成でき、例えば非プロトン性有機溶剤中、触媒として塩基の存在下0〜150℃、好ましくは10〜100℃の温度で、30分から20時間、前記一般式(2)のものと、下記式(14)のものとを、適切なモル比で反応させて合成できる。
【0065】
【化38】

(B,Cp,R0は前記に記載のとおりである)
それぞれの場合において、モル比は導入されるEの数に左右される。好ましくはピロ炭酸ジエステルを少し過剰に用いるのが適している。
【0066】
適切な非プロトン性有機溶剤は、例えば、テトラヒドロフランまたはジオキサン等のエーテル系溶媒、またはエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤またアセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、ピリジン、ピコリンまたはキノリン等が挙げられる。好ましい溶剤は、ピリジン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドである。
【0067】
触媒として適切な塩基は、例えばアルカリ金属:ナトリウム、カリウムなど、ならびにそれらの水酸化物及び炭酸塩、またはアルカリ金属アミド類であり、ナトリウムアミド、カリウムアミド類であり、また水素化アルカリ金属類たとえば水素化リチウムなどがある。
有機脂肪族、芳香族またはヘテロ環式N−塩基類としては、ジアザビシクロオクテン、ジアザビシクロウンデセン、4−ジメチルアミノピリジン、ジメチルピリジン、ピリジン、トリエチルアミンなどが使用できる。好ましいのは、有機N−塩基類であり、例えば、4−ジメチルアミノピリジン、ジメチルピリジン、ピリジンである。
【0068】
上記式(14)であらわされるピロ炭酸ジエステルは、一般に知られている方法で製造できる。また商業的にも入手できる。R1は、上記の記載のものを示すが、好ましくは溶解性の驚くべき向上の点で分岐のアルキル基が好ましい。
【0069】
次に、本発明の感光体について、図面を参照して以下に説明する。
本発明の感光体(1)は、図1に示すように、導電性支持体(2)上に、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層(3)と、電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層(4)が積層された構成をなしている。また、本発明の感光体(1)は、図2に示すように、導電性支持体(2)と、電荷発生層(3)との間に、下引き層(6)、あるいは中間層を形成してもよい。
【0070】
また、本発明の感光体(1)は、図3に示すように、電荷輸送層(4)の上に保護層(5)を形成してもよい。
さらに、本発明の感光体(1)は、図4に示すように、導電性支持体(2)上に、電荷発生物質と電荷輸送物質を含む単層の感光層(7)を有した単層型感光体の態様をなしてもよい。
【0071】
<導電性支持体>
導電性支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、エンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
【0072】
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当なバインダー樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体として用いることができる。
この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。
また、同時に用いられるバインダー樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。
このような導電性層は、これらの導電性粉体とバインダー樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
【0073】
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、ポリテトラフロロエチレン系フッ素樹脂などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体として良好に用いることができる。
【0074】
<感光層>
次に、感光層について説明する。
積層構成の感光層は、少なくとも電荷発生層、及び電荷輸送層が順次積層されることによって構成されている。
【0075】
<電荷発生層>
前記電荷発生層は、電荷発生物質を含む層である。該電荷発生物質として、本発明で用いられる複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を少なくとも含有する。
【0076】
電荷発生物質は本発明の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料と従来公知の電荷発生物質を混合して用いても良い。従来公知の電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、非対称ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料等のアゾ顔料、チタニルフタロシアニン、銅フタロシアニン、バナジルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、インジゴ顔料、ピロロピロール顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクエアリウム顔料等が挙げられる。
【0077】
電荷発生層に用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。バインダー樹脂の量は、電荷発生物質100質量部に対し、0〜500質量部が好ましく、10〜300質量部がより好ましい。
【0078】
前記電荷発生層は、電荷発生物質を必要に応じてバインダー樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などの公知の分散方法を用いて分散し、これを導電性支持体上、もしくは下引き層や中間層上に塗布し、乾燥することにより形成される。バインダー樹脂の添加は、電荷発生物質の分散前、あるいは分散後のどちらでも構わない。
【0079】
前記電荷発生層の形成に用いられる前記溶剤としては、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等の一般に用いられる有機溶剤が挙げられるが、これらの中でも、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒が特に好ましい。これらは単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
【0080】
前記電荷発生層の形成用塗工液は、電荷発生物質、溶媒及びバインダー樹脂を主成分とするが、その中には、増感剤、分散剤、界面活性剤、シリコーンオイル等のいかなる添加剤が含まれていてもよい。
【0081】
上記塗工液を用いて電荷発生層を塗工する方法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の公知の方法を用いることができる。
前記電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μmが好ましく、0.1〜2μmがより好ましい。塗工後には、オーブン等で加熱乾燥される。本発明における電荷発生層の乾燥温度としては、50℃以上160℃以下が好ましい。
【0082】
<電荷輸送層>
次に電荷輸送層について説明する。
電荷輸送層は、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を溶剤に溶解又は分散した塗工液を、塗布、乾燥することにより形成される。また、電荷輸送層の塗工液には、必要に応じて、単独又は2種以上の可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤、滑剤等の添加剤を添加してもよい。
【0083】
電荷輸送物質としては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)及びその誘導体、ポリ(γ−カルバゾリルエチルグルタメート)及びその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物及びその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、アミノビフェニル誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジエン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、エナミン誘導体等の材料が挙げられる。これらの電荷輸送物質は、単独又は2種以上混合して用いられる。
電荷輸送物質の含有量は、バインダー樹脂100重量部に対して、通常、20〜300重量部であり、40〜150重量部が好ましい。
【0084】
バインダー樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0085】
塗工溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、キシレン、アセトン、ジエチルエーテル、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種以上併用してもよい。
電荷輸送層の膜厚は、解像度や応答性の点から、10〜50μmであることが好ましく、15〜35μmがさらに好ましい。
【0086】
塗工する方法としては、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法、ノズルコート法、スピナーコート法、リングコート法等の公知の方法を用いることができるが、電荷輸送層は膜厚はある程度厚く塗る必要があるため、粘性の高い液で浸漬塗工法に塗工する方法ことが好ましい。
塗工後の電荷輸送層は、オーブン等で加熱乾燥される。乾燥温度は塗工液に含有される溶媒によっても異なるが、80〜160℃あることが好ましく、110〜140℃がより好ましい。また、乾燥時間は、10分以上であることが好ましく、20分以上がさらに好ましい。
【0087】
<単層>
次に、感光層が単層構成の場合について述べる。
上述した電荷発生物質、電荷輸送物質をバインダー樹脂中に分散乃至溶解させ、電荷発生機能、及び電荷輸送機能を一つの層で実現した感光体である。
感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質及びバインダー樹脂をテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン等の溶剤に溶解ないし分散し、これを浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコートなどの従来公知の方法を用いて塗工して形成できる。
電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質の双方が含有されることが好ましい。
また、必要により可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
単層の感光層に用いられる電荷発生物質、電荷輸送物質、バインダー樹脂、有機溶剤及び各種添加剤等に関しては、前述の電荷発生層及び電荷輸送層に含有されるいずれの材料をも使用することが可能である。
バインダー樹脂としては、先に電荷輸送層で挙げたバインダー樹脂のほかに、電荷発生層で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。バインダー樹脂100質量部に対する電荷発生物質の量は、5〜40質量部が好ましく、10〜30質量部がより好ましい。
また、電荷輸送物質の量は、0〜190質量部が好ましく、50〜150質量部がより好ましい。また、感光層の膜厚は、5〜40μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
【0088】
<下引き層>
本発明の感光体においては、導電性支持体と感光層の間に、下引き層を設けることができる。
下引き層は、一般に、樹脂を主成分とするが、このような樹脂は、その上に溶剤を用いて感光層を塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対する耐溶剤性が高い樹脂であることが好ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、イソシアネート、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。
【0089】
また、下引き層には、モアレ防止、残留電位の低減等のために、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
また、前述の電荷発生層や電荷輸送層と同様に、溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。さらに、下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。
【0090】
<保護層>
本発明においては、感光体の最表面に耐摩耗性向上の為に、保護層を設けることができる。保護層としては、電荷輸送成分とバインダー成分とを重合させた高分子電荷輸送物質型、フィラーを含有させたフィラー分散型、硬化させた硬化型などが知られているが、本発明においては従来公知のいずれの保護層に対しても使用することができる。
【0091】
<画像形成装置>
次に、図面を用いて本発明の電子写真方法、並びに、画像形成装置を詳しく説明する。
図5は、本発明の電子写真プロセス、及び画像形成装置を説明するための概略図であり、下記のような例も本発明の範疇に属するものである。
感光体(10)は図5中の矢印の方向に回転し、感光体(10)の周りには、帯電部材(11)、画像露光部材(12)、現像部材(13)、転写部材(16)、クリーニング部材(17)、除電部材(18)等が配置される。クリーニング部材(17)や除電部材(18)が省略されることもある。
画像形成装置の動作は基本的に以下のようになる。帯電部材(11)により、感光体(10)表面に対してほぼ均一に帯電が施される。続いて、画像露光部材(12)により、入力信号に対応した画像光書き込みが行われ、静電潜像が形成される。次に、現像部材(13)により、この静電潜像に現像が行われ、感光体表面にトナー像が形成される。形成されたトナー像は、搬送ローラ(14)により転写部位に送られた転写紙(15)に、転写部材により、トナー像が転写される。このトナー像は、図示しない定着装置により転写紙上に定着される。転写紙に転写されなかった一部のトナーは、クリーニング部材(17)によりクリーニングされる。ついで、感光体上に残存する電荷は、除電部材(18)により除電が行われ、次のサイクルに移行する。
【0092】
図5に示すように、感光体(10)はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。帯電部材(11)、転写部材(16)には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャ)のほか、ローラ状の帯電部材あるいはブラシ状の帯電部材等が用いられ、公知の手段がすべて使用可能である。
【0093】
一方、画像露光部材(12)、除電部材(18)等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。これらの中でも半導体レーザー(LD)や発光ダイオード(LED)が主に用いられる。
所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
光源等は、光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光などの工程を設けることにより、感光体(10)に光が照射される。但し、除電工程における感光体(10)への露光は、感光体(10)に与える疲労の影響が大きく、特に帯電低下や残留電位の上昇を引き起こす場合がある。
したがって、露光による除電ではなく、帯電工程やクリーニング工程において逆バイアスを印加することによっても除電することが可能な場合もあり、感光体の高耐久化の面から有効な場合がある。
【0094】
電子写真感光体(10)に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
【0095】
感光体表面に付着する汚染物質の中でも帯電によって生成する放電物質やトナー中に含まれる外添剤等は、湿度の影響を拾いやすく異常画像の原因となっているが、このような異常画像の原因物質には、紙粉もその一つであり、それらが感光体に付着することによって、異常画像が発生しやすくなるだけでなく、耐摩耗性を低下させたり、偏摩耗を引き起こしたりする傾向が見られる。したがって、上記の理由により感光体と紙とが直接接触しない構成であることが高画質化の点からより好ましい。
【0096】
現像部材(13)により、感光体(10)上に現像されたトナーは、転写紙(15)に転写されるが、すべてが転写されるわけではなく、感光体(10)上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、クリーニング部材(17)により、感光体(10)から除去される。
このクリーニング部材は、クリーニングブレードあるいはクリーニングブラシ等公知のものが用いられる。また、両者が併用されることもある。
【0097】
本発明による感光体は、高光感度ならびに高安定化を実現したことから小径感光体に適用できる。したがって、上記の感光体がより有効に用いられる画像形成装置あるいはその方式としては、複数色のトナーに対応した各々の現像部に対して、対応した複数の感光体を具備し、それによって並列処理を行なう、いわゆるタンデム方式の画像形成装置に極めて有効に使用される。上記タンデム方式の画像形成装置は、フルカラー印刷に必要とされるイエロー(C)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の少なくとも4色のトナー及びそれらを保持する現像部を配置し、更にそれらに対応した少なくとも4本の感光体を具備することによって、従来のフルカラー印刷が可能な画像形成装置に比べ極めて高速なフルカラー印刷を可能としている。
【0098】
図6は、本発明のタンデム方式のフルカラー電子写真装置を説明するための概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図6において、感光体(10C(シアン)),(10M(マゼンタ)),(10Y(イエロー)),(10K(ブラック))は、ドラム状の感光体(10)であり、これらの感光体(10C,10M,10Y,10K)は、図中の矢印方向に回転し、その周りに少なくとも回転順に帯電部材(11C,11M,11Y,11K)、現像部材(13C,13M,13Y,13K)、クリーニング部材(17C,17M,17Y,17K)が配置されている。
【0099】
この帯電部材(11C,11M,11Y,11K)と、現像部材(13C,13M,13Y,13K)との間に位置する露光部材からレーザー光(12C,12M,12Y,12K)が照射され、感光体(10C,10M,10Y,10K)に静電潜像が形成されるようになっている。
そして、このような感光体(10C,10M,10Y,10K)を中心とした4つの画像形成要素(20C、20M、20Y、20K)が、転写材搬送手段である転写搬送ベルト(19)に沿って並置されている。
転写搬送ベルト(19)は、各画像形成ユニット(20C、20M、20Y、20K)の現像部材(13C,13M,13Y,13K)と、クリーニング部材(17C,17M,17Y,17K)との間で感光体(10C,10M,10Y,10K)に当接しており、転写搬送ベルト(19)の感光体(10)側の裏側に当たる面(裏面)には転写バイアスを印加するための転写部材(16C,16M,16Y,16K)が配置されている。各画像形成要素(20C、20M、20Y、20K)は現像装置内部のトナーの色が異なることであり、その他は全て同様の構成となっている。
【0100】
図6に示す構成のカラー電子写真装置において、画像形成動作は次のようにして行なわれる。まず、各画像形成要素(20C、20M、20Y、20K)において、感光体(10C,10M,10Y,10K)が、感光体10と連れ周り方向に回転する帯電部材(11C,11M,11Y,11K)により帯電され、次に、感光体(10)の外側に配置された露光部(図示せず)でレーザー光(12C,12M,12Y,12K)により、作成する各色の画像に対応した静電潜像が形成される。
次に現像部材(13C,13M,13Y,13K)により潜像を現像してトナー像が形成される。現像部材(13C,13M,13Y,13K)は、それぞれC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(ブラック)のトナーで現像を行なう現像部材で、4つの感光体(10C,10M,10Y,10K)上で作られた各色のトナー像は転写ベルト(19)上で重ねられる。
転写紙(15)は給紙コロ(21)によりトレイから送り出され、一対のレジストローラ(22)で一旦停止し、上記感光体上への画像形成とタイミングを合わせて転写部材(23)に送られる。転写ベルト(19)上に保持されたトナー像は転写部材(23)に印加された転写バイアスと転写ベルト(19)との電位差から形成される電界により、転写紙(15)上に転写される。転写紙上に転写されたトナー像は、搬送されて、定着部材(24)により転写紙上にトナーが定着されて、図示しない排紙部に排紙される。また、転写部で転写されずに各感光体(10C,10M,10Y,10K)上に残った残留トナーは、それぞれのユニットに設けられたクリーニング部材(17C,17M,17Y,17K)で回収される。
【0101】
図6に示したような、中間転写方式は、フルカラー印刷が可能な画像形成装置に特に有効であり、複数のトナー像を一度中間転写体上に形成した後に紙に一度に転写することによって、色ズレの防止の制御もしやすく高画質化に対しても有効である。
中間転写体には、ドラム状やベルト状など種々の材質あるいは形状のものがあるが、本発明においては従来公知である中間転写体のいずれも使用することが可能であり、感光体の高耐久化あるいは高画質化に対し有効かつ有用である。
【0102】
なお、図6の例では画像形成要素は転写紙搬送方向上流側から下流側に向けて、C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(ブラック)の色の順で並んでいるが、この順番に限るものでは無く、色順は任意に設定されるものである。また、黒色のみの原稿を作成する際には、黒色以外の画像形成要素(20C,20M,20Y)が停止するような機構を設けることは本発明に特に有効に利用できる。
【0103】
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。
【0104】
前記プロセスカートリッジとは、図7に示すように、感光体(10)を内蔵し、他に帯電部材(11)、画像露光部材(12)、現像部材(13)、転写部材(16)、クリーニング部材(17)、及び除電部材を含んだ1つの装置(部品)である。
【0105】
上記のタンデム方式による画像形成装置は、複数のトナー像を一度に転写できるため高速フルカラー印刷が実現される。
しかし、感光体が少なくとも4本を必要とすることから、装置の大型化が避けられず、また使用されるトナー量によっては、各々の感光体の摩耗量に差が生じ、それによって色の再現性が低下したり、異常画像が発生したりするなど多くの課題を有していた。
それに対し、本発明による感光体は、高光感度ならびに高安定化が実現されたことにより小径感光体でも適用可能であり、かつ残留電位上昇や感度劣化等の影響が低減されたことから、4本の感光体の使用量が異なっていても、残留電位や感度の繰り返し使用経時における差が小さく、長期繰り返し使用しても色再現性に優れたフルカラー画像を得ることが可能となる。
【実施例】
【0106】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0107】
<比較合成例1>ヒドロキシガリウムフタロシアニン1の合成
脱水ジメチルスルホキシド200mlに1,3−ジイミノイソインドリン30部、三塩化ガリウム8部を加え、Ar気流下にて150℃、12時間反応させた後、生成したクロロガリウムフタロシアニンを濾別した。このウェットケーキをメチルエチルケトンおよびN,N−ジメチルホルムアミドで洗浄した後、乾燥することで22部(70.3%)のクロロガリウムフタロシアニン結晶を得た。得られたクロロガリウムフタロシアニン5部を氷冷した濃硫酸150部に溶解し、この硫酸溶液を氷冷したイオン交換水500mlに徐々に滴下することでヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶を析出させた。結晶を濾別した後、ウェットケーキを2wt%のアンモニア水500mlで洗浄し、その後、イオン交換水で十分に洗浄を行った。その後乾燥することで4.6部のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1を得た。
【0108】
<比較合成例2>ヒドロキシガリウムフタロシアニン2の合成
前記ヒドロキシガリウムフタロシアニン1を0.5部とN,N−ジメチルホルムアミド15mlを、ガラスビーズ(直径約1mmφ)45部とともに50mlのガラス製サンプル瓶に入れ、24時間ミリングを行なった後、結晶を濾取した。得られた結晶に2−ブタノン100mlを加え、室温で2時間攪拌したのち、結晶を濾過した。イオン交換水約100mlで、同様の操作を2回行なった後、乾燥し、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料2を得た。
このものの、粉末X線回折スペクトルを、図8に示す。
【0109】
《複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料合成例》
<合成例1>
・ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料とアゾ顔料((12)−3)(E=H)の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1の製造
特開2009−7523号明細書の実施例1で製造されるアゾ化合物((12)−3)(E:C5H9O2)0.92部、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1を0.90部、N,N−ジメチルホルムアミド100mlに加え強く撹拌しながら、還流下に7時間反応させた。薄層クロマトグラフィーでアゾ化合物((12)−3)の消失を確認した後、室温に戻し、0.1ミクロンのフルオロポアで濾取した。
得られた結晶にN,N−ジメチルホルムアミド100mlを加え、室温で2時間攪拌したのち、結晶を濾過した。この操作をもう一度繰り返した後、溶媒を2−ブタノンに変え同様の操作を行なった。さらに、イオン交換水約100mlで、同様の操作を2回行なった後、乾燥することで1.42部(93%)の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1を得た。
このものの赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)は、アゾ化合物の2980cm−1の飽和炭化水素による吸収、1760cm−1のカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が消失したことを確認した。
このものの、粉末X線回折スペクトルを、図9に示す。
【0110】
<合成例2>
・ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料とアゾ顔料((12)−2)(E=H)の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料2の製造
特開2009−7523号明細書の実施例3で製造されるアゾ化合物((12)−2)(E:C5H9O2)0.91部、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1を0.90部、N,N−ジメチルホルムアミド100mlに加え強く撹拌しながら、120℃で6時間反応させた。薄層クロマトグラフィーでアゾ化合物((12)−2)の消失を確認した後、室温に戻し、0.1ミクロンのフルオロポアで濾取した。
得られた結晶にN,N−ジメチルホルムアミド100mlを加え、室温で2時間攪拌したのち、結晶を濾過した。この操作をもう二度繰り返した後、溶媒を2−ブタノンに変え同様の操作を行なった。さらに、イオン交換水約100mlで、同様の操作を2回行なった後、乾燥することで1.24部(82%)の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料2を得た。
このものの赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)は、アゾ化合物の2980cm−1の飽和炭化水素による吸収、1760cm−1のカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が消失したことを確認した。
このものの、粉末X線回折スペクトルを、図10に示す。
【0111】
<合成例3>
・ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料とアゾ顔料((12)−4)(E=H)の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料3の製造
特開2009−7523号明細書の実施例2で製造されるアゾ化合物((12)−4)(E:C5H9O2)0.89部、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1を0.90部、N,N−ジメチルホルムアミド100mlに加え強く撹拌しながら、還流下に7時間反応させた。薄層クロマトグラフィーでアゾ化合物((12)−4)の消失を確認した後、室温に戻し、0.1ミクロンのフルオロポアで濾取した。
得られた結晶にN,N−ジメチルホルムアミド100mlを加え、室温で2時間攪拌したのち、結晶を濾過した。この操作をもう一度繰り返した後、溶媒を2−ブタノンに変え同様の操作を行なった。さらに、イオン交換水約100mlで、同様の操作を2回行なった後、乾燥することで1.36分(91%)の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料3を得た。
このものの赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)は、アゾ化合物の2980cm−1の飽和炭化水素による吸収、1760cm−1のカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が消失したことを確認した。
このものの、粉末X線回折スペクトルを、図11に示す。
【0112】
<合成例4>
・ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料とアゾ顔料((13)−1)(E=H)の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料4の製造
特開2009−7523号明細書の実施例7で製造されるアゾ化合物((13)-1)(E:C5H9O2)1.01部、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1を0.90部、N,N−ジメチルホルムアミド100mlに加え強く撹拌しながら、還流下に7時間反応させた。薄層クロマトグラフィーでアゾ化合物((13)−1)の消失を確認した後、室温に戻し、0.1ミクロンのフルオロポアで濾取した。
得られた結晶にN,N−ジメチルホルムアミド100mlを加え、室温で2時間攪拌したのち、結晶を濾過した。この操作をもう二度繰り返した後、溶媒を2−ブタノンに変え同様の操作を行なった。さらに、イオン交換水約100mlで、同様の操作を2回行なった後、乾燥することで1.54部(96%)の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料4を得た。
このものの赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)は、アゾ化合物の2980cm−1の飽和炭化水素による吸収、1760cm−1のカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が消失したことを確認した。
このものの、粉末X線回折スペクトルを、図12に示す。
【0113】
<合成例5>
・ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料とアゾ顔料((12)−2)(E=H)の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料5の製造
特開2009−7523号明細書の実施例3で製造されるアゾ化合物((12)−2)(E:C5H9O2)0.18部、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料2を0.90部、クロルベンゼン100mlに加え強く撹拌しながら、還流下で15時間反応させた。薄層クロマトグラフィーでアゾ化合物((12)−2)の消失を確認した後、室温に戻し、0.1ミクロンのフルオロポアで濾取した。
得られた結晶に2−ブタノン100mlを加え、室温で2時間攪拌したのち、結晶を濾過した。この操作をもう二度繰り返した後、イオン交換水約100mlで、同様の操作を2回行なった後、乾燥することで0.89部(87%)の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料5を得た。
このものの赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)は、アゾ化合物の2980cm−1の飽和炭化水素による吸収、1760cm−1のカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が消失したことを確認した。
このものの、粉末X線回折スペクトルは、合成例2のスペクトルと同じパターンであった。
【0114】
<合成例6>
・ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料とアゾ顔料((12)−2)(E=H)の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料6の製造
特開2009−7523号明細書の実施例3で製造されるアゾ化合物((12)−2)(E:C5H9O2)0.36部、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料2を0.90部、N,N−ジメチルアセトアミド70mlに加え強く撹拌しながら、還流下で5時間反応させた。薄層クロマトグラフィーでアゾ化合物((12)−2)の消失を確認した後、室温に戻し、0.1ミクロンのフルオロポアで濾取した。
得られた結晶にN,N−ジメチルホルムアミド100mlを加え、室温で2時間攪拌したのち、結晶を濾過した。この操作をもう二度繰り返した後、溶媒を2−ブタノンに変え同様の操作を行なった。さらに、イオン交換水約100mlで、同様の操作を2回行なった後、乾燥することで1.04部(91%)の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料6を得た。
このものの赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)は、アゾ化合物の2980cm−1の飽和炭化水素による吸収、1760cm−1のカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が消失したことを確認した。
このものの、粉末X線回折スペクトルは、合成例2のスペクトルと同じパターンであった。
【0115】
<合成例7>
・ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料とアゾ顔料((12)−2)(E=H)の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料7の製造
特開2009−7523号明細書の実施例3で製造されるアゾ化合物((12)−2)(E:C5H9O2)1.81部、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料2を0.90部、ジメチルスルホキシド70mlに加え強く撹拌しながら、170℃で5時間反応させた。薄層クロマトグラフィーでアゾ化合物((12)−2)の消失を確認した後、室温に戻し、0.1ミクロンのフルオロポアで濾取した。
得られた結晶にN,N−ジメチルホルムアミド100mlを加え、室温で2時間攪拌したのち、結晶を濾過した。この操作をもう二度繰り返した後、溶媒を2-ブタノンに変え同様の操作を行なった。さらに、イオン交換水約100mlで、同様の操作を2回行なった後、乾燥することで1.98部(94%)の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料7を得た。
このものの赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)は、アゾ化合物の2980cm−1の飽和炭化水素による吸収、1760cm−1のカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が消失したことを確認した。
このものの、粉末X線回折スペクトルは、合成例2のスペクトルと同じパターンであった。
【実施例1】
【0116】
《電子写真感光体実施例》
導電性支持体としての直径100mm、長さ360mmのアルミニウムシリンダーに、下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、下記組成の電荷輸送層塗工液を、順次浸漬塗工・乾燥し、約3.5μmの下引き層、電荷発生層、約28μmの電荷輸送層を形成し、積層感光体を作製した。また、電荷発生層の膜厚は、780nmにおける電荷発生層の透過率が10%になるように調整した。電荷発生層の透過率は、下記組成の電荷発生層塗工液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムを巻き付けたアルミシリンダーに感光体作製と同じ条件で塗工を行い、電荷発生層を塗工していないポリエチレンテレフタレートフィルムを比較対照とし、市販の分光光度計(島津:UV−3600)にて、780nmの透過率を評価した。なお、電荷発生層用塗工液はビーズミルで分散を行い作製した。また、各層の塗工後に指触乾燥を行った後、下引き層は130℃で20分、電荷発生層は100℃で20分、電荷輸送層は130℃で20分乾燥を行った。その後電荷輸送層の上に下記組成の保護層用塗工液をスプレー塗工によって塗布し、メタルハライドランプ:160W/cm、照射強度:500mW/cm、照射時間:60秒の条件で光照射を行うことによって塗布膜を架橋させた後に、130℃で20分加熱乾燥し、膜厚5μmの保護層を形成し、電子写真感光体1を得た。
【0117】
(下引き層用塗工液)
酸化チタンCR−EL(石原産業社製) 50部
アルキッド樹脂ベッコライトM6401−50 14部
(固形分50重量%、大日本インキ化学工業社製)
メラミン樹脂L−145−60 8部
(固形分60重量%、大日本インキ化学工業社製)
2−ブタノン 120部
【0118】
(電荷発生層用塗工液)
複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1 10部
ポリビニルブチラール樹脂 BX−1(積水化学工業) 10部
MEK 600部
【0119】
(電荷輸送層用塗工液)
ビスフェノールZポリカーボネート 10部
(パンライトTS−2050、帝人化成製)
下記構造式(15)の電荷輸送物質 7部
テトラヒドロフラン 80部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 0.2部
(KF50−1CS、信越化学工業製)
【0120】
【化39】

【0121】
(保護層用塗工液)
電荷輸送性構造を有さない3官能以上の
ラジカル重合性モノマー〔トリメチロールプロパントリアクリレート〕
(KAYARAD TMPTA、日本化薬製;
分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99): 10部
下記構造式(16)で示される1官能の電荷輸送性構造を有する
ラジカル重合性化合物: 10部
【0122】
【化40】

光重合開始剤 (1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;
イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製): 1部
テトラヒドロフラン: 100部
【実施例2】
【0123】
実施例1において電荷発生層用塗工液の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1を複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料2に変更した以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体2を得た。
【実施例3】
【0124】
実施例1において電荷発生層用塗工液の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1を複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料3に変更した以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体3を得た。
【実施例4】
【0125】
実施例1において電荷発生層用塗工液の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1を複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料4に変更した以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体4を得た。
【実施例5】
【0126】
実施例1において電荷発生層用塗工液の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1を複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料5に変更した以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体5を得た。
【実施例6】
【0127】
実施例1において電荷発生層用塗工液の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1を複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料6に変更した以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体6を得た。
【実施例7】
【0128】
実施例1において電荷発生層用塗工液の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1を複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料7に変更した以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体7を得た。
【0129】
<比較例1>
実施例1において電荷発生層用塗工液の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1を比較合成例2のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料2に変更した以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体8を得た。
【0130】
<比較例2>
実施例1において電荷発生層用塗工液を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体9を得た。
【0131】
(電荷発生層用塗工液)
比較合成例2のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料2 5部
アゾ顔料((12)―2) 5部
ポリビニルブチラール樹脂 BX−1(積水化学工業) 10部
MEK 600部
【0132】
<比較例3>
実施例1において電荷発生層用塗工液を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体10を得た。
【0133】
(電荷発生層用塗工液)
比較合成例1のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1 5部
アゾ顔料((12)―3) 5部
ポリビニルブチラール樹脂 BX−1(積水化学工業) 10部
MEK 600部
【0134】
<比較例4>
実施例1において電荷発生層用塗工液を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体11を得た。
【0135】
(電荷発生層用塗工液)
比較合成例1のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1 5部
アゾ顔料((12)―4) 5部
ポリビニルブチラール樹脂 BX−1(積水化学工業) 10部
MEK 600部
【0136】
<比較例5>
実施例1において電荷発生層用塗工液を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体12を得た。
【0137】
(電荷発生層用塗工液)
比較合成例1のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1 5部
アゾ顔料((13)―1) 5部
ポリビニルブチラール樹脂 BX−1(積水化学工業) 10部
MEK 600部
【0138】
<実機評価>
実機による通紙ランニングは、電子写真用プロセスカートリッジに前記電子写真感光体を装着し、リコー製imagio Neo751改造機(感光体線速:350mm/sec、LD露光波長:780nm)を用いて、低温低湿環境、常温常湿環境での明部電位測定を、初期と30万枚の実機通紙試験(A4、NBSリコー製MyPaper、スタート時帯電電位−800V)後に以下の方法で行った。
低温低湿環境(温度10℃、湿度15%)または、常温常湿環境に(温度23℃、湿度55%)に感光体を24時間保存したのち、それぞれ保存した環境下で明部電位(VL)を測定した。測定方法は、現像ユニットを分解し、表面電位計に接続された電位計プローブを、感光体の上端から50mmの位置に現像ユニットに取り付け、それに感光体をセットして、暗部電位が−800(V)になるようにグリッド電位を調節した後、黒ベタ画像を出力することによって、明部電位を測定した。表面電位計はTREK MODEL344を用いた。また30万枚印刷後の画像品質を以下の基準で評価した。
○:画像品質にほとんど低下がないレベル
△:目視観察でも画像品質の低下がわかるレベル
×:画像品質上重大な問題があるレベル
【0139】
【表1】

【符号の説明】
【0140】
1、感光体
2、導電性支持体
3、電荷発生層
4、電荷輸送層
5、保護層
6、下引き層
7、単層型感光体
10、10Y、10M、10C、10K 感光体
11、11Y、11M、11C、11K 帯電部材
12、12Y、12M、12C、13K 画像露光部材
13、13Y、13M、13C、13K 現像部材
14 搬送ローラ
15 転写紙
16、16Y、16M、16C、16K 転写部材
17、17Y、17M、17C、17K クリーニング部材
18 除電部材
20Y、20M、20C、20K 画像形成要素
21 給紙コロ
22 レジストローラ
23 転写部材(二次転写部材)
24 定着部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0141】
【特許文献1】特第3166293号公報
【特許文献2】特開2006−18267号公報
【特許文献3】特開2005−208618号公報
【特許文献4】特開2008−015532号公報
【特許文献5】特開2007−034210号公報
【特許文献6】特開2001−290296号公報
【特許文献7】特第3758246号公報
【特許文献8】特第3994638号公報
【特許文献9】特開2007−334099号公報
【特許文献10】特第4194184号公報
【特許文献11】特第3880225号公報
【特許文献12】特第3792909号公報
【特許文献13】特開平7−128888号公報
【特許文献14】特開2006−072304号公報
【特許文献15】特開平09−143386号公報
【特許文献16】特開2006−299269号公報
【特許文献17】特第3838385号公報
【特許文献18】特第3635786号公報
【特許文献19】特第3635786号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料と下記一般式(a)で示されるアゾ化合物とが複合され、Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.5°,9.9°,12.5°,16.3°,18.6°,25.1°,28.3°の位置に回折ピークを有することを特徴とする複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料。
【化1】

(但し式(a)中、Aはアゾ化合物の残基であり、Hは水素原子を表し、この残基Aは、1つまたはそれ以上のヘテロ原子を介してn個の水素に結合しており、そしてこれらのヘテロ原子は、NおよびOからなる群から選ばれ、残基Aの一部を形成している。nは、1から9の整数である。)
【請求項2】
前記複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が、下記一般式(I)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物を溶解し、さらに脱エステル化することにより、前記一般式(a)で示されるアゾ化合物とする際に、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を共存させてなることを特徴とする請求項1に記載の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料。
【化2】

[但し式(I)中、Aはアゾ化合物の残基であり、この残基Aは、1つまたはそれ以上のヘテロ原子を介してn個のE基に結合しており、そしてこれらのヘテロ原子は、NおよびOからなる群から選ばれ、残基Aの一部を形成しており、E基は独立してH(水素原子)または次式で示されるカルボエステル基:−C(=O)−O−R0〔式中R0は、炭素数4から10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、またはアラルキル基を表わす。〕を表わす。ただし、E基の全てが同時に水素原子であることはない。nは、1から9の整数である。]
【請求項3】
前記一般式(a)および前記一般式(I)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(2)で示される残基Aを有するアゾ化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料。
【化3】

(ただし、Bはアゾ化合物の主骨格を示し、Cpはカップラー成分残基であり、mは2又は3の整数を表わす。)
【請求項4】
前記Cpが下記一般式(3)乃至(11)の少なくともいずれかで表わされるカップラー成分残基であることを特徴とする請求項3に記載の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

上記一般式(3)〜(6)中、X、Y1、Z、pおよびqはそれぞれ以下のものを表わす。
X:−OH、−N(R1)(R2)、または−NHSO2−R3。
(ただしここで、R1およびR2は水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、R3は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表わす。)
Y1:水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホン基、置換もしくは無置換のスルファモイル基または−CON(R4)(Y2)。[R4は水素原子、アルキル基もしくはその置換体またはフェニル基もしくはその置換体を表わし、Y2は炭化水素環基もしくはその置換体、複素環基もしくはその置換体、または−N=C(R5)(R6)(但し、R5は炭化水素環基もしくはその置換体、複素環基もしくはその置換体またはスチリル基もしくはその置換体、R6は水素原子、アルキル基またはフェニル基もしくはその置換体を表わすか、あるいはR5およびR6はそれらに結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。)を示す。]
Z:炭化水素環もしくはその置換体または複素環もしくはその置換体。
p:1または2の整数。
q:1または2の整数。
【化8】

(上式中、Xは−OH、−N(R1)(R2)、または−NHSO2−R3を表し(ただしここで、R1およびR2は水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、R3は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表わす)、R7は置換もしくは無置換の炭化水素基を表わす。)
【化9】

(上式中、Xは−OH、−N(R1)(R2)、または−NHSO2−R3を表し(ただしここで、R1およびR2は水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、R3は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表わす)、Aは、式(8)中に記載された2個のN原子と共にN含有ヘテロ環を形成するに必要な芳香族炭化水素の2価基または窒素原子を環内に含むヘテロ原子含有の2価基を表わす(これらの環は置換または無置換でもよい)。)
【化10】

(上式中、Xは−OH、−N(R1)(R2)、または−NHSO2−R3を表し(ただしここで、R1およびR2は水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、R3は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表わす)、R8はアルキル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはそのエステルを表わし、Ar1は炭化水素環基またはその置換体を表わす)
【化11】

【化12】

(上記式(10)および(11)中、Xは−OH、−N(R1)(R2)、または−NHSO2−R3を表し(ただしここで、R1およびR2は水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、R3は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表わす)、R9は水素原子または置換もしくは無置換の炭化水素基を表わし、Ar2は炭化水素環基またはその置換体を表わす。但し、同時にR9が水素原子でかつAr2がシクロアルキル基又はシクロアルケニル基になることはない。)
【請求項5】
前記一般式(2)で示されるアゾ化合物の主骨格Bが下記一般式(12)で示されることを特徴とする請求項3または4に記載の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料。
【化13】

(ただし、R11,R12は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基またはそのエステルを表わす。)
【請求項6】
前記一般式(2)で示されるアゾ化合物において、Bが下記一般式(13)で示されることを特徴とする請求項3または4に記載の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料。
【化14】

(ただし、R19,R20は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルを表わす。)
【請求項7】
導電性支持体上に少なくとも感光層を有し、該感光層に少なくとも請求項1乃至6の複合ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【請求項8】
少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及び電子写真感光体を有する画像形成装置において、該電子写真感光体が請求項7に記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及びクリーニング手段から選ばれる少なくとも1つの手段とが一体となったカートリッジを搭載し、かつ該カートリッジが装置本体に対し着脱自在であることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及びクリーニング手段から選ばれる少なくとも1つの手段とが一体となったカートリッジにおいて、該電子写真感光体が請求項7に記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−137100(P2011−137100A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298614(P2009−298614)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】