説明

複合ポリプロピレン組成物

【構成】 特定の性状を有する結晶性エチレン・プロピレンブロック共重合体(a)と、熱可塑性エラストマー(b)と、結晶性エチレン系ポリマー(c)と、特定の性状を有する繊維状ゾノトライト(d)と、非繊維状充填材(e)とから構成され、全組成物中の(d)成分と(e)成分の重量百分率の和が5重量%以上65重量%以下であり、(d)成分と(e)成分の重量の和における(d)成分の重量百分率が5重量%以上100重量%以下であり、(a)成分と(b)成分と(c)成分の重量の和における(a)成分の重量百分率が50重量%以上95重量%以下であり、(b)成分と(c)成分の重量の和における(c)成分の重量百分率が10重量%以上60重量%以下である複合ポリプロピレン組成物。
【効果】 機械的特性と耐熱性と耐衝撃性のバランスに優れ、良好な外観の成形品を提供する複合ポリプロピレン組成物が得られ、自動車、電気・電子、精密機械などの分野の材料として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、繊維状ゾノトライトで補強されたポリプロピレン組成物に関するものであり、本組成物を用いて得られる成形品は、機械的特性、耐熱性、耐衝撃性のバランスに優れ、さらに、成形品の外観が良好であり、自動車、電気・電子、精密機械などの分野の材料として使用できる。
【0002】
【従来の技術およびその問題点】ポリプロピレンの耐衝撃性を改良する方法として、熱可塑性エラストマーおよびポリエチレンを改質剤としてブレンドする方法(「ポリマーブレンド」後藤邦夫著、日刊工業新聞社発行(昭和45年)など参照)が広く行われているが、この方法では、強度や弾性率および耐熱性が低下することが知られている。
【0003】そこで、この問題を解決する方法として、強化繊維や繊維状充填材あるいは粒状や板状の非繊維状充填材をさらにこれらに配合する方法が公知のものとなっている。しかし、強化繊維を配合する方法(特開昭61−72039号公報など参照)は、強度や弾性率や耐熱性の改良効果はあるものの、流動性が悪く、得られる成形品に外観不良が生じる。また、粒状や板状の非繊維状充填材を配合する方法(特開昭57−159841号公報など参照)では、外観不良は生じにくいが、上記の改良効果が小さいことはよく知られている。
【0004】これに対し、ワラストナイト、石膏繊維、チタン酸カリウム、繊維状マグネシウムオキシサルフェートなどの繊維状充填材は、その配合によって、弾性率や耐熱性などを向上させるとともに良好な外観を呈する成形品を与える(特開昭61−72039号公報など参照)。さらに、上記の非繊維状充填材と繊維状充填材とを組み合せる方法(いわゆる充填材のハイブリッド化)(特開昭62−91545号公報など参照)も試みられている。そして、上記のような目的に使用する繊維状充填材の一例として、珪酸カルシウム繊維(繊維状ゾノトライトが含まれる)を用いる方法(特開昭61−72039号公報など参照)が開示されている。
【0005】しかし、従来知られている繊維状ゾノトライトは、凝集を起こしやすく、ポリプロピレンや上記の改質剤との濡れが悪いために、それらの中での分散性が低いという欠点を持っている。このために、上記のような期待される効果が十分に発現されないものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の目的は、上記のような従来公知の技術が抱えていた問題点を解決した、すなわち、機械的特性や耐熱性や耐衝撃性のバランスに優れ、かつ、成形品外観の良好なポリプロピレン組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来技術における上記の問題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、マトリックス樹脂であるポリプロピレン、熱可塑性エラストマーおよびポリエチレンとの濡れ性およびこれらマトリックス樹脂中での分散性に優れた特定の性状を有する繊維状ゾノトライトと、非繊維状充填材とを、特定の割合で、前記マトリックス樹脂であるポリプロピレン、熱可塑性エラストマーおよびポリエチレンに配合することによって、強度、弾性率などの機械的特性、耐熱性および耐衝撃性のバランスに優れ、かつ、成形品外観の良好なポリプロピレン組成物を供することにより、本発明を達成できることを見い出した。
【0008】すなわち、請求項1に記載の第1の発明は、エチレン含量が0.5〜10重量%、メルトフローインデックス(230℃で測定)が5〜70g/10分、ポリプロピレン成分の沸騰n−ヘプタン不溶分が95重量%以上の結晶性エチレン・プロピレンブロック共重合体(a)と、オレフィン系熱可塑性エラストマーまたはスチレン系熱可塑性エラストマーから選ばれた熱可塑性エラストマー(b)と、ポリエチレンまたは結晶性エチレン・α−オレフィン共重合体から選ばれた結晶性エチレン系ポリマー(c)と、窒素吸着によるBET比表面積が21m2 /g以上であり、界面活性剤および/またはカップリング剤で表面処理され、かつ、顆粒状に造粒されている繊維状ゾノトライト(d)と、非繊維状充填材(e)とから構成され、前記数式(I)で表わされる、前記(a)成分、前記(b)成分、前記(c)成分、前記(d)成分および前記(e)成分からなる全組成物中における前記(d)成分の重量百分率と前記(e)成分の重量百分率の和(Wf)が5重量%以上65重量%以下であり、前記数式(II)で表わされる、前記(d)成分の重量と前記(e)成分の重量の和における前記(d)成分の重量百分率(Wd)が5重量%以上100重量%以下であり、さらに、前記数式(III)で表わされる、前記(a)成分、前記(b)成分および前記(c)成分の重量の和における前記(a)成分の重量百分率(Wa)が50重量%以上95重量%以下であり、さらにはまた、前記数式(IV)で表わされる、前記(b)成分の重量と前記(c)成分の重量の和における前記(c)成分の重量百分率(Wc)が10重量%以上60重量%以下であることを特徴とする複合ポリプロピレン組成物を提供することによって達成できる。
【0009】また、請求項2に記載の第2の発明は、繊維状ゾノトライト(d)が、0.1μm≦D<0.5μm、1μm≦L<5μmおよび10≦L/D<20(ただし、DおよびLは、それぞれ繊維状ゾノトライト(d)の平均繊維径および平均繊維長を示す。)を同時に満たすことを特徴とする繊維状ゾノトライトである上記第1の発明に係る複合ポリプロピレン組成物を提供することによって達成できる。
【0010】さらにまた、請求項3に記載の第3の発明は、結晶性エチレン・プロピレンブロック共重合体(a)が常温でのp−キシレン可溶成分の量が3〜20重量%、該p−キシレン可溶成分の固有粘度(デカリン溶液中、135℃で測定)が3dl/g以上および該p−キシレン可溶成分中のエチレン含量が18〜45重量%である共重合体である上記第1の発明または第2の発明に係る複合ポリプロピレン組成物を、請求項4に記載の第4の発明は、熱可塑性エラストマー(b)がエチレン・プロピレンラバー、エチレン・ブチレンラバーおよびスチレン・エチレン・ブチレン・スチレンラバーからなる群より選ばれた少なくとも1種以上のエラストマーである上記第1〜第3の発明のいずれか1つの発明に係る複合ポリプロピレン組成物を、請求項5に記載の第5の発明は、結晶性エチレン系ポリマー(c)が高密度ポリエチレンおよび結晶性エチレン・ブテン−1共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種以上のポリマーである上記第1〜第4の発明のいずれか1つの発明に係る複合ポリプロピレン組成物を、そして、請求項6に記載の第6の発明は、非繊維状充填材(e)がタルクである上記第1〜第5の発明のいずれか1つの発明に係る複合ポリプロピレン組成物を、それぞれ提供することによって達成できる。
【0011】以下に、本発明を詳しく説明する。本発明に述べる繊維状ゾノトライト(d)とは、ゾノトライト(示性式:Ca6 Si6 17(OH)2 、化学式:6CaO・6SiO2 ・H2 O)の針状結晶物質をいう。本発明では、その比表面積の値が非常に重要であり、21m2 /g以上、好ましくは30m2 /g以上(ただし、窒素吸着によるBET法での測定値である)でなければならない。この値が30m2 /gより小さい繊維状ゾノトライトでは、マトリックス樹脂であるポリプロピレン、熱可塑性エラストマーおよびポリエチレンとの濡れ性が悪くなることがあり、特に、21m2 /gより小さい繊維状ゾノトライトでは、この濡れ性の悪化が著しいため、本発明の目的を達成することができない。
【0012】さらに本発明では、繊維の形状としては、特に平均繊維長(L)が1μm≦L<5μm、平均繊維径(D)が0.1μm≦D<0.5μm、そしてアスペクト比(L/D)が10≦L/D<20の条件を同時に満たすものが好適に使用できる。Dが0.1μm未満のものやLが5μm以上のものでは、繊維状ゾノトライト(d)を顆粒状に成形する際やポリプロピレン、熱可塑性エラストマーおよびポリエチレンとの混合・混練時に前記繊維状ゾノトライト(d)が折れる恐れがあるし、一方、Dが0.5μm以上のものやLが1μm未満のものでは、得られる複合ポリプロピレン組成物の、繊維状ゾノトライト(d)による機械的強度の向上効果が十分ではないことがある。また、L/Dが10未満の場合には、得られる複合ポリプロピレン組成物は、十分な機械的強度を得ることができないことがあるし、L/Dが20以上の場合には、繊維状ゾノトライト(d)の嵩比重が小さくなりすぎ、本発明の複合ポリプロピレン組成物製造時などに混練が困難となることがある。
【0013】上述した本発明の繊維状ゾノトライト(d)は、以下に詳述するように、特願平5−190336号明細書に記載された製造法、すなわち、石灰質原料と珪酸質原料とを特定割合で配合して水熱合成反応により製造される。石灰質原料としては、生石灰、消石灰などがあり、不純物の少ないものが好ましい。また、珪酸質原料としては、珪石、珪砂および石英の粉砕品、珪酸、無水珪酸、シリカゲル、ケイソウ土などであり、不純物が少なくかつ平均粒径が10μm以下の微粉状のものが望ましい。これら両者の配合割合(Ca/Si比)は、理論当量よりも若干小さく0.8〜0.99とするのが好ましい。また、混合する水の割合は、前記石灰質原料と前記珪酸質原料の量の総和の5〜40倍、好ましくは8〜30倍であることが望ましい。
【0014】そして、水熱合成反応は、上記所定割合の石灰質原料、珪酸質原料および水をオートクレーブに投入し、攪拌しながら、180〜240℃で通常1〜8時間かけて行われる。この反応温度および反応時間は重要な因子であり、前記範囲以外では、前述したような本発明に用いる特定の比表面積を有する繊維状ゾノトライトが得られない。
【0015】本発明において、上述の製法によって得られた繊維状ゾノトライト(d)は、その、後述するポリプロピレン(a)、熱可塑性エラストマー(b)、ポリエチレン(c)および非繊維状充填材(e)からなる組成物に対する補強効果を一層向上させるために、さらに、表面が界面活性剤および/またはカップリング剤(以下表面処理剤という)によって処理されることが望ましい。すなわち、表面処理剤は、前記繊維状ゾノトライト(d)の、マトリックスとなる有機高分子物質、つまり、前記ポリプロピレン(a)、熱可塑性エラストマー(b)およびポリエチレン(c)との親和性を向上させ、その補強効果、つまり、機械的強度をより高める目的で使用されるものであり、具体的には次のようなものが使用され得る。界面活性剤としては、陰イオン系、陽イオン系、両性系および非イオン系界面活性剤のいずれも使用できる。陰イオン系界面活性剤としては、アルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ステアリン酸塩など、陽イオン系界面活性剤としては、テトラデシルアミン酢酸塩、アルキルトリメチルアンモニウムクロライドなど、両性系界面活性剤としては、ジメチルアルキルラウリルペタインなど、そして、非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンオクタデシルアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどが挙げられる。また、カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、クロム系カップリング剤、ホウ素系カップリング剤などが挙げられる。
【0016】これら表面処理剤の添加量は、繊維状ゾノトライト(d)(乾燥物基準)に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜8重量%であるべきである。添加量が0.1重量%未満では、前述の効果が十分でなく、また、添加量が10重量%を超える場合は、添加量を増加しても前述の効果はほとんど向上しない。なお、添加量が0.1〜0.5重量%の範囲では、前述の効果が十分でないことがあり、そして添加量が8〜10重量%の範囲では、前述の効果の向上が望めなくなる傾向にある。
【0017】本発明においては、水熱合成反応によって得られた繊維状ゾノトライトスラリーをオートクレーブから抜き出し、繊維状ゾノトライトの表面処理を行う。表面処理方法は、特に限定はしないが、例えば、繊維状ゾノトライトスラリーにそのまま、あるいは、適当量の水を加えた後に、前記表面処理剤を添加し、適当な装置によりスラリー状態で混合・攪拌する。引き続き、遠心脱水機あるいはフィルタープレス機などにより余剰の水分を濾過分離し、ケーキ状の繊維状ゾノトライトを得るのである。また、この表面処理については、繊維状ゾノトライトスラリーを乾燥した後に、少量の水あるいは溶媒に溶解した表面処理剤を用いて行ってもよいが、操作が繁雑となり、また、表面処理剤の効果が小さく特にメリットはない。
【0018】さらに、本発明で使用する繊維状ゾノトライト(d)は、後述するポリプロピレン(a)、熱可塑性エラストマー(b)およびポリエチレン(c)との混合・混練を容易に行う目的で顆粒状に造粒される。顆粒状の繊維状ゾノトライトは、前記の表面処理剤を付着したケーキ状の繊維状ゾノトライトを、造粒機によって径が1〜8mmの顆粒状に成形し、乾燥および、前記表面処理剤としてカップリング剤を使用した場合は、さらに熱処理を行うことによって得られる。この場合、前記造粒機としては、特に制限されるものではなく、回転縦型造粒機、回転ドラム型造粒機、回転さら型造粒機、スクリュー押出造粒機、ロール押出造粒機など公知の造粒機を用いることができる。そして、造粒によって得られる繊維状ゾノトライトの顆粒状成形品の径が前記の範囲を逸脱すると、ポリプロピレン(a)、熱可塑性エラストマー(b)、ポリエチレン(c)および非繊維状充填材(e)との混合・混練に際して、一軸押出機や二軸押出機などでの混合・混練が困難となり、ロールやバンバリーミキサーなどで遂次的に充填し、混合・混練を行わなければならず、繊維状ゾノトライト(d)が著しく破壊して機械的強度の低下を生じることがあるので好ましくない。また、前記乾燥は、熱風循環式乾燥器、赤外線加熱式乾燥器など公知の乾燥器を用いて100〜150℃の温度で20〜30時間かけて顆粒状の繊維状ゾノトライトの水分が1重量%以下になる程度まで行うことが好ましい。さらに、カップリング剤を使用した場合の熱処理は、前記100〜150℃および20〜30時間の加熱下で水分の乾燥に続いて行うことが好ましい。なお、ケーキ状の繊維状ゾノトライトをそのまま乾燥および熱処理し、粒径5mm程度に砕く方法で顆粒状に成形してもよいが、粉が生じやすく、かつ、嵩がやや大きく取扱いにやや難がある。
【0019】本発明では、ポリプロピレン(a)として特定の性状を有する結晶性のエチレン・プロピレンブロック共重合体を使用する。すなわち、エチレン含有量が0.5〜10重量%、好ましくは3〜8重量%であり、ポリプロピレン成分の沸騰n−ヘプタン不溶分が95重量%以上、好ましくは97重量%以上であり、そして、メルトフローインデックス(230℃で測定)が5〜70g/10分、好ましくは5〜30g/10分である結晶性エチレン・プロピレンブロック共重合体である。エチレン含有量が0.5重量%より少ないと、耐衝撃性が不足し、また、10重量%より多いと、剛性や耐熱性が不十分となるので好ましくない。また、ポリプロピレン成分の結晶性の度合を示す沸騰n−ヘプタン不溶分の量が95重量%未満であると、結晶性が低く、物性上不適当である。さらに、メルトフローインデックスが5g/10分より小さいと、成形性が低下し、実用上好ましくない。一方、その値が70g/10分より大きい場合は、物性が劣り、実用上に耐えない。なお、上述したような好ましくない現象の発生を確実に防止するためには、前記結晶性エチレン・プロピレンブロック共重合体の、エチレン含有量、ポリプロピレン成分の沸騰n−ヘプタン不溶分の量およびメルトフローインデックスは、上述の好ましい範囲のものであるべきである。
【0020】さらに本発明では、前記(a)成分としての結晶性エチレン・プロピレンブロック共重合体として、その常温におけるp−キシレン可溶成分が特定の性状をもつものを使用すると、その効果は一層向上する。すなわち、常温でのp−キシレン可溶成分に関し、その量が3〜20重量%、その固有粘度(デカリン溶液中、135℃で測定)が3dl/g以上、そして、そのエチレン含有量が18〜45重量%である場合、特に好適である。しかし、これらの限定は、本発明の実施上必ずしも不可欠なものではない。常温でのp−キシレン可溶成分は、結晶性エチレン・プロピレンブロック共重合体中の低結晶性成分を表わしており、その耐衝撃性を支配するものである。従って、その量が3重量%未満の場合、その固有粘度(デカリン溶液中、135℃で測定)が3dl/g未満の場合、そして、その化学組成を示すエチレン含有量が18重量%未満の場合、いずれも耐衝撃性の発現が不満足なものとなる。しかし、逆にその量が20重量%より多い場合やそのエチレン含有量が45重量%より多い場合は、剛性や耐熱性などを損ねてしまう。
【0021】また本発明は、オレフィン系熱可塑性エラストマーまたはスチレン系熱可塑性エラストマーから選ばれた熱可塑性エラストマー(b)を使用するものである。ここで述べるオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、エチレン・プロピレンラバー(EPR)、エチレン・ブチレンラバー(EBR)、エチレン・プロピレン・ブチレンラバー(EPBR)、エチレン・プロピレン・ジエンラバー(EPDM)などが具体的に挙げられる。また、スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン・ブタジエン・スチレンラバー(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレンラバー(SIS)、SBSの水素添加物であるスチレン・エチレン・ブチレン・スチレンラバー(SEBS)、SISの水素添加物であるスチレン・エチレン・プロピレン・スチレンラバー(SEPS)などが代表的なものである。本発明においては、(b)成分として、上記オレフィン系熱可塑性エラストマーおよびスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれた少なくとも1種以上の熱可塑性エラストマーが使用され、これらの中でも特に、EPR、EBR、SEBSおよびこれらの混合物が好ましく使用される。そして、EPRとしては、エチレン含有量が60〜85重量%であり、かつ、メルトフローインデックス(230℃で測定)が0.3〜10g/10分またはムーニー粘度(ML1+4 (100℃))が10〜80程度のもの、EBRとしては、ブテン−1含量が10〜25重量%であり、かつ、メルトフローインデックス(190℃で測定)が0.5〜10g/10分またはムーニー粘度(ML1+4(100℃))が5〜20程度のもの、そしてSEBSとしては、スチレン含量が10〜40重量%であり、メルトフローインデックス(200℃で測定)が0.2〜10g/10分程度のものがとりわけ好適に使用できる。
【0022】次に、本発明に使用するポリエチレン(c)、すなわち、結晶性エチレン系ポリマー(c)には、以下に示す結晶性ポリエチレン(エチレンホモポリマー)および結晶性のエチレン・α−オレフィン共重合体があり、これらからなる群より選ばれた少なくとも1種以上のポリマーが使用される。上記結晶性ポリエチレンとしては、いわゆる高密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンのいずれも使用できるが、特に、高密度ポリエチレンが好適である。中でも、メルトフローインデックス(190℃で測定)が5〜15g/10分、密度が0.94〜0.95g/cm3 程度のものが最適である。また、上記結晶性エチレン・α−オレフィン共重合体としては、エチレンと炭素数4以上のα−オレフィン、例えば、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1など、中でも特にブテン−1との共重合体を代表例として挙げることができる。これらの性状としては、α−オレフィン成分の含量:3〜25重量%、メルトフローインデックス(190℃で測定):1〜50g/10分、密度:0.90〜0.93g/cm3 程度のものが好ましい。なお、上記結晶性エチレン・ブテン−1共重合体には、直鎖状低密度ポリエチレン、極低密度ポリエチレンなどと呼ばれるものが含まれる。
【0023】本発明において使用される非繊維状充填材(e)とは、その形状が粒状あるいは板状のような充填材をいう。例えば、木粉、鉄、銅、銀、金、アルミニウムなどのフレークや粉末状の金属、カーボンブラック、グラファイト、活性炭、中空球などの炭素材料、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、マグネシア、カルシアなどの酸化物、タルク、クレー、マイカなどの珪酸塩、各種金属の水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、ホウ珪酸塩、アルミノ珪酸塩、チタン酸塩、塩基性硫酸塩、塩基性炭酸塩およびその他の塩基性塩など、ガラス中空球、ガラスフレークなどのガラス材料、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、ムライト、コージェライトなどのセラミックス、フライアッシュやミクロシリカなどの廃棄物などが挙げられる。本発明では、上記の非繊維状充填材を単独で使用してもよく、また、2種類以上を混合して使用することもできる。これらの中でも、タルク、炭酸カルシウム、マイカなどが最も代表的なものとして挙げられる。
【0024】さらに、前記のポリプロピレン(a)、熱可塑性エラストマー(b)、結晶性エチレン系ポリマー(c)、繊維状ゾノトライト(d)および非繊維状充填材(e)とからなる複合ポリプロピレン組成物の特性改善や製造改善のために添加される各種副資材、すなわち、熱安定剤、光安定剤、可塑剤、架橋剤、酸化防止剤、難燃剤、顔料、染料、滑剤、帯電防止剤、離型剤、香料などの使用も、本発明の繊維状ゾノトライト(d)や熱可塑性エラストマー(b)、結晶性エチレン系ポリマー(c)などの効果が阻害されない限り何ら差し支えない。
【0025】ところで、本発明においては、前記数式(I)で表わされる、前記のポリプロピレン(a)、熱可塑性エラストマー(b)、結晶性エチレン系ポリマー(c)、繊維状ゾノトライト(d)および非繊維状充填材(e)からなる複合ポリプロピレン組成物中における、繊維状ゾノトライト(d)および非繊維状充填材(e)の重量百分率の和(Wf)は、5重量%以上65重量%以下、好ましくは10重量%以上50重量%以下であることが必要である。該重量百分率の和(Wf)が5重量%よりも小さいと、得られる複合ポリプロピレン組成物の機械的強度、耐熱性、成形収縮率などが向上しないので好ましくない。また、65重量%より大きいと、得られる複合ポリプロピレン組成物の溶融流動性が低下し、成形が困難になるし、また、得られる成形品の外観が悪化するので好ましくない。なお、該重量百分率の和(Wf)が5重量%以上10重量%未満である場合や50重量%を超え65重量%未満である場合は、それぞれ、前述の好ましくない現象が発生することがある。
【0026】次に、本発明において、前記数式(II)で表わされる、前記繊維状ゾノトライト(d)と非繊維状充填材(e)との両成分中における、繊維状ゾノトライト(d)の重量百分率(Wd)は、5重量%以上100重量%以下、好ましくは10重量%以上100重量%以下であるべきである。従って、本発明では、前記非繊維状充填材(e)は必ずしも含まれていなくてもよい。前記重量百分率(Wd)が5重量%よりも小さいと、繊維状ゾノトライト(d)による改質効果が小さくなり好ましくない。なお、前記重量百分率(Wd)が5重量%以上10重量%未満である場合は、前述の好ましくない現象が発生することがある。
【0027】また、前記数式(III)で表わされる、前記ポリプロピレン(a)、熱可塑性エラストマー(b)および結晶性エチレン系ポリマー(c)の三成分中における、前記ポリプロピレン(a)の重量百分率(Wa)は、50重量%以上95重量%以下、好ましくは70重量%以上90重量%以下であることも必要である。この値(Wa)が50重量%より小さいと、ポリプロピレン(a)の有する本来の特長が損われるし、また、95重量%より大きいと、耐衝撃性改良効果が少ないので、いずれの場合も好ましくない。なお、前記値(Wa)が50重量%を超え70重量%未満である場合や90重量%を超え95重量%未満である場合は、それぞれ、上述の好ましくない現象が発生することがある。
【0028】さらに、本発明では、前記数式(IV)で表わされる、前記熱可塑性エラストマー(b)と結晶性エチレン系ポリマー(c)の両成分中における、結晶性エチレン系ポリマー(c)の重量百分率(Wc)が10重量%以上60重量%以下、好ましくは20重量%以上50重量%以下であることが必要である。この値(Wc)が10重量%より小さい場合には、弾性率が低下し、光沢不良やフローマークの発生など、成形品の外観も悪化するので好ましくない。また、60重量%より大きいと、結晶性ポリプロピレンとの相溶性が低下し、均一な複合ポリプロピレン組成物を得にくくなるため好ましくない。なお、前記値(Wc)が10重量%を超え20重量%未満である場合は、前記弾性率の低下や成形品の外観不良の傾向が見られ、前記値(Wc)が50重量%を超え60重量%未満の場合は、均一な複合ポリプロピレン組成物が得られないことがある。
【0029】上記本発明の複合ポリプロピレン組成物は、以下のようにして製造することができる。すなわち、ポリプロピレン(a)、熱可塑性エラストマー(b)、結晶性エチレン系ポリマー(c)、繊維状ゾノトライト(d)および非繊維状充填材(e)からなる複合ポリプロピレン組成物は、公知の方法で製造される。一般的には、前記所定量の前記のポリプロピレン(a)、熱可塑性エラストマー(b)、結晶性エチレン系ポリマー(c)、繊維状ゾノトライト(d)および非繊維状充填材(e)を、混練機を用いて溶融混練し、本発明の複合ポリプロピレン組成物とするのである。
【0030】この際、溶融混練温度は、170〜250℃、好ましくは190〜230℃であることが好ましい。溶融混練温度が170℃よりも低いと、混練機内において、前記ポリプロピレン(a)、熱可塑性エラストマー(b)や結晶性エチレン系ポリマー(c)、すなわち、樹脂の溶融粘度が高くなりすぎるとともに、樹脂の融点以下の温度となる部分が生じ、製造中に樹脂が固化するなどして、混練不良を起こす可能性がある。また、溶融混練温度が250℃より高いと、樹脂の熱分解や熱劣化が起こり、着色や物性の低下をもたらすので好ましくない。なお、溶融混練温度に係る上記の好ましくない現象の発生を確実に防止するためには、溶融混練温度を上述の好ましい範囲内にすべきことは言うまでもないことである。
【0031】また、前記混練機としては、例えば、一軸押出機や二軸押出機などの押出機、二軸連続ミキサー、バンバリーミキサー、スーパーミキサー、ミキシングロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフなどを挙げることができ、複合ポリプロピレン組成物は、一般にペレット状として得るのが通常である。これらの中でも、押出機が好ましく、二軸押出機が特に好ましい。
【0032】さらに、前記ポリプロピレン(a)、熱可塑性エラストマー(b)、結晶性エチレン系ポリマー(c)、繊維状ゾノトライト(d)および非繊維状充填材(e)の溶融混練の際のこれら成分の添加、混合順序については、任意に選択することができ、例えば、繊維状ゾノトライト(d)は、溶融混練に先立ち、ポリプロピレン(a)、熱可塑性エラストマー(b)、結晶性エチレン系ポリマー(c)および非繊維状充填材(e)と混合した後、押出機のホッパーに供給してもよく、また、押出機のホッパーには、ポリプロピレン(a)、熱可塑性エラストマー(b)、結晶性エチレン系ポリマー(c)および非繊維状充填材(e)のみを供給し、繊維状ゾノトライト(d)は、押出機の途中から供給してもよい。あるいはまた、押出機のホッパーには、ポリプロピレン(a)、熱可塑性エラストマー(b)および結晶性エチレン系ポリマー(c)のみを供給し、繊維状ゾノトライト(d)および非繊維状充填材(e)を押出機の途中から同時または別々に供給してもよい。なお、前記複合ポリプロピレン組成物を製造するにあたって、必要に応じて同時に前記各種副資材を添加することもできる。
【0033】そして、このようにして得られた本発明の複合ポリプロピレン組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、中空成形などの公知の種々の成形法により成形される。
【0034】
【実施例】以下に、実施例および比較例を述べて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例および比較例によって何ら限定を受けるものではない。なお、実施例および比較例において述べる結晶性エチレン・プロピレンブロック共重合体および成形品の物性評価方法については、下記の方法に従って行った。
【0035】(1)結晶性エチレン・プロピレンブロック共重合体中のエチレン含量プレスフィルムを用い、974cm-1と720cm-1の赤外吸収スペクトルの吸光度比より求めた。
【0036】(2)結晶性エチレン・プロピレンブロック共重合体のメルトフローインデックスASTM D1238に基づき、230℃で測定した。
【0037】(3)結晶性エチレン・プロピレンブロック共重合体のポリプロピレン成分の沸騰n−ヘプタン不溶分含量ソックスレー抽出器を使用して沸騰n−ヘプタンで6時間抽出し、不溶分を測定することによって求めた。
【0038】(4)曲げ特性(株)オリエンテック製テンシロンUTM−5Tを使用して測定した。所望の複合ポリプロピレン組成物を成形後、23℃、相対湿度50%(以下「50%RH」と略記)で48時間状態調節をした。そして、曲げ強度や曲げ弾性率の測定を、ASTM D790に従い、23℃、50%RHにおいて行った。
【0039】(5)アイゾット衝撃強度(株)東洋精機製アイゾット衝撃試験機を使用して測定した。そして、前記(4)項と同様の状態調節をした試験片を用いて、ASTM D256に従い、前記(4)項と同様の温度および湿度条件においてノッチ付アイゾット衝撃強度を求めた。
【0040】(6)荷重たわみ温度(株)東洋精機製荷重たわみ試験機を使用して測定した。前記(4)項と同様の状態調節をした試験片を用いて、ASTM D648に従い、応力0.45MPaの下での値を求めた。
【0041】(7)成形品外観縦100mm、横100mmおよび厚み3mmの平板を成形し、その外観を目視にて観察した。なお、表1中の外観観察の評価結果の表示の意味は、次の通りである。
良 :光沢があり、フローマークの発生が認められない。
不良:光沢がなく、フローマークの発生が認められる。
【0042】参考例1石灰質原料として生石灰(カルシード(株)製品、CaO純度:98%)430g、珪酸質原料として農業用珪石粉(ジャパンゼネラル(株)製品、ブレーン比表面積:7,000cm2 /g、SiO2 純度:97%)470g、および水道水18リットルを内容積30リットルのSUS316製攪拌機付オートクレーブに投入した。そして、回転数80rpmで攪拌しながら、保持温度220℃まで2℃/分の割合で昇温し、保持温度220℃で5時間保持して水熱合成反応を行った。その後、攪拌しながら10時間以上かけて放冷して繊維状ゾノトライトスラリーを得た。なお、このスラリーのX線回折を測定したところ、ゾノトライトのみが同定された。
【0043】続いて、この繊維状ゾノトライトスラリー920g(固形分基準)に水道水約18リットルおよび非イオン系の界面活性剤(ポリオキシエチレンオクタデシルアミン、日本油脂(株)製品、商品名:ナイミーン204)46g(繊維状ゾノトライト固形分に対して5重量%)を加え、ホモジナイザーで分散しながら表面処理した。このスラリーをヌッチェにて脱水してケーキ状にした後、造粒機によりφ3mmの径に成形し、約100℃で乾燥することにより、表面処理した顆粒状の繊維状ゾノトライトを得た。この顆粒状の繊維状ゾノトライトについて、窒素吸着によるBET比表面積の測定ならびに走査型電子顕微鏡写真による平均繊維長および平均繊維径の測定を行ったところ、それぞれ、39m2 /g、3μmおよび0.2μm(従って、アスペクト比:15)であった。そこで得られた繊維状ゾノトライトを、以下、『繊維状ゾノトライトA』と表わす。
【0044】参考例2水熱合成反応の保持温度を、220℃に変えて260℃としたこと以外は、参考例1と全く同様にして顆粒状の繊維状ゾノトライトの製造を行い、BET比表面積:16m2 /g、平均繊維長:10μmおよび平均繊維径:0.2μm(従って、アスペクト比:50)の繊維状ゾノトライトを得た。以下、これを『繊維状ゾノトライトB』と表わす。
【0045】参考例3表面処理剤としての非イオン系界面活性剤を添加しなかったこと以外は、参考例1と全く同様にして顆粒状の繊維状ゾノトライトの製造を行い、BET比表面積:39m2 /g、平均繊維長:3μmおよび平均繊維径:0.2μm(従って、アスペクト比:15)の表面未処理の繊維状ゾノトライトを得た。以下、これを『繊維状ゾノトライトC』と表わす。
【0046】参考例4参考例1と全く同様の方法によって得た脱水ケーキを乾燥した後、造粒機による成形を行わずに乾燥し、さらに、衝撃ミルで解砕して、BET比表面積:39m2 /g、平均繊維長:3μmおよび平均繊維径:0.2μm(従って、アスペクト比:15)の未顆粒状の繊維状ゾノトライトを得た。以下、これを『繊維状ゾノトライトD』と表わす。
【0047】参考例5非イオン系の界面活性剤に代えてγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBE903)を使用したこと以外は、参考例1と全く同様にしてケーキ状の繊維状ゾノトライトを造粒した後、約100℃で乾燥し、さらに120℃で20分間熱処理を行うことにより、表面処理した顆粒状の繊維状ゾノトライトを得た。得られたものは、BET比表面積:39m2 /g、平均繊維長:3μmおよび平均繊維径:0.2μm(従って、アスペクト比:15)であった。以下、これを、『繊維状ゾノトライトE』と表わす。
【0048】実施例1シリンダー径:φ30mmの同方向回転二軸スクリュー押出機(池貝鉄工(株)製、型式:PCM30)を使用し、230℃(ただし、ノズル部の温度とし、以下において同じ)において、結晶性エチレン・プロピレンブロック共重合体(エチレン含量:6.8重量%、ポリプロピレン成分の沸騰n−ヘプタン不溶分:97.1重量%、メルトフローインデックス:9g/10分)と、エチレン・プロピレンラバー(日本合成ゴム(株)製、商品名:JSR EP07P)と、高密度ポリエチレン(昭和電工(株)製、商品名:ショーレックス S5050)と、参考例1で得られた繊維状ゾノトライトAとを溶融混練し、前記結晶性エチレン・プロピレンブロック共重合体が70重量%、前記エチレン・プロピレンラバーが5重量%、前記高密度ポリエチレンが5重量%および前記繊維状ゾノトライトAが20重量%からなるペレットを作製した。ただし、スクリューフィーダーを用いて、押出機の第1ベント口より繊維状ゾノトライトAを供給し、そして第2ベント口から脱気操作を行った。次に、射出成形機(日本製鋼所(株)製、型式:N100)を使用して、シリンダー温度(ただし、ノズルヘッド部の温度とし、以下において同じ)230℃および金型温度80℃において上記ペレットを射出成形し、物性試験片と平板を作製した。得られた材料の物性試験の結果を表1に示す。
【0049】実施例2繊維状ゾノトライトAに代えて、繊維状ゾノトライトA:35重量%とタルク(林化成(株)製、商品名:タルカンパウダー PKC、平均粒径:11μm):65重量%の混合物を使用したこと、従って、得られるペレット中の結晶性エチレン・プロピレンブロック共重合体、エチレン・プロピレンラバーおよび高密度ポリエチレン以外の成分の重量百分率を、繊維状ゾノトライトA:20重量%から繊維状ゾノトライトA:7重量%およびタルク:13重量%に変えたこと以外は、実施例1と全く同様の操作を行った。得られた材料の物性試験結果を表1に示す。
【0050】実施例3および比較例1〜3繊維状ゾノトライトAに代えて、それぞれ、参考例5で得られた繊維状ゾノトライトE(実施例3の場合)、参考例2で得られた繊維状ゾノトライトB(比較例1の場合)、参考例3で得られた繊維状ゾノトライトC(比較例2の場合)および参考例4で得られた繊維状ゾノトライトD(比較例3の場合)を使用したこと以外は、実施例2と全く同様の操作を行った。実施例3および比較例1〜3において、得られた材料の物性試験結果をそれぞれ表1に示す。
【0051】比較例4および5結晶性エチレン・プロピレンブロック共重合体に代えて、それぞれ、結晶性エチレン・プロピレンブロック共重合体(エチレン含量:7.0重量%、ポリプロピレン成分の沸騰n−ヘプタン不溶分:97.7重量%、メルトフローインデックス:3g/10分)(比較例4の場合)および結晶性エチレン・プロピレンブロック共重合体(エチレン含量:6.8重量%、ポリプロピレン成分の沸騰n−ヘプタン不溶分:92.2重量%、メルトフローインデックス:9g/10分)(比較例5の場合)を使用したこと以外は、実施例2と全く同様の操作を行った。比較例4および5において、得られた材料の物性試験結果をそれぞれ表1に示す。
【0052】
【表1】


【0053】実施例4および5エチレン・プロピレンラバーに代えて、それぞれ、エチレン・ブチレンラバー(三井石油化学工業(株)製、商品名:タフマー A−1085)(実施例4の場合)およびスチレン・エチレン・ブチレン・スチレンラバー(シェル化学(株)製、商品名:クレイトン G1657)(実施例5の場合)を使用したこと以外は、実施例2と全く同様の操作を行った。実施例4および5において、得られた材料の物性試験結果をそれぞれ表2に示す。
【0054】実施例6高密度ポリエチレンに代えて、結晶性エチレン・ブテン−1共重合体(宇部興産(株)製、商品名:UBEポリエチレン Z521)を使用したこと以外は、実施例2と全く同様の操作を行った。得られた材料の物性試験の結果を表2に示す。
【0055】実施例7〜9結晶性エチレン・プロピレンブロック共重合体、エチレン・プロピレンラバー、ポリエチレン、繊維状ゾノトライトAおよびタルクの5成分の使用量を変えて、得られるペレット中のこれら5成分の重量百分率をそれぞれ表2に示すような値に変えたこと以外は、実施例2と全く同様の操作を行った。実施例7〜9において、得られた材料の物性試験結果をそれぞれ表2に示す。
【0056】
【表2】


【0057】比較例6〜10結晶性エチレン・プロピレンブロック共重合体、エチレン・プロピレンラバー、ポリエチレン、繊維状ゾノトライトAおよびタルクの5成分の使用量を変えて、得られるペレット中のこれら5成分の重量百分率をそれぞれ表3に示すような値に変えたこと以外は、実施例2と全く同様の操作を行った。比較例6〜10において、得られた材料の物性試験結果をそれぞれ表3に示す。
【0058】
【表3】


【0059】
【発明の効果】以上の実施例および比較例からもよくわかるように、本発明は、特定の性状を有する結晶性のエチレン・プロピレンブロック共重合体と繊維状ゾノトライトの他、熱可塑性エラストマーおよび結晶性エチレン系ポリマーを使用することによって、あるいは、これら成分に加えて、さらに非繊維状充填材を使用することによって、強度や剛性などの機械的特性、耐熱性および耐衝撃性のバランスに優れ、成形品外観の良好な複合ポリプロピレン組成物を提供するものである。従って、本発明によって得られる複合ポリプロピレン組成物は、自動車、電気・電子、精密機械などの分野の材料として使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (a)エチレン含量が0.5〜10重量%、メルトフローインデックス(230℃で測定)が5〜70g/10分、および、ポリプロピレン成分の沸騰n−ヘプタン不溶分が95重量%以上の結晶性エチレン・プロピレンブロック共重合体と、(b)オレフィン系熱可塑性エラストマーまたはスチレン系熱可塑性エラストマーから選ばれた熱可塑性エラストマーと、(c)ポリエチレンまたは結晶性エチレン・α−オレフィン共重合体から選ばれた結晶性エチレン系ポリマーと、(d)(1)窒素吸着によるBET比表面積が21m2 /g以上であり、(2)界面活性剤および/またはカップリング剤で表面処理され、かつ、(3)顆粒状に造粒されている繊維状ゾノトライトと、(e)非繊維状充填材からなる複合ポリプロピレン組成物であって、下記数式(I)
【数1】


で表わされる、前記(a)成分、前記(b)成分、前記(c)成分、前記(d)成分および前記(e)成分からなる全組成物中における前記(d)成分の重量百分率と前記(e)成分の重量百分率の和(Wf)が5≦Wf≦65の範囲であり、下記数式(II)
【数2】


で表わされる、前記(d)成分の重量と前記(e)成分の重量の和における前記(d)成分の重量百分率(Wd)が5≦Wd≦100の範囲であり、さらに、下記数式(III)
【数3】


で表わされる、前記(a)成分、前記(b)成分および前記(c)成分の重量の和における前記(a)成分の重量百分率(Wa)が50≦Wa≦95の範囲であり、さらにはまた、下記数式(IV)
【数4】


で表わされる、前記(b)成分の重量と前記(c)成分の重量の和における前記(c)成分の重量百分率(Wc)が10≦Wc≦60の範囲であることを特徴とする複合ポリプロピレン組成物。
【請求項2】 繊維状ゾノトライト(d)が、(1)0.1μm≦D<0.5μm、(2)1μm≦L<5μmおよび(3)10≦L/D<20(ただし、DおよびLは、それぞれ繊維状ゾノトライト(d)の平均繊維径および平均繊維長を示す。)を同時に満たすことを特徴とする請求項1に記載の複合ポリプロピレン組成物。
【請求項3】 (a)成分が常温でのp−キシレン可溶成分量が3〜20重量%、該p−キシレン可溶成分の固有粘度(デカリン溶液中、135℃で測定)が3dl/g以上、そして、該p−キシレン可溶成分中のエチレン含量が18〜45重量%の結晶性エチレン・プロピレンブロック共重合体である請求項1または2に記載の複合ポリプロピレン組成物。
【請求項4】 (b)成分がエチレン・プロピレンラバー、エチレン・ブチレンラバーおよびスチレン・エチレン・ブチレン・スチレンラバーからなる群より選ばれた少なくとも1種以上の熱可塑性エラストマーである請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合ポリプロピレン組成物。
【請求項5】 (c)成分が高密度ポリエチレンおよび結晶性エチレン・ブテン−1共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の結晶性エチレン系ポリマーである請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合ポリプロピレン組成物。
【請求項6】 非繊維状充填材(e)がタルクである請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合ポリプロピレン組成物。