説明

複合基材及びその複合基材の製造方法

【課題】高い抗菌性が長期に渡って維持できる複合基材を提供すること、及びこの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の複合基材は、基材と、リン酸カルシウム中のカルシウムイオンの一部が抗菌性金属で置換された置換型リン酸カルシウムの微粒子と、これらを接合する、カップリング剤の加水分解物及び/又はその縮合物と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合基材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機系抗菌剤は、耐熱性および安全性が高く半永久的な効果が期待できることから、合成有機系抗菌剤の使用が困難であったプラスチック、繊維、セラミックスなどに多く使用されるようになり急速な市場の拡大を示している。
【0003】
近年、集団食中毒、院内感染など原因で社会全体の衛生志向が増大するにつれて、これら無機系抗菌剤を用いた多種多様の抗菌製品が実用化されており、繊維用途においても快適性機能の一つとして抗菌性を付与した製品に対する要望が高まっている。工業的にみてもこれら抗菌性物質を付着・含有させたフィルタ、フィルムなどという需要も高まるばかりである。
【0004】
特許文献1には、銀イオン等の抗菌性金属イオンを担持したゼオライト及び樹脂を含有する抗菌性樹脂組成物が開示されている。また特許文献2〜6には、銀、亜鉛、銅イオン等の抗菌性金属イオンを担持したリン酸塩粒子又はハイドロキシアパタイト粒子、或いはこのような粒子を含有する樹脂組成物などが開示されている。これらの抗菌物質は、ゼオライトやハイドロキシアパタイトを担体として用いているため、優れた吸着性と抗菌性とを併せ持つ。しかしながら、これら粒子を高分子(基材、繊維)中に錬り込んだ場合、外部への露出面が極少量となるため、粒子の持つ優れた抗菌性が活かされていない。またこれらの粒子の粒子径は、数μm〜数十μmであり、基材の物性を大きく劣化させてしまうことや粒子が剥離してしまうことも大きな課題となっている。
【0005】
一方、特許文献7では、繊維の表面に水酸アパタイト粒子の核を形成し、その後、水酸アパタイトを成長させて繊維の表面に水酸アパタイトからなる皮膜を形成する。次いで、水酸アパタイト皮膜付き繊維を、抗菌性金属の塩を溶解した水溶液中に浸漬する抗菌性繊維の製造方法が記載されている。この方法で製造した抗菌性繊維は、繊維の表面に、水酸アパタイトからなる皮膜が形成され、この皮膜に抗菌性金属、そのイオン又は塩が担持される。このため、これらの金属、そのイオン又は塩のほとんどに、抗菌剤としての機能を持たせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭63−54013号公報
【特許文献2】特開平2−96508号公報
【特許文献3】特開平2−180270号公報
【特許文献4】特開平3−43457号公報
【特許文献5】特開平3−38504号公報
【特許文献6】特開平3−83905号公報
【特許文献7】特許第3777387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献7に記載の抗菌性繊維の製造方法では、水酸アパタイトを繊維(基材)に物理的又は静電的に固着させているため、水酸アパタイトと基材間の接着強度が弱く、実使用での抗菌効果の長期耐久性が不十分である。そこで接着強度を高めるために、接着剤で水酸アパタイトと基材とを接合することも考えられるが、この場合、接着剤が水酸アパタイトの表面を覆ってしまい、抗菌性や吸着能が低下する恐れがある。また水中でこのような繊維を使用した場合は、接着剤が溶出する恐れもある。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題を解決するものであり、高い抗菌性が長期に渡って維持できる複合基材を提供すること、及びこの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の複合基材は、基材と、リン酸カルシウム中のカルシウムの一部が抗菌性金属で置換された置換型リン酸カルシウムの微粒子と、これらを接合する、カップリング剤の加水分解物及び/又はその縮合物と、を備える。
【0010】
本発明の複合基材は、このような構成をとることにより、基材上に抗菌性金属で置換された置換型リン酸カルシウムの微粒子が均一に分布するため、高い抗菌性を発現させることができる。また、カップリング剤の加水分解物及び/又はその縮合物によって、基材と置換型リン酸カルシウム微粒子とが接合しているため、両者間の接着力が優れており、抗菌性が長期に渡って維持できる。
【0011】
また、特許文献7に記載の製造方法による抗菌性繊維では、繊維上に10〜25μm厚の水酸アパタイト皮膜が形成されているが、このような皮膜は、基材(織布)を曲げた際に、皮膜の剥離やひび割れが生じやすい。一方、上述した複合基材は、基材上にリン酸カルシウム微粒子が点在している点に加え、基材上にカップリング剤の加水分解物及び/又はその縮合物の層が数十〜数百nm程度の薄膜として存在するため、基材本来が有する柔軟性や弾力性が大きく損なわれることがない。このため、フィルタ、マスク、建材、テーブルクロス、カーテン及び衣類などの抗菌加工製品全般において広く使用することができる。
【0012】
カップリング剤の加水分解物は、アルコキシシランの加水分解物であることが好ましい。アルコキシシランからなるカップリング剤は、加水分解・縮合することで基材と置換型リン酸カルシウム微粒子とを強固に接合するため、両者間の接着強度を確実に高めることができる。
【0013】
本発明におけるリン酸カルシウム微粒子は、リン酸カルシウム中のカルシウムイオンのうち0.01〜30質量%が、銅、銀、亜鉛、鉄、鉛、ニッケル、コバルト、パラジウム及び白金からなる群より選ばれる一以上の金属イオンで置換されていることが好ましい。この場合、リン酸カルシウム内のカルシウムイオンの一部が抗菌性を有する金属イオンで置換されているため、抗菌材料として有効に作用する。
【0014】
アルコキシシランの加水分解物は、一般式(1)又は(2)で表わされるアルコキシシランをアルコール溶媒中で加水分解したものであることが好ましい。
Si(OR) ・・・(1)
R’−Si(OR)4−n ・・・(2)
[式中、Rはアルキル基、R’は一価の有機基、nは1〜3の整数、をそれぞれ示す。]
【0015】
微粒子と、カップリング剤の加水分解物及び/又はその縮合物との合計量は、基材に対して0.1〜10質量%であることが好ましい。当該合計量が上記範囲内であると、基材の柔軟性や弾力性などへの影響を抑えられる。
【0016】
リン酸カルシウムは、ヒドロキシアパタイトであることが好ましい。この場合、ヒドロキシアパタイトの持つ吸着性によりウィルスや菌などを捕集できるため、複合基材の抗菌性を更に高めることができる。
【0017】
基材としては、天然繊維、合成繊維、及びガラス繊維のいずれか、或いは、高分子フィルム又はガラス基材が例示できる。
【0018】
複合基材の製造方法は、カップリング剤を塗布した基材のカップリング剤塗布面に、リン酸カルシウム中のカルシウムの一部が抗菌性金属で置換された置換型リン酸カルシウムの微粒子を配置させる微粒子配置工程を含む。
【0019】
特許文献7に記載の抗菌性繊維の製造方法では、繊維(基材)の表面に水酸アパタイトの核を形成するのに8日を要し、更に繊維の表面において水酸アパタイトを析出、成長させて皮膜を形成するのに5〜10日を要している。一方、上記製造方法では、特許文献7に記載の製造方法のように、長期間かかる工程が不要であり、複合基板の製造期間を短縮化できる。
【0020】
微粒子配置工程は、カップリング剤を塗布した基材を、カルシウムイオン、リン酸イオン及び抗菌性金属イオンを含有するpH7以上の水溶液に浸漬する工程である。
【0021】
微粒子配置工程は、カップリング剤を塗布した基材を、カルシウムイオン及びリン酸イオンを含有するpH7以上の水溶液に浸漬して、表面にリン酸カルシウム微粒子を配置する工程と、リン酸カルシウム微粒子が配置された基材を、硝酸塩、亜硝酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩及び硫酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種以上の塩の水溶液に浸漬させてリン酸カルシウム微粒子中のカルシウムイオンの一部を金属イオンで置換する工程と、を含む。
【0022】
カップリング剤は、アルコキシシランであることが好ましい。
【0023】
複合基材の製造方法は、微粒子が配置された基材を加熱させる加熱工程を更に含む。
【0024】
微粒子配置工程及び/又は加熱工程において、一般式(1)又は(2)で表わされるカップリング剤の加水分解物が形成されることが好ましい。
Si(OR) ・・・(1)
R’−Si(OR)4−n ・・・(2)
[式中、Rはアルキル基、R’は一価の有機基、nは1〜3の整数、をそれぞれ示す。]
【0025】
加熱工程は、リン酸カルシウム微粒子が配置された基材を20〜200℃で加熱する工程とすることが好ましい。
【0026】
本発明はまた、上述した複合基材からなる、抗菌性部材、抗菌性フィルタ、マスク、壁紙、カーテン又はテーブルクロスを提供するものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、高い抗菌性が長期に渡って維持できる複合基材、及びこの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態に係る複合基材の構成の模式図である。
【図2】実施例1で得られた複合基材のSEM像(倍率2000倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0030】
複合基材は、基材と、リン酸カルシウム中のカルシウムイオンの一部が抗菌性金属のイオンで置換された置換型リン酸カルシウムの微粒子と、これらを接合する、カップリング剤の加水分解物及び/又はその縮合物と、を備える。図1に、基材が有機基材であり、カップリング剤がシランカップリグ剤であり、置換型リン酸カルシウム微粒子が、ヒドロキシアパタイト中のカルシウムの一部が抗菌性金属であるAgで置換された置換型リン酸カルシウムの微粒子である場合の複合基材の構成の模式図を示す。図1に示すように、複合基材は、カップリング剤の加水分解物及び/又はその縮合物によって、基材と置換型リン酸カルシウム微粒子とが接合している。このため、両者間の接着力が優れており、抗菌性が長期に渡って維持できる。以下、それぞれの構成要素を順に記載する。
【0031】
(基材)
基材は、織布、不織布、編物、フェルト(羊毛などの獣毛に蒸気・熱・圧力を加えて縮絨させ、布状にしたもの)フィルム、シート、板、また曲面を有する形状のものでも何ら問題ない。基材形状の一部もしくは全体が、筒状、網目状、糸状、チューブ状、発泡体などであっても浸漬して溶液が入り込むことができるものであれば後述するアルコキシシランの加水分解物及び/又はその縮合物がその表面に形成されるので何ら問題はなく、用途に応じて適宜選択すればよい。また、基材表面がナノメートルスケールやサブミクロンスケールの凹凸を有していても、その構造に追従してアルコキシシランの加水分解物が薄膜を形成するため何ら問題ない。
【0032】
(織布)
織布又は不織布としては、平均繊維径1〜100μm、好ましくは、1〜60μmの繊維からなるものであれば、特に限定はなく、天然繊維、合繊繊維、これらの混合繊維からなる任意の織布・不織布を用いることができる。また、繊維は、各種天然繊維及び合成繊維のいずれであってもよい。天然繊維としては、具体的に綿、麻、竹等の植物繊維が例示できる。動物繊維としては、ウール、絹(シルク)天蚕糸、モヘヤ、カシミア等が例示できる。またここで挙げた以外の繊維を用いても何ら問題はない。
【0033】
織布及び不織布の厚みは、特に限定されるものではなく、用途に応じて異なるが0.001〜10mm程度が好ましく、0.01〜5mm程度とすることがより好ましい。また、織布又は不織布を基材として用いた場合の目付(織物や編地の単位当たりの重量)も特に限定されるものではないが、2〜100g/mmが好ましく、10〜70g/mmがより好ましい。
【0034】
(合成繊維・織布)
基材として、高分子基材を用いることができる。高分子基材としては、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリアミン、ポリウレア、ポリイミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等の合成高分子;セルロース、アミロース、アミロペクチン、コラーゲン等のポリペプチド、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸等のムコ多糖類等、シリコーン樹脂(シリコーンゴムであっても良い)、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シルクフィブロイン等の天然高分子等が挙げられる。上記例示の高分子基材のうち、長期安定性、強度および柔軟性等の特性が優れている点で、ポリウレタン、シルクフィブロイン、シリコーン樹脂などが好適に使用できる。材料価格の面では、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどが安価であり好適に使用できる。
【0035】
(アルコキシシラン)
複合基材は、基材と、リン酸カルシウム中のカルシウムイオンの一部が抗菌性金属で置換された置換型リン酸カルシウムの微粒子と、これらを接合する、カップリング剤の加水分解物及び/又はその縮合物と、を備える。ここで、カップリング剤の加水分解物としては、アルコキシシランの加水分解物であることが好ましい。アルコキシシランの加水分解物は、一般式(1)又は(2)で表されるアルコキシシランをアルコール溶媒中で加水分解して調製したものが好ましい。
Si(OR) ・・・(1)
R’n-Si(OR)4−n ・・・(2)
[式中、Rはアルキル基、R’は一価の有機基、nは1〜3の整数、をそれぞれ示す。]
【0036】
上記アルコキシシランは、有機溶媒、水、及び酸・アルカリ触媒を使用して加水分解を行ってもよい。得られた生成物は、縮合物、未反応物などを含む混合物であっても構わない。具体的なアルコキシシランの例としては、4官能アルコキシシランとしてテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、3官能のアルコキシシランとしてはメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドプロポキシトリメトキシシラン、グリシロプロピルメチルジエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2官能のアルコキシシランとしてはジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどが挙げられる。これらのアルコキシシランは、それぞれ単独で又は二種類以上組み合わせて使用することができる。アルコキシシランは、有機材料と化学結合する役割を持つ。したがって、基材との結合性は、アルコキシシランにおける官能基に依存するため、反応性官能基を有するものを用いることで基材との結合性をより高めることも可能である。具体的な官能基としては、例えばビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アミノ基、クロロプロピル基、アクリロキシ基、スルフィド基、イソシアネート来、フェニル基、ベンジル基、メルカプト基などが挙げられる。これらの官能基を有するアルコキシシランを用いることで基材と後述する置換型リン酸カルシウムの微粒子の接着力を調整することができる。
【0037】
アルコキシシランの縮合物としては、コルコート株式会社製のエチルシリケート28、エチルシリケート40、エチルシリケート48、メチルシリケート51、エチルシリケート53A、n−プロピルシリケート、n−ブチルシリケート等の4官能アルコキシシランの縮合物を用いることもでき、2種類以上のものを併用してもよい。これらのアルコキシシランの縮合物(オリゴマー)は、固形分量が高く反応性にも優れているため、親水性の置換型リン酸カルシウムの微粒子を強固に固定でき、かつ比較的安価である。
【0038】
(アルコキシシランの加水分解物・縮合物)
基材と置換型リン酸カルシウムの微粒子を接合するアルコキシシランの加水分解物及び/又はその縮合物は、(1)アルコキシシランの未反応物と、(2)アルコキシシラン中の−SiORが−SiOHに変化したものと、(3)アルコキシシランの重合体と、(4)アルコキシシランの加水分解物をリン酸カルシウムに接触した後に、分子内に含まれるシラノール基(−Si−OH)が、リン酸カルシウム表面の水酸基(−OH)と脱水縮合して、−Si−O−結合に変化した状態のものを含むものであってもよい。
【0039】
アルコキシシランの加水分解は、公知の方法を用いることができる(特開平6-52796号参照)。具体的な例を挙げると、テトラメトキシシランのモル数の0.01倍〜10倍程度の水と酸触媒又は塩基触媒を使用して、室温〜60℃(好ましくは室温〜30℃)の温度で1時間以上(好ましくは2〜5時間)攪拌下、加水分解反応を行なう。均質な薄膜を作製するために、更に溶媒で希釈してシラン濃度として30質量%以下、さらに好ましくは1〜10質量%の固形分濃度の溶液を調製することが適当である。
【0040】
加水分解反応の際に用いる触媒は、酸触媒、塩基触媒のいずれでもよい。具体的には、酸触媒として、塩酸、リン酸、硝酸、酢酸、塩基触媒としてアンモニア水などが好適に使用できる。これらの触媒の中でも、置換型リン酸カルシウム中の不純物を低減したい場合には、リン酸を用いることが好ましく、緻密な皮膜を作製する際にはアンモニア水を用いることが好ましい。
【0041】
希釈溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、及びこれらの混合溶媒などか挙げられる。これらの有機溶媒を前記加水分解後の溶液(以下、加水分解液)に加えて更に希釈し、0.1質量%以上5質量%未満の固形分濃度として使用することが好ましい。例えば、アルコール溶媒を使用した際には、炭素数の多いアルコールを用いるほど加水分解液の保存安定性が向上する。
【0042】
(置換型リン酸カルシウム)
置換型リン酸カルシウムは、リン酸カルシウム中のカルシウムイオンの一部を、後述する抗菌性を有する抗菌性金属イオンで置換した化合物であって、優れた抗菌性を示す。この置換型リン酸カルシウムの微粒子は、アルコキシシランの加水分解物及び/又はその縮合物により強固に基材と接合されているため、基材から剥離することを抑制できる。その結果、長期に渡り優れた抗菌特性が持続する。この微粒子の付着量は、基材に対して0.01〜10質量%であることが好ましい。当該付着量が多すぎると剥離生じやすく、また基材の柔軟性や弾力性にも影響を与える。
【0043】
置換型リン酸カルシウムの微粒子と、カップリング剤の加水分解物及び/又はその縮合物との合計量は、基材に対して0.1〜10質量%であることが好ましい。当該合計量が上記範囲内であると、基材の柔軟性や弾力性などへの影響を抑えられるまた、当該合計量は、3.0〜7.0質量%であることがより好ましい。

【0044】
置換型リン酸カルシウムの微粒子は、粒子状であることがより好ましい。具体的な粒子径(平均粒子径)としては、超音波照射後の基材表面への接着性、及び抗菌性をより向上できる観点から、0.001μm〜5μmが好ましく、0.01〜0.5μmがより好ましく、0.03〜0.3μmが特に好ましい。基材と接合した微粒子の粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)などを用いて直接観察することで測定することができる。本実施形態での粒子径とは、長軸(楕円の直交する二つの軸のうち、長いほうの軸)のことを指すものとする。
【0045】
リン酸カルシウムとしては、具体的には、第一リン酸カルシウム{Ca(HPO・HO}、第二リン酸カルシウム(CaHPO)、第二リン酸カルシウム(無水){CaHPO・2HO}、第三リン酸カルシウム{3Ca(PO・Ca(OH)}、リン酸三カルシウム{Ca(PO}、α型リン酸三カルシウム{ α−Ca(PO}、β型リン酸三カルシウム{β‐Ca(PO}、ヒドロキシアパタイト{ Ca10(PO(OH)}、リン酸四カルシウム{Ca(POO}、ピロリン酸カルシウム(Ca)、ピロリン二水素酸カルシウム(CaH)などが挙げられる。これらの中でもヒドロキシアパタイトが好ましい。ヒドロキシアパタイトは、担体としての役割だけでなく優れた吸着特性も示す。また生体親和性を示す材料であり、環境低負荷という点も好ましい。また構造内にOHを有することでアルコキシシランとの反応性にも優れる。
【0046】
ヒドロキシアパタイトは、リン酸カルシウムの一種であり、化学式:Ca10(PO(OH)で表される。ヒドロキシアパタイトとして、構造内の一部が他の元素に置き換えられている化合物を用いることができる。ヒドロキシアパタイトの化学量論的な組成式は、Ca10(PO(OH)であるが、Ca不足ヒドロキシアパタイトのように非化学量論的な組成であってもよい。すなわち、本実施形態においては、Ca不足ヒドロキシアパタイトのように非化学量論的なものもヒドロキシアパタイトも含めて考える。具体的には、理論上ヒドロキシアパタイトは、Ca/P=1.66というモル比で形成されるが、Ca/Pが1.4〜1.8であってもよい。
【0047】
ヒドロキシアパタイトは、特性を損なわない範囲で構造内のイオンの一部を他の元素と置換することができる。ヒドロキシアパタイトを代表とするアパタイト化合物は、下記一般式(3)で示される組成物であり、M、ZO、Xを置換することで様々な化合物の組み合わせがある。
10(ZO (3)
【0048】
一般式(3)において、陽イオンを与える原子M(カルシウムイオンの場合はCa2+)の位置には、カルシウムに置換しうる金属のイオンが入り、具体的にはナトリウム、マグネシウム、カリウム、アルミニウム、スカンジウム、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、白金、金、水銀、タリウム、鉛、ビスマス等のイオンを挙げることができる。またZOの位置には、PO3−に置換しうる酸化物イオンが入り、CO2−、CrO3−、AsO3−、VO3−、UO3−、SO2−、SiO4−、GeO4−等が入る。Xの位置には、OHに置換しうるマイナスイオンが入り、ハロゲン化物イオン(F、Cl、Br、I)、BO2−、CO2−、O2−等が入る。なお、M、ZO、Xに置換されるイオンは、1種でも2種以上であってもよい。
【0049】
ここで上記Xは、OH及びFであることが好ましい。OHである場合は、親水性が増すことでアルコキシシランとの反応性に優れる点で好ましく、Fである場合は、強度に優れる点や酸性雰囲気下においても安定に存在にできる点で好ましい。
【0050】
置換型リン酸カルシウムは、リン酸カルシウム中のカルシウムの一部が抗菌性金属で置換さているため、優れた抗菌性を発現する。リン酸カルシウム中のカルシウムの抗菌性金属への置換度(置換する抗菌性金属の質量/カルシウムの質量)は、0.01〜30質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、0.5〜10重量%が更に好ましい。ただし、合成時に仕込んだ全ての金属イオンを完全にヒドロキシアパタイト構造内に置換することは技術的にも困難であり、仕込んだ金属イオンの一部が、金属塩又は金属単体として置換型リン酸カルシウムの微粒子の表面に付着していても構わない。
【0051】
(抗菌性金属)
抗菌性金属としては、銅、銀、亜鉛、鉄、鉛、ニッケル、コバルト、パラジウムおよび白金などが挙げられ、これらは1種単独で使用しても、2種以上組み合わせて使用してもよい。これらの中でも基材における抗菌・抗ウィルス性を向上させるという点から、銅、銀、亜鉛が好ましく、銀がより好ましい。これらの抗菌性金属を含むリン酸カルシウムを用いることで、ウィルスや様々な菌類を死滅させる効果、および硫化水素やアンモニアを吸着・分解する防臭効果を発現する。一般に抗菌性金属は、単独で使用されることは稀であり、リン酸カルシウムなどのような担体・抗菌性向上助剤と組み合わせることにより、活性・持続性の向上、徐放性の付与、変色防止、耐塩素性向上などが可能となる。
【0052】
抗菌性金属は、上述したように、リン酸カルシウム中のカルシウムのうち0.01〜30質量%が抗菌性金属で置換されていることが好ましく、0.1〜10質量%が置換されていることがより好ましく、0.5〜10重量%が置換されていることが更に好ましい。置換した抗菌性金属が0.01質量%未満では、得られた繊維の抗菌性が十分でなく、30重量%を越えると得られた繊維の抗菌性が飽和するので経済的ではない。また、置換型リン酸カルシウムは、従来公知の方法、例えばイオン交換法によって銀イオンを含有させればよく、必要に応じて加熱処理を行ってもよい。この加熱により、銀イオンとして溶出しにくくなる。また仕込んだ金属(イオン)の一部が、硝酸塩、亜硝酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、塩化物などのような塩の形でリン酸カルシウムの表面に金属塩として付着していても構わない。
【0053】
続いて、複合基材の製造方法について説明する。複合基材の製造方法は、カップリング剤を塗布した基材のカップリング剤塗布面に、リン酸カルシウム中のカルシウムの一部が抗菌性金属で置換された置換型リン酸カルシウムの微粒子を配置させる微粒子配置工程を含む。微粒子配置工程のほかに、微粒子が配置された基材を加熱させる加熱工程を更に含むことが好ましく、カップリング剤としては、アルコキシシランであることが好ましい。
【0054】
また、微粒子配置工程及び/又は加熱工程において、一般式(1)又は(2)で表わされるアルコキシシランの加水分解物が形成されることが好ましい。
Si(OR) ・・・(1)
R’−Si(OR)4−n ・・・(2)
[式中、Rはアルキル基、R’は一価の有機基、nは1〜3の整数、をそれぞれ示す。]
【0055】
アルコキシシランの加水分解液及びその縮合物を基材に塗布する方法としては、スプレー法、ディップ法、ロールコート法、スピンコート法など方法が適用可能である。塗布した後に、20〜200℃のいずれかの温度で加熱することで、溶媒を蒸発させると同時に生成したシラノール基が、置換型リン酸カルシウムの微粒子と基材とを接合することで橋架け剤となり、両者間の接着力を付与する。
【0056】
リン酸カルシウム中のカルシウムイオンの一部を抗菌性金属イオンに置換して置換型リン酸カルシウムとする方法としては、リン酸カルシウムの合成時に行う手法と、予めリン酸カルシウムのみを基材上に形成させ、後からイオン交換により行う手法が挙げられる。前者としては、リン酸カルシウムの合成時にカルシウムイオンが溶解する水溶液と目的とする金属イオンが溶解する水溶液とを一定割合で混合し、2種類のイオンを含有する混合液を、リン酸イオンを含有する水溶液と反応させることでカルシウムイオンの一部を他の金属イオンで置換したリン酸カルシウム微粒子を析出させることができる。後者(イオン交換による導入)としては、リン酸カルシウム微粒子をアルコキシシランの加水分解物及び/又はその縮合物と結合させた後、目的とする金属の塩が溶解した水溶液にリン酸カルシウムが付着した複合基材を浸漬することでイオン交換を行う。当該水溶液は、硝酸塩、亜硝酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、塩化物等を用いて作製できる。
【0057】
置換型リン酸カルシウムの微粒子を基材のカップリング剤塗布面に配置するには、まず金属、プラスチック、ガラスなどの容器内にカルシウムイオンと抗菌性を有する金属のイオンを含みアルカリ環境下にpH調整を行った水溶液とアルコキシシランの加水分解物及び/又はその縮合物による薄膜を形成させた基材を入れる。次いで、リン酸イオンを含む水溶液を滴下し、混合後の水溶液中のpHを7以上、所望のCa/P比に調製する。水溶液を調整後、容器を振とうすることで十分に溶液を混合し、1時間から24時間静置する。この場合、添加順序を変えてpH調整を行ったリン酸イオンを含む水溶液と基材を入れ、後からカルシウムと抗菌性を有する金属のイオンを含む水溶液を添加してもよい。また各イオンを含有する溶液を全て同時に添加してもよい。ここでのポイントは、基材の酸化を防止するために基材と触れる溶液がアルカリ性に調整されていることと、溶液混合後の水溶液のpHが常に7以上であることである。
【0058】
カルシウム源としては、カルシウム化合物に由来するものであれば特に制限はない。具体的には、例えば、水酸化カルシウム等の無機塩のカルシウム塩、硝酸カルシウム等の無機酸のカルシウム塩、酢酸カルシウム等の有機酸のカルシウム塩等を挙げることができる。リン酸源としては、リン酸や、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸塩、ピロリン酸(二リン酸)やメタリン酸などの縮合リン酸を挙げることができる。すなわち、カルシウムイオンを与える塩(硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、硫酸塩、塩化物、水酸化物、)とリン酸イオンを反応させることで析出できるものであればいかなるリン酸化合物でもよい。これらの中でも、混入される不純物を考慮するとリン酸アンモニウム塩を用いて析出させるものが特に良い。
【0059】
リン酸カルシウム形成時の反応溶液は、中性領域〜塩基性領域であることが好ましい。中性から塩基性領域で析出させることで基材の劣化(酸化)を防ぐことができる。またリン酸カルシウムのうち、特にヒドロキシアパタイトを形成させる際の反応溶液は、リン酸カルシウム類の溶解度積を考慮してもpH7以上であることが好ましく、より好ましくは8〜11である。ヒドロキシアパタイトは、酸性領域では溶解し、中性域ではヒドロキシアパタイト以外のリン酸カルシウムが析出・混在する。pH調整には、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基を用いることができる。
(応用製品)
【0060】
複合基材は、生体適合性が要求される医療材料としてはもちろんのこと、タンパク質や油脂等の吸着分利用材料、液体や気体中のウィルス、細菌、動植物細胞等を捕集するフィルタ、廃液処理や空気清浄用フィルタ及び脱臭抗菌フィルタなどに応用できる。また複合基材は、柔軟性、強度、生体に対する密着性及び生体適合性に優れるため、経皮カテーテル、経皮端子等の経皮医療器具、人工血管、人工器官等の人工臓器等の医療用材料としても好適に使用することができる。基材としてフィルムを用いた複合基材は、抗菌性を持つフィルムとして建材、農業用シート、各種保護フィルムなど抗菌性が求められる様々な用途に対して適応可能である。
【実施例】
【0061】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
<実施例1>
テトラメトキシシラン61.5gを4つ口丸底フラスコ1L(リットル)に入れ、MeOH 463.9gを加え、液温を30℃に一定に維持しながら攪拌した。次に、水71.6gにHPO(1M)1.0gを加えた水溶液を加え、30℃にて5時間攪拌した。このテトラメトキシシランの加水分解液とイソプロピルアルコールを混合し、固形分濃度が5質量%となるように調整した。
次いで基材として、綿織布(50mm×50mm×1mm厚、約0.45g)を選択して、前記テトラメトキシシランの加水分解液100mlに基材全体を浸漬させた。10秒程度浸漬した後、基材を引き上げて余計な溶液を振り落とし、80℃にて3分間加熱した。加熱後の織布の重量を測定したところ2.2%の増加が見られた。
続いて、ヒドロキシアパタイト内のCaのうち10%をAgで置換した10%Ag置換型ヒドロキシアパタイトを前記テトラメトキシシランの加水分解液でコートした綿織布表面に形成させた。すなわち、ポリプロピレン製の容器(外寸法:縦167mm×横117×高さ28mm)内に綿織布を配置し、(A)0.358M硝酸カルシウム水溶液13.5mL、(B)1.0M硝酸銀水溶液1.1mL、(C)25質量%アンモニア水0.5mL、(D)純水20mLの混合液を投入した。続いて、上記織布の浸漬した混合液に(E)0.195Mリン酸ニ水素アンモニウム水溶液15mLを滴下した。
(E)液滴下後、直ちに容器に封をして容器を数回ほど左右にゆすって攪拌した。3時間静置後、容器から織布をピンセットで取り出し、純水、アセトンの順で織布を洗浄した。洗浄後の織布は、高温槽の中で120℃にて10分間加熱乾燥した。以上のように、ヒドロキシアパタイト内のCaのうち10%をAgで置換したAg置換型ヒドロキシアパタイト付着綿織布を得た。
【0062】
<実施例2>
実施例1のテトラメトキシシランをメトキシシランオリゴマーに変えて同様にAg置換型ヒドロシアパタイト付着綿織布を作製した。すなわち、メトキシシランオリゴマー(コルコート社製、メチルシリケート51)60gを3つ口丸底フラスコ300mlに入れ、MeOH33gを加え、25℃にて攪拌し液を均一にした後にHPO (1M)1.0g加えて5時間攪拌した。このようにして固形分濃度30%の加水分解液を得た。前記メトキシシランオリゴマーの加水分解液にイソプロピルアルコールを加えて濃度を5質量%に調整した。
次いで、実施例1と同様の綿織布(50mm×50mm×1mm厚、約0.45g)を前記メトキシシランオリゴマーの加水分解液100mlに浸漬させた。10秒程度浸漬した後、基材を引き上げて余計な溶液を振り落とし、80℃にて3分間加熱した。加熱後の織布は、実施例1に比べて若干硬くなり、重量増加は、2.6%であった。
続いて、ヒドロキシアパタイト内のCaのうち10%をAgで置換した10%Ag置換型ヒドロキシアパタイトを前記メトキシシランオリゴマーの加水分解液でコートした麻織布表面に形成させた。すなわち、ポリプロピレン製の容器(外寸法:167mm×117×28mm)内に綿織布を配置し、(A)0.358M硝酸カルシウム水溶液13.5mL、(B)1.0M硝酸銀水溶液1.1mL、(C)25質量%アンモニア水0.5mL、(D)純水20mLの混合液を投入した。続いて、上記織布の浸漬した混合液に(E)0.195Mリン酸ニ水素アンモニウム水溶液15mLを滴下した。
(E)液滴下後、直ちに容器に封をして、容器を数回ほど左右にゆすって攪拌した。3時間静置後、容器から織布をピンセットで取り出し、純水、アセトンの順で織布を洗浄した。洗浄後の織布は、高温槽の中で120℃にて5分間加熱乾燥した。以上のように、ヒドロキシアパタイト内のCaのうち10%をAgで置換したAg置換型ヒドロキシアパタイト付着綿織布を得た。
【0063】
<実施例3>
基材を綿織布から麻織布に変えて実施例2同様に複合基材を作製した。すなわち、メトキシシランオリゴマー(コルコート社製、メチルシリケート51)60gを3つ口丸底フラスコ300mlに入れ、MeOH33gを加え、25℃にて攪拌し液を均一にした後に、HPO(1M)1.0g加えて5時間攪拌した。このようにしてシラン濃度30%の加水分解液を得た。前記メトキシシランオリゴマーの加水分解液にイソプロピルアルコールを加えて、濃度を5質量%に調整した。
次いで基材として麻織布(50mm×50mm×1mm厚、約0.45g)を選択して、前記メトキシシランオリゴマーの加水分解液100mlに浸漬させた。10秒程度浸漬した後、基材を引き上げて余計な溶液を振り落とし、80℃にて3分間加熱した。加熱後の麻織布の重量増加は、2.6%であった。
続いて、ヒドロキシアパタイト内のCaのうち10%をAgで置換した10%Ag置換型ヒドロキシアパタイトを前記メトキシシランオリゴマーの加水分解液でコートした麻織布表面に形成させた。すなわち、ポリプロピレン製の容器(外寸法:縦167mm×横117×高さ28mm)内に麻織布を配置し、(A)0.358M硝酸カルシウム水溶液13.5mL、(B)1.0M硝酸銀水溶液1.1mL、(C)25質量%アンモニア水0.5mL、(D)純水19mLの混合液を投入した。続いて、上記織布の浸漬した混合液に(E)0.195Mリン酸ニ水素アンモニウム水溶液15mLを滴下した。
(E)液滴下後、直ちに容器に封をして容器を数回ほど左右にゆすって攪拌した。5時間静置後、容器から織布をピンセットで取り出し、純水、アセトンの順で織布を洗浄した。洗浄後の織布は、高温槽の中で120℃にて10分間加熱乾燥した。以上のように、ヒドロキシアパタイト内のCaのうち10%をAgで置換したAg置換型ヒドロキシアパタイト付着麻織布を得た。
【0064】
<実施例4>
基材を綿織布から合成繊維(ポリエチレン100%)からなる織布に変えて実施例2同様に複合基材を作製した。すなわち、メトキシシランオリゴマー(コルコート社製、メチルシリケート51)60gを3つ口丸底フラスコ300mlに入れ、MeOH33gを加え、25℃にて攪拌し液を均一にした後に、HPO(1M)1.0gを加えて5時間攪拌した。このようにしてシラン濃度30%のメトキシシランオリゴマーの加水分解液を得た。前記メトキシシランオリゴマーの加水分解液にイソプロピルアルコールを加えて、濃度を5質量%に調整した。
次いで、基材としてポリエチレン織布(50mm×50mm×1mm厚、約0.40g)を選択して、前記メトキシシランオリゴマーの加水分解液(5質量%固形分濃度)100mlに浸漬させた。10秒程度浸漬した後、基材を引き上げて余計な溶液を振り落とし、80℃にて3分間加熱した。加熱後の基材の重量増加は、2.4%であった。
続いて、ヒドロキシアパタイト内のCaのうち10%をAgで置換した10%Ag置換型ヒドロキシアパタイトを前記メトキシシランオリゴマーの加水分解液でコートしたポリエチレン織布表面に形成させた。すなわち、ポリプロピレン製の容器(外寸法:縦167mm×横117×高さ28mm)内に織布を配置し、(A)0.358M硝酸カルシウム水溶液13.5mL、(B)1.0M硝酸銀水溶液1.1mL、(C)25質量%アンモニア水0.5mL、(D)純水19mLの混合液を投入した。続いて、上記織布の浸漬した混合液に(E)0.195Mリン酸ニ水素アンモニウム水溶液15mLを滴下した。
(E)液滴下後、直ちに容器に封をして、容器を数回ほど左右にゆすって攪拌した。5時間静置後、容器から織布をピンセットで取り出し、純水、アセトンの順で織布を洗浄した。洗浄後の織布は、高温槽の中で120℃にて5分間加熱乾燥した。以上のように、ヒドロキシアパタイト内のCaのうち10%をAgで置換したAg置換型ヒドロキシアパタイト付着ポリエチレン織布を得た。
【0065】
<実施例5>
ヒドロキシアパタイト内のCaのうち10%をZnで置換した10%Zn置換型ヒドロキシアパタイト被覆麻織布を作製した。すなわち、実施例3記載の方法と同様にメトキシシランオリゴマーを用いて固形分濃度を5質量%に調整した。
次いで基材として麻織布(50mm×50mm×1mm厚、約0.45g)を用いて前記メトキシシランオリゴマーの加水分解液100mLに基材全体を浸漬させた。10秒程度浸漬した後、基材を引き上げて余計な溶液を振り落とし、80℃にて3分間加熱した。加熱後の基材の重量増加は、2.4%であった。
続いて、プラスチック製の容器内に麻由来の織布(50mm×50mm×1mm厚、質量約0.45g)を配置し、(A)0.358M硝酸カルシウム水溶液13.5mL、(B)1.0M硝酸亜鉛水溶液0.54mL、(C)25質量%アンモニア水0.5mL、(D)純水20mLの混合液を投入した(混合順序不問)。続いて、上記織布の浸漬した混合液に(E)0.195Mリン酸ニ水素アンモニウム水溶液15mLを滴下した。
(E)液滴下後、直ちに容器に封をして、容器を数回ほど左右にゆすって攪拌した。3時間静置後、容器から織布をピンセットで取り出し、純水、アセトンの順に洗浄した。洗浄後の織布は、室温下、デシケッター内で減圧乾燥した。以上のように、ヒドロキシアパタイト内のCaのうち10%をZnで置換したZn置換型ヒドロキシアパタイト付着麻織布を得た。
【0066】
<実施例6>
続いて、イオン交換を利用してヒドロキシアパタイト内のCaをAgで置換したAg置換型ヒドロキシアパタイト被覆麻織布を作製した。すなわち、メトキシシランオリゴマー(コルコート社製、メチルシリケート51)60gを3つ口丸底フラスコ300mlに入れ、MeOH33gを加え、25℃にて攪拌し液を均一にした後に、HPO(1M)1.0g加えて5時間攪拌した。このようにしてシラン濃度30%のメトキシシランオリゴマーの加水分解液を得た。前記メトキシシランオリゴマーの加水分解液にイソプロピルアルコールを加えて、濃度を5質量%に調整した。
次いで、基材として麻織布(50mm×50mm×1mm厚、約0.45g)を選択して、前記メトキシシランオリゴマーの加水分解液100mlに浸漬させた。10秒程度浸漬した後、基材を引き上げて余計な溶液を振り落とし、80℃にて3分間加熱した。加熱後の基材の重量増加は、2.6%であった。
前記メトキシシランオリゴマーの加水分解液でコートした麻織布をポリプロピレン製の容器(外寸法:縦167mm×横117×高さ28mm)内に配置し、(A)0.358M硝酸カルシウム水溶液15mL、(B)25質量%アンモニア水0.5mL、(C)純水20mLの混合液を投入した。続いて、上記織布の浸漬した混合液に(E)0.195Mリン酸ニ水素アンモニウム水溶液15mLを滴下した。
(E)液滴下後、直ちに容器に封をして容器を数回ほど左右にゆすって攪拌した。5時間静置後、容器から織布をピンセットで取り出し、純水、アセトンの順で織布を洗浄した。洗浄後の織布は、0.1M硝酸銀水溶液100mLに5時間ほど浸漬させた。その後、織布をピンセットから取り出して、純水、アセトンの順で織布を洗浄した。以上のように、硝酸銀水溶液中でCa2+とAgをイオン交換することでAg置換型ヒドロキシアパタイト付着麻織布を得た。
【0067】
<実施例7>
実施例1のテトラメトキシシランをメタクリルシランに変えてメタクリルシランの加水分解液を調整し、PETフィルムへの同様の処理を行った。すなわち、メタクリロキシプロピルトリメチルシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−503)61.5gを4つ口丸底フラスコ1L(リットル)に入れ、MeOH 463.9gを加え、液温を30℃に一定に維持しながら攪拌した。次に、水71.6gにHPO(1M)1.0gを加え、30℃にて更に5時間攪拌し、得られたメタクリルシランの加水分解液にイソプロピルアルコールを加えて、濃度を5質量%に調整した。
次いで、基材としてPETフィルム(東洋紡社製、A4100、100mm×150mm×125μm厚)を選択して、前記メタクリルシランの加水分解液100mLに基材全体を浸漬させた。10秒程度浸漬した後、基材を引き上げて余計な溶液を振り落とし、80℃にて3分間加熱した。加熱後の基材の重量増加は、2.5%であった。
続いて、ヒドロキシアパタイト内のCaのうち10%をAgで置換した10%Ag置換型ヒドロキシアパタイトを前記メタクリルシランの加水分解液でコートした麻織布表面に形成させた。すなわち、ポリプロピレン製の容器(外寸法:167mm×117×28mm)内にPETフィルムを配置し、(A)0.358M硝酸カルシウム水溶液13.5mL、(B)1.0M硝酸銀水溶液1.1mL、(C)25質量%アンモニア水0.5mL、(D)純水19mLの混合液を投入した。続いて、上記PETフィルムの浸漬した混合液に(E)0.195Mリン酸ニ水素アンモニウム水溶液15mLを滴下した。
(E)液滴下後、直ちに容器に封をして、容器を数回ほど左右にゆすって攪拌した。5時間静置後、容器から織布をピンセットで取り出し、純水、アセトンの順で織布を洗浄した。洗浄後の織布は、高温槽の中で120℃にて5分間加熱乾燥した。以上のように、ヒドロキシアパタイト内のCaのうち10%をAgで置換したAg置換型ヒドロキシアパタイト付着複合フィルムを作製した。
【0068】
<実施例8>
基材をガラス板(BK−5ガラス基板、マツナミ社製、25mm×75mm×0.7mm厚)に変えて実施例2同様に複合基材を作製した。すなわち、メトキシシランオリゴマー(コルコート社製、メチルシリケート51)60gを3つ口丸底フラスコ300mlに入れ、MeOH33gを加え、25℃にて攪拌し液を均一にした後に、HPO(1M)1.0g加えて5時間攪拌した。このようにしてシラン濃度30%のメトキシシランオリゴマーの加水分解液を得た。前記メトキシシランオリゴマーの加水分解液にイソプロピルアルコールを加えて、濃度を5質量%に調整した。加熱後の基材の重量増加は、2.5%であった。
次いで、ガラス板を前記メトキシシランオリゴマーの加水分解液100mlに浸漬させた。10秒程度浸漬した後、基材を引き上げて余計な溶液を振り落とし、80℃にて3分間加熱した。
続いて、ヒドロキシアパタイト内のCaのうち10%をAgで置換した10%Ag置換型ヒドロキシアパタイトを前記メトキシシランオリゴマーの加水分解液でコートしたガラス板上に形成させた。すなわち、ポリプロピレン製の容器(外寸法:縦167mm×横117×高さ28mm)内にガラス板を配置し、(A)0.358M硝酸カルシウム水溶液13.5mL、(B)1.0M硝酸銀水溶液1.1mL、(C)25質量%アンモニア水0.5mL、(D)純水19mLの混合液を投入した。続いて、上記ガラス板の浸漬した混合液に(E)0.195Mリン酸ニ水素アンモニウム水溶液15mLを滴下した。
(E)液滴下後、直ちに容器に封をして、容器を数回ほど左右にゆすって攪拌した。5時間静置後、容器からガラス板をピンセットで取り出し、純水、アセトンの順で織布を洗浄した。洗浄後のガラス板は、高温槽の中で120℃にて5分間加熱乾燥した。以上のように、ヒドロキシアパタイト内のCaのうち10%をAgで置換したAg置換型ヒドロキシアパタイト付着ガラス板を得た。
【0069】
<実施例9>
基材をアクリル樹脂板(住友化学社製、スミペックス、100mm×150mm×1mm厚)に変えて実施例2同様に複合基材を作製した。すなわち、メトキシシランオリゴマー(コルコート社製、メチルシリケート51)60gを3つ口丸底フラスコ300mlに入れ、MeOH33gを加え、25℃にて攪拌し液を均一にした後に、HPO(1M)1.0g加えて5時間攪拌した。このようにしてシラン濃度30%のメトキシシランオリゴマーの加水分解液を得た。前記メトキシシランオリゴマーの加水分解液にイソプロピルアルコールを加えて、濃度を5質量%に調整した。
次いでアクリル樹脂板を前記メトキシシランオリゴマーの加水分解液100mlに浸漬させた。10秒程度浸漬した後、基材を引き上げて余計な溶液を振り落とし、80℃にて3分間加熱した。加熱後の基材の重量増加は、2.5%であった。
続いて、ヒドロキシアパタイト内のCaのうち10%をAgで置換した10%Ag置換型ヒドロキシアパタイトを前記メトキシシランオリゴマーの加水分解液でコートしたガラス板表面に形成させた。すなわち、ポリプロピレン製の容器(外寸法:縦167mm×横117×高さ28mm)内にアクリル樹脂板を配置し、(A)0.358M硝酸カルシウム水溶液13.5mL、(B)1.0M硝酸銀水溶液1.1mL、(C)25質量%アンモニア水0.5mL、(D)純水19mLの混合液を投入した。続いて、上記アクリル樹脂板の浸漬した混合液に(E)0.195Mリン酸ニ水素アンモニウム水溶液15mLを滴下した。
(E)液滴下後、直ちに容器に封をして、容器を数回ほど左右にゆすって攪拌した。5時間静置後、容器からガラス板をピンセットで取り出し、純水、アセトンの順で織布を洗浄した。洗浄後のアクリル樹脂板は、高温槽の中で120℃にて5分間加熱乾燥した。以上のように、ヒドロキシアパタイト内のCaのうち10%をAgで置換したAg置換型ヒドロキシアパタイト付着アクリル樹脂板を得た。
【0070】
<比較例1>
アルコキシシランの加水分解液で基材表面をコートすることなく、Ag置換型ヒドロキシアパタイトを基材表面に形成させた。すなわち、ポリプロピレン製の容器(外寸法:縦167mm×横117×高さ28mm)内に麻織布を配置し、(A)0.358M硝酸カルシウム水溶液13.5mL、(B)1.0M硝酸銀水溶液1.1mL、(C)25質量%アンモニア水0.5mL、(D)純水20mLの混合液を投入した。続いて、上記麻織布(50mm×50mm×1mm厚、約0.45g)の浸漬した混合液に(E)0.195Mリン酸ニ水素アンモニウム水溶液15mLを滴下した。
(E)液滴下後、直ちに容器に封をして容器を数回ほど左右にゆすって攪拌した。5時間静置後、容器から織布をピンセットで取り出し、純水、アセトンの順で織布を洗浄した。洗浄後の麻織布は、高温槽の中で120℃にて10分間加熱乾燥した。以上のように、ヒドロキシアパタイト内のCaのうち10%をAgで置換したAg置換型ヒドロキシアパタイト付着麻織布を得た。
【0071】
<比較例2>
ヒドロキシアパタイト内のCaをAgに置換せずに、実施例2同様にしてヒドロキシアパタイト付着麻織布を作製した。すなわち、メトキシシランオリゴマー(コルコート社製、メチルシリケート51)60gを3つ口丸底フラスコ300mlに入れ、MeOH33gを加え、25℃にて攪拌し液を均一にした後に、HPO(1M)1.0g加えて5時間攪拌した。このようにしてシラン濃度30%のメトキシシランオリゴマーの加水分解液を得た。前記メトキシシランオリゴマーの加水分解液にイソプロピルアルコールを加えて、シラン濃度を5質量%に調整した。
次いで基材として麻織布(50mm×50mm×1mm厚、約0.45g)を選択して、前記メトキシシランオリゴマーの加水分解液100mlに浸漬させた。10秒程度浸漬した後、基材を引き上げて余計な溶液を振り落とし、80℃にて3分間加熱した。
続いて、ヒドロキシアパタイト内のCaのうち10%をAgで置換した10%Ag置換型ヒドロキシアパタイトを前記メトキシシランオリゴマーの加水分解液でコートした麻織布表面に形成させた。すなわち、ポリプロピレン製の容器(外寸法:縦167mm×横117×高さ28mm)内に麻織布を配置し、(A)0.358M硝酸カルシウム水溶液15mL、(B)25質量%アンモニア水0.5mL、(C)純水20mLの混合液を投入した。続いて、上記織布の浸漬した混合液に(E)0.195Mリン酸ニ水素アンモニウム水溶液15mLを滴下した。
(E)液滴下後、直ちに容器に封をして容器を数回ほど左右にゆすって攪拌した。5時間静置後、容器から織布をピンセットで取り出し、純水、アセトンの順で織布を洗浄した。洗浄後の織布は、高温槽の中で120℃にて10分間加熱乾燥した。以上のように、ヒドロキシアパタイト付着麻織布を得た。
【0072】
<試験1(抗菌試験)>
JIS L1902(繊維製品の抗菌性試験方法及び抗菌効果)に規定されている試験方法に従い、実施例1〜実施例7、比較例1〜比較例2について抗菌性能を調べた。即ち、生菌数1.4×10個/mLの黄色ブドウ球菌(NBRC12732)と2.6×10個/mLの大腸菌(NBRC3972)を用いて,接種量0.2mLにて未処理の綿織物(標準布)並びに上記実施例1〜7及び比較例1〜2で得られた各基材に接種し、35℃で18時間培養後に各織布上の菌数を測定した。
未加工(綿)織物上の菌数を基準にして、実施例1〜7及び比較例1〜2で得られた各織布上の菌数の割合を対数値で表し、静菌活性値とした。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
表1より実施例1〜7でいずれも静菌活性値がゼロ以上になり、優れた抗菌性が示された。
【0075】
<試験2(接着力評価)>
実施例1〜実施例10及び比較例1、2の複合基材における基材/リン酸カルシウム間の接着力の評価は、超音波を利用した下記手法にて行った。得られた複合基材を蒸留水に浸漬して、プローブ型超音波発生装置(和研薬株式会社製 型式;W−220F)にて、出力20kHz、35Wの条件で3分間処理し、超音波照射・乾燥後の複合基材表面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。図2に実施例1で得られた複合基材のSEM像(倍率2000倍)を示す。
【0076】
この接着力評価試験(超音波照射・乾燥)前後での複合基材の重量減少を測定した。接着力評価試験において、基材に付着したリン酸酸カルシウムの重量減少が0%〜10%未満の場合を『◎』、重量減少が10%以上、70%未満の場合を『○』、重量減少が70%以上で過半数の微粒子が剥離してしまった場合を『×』とすることで基材/リン酸カルシウム間の接着力を評価した。
また超音波後に残存するリン酸カルシウム微粒子の粒子径を走査型電子顕微鏡(SEM)にて測定した。基材上の残存する微粒子20個を無作為に選択し,直接観察することで平均粒子径を算出した。これらの評価結果を表2に示す。
表2より、アルコキシシランとしてテトラメトキシシランのような低分子のものより、メチルシリケート51のような縮合体を用いた方が接着力の向上効果が高いことが分かった。また本手法は、天然繊維・合成繊維どちらに対しても有効であり、基材として、織布・フィルム・ガラス板といずれに対しても有効であった。これより、基材とリン酸カルシウム微粒子間に接着力が付与されたことで基材からの抗菌性を有する燐酸カルシウム微粒子の剥離が抑制されるため,長期にわたり抗菌性が維持できる。
【0077】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
リン酸カルシウム中のカルシウムイオンの一部が抗菌性金属イオンで置換された置換型リン酸カルシウムの微粒子と、
これらを接合する、カップリング剤の加水分解物及び/又はその縮合物と、を備える複合基材。
【請求項2】
前記カップリング剤の加水分解物は、アルコキシシランの加水分解物である、請求項1記載の複合基材。
【請求項3】
前記微粒子は、
リン酸カルシウム中のカルシウムイオンのうち0.01〜30質量%が、銅、銀、亜鉛、鉄、鉛、ニッケル、コバルト、パラジウム及び白金からなる群より選ばれる一以上の金属で置換された微粒子である、請求項1又は2記載の複合基材。
【請求項4】
前記アルコキシシランの加水分解物は、一般式(1)又は(2)で表わされるアルコキシシランをアルコール溶媒中で加水分解したものである、請求項2又は3記載の複合基材。
Si(OR) ・・・(1)
R’−Si(OR)4−n ・・・(2)
[式中、Rはアルキル基、R’は一価の有機基、nは1〜3の整数、をそれぞれ示す。]
【請求項5】
前記微粒子と、前記カップリング剤の加水分解物及び/又はその縮合物との合計量は、前記基材に対して0.1〜10質量%である、請求項1〜4のいずれか一項記載の複合基材。
【請求項6】
前記リン酸カルシウムは、ヒドロキシアパタイトである、請求項1〜5のいずれか一項記載の複合基材。
【請求項7】
前記基材は、天然繊維、合成繊維及びガラス繊維のいずれかである、請求項1〜6のいずれか一項記載の複合基材。
【請求項8】
前記基材は、高分子フィルムである、請求項1〜6のいずれか一項記載の複合基材。
【請求項9】
前記基材は、ガラス基材である、請求項1〜6のいずれか一項記載の複合基材。
【請求項10】
カップリング剤を塗布した基材のカップリング剤塗布面に、リン酸カルシウム中のカルシウムイオンの一部が抗菌性金属イオンで置換された置換型リン酸カルシウムの微粒子を配置させる微粒子配置工程を含む、複合基材の製造方法。
【請求項11】
前記微粒子配置工程は、
前記カップリング剤を塗布した基材を、カルシウムイオン、リン酸イオン及び抗菌性金属イオンを含有するpH7以上の水溶液に浸漬する工程である、請求項10記載の複合基材の製造方法。
【請求項12】
前記微粒子配置工程は、
前記カップリング剤を塗布した基材を、カルシウムイオン及びリン酸イオンを含有するpH7以上の水溶液に浸漬して、表面にリン酸カルシウム微粒子を配置する工程と、
前記リン酸カルシウム微粒子が配置された基材を、硝酸塩、亜硝酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩及び硫酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種以上の塩の水溶液に浸漬させてリン酸カルシウム微粒子中のカルシウムイオンの一部を金属イオンで置換する工程と、を含む、請求項10記載の製造方法。
【請求項13】
前記カップリング剤は、アルコキシシランである、請求項10〜12のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項14】
前記微粒子が配置された基材を加熱させる加熱工程を更に含む、請求項10〜13のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項15】
前記加熱工程において、
一般式(1)又は(2)で表わされるカップリング剤の加水分解物が形成される、請求項14記載の製造方法。
Si(OR) ・・・(1)
R’−Si(OR)4−n ・・・(2)
[式中、Rはアルキル基、R’は一価の有機基、nは1〜3の整数、をそれぞれ示す。]
【請求項16】
前記加熱工程は、リン酸カルシウム微粒子が配置された基材を20〜200℃で加熱する工程である、請求項14又は15に記載の抗菌性複合基材の製造方法。
【請求項17】
前記微粒子配置工程において、
一般式(1)又は(2)で表わされるカップリング剤の加水分解物が形成される、請求項10〜16のいずれか一項記載の製造方法。
Si(OR) ・・・(1)
R’−Si(OR)4−n ・・・(2)
[式中、Rはアルキル基、R’は一価の有機基、nは1〜3の整数、をそれぞれ示す。]
【請求項18】
請求項1〜9のいずれか一項記載の複合基材からなる、抗菌性部材。
【請求項19】
請求項1〜9のいずれか一項記載の複合基材からなる、抗菌性フィルタ。
【請求項20】
請求項1〜9のいずれか一項記載の複合基材からなる、マスク。
【請求項21】
請求項1〜9のいずれか一項記載の複合基材からなる、壁紙。
【請求項22】
請求項1〜9のいずれか一項記載の複合基材からなる、カーテン。
【請求項23】
請求項1〜9のいずれか一項記載の複合基材からなる、テーブルクロス。

【図1】
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【図2】
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