説明

複合意匠撚糸

【目的】 複雑な反射光を生ずるとともに、微妙な肌ざわりや変化に富んだ織り模様を有する複合意匠撚糸を提供する。
【構成】 細い芯糸1のまわりに連続的にわな糸2を撚り合せループ5を形成した後細い押え糸3を逆方向に撚り合わせ、飾り糸20とする。この飾り糸20に、金属光沢を有する平箔糸6を、芯糸1、押え糸3およびループ5が露出する程度に螺旋状に交撚する。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、織物用の飾り糸に関し、さらに詳しくは、複雑な反射光を生ずるとともに、微妙な肌ざわりや変化に富んだ織り模様を有する複合意匠撚糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、芯糸のまわりに、金属箔や合成樹脂等による金属光沢を有する平箔糸を螺旋状に巻き付けた複合意匠撚糸が知られていた。
また、芯糸に蛍光色を着色したり弾力性を施し、外観的に美観を高めたものや、柔軟性を有する複合意匠撚糸もあった。
【0003】
さらに、実公昭61−42941号公報に開示されている織物用金銀糸のように、太さが不均一な単糸(スラブヤーン)に平箔糸を巻き付けたもので、平箔糸の反射光に変化をもたせたものもあった。
【考案が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、表面形状が単純な芯糸に平箔糸を巻き付けたものは、規則正しい金属光沢を得られるだけに過ぎず、それらの糸を使って織り上げた布地は単調な風合いのものとなった。
また、スラブヤーンを芯糸として平箔糸を巻き付けたものは、反射光の変化や紬風の風合いは得られるものの、微妙な肌ざわりや変化に富んだ織り模様を演出することは望めなかった。
【0005】
そこで本考案の目的は、従来より知られていた複合意匠撚糸に比し、さらに複雑な反射光を生ずるとともに、微妙な肌ざわりや変化に富んだ織り模様を有する複合意匠撚糸を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本考案者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、独特な風合いを持つループヤーンの飾り糸に平箔糸または特定の金銀糸を特定条件下で巻き付けることにより上記目的を達成できることを見出し、本考案を完成するに至った。以下、図面を参照して本考案を説明する。
【0007】
本考案は、細い芯糸1のまわりに連続的にわな糸2を撚り合せループ5を形成した後細い押え糸3を逆方向に撚り合わせた飾り糸20に、金属光沢を有する平箔糸6を、芯糸1、押え糸3およびループ5が露出する程度に螺旋状に交撚してなる複合意匠撚糸に関するものである。
【0008】
前記平箔糸6には、細糸4を襷状に撚り合わせることができる。
【0009】
また、本考案は、細い芯糸1のまわりに連続的にわな糸2を撚り合せループ5を形成した後細い押え糸3を逆方向に撚り合わせた飾り糸20に、金属光沢を有する金糸9を基糸8に対し羽衣状に撚り合わせた金銀糸11を、前記飾り糸20の芯糸1、押え糸3およびループ5が露出する程度に螺旋状に交撚してなる複合意匠撚糸に関するものである。
【0010】
さらに、本考案は、細い芯糸1のまわりに連続的にわな糸2を撚りループ5を形成した後細い押え糸3を逆方向に撚り合わせた飾り糸20に、金属光沢を有する金糸9を基糸8に対し蛇腹状に撚り合わせた金銀糸12を、前記飾り糸20の芯糸1、押え糸3およびループ5が露出する程度に螺旋状に交撚してなる複合意匠撚糸に関するものである。
【0011】
【作用】
図1に示す本考案の一例複合意匠撚糸を使用し、織成した織物を図2に基づいて説明する。
例えば、オーガンジに本考案の複合意匠撚糸を織成した生地19は、意匠撚糸の平箔糸6の強い金属光沢部分と、芯糸1の柔らかい風合いが微妙に映し出され、かつ、ループ5が織模様を演出し、それぞれの組み合わせにより繊細で微妙な風合いを醸し出す。
また、ループ5によって織模様部分の平箔糸6は、微妙な範囲で不規則に隠れる。
前記平箔糸6に細糸4を襷状に撚り合わせることにより、上記とは一味違った外観を得ることができる。
【0012】
また、平箔糸6の代わりに、金属光沢を有する金糸9を基糸8に対し羽衣状または蛇腹状に撚り合わせた金銀糸11,12を使用しても、平箔糸6の場合と同様に優れた風合い、織模様を得ることができる。
【0013】
【実施例】
次に本考案の第1実施例を図1に基づき説明する。
絹等の天然繊維やナイロン等の合成繊維を素材にした細い芯糸1に、天然繊維または合成繊維、例えばアセテ−ト繊維やアクリル繊維等を甘撚りにしたソフトなわな糸2を連続的に撚り絡ませる。
かかる紡績工程に於て、わな糸2の送り出し速度を芯糸1のそれよりも速くすると、わな糸2の長さが余ってループ5が形成される。
【0014】
天然繊維または合成繊維を素材とする押え糸3は、芯糸1とわな糸2とは逆方向に撚り合わせ、ループ5が芯糸1の上を滑り動くのを抑える効果がある。なお、芯糸1および押え糸3は染色糸とすることができる。
【0015】
上記のごとく形成された飾り糸20(ループヤーン)に、金、銀、色金等の金属光沢を有する平箔糸6を芯糸1、押え糸3およびループ5が露出する程度に螺旋状に交撚する。
【0016】
かかる平箔糸6は、例えば、ポリエステル等の樹脂フィルムにアルミニウム、金、銀、銅等の金属を蒸着して金属光沢を有するフィルムを得、これをスリッタ等によって細幅に裁断することによって得ることができる。
【0017】
次に、本考案の他の実施例を図3に基づき説明する。
図3(a)は、前記平箔糸6に、ナイロン繊維等の合成繊維または天然繊維の細糸4を右撚と左撚とに交叉し襷状に撚り合わせ、金銀糸10とし、これを前記飾り糸20の芯糸1、押え糸3およびループ5が露出する程度に螺旋状に交撚したものである。
【0018】
図3(b)は、ポリエステル等の樹脂繊維に金属蒸着等により金属光沢を付与した細い金糸9を、例えばレーヨン等の素材からなる基糸8に交撚したものを前記平箔糸6の代わりに用いたものである。この場合、基糸8よりも金糸9を多く撚り込み、図示する如く弛みを与え、羽衣状とした金銀糸11を、前記飾り糸20の芯糸1、押え糸3およびループ5が露出する程度に螺旋状に交撚する。
【0019】
図3(c)は、前記と同様の細い金糸9を、同じく前記と同様の素材からなる基糸8に交撚したものを前記平箔糸6の代わりに用いたものである。この場合、基糸8に対し金糸9を細かく撚り込み、基糸8と金糸9が同じように見えるように蛇腹状に撚り合わせた金銀糸12を、前記飾り糸20の芯糸1、押え糸3およびループ5が露出する程度に螺旋状に交撚したものである。
【0020】
【考案の効果】
以上説明してきたように、本考案の複合意匠撚糸は、上述の構成とすることで以下に示す効果を奏するものである。
(1)平箔糸の強い金属光沢部分と、飾り糸(ループヤーン)の柔らかい風合いが微妙に映し出される。
(2)ループ部分で生地の表面に織模様を演出することができる。
(3)ループが平箔糸、押え糸および芯糸を不規則に遮蔽するので、極めて上品な光沢と色彩が得られる。
なお、本考案の複合意匠撚糸は図3の(a)、(b)および(c)に示すように、前記平箔糸の代わりに、飾り糸(ループヤーン)に、襷状、羽衣状または蛇腹状に交撚した金銀糸を用いても同様に優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の一例複合意匠撚糸の部分拡大図である。
【図2】本考案の複合意匠撚糸を使用した織物を表す図である。
【図3】(a)は本考案の他の一例複合意匠撚糸の部分拡大図である。(b)は本考案の他の一例複合意匠撚糸の部分拡大図である。(c)は本考案の他の一例複合意匠撚糸の部分拡大図である。
【符号の説明】
1 芯糸
2 わな糸
3 押え糸
4 細糸
5 ループ
6 平箔糸
8 基糸
9 金糸
10,11,12 金銀糸
19 生地
20 飾り糸

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 細い芯糸1のまわりに連続的にわな糸2を撚り合せループ5を形成した後細い押え糸3を逆方向に撚り合わせた飾り糸20に、金属光沢を有する平箔糸6を、芯糸1、押え糸3およびループ5が露出する程度に螺旋状に交撚してなる複合意匠撚糸。
【請求項2】 前記平箔糸6に、細糸4を襷状に撚り合わせた請求項1記載の複合意匠撚糸。
【請求項3】 細い芯糸1のまわりに連続的にわな糸2を撚り合せループ5を形成した後細い押え糸3を逆方向に撚り合わせた飾り糸20に、金属光沢を有する金糸9を基糸8に対し羽衣状に撚り合わせた金銀糸11を、前記飾り糸20の芯糸1、押え糸3およびループ5が露出する程度に螺旋状に交撚してなる複合意匠撚糸。
【請求項4】 細い芯糸1のまわりに連続的にわな糸2を撚り合せループ5を形成した後細い押え糸3を逆方向に撚り合わせた飾り糸20に、金属光沢を有する金糸9を基糸8に対し蛇腹状に撚り合わせた金銀糸12を、前記飾り糸20の芯糸1、押え糸3およびループ5が露出する程度に螺旋状に交撚してなる複合意匠撚糸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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