説明

複合糸の製造方法及び装置

【課題】電荷誘導紡糸法により製造されたナノファイバーを複数層に撚ってなり、複数の特性を兼ね備えている複合糸を生産性良く製造する。
【解決手段】芯糸1を移動させる工程と、移動する芯糸1の周囲に配置した小穴5から原料溶液を流出させ電荷誘導紡糸法にて生成した第1のナノファイバー6を芯糸1の回りに巻き付けて一次複合糸12を形成する第1の撚り糸工程と、第1の撚り糸工程を経て移動する一次複合糸12の周囲に配置した小穴15から原料溶液を流出させて電荷誘導紡糸法にて生成した第2のナノファイバー16を一次複合糸12の回りに巻き付けて二次複合糸22を形成する第2の撚り糸工程とを少なくとも有する複数の撚り糸工程にて複合糸を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電荷誘導紡糸法にて製造されたナノファイバーを複数層に撚って成る複合糸を製造する複合糸の製造方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高分子物質から成るサブミクロンスケールの直径を有するナノファイバーを製造する方法として、電荷誘導紡糸法(エレクトロスピニング法とも称される)が知られている。従来の電荷誘導紡糸法は、高電圧を印加した針状のノズルに高分子溶液を供給し、この針状のノズルから線状に流出する高分子溶液に電荷を帯電させることで、この電荷を帯電された線状の高分子溶液中の溶媒が蒸発するのに伴って帯電電荷間の距離が小さくなり、帯電電荷間に作用するクーロン力が大きくなり、そのクーロン力が線状の高分子溶液の表面張力より勝った時点で線状の高分子溶液が爆発的に延伸される現象が生じ、この静電爆発と称する現象が、一次、二次、場合によっては三次等と繰り返されることで、サブミクロンの直径の高分子から成るナノファイバーが製造されるものである。
【0003】
また、従来は、電荷誘導紡糸法にて生成されたナノファイバーにてウェブを製造し、人造皮革、フィルター、おむつ、生理用ナプキン、癒着紡糸剤、ワイピングクロス、人造血管、骨固定器具など多様に活用されているが、10MPa以上の力学物性を得るのが困難で広範囲な用途への利用に限界があること、このように製造されたナノファイバーのウエブを連続した糸条にして力学物性を高めようとすると、ウェブを一定長さに切断して短繊維を製造し、この短繊維から紡績糸を製造する別途の紡績工程を経なければならないという問題があることを指摘した上で、電荷誘導紡糸法にて製造されたナノファイバーのウエブを用いて連続的に糸条を製造する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1では、列をなして帯電されたノズルからナノファイバーを紡糸し、ノズルと逆極性に帯電されたコレクタ内の水または有機溶媒の静的な表面上にウェブをなすように堆積させ、この堆積するウェブを、ノズルの列方向で見た一方の末端側より1cm以上離れた地点から一定の線速度で回転する回転ローラによって引き上げて連続した糸条とし、圧搾、延伸、乾燥および巻取りを行って連続した糸条を得ている。また、連続した糸条は撚糸することもできるとしている。
【0004】
また、電荷誘導紡糸法にてノズルから紡糸したナノファイバーをコレタタ上に堆積させてリボン形態のナノファイバーウェブを生成し、このリボン形態のウェブをエア撚り糸装置に通して撚り糸を製造する方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、医療用高分子のナノファイバーから成る不織布を少なくとも2層に積層した人工血管が知られ、その製造方法として、円柱状担体を回転させながら軸芯方向に移動させつつ、その径方向一側に軸芯方向に並列配置した複数のナノファイバー生成手段から円柱状担体の外周面に向けてナノファイバーを生成して付着させ、ナノファイバーの不織布が複数層に堆積されたものを製造する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
また、図8に示すように、ガラス繊維コア51の外周にシースストランド52を巻回し、さらにその外周に1又は複数層にカバーストランド53、54を巻回してなる複合糸55が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特表2006−507428号公報
【特許文献2】特表2007−518891号公報
【特許文献3】特開2004−321484号公報
【特許文献4】特表2002−502469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、各ノズルから真下にナノファイバーを生成してコレクタ上のノズルに対応した位置へ静的に堆積させながら、その堆積域の広がりにより各ノズルから生成されたナノファイバー同士を絡み合わせて細帯状のウェブを形成し、このウェブの一端からナノファイバー群を引出すことでウェブの他端側に連続しているナノファイバー群を順次引き出し、連続した糸条に集束させるものであり、そのため各ノズルから紡糸されたナノファイバーの堆積が静的でほぼ同等であるのに対し、引き出し作用が引き出し側に近い堆積域に集中しやすくなる関係から、引き出し側に近い堆積域と遠い堆積域とでナノファイバーの引出し量とに差が生じる恐れがあり、その場合引出し量の差が堆積量の差を来たし、堆積量に差を生じた状態で引き出されることで連続した糸条の太さや力学物性を適正に制御するのは困難で安定しないという問題がある。さらに、引出し作用が引き出し側から遠い側の堆積域にも均等に及ぶようにするのに引出し速度を抑える必要があり大量に製造するのも困難であるという問題がある。
【0008】
また、特許文献2に記載の技術は、エアによって撚りをかけ、撚り糸を製造する点で特許文献1と異なっているが、特許文献1と基本的構成を共有していて同様の問題があり、形態や力学的物性の均一な糸を製造することができないという問題がある。また、エア撚り糸装置を通過させて撚り糸を製造するので、エア撚り糸装置における作用の安定性も問題になる。
【0009】
さらに、以上の特許文献1、2に記載の技術では、単一種類のナノファイバーから成る糸条しか得られず、例えば強度と肌触りなどの複数の特性を兼ね備えた糸条を製造することができないという課題がある。これに対して、特許文献3に記載の技術では、骨格基材となる不織布層と生理活性物質層と細胞接着マトリックスを構成する不織布層とを積層して成る人口血管材料など、ナノファイバーから成る複合材の製造方法が記載されているが、ナノファイバーの不織布層を積層したもので、ナノファイバーを撚って成る強度の高い複合糸を製造するものでない。
【0010】
また、特許文献4には、ガラス繊維コア51の外周に各種ストランド52〜54を複数層に巻き付けてなる複合糸55が記載されているが、それぞれ各別に巻き付け工程を行うものであり、高い生産性を確保することができないという問題がある。
【0011】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、電荷誘導紡糸法により製造されたナノファイバーを複数層に撚ってなり、複数の特性を兼ね備えている複合糸を生産性良く製造することができる複合糸の製造方法と装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の複合糸の製造方法は、芯糸を移動させる工程と、移動する芯糸の周囲に配置した小穴から原料溶液を流出させ電荷誘導紡糸法にて生成した第1のナノファイバーを芯糸の回りに巻き付けて一次複合糸を形成する第1の撚り糸工程と、第1の撚り糸工程を経て移動する一次複合糸の周囲に配置した小穴から原料溶液を流出させて電荷誘導紡糸法にて生成した第2のナノファイバーを一次複合糸の回りに巻き付けて二次複合糸を形成する第2の撚り糸工程とを少なくとも有するものである。
【0013】
なお、原料溶液としては、各種の合成樹脂材料や核酸や蛋白質などの生体高分子などの高分子物質(本発明では、分子量が10000以上の一般的な高分子物質に限らず、分子量が1000〜10000の準高分子物質も含める)を溶媒に溶解したものが好適に適用される。また、上記高分子物質は単体物に限らず、各種高分子物質の混合物であっても良い。
【0014】
上記構成によれば、芯糸を移動させつつ、芯糸の周囲に配置した小穴から原料溶液を流出させ電荷誘導紡糸法にて生成した第1のナノファイバーを芯糸の回りに巻き付けて一次複合糸を形成し、以降同様に第2のナノファイバーを一次複合糸の回りに巻き付けて二次複合糸を形成し、その後必要に応じて三次複合糸等々を形成するので、上記第1、第2のファイバーとして互いに特性の異なるナノファイバーを適用することで複数の特性を兼ね備えている複合糸を製造することができ、かつナノファイバーを生成しつつ芯糸に巻き付けて複合糸を製造するので生産性良く複合糸を製造することができる。
【0015】
また、第1の撚り糸工程と第2の撚り糸工程で、ナノファイバーの巻き付き方向を逆にすると、ナノファイバーの巻き付き方向が交互に逆方向になるので、より強度の高い複合糸を製造することができる。
【0016】
また、任意の撚り糸工程の後に、形成された複合糸を少なくとも熱又は圧力で処理すると、製造された複合糸に熱を加えて溶媒をより完全に蒸発させたり、圧力を加えて延伸したりするなどの所要の処理を施すことで、複合糸の品質の向上を図ることができる。
【0017】
また、本発明の複合糸の製造装置は、芯糸を所定の経路を通して供給する芯糸供給手段と、芯糸の周囲を回転する少なくとも1つの小穴から原料溶液を流出させるとともに流出する原料溶液に電荷を帯電させる第1のナノファイバー生成手段と、芯糸を挟んで小穴とは略反対側の位置で小穴と同期して回転するとともに原料溶液の帯電電荷とは逆極性の電圧を印加され又は接地された第1の電極とからなり、芯糸の回りにナノファイバーを巻き付けた一次複合糸を製造する一次複合糸製造手段と、一次複合糸の周囲を回転する少なくとも1つの小穴から原料溶液を流出させるとともに流出する原料溶液に電荷を帯電させる第2のナノファイバー生成手段と、一次複合糸を挟んで小穴とは略反対側の位置で小穴と同期して回転するとともに原料溶液の帯電電荷とは逆極性の電圧を印加され又は接地された第2の電極とからなり、一次複合糸の回りにナノファイバーを巻き付けた二次複合糸を製造する二次複合糸製造手段とを少なくとも備えたものである。
【0018】
なお、生成されて電極にて収集されて流動するナノファイバーが芯糸や一次複合糸に巻き付く作用が確実にかつ安定して得られるように、小穴の原料溶液流出方向と電極の位置を調整設定できるようにするのが好ましい。また、小穴と電極の間の芯糸の長手方向の距離は、小穴と芯糸との間の距離の1〜10倍に設定するのが好ましい。
【0019】
この構成によれば、上記製造方法を実施して複数の特性を兼ね備えている複合糸を一工程で生産性良く複合糸を製造することができ、さらにナノファイバー生成手段にて生成したナノファイバーを、芯糸や一次複合糸を挟んで小穴とは略反対側の位置で小穴と同期して回転する電極に向けて流動させることで、生成したナノファイバーが線状若しくはその周囲の小さな断面の空間内を殆ど乱れることなく電極に向かって流動しつつ芯糸や一次複合糸に絡むことで芯糸に規則正しく巻き付き、それによって高強度でかつ形態や力学的物性の均一な複合条を安定して製造することができる。
【0020】
また、芯糸を所定の経路を通して供給する芯糸供給手段と、芯糸の周囲に配置した複数の小穴から原料溶液を流出させるとともに流出する原料溶液に電荷を帯電させる第3のナノファイバー生成手段と、芯糸を取り囲むように配置されて原料溶液の帯電電荷とは逆極性の電圧を印加され又は接地された第3の電極とからなり、前記小穴若しくは電極の内の少なくとも一方を回転させることで芯糸の回りにナノファイバーを巻き付けせた一次複合糸を製造する一次複合糸製造手段と、一次複合糸の周囲に配置した複数の小穴から原料溶液を流出させるとともに流出する原料溶液に電荷を帯電させる第4のナノファイバー生成手段と、一次複合糸を取り囲むように配置されて原料溶液の帯電電荷とは逆極性の電圧を印加され又は接地された第4の電極とからなり、前記小穴若しくは電極の内の少なくとも一方を回転させることで一次複合糸の回りにナノファイバーを巻き付けた二次複合糸を製造する二次複合糸製造手段とを少なくとも備えた構成とすることもできる。
【0021】
この構成によれば、上記製造方法を実施して複数の特性を兼ね備えている複合糸を一工程で生産性良く複合糸を製造することができ、さらに芯糸や一次複合糸の周囲に複数の小穴を配設することで、多量のナノファイバーを製造できてさらに生産性良く複合糸を製造することができるとともに、芯糸を取り囲むように配置された電極を小穴とは逆方向に回転させることで、ナノファイバーを芯糸や一次複合糸により強く絡ませて撚りの強い複合糸を製造できる。
【0022】
また、一次複合糸製造手段と二次複合糸製造手段で、小穴の回転方向を逆にすると、ナノファイバーの巻き付き方向が交互に逆方向になるので、より強度の高い複合糸を製造することができる。
【0023】
また、任意の複合糸製造手段の後に、形成された複合糸を少なくとも熱又は圧力で処理する処理手段を配置すると、製造された複合糸に熱を加えて溶媒をより完全に蒸発させたり、圧力を加えて延伸したりするなどの所要の処理を施すことで、複合糸の品質の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の複合糸の製造方法及び装置によれば、移動する芯糸の周囲に配置した小穴から電荷誘導紡糸法にて生成した第1のナノファイバーを芯糸の回りに絡ませて一次複合糸を形成し、以降同様に第2のナノファイバーを一次複合糸の回りに巻き付けて二次複合糸を形成し、その後必要に応じて三次複合糸等々を形成することで複数の特性を兼ね備えている複合糸を製造することができ、かつナノファイバーを生成しつつ芯糸に巻き付けて複合糸を製造するので生産性良く複合糸を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の複合糸の製造方法及び装置の各実施形態について、図1〜図7を参照しながら説明する。
【0026】
(第1の実施形態)
本発明の複合糸の製造方法及び装置の第1の実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。
【0027】
まず、本実施形態における複合糸の製造方法及び装置を、図1を参照して説明する。図1において、芯糸1が芯糸供給手段(図示せず)にて垂直な所定の糸移動経路2を通して供給される。芯糸1が貫通する貫通孔3aを軸芯部に有するとともに、軸芯回りに矢印aの如く回転駆動可能な回転体3が配設されている。回転体3の回転速度は、数100〜10000rpmに設定される。回転体3には、先端に小穴5を有する1つのノズル部材4が設けられ、その小穴5からナノファイバーの原料溶液に電荷を帯電させて流出させるように構成されている。なお、ノズル部材4は、ノズル部材4と糸移動経路2の間の径方向に距離に比して小さい距離をあけた近接状態で複数配設しても良い。小穴5から電荷を帯電されて流出した原料溶液が電荷誘導紡糸法にて延伸されて第1のナノファイバー6が生成される。かくして、これら回転体3、ノズル部材4、ノズル部材4に原料溶液を供給する原料溶液供給手段(図示せず)、及び原料溶液に電荷を帯電する手段(後述)にて第1のナノファイバー生成手段7が構成されている。
【0028】
回転体3から芯糸1の移動方向に適当な距離の位置に、生成された第1のナノファイバー6を収集する第1の電極8が配設されている。第1の電極8は、平面視で糸移動経路2を挟んで小穴5とは略反対側に位置した状態で小穴5と同期して回転するように、回転体3と同期して矢印bの如く回転するリング状ないし筒状の回転部材9上に配設されている。第1の電極8は、少なくとも頂部が、半径が数mm〜10mm程度の半球形又はそれに類似した形状で、尖った部分の無いものが好ましい。尖った部分があると、その部分からイオン風が発生し、異常放電の発生原因となるためである。
【0029】
そして、小穴5から流出する原料溶液に電荷を帯電させ、第1の電極8にて第1のナノファイバー6を収集するため、本実施形態では、ノズル部材4を接地し、第1の電極8に高電圧発生手段10にて1kV〜100kV、好適には10kV〜100kVの正(又は負、図示例は正)の高電圧を印加している。これにより、ノズル部材4と第1の電極8間に電界が発生し、小穴5から流出する原料溶液には負(又は正)の電荷が帯電し、負(又は正)に帯電した第1のナノファイバー6がそれとは逆極性の高電圧が印加されている第1の電極8に収集される。なお、ノズル部材4に高電圧発生手段(図示せず)にて負(又は正)の高電圧を印加して、流出する原料溶液及びナノファイバーに負(又は正)の電荷を帯電させるようにしても良く、その場合には第1の電極8を接地しても、若しくは第1の電極8に高電圧発生手段9にて正(又は負)の高電圧を印加しても良い。
【0030】
こうして、ノズル部材4と第1の電極8が芯糸1に同期回転するのに伴って、第1の電極8にて収集された第1のナノファイバー6が移動する芯糸1の回りに絡まって巻き付けられ、芯糸1に第1のナノファイバー6が撚られた一次複合糸12が形成される。かくして、第1のナノファイバー生成手段7と第1の電極8にて一次複合糸製造手段11が構成されている。
【0031】
以上の一次複合糸製造手段11から糸移動経路2の下手側に適当な距離の位置に、形成された一次複合糸12が貫通する貫通孔13aを軸芯部に有するとともに、軸芯回りに矢印cの如く回転駆動可能に構成され、かつ先端に小穴15を有するノズル部材14が1つ又は複数設けられた回転体13が配設されている。そして、小穴15から電荷を帯電されて流出した原料溶液が電荷誘導紡糸法にて延伸されて第2のナノファイバー16が生成される。かくして、これら回転体13、ノズル部材14、ノズル部材14に原料溶液を供給する原料溶液供給手段(図示せず)、及び原料溶液に電荷を帯電する手段(後述)にて第2のナノファイバー生成手段17が構成されている。
【0032】
また、回転体13から糸移動経路2の下手側に適当な距離の位置に、生成された第2のナノファイバー16を収集する第2の電極18が配設されている。第2の電極18は、平面視で糸移動経路2を挟んで小穴15とは略反対側に位置した状態で小穴15と同期して回転するように、回転体13と同期して矢印dの如く回転するリング状ないし筒状の回転部材19上に配設されている。また、小穴15から流出する原料溶液に電荷を帯電させ、第2の電極18にて第2のナノファイバー16を吸引するため、本実施形態では、ノズル部材14を接地し、第2の電極18に高電圧発生手段20にて正(又は負、図示例は正)の高電圧を印加している。これにより、ノズル部材14と第2の電極18間に電界が発生し、小穴15から流出する原料溶液には負(又は正)の電荷が帯電し、負(又は正)に帯電した第2のナノファイバー16がそれとは逆極性の高電圧が印加されている第2の電極18に吸引される。
【0033】
第2の電極18にて収集された第2のナノファイバー16は、ノズル部材14と第2の電極18が一次複合糸12の回りに同期回転するのに伴って、移動する一次複合糸12の回りに絡まって巻き付けられ、一次複合糸12に第2のナノファイバー16が撚られた二次複合糸22が形成される。かくして、第2のナノファイバー生成手段17と第2の電極18にて、一次複合糸製造手段11とほぼ同様の構成の二次複合糸製造手段21が構成されている。
【0034】
なお、本実施形態では、図1に示したように、糸移動経路2に沿って一次複合糸製造手段11と二次複合糸製造手段21を配設した例を示したが、三次、四次・・・の複合糸製造手段を配設することもでき、そうすることで芯糸1の外周にナノファイバーを多層に撚った複合糸を製造することができる。
【0035】
以上の構成により、本実施形態によれば、図2に示すように、芯糸1の外周回りに第1のナノファイバー6が巻き付いて撚られ、さらにその外周回りに第2のナノファイバー16が巻き付いて撚られた二次複合糸22が製造される。こうして製造される二次複合糸22は、例えば第1のナノファイバー生成手段7にて生成される第1のナノファイバー6を必要な強度を持たせるための組成と繊維径を有するものとし、第2のナノファイバー生成手段17にて生成される第2のナノファイバー16を肌触りの良好な特性を持たせるための組成と繊維径を有するものとすることで、必要な強度と肌触りを有する複合糸を一工程で生産性良く製造することができる。これらのナノファイバー6、16の組成と繊維径は、その原料溶液の組成と濃度、子穴5、15の径、高電圧発生手段10、20にて印加する電圧の高さ等によって決定される。
【0036】
第1、第2のナノファイバー6、16の原料溶液としては、高分子物質を溶媒に溶解したものが好適である。その高分子物質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフラテート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ナイロン、アラミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチド等が好適なものとして例示でき、さらには核酸や蛋白質などの生体高分子なども例示でき、これらより選ばれる少なくとも一種が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0037】
また、使用できる溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン、水等を例示でき、これらより選ばれる少なくとも一種が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。原料溶液の中の溶媒の占める割合は、60%位から98%位が好適で、使用する高分子物質の材料、溶媒の種類、生成するナノファイバーの径等によって適切に決定される。
【0038】
また、芯糸1としては、必要とする複合糸22の特性に応じて任意の材質と線径のモノフィラメントや撚糸を選択して用いることができる。さらに、芯糸1として、特殊なガスや薬液に晒したり、光や熱を付与するなどの物理化学的な処理を施すことによって、分解して除去できる材質のものを使用しても良く、そうすると、例えば一次、二次、三次の複合糸製造手段を配設することで、図3に示すように、性質の異なる複数層のナノファイバー層23a、23b、23cにて構成された中空糸24を生産性良く製造することができる。
【0039】
また、本実施形態においては、所定の糸移動経路2に沿って芯糸1を移動させつつ、その糸移動経路2の周囲を回転する小穴5、15から原料溶液を流出させて電荷誘導紡糸法にてナノファイバー6、16を生成するとともに、生成したナノファイバー6、16を小穴5、15とは糸移動経路2を挟んで略反対側の位置で小穴5、15と同期して回転する電極8、18に向けて流動させるようにしているので、生成されたナノファイバー6、16が線状若しくはその周囲の小さな断面の空間内を殆ど乱れることなく電極8、18に向かって流動し、かつ小穴5、15と電極8、18の同期回転に伴って流動してきたナノファイバー6、16が芯糸1や一次複合糸12に絡み、芯糸1に規則正しく巻き付くことになり、それによって形態や物性の均一な二次複合糸22を安定的に製造することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、本発明の複合糸の製造方法及び装置の第2の実施形態について、図4を参照して説明する。なお、以下の実施形態の説明においては、先行する実施形態と共通の構成要素については同一の参照符号を付して説明を省略し、主として相違点についてのみ説明する。
【0041】
上記第1の実施形態においては、一次複合糸製造手段11における回転体3と第1の電極8の回転方向a、bと、二次複合糸製造手段21における回転体13と第2の電極18の回転方向c、dが共に同じ方向であり、第1のナノファイバー6と第2のナノファイバー16が同一方向に巻き付けられるようにした例を示したが、本実施形態においては、一次複合糸製造手段11における回転体3と第1の電極8の回転方向a、bと、二次複合糸製造手段21における回転体13と第2の電極18の回転方向e、fを互いに逆方向にしている。こうすることで、第1のナノファイバー6と第2のナノファイバー16の撚り方向が交互に逆方向になるので、より強度の高い複合糸を製造することができる。
【0042】
(第3の実施形態)
次に、本発明の複合糸の製造方法及び装置の第3の実施形態について、図5を参照して説明する。
【0043】
上記第1の実施形態では、一次複合糸製造手段11にて製造された一次複合糸12を直接二次複合糸製造手段21に供給し、二次複合糸製造手段21にて製造された二次複合糸22をそのまま回収するようにした例を示したが、本実施形態においては、図5(a)に示すように、一次複合糸製造手段11と二次複合糸製造手段21の間に、一次複合糸12に所要の処理を施す第1の処理部25を配設し、二次複合糸製造手段21の後段に、製造された二次複合糸22に所要の処理を施す第2の処理部26を配設している。
【0044】
第1の処理部25及び第2の処理部26の処理内容としては、図5(b)に示すように、糸移動経路2の側方に熱風吹出し手段27又はヒータを配設し、一次複合糸12や二次複合糸22に熱を加えて残存している溶媒を完全に除去する処理や、図5(c)に示すように、糸移動経路2を挟んで一対の加圧ローラ28a、28bを配設し、糸移動経路2を移動する一次複合糸12や二次複合糸22を圧縮したり、加圧ローラ28a、28bの回転速度を一次複合糸製造手段11や二次複合糸製造手段21における製造速度より速くして一次複合糸12や二次複合糸22を延伸したり、加圧ローラ28a、28bにヒータを内蔵させて一次複合糸12や二次複合糸22のナノファイバー6、16を熱圧着させたりする処理などが挙げられる。このように処理部25、26にて製造した複合糸12、22に対して、熱を加えて溶媒をより完全に蒸発させたり、圧力を加えて延伸したりするなどの所要の処理を施すことで、複合糸の品質の向上を図ることができる。
【0045】
(第4の実施形態)
次に、本発明の複合糸の製造方法及び装置の第4の実施形態について、図6を参照して説明する。
【0046】
上記第1の実施形態では、糸移動経路2の周囲を回転する回転体3、13に設けた1つの又は近接配置した複数の小穴5、15から原料溶液を流出させて電荷誘導紡糸法にてナノファイバー6、16を生成する第1と第2のナノファイバー生成手段7、17と、小穴5、15とは糸移動経路2を挟んで略反対側の位置で小穴5、15と同期して回転する電極8、18にて一次複合糸製造手段11と二次複合糸製造手段21をそれぞれ構成した例を示したが、本実施形態では、図6に示すように、回転体3、13の下面に複数のノズル部材4を全周にわたって配設し、その先端の小穴5からナノファイバー6、16の原料溶液を流出させるように構成した第1と第2のナノファイバー生成手段31、41と、糸移動経路2を取り囲む環状で、矢印g、hの如く、回転体3、13の回転方向a、cに対してそれぞれ逆方向に回転駆動させるように構成された電極32、42とで一次複合糸製造手段11と二次複合糸製造手段21をそれぞれ構成している。
【0047】
本実施形態においては、上記実施形態と同様に複数の特性を兼ね備えている二次複合糸22を一工程で生産性良く複合糸を製造することができ、さらに多数の小穴5、15から多量のナノファイバー6、16を生成できるので、高い生産性を確保することができるとともに、電極32、42を小穴5、15とは逆方向に回転させているので、ナノファイバー6、16を芯糸1や一次複合糸12に確実に絡ませて撚りの強い一次複合糸12や二次複合糸22を製造することができる。
【0048】
なお、電極32、42は、図示の如く、回転体3、13側の一端部に拡大頭部を有する軸体にて構成し、かつその拡大頭部の形状を軸芯部に貫通孔を有する断面ハート形の回転体とするのが好適である。電極32、42はその拡大頭部の外表面が導電性を有するものであれば良く、他の部分は必ずしも導電性を有する必要はない。また、電極32、42の拡大頭部の最大外径は、回転体3、13と電極32、42間の距離の1/100〜1/10の範囲、好ましくは1/50〜1/15、さらに好ましくは1/25〜1/15に設定するのが好適である。そうすることで、回転体3、13と電極32、42の間の電界によって発生する電気力線が、回転体3、13の小穴5、15が配設されている面から出て電極32、42の拡大頭部の貫通孔の周囲の環状突出部に収束するように形成され、それによって帯電して流出した原料溶液及び生成されたナノファイバー6、16が電極32、42に向けて上記電気力線に沿って吸引され、ナノファイバー6、16を確実に集束させて芯糸1や一次複合糸12により強く絡ませることができる。
【0049】
また、本実施形態においても、図6に仮想線で示すように、一次複合糸12に所要の処理を施す第1の処理部25や、製造された二次複合糸22に所要の処理を施す第2の処理部26を配設するのが好ましい。
【0050】
なお、本実施形態においては、回転体3、13と、電極32、42を逆方向に回転させているが、同方向に回転させてもよく、回転体3、13と電極32、42の回転数が異なるように構成すれば、同様の効果が得られる。また、回転体3、13と電極32、42は、両方が同時に回転する必要はなく、少なくとも一次複合糸製造手段11と二次複合糸製造手段21のそれぞれにおいて、回転体3、13と電極32、42の内の一方が回転すれば、同様の効果が得られる。また、一次複合糸製造手段11において回転している回転体3と電極32の回転方向と、二次複合糸製造手段21において回転している回転体13と電極42の回転方向を、逆方向に構成すれば、一次複合糸12と二次複合糸22のナノファイバーの撚り方向が交互に逆方向になるので、より強度の高い複合糸を製造することができる。
【0051】
(第5の実施形態)
次に、本発明の複合糸の製造方法及び装置の第5の実施形態について、図7を参照して説明する。
【0052】
上記第4の実施形態では、回転体3、13に配設された複数の小穴5、15から略下向きに原料溶液を流出させてナノファイバー6、16を生成するように構成した例を示したが、本実施形態の第3と第4のナノファイバー生成手段31、41では、回転体3、13が、外周面に複数の小穴5、15が配設され、内部に原料溶液が供給される回転容器33、43にて構成され、これら回転容器33、43を高速で回転させることで発生する遠心力にて原料溶液を小穴5、15から流出させ、ナノファイバー6、16を生成するように構成されている。また、回転容器33、43に対して、糸移動経路2の上手側位置に送風手段34、44が配設され、送風手段34、44にて下手側に向けて偏向気体流35、45を発生させることで、遠心力にて小穴5、15から放射状に原料溶液が流出して生成されるナノファイバー6、16を糸移動経路2に下手側に向けて確実に偏向流動させ、その後逆方向に回転する電極32、42にて吸引することで確実に芯糸1又は一次複合糸12の回りに撚られるように構成されている。なお、図7において、32a、42aは電極32、42の回転駆動手段、32b、42bは電極32、42と回転駆動手段32a、42aを連結する絶縁筒体、33a、43aは回転容器33、43の回転駆動手段である。
【0053】
本実施形態においても、第4の実施形態と同様の作用効果が得られるとともに、回転容器33、43の外周の小穴5、15から遠心力にて原料溶液を流出させるので、電荷誘導紡糸法による延伸に先立って電荷を帯電した原料溶液が遠心力の作用で延伸され、かつそのため電荷の相互影響を受けないので、多数の小穴5、15を近接して配置しても円滑にかつ均一に原料溶液を流出・延伸することができ、その後電荷誘導紡糸法にて延伸することで、多量のナノファイバー6、16を効率的に生成することができ、複合糸の生産性を著しく向上できるという効果が得られる。
【0054】
なお、本実施形態においては、回転体33、43と、電極32、42を逆方向に回転させているが、同方向に回転させてもよく、回転体33、43と電極32、42の回転数が異なるように構成すれば、同様の効果が得られる。また、回転体3、13と電極32、42は、両方が同時に回転する必要はなく、少なくとも一次複合糸製造手段11と二次複合糸製造手段21のそれぞれにおいて、回転体33、43と電極32、42の内の一方が回転すれば、同様の効果が得られる。また、一次複合糸製造手段11において回転している回転体33と電極32の回転方向と、二次複合糸製造手段21において回転している回転体43と電極42の回転方向を、逆方向に構成すれば、一次複合糸12と二次複合糸22のナノファイバーの撚り方向が交互に逆方向になるので、より強度の高い複合糸を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の複合糸の製造方法及び装置によれば、移動する芯糸の回りに電荷誘導紡糸法にて生成した第1のナノファイバーを巻き付けて一次複合糸を形成し、同様に第2のナノファイバーを一次複合糸の回りに巻き付けて二次複合糸を形成し、その後必要に応じて三次複合糸等々を順次形成することで生産性良く複合糸を製造することができ、ナノファイバーを複数層に撚った複合糸の生産に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施形態における複合糸の製造方法及び装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】同実施形態にて製造した複合糸の横断模式図。
【図3】同実施形態にて製造可能な他の複合糸の横断模式図。
【図4】本発明の第2の実施形態における複合糸の製造方法及び装置の概略構成を示す斜視図。
【図5】本発明の第3の実施形態における複合糸の製造方法及び装置の概略構成を示し、(a)は斜視図、(b)は処理部の一例の構成図、(c)は処理部の他の例の構成図。
【図6】本発明の第4の実施形態における複合糸の製造方法及び装置の概略構成を示す斜視図。
【図7】本発明の第5の実施形態における複合糸の製造方法及び装置の概略構成を示す正面図。
【図8】従来例の複合糸の構成図。
【符号の説明】
【0057】
1 芯糸
2 糸移動経路
5 小穴
6 第1のナノファイバー
7 第1のナノファイバー生成手段
8 第1の電極
11 一次複合糸製造手段
12 一次複合糸
15 小穴
16 第2のナノファイバー
17 第2のナノファイバー生成手段
18 第2の電極
21 二次複合糸製造手段
22 二次複合糸
25 第1の処理部
26 第2の処理部
31 第3のナノファイバー生成手段
32 第3の電極
33 回転容器(回転体)
41 第4のナノファイバー生成手段
42 第4の電極
43 回転容器(回転体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯糸を移動させる工程と、移動する芯糸の周囲に配置した小穴から原料溶液を流出させ電荷誘導紡糸法にて生成した第1のナノファイバーを芯糸の回りに巻き付けて一次複合糸を形成する第1の撚り糸工程と、第1の撚り糸工程を経て移動する一次複合糸の周囲に配置した小穴から原料溶液を流出させて電荷誘導紡糸法にて生成した第2のナノファイバーを一次複合糸の回りに巻き付けて二次複合糸を形成する第2の撚り糸工程とを少なくとも有することを特徴とする複合糸の製造方法。
【請求項2】
第1の撚り糸工程と第2の撚り糸工程で、ナノファイバーの巻き付き方向を逆にすることを特徴とする請求項1記載の複合糸の製造方法。
【請求項3】
任意の撚り糸工程の後に、形成された複合糸を少なくとも熱又は圧力で処理することを特徴とする請求項1又は2記載の複合糸の製造方法。
【請求項4】
芯糸を所定の経路を通して供給する芯糸供給手段と、
芯糸の周囲を回転する少なくとも1つの小穴から原料溶液を流出させるとともに流出する原料溶液に電荷を帯電させる第1のナノファイバー生成手段と、芯糸を挟んで小穴とは略反対側の位置で小穴と同期して回転するとともに原料溶液の帯電電荷とは逆極性の電圧を印加され又は接地された第1の電極とからなり、芯糸の回りにナノファイバーを巻き付けた一次複合糸を製造する一次複合糸製造手段と、
一次複合糸の周囲を回転する少なくとも1つの小穴から原料溶液を流出させるとともに流出する原料溶液に電荷を帯電させる第2のナノファイバー生成手段と、一次複合糸を挟んで小穴とは略反対側の位置で小穴と同期して回転するとともに原料溶液の帯電電荷とは逆極性の電圧を印加され又は接地された第2の電極とからなり、一次複合糸の回りにナノファイバーを巻き付けた二次複合糸を製造する二次複合糸製造手段と
を少なくとも備えたことを特徴とする複合糸の製造装置。
【請求項5】
芯糸を所定の経路を通して供給する芯糸供給手段と、
芯糸の周囲に配置した複数の小穴から原料溶液を流出させるとともに流出する原料溶液に電荷を帯電させる第3のナノファイバー生成手段と、芯糸を取り囲むように配置されかつ原料溶液の帯電電荷とは逆極性の電圧を印加され又は接地された第3の電極とからなり、前記小穴若しくは電極の内の少なくとも一方を回転させることで芯糸の回りにナノファイバーを巻き付けた一次複合糸を製造する一次複合糸製造手段と、
一次複合糸の周囲に配置した複数の小穴から原料溶液を流出させるとともに流出する原料溶液に電荷を帯電させる第4のナノファイバー生成手段と、一次複合糸を取り囲むように配置されて原料溶液の帯電電荷とは逆極性の電圧を印加され又は接地された第4の電極とからなり、前記小穴若しくは電極の内の少なくとも一方を回転させることで一次複合糸の回りにナノファイバーを巻き付けた二次複合糸を製造する二次複合糸製造手段と
を少なくとも備えたことを特徴とする複合糸の製造装置。
【請求項6】
一次複合糸製造手段と二次複合糸製造手段で、回転する小穴若しくは電極の回転方向を逆にすることを特徴とする請求項4又は5に記載の複合糸の製造装置。
【請求項7】
任意の複合糸製造手段の後に、形成された複合糸を少なくとも熱又は圧力で処理する処理手段を配置したことを特徴とする請求項4〜6の何れか1つに記載の複合糸の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−144289(P2009−144289A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323794(P2007−323794)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新的部材産業創出プログラム/新産業創造高度部材基盤技術開発/先端機能発現型構造繊維部材基盤技術の開発」にかかる委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】