説明

複合記録材料及び画像形成物の製造方法

【課題】 カードとホログラム転写シートの組み合わせからなる複合記録材料で、それらの材料を廃棄する際、焼却の場合、焼却温度の高熱化が必要なく、また燃焼ガス等の発生が少なく、さらに埋め立ての場合、生態系への影響もなく、かつ意匠性、偽造防止性に優れた複合記録材料及びその複合記録材料から得られる画像形成物の製造方法を提供する。
【解決手段】 基材シート2上に、少なくとも保護層4、ホログラム形成層5、ホログラム効果層6、接着層7をこの順に形成した転写層8を設けたホログラム転写シート10と、被転写体20との組み合わせからなる複合記録材料1において、前記接着層7と被転写体20とを重ね合わせて、加熱により被転写体20上に、ホログラム転写シート10から転写層8を転写可能であり、ホログラム転写シート10の基材シート2及び被転写体20を構成する基材が、生分解性を有するプラスチックフィルム又はシートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材シート上に、保護層、ホログラム形成層、ホログラム効果層、接着層をこの順に形成した転写層を設けたホログラム転写シートと、被転写体との組み合わせからなる複合記録材料であり、前記接着層と被転写体とを重ね合わせて、加熱手段により被転写体上に、ホログラム転写シートから転写層を転写可能である複合記録材料及びその複合記録材料から形成される画像形成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運転免許証、クレジットカード、社員証等のカード類の意匠性や装飾性を高めるため、また偽造防止性を高めるために、特許文献1に示すように、ホログラムや回折格子パターン等の光回折体をカード表面に転写形成する技術が知られている。これは、基材シート上に、ホログラムを構成する層を転写可能に設けたホログラム転写箔(ホログラム転写シート)を用いて、被転写体であるカードに、ホログラムを転写して形成するものである。
【0003】
しかし、上記の場合、ホログラムをカードに転写した後に、ホログラム転写箔の基材シートが、剥離片として残り、廃棄する必要性が生じている。ホログラム転写箔の基材シートは、ポリエチレンテレフタレート(PET)のプラスチックフィルムを用いており、その廃棄処理は、焼却又は埋め立てなどの処理が行なわれている。しかし、焼却処理では焼却温度の高熱化が起こり、そのため焼却炉の耐久性の問題や、燃焼ガスなどによる公害問題がある。また埋め立て処理では、土壌中に分解せず原型のまま存在する問題などがあるため、半永久的に廃棄物として土壌中に残留して自然環境に放置されると、美観上の問題だけでなく、生態系への影響も深刻な問題である。
【0004】
上記の廃棄処理の問題は、カード自体を廃棄する場合でも考慮する必要があり、例えば、特許文献2にあるように、カード基材が生分解性を有するポリ乳酸を使用したものが提案されていて、廃棄対策として有効なものである。しかし、上記のようなホログラム転写箔を使用して、カードに意匠性や偽造防止性の高い点を付加させる場合には、カードを製造する際の使用する材料全体の廃棄処理の点では、十分な対応がとられていないことが、現状の問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−162206号公報
【特許文献2】特開平8−175058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は上記に挙げた課題である、被転写体であるカードのみならず、カードとホログラム転写シートの組み合わせからなる複合記録材料において、それらの材料を廃棄する上で、焼却の場合では、焼却温度の高熱化が必要なく、また燃焼ガスなどの発生が少なく、さらに埋め立ての場合では、生態系への影響もなく、かつ意匠性、偽造防止性に優れた複合記録材料及びその複合記録材料から形成される画像形成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、請求項1として、基材シート上に、少なくとも保護層、ホログラム形成層、ホログラム効果層、接着層をこの順に形成した転写層を設けたホログラム転写シートと、被転写体との組み合わせからなる複合記録材料において、前記接着層と被転写体とを重ね合わせて、加熱により被転写体上に、ホログラム転写シートから転写層を転写可能であり、ホログラム転写シートの基材シート及び被転写体を構成する基材が、生分解性を有するプラスチックフィルム又はシートであることを特徴とするものである。
【0008】
これにより、被転写体上にホログラムを転写により形成するためのホログラム転写シートと、被転写体の両方において、ホログラム転写シートのホログラム転写した後に、剥離片として残存する基材シート自体、さらに被転写体を構成する基材自体が、生分解性を有するプラスチックであり、廃棄上で焼却の場合では、発熱量が小さいので、焼却炉を傷めることもなく、またダイオキシン等の有害物質が放出されることもない。また、廃棄における埋め立ての場合では、生分解性プラスチックは、土壌等に存在する微生物の働きにより、水と二酸化炭素に完全分解されるので、自然にやさしく、生態系への悪影響もない。このような廃棄上での問題がなく、かつ被転写体にはホログラム転写シートから転写されて形成されたホログラムを有するので、意匠性及び偽造防止性に優れたものである。
【0009】
また、請求項2として、基材シート上に、少なくとも保護層、ホログラム形成層、ホログラム効果層、接着層をこの順に形成した転写層を設けたホログラム転写シートと、被転写体との組み合わせからなる複合記録材料を用いて、被転写体上にホログラム画像が形成されている画像形成物の製造方法において、前記ホログラム転写シートの接着層と、被転写体の表面とを接するように、重ね合わせて、加熱手段により被転写体上に、ホログラム転写シートから転写層を転写し、ホログラム転写シートの基材シートを、被転写体から剥離して廃棄し、被転写体上にホログラム画像を形成する方法であり、前記のホログラム転写シートの基材シート及び被転写体を構成する基材が、生分解性を有するプラスチックフィルム又はシートを使用していることを特徴とするものである。
【0010】
上記の製造方法をとることにより、ホログラム転写シートからホログラム画像を有する転写層を、加熱手段を用いるだけで、簡単に被転写体上にホログラム画像を形成でき、また、その画像形成物を製造する際に、ホログラム転写シートの基材シートは、被転写体から剥離して廃棄されるが、その基材シートは生分解性を有するプラスチックであり、廃棄上の問題がない。さらに、製造された画像形成物は、その構成の主な部分を占める、被転写体の基材が、生分解性を有するプラスチックであり、不用になった画像形成物を廃棄する際に、上記と同様に、焼却処理、埋め立て処理で問題が生じない。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記構成の複合記録材料とすることにより、最終的に形成される画像形成物を廃棄する点だけではなく、その画像形成物を製造する際に、ホログラム画像を有する転写層を被転写体へ転写後に、ホログラム転写シートの基材シートを、被転写体から剥離して廃棄する点でも、両方の廃棄する上で、焼却の場合では、焼却温度の高熱化が必要なく、また燃焼ガスなどの発生が少なく、さらに埋め立ての場合では、生態系への影響もないものである。さらに、上記構成の画像形成物の製造方法により、形成されるホログラム画像を有する画像形成物は、意匠性、偽造防止性に優れたものであり、非常に有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の複合記録材料の一つの実施形態を示す概略の説明図である。
【図2】本発明の画像形成物の製造方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、発明の実施の形態について、詳述する。
図1に本発明の複合記録材料である一つの実施形態を示す。複合記録材料1は、ホログラム転写シート10と、被転写体20との組み合わせからなり、図示したホログラム転写シート10は、基材シート2上に、剥離層3を介して、保護層4、ホログラム形成層5、ホログラム効果層6、接着層7を順次形成した転写層8を設けた構成である。この場合では、ホログラム転写シート10は、基材シートが剥離層3から剥離して、剥離層3、保護層4、ホログラム形成層5、ホログラム効果層6、接着層7を順次形成した転写層8が、被転写体20に転写される。尚、ホログラム転写シートにおいて、保護層が基材シートとの剥離性を有するものであれば、剥離層を設けないで、基材シートに直接、保護層を設けることができる。
【0014】
以下、本発明の複合記録材料を構成する各要素及び各層について、詳細に説明する。
(ホログラム転写シート)
本発明におけるホログラム転写シートは、基材シート上に、転写層を熱転写により剥離可能に設けたものであり、転写層は、保護層、ホログラム形成層、ホログラム効果層、接着層をこの順に形成した構成である。
【0015】
(基材シート)
ホログラム転写シートの接着層と、被転写体とを重ね合わせて、加熱により、被転写体上に、ホログラム転写シートから転写層を転写するものであり、ホログラム転写シートにおける基材シート2は、被転写体上に転写層を転写後は、被転写体から剥離されて廃棄されるものである。本発明では、その基材シートの材質として、生分解性を有するプラスチックに限定させたので、廃棄上における、焼却の場合では、焼却温度の高熱化が必要なく、また燃焼ガスなどの発生が少なく、さらに埋め立ての場合では、生態系への影響もない。
【0016】
生分解性を有するプラスチックフィルム又はシートは、その材質としては、化学合成系として、ラクトン系樹脂:ε−カプロラクトン、4−メチルカプロラクトン、3,5,5−トリメチルカプロラクトン、3,3,5−トリメチルカプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、エナントラクトンの単独重合体またはこれら2種以上のモノマーの共重合体、これらの混合物、ポリカプロラクトンが好適である。
【0017】
もしくは、ポリブチレンサクシネート系樹脂:ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリブチレンサクシネートとポリカプロラクトンとの混合物、ポリブチレンサクシネートとポリブチレンサクシネート・アジペートとの混合物、ポリブチレンサクシネート・アジペートとポリ乳酸との混合物、もしくは、ポリ乳酸、ポリ乳酸とD−乳酸との混合物など、もしくは、低分子量脂肪族ジカルボン酸と低分子量脂肪族ジオールより合成したポリエステル樹脂、例えばコハク酸とブタンジオール、エチレングリコールとの組み合わせや、シュウ酸とネオペンチルグリコール、ブタンジオール、エチレングリコールとの組み合わせなど、変性ポリビニルアルコールと脂肪族ポリエステル樹脂と澱粉の混合物、低分子量脂肪族ポリエステルに脂肪族イソシアネートを添加して重合させたものなどが好適である。
【0018】
天然物系としては、ゼラチンなどの動物性天然物質、セルロースなどの植物性天然物質など:澱粉脂肪酸エステル、澱粉キトナン・セルロースなど、微生物生産系として、ポリヒドロキシブチレートや、ポリエステル系:炭素源として3−ヒドロキシプロピオン酸、4−ヒドロキシ酪酸、γ―ブチロラクトンをベースとするP(3HB−CO―4HB)、炭素源としてプロピオン酸、吉草酸をベースとしたP(3HB−CO―3HV)などが好適である。
【0019】
また、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート・テレフタレート共重合体等の分子量が数十万を越えるポリエステル系樹脂、菌体内にポリ(3−ヒドロキシ酪酸)ホモポリマーを顆粒状態で蓄積しこれを取り出した高結晶性ポリエステルなども使用される。透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシートの厚さは、10μm〜200μm、特に、20μm〜40μmが好適である。厚さが大きくなると、それだけ廃棄処理量が多くなることに加え、転写層を被転写体へ転写する際のエネルギーも増えてしまうため、可能な限り厚さを小さくすることが望ましい。
【0020】
(剥離層)
剥離層3は、基材シートから剥離しやすく、且つホログラム形成層等の転写後には、被転写体における最表面となるので、透明性、耐薬品性、耐擦過性などに優れた樹脂、例えば、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂やポリエステル樹脂から形成することが好ましい。剥離層の厚みは乾燥状態で、0.1〜10μm程度である。また、剥離層の耐擦過性、硬度などを向上させる目的で剥離層中に無機や有機の微粒子を含有させることができる。
【0021】
ホログラム転写シートにおいて、基材シートと保護層との間に、離型層を設けることができる。この離型層は、ホログラム形成層等の転写に際して、基材シートに残る層である。従って離型層を形成する場合には、離型層と接する層が転写層として、被転写体側では最表面となる。該離型層が既に形成されている基材シート、または離型性が良好な表面を有する基材シートを用いる場合には、上記離型層の形成は必要ない。離型層は、離型性に優れた樹脂、例えば、シリコーン樹脂、シリコーンアクリル樹脂、シリコーンウレタン樹脂などから、0.1〜3μm程度の厚さ(乾燥状態)で形成する。
【0022】
(保護層)
転写層を構成する保護層4は、上記の剥離層形成用樹脂と同様な樹脂から形成することができる。特に保護層に高い硬度、耐薬品性、耐擦過性などが要求される場合には保護層を紫外線硬化性樹脂から形成する。紫外線硬化性樹脂は、アクリル変性ポリエステル樹脂、アクリル変性エポキシ樹脂、アクリル変性ウレタン樹脂などの重合性オリゴマーとスチレン、アクリル酸エステルなどの単官能モノマーおよび/または多官能モノマーと光重合開始剤とを必須成分とし、その他種々の添加剤を含むものであり、塗料分野、印刷インキ分野、コーティング分野などにおいて広く使用されており、紫外線の照射によって耐溶剤性、耐擦傷性などに優れた強靭な被膜を形成する。このような保護層にも必要に応じて無機または有機の微粒子を添加することができる。このように形成する保護層の厚みは乾燥状態で0.1〜10μmであることが好ましい。
【0023】
(ホログラム形成層)
ホログラム形成層5は、好ましくは紫外線硬化性または電子線硬化性樹脂から厚み(乾燥状態)約1〜10μm程度に形成し、ホログラムの凹凸形状(回折格子)を有する原版を用いて、エンボスなどで、表面凹凸を有するホログラム画像を表面に形成し、その後に完全硬化させる。
【0024】
(ホログラム効果層)
ホログラム効果層6は、アルミニウムの蒸着(反射型ホログラム)、金属酸化物のスパッタリング(透明型ホログラム)などにより厚み約100〜2,000Å程度に形成する。なお、透明型のホログラム効果層の下に、ホログラム画像のバックグラウンドとなる色印刷が施されていてもよい。該ホログラム効果層の表面にはホログラム効果層の保護およびホログラム効果層と接着層との密着性を確保するためにアンカー層を形成することが好ましい。
【0025】
(接着層)
ホログラム転写シートの接着層7の形成に用いる接着剤としては、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂など、従来公知の何れの感熱接着剤も使用できる。本発明のホログラム転写シートをカードなどの被転写体と組み合わせて使用する場合には、その接着層は乾燥時0.2〜5μm程度の厚みに形成し、本発明のホログラム転写シートを通常の紙、例えば、有価証券などの紙製基材などの被転写体と組み合わせて使用する場合には、その接着層は乾燥時8〜15μm程度の厚みに形成することが好ましい。
【0026】
(被転写体)
本発明で使用する被転写体20は、生分解性を有するプラスチックからなる基材から構成される。その生分解性を有するプラスチックについては、上記のホログラム転写シートの基材シートで説明したものと同様のものが使用できる。但し、被転写体における基材は、通常厚み約50〜500μm程度のものが使用される。
【0027】
(画像形成物の製造方法)
上記に説明した複合記録材料であるホログラム転写シートと被転写体とを組み合わせて、被転写体上にホログラム画像を形成する画像形成物の製造方法について、図2を用いて、説明する。図2の(1)には、基材シート2上に、保護層4、ホログラム形成層5、ホログラム効果層6、接着層7をこの順に形成した転写層8を設けたホログラム転写シート10と、被転写体20とを、ホログラム転写シート10の接着層7と、被転写体20の表面とを接するように、重ね合わせた状態で、加熱、圧接した状態(工程)を示すものである。
【0028】
上記の状態の次に、ホログラム転写シート10と被転写体20とが積層されたもの(積層体)から、基材シート2をその積層体から剥がすと、図2の(2)に示すように、基材シート2が保護層4から分離して、剥がれ、被転写体20の上に保護層4、ホログラム形成層5、ホログラム効果層6、接着層7の順となった転写層8が転写されて形成される。その際に、基材シート2が剥離されて、不用なものとなり、廃棄することになる。本発明では、その廃棄される基材シートが、生分解性を有するプラスチックフィルム又はシートを使用している。さらに、上記の転写層8が設けられた被転写体20は、ホログラム画像が形成された画像形成物として、有効に使用される。そして、その画像形成物も、一定の期間が過ぎて、有効期限が過ぎた際、あるいは不用になった際に、上記の基材シートと同様に、廃棄されるものである。ホログラム転写シートの基材シート及び上記画像形成物の廃棄においても、製造された画像形成物は、その構成の主な部分を占める、被転写体の基材が、さらにホログラム転写シートの基材シートも、両方とも生分解性を有するプラスチックであり、廃棄の際の焼却処理、埋め立て処理で問題が生じない。
【0029】
焼却処理では、焼却の温度が比較的高熱化が必要なく、例えばポリ乳酸と汎用ポリスチレンのプラスチックを比較すると、焼却の際の燃焼熱量でみると、生分解性を有するプラスチックであるポリ乳酸は、汎用ポリスチレンの燃焼熱量の約半分であり、また二酸化炭素の排出量で比較すると、ポリ乳酸は汎用ポリスチレンの約53%である。ポリ乳酸の焼却処理で、ダイオキシン等の有害物質が放出されることがない。さらに埋め立ての場合では、石油を原料とする一般のプラスチックは、強度があり加工性がよいことから、今まで主流として使用されているが、土壌中で腐らなく、水と二酸化炭素に完全分解するものでない。それに対して、本発明で使用される生分解性を有するプラスチックフィルム又はシートは、土壌に埋め立てたり、水中に廃棄された場合、自然界に存在する微生物の働きにより、水と二酸化炭素に完全分解される。
【0030】
本発明の画像形成物の製造方法では、ホログラム転写シートの接着層と、被転写体の表面とを接するように、重ね合わせた状態で、加熱、圧接する工程をとるが、その圧接および加熱手段は、熱ロール方式等の周知の手段により行なうことができるが、被転写体の一部分にホログラムを形成する必要があるような場合は、サーマルヘッドもしくはホットスタンプ等の手段を用いることが好ましい。本発明においては、熱転写プリンター等に用いられるサーマルヘッドとプラテンによる加熱、圧接手段を用いることが特に好ましい。サーマルヘッドにより圧接および加熱を行うことにより、連続したホログラム画像の形成をより簡易に行なうことができる。
【実施例】
【0031】
次に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。以下、特に断りのない限り、部又は%は質量基準である。
(実施例1)
基材シート2は、透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシートとして、三菱樹脂(株)製エコロージュシート(ポリ乳酸 融点165℃)厚さ25μmを使用し、その基材シートの一方の面に、ポリメチルメタクリレート系樹脂8部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂2部、およびポリエチレンワックス0.1部を含む剥離ニスをグラビアリバース法で1.5μm(乾燥時)の塗布量で、塗布および乾燥して剥離層3を形成した。次に、剥離層の上に、紫外線硬化性ハードコート樹脂(ザ・インクテック製、KIZ044)を乾燥時で2μmの厚さになるように、上記と同様の方法で塗布および紫外線硬化させて、保護層4を形成した。
【0032】
次に、メラミン系架橋性紫外線硬化性樹脂を上記と同様の方法で2.0μm(乾燥時)の塗布量で塗布および乾燥してホログラム形成層5を形成し、その表面にレインボーホログラムの凹凸形状(回折格子)を、ホログラム原版を用いて形成し、その後に完全硬化させた。該ホログラム形成層の微小凹凸面に酸化チタン透明蒸着層を厚み50nmに形成し、ホログラム効果層6(透明屈折反射層)を形成した。さらに、ホログラム効果層の上に、接着層7を下記組成の塗工液で、乾燥時3μmになるように、塗布及び乾燥して、ホログラム転写シートを作製した。
【0033】
(接着層塗工液)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂 20部
アクリル樹脂 10部
酢酸エチル 20部
トルエン 50部
【0034】
上記の作製したホログラム転写シートの接着層と、下記条件の被転写体の表面とを接するように、重ね合わせて、ホットスタンプ方式の加熱及び圧接手段により被転写体上に、ホログラム転写シートから転写層を転写した。
(被転写体);ポリ−L−乳酸を主成分とするポリ乳酸系樹脂(重量平均分子量20万)の100部に対し、着色顔料であるチタン白を10部と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を0.5部とを添加した組成物を押出成形で製膜し、次いでこのシートを延伸倍率3倍で2軸延伸し、100℃で熱処理して厚さ200μmの不透明の基材を得た。この基材表面に、グラビア印刷により絵柄を印刷して絵柄層を形成した。
【0035】
上記の転写層の転写は、上記被転写体の絵柄が印刷されていない部分に、転写層が設けられるように、行なった。被転写体上には、ホログラム画像が形成され、また絵柄を有する画像形成物であり、意匠性及び偽造防止性に非常に優れたものであった。また、上記のホログラム転写シートと被転写体の組み合わせである複合記録材料とすることにより、最終的に形成される画像形成物を廃棄する点だけではなく、その画像形成物を製造する際に、ホログラム画像を有する転写層を被転写体へ転写後に、ホログラム転写シートの基材シートを、被転写体から剥離して廃棄する点でも、両方の廃棄する上で、焼却の場合では、焼却温度が高熱することなく、また燃焼ガスなどの発生が少なく、さらに埋め立ての場合では、生分解性を有するプラスチックフィルム又はシートを主体に用いているので、自然界に存在する微生物の働きにより、水と二酸化炭素に完全分解され、生態系への影響もないものであった。すなわち、画像形成物を製造する際の使用する材料全体の廃棄処理の点で問題が生じ無いものであった。また、上記に示した画像形成物の製造方法は、ホログラム画像等を有する画像形成物を簡易に作製することができた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の複合記録材料を用いて製造される画像形成物は、被転写体に印刷、その他加工を施すことにより、定期券、磁気カード、IDカード、会員カード、キャッシュカード、クレジットカード、またプリペイドカード全般等に適用できるものである。
【符号の説明】
【0037】
1 複合記録材料
2 基材シート
3 剥離層
4 保護層
5 ホログラム形成層
6 ホログラム効果層
7 接着層
8 転写層
10 ホログラム転写シート
20 被転写体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シート上に、少なくとも保護層、ホログラム形成層、ホログラム効果層、接着層をこの順に形成した転写層を設けたホログラム転写シートと、被転写体との組み合わせからなる複合記録材料において、前記接着層と被転写体とを重ね合わせて、加熱により被転写体上に、ホログラム転写シートから転写層を転写可能であり、ホログラム転写シートの基材シート及び被転写体を構成する基材が、生分解性を有するプラスチックフィルム又はシートであることを特徴とする複合記録材料。
【請求項2】
基材シート上に、少なくとも保護層、ホログラム形成層、ホログラム効果層、接着層をこの順に形成した転写層を設けたホログラム転写シートと、被転写体との組み合わせからなる複合記録材料を用いて、被転写体上にホログラム画像が形成されている画像形成物の製造方法において、前記ホログラム転写シートの接着層と、被転写体の表面とを接するように、重ね合わせて、加熱手段により被転写体上に、ホログラム転写シートから転写層を転写し、ホログラム転写シートの基材シートを、被転写体から剥離して廃棄し、被転写体上にホログラム画像を形成する方法であり、前記のホログラム転写シートの基材シート及び被転写体を構成する基材が、生分解性を有するプラスチックフィルム又はシートを使用していることを特徴とする画像形成物の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−2588(P2011−2588A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144732(P2009−144732)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】