説明

複合電磁継電器

【課題】第1の接点部と第2の接点部の接点開閉動作のタイミングを任意に設定し、接点開閉時におけるアーク放電による接点溶着および接点部の発熱を最適に抑える。
【解決手段】電磁石のコイル221に印加される第1の電圧に応じて開閉する第1の接点部421,461を有する第1電磁継電器101と、第2の電磁石のコイル222に印加される第2の電圧に応じて開閉する第2の接点部422,462を有する第2電磁継電器102とを備え、第1の接点部421,461と第2の接点部422,462が並列に接続される。制御部7は、第1の接点部421,461と第2の接点部422,462が閉じている状態で接点開信号が入力されると、第2の接点部422,462が開放した後に第1の設定部421,461が開放するように第1の電圧および第2の電圧を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列に接続される複数の接点部を有する複合電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の可動接点と一対の固定接点とを並列に配置し、電磁石の作動に伴いカードを介して一対の可動接点を駆動し、一対の固定接点に接離するようにした電磁継電器が知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1記載の電磁継電器では、一対の可動接点のうち一方を耐アーク性に優れた材質により、他方を通電性に優れた材質によりそれぞれ構成し、各可動接点の位置を互いにずらしてカードに係合している。そして、一方の可動接点が一方の固定接点に接触した後に他方の可動接点が他方の固定接点に接触し、他方の可動接点が他方の固定接点から離間した後に一方の可動接点が一方の固定接点から離間するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−166431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の電磁継電器のように可動接点の位置をずらしてカードに係合するようにしたのでは、一方の可動接点に対する他方の可動接点の開閉動作のタイミングのずれが、接点開放時と接点閉成時において同一となる。したがって、接点開動作におけるタイミングのずれと接点閉動作におけるタイミングのずれを互いに異ならせる等、接点開閉動作のタイミングを最適に設定することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、第1の電磁石と、該第1の電磁石のコイルに印加される第1の電圧に応じて開閉する第1の接点部とを有する第1の電磁継電器と、第2の電磁石と、該第2の電磁石のコイルに印加される第2の電圧に応じて開閉する第2の接点部とを有する第2の電磁継電器とを備え、第1の接点部と第2の接点部とが並列に接続されてなる複合電磁継電器であって、接点開閉信号の入力に応じて第1の電圧および第2の電圧を制御する制御部をさらに備え、制御部は、第1の接点部と第2の接点部が閉じている状態で接点開信号が入力されると、第2の接点部が開放した後に第1の設定部が開放するように第1の電圧および第2の電圧を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第1の電磁継電器の電磁石のコイルに印加される電圧と第2の電磁継電器の電磁石のコイルに印加される電圧を制御部によって制御するので、第1の接点部に対する第2の接点部の開閉動作のタイミングのずれを任意の大きさに容易に設定することができ、接点開閉時におけるアーク放電による接点溶着や接点部の発熱を最適に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態に係る複合電磁継電器の外観形状を示す斜視図。
【図2】図1の電磁継電器の内部構成を示す分解斜視図。
【図3】図2の電磁継電器の組み立て構造を示す縦断面図。
【図4】本発明の実施の形態に係る複合電磁継電器のリレー回路を示す電気回路図。
【図5】図4のコントロールユニットで実行される処理の一例を示すフローチャート。
【図6】本実施の形態に係る複合電磁継電器の動作を説明する図。
【図7】図4の変形例を示す図。
【図8】図4の別の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1〜図8を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る複合電磁継電器の外観形状を示す斜視図である。本実施の形態に係る複合電磁継電器は、プリント基板100の上面に並列に実装された左右一対の電磁継電器(第1電磁継電器101,第2電磁継電器102)を備える。この複合電磁継電器は、例えば車載用電動パワーステアリング等の構成部品として用いられ、複合電磁継電器には全体として例えば60A程度の大電流が流れる。なお、以下では、便宜上、図示のように前後左右方向および上下方向を定義し、これに従い各部の構成を説明する。
【0009】
図2は、第1電磁継電器101の内部構成を示す斜視図であり、図3は、その組立構造を示す縦断面図である。なお、第1電磁継電器101と第2電磁継電器102とは接点部の材質が互いに異なるものの他の構成は互いに同一であり、図2、3では第1電磁継電器101の内部構成のみを示す。第1電磁継電器101は、ベースブロック1と、ベースブロック1に組み込まれる電磁石2と、電磁石2により駆動される接極子3と、接極子3の移動に伴って開閉動作する接点部4と、接極子3の動きを接点部4に伝達するカード5とを備える。電磁石2と接極子3は電磁石装置を構成し、電磁石装置の作動に応じてカード5を介して接点部4が開閉する。
【0010】
ベースブロック1は、電気絶縁性の樹脂部品であり、ベース部10と、ベース部10上の左右一端部から左右他端部にかけて略円弧状に立設され、電磁石1を部分的に包囲する筒状壁11とを一体に有する。筒状壁11の前端部は、電磁石1を組み込むために開放されている。一方、筒状壁11の後端部には、図3に示すように電磁石1と接点部4との間に介在する端壁12が形成され、端壁12により電磁石1と接点部4との間の電気的絶縁が確保されている。
【0011】
図2に示すように、電磁石2は、略円筒形状の巻枠21と、巻枠21の外周面に装着されたコイル22と、巻枠21の内部に挿入される鉄心23とを有する。コイル22の中心軸線と鉄心23の中心軸線はそれぞれ前後方向を向いている。巻枠21は、電気絶縁性の樹脂成形品であり、中空の胴部と、胴部の前後方向両端にそれぞれ設けられる鍔部24a,24bと、前方側の鍔部24bから前方に突設される一対の端子支持部24cとを一体に有する。各端子支持部24cにはそれぞれコイル端子25a,25bが圧入され、コイル端子25a,25bにコイル22を形成する巻線の両端がそれぞれ接続されている。コイル端子25a,25bは、電磁石2をベースブロック1に組み込む際に、ベースブロック1の前端に設けられた左右一対の溝部13にそれぞれ圧入される。
【0012】
図3に示すように、鉄心23は前後方向に延在し、その前端部には平坦な端面を有する頭部(磁極部)23aが一体に形成され、この頭部23aは巻枠21の鍔部24bの外面上に露出している。一方、鉄心23の後端部は、巻枠21の鍔部24aから突出し、その突出部には、継鉄26が、例えばかしめにより連結されている。
【0013】
継鉄26は、例えば磁性鋼から形成される略L字形状の板部材であり、その短尺部分が巻枠2の鍔部24aに沿って上下方向に延設され、長尺部分がコイル22の外側を前後方向に延設されている。継鉄26の長尺部分の前側末端部26aは、鉄心23の頭部23aの鉛直下方に位置し、この末端部26aに接極子3が揺動可能に連結されている。継鉄26は、電磁石2をベースブロック1に組み込む際に、図2に示すベースブロック1の溝部13の内側に設けられた左右一対のレール状突起部14の間に圧入される。
【0014】
接極子3は、例えば磁性鋼から形成される平板状部材であり、略L字状の板ばね31を介して継鉄26に弾性的相対移動可能に連結されるとともに、鉄心23の頭部23aに対向して配置される。接極子3と板ばね31とは、例えば連結部32においてかしめにより固定され、板ばね31と継鉄26とは、例えば連結部33において係合固定される。板ばね31は、継鉄26と接極子3との間で弾性ヒンジとして機能し、それ自体のばね作用により、接極子3を鉄心23の頭部23aから離れる方向(前方)に付勢する。
【0015】
接極子3は、電磁石2(電磁石装置)の非作動時には、その下端部が板ばね31のばね力によって継鉄26の末端部26aに当接されることにより、図3に示すように鉄心23の頭部23aから所定距離だけ離れた復帰位置に静止保持される。電磁石2(電磁石装置)が作動すると、その磁気吸引力により接極子3は、その下端部と継鉄26の末端部26aとの係合部位を中心に、板ばね31のばね力に抗して鉄心頭部23aに接近する方向(後方)へ揺動し、作動位置に静止保持される。
【0016】
接点部4は、固定接点部と可動接点部とを有する。固定接点部は、導電性の板部材から所定形状に打ち抜いて構成される固定接点部材41を有する。固定接点部材41は、一体成形によりベースブロック1と一体に設けられ、筒状壁11の端壁12に対向して配置されている。より詳しく言うと、固定接点部材41は略L字形状をなし、ベースブロック1のベース部10の左端側を上下方向に貫通し、筒状壁11の端壁12に沿って立ち上がる第1平板部41aと、第1平板部41aの上端から右方向に延在する第2平板部41bと、第1平板部41aに連設されてベースブロック1の下方に延在する端子部41cとを有する。第2平板部41bの先端部前面には固定接点42が設けられている。
【0017】
可動接点部は、ベースばね部材43と、結合部45を介して例えば溶接などによりベースばね部材43に一体に結合される可動ばね部材44とを有する。ベースばね部材43および可動ばね部材44は、導電性の薄板を所定形状に打ち抜いて構成される。ベースばね部材43は、一体成形によりベースブロック1と一体に設けられ、筒状壁11の端壁12に対向して配置されている。より詳しく言うと、ベースばね部材43は、端壁12と固定接点部材41との間で、ベースブロック1のベース部10の右端側を上下方向に貫通し、筒状壁11の端壁12に沿って立ち上がる平板部43aと、平板部43aに連設されてベースブロック1の下方に延在する端子部43baとを有する。
【0018】
可動ばね部材44は、全体が略矩形状を呈し、その右下角部に結合部45が設けられ、右上角部後面に、固定接点42に対向して可動接点46が設けられている。可動接点46と結合部45との間には左右方向に切り欠き47が設けられ、さらに可動ばね部材44は、切り欠き47の下方において一部が折り曲げられている。このため、可動ばね部材44は、結合部45を支点にした前後方向への弾性変形が容易であり、この弾性変形により、可動接点46を固定接点42に接触および離間させることができ、接点部4の開閉動作が可能となる。なお、ベースばね部材43と可動ばね部材44を別々に形成した後に接合するのではなく、ベースばね部材43と可動ばね部材44を一体に形成してもよい。
【0019】
カード5は、電気絶縁性の樹脂部品であり、前後方向に延在する左右一対の縦板51と、左右方向に延在する前後一対の横板52とにより、全体が略矩形の枠形状をなしている。カード5は、その枠の内側にベースブロック1の筒状壁11の上部を収容した状態で、ベースブロック1の上方にベース部10に対向して配置される。カード5の後端中央部には、後方に向けて連結部53が突設されている。
【0020】
図3に示すように、連結部53の底面には、可動ばね部材44の上端中央の凹部48(図2)が圧入され、カード5と可動ばね部材44とが一体に連結されている。なお、図2に示すように可動ばね部材44の左上角部には貫通穴49が開口され、この貫通穴49に、カード5の後端部に設けられた図示しない突起部が挿入されることにより、カード5が可動ばね部材44から離脱することが防止される。
【0021】
カード5の前端部には、左右両側に係合爪54が設けられている。係合爪54には接極子3の左右側端部が係合し、カード5と接極子3とが一体に連結される。これによりカード5を介して接極子3と可動ばね部材44とが一体化され、接極子3の前後方向の揺動に連動して可動ばね部材44が前後方向に移動し、接点部4が開閉動作する。カード5は、ベースブロック1に電磁石2と接極子3と接点部4を取り付けた後に取り付けられる。カード5の取付後に、接着剤を介してベースブロック1に電気絶縁性の樹脂部品である略ボックス状のカバー6が取り付けられ、電磁継電器101の内部空間が密閉される。
【0022】
電磁継電器101.102は以下のように動作する。すなわち、各電磁継電器101,102の電磁石2のコイル22にそれぞれ作動電圧が印加されると、板ばね31のばね力に抗して接極子3が鉄心23に吸引される。これによりカード5が前方に移動し、可動ばね部材44が弾性変形して可動接点46が固定接点42に当接し、電磁継電器101,102がそれぞれ動作状態となる。一方、コイル22の印加電圧が開放電圧以下に下がると、図3に示すように板ばね31のばね力により接極子3が鉄心23から離間する。これによりカード5が前方に移動し、可動接点46が固定接点42から開放し、電磁継電器101,102がそれぞれ復帰状態となる。
【0023】
第1電磁継電器101のコイル端子25a,25bおよび端子部41c,43bと第2電磁継電器102のコイル端子25a,25bおよび端子部41c,43bは、それぞれプリント基板100(図1)にはんだ付けされ、リレー回路が構成される。図4は、リレー回路の構成を示す電気回路図である。なお、図中、421,461は、それぞれ第1電磁継電器101の固定接点(第1固定接点)および可動接点(第1可動接点)、422,462は、それぞれ第2電磁継電器102の固定接点(第2固定接点)および可動接点(第2可動接点)であり、221,222は、それぞれ第1電磁継電器101のコイル(第1コイル)および第2電磁継電器102のコイル(第2コイル)である。
【0024】
図4に示すように、各電磁継電器101,102の端子部43bはそれぞれ電源70に接続され、端子部41cはそれぞれ負荷75に接続されている。すなわち、第1電磁継電器101と第2継電器102とは並列接続されている。負荷75は、例えばパワーステアリングの操舵力をアシストするための電動モータであり、図の初期状態では負荷75に電流が供給されず、操舵力アシスト機能がオフ(非作動)である。この状態から第1可動接点461および第2可動接点462が閉じると、並列リレー回路を介して電源70から負荷75に電流が流れ、操舵力アシスト機能がオン(作動)する。
【0025】
ここで、第1可動接点461および第1固定接点421は、耐アーク性能に優れた材質によって構成されている。これに対し、第2可動接点462および第2固定接点422は、低接触抵抗の材質であり、第1可動接点461および第1固定接点421よりも接触抵抗の小さい材質によって構成されている。例えば第1可動接点461および第1固定接点421は、AgSnInOにより、第2可動接点462および第2固定接点422は、AgNiにより、それぞれ構成されている。なお、第1可動接点461および第1固定接点421を耐アーク接点、第2可動接点462および第2固定接点422を低接触抵抗接点とも呼ぶ。
【0026】
各電磁継電器101,102のコイル端子25aはそれぞれ電源70に接続され、コイル端子25bはそれぞれ第1スイッチ71および第2スイッチ72に接続されている。第1スイッチ71および第2スイッチ72は、例えばプリント基板100に形成されたトランジスタ等の電子式スイッチによって構成され、スイッチ71,72の開閉はコントロールユニット7によって制御される。
【0027】
コントロールユニット7は、CPU,ROM,RAM,その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成される。コントロールユニット7には、信号生成部74が接続されている。信号生成部74は、ステアリング操作に応じてパワステオン信号およびパワステオフ信号を出力し、操舵力アシスト機能の作動および非作動を指令する。この信号生成部74からの入力信号に応じてコントロールユニット7は以下のような処理を実行する。
【0028】
図5は、コントロールユニット7で実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えばエンジンキースイッチのオンによって開始される。なお、初期状態では第1スイッチ71および第2スイッチ72がともに開放されている。ステップS1では、信号生成部74からパワステオン信号が入力されたか否かを判定する。ステップS1が肯定されるとステップS2に進み、第1スイッチ71に制御信号(閉信号)を出力し、第1スイッチ71を閉じる。これにより第1コイル221に電源70からのコイル電圧が印加され、第1コイル221が励磁されて、第1可動接点461が閉成する。
【0029】
次いで、ステップS3で、第1スイッチ71に閉信号を出力してから所定時間taが経過したか否かを判定する。所定時間taは、接点部4の材質や負荷電流の大きさ等を考慮して予め設定されるものであり、例えば10msec程度に設定されている。ステップS3が肯定されるとステップS4に進み、第2スイッチ72に制御信号(閉信号)を出力し、第2スイッチ72を閉じる。これにより第2コイル222に電源70からのコイル電圧が印加され、第2コイル222が励磁され、第2可動接点462が閉成する。
【0030】
ステップS5では、信号生成部74からパワステオフ信号が入力されたか否かを判定する。ステップS5が肯定されるとステップS6に進み、第2スイッチ72に制御信号(開信号)を出力し、第2スイッチ72を開く。これにより第2コイル222への電圧の印加が停止して第2コイル222が非励磁となり、第2可動接点462が開放する。
【0031】
次いで、ステップS7で、第2スイッチ72に開信号を出力してから所定時間tbが経過したか否かを判定する。所定時間tbは、接点部4の材質や負荷電流の大きさ等を考慮して予め設定されるものであり、例えば所定時間taに等しい値に設定されている。ステップS7が肯定されるとステップS8に進み、第1スイッチ72に制御信号(開信号)を出力し、第1スイッチ72を開く。これにより第1コイル221への電圧の印加が停止して第1コイル221が非励磁となり、第1可動接点461が開放する。
【0032】
本実施の形態に係る複合電磁継電器の動作をより具体的に説明する。図6は、各電磁継電器101,102の接点部4の開閉動作を示すタイミングチャートである。時点t0では、コントロールユニット7にパワステオン信号が入力されておらず、各接点部4はともに開放(オフ)している。
【0033】
時点t1で、ステアリング操作に応じてコントロールユニット7にパワステオン信号が入力されると、第1コイル221が励磁され、第1可動接点461が閉成する(ステップS2)。これにより第1電磁継電器101を介して負荷(電動モータ)75に電流が流れ、電動モータが作動する。ここで、第1固定接点421および第1可動接点461は、耐アーク性能に優れた材質AgSnInOによって構成されているため、アーク放電による接点溶着を抑えることができ、接点寿命を延ばすことができる。
【0034】
第1時点から所定時間taが経過すると、時点t2で、第2コイル222が励磁され、第2可動接点462が閉成する(ステップS4)。これにより第1電磁継電器101と第2電磁継電器102を介して負荷75に電流が流れる。ここで、第2固定接点422および第2可動接点462は、低接触抵抗の材質AgNiによって構成されているため、第1電磁継電器101よりも第2電磁継電器102に多くの電流が流れる。このように電気抵抗が小さい接点部4に、より多くの電流が流れることで、回路全体に大電流が流れる場合であっても、接点部4の発熱を抑えることができる。この場合、時点t1〜t2の間は第1電磁継電器101のみに電流が流れるが、この電流が流れる時間taは短時間に設定されているため、この間の発熱は問題にならない。
【0035】
その後、時点t3で、コントロールユニット7にパワステオフ信号が入力されると、第2コイル221が非励磁となり、第2可動接点462が開放する(ステップS6)。さらに、その所定時間tb後の時点t4で、第1コイルが非励磁となり、第1可動接点461が開放する(ステップS8)。これにより負荷75への電流の流れが遮断され、パワステ用電動モータが非作動となる。この場合、第2可動接点462の開放後に第1可動接点461が開放するため、アーク放電は耐アーク性能に優れた第1可動接点461の開放時に生じることとなり、アーク放電による接点溶着を抑えることができる。また、第1可動接点461のみが閉成している時間tbは短く設定されているため、第1電磁継電器101の接点部4の発熱も抑えることができる。
【0036】
本実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)第1可動接点461と第2可動接点462が開放している状態でパワステオン信号が入力されると、第1コイル221が励磁され、その所定時間ta後に第2コイル222が励磁されるようにスイッチ71,72の切換を制御し、第1可動接点461と第2可動接点462が閉じている状態でパワステオフ信号が入力されると、第1コイル221が非励磁となり、その所定時間tb後に第2コイル222が非励磁となるようにスイッチ71,72の切換を制御するようにした。これにより第1可動接点461と第2可動接点462の開閉動作のタイミングのずれ(時間ta,tb)を任意の値に容易に設定することができ、接点材質や負荷電流等を考慮して、アーク放電による影響を抑えつつ接点部4の発熱を抑えた最適な接点開閉動作が可能である。
(2)第1可動接点461および第1固定接点421を耐アーク性能に優れたAgSnInOにより構成し、第2可動接点462および第2固定接点422を低接触抵抗のAgNiにより構成するので、アーク放電による接点溶着を防止しつつ、大電流が負荷75に流れる場合の接点部4における発熱を抑えることができる。
【0037】
なお、上記実施の形態では、一対の電磁継電器101,102を並列に接続して各コイル221,222の印加電圧を制御するようにしたが、3個以上の電磁継電器を並列に接続して各コイルの印加電圧を制御してもよい。図7は、その一例として、3個の電磁継電器101〜103を並列に接続した場合の電気回路図である。
【0038】
図7に示すように、第1電磁継電器101の第1可動接点461、第2電磁継電器102の第2可動接点462および第3電磁継電器103の第3可動接点463はそれぞれ電源70に接続され、第1電磁継電器101の第1固定接点421、第2電磁継電器102の第2固定接点422および第3電磁継電器103の第3固定接点423はそれぞれ負荷75に接続されている。また、第1電磁継電器101の第1コイル221、第2電磁継電器102の第2コイル222および第3電磁継電器103の第3コイル223の各プラス側端子はそれぞれ電源70に接続され、第1コイル221、第2コイル222、第3コイル223のマイナス側端子は第1スイッチ71、第2スイッチ72および第3スイッチ7にそれぞれ接続されている。第3可動接点463および第3固定接点423は、第2可動接点462および第2固定接点422と同一の材質により構成されている。
【0039】
スイッチ71〜7はコントロールユニット7により制御される。すなわち、スイッチ71〜7が開状態で、コントロールユニット7にパワステオン信号が入力されると、第1スイッチ71が閉じられ、その後所定時間taが経過すると、第2スイッチ72および第3スイッチ7が閉じられる。スイッチ71〜7が閉状態で、コントロールユニット7にパワステオフ信号が入力されると、第2スイッチ72および第3スイッチ7が開放され、その後所定時間tbが経過すると、第1スイッチ71が開放される。
【0040】
これにより接点開閉時におけるアーク放電による接点溶着および接点部4の発熱を抑えることができる。この場合、電源70からの電流が第1電磁継電器101および第2電磁継電器102だけでなく第3電磁継電器103にも流れるため、各電磁継電器101〜103を流れる電流を減少させることができ、大電流が流れる回路に用いて好適である。なお、第3可動接点463および第3固定接点423を、第1可動接点461および第2固定接点421と同一の材質により構成することもできる。この場合、パワステオン信号が入力されると、第1スイッチ71および第3スイッチ7を閉じ、その所定時間ta後に第2スイッチ72を閉じるとともに、パワステオフ信号が入力されると、第2スイッチ72を開放し、その所定時間tb後に第1スイッチ71および第3スイッチ7を開放すればよい。4つ以上の電磁継電器を並列に接続する場合にも、同様に接点開閉動作のタイミングをずらすようにすればよい。
【0041】
なお、上記実施の形態では、コントロールユニット7からの制御信号によりスイッチ71,72を切り換えることで、第1電磁継電器101と第2電磁継電器102の各接点42,46間の開閉動作のタイミングをずらすようにしたが、コイル22の巻数や接点42,46間のギャップ等、電磁継電器101,102自体の構成を互いに異ならせることで、開閉動作のタイミングをずらすようにしてもよい。図8は、そのように電磁継電器101,102を構成した場合の電気回路図の一例である。図8では、図4と異なり、第1コイル221および第2コイル222のマイナス側端子はそれぞれ同一のスイッチ76に接続されている。
【0042】
スイッチ76は、コントロールユニット7からの制御信号により制御される。すなわち、パワステオン信号が入力されると、スイッチ76は閉じられ、パワステオフ信号が入力されると、スイッチ76は開放される。この場合、第2可動接点462の開閉動作のタイミングを第1可動接点461の開閉動作のタイミングよりも遅らせるように各電磁継電器101,102のコイル巻数や接点間ギャップ等を調整することで、上述したのと同様の効果が得られる。
【0043】
なお、上記実施の形態では、カード5を介して可動接点46を駆動するようにしたが(図2、図3)、電磁石2と電磁石2のコイル22に印加される電圧に応じて開閉する接点部4とを有するのであれば、電磁継電器の構成はいかなるものでもよく、第1電磁継電器101(第1の電磁継電器)、第2電磁継電器102(第2の電磁継電器)および第3電磁継電器103(第3の電磁継電器)の構成は上述したものに限らない。コイル22の励磁により接点部4が開放し、非励磁により接点部4が閉成するようなものでもよい。第1可動接点461と第1固定接点421(第1の接点部)をAgSnInOにより構成し、第2可動接点462と第2固定接点422(第2の接点部)をAgNiにより構成したが、耐アーク接点および低接触抵抗接点の材質はこれに限らない。例えば第1の接点部をAgSnOにより構成し、第2の接点部をAgにより構成してもよい。第3可動接点463と第3固定接点423(第3の接点部)についても同様に、AgSnOやAgにより構成してもよい。
【0044】
上記実施の形態では、外部からのパワステオンオフ信号の入力に応じてコントロールユニット7からの制御信号によりスイッチ71〜73を切り換えることで、各コイル221〜223に印加される電圧を制御するようにしたが、制御部の構成はこれに限らない。図5のステップS3、ステップS7における所定時間ta、tbを同一の値に設定したが、互いに異なった値に設定してもよい。所定時間tbを0として、アーク放電が顕著である第1可動接点461の接点開時におけるタイミングのみを遅らせるようにしてもよい。
【0045】
上記実施の形態では、複合電磁継電器を電動パワーステアリングに用いるようしたが、他の電気部品にも同様に適用することができる。したがって、パワステオフ信号およびパワステオン信号以外を接点開信号および接点閉信号として用いることもできる。すなわち、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施の形態の複合電磁継電器に限定されない。
【符号の説明】
【0046】
2 電磁石
221 第1コイル
222 第2コイル
223 第3コイル
4 接点部
421 第1固定接点
422 第2固定接点
423 第3固定接点
461 第1可動接点
462 第2可動接点
463 第3可動接点
7 コントロールユニット
71 第1スイッチ
72 第2スイッチ
73 第3スイッチ
101 第1電磁継電器
102 第2電磁継電器
103 第3電磁継電器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電磁石と、該第1の電磁石のコイルに印加される第1の電圧に応じて開閉する第1の接点部とを有する第1の電磁継電器と、
第2の電磁石と、該第2の電磁石のコイルに印加される第2の電圧に応じて開閉する第2の接点部とを有する第2の電磁継電器とを備え、
前記第1の接点部と前記第2の接点部とが並列に接続されてなる複合電磁継電器であって、
接点開閉信号の入力に応じて前記第1の電圧および前記第2の電圧を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記第1の接点部と前記第2の接点部が閉じている状態で接点開信号が入力されると、前記第2の接点部が開放した後に前記第1の設定部が開放するように前記第1の電圧および前記第2の電圧を制御することを特徴とする複合電磁継電器。
【請求項2】
請求項1に記載の複合電磁継電器において、
前記制御部は、さらに前記第1の接点部と前記第2の接点部が開放している状態で接点閉信号が入力されると、前記第1の接点部が閉じた後に前記第2の接点部が閉じるように前記第1の電圧および前記第2の電圧を制御することを特徴とする複合電磁継電器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の複合電磁継電器において、
前記第1の接点部は、AgSnInOにより、前記第2の接点部は、AgNiによりそれぞれ構成されていることを特徴とする複合電磁継電器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合電磁継電器において、
第3の電磁石と、該第3の電磁石のコイルに印加される第3の電圧に応じて開閉する第3の接点部とを有する第3の電磁継電器をさらに備え、
前記第1の接点部、前記第2の接点部および前記第3の接点部は互いに並列に接続され、
前記制御部は、前記第1の接点部、前記第2の接点部および前記第3の接点部が閉じている状態で前記接点開信号が入力されると、前記第2の接点部および前記第3の接点部が開放した後に前記第1接点部が開放し、あるいは前記第2の接点部が開放した後に前記第1の接点部および前記第3の接点部が開放するように前記第1の電圧、前記第2の電圧および前記第3の電圧を制御することを特徴とする複合電磁継電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−198999(P2012−198999A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60741(P2011−60741)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】