説明

複数の導電性ストリップを用いてサンプルを試験するための二重共鳴構造部

DNP−NMRおよび/またはENDOR試験のための二重共鳴構造部10が記載されている。二重共鳴構造部10は、EPRに適した電磁場を生成するマイクロ波共鳴器30と、NMRに適した電磁場を生成するHF共鳴器12と、を備えている。HF共鳴器12は、電気的な導電性を有する複数のストリップ14であって、個々のストリップにおいて同一方向に同時に流れるHF電流が複数のストリップ14において生成され得るよう、並べて配置されるとともに電気的に接続された複数のストリップ14を備えている。HF共鳴器12の一部分が、マイクロ波共鳴器30の一部を同時に形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルによる、DNP(動的核分極)および/またはENDOR(電子核二重共鳴)のための二重共鳴構造部に関する。さらに本発明は、請求項24のプリアンブルによる、DNPおよび/またはENDORによってサンプルを調査する方法、並びに、DNP−NMR(核磁気共鳴)分光計、ENDOR分光計、および組み合わされたDNP−NMR/ENDOR分光計に関する。
【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴(NMR)分光法(NMR分光法)は、特に有機化学および生化学において、分子の構造および動力学を解明するための最も重要な分光学的方法の1つである。しかしながら、NMR分光計の感度は、多くの分野、例えば、生体外および生体外における多数の生体分子の調査において、その限界に達している。感度の欠落は、ある程度は、より高い外部磁場を印加することによって改善され得る。しかし、このことは、限られた程度においてのみ可能であり、また、非常に高い労力を伴う。
【0003】
生体分子におけるNMR測定の感度を増加させるための非常に期待できる代替法が、例えば、「動的核分極」、または、「dynamic nuclear polarization」という英語の省略形である「DNP法」として知られている方法から構成されている。DNPは、「オーバーハウザー効果」として知られている原理による、電子のスピン分極の原子核への転移に起因する。NMR分光法においてDNPを利用可能なものとするため、電子スピン分極は、はじめに、原子核スピン系に転移される必要がある。このことのため、サンプルは、所定の電子スピン共鳴周波数(一般にはEPR周波数として参照される周波数)で励起される。ここでEPRとは、「電子の常磁性共鳴(electronic paramagnetic resonance)」という英語の省略形である。EPR周波数は、ラーモア周波数としても知られているが、ゼーマン効果による、外部磁場内にある原子または分子の、外部磁場がない場合は縮重するであろう電子スピンエネルギー量子状態のエネルギーの分裂に対応している。エネルギー状態の分裂は、外部磁場の強度Bに比例しており、従って、EPR周波数の値は、磁場の強度の関数となっている。しかしながら、現実的な観点における適用において、周波数は常にマイクロ波の範囲となっている。EPRマイクロ波の入力による電子スピンの分極の変化は、時折、写実的に「ポンピング」と言われている。
【0004】
DNPによるNMR信号利得は、EPR転移が飽和されない限り、EPRマイクロ波の場の強度の二乗に比例している。最も高い起こりうるパワーおよび場の強度を有するEPRマイクロ波の場を得るため、マイクロ波共鳴器であって、EPR転移の刺激のためにサンプルがその中に配置されているマイクロ波共鳴器が好ましくは用いられる。
【0005】
原子核のエネルギー分裂がEPRよりも非常に小さいという相違を有してはいるが、核磁気共鳴(NMR)もまた、EPRのように、外部磁場におけるスピンの量子状態間の転移に基づいている。NMR周波数は、典型的には、二桁メガヘルツの範囲内、すなわち、まだ高周波数(HF)の範囲内にある。「高周波数」という用語の代わりに、文献はまた、「無線周波数」という用語を用いている。用語「高周波数」は、従って、NMR周波数が、包含される周波数のうち当然により低い周波数になっている、すなわち、上述のマイクロ波の周波数よりも低くなっているという事実を隠すべきではない。
【0006】
高強度のHFの場もまたNMR分光法のために必要であるので、HF共鳴コイルの形態によるHF共鳴器が一般に用いられる。従って、EPR転移のためのマイクロ波(MW)共鳴器とNMR転移のためのHFコイルとを有する、いわゆる二重共鳴構造部が、DNP−NMR実験のために利用可能となっており、これによって、同一のサンプルが、各々が高い強度を有するMW場およびHF場に同時に置かれることができる。
【0007】
概念上はDNP−NMR分光法に関連している1つの方法が、いわゆる電子核二重共鳴分光法であり、ENDOR分光法としても知られている。ENDOR分光法は、EPR分光法のうちの特別なタイプであり、ENDOR分光法において、サンプル中のNMR転移は、HF場の投入によって生成される。この場合、ENDOR分光法はHF場を用いてポンプされ、そしてEPR分光法が実施されるということを除いて、ENDOR分光法は概念上DNP−NMR分光法に非常に類似している。二重共鳴構造部はまた、ENDOR実験のためにも使用される。
【0008】
請求項1のプリアンブルによる二重共鳴構造部は、非特許文献1から知られている。この既知の二重共鳴構造部は、らせん状の導電性ストリップから形成される円筒状のマイクロ波共鳴器を備えている。らせん状の導電性ストリップは、HF共鳴器の機能を負うコイルを形成している。円筒状のMW共鳴器は、従って、らせん共鳴器とも言われている。アイリス(iris)であって、それを介してマイクロ波がらせん共鳴器に与えられ得る、というアイリスが、らせん部の横方向の表面に形成されている。共鳴器の長さは、調整可能ピストンによって調整され得る。調整可能ピストンは、らせん部の両方の端部に挿入されている。
【0009】
円筒状のTE001マイクロ波モードが既知のらせん共鳴器において励起され得るようになっており、これによって、非常に高いマイクロ波エネルギー密度がMW共鳴器において達成され得る。しかしながら、らせん共鳴器の寸法は、マイクロ波の波長に関連しており、また、EPR状態による強磁場においてマイクロ波の波長が1ミリメータよりも小さくなる場合、らせん共鳴器の小さなサイズが、らせん共鳴器に収容され得るサンプルの体積を制限する。
【0010】
液体のサンプルの場合、特に水を含んだサンプルの場合、既知のらせん共鳴器の使用に際して、その体積が、限定的ではあるが、サンプルの体積として十分に利用され得ない、という課題もある。なぜなら、サンプルは、マイクロ波の入力に伴って熱くなりすぎるからである。多大な加熱の理由は、マイクロ波の入力に伴う、水における周波数依存の誘電率によるものである。例えば、260GHzのマイクロ波周波数における水の複素誘電率は、実数成分ε’=5.6と、虚数成分ε”=5.8とを有しており、ここで、誘電性損失は、誘電率の虚数成分ε”に依存している。比較的に多大な損失は、「挿入損失」としても知られているが、サンプルの外側に比べてサンプルの内側でMW場が著しく低くなるということ、および、サンプルが多大に加熱されるということを引き起こす。
【0011】
例えば、水溶液中の生体分子が調べられる場合、サンプルの高度の加熱は全く不可能である。なぜなら、生体分子が加熱によって破壊されるかもしれないからである。本件発明者は、わずか0.1mmの直径を有する毛細管における水を含むサンプルを実験において使用し、そして、マイクロ波が導入されたときにサンプルが90度まで加熱されたことを発見した。毛細管の直径がわずか0.05mmであるとしても、17度の加熱が存在していた。このことは、以下の〔数1〕による充填率がここでは比較的に小さくなり、低減されたNMR感度を導くよう、サンプル体積が常に比較的に小さく保たれている、ということを意味している。
【数1】

ここで、Vはサンプルの体積であり、<BHFはサンプルの範囲内におけるHF磁場強度BHFの平均値であり、Vstrukは構造部の体積であり、<BHFstrukは構造部の範囲内の場における磁場強度BHFの平均値である。サンプルの過度の加熱を防ぐためにMWパワーが低減される場合、このことは、DNPにおける低減を導き、そしてこのことは、NMR感度への有害な作用を有している。
【0012】
その他の二重共鳴構造部、ENDORのためのいわゆるキャビティ共鳴器が、特許文献1に記載されている。共鳴器は、サンプルに巻きつけられており、またMWキャビティの中に配置されているHFコイルを利用している。この構造部は、ENDOR分光器には適しているが、DNPの適用には適していない。なぜなら、HFコイルは、サンプルの体積に、電気的なMW場の分布における乱れを導き、そして、サンプルの不利な加熱を導くからである。
【0013】
3つのさらなるDNPおよびEPR分光器が非特許文献2から知られている。非特許文献2の図3は、回転するサンプルであって、サンプルの回転軸の方向においてサンプルへマイクロ波の放射が導入されるサンプルを有し、導波路を利用する第1の分光器を示している。サンプル全体はコイルによって取り巻かれており、NMR共鳴器を形成している。
【0014】
図4は、第2の静的なDNP装置を示しており、ここでは、ファブリペローミラーおよび導波路が互いに対向しており、マイクロ波共鳴器を形成している。NMR場を生成するため、HF共鳴器を形成するコイルが設けられている。マイクロ波は、2つのコイル巻回体の間でファブリペロー共鳴器に入力される。そして、非特許文献2の図7は、円筒状のマイクロ波共鳴器と、HF共鳴器を形成するコイルと、を有する第3の二重共鳴構造部を開示している。ここで、HF共鳴器の長手方向軸は、マイクロ波共鳴器の長手方向軸に直交するよう配置されている。
【0015】
3つの形態全てにおいて、HF共鳴器はコイルによって形成されている。さらに、3つの形態全てにおいて、マイクロ波共鳴器およびHF共鳴器は各々、構造上および機能上、別個の部分からなっており、これらは、一般的な部品を共同で使用しない。第3の形態のみが、ENDOR実験に適切なものとなっている。
【0016】
本出願前には発行されていない特許出願DE102008017135は、二重共鳴構造部を記載しており、この場合、HF共鳴器がストリップ共鳴器からなっており、ストリップ共鳴器の一部分は同時に、マイクロ波共鳴器を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2005−121409号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Weis et al. (High-field DNP and ENDOR with novel multiple-frequency resonance structure, J. Magn. Reson. 140, 293-299 (1999))
【非特許文献2】Becerra L.R. et al.: "A Spectrometer for Dynamic Nuclear Polarization and Electron Paramagnetic Resonance at High Frequencies," Journal of Magnetic Resonance, Series A, 1995, vol. 117, pp. 28-40
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、増大された測定感度を可能とする、NNP−NMRおよび/またはENDORによって試料を調べるための二重共鳴構造部および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的は、請求項1による二重共鳴構造部および請求項24による方法によって実現される。請求項24による方法は、大まかには先行技術から知られているが、しかしながら、創意に富む二重共鳴構造部を使用することによって特徴付けられる。さらなる有利な形態が、従属請求項によってもたらされる。
【0021】
本発明の二重共鳴構造部は、HF共鳴器が複数の電気的な導電性ストリップを備え、それらが並べられるとともに電気的に接続されており、これによって、複数のストリップにおいてHF電流が生成され得る、という点で、先行技術の二重共鳴構造部とは異なっている。個々のストリップにおけるHF電流は、HF共鳴器の一部分がマイクロ波共鳴器の一部を同時に形成するよう、同時期に同方向に流れている。
【0022】
十分な強度を有するNMR転移のためのHF場は、導電性ストリップにおけるHF電流によって生成され得る。同時に、ストリップは、マイクロ波共鳴器の一部分または一セクションを形成する。ここで、関連するマイクロ波の周波数は、いわゆる“準光学的”マイクロ波からなっており、並べて配置されたHF共鳴器の導電性ストリップは、マイクロ波共鳴器のための反射器またはミラーを形成しており、反射器またはミラーにおいて、マイクロ波は準光学的に反射される。このことは、らせん状の共鳴器に比べて、開かれた構造部を生成し、この開かれた構造部は、熱の消散に関して有利になっており、また、既知のらせん状の共鳴器の場合よりも大きなサンプル体積の使用を許容する。
【0023】
本発明による二重共鳴構造部は、本出願の時には発行されていないDE102008017135における二重共鳴構造部とも、以下の点、すなわち、ストリップ形状のHF共鳴器の代わりに、並べて配置された複数のストリップが用いられるが、しかし、これらのストリップにおいてHF電流が同方向に流れる、という点で異なっている。個々のストリップの幅は、従って、単純に単一のストリップ共鳴器が使用される場合よりも非常に小さくなるよう選択され得るようになっており、同時に、HF共鳴器の全体の幅が、マイクロ波共鳴器のための十分な寸法からなるマイクロ波反射器を形成するよう十分に大きくなるということを確実にすることができる。
【0024】
狭い幅のストリップを用いることの利点は、HF共鳴器における、いわゆる“変換効率”が増大される、という点である。変換効率は、共鳴器に関して実現可能な磁場強度と、供給される電力の二乗との間の比例ファクターであり、従って、より高い変換効率は、より高い磁場強度を可能にする。同様に、高められた変換効率は、増大されたNMR測定感度を導く。変換効率は、ストリップ共鳴器の幅によって著しく制限されるので、1つの広い幅のストリップ共鳴器に代えて、並べられた複数の狭い幅の導電性ストリップを配置することが有利であり、これによって、それらは、マイクロ波共鳴器の一部として、マイクロ波のための反射器として共同で役立つことができる。
【0025】
複数の導電性ストリップは、好ましくは、グリッドの形態で互いに平行に並べられている。隣接する導電性ストリップ間の距離は、好ましくは、ストリップの幅よりも小さくなっており、とりわけ、ストリップの幅の半分よりも小さくなっている。複数の導電性ストリップから形成されるグリッドが、全体の幅が同一である単一のストリップ共鳴器よりも非常に大きい変換効率を実際に可能にし、また、複数の導電性ストリップから形成されるグリッドが同時にMW共鳴器のための反射器としても適している、ということが見出されてきた。
【0026】
導電性ストリップは、高い導電性を有する金属から構成されていてもよい。しかしながら、好ましい形態において、それらは、調べられるサンプルの磁化率にその磁化率が一致している複合材料から構成されている。
【0027】
少なくともいくつかの導電性ストリップは、好ましくは、追加導電体を用いることによって直列に接続されている。直列に接続されたストリップの列の第1端部は、好ましくは、大地電位に接続されている。さらに、直列に接続されたストリップの列の第2端部は、好ましくは、コンデンサを介して、とりわけ、調整可能なマッチングコンデンサを介して、NMR信号を生成および/または検出するためのHF生成源および/またはHF受信器に接続されているか、または接続可能になっている。
【0028】
有利な更なる形態において、MW共鳴器は、球状の反射器と、平らな反射器とを備えており、それらは、平らな反射器がHF共鳴器の一セクションまたは一部分から形成されるよう、互いに対向している。そのようなMW共鳴器はまた、“準共焦点ファブリペロー共鳴器”としても知られている。この構成において、HF共鳴器は、3つの機能を有している。
【0029】
第1は、それが、HF場であって、その磁場強度BHFが、既知のらせん状の共鳴器の磁場強度よりも大きくなっており、かつ、単一のストリップ共鳴器を有する一形態(まだ発行はされていない)における磁場強度よりも大きくなっている、HF場を生成するということである。このことは、より高いNMR感度を可能にする。
【0030】
第2は、異なった共鳴器が、それらの個々の機能を相互に損なうことなく理想的に組み合わされ得るよう、並べて配置された導電性ストリップが、MW共鳴器のための反射器として共同で機能する、という点である。結果として生じる構造部は、らせん状の共鳴器が概して使用されている場合よりも10倍大きくなり得るサンプル体積のための十分な空間を提供する。
【0031】
第3は、複数の導電性ストリップは、共同でヒートシンクとして働き、これによって、水を含むサンプルにマイクロ波とともに光を当てることによって特に生成される熱が消散され得るようになり、この結果、比較的に大きなサンプル体積でさえも、過剰な加熱無しで使用され得るようになる、という点である。
【0032】
アイリス(iris)は、これを介してマイクロ波がMW共鳴器へ供給され得るのであるが、好ましくは、球状の反射器に形成されている。アイリスは、MW共鳴器において線形に分極されたマイクロ波を生成するため、溝を付けられたアイリスであってもよい。若しくは、アイリスは、MW共鳴器において円形に分極されたマイクロ波モードを生成するため、円形の形態で設計されていてもよい。
【0033】
若しくは、マイクロ波は、マイクロ波をHF共鳴器の導電性ストリップの間に導入することによって、MW共鳴器に供給されてもよい。この目的のため、好ましくは、MW共鳴器から離れた方のHF共鳴器の面にホーン放射器が配置されている。これによって、ホーン放射器は、HF共鳴器の導電性ストリップの間の間隙を介してマイクロ波をマイクロ波共鳴器に入力することができる。ガウス強度分布を有するマイクロ波が、好ましくは、この入力のためにここで用いられる。
【0034】
球状の反射器および平らなHF共鳴器は、好ましくは、それらの間にTEM00nマイクロ波モードが形成されるよう、設計され配置される。マイクロ波共鳴器は、好ましくは、マイクロ波生成源に接続されており、またマイクロ波共鳴器は、MW共鳴器の最も低い放射モードで動作され得る。
【0035】
二重共鳴構造部において、HF共鳴器への熱的な伝導性を有する接続を有する、サンプルを受け入れるための場所が好ましくは設けられている。従って、HF共鳴器は、同時にサンプルのためのヒートシンクとして機能し、これによって、マイクロ波放射との相互作用によるサンプルの加熱の問題が著しく低減され、また、大きいサンプル体積が、同一の絶対的な加熱を実現しながら使用され得るようになる。
【0036】
サンプルを受け入れるための場所は、好ましくは、液体のサンプルを保持するデバイスを含んでおり、ここで、保持されるべき液体のサンプルの液位は、好ましくは、マイクロ波共鳴器の共鳴波長の十分の一までとなっている。サンプルは、従って、持続的なマイクロ波の電気的な成分が比較的に小さくなっている領域に制限されており、これによって、後述の1つの例示的な形態に基づいてより詳細に説明されるように、サンプルの過剰な加熱が防がれ得る。
【0037】
有利な形態において、二重共鳴構造部は、磁石におけるボアホールの中に挿入され得るプローブおよび/またはプローブヘッドとして構成されている。プローブヘッドが挿入され得るこの磁石は、静的な磁場を生成するために意図されており、この静的な磁場において、サンプルにおける本質的に縮重の量子状態は、外部の静的な磁場による電子スピンおよび/または原子核スピンの相互作用によって分裂される。プローブヘッドは、好ましくは、大地電位に接続されるハウジングを有している。
【0038】
ここに記載される二重共鳴構造部は、DNP−NMR分光器を形成するためにさらに構成される。このことのため、MW共鳴器へのマイクロ波の入力のために二重共鳴構造部に接続されたマイクロ波生成源と、HF共鳴器へのHF信号の入力、および、HF共鳴器からのHF信号の受信のために二重共鳴構造部に接続されたNMRデバイスと、が設けられている。
【0039】
同様に、本発明による二重共鳴構造部は、さらに、ENDOR分光器を形成するために構成される。ENDOR分光器においては、MW共鳴器へのマイクロ波の入力、および、MW共鳴器からのMW信号の受信のために二重共鳴構造部に接続されたマイクロ波生成源と、HF共鳴器へのHF信号の入力のために二重共鳴構造部に接続されたHF生成源と、が設けられている。さらに、本発明による二重共鳴構造部は、組み合わされたDNP−NMR/ENDOR分光器であって、両方が動作モードになっていることが可能であるDNP−NMR/ENDOR分光器において使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明のさらなる形態による二重共鳴構造部を示す斜視図。
【図2】図2は、図1の二重共鳴構造部を示す側面図であって、HF場の磁力線BHFおよびMW場の磁力線BMWを示す側面図。
【図3】図3は、二重共鳴構造部のその他の形態を示す斜視図であって、マイクロ波がHF共鳴器の導電性ストリップの間に入力される場合の図。
【図4】図4は、マイクロ波ブリッジの構成要素を示す概略図。
【図5】図5は、図4に示すマイクロ波ブリッジの機能図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明による方法におけるデバイスの更なる利点および特徴は、以下の説明から導かれる。ここで本発明が、付随する図を参照して、1つの例示的な形態に基づいて詳細に説明される。
【0042】
図1は、二重共鳴構造部10を示す斜視図であり、ここで、個々の構成要素が透過的に示されている。図2は、同一の二重共鳴構造部10の側面図であり、HF場およびマイクロ波場における磁力線BHFおよびBMWをそれぞれ示している。
【0043】
二重共鳴構造部10は、互いに平行に、かつ一平面内に並べて配置された複数(ここに示される例示的な形態においては4個)の導電性ストリップ14からなるHF共鳴器12を備えている。HF共鳴器12の導電性ストリップ14は、追加導電体16によって直列に接続されている。直列に接続された導電性ストリップ14の列の第1端部18は、大地電位に接続されている。直列に接続された導電性ストリップ14の列の第2端部20は、NMR信号を生成および/または検出するためのHF生成源(図示せず)またはHF受信器(図示せず)に接続可能となっている。コンデンサ(ここでは図示せず)、とりわけ調整可能なマッチングコンデンサが、HF共鳴器12とHF生成源および/またはHF受信器との間に設けられていてもよい。
【0044】
HF共鳴器12の導電性ストリップ14は、導電性ストリップにおける電流が常に同一方向に向けられるよう、追加導電体16によって接続されている。
【0045】
液体のサンプルを受け入れるための平らな容器の形状からなるデバイス22が、導電性ストリップ14の上に配置されている。容器22は、導電性ストリップ14の上に直接に配置されており、従って、熱的な伝導性を有する態様で導電性ストリップ14に接続されている。容器22は、水を含むサンプル、例えば調べられるべき生体分子を含むサンプルを受け入れるよう機能してもよい。導電性ストリップ14は、導電性の複合材料であって、二重共鳴構造部10を使用して調べられるべきサンプルの磁化率にその磁化率が一致している複合材料から製造されてもよい。
【0046】
アイリス26が形成されている球状の反射器24が、HF共鳴器12の上方に配置されている。球状の反射器24は導波路28に接続されており、導波路28によって、マイクロ波がHF共鳴器12と球状の反射器24との間の隙間に供給され得るようになる。アイリス26は、線形に分極されたマイクロ波モードを生成するために溝が付けられていてもよく、または、円形に分極されたマイクロ波モードを生成するために円形になっていてもよい。
【0047】
球状の反射器24およびHF共鳴器12はともに、MW共鳴器30を形成する。MW共鳴器30は、準共焦点(セミフォンフォーカル)ファブリペロー共鳴器とも言われる。球状の反射器24とHF共鳴器12との間の距離は調整可能となっており、このため、球状の反射器24とHF共鳴器12との間の距離を変えることによってMW共鳴器30の共鳴周波数が調整され得る。
【0048】
図1および2の二重共鳴構造部10の機能が、以下に説明される。
【0049】
“二重共鳴構造部”という用語は、サンプル保持器22の領域において、2つの異なった電子場のための共鳴状態が生成されることを示している。1つの共鳴は、外部磁場BにおけるNMR共鳴器に対応する周波数で動作されるHF共鳴器12の共鳴に関連している。約10Tの外部磁場Bにおいて、NMR周波数は、例えば約400MHzに達する。高周波磁場BHFにおける力線が、それはHF共鳴器の個々の導電性ストリップ14によって生成されるものであるが、図2に示されている。
【0050】
二重共鳴構造部の第2の共鳴は、マイクロ波の範囲における共鳴、すなわち、EPR転移に対応する周波数における共鳴に関連している。約10Tの外部磁場Bにおいて、EPR共鳴周波数は、約260GHzとなっている。TRM00nモードは、ここでnは整数であるが、MW共鳴器30において生成され得る。TRM00nモードは、軸方向において対称的であり、また、HF共鳴器12の表面に平行な平面における場のプロファイルは、球状の反射器24からの距離に依存する幅を有するガウス形状を有している。
【0051】
そのようなモードにおける磁場BMWが、図2に示されている。MW磁場BMWにおける最大の磁場強度は、直接的に、HF共鳴器の表面において、すなわち導電性ストリップ14の表面において、すなわちサンプル保持器22が配置されている場所において生じる。磁場強度BMWにおける次の極大値は、HF共鳴器12の表面から上方へ半波長分のところに位置している。サンプル保持器22は、従って、サンプルの最大厚みが、磁場における共鳴波長の約10%になる程度の浅いものとなるよう、選択される。サンプルの厚みがより大きい場合、このことはまた、高い電場を有する持続的なマイクロ波における範囲内となっており、これによって、サンプルは、過剰に加熱され、さらに、MW共鳴器30におけるQ値が損なわれる。
【0052】
サンプル保持器22は直接的にHF共鳴器12の導電性ストリップ14上に配置されているので、熱は、これによってサンプルから消散され得る。このことは、例えば、マイクロ波の吸収のために加熱が防ぎがたく、また非常に小さなサンプル体積および低いマイクロ波パワーのみが可能であり、しかしながら、測定の精度を低くするものである、らせん状の共鳴器と比較して、特に有利になっている。
【0053】
二重共鳴を利用して、DNP−NMR実験またはENDOR実験が実施され得る。DNP−NMR実験において、サンプルにおける電子スピンがマイクロ波の場によって分極され、また、この分極が、オーバーハウザー効果による原子核スピンに転移され、これによって、NMRスペクトルの測定において高いNMR信号を生じさせる。ENDOR実験において、反対の事象が生じる。サンプルはNMR周波数で励起され、EPRスペクトルが測定される。二重共鳴構造部10は、両方のタイプの実験にとって適切なものとなっており、従って、ENDOR分光器およびDNP−NMR分光器の両方のためのプローブまたはプローブヘッドとして利用され得る。それはまた、マイクロ波導波路28に接続された適切なマイクロ波ブリッジ、および、HF共鳴器12の直列な接続における第2端部20に接続された適切なNMRデバイスとともに、組み合わされたENDOR/DNP−NMR分光器において用いられ得る。ENDOR/DNP−NMR分光器は、任意ではあるが、それらのモード単独でも動作され得る。
【0054】
図1および2に示されているように、HF共鳴器12は、並べて配置された複数の導電性ストリップ14から構成されており、各導電性ストリップ14の幅は、HF共鳴器12全体の幅に比べて比較的に小さくなっている。HF共鳴器12の導電性ストリップ14の小さな幅のため、HF共鳴器12の変換効率が、同一の全体幅からなる単一の導電性ストリップを用いる形態と比べて著しく増大され得る。同時に、HF共鳴器12はMW共鳴器30の平らな反射器としても機能するので、その幅が任意には低減され得ないただ1つのストリップを有するHF共鳴器の場合、マイクロ波の損失が、さもなくば非常に多大になるであろう。しかしながら、格子状に並べて配置された導電性ストリップ14が、機能的なMW共鳴器30を生成する上で全体として十分な品質を有する平らなMW反射器を形成し、一方、同時に、個々のストリップ14の幅を低減し、増大された変換係数を導く、ということが見出されてきた。
【0055】
さらなる効果において、増大された変換係数を有し、従って増大された磁場BHFおよび増大されたNMR感度を有するHF共鳴器が実現され得るようになっており、HF共鳴器は同時に、完全に機能的なMW共鳴器の一部となっている。
【0056】
図3は、二重共鳴構造部32のその他の形態の概略図を示している。二重共鳴構造部32の設計は、基本的には、図1および2の二重共鳴構造部10の設計に非常に類似している。従って、対応する構成要素には同一の参照符号が用いられている。導電性ストリップ14を接続するための追加導電体16が図3の二重共鳴構造部32にも存在しているが、しかしながら、簡単のためこの図においては示されていない。
【0057】
図3の形態における相違点は、二重共鳴構造部32において、マイクロ波は球状の反射器24においてアイリスを介しては入力されない、ということである。その代わりに、マイクロ波は、HF共鳴器12の導電性ストリップ14の間の間隙を介してMW共鳴器30に入力される。例えば、ガウスビーム34の形態のマイクロ波が、HF共鳴器12の下方から、例えばホーン放射器(図示せず)の助力によって入力され得る。
【0058】
適切なマイクロ波ブリッジ36の例が図4および5に示されている。図4は、マイクロ波ブリッジ36の本質的な構成要素をブロック図で示しており、図6は、マイクロ波ブリッジ36の機能的な設計を示している。
【0059】
図4に示されているように、マイクロ波ブリッジ36は、電力供給源40に接続されたマイクロ波発振器38を備えている。さらに、マイクロ波ブリッジ36は、機械的マイクロ波スイッチ42および減衰器46を備えている。ビームスプリッター48が、二重共鳴構造部10に接続された信号アーム、すなわちマイクロ波導波路30と、その他の減衰器46、波動測定器52および調整可能な反射器54からなる基準アーム50との間のマイクロ波信号を分裂させるために設けられている。さらに、マイクロ波ブリッジ36は、固定増幅器58に接続された検出器56を備えている。図5における対応する構成要素には、同一の参照符号が付されている。
【0060】
図4および5のマイクロ波ブリッジ36は、EPR検出モードおよびDNPモードで動作され得る。このことのため、マイクロ波ブリッジ36は、図5に特に良く示されているように、マイケルソン干渉計として設計されている。ここで、EPR分光器は、マイクロ波共鳴器32によって反射されたマイクロ波の信号の助力によって実施される。最も高いEPR感度は、ビームスプリッター48が、基準アーム50および信号アームすなわちマイクロ波導波路30において、入射パワーの半分をそれぞれ導いているときに実現され得る。しかしながら、パワーのこの分裂は、DNPモードにとっては最適ではない。なぜなら、DNPモードにおいて、可能な限り大きいマイクロ波パワーが二重共鳴構造部へ、すなわち信号アームへ供給される必要があるからである。この目的のため、ビームスプリッター48は、その他のビームスプリッターによって置換されてもよく、このことは、例えば99.5%のパワーを信号アーム(導波路30)に通すことを可能にし、また、パワーの0.5%を基準アーム50アームへ屈折させる。
【0061】
DNP−NMRモードにおいて、二重共鳴構造部10のHF端部20が、従来のNMRデバイス、いわゆるNMRコンソールに接続されている。ENDORモードにおいて、HF端部20は、NMRコンソールの代わりに、適切なHF生成源に接続されている。
【0062】
上述の例示的な形態に示されているように、本発明の二重共鳴構造部10,32は、非常に強いNMRおよびEPR場および比較的に大きなサンプル体積を伴うENP−NMRおよびENDOR実験を可能にする。実際、用いられ得るサンプル体積は、従来技術から知られている、この導入部分で説明されたらせん状の共鳴器の約10倍の大きさになっている。二重共鳴構造部10における1つの特別な利点は、熱をサンプルから非常に効率的に消散させ、これによって、例えば水溶液における生体分子が、高く吸収されたマイクロ波パワーにもかかわらず、サンプル温度の予期されえないような増大を生じさせることなく、調べられ得る、ということである。このことは、特に液体および/または水を含むサンプルを調べる上で、二重共鳴構造部10,32を特に有利なものとしている。二重共鳴構造部10,32におけるその他の特別な利点は、HF共鳴器における特に高い変換効率にある。高い変換効率は、比較的に狭い幅の複数の導電性ストリップ14であって、MW共鳴器30のための十分な幅からなるMW反射器を共同で形成する複数の導電性ストリップ14を用いることによって可能になる。
【0063】
ここに示されている二重共鳴構造部は、特に、生体分子の構造上の分析(2D−NMR)、すなわち運動に関する検討のために適切なものとなっている。なぜなら、測定時間が著しく低減されるからである。また、複雑な生体分子の混合物の分析、例えば代謝産物の分析、不純物の識別およびモニタ、および、配位子および生物マーカーのスクリーニングにも適している。さらに、動的な分子の相互作用が、二重共鳴構造部10,32を用いた有利な態様において調べられ得る。さらに、二重共鳴構造部は、凝縮された材料、例えば正しく並べられた結晶、脂質層および膜における2Dおよび3D分析、および、NMR分光法のために適切なものとなっている。
【0064】
ENDOR分光法モードにおいて、二重共鳴構造部は、半導体、キラリティーおよび内包された複合体(フラーレン)における欠陥を調べる上で有利に使用され得る。
【符号の説明】
【0065】
10 二重共鳴構造部
12 HF共鳴器
14 HF共鳴器の導電性ストリップ
16 追加導電体
18 HF共鳴器12の第1端部
20 HF共鳴器12の第2端部
22 サンプル容器
24 球状の反射器
26 アイリス
28 導波路
30 MW共鳴器
32 二重共鳴構造部
34 マイクロ波ビーム
36 マイクロ波ブリッジ
38 MW発振器
40 電圧源
42 機械的マイクロ波スイッチ
46 減衰器
48 ビームスプリッター
50 基準アーム
52 波動測定器
54 反射器
56 検出器
58 固定増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DNP−NMRおよび/またはENDOR試験のための二重共鳴構造部(32)であって、
EPRに適した電磁場を生成するマイクロ波共鳴器(30)と、
NMRに適した電磁場を生成するHF共鳴器(12)と、を有し、
HF共鳴器(12)は、電気的な導電性を有する複数のストリップ(14)であって、個々のストリップにおいて同一方向に同時に流れるHF電流が複数のストリップ(14)において生成され得るよう、並べて配置されるとともに電気的に接続された複数のストリップ(14)を備え、
HF共鳴器(12)の一部分が、マイクロ波共鳴器(30)の一部を同時に形成していることを特徴とする二重共鳴構造部(32)。
【請求項2】
複数の導電性ストリップ(14)が、グリッドの形態で互いに平行に並べられている、請求項1に記載の二重共鳴構造部(10,32)。
【請求項3】
隣接する導電性ストリップ(14)間の距離は、ストリップの幅よりも小さくなっており、好ましくは、ストリップの幅の半分よりも小さくなっている、請求項2に記載の二重共鳴構造部(10,32)。
【請求項4】
導電性ストリップ(14)は、調べられるサンプルの磁化率にその磁化率が一致している複合材料から構成されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の二重共鳴構造部(10,32)。
【請求項5】
少なくともいくつかの導電性ストリップ(14)は、追加導電体(16)を用いることによって直列に接続されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の二重共鳴構造部(10,32)。
【請求項6】
直列に接続されたストリップ(14)の列の第1端部(18)は、大地電位に接続されている、請求項5に記載の二重共鳴構造部(10,32)。
【請求項7】
直列に接続されたストリップ(14)の列の第2端部(20)は、コンデンサを介して、とりわけ、調整可能なマッチングコンデンサを介して、NMR信号を生成および/または検出するためのHF生成源および/またはHF受信器に接続されているか、または接続可能になっている、請求項6に記載の二重共鳴構造部(10,32)。
【請求項8】
マイクロ波共鳴器(30)は、マイクロ波のための球状の反射器(24)および平らな反射器を備えており、
それらの反射器は、平らな反射器がHF共鳴器(12)の一部分によって形成されるよう、互いに対向している、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の二重共鳴構造部(32)。
【請求項9】
球状の反射器(24)にアイリス(26)が形成されており、
アイリス(26)を介して、マイクロ波がマイクロ波共鳴器(30)へ供給され得る、請求項8に記載の二重共鳴構造部(10)。
【請求項10】
アイリス(26)は、線形に分極されたマイクロ波モードをマイクロ波共鳴器(30)において生成するため、溝を付けられた形態になっている、請求項9に記載の二重共鳴構造部(10)。
【請求項11】
アイリス(26)は、円形に分極されたマイクロ波モードをマイクロ波共鳴器(32)において生成するため、円形の形態になっている、請求項9に記載の二重共鳴構造部(10)。
【請求項12】
マイクロ波は、HF共鳴器(12)の複数の導電性ストリップ(14)の間でマイクロ波共鳴器(30)に供給され得る、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の二重共鳴構造部(10)。
【請求項13】
二重共鳴構造部は、ホーン放射器をさらに備え、
ホーン放射器は、HF共鳴器(12)の導電性ストリップ(14)の間の間隙を介してマイクロ波をマイクロ波共鳴器(30)に入力することができるよう、マイクロ波共鳴器(30)から離れた方のHF共鳴器(12)の面に配置されている、請求項12に記載の二重共鳴構造部。
【請求項14】
球状の反射器およびHF共鳴器(12)は、それらの間にTEM00nマイクロ波モードが形成され得るよう、設計され配置される、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の二重共鳴構造部(32)。
【請求項15】
マイクロ波共鳴器(30)は、マイクロ波生成源(34)に接続されており、またマイクロ波共鳴器(30)は、マイクロ波共鳴器(30)の最も低い放射モードで動作され得る、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の二重共鳴構造部(32)。
【請求項16】
熱的な伝導性を有する態様でHF共鳴器(12)に接続された、サンプルを受け入れるための場所(22)が設けられている、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の二重共鳴構造部(32)。
【請求項17】
サンプルを受け入れるための場所は、液体のサンプルを受け入れるデバイス(22)を含んでいる、請求項16に記載の二重共鳴構造部(32)。
【請求項18】
保持されるべき液体のサンプルの液位は、マイクロ波共鳴器(30)の共鳴波長の十分の一までとなっている、請求項17に記載の二重共鳴構造部(32)。
【請求項19】
二重共鳴構造部(32)は、磁石におけるボアホールの中に挿入され得るプローブヘッドとして設計されている、請求項1乃至18のいずれか一項に記載の二重共鳴構造部(32)。
【請求項20】
プローブヘッドは、大地電位に接続されるハウジングを有している、請求項19に記載の二重共鳴構造部(32)。
【請求項21】
DNP−NMR分光器であって、
請求項1乃至20のいずれか一項に記載の二重共鳴構造部(32)と、
マイクロ波共鳴器(30)へのマイクロ波の入力のために二重共鳴構造部(32)に接続されたマイクロ波生成源(36)と、
HF共鳴器(12)へのHF信号の入力、および、HF共鳴器(12)からのHF信号の受信のために二重共鳴構造部(32)に接続されたNMRデバイスと、を備えた、DNP−NMR分光器。
【請求項22】
ENDOR分光器であって、
請求項1乃至20のいずれか一項に記載の二重共鳴構造部(32)と、
マイクロ波共鳴器(30)へのマイクロ波の入力、および、マイクロ波共鳴器(30)からのマイクロ波の受信のために二重共鳴構造部(32)に接続されたマイクロ波生成源(36)と、
HF共鳴器(12)へのHF信号の供給のために二重共鳴構造部(32)に接続されたHF生成源と、を備えた、ENDOR分光器。
【請求項23】
組み合わされたDNP−NMR/ENDOR分光器であって、
請求項1乃至20のいずれか一項に記載の二重共鳴構造部(32)と、
マイクロ波生成源(36)であって、NMRモードにおいて、二重共鳴構造部(32)のマイクロ波共鳴器(30)へのマイクロ波信号の供給のために適切なものとなっており、かつ、ENDORモードにおいて、二重共鳴構造部(32)のマイクロ波共鳴器(30)へのマイクロ波の供給、および、マイクロ波共鳴器(30)からのマイクロ波信号の受信および検出のために適切なものとなっている、マイクロ波生成源(36)と、
高周波数デバイスであって、NMRモードにおいて、二重共鳴構造部(32)のHF共鳴器(12)へのHF信号の供給のため、HF共鳴器(12)からのHF信号の受信および検出のために適切なものとなっており、かつ、ENDORモードにおいて、HF共鳴器(12)へのHF信号の供給のために適切なものとなっている、高周波数デバイスと、を備えた、組み合わされたDNP−NMR/ENDOR分光器。
【請求項24】
DNP−NMRおよび/またはENDORによってサンプルを調べる方法であって、
サンプルは、マイクロ波共鳴器(30)およびHF共鳴器(12)を備えた二重共鳴構造部(32)の中に配置され、
マイクロ波の場が、マイクロ波共鳴器(30)の助力によって生成され、この場は、サンプルにおけるEPR転移を誘起するために適切なものとなっており、
HF場が、HF共鳴器(12)の助力によって生成され、この場は、サンプルにおけるNMR転移を誘起するために適切なものとなっており、
HF共鳴器(12)は、並べて配置された複数の導電性ストリップ(14)であって、個々のストリップ(14)において同一方向に流れるHF電流がその中で生成される、複数の導電性ストリップ(14)と、マイクロ波共鳴器(30)の一部を同時に形成する、HF共鳴器(12)の一部分と、を備えたことを特徴とする方法。
【請求項25】
MW共鳴器(30)は、マイクロ波のための球状の反射器(24)および平らな反射器を備えており、
それらの反射器は、平らな反射器がHF共鳴器(12)の一部分によって形成されるよう、互いに対向している、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
球状の反射器(24)にアイリス(26)が形成されており、
アイリス(26)を介して、マイクロ波がマイクロ波共鳴器(30)へ供給され得る、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
TEM00nマイクロ波モードがマイクロ波共鳴器(30)において生成される、請求項24乃至26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
サンプルが液体である、請求項24乃至27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
サンプルが、熱的な伝導性を有する態様でHF共鳴器(12)に接触している、請求項24乃至28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
マイクロ波が、HF共鳴器(12)の複数の導電性ストリップ(14)の間でマイクロ波共鳴器(30)に供給される、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−522973(P2012−522973A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502485(P2012−502485)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001651
【国際公開番号】WO2010/112137
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(507038825)ヨハン ウォルフガング ゲーテ−ウニベルジテート フランクフルト アム マイン (5)