説明

複数の認証機能を備えたセキュリティデバイス

下記成分:
a)30〜80質量%の単官能性LCP’s、
b)0〜50質量%、好ましくは50質量%未満の高官能性LCP’s、
c)0〜30質量%、好ましくは20質量%未満の液晶性不活性モノマー、
d)0〜50質量%、好ましくは30質量%未満の非液晶(単又は高)官能性モノマー、
e)0〜30質量%、好ましくは20質量%未満の非液晶性不活性モノマー、
f)0.01〜10質量%、好ましくは2質量%未満の開始剤、
g)0〜10質量%、好ましくは2質量%未満の阻害剤、
h)0.01〜50質量%、好ましくは20質量%未満、更に好ましくは10質量%未満の添加剤を含むセキュリティデバイスであって、
成分の総量が100質量%であり、添加剤h)が常磁性、超常磁性、反磁性又はフェリ磁性粒子のような磁性添加剤を含むことを特徴とするセキュリティデバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に書類及び/又は製品の偽造防止のための認証機能としてのセキュリティデバイスに関する。
【0002】
偽造を防止するため、有益な書類及び/又は製品を保護しようとする継続的な要求がある。構築は非常に困難であるが、調査が容易であることが好ましい認証機能を加えることは、これらの製品の偽造防止に役立つ。当該技術分野で公知の、多くの認証機能がある。それらの多くは周知であり、特徴的でない光学的効果に基づいている。認証機能の具体例は、回折構造をベースとするホログラム、半透明基材と蛍光模様との厚みの相違をベースとする透かし模様である。更に、これら又は非常に類似の効果を製造するための材料及び技術にアクセスすることは、しばしば容易である。重合性液晶(LCP’s)を用いて製造した認証機能の強度は、考えられる多くの光学的効果であり、これはあまり知られておらず、模倣が困難である。
【0003】
重合性液晶(LCP’s)は、特定の温度範囲内で、ネマチック、スメクチック又はキラルネマチック(コレステリックとも呼ばれる)相のような1種以上の液晶相を示す材料である。更に、LCP’sは、分子の一部である反応基のために重合し得る。重合前、LCP’sはモノマーであるが、重合後にも、得られたポリマーは一般にLCP’sと呼ばれる。LCP’sがモノマー形態であると言及しているテキストにおいては、ポリマー形態は、LCPポリマーと呼ばれる。更に、当業者は、明細書との関連で、及び常識を用いて、ポリマー及びモノマーのLCP’sを識別することができる。LCP’sの重合は、高温下で自発的に誘発され、又は例えば光開始剤又は熱開始剤のような適切な開始剤を用いることにより補助され得る。反応基の通常の具体例は、アクリレート、メタクリレート、エポキシ、オキセタン、ビニル−エーテル、スチレン及びチオール−エンである。ここで、2個の連結はポリマー形成に必要とされる最小数であるので、反応性末端基により、2個の他の分子と連結を形成する能力を有するモノマーは、単官能性と呼ばれる。2個以上の他の分子との結合を形成する能力を有するモノマーを高官能性と呼ぶ。
【0004】
インク中に構築されるLCPポリマーのフレークを印刷することによりセキュリティデバイスを得ることが可能であるが、これらのフレークは高価であり、製造及び塗布することが困難である。例えば、このようなフレークは欧州特許第0968255号に開示されている。フレークの生産工程は、フレークが重合され、壊れて適切なサイズの断片になる前の、多くの時間のかかる工程からなる。その後、これらのフレークを透明な重合性バインダー内に混合する。バインダー中のフレークの平均サイズ及びフレーク形状のばらつきために印字解像度には限界がある。更に、フレークはインクジェットヘッド内の導管及びノズルを詰まらせるので、インクジェット印刷に適していない。更に、光学的効果は一定でなく、又は明白でなく、LCPの単層のように目立つ。
【0005】
LCPをベースとする認証機能を含むセキュリティデバイスを製造する他の方法は、特徴的な光学的特性を有する機能を形成するLCPのインクジェット印刷による。更に、インクジェット印刷は、例えば個々の書類又は製品をそれぞれたどり、追跡し、若しくは生体情報のような特定の情報を含む必要性がある場合に特に有用である、それぞれの印刷を固有にすることを可能にする。LCPをベースとする光学的効果とインクジェット印刷との組み合わせの可能性は、現実の要件に関しては全て非特異的である、ほんのわずかな書類でのみ言及されている。
【0006】
溶媒を用いたLCPの印刷によるセキュリティデバイスの製造は、例えば、欧州特許第1381520号に開示されている。溶媒は、LCP’sをその中に溶解し、共に溶液を形成する物質である。更に、このような溶媒は、通常、処理後であるが重合前に蒸発することを意味し、従って、最終生成物にはわずかな量の溶媒も含まれていない。LCP’sのために通常使用される溶媒の具体例は、キシレン、トルエン及びアセトンである。LCP’sにインクジェットを用いる際の問題は、市販のインクジェット印刷装置が、LCP’sが溶媒に溶解する場合、再現性のあるLCP’s印刷ができないことである。インクジェット用溶媒を主成分とする混合物は、印刷の均質性に対して有害である乾燥現象、いわゆるコーヒーステイン現象をもたらす。更に、溶媒の使用はLCP’sが印刷される基材に影響を及ぼし得、それは、また、重合前に基材上に、以前に印刷された任意のLCP構造体を溶解し得る。種々の貯蔵所に由来する種々の物質を含む構造体を印刷する場合、溶媒を主成分とする混合物の使用は、基材上で物質の重大な混合を引き起こし、「カラーブリーディング」又は非常にぼやけた画像のような影響をもたらす。
【0007】
溶媒は、印刷システムの印刷ヘッド及び導管の一部、特にポリマーを主成分とする部分を化学的にも攻撃し得る。これらの溶媒は、また、ノズル又はノズルの近くで蒸発する場合があり、これは目詰まりを引き起こす。更に、このような溶媒は、波形のために装置に対して、並びに毒性のために人間及び環境に対して有害である場合があるため、印刷装置の近くに空気ろ過のための大規模な装置を必要とする。更に、蒸発を促進し、その結果生産速度を向上させるために印刷材料を加熱することは非常に望ましく、複雑さ及び費用を増大する、生産装置内での加熱装置を必要とし、周囲の装置並びに印刷される基材にとっても有害であり得る。
【0008】
溶媒を用いない、LCP’sの印刷によるセキュリティデバイスの製造も、例えば、欧州特許第EP1491332号から公知である。しかし、この文献は、特定の材料、又はLCP’sのインクジェット印刷を可能にする工程、又はそれに関連する潜在的な問題を開示又は教示していない。特に、LCP’sを含むが溶媒を含まない混合物は、現在入手できる量産装置を用いてほとんど管理できない。高度に特定用途のインクジェット印刷装置のみで、LCP’sを印刷することが可能であり、140℃以上のみでは、製造されるセキュリティデバイスの範囲が限定される。しかし、このような温度においては、LCP’sは混合物中の反応基又は開始剤の熱励起により自発的に重合を開始する。
【0009】
インクジェット印刷を用いて混合物を印刷することを可能にするため、印刷される混合物は、混合物が印刷される温度で、インクジェットヘッド又は貯蔵所に残存する間(プリンターの使用における印刷速度に依存し、数分〜数週間)、少なくとも化学的に安定である必要がある。
【0010】
本発明の目的は、種々の添加物を包含させることにより、最先端の装置を用いて再現可能に印刷できるセキュリティデバイスを提供することにより、先行技術の限界を克服することである。
【0011】
本発明の目的は、通常の印刷技術により容易かつ再現可能に製造することができ、同時に先行技術におけるセキュリティデバイスの限界がないセキュリティデバイスを提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、1種以上の範囲の特定の添加剤をLCP材料に加えることにより、新規なLCPをベースとするセキュリティ機能を示すことである。これらの材料は、得られた認証機能に他の認証効果を加え、その結果、新規な認証機能を付与することができる。
【0013】
本発明の他の目的は、例えば、バーコード、映像、テキスト、数字コードの形態で情報を含み得る任意構造の付与を可能にする、印刷技術により製造することができるセキュリティデバイスを提供することである。
【0014】
驚くべきことに、本発明の目的が、下記成分:
a)30〜80質量%の単官能性LCP’s、
b)0〜50質量%の高官能性LCP’s、
c)0〜30質量%、好ましくは20質量%未満の液晶性不活性モノマー、
d)0〜50質量%、好ましくは30質量%未満の非液晶(単又は高)官能性モノマー、
e)0〜30質量%、好ましくは20質量%未満の非液晶性不活性モノマー、
f)0.01〜10質量%、好ましくは2質量%未満の開始剤、
g)0〜10質量%、好ましくは2質量%未満の阻害剤、
h)0.01〜50質量%、好ましくは20質量%未満、更に好ましくは10質量%未満の添加剤を含み、
成分の総量が100質量%であり、添加剤h)が常磁性、超常磁性、反磁性又はフェリ磁性粒子のような磁性添加剤を含むことを特徴とするセキュリティデバイスを用いて達成できることがわかった。
【0015】
以下において、適切な成分の非限定的具体例を示す。
【0016】
カテゴリーa)の具体例は、
【化1】

[式中、xは1〜10である]である。
【0017】
カテゴリーdからの適切な具体例は、
【化2】

及び
【化3】

並びに
【化4】

である。
【0018】
アクリレートは、硬化時間が速く、並びに適切な開始剤において広い選択肢を有するという特別な利点を有している。しかし、種々の反応基を有するLCP’sは文献から公知であり、同じ方法を用いて塗布することもできる。例えば、エポキシは、それが多くの印刷表面に良好な付着力を備え、比較的少量の重合収縮を示し、重合中に酸素阻害による影響が少ないという特別な利点を有している。オキセタンはエポキシに匹敵する特性を有するが、通常、わずかな重合収縮を示す。チオール−エンを主成分とする重合(分子構造中にチオール及び−エン基の両者を含む)も可能である。ビニル−エーテルも酸素阻害に対してそれほど敏感でなく、比較的高温でのみ非常に急速に重合する。
【0019】
カテゴリーe)の適切な具体例はエチレングリコールである。
【0020】
カテゴリーf)の適切な具体例は、例えば、商品名Irgacure及びDarocureでCiba−Geigy(スイス)により販売されており、一般に重合阻害剤は当該技術分野において公知である。
【0021】
成分又は混合物が、インクジェット印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、ミクロ接触印刷、ミクロ転写印刷、グラビア印刷、輪転グラビア印刷、オープンリール印刷のような、しかしこれらに限定されない印刷手段により基材に塗布されることが更に好ましい。
【0022】
磁性添加剤の具体例は、常磁性、超常磁性、反磁性又はフェリ磁性粒子である。このような粒子は、通常、5〜500nmのサイズである。磁性特性は、例えば磁気抵抗センサーにより調べることができる。このような粒子の添加は、磁場により機械的に移動できる構造体の生成を可能にする。このような移動は、例えば、特徴を認証するために用いることができる印刷構造体の、変化した光学的、機械的、電気的又は磁気的特性を引き起こし得る。
【0023】
配列したLCPポリマーマトリクスの異方特性が、印刷物の磁気特性を十分に利用するのに望ましい磁気及び機械的特性を向上し得るので、印刷構造体が(部分的に)LCP’sから生成されることが特に有利である。特に、磁気材料が磁気的に異方性であり、またLCPポリマーマトリクスに関して配列されている場合なおさらである。異方性磁気特性は巨視的に利用できるであろう。
【0024】
磁性添加剤を含む好ましい実施態様は、以下の成分によって示される:
a)54.5質量%の単官能性LCPアクリレート
【化5】

【0025】
b)22質量%の二官能性LCPアクリレート
【化6】

【0026】
c)19質量%の非反応性LCモノマーK15
【化7】

【0027】
f)1.0質量%の光開始剤
【化8】

【0028】
g)0.5質量%の阻害剤、ヒドロキノン
【化9】

【0029】
h)3質量%の、ポリスチレン/ジビニルベンゼンマトリクス中に20〜60%のマグネタイトを含む、平均直径0.9μmの磁気ミクロスフェアビーズ。
【0030】
a〜hの成分をガラス瓶に加え、パラキシレンで1(混合物):1.25(パラキシレン)の比で希釈し、得られた混合物を70℃で5分間、手動で攪拌した。その結果、得られた混合物は流体である。配列を生じさせるためにビロードの布地でこすったトリアセチルセルロースフィルム上に、ドクターブレード法を用いて10μmのフィルムに混合物を印字する。溶媒フィルムを50℃で2分間蒸発させ、得られたフィルムを、窒素雰囲気下でUV硬化する。
【0031】
得られた外観は複屈折しており、ポリマーマトリクス中に均一に分散している磁性粒子を含んでいる。
【0032】
添加剤h)が、導電性又は導電性添加剤、更に好ましくは、ナノメーター又はマイクロメーターサイズの棒、フレーク、球体、若しくはそうでなければ、金属、合金又は半導体を主成分とする材料の適切な形状の導電性粒子からなる群から選択される導電性又は導電性添加剤、更に好ましくは、ポリフェニレンビニレンのような半導電性共役ポリマー、又はPEDOT−PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)及びポリ(スチレンスルホネート)ナトリウムのようなポリマー混合物、及び好ましくはLCP’sであるオリゴチオフェンのような半導電性液晶からなる群から選択される導電性又は半導電性添加剤を追加的に、又はそれのみを含むことが更に好ましい。
【0033】
印刷物に(半)導電性又は磁性添加剤を加えることの特別な利点は、電場及び磁場又は電流により認証が容易であることであり、その効果は、非破壊的認証を可逆的に可能にする。更に、このような構造体をインクジェット印刷する特有の利点は、このような添加剤が種々の構造体中で印刷され、その結果、電場又は磁場に対して固有かつ識別可能な反応を可能にすることである。
【0034】
導電性添加剤は、電子回路の印刷を可能にする。このような回路は、例えば、電気信号によって切替可能である光学的効果を生成するために用いることができる。その構造の導電特性自体は、認証機能としても用いることができる。FET’s、ダイオード又はコンデンサのような電子回路の構成要素が印刷物内に生成される場合、これらが、明示可能で識別可能な電子応答をもたらすので、これは特に効果的に実施することができる。導電性構造体を、そのいずれかが必ずではないが、好ましくはインクジェット印刷によって適用される、切替可能な他の隣接した非導電性の印刷構造体の生成に用いることが可能である。このような多層の印刷物は、連続的又は同時に、単一層又は分離層中で、基材の上又は互いに隣接して又は反対側において、又は印刷後に一緒に構築される複数の基材上で、印刷されて有利に生成される。更に、印刷構造体自体を流れる電流フローにより対応し得る(特性の光学的外観を変化させる)、導電性であり、エレクトロルミネセント又はエレクトロクロミックな添加剤を含む構造体を生成することが可能である。更に構造体の隣接部分により2個の電気的に分離された部分に、等しいか、又は反対の電荷を供給することにより、コンデンサを形成することができる。構造体のこのような部分が機械的に移動可能な場合、このような移動は、特徴を認証するために用いることができる、印刷構造体の光学的、機械的、電気的又は磁気的特性の変化をもたらす。
【0035】
配列したLCPポリマーマトリクスの異方特性が、印刷物の導電性を十分に利用するのに望ましい電気的及び機械的特性を向上し得るので、印刷構造体が(部分的に)LCP’sから生成されることが特に有利である。
【0036】
本発明のセキュリティデバイスが、フォトクロミック顔料又は染料、サーモクロミック顔料又は染料、エレクトロクロミック顔料又は染料、イオノクロミック顔料又は染料、ハロクロミック顔料又は染料、ソルバトクロミック顔料又は染料、トロボクロミック顔料又は染料、並びにピエゾクロミック顔料又は染料、蛍光発光顔料又は染料の形態で、追加的に、又はそれのみで添加剤h)を含むことが更に好ましい。
【0037】
これらの光学的添加剤が異方性光学特性を示し、それらがセキュリティデバイス中にLCP材料とともに配列することが更に好ましい。これは、追加の異方性光学特性を備えた、完全なセキュリティデバイスを与える。
【0038】
成分又は成分の混合物が、インクジェット印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、ミクロ接触印刷、ミクロ転写印刷、グラビア印刷、輪転グラビア印刷、オープンリール印刷のような、しかしこれらに限定されない印刷手段により基材に塗布される場合、セキュリティデバイスにとって好ましい。
【0039】
更に、製造中、直鎖状の光重合性ポリマーを含む基材層により、好ましくは複数の配列した基材の組み合わせによる複数のタイプの配列により成分が配列することがセキュリティデバイスにとって好ましい。
【0040】
好ましくは、これらの基材は、更にホログラム、逆反射層、干渉スタック反射体、蛍光層、色変化層又はフレークにより印刷された特徴のような、更なる認証機能を含む。
【0041】
成分e)〜f)が、成分a)〜d)の液晶の配列を妨げないように選択されている場合、セキュリティデバイスにとって好ましい。
【0042】
好ましいセキュリティデバイスは、好ましくは所有する官能基の適合型のため、非常に好ましくは、同じタイプの官能基を有することにより、ポリマー構造の形成のために官能化されている、成分a)、b)及びd)を含む。
【0043】
更に、本発明のセキュリティデバイスは、好ましくは、相分離が少なくとも重合前にのみ抑制されるが、好ましくは重合中も抑制されるように選択される成分a)〜h)を含む。
【0044】
このような成分を塗布することにより、印刷は120℃未満、好ましくは100℃未満、非常に好ましくは80℃未満で容易に可能であり、独特かつ再現可能な光学的効果を有するセキュリティデバイスを達成することが可能である。特に、これらの成分の混合物を溶媒に加えることも可能あり、これは混合物を種々の印刷技術に適用可能にする。
【0045】
多くの潜在的利点を有する種々の開始剤の組み合わせを用いることができ、これらの多くを、以下に記載する。
【0046】
異なる開始剤は、重合の前後で混合物の異なる機械的特性を与えるであろう。単官能性開始剤の使用は、混合物の低粘度を可能にできる。しかし、多官能性開始剤はより粘性である傾向がある。開始剤の正確な選択は、例えば、重合構造の柔軟性及び強靱性にも影響する。更に、光開始剤の選択は、カテゴリーh)において後述される、混合物中の他の吸収性添加剤の存在に依存する。これらの場合、構造体の両方の最上層、並びに構造体の全体にわたり良好な重合を可能にする、開始剤の混合物を用いることが可能である。表面の酸素阻害を克服し得る開始剤は、表面における重合を開始するために用いることができるが、他の開始剤は、構造体を全硬化するために用いることができる。構造体の上端のみが重合するが、残りの部分は重合されないままであるような方法で、開始剤を選択することも可能である。次いで、非重合LCPは静止流体であり、例えば、電場又は磁場により操作することができ、すなわち、それらは切替可能なままである。
【0047】
カテゴリーh)からの他の可能な添加剤のリストは、以下の具体例を含むが、これらに限定されない。
【0048】
添加剤の一例は、例えばDNA−分子のようなトレーサー分子としての役割を果たし得る分子である。これらは、正確な特性が事前に知られていない場合、追跡することが非常に困難であるように、少量、通常は百万分率(ppm)の程度で加えることができる。
【0049】
添加剤の他の具体例は、液体の配列を向上させることができる界面活性剤である。これらの界面活性剤は、構造の上端で、底部又はバルク中で、あるいはこれらの配置の組み合わせのいずれかで、液晶マトリクスの配列を向上させることができる。更に、これらの界面活性剤は、混合物の潜在的な相分離に影響を及ぼし得、又は基材上の混合物の機械的特性(例えば、粘度、表面張力)に影響を及ぼし得、又はこれら3種の機能の組み合わせを実施し得る。
【0050】
添加剤の他の具体例は、液晶構造中にキラル相を生じさせるために用いられる、一般にキラルドーパントと呼ばれるキラル添加剤である。一般に左旋性又は右旋性のいずれかで呼ぶことができる特定の掌性をもって、特定の調節可能な波長範囲からの光を反射し、掌性は、構造体のキラリティーの掌性によって測定される。カテゴリーa)〜c)からの1種以上のLCP’sが、固有のキラル相をも示し、及び/又は全ての液晶分子についてこのような相を誘発し得ることに留意されたい。キラルLCP’sを用いることにより、キラル添加剤を用いずにキラル構造を得ることができる。多くのキラル添加剤は当業者に公知である。好ましくは、反射波長の温度依存性が通常は減少するという利点を有するキラル添加剤も重合可能である。
【0051】
添加剤の他の具体例は顔料及び染料である。顔料及び染料は、スペクトルの一部の吸収、及びスペクトルの一部の発光により、混合物に固有の色を付与するために加えることができる。このような固有の色は、例えば、印刷構造体の(一部)のコントラストを向上することにより、印刷構造体の光学的効果を向上することができる。
【0052】
顔料は、混合物中で分子的に溶解しない粒子であるが、染料は、おおよそ分子的に溶解し得る。顔料及び染料の選択は種々の要因に依存する。1つの重要な要因は、安定したインクを生成するための、分散剤の補助がある場合又はない場合の染料又は顔料の溶解度である。染料を含む溶液は、通常、顔料を含む分散剤よりも速く処理することが容易であるが、顔料の光学的特性は、通常、より安定である。
【0053】
更に、誘電体スタックのような特定の光学的添加剤は、染料としてではなく、顔料としてのみ入手可能であり、その光学的効果は分子的効果をベースとせず、大規模な効果をベースとする。他の重要な要因は、顔料の価格であり、通常、染料の価格よりも高い。
【0054】
吸収性顔料又は染料の具体例は、例えば、
−スペクトルの特定の部分を吸収することを意味する吸収剤のみ、
−スペクトルの特定の部分の光を用いた励起により、元の化学種から異なる吸収スペクトルを有する他の化学種に可逆的に変化するフォトクロミック顔料又は染料(不可逆的フォトクロミック顔料及び染料は、特定の目的のためにも存在する)、
−加熱の適用による吸収スペクトルにおける可逆的な変化を示す(すなわち、高温又は低温において)サーモクロミック顔料又は染料(不可逆的サーモクロミック顔料及び染料は、特定の目的のためにも存在する)、
−電荷を加えることにより、吸収スペクトルにおける変化を示すエレクトロクロミック顔料又は染料、
−イオン電荷を加えることにより、吸収スペクトルにおける変化を示すイオノクロミック顔料又は染料、
−pHの変化により、吸収スペクトルにおける変化を示すハロクロミック顔料又は染料、
−接触する溶媒の極性の変化により、吸収スペクトルにおける変化を示すソルバトクロミック顔料又は染料、
−適用される抵抗の結果として吸収スペクトルにおける変化を示すトリボクロミック顔料又は染料、
−適用される圧力の変化により、吸収スペクトルにおける変化を示すピエゾクロミック顔料又は染料である。
【0055】
発光顔料又は染料の具体例は、例えば、
−スペクトルの特定部分において光の吸収を、スペクトルの他の部分、通常低い波長において発光を示し、個々の光子の吸収及び発光は、通常ナノ秒の遅れで続いて起こる、蛍光顔料又は染料、
−通常、吸収の後、最高で数時間から数日の大きな遅れを伴い光子を放射する量子力学崩壊メカニズムのために、蛍光染料と同じ吸収及び発光を示す蛍光発光顔料又は染料、
−顔料及び色素の化学反応の結果として光子の発光を示すケモルミネセント顔料又は染料(このような反応は、一般に不可逆である)、
−顔料又は染料中での電子及び正孔の放射再結合の結果として光子の発光を示すエレクトロルミネセント顔料又は染料(電流が顔料又は染料を通過するか、あるいは後に再結合する電子−正孔を励起し得る強電場に供される場合に、このような放射再結合が生じ得る)、
−適用される抵抗の結果として光子の発光を示すトリボルミネセント顔料又は染料、
−適用される圧力の結果として光子の発光を示すピエゾルミネンセント顔料又は染料、
−適用されるベータ粒子のようなイオン化放射の結果として光子の発光を示す放射線ルミネセント顔料又は染料である。
【0056】
単一の添加剤中に複数の光学的効果、実際に同時に複数の原因に関連する効果を兼ね備える顔料又は染料もある。具体例は、特定の限界温度を超えて加熱された場合に色を変化させるサーモクロミック顔料カプセルである。この温度において、カプセル中の結晶溶媒は溶解し、pHを効果的に低下させる。これは、存在するハロクロミック化合物に、順番にその吸収特性の変化を引き起こさせる。
【0057】
フォトクロミック蛍光染料は、分子が、それに続く蛍光状態において吸収しないスペクトルの部分から光子を吸収した後にのみ蛍光を示す染料である。同時にフォトクロミック及び蛍光であるこの効果、すなわち、最初の吸収のため、分子変化(フォトクロミズム)の吸収特性だけでなく、分子が、続いて蛍光又はその蛍光特性における変化を示す。
【0058】
リン光性発光添加剤を含む好ましい実施態様は、下記成分:
a)53.5質量%の単官能性LCPアクリレート
【化10】

【0059】
b)21.5質量%の二官能性LCPアクリレート
【化11】

【0060】
c)18.5質量%の非反応性LCモノマーK15
【化12】

【0061】
f)1.0質量%の光開始剤
【化13】

【0062】
g)0.5質量%の阻害剤、ヒドロキノン
【化14】

【0063】
h)5質量%の、RiskReactor(米国カリフォルニア州)の蛍光発光顔料PPSB−03により示される。
【0064】
a〜hの成分をガラス瓶に加え、パラキシレンで1(混合物):1.25(パラキシレン)の比で希釈し、得られた混合物を70℃で5分間、磁気的に攪拌する。その結果、得られた混合物は流体である。配列を生じさせるためにビロードの布地でこすったトリアセチルセルロースフィルム上に、ドクターブレード法を用いて40μmのフィルムに混合物を印字する。溶媒フィルムを50℃で2分間蒸発させ、得られたフィルムを、窒素雰囲気下でUV硬化する。
【0065】
得られた外観は複屈折しており、ポリマーマトリクス中に均一に分散しているリン光性発光粒子を含んでいる。
【0066】
得られた外観が交差する偏光子の間に見られる場合、複屈折が明確に視認できる。外観の配列軸がどちらかの偏光子に対して平行である場合、外観は偏光子の間で暗い。外観の配列軸が、両方の偏光子に対して45°である場合、外観は交差する偏光子の間で明るい。外観をUV光の下に置いた場合、リン光性発光粒子は鮮やかなオレンジ色に照らし出される。UV光を止めた場合、鮮やかなオレンジ色の輝きは約30秒間残存する。
【0067】
フォトクロミズム添加剤を含む好ましい実施態様は、下記成分:
a)53.5質量%の単官能性LCPアクリレート
【化15】

【0068】
b)21.5質量%の二官能性LCPアクリレート
【化16】

【0069】
c)18.5質量%の非反応性LCモノマーK15
【化17】

【0070】
f)1.0質量%の光開始剤
【化18】

【0071】
g)0.5質量%の阻害剤、ヒドロキノン
【化19】

【0072】
h)5質量%の、MUTR,Herts(英国)のフォトクロミックブルー顔料(IT9014)により示される。
【0073】
a〜gの成分をガラス瓶に加え、パラキシレンで1(混合物):1.25(パラキシレン)の比で希釈し、得られた混合物を70℃で5分間、磁気的に攪拌する。その結果、得られた混合物は流体である。次いで、成分hを加え、エタノールで1(成分h):10(エタノール)の比で希釈する。混合物を、30秒間、磁気的に激しく攪拌する。配列を生じさせるためにビロードの布地でこすったトリアセチルセルロースフィルム上に、ドクターブレード法を用いて40μmのフィルムに混合物を印字する。溶媒フィルムを50℃で2分間蒸発させ、得られたフィルムを、窒素雰囲気下でUV硬化する。
【0074】
得られた外観は、ポリマーマトリクス全体に分散した顔料を有している。得られた外観は複屈折しているが、分散した顔料のために分散もしている。複屈折性を、交差する偏光子の間で目視検査する。外観の配列軸がいずれかの偏光子に対して平行である場合、外観は暗いが、顔料による分散は、ある程度の光の透過を引き起こす。外観の配列軸が、両方の偏光子に対して45°である場合、外観は交差する偏光子の間で明るい。得られた外観は黄色を有しており、得られた外観をUV光の中に30秒間置いた場合、色は青に変化する。外観が、もはやUV光中にない場合、数分間青色を維持し、再度黄色に戻る。
【0075】
サーモクロミック添加剤を含む好ましい実施態様は、下記成分により示される。
【0076】
好ましい実施態様は以下の成分である:
a)53.5質量%の単官能性LCPアクリレート
【化20】

【0077】
b)21.5質量%の二官能性LCPアクリレート
【化21】

【0078】
c)18.5質量%の非反応性LCモノマーK15
【化22】

【0079】
f)1.0質量%の光開始剤
【化23】

【0080】
g)0.5質量%の阻害剤、ヒドロキノン
【化24】

【0081】
h)5質量%の、MUTR,Herts(英国)のサーモクロミック顔料(IT9007)。
【0082】
a〜gの成分をガラス瓶に加え、パラキシレンで1(混合物):1.25(パラキシレン)の比で希釈し、得られた混合物を70℃で5分間、磁気的に攪拌する。その結果、得られた混合物は流体である。成分hを加え、エタノールで1(成分h):10(エタノール)の比で希釈した。混合物を、30秒間、磁気的に激しく攪拌する。配列を生じさせるためにビロードの布地でこすったトリアセチルセルロースフィルム上に、ドクターブレード法を用いて40μmのフィルムに混合物を印字する。溶媒フィルムを50℃で2分間蒸発させ、得られたフィルムを、窒素雰囲気下でUV硬化する。
【0083】
得られた外観は、ポリマーマトリクス全体に分散した顔料を有している。得られた外観は複屈折しているが、分散した顔料のために分散もしている。複屈折性を、交差する偏光子の間で目視検査する。外観の配列軸がいずれかの偏光子に対して平行である場合、外観は暗いが、顔料による分散は、ある程度の光の透過を引き起こす。外観の配列軸が、両方の偏光子に対して45°である場合、外観は交差する偏光子の間で明るい。得られた外観が室温である場合、外観は赤色を有し、外観を50℃に加熱した場合、赤色は消失する。外観を室温まで冷却した場合、赤色は再度現れる。
【0084】
蛍光添加剤及び磁性粒子を含む好ましい実施態様は以下の成分:
a)53.3質量%の単官能性LCPアクリレート
【化25】

【0085】
b)21.6質量%の二官能性LCPアクリレート
【化26】

【0086】
c)18.6質量%の非反応性LCモノマーK15
【化27】

【0087】
f)1.0質量%の光開始剤
【化28】

【0088】
g)0.5質量%の阻害剤、ヒドロキノン
【化29】

【0089】
h1)3質量%の、ポリスチレン/ジビニルベンゼンマトリクス中に20〜60%のマグネタイトを含む、平均直径0.9μmの磁性ミクロスフェアビーズ
h2)2%の、RiskReactor(米国カリフォルニア州)のDFSB−K44−65蛍光染料により示される。
【0090】
a〜h2の成分をガラス瓶に加え、パラキシレンで1(混合物):1.25(パラキシレン)の比で希釈し、得られた混合物を70℃で5分間、手動で攪拌する。その結果、得られた混合物は流体である。配列を生じさせるためにビロードの布地でこすったトリアセチルセルロースフィルム上に、ドクターブレード法を用いて20μmのフィルムに混合物を印字する。溶媒フィルムを50℃で2分間蒸発させ、得られたフィルムを、窒素雰囲気下でUV硬化する。
【0091】
得られた外観は複屈折しており、ポリマーマトリクスに均一に分散した磁性粒子を含んでいる。複屈折性を、交差する偏光子の間で目視検査する。外観の配列軸が、いずれかの偏光子に対して平行である場合、外観は暗い。外観の配列軸が、両方の偏光子に対して45°である場合、外観は交差する偏光子の間で明るい。顕微鏡下、分散した磁性粒子が明確に視認できる。外観をUV光源下に置いた場合、山吹色の蛍光を示す。この蛍光は発光及び吸収において等方性である。
【0092】
顔料及び染料は、その分子配向に依存し、異方性光学特性を示す。異方性染料分子が、通常、独特な異方性分子形状によって引き起こされる、LCPの配列に対して平行又は垂直にLCPマトリクス中でかなりの程度に配列される場合、これらの分子は、集合的に異方性光学特性を示し、LCPマトリクスの重合後に残存する特徴的な光学特性を示す。この効果は、通常、二色性又は多色性として知られている。粒子自体が異方性光学特性を有する場合、顔料は二色性効果をも示す。しかし、集合効果のために、全ての顔料がそれら固有の異方性の方向に効果的に配列されなければならないので、このような特性を利用することは困難である。
【0093】
吸収において蛍光二色性を示す外観を生成することは可能であるが、発光においては可能でない。例えば、この効果は、2種の蛍光分子種を用いることにより達成でき、そのうちの1種は基本的に非二色で吸収及び発光し、他方は基本的に二色性である。吸収された光子エネルギーが他の種に移動するような方法で両方の種を選択することにより、このような効果を得ることができる。また、蛍光分子は、吸収及び発光において様々な程度の二色性を示し得るが、複数の適切に選択された種を用いることによる効果が一般的に言及される。
【0094】
異方性蛍光添加剤を含む好ましい実施態様は以下の成分:
a)54.5質量%の単官能性LCPアクリレート
【化30】

【0095】
b)22質量%の二官能性LCPアクリレート
【化31】

【0096】
c)19質量%の非反応性LCモノマーK15
【化32】

【0097】
f)1.0質量%の光開始剤
【化33】

【0098】
g)0.5質量%の阻害剤、ヒドロキノン
【化34】

【0099】
h)3質量%の、RiskReactor(米国カリフォルニア州)の異方性蛍光染料DFSB−K82により示される。
【0100】
a〜hの成分をガラス瓶に加え、パラキシレンで1(混合物):1.25(パラキシレン)の比で希釈し、得られた混合物を70℃で15分間、磁気的に攪拌する。その結果、得られた混合物は流体であり、透明である。配列を生じさせるためにビロードの布地でこすったトリアセチルセルロースフィルム上に、ドクターブレード法を用いて10μmのフィルムに混合物を印字する。溶媒フィルムを50℃で2分間蒸発させ、得られたフィルムを、窒素雰囲気下でUV硬化する。得られたフィルムは複屈折している。UV光源下に置いた場合、山吹色の蛍光を示す。この蛍光は発光において異方性であり、発光を偏光フィルターを通して目視検査した場合、発光は一偏光方向に対して高く、偏光の直交方向に対して低い。高発光及び低発光の差異は光学的に非常に独特であり、セキュリティ機能に著しい効果を与える。
【0101】
異なる蛍光染料を用いたのみで前述したものと同様の混合物を用いた場合、本発明者らは、
−RiskReactor(米国カリフォルニア州)の染料DFSB−K44−65を用いて、発光及び吸収の両方において等方性蛍光発光、
−染料DFSB−K61を用いて、発光及び吸収の両方において異方性蛍光発光を示す層をも得た。
【0102】
発光の異方性は、UV源が偏光していない間に、回転する偏光フィルターを通して発光を見ることにより、光学的に調べる。吸収の異方性は、光学的に、発光を調べている間に、UV偏光フィルターをUV源の前に置き、次いで試料を回転させて調べる。
【0103】
UV吸収性顔料及び染料若しくは顔料は、いくつかの特定の目的を果たし得る。このようなUV保護顔料及び染料は、印刷混合物中に存在し、又は他の印刷工程、好ましくはフレキソ印刷又はオフセット印刷によって、硬化後に印刷構造体上に塗布し得る。また、バーコーティング、ドクターブレード、噴霧、又は印刷基材上層上にUV吸収基材を塗布するような他の塗布方法を用いることができる。
【0104】
これらの顔料又は染料はUV光を吸収するので、それらは、構造の(機械的)特性の劣化、例えば脆弱さをもたらし得る有害なUV照射から、印刷層又はこの層の下部の物質を保護することができる。印刷層のUV硬化中、UV吸収剤は層のより深い部分が重合されるのを防ぐためにも用いることができ、その結果、非重合層の存在を可能にするが、上層は重合中に凝固する。また、このような非重合層は生成されないが、重合中に混合物の特定成分が高度に重合した領域に、又はその領域から拡散する場合、構造体中に勾配が形成される。このような勾配は新しい光学的効果を生成する。例えば、キラルドーパント量の勾配は重合後にキラルピッチの勾配を示す構造をもたらし、その結果、単一のピッチ構造よりも広い波長範囲にわたって光を反射する。この効果は、ブロードバンドコレステリックミラーとして知られている。
【0105】
また、前記添加剤が混合物中に、一緒又は別々に存在できることが強調されるべきである。しかし、重合性混合物を形成する成分の総量は常に100質量%であることは言うまでもない。
【0106】
重合の前後におけるマトリクス中のLCP’sの異方性光学特性はそれらの配列に依存しているので、その上に印刷された好ましい基材は、所望の光学的効果を得るためにLCP’sの配列を誘導するか、又は妨害しない。一般的に用いられる基材は、こすられたポリイミド、並びにこすられたトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン又はポリプロピレンである。こすることは、これらの基材に平面的配列特性を生じさせる。
【0107】
他の基材、また他のタイプの均一配列を生じる基材は、同様に当該技術分野において公知である。通常のタイプの配列は、例えば、平面、垂直配向及び傾斜した配列である。
【0108】
LPP(直鎖状の光重合性ポリマー)層は、配向層としても用いることができる。LPPは、偏光により配向層をパターニングすることを可能にし、その結果、配向層のマルチドメインパターン形成を可能にする。更に、配向層として、例えば、印刷によりパターン中に容易に塗布され得る自己組織化単分子膜(SAM’s)を用いることが可能である。例えば、SAM’s及びLPP又はトリアセチルセルロース層の組み合わせは、方位角方向及び極性方向におけるLCP’sの配列の全体にわたる、向上した制御を可能にする。
【0109】
表面の配列特性に次いで、基材の選択も、混合物及び基材の相互作用を決定する。これらの相互作用は、更なる(光学的)効果を生成するために用いることができる。例えば、親水性の(化学的に)パターン形成された表面の疎水性の使用は、印刷体の閉じ込めを可能にし、よって、高度の印刷解像度及びより著しい光学的効果を可能にする。幾何学的にパターン形成された表面は、印刷インクを閉じ込めるためにも用いることができる。閉じ込めは、より制御された形状を有する印刷構造体をもたらし、認証の目的に有利である、より良好な所定の特性をもたらし得る。このような、基材の化学的又は幾何学的パターン形成は、印刷により達成することができるが、例えば、エンボス加工、摩擦及びリソグラフィ等の他の技術も用いられる。
【0110】
用いられる基材の光学的特性は、セキュリティ機能全体に影響を及ぼす。このような基材は組み合わせることができ、すなわち、互いに作成された多層のセキュリティ機能上に積層され、又はセキュリティ機能は、それぞれ特に有益な特性を有する基材の積層の上に作成される。好ましい光学的特性に依存し、基材は、透明であり得、任意の波長範囲で吸収し、散乱し、又は反射し、又はこれらの効果のパターンを含み得る。基材は、他の光学的特性を有することもできる。具体例としては、1個の直線偏光のみを伝達する偏光フィルムの場合と同様の、1個の偏光のみを伝達する性能、又は1個の偏光のみを反射する性能、例えば、1個の光の掌性を反射するのみのコレステリックフィルムである。更に、基材は、例えば、リターダーフィルム及び半波長プレートの場合と同様に、伝達され、又は反射される光の偏光を変化することができる。
【0111】
基材は、他の認証機能を含むこともできる。具体例は、ホログラム、逆反射層、干渉スタック反射体、蛍光層、色変化層又はフレークにより印刷された特徴である。例えば、積層により、LCPポリマー構造上の他の認証機能を含む層を加えることも可能である。
【0112】
製造されたような外観が、製品又は書類に対する明らかな標識を変更するように塗布することができるように製造されることが好ましい。このような標識は、標識を無傷で除去することを非常に困難にする性質を有する。このような特性は機械的完全性に乏しく、例えば、外観は、低い強靱性、すなわち、引裂に対する低抵抗性を有する。更に、除去時の外観は、例えば、破裂−感受性インク粒子を用いて、前の存在の明確な跡を残すことができる。
【0113】
外観は、書類及び製品に容易に塗布できることも好ましい。このような塗布は、例えば、熱エンボス加工により、又は自己接着特性を形成することにより可能である。
【0114】
LCP’sの印刷は非常に適応性のある方法であり、例えば、異なる光学的特性を有するインクの同時印刷を可能にする、複数のインクを用いることにより、多くの新規な光学設計を可能にする。当然、フレキソ印刷、レーザー印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、ミクロ接触印刷、ミクロ転写印刷、凹版印刷、グラビア印刷、輪転グラビア印刷、オープンリール印刷及び熱転写印刷のような種々の印刷技術により、層の上又は下に印刷することも可能である。
【0115】
このような印刷は、印刷装置の設計に依存し、連続的又は平行して実施することができる。これら全てのオプションは、特定の目的のための特定の使用により、実施態様のグレートホストを可能にする。以下の段落において、いくつかのオプションに言及するが、これは、印刷するLCP’sの可能性の完全なリストではない。
【0116】
LCPインクを用いた、通常の黒色又は着色インクの組み合わせは、反射基材上に通常のインクを用いて印刷された画像又はテキストの上の構造体の印刷を遅延することにより、通常の印刷情報の上の明白な外観の包含を可能にする。対照的に、画像の上でコレステリックなLCP混合物を印刷することにより、コントラストの増加又は減少をも可能にする。
【0117】
左回り及び右回り反射コレステリックLCP’sのような、外見上同一の色を有するが、異なる反射特性を有するインクを用いることにより、偏光感度を有する装置又は機械読み取り装置を用いてのみ表わすことができる、隠れた情報を印刷することができる。色変化非液晶インク及び色変化LCPインクの組み合わせは、1種のインクが均一な反射を有し、他方のインクが偏光選択性を有するので、同様の効果を生じる。インクと、同じ光学的特性を有する種々の添加剤との組み合わせも、隠れた情報の印刷を可能にする。
【0118】
互いの上層へのいくつかの層の印刷は、反射性を向上するか、又は印刷される色を向上させる。
【0119】
自己認証構造は、例えば、一緒に折りたたまれて追加の効果を生じ得る、反射表面上の、例えば構造化された偏光子及びLC構造を用いることによって印刷することができる。これは、暗号化データを回復することもできる。
【0120】
前記記載から既に明らかなように、以下に説明する、セキュリティの(複数の)明白で隠れた法医学的な生体測定レベルを有する認証機能を生成が可能であることは、LCP’sのインクジェット印刷の特別な利点である。また、認証機能中に存在する、顔料及び染料、基材、印刷方法及び層の設計のような適切に選択した添加剤(の組み合わせ)により、各レベルにおける複数のオプションの1つ又はオプションの組み合わせを用いることが可能である。
【0121】
印刷されたキラルネマチック構造が傾斜した場合に見ることのできる色変化効果のような、追加の装置を使用せずに、誰かに直接明らかである(特に可視的に)セキュリティのレベルを組み込んだ外観は、明らかに公知である。任意の明らかなセキュリティ機能は容易に認識可能であるが、偽造することが非常に困難である。他の具体例は、液晶の色変化インクの多色印刷物である。
【0122】
簡単な装置を用いてセキュリティの隠されたレベルを明らかにすることのみできる。例えば、LCP’sの複屈折特性は、適切な設計を選択した場合、偏光子のような簡単な装置を用いて示すことができる。具体例は、配列軸に対して0又は45°で偏光子を通して見た場合に反射を示すか反射を示さない、反射基材上に印刷されるネマチック構造である。他の具体例は、環状に偏光した光の1種の掌性を反射するキラルなネマチック印刷である。これは、環状の偏光子により認識され得る。多くの不活性液晶の場合のように、異方性誘電率を有する場合、非重合のままであり得る印刷構造体の一部は、電磁気的に切り替えることができる。これは、構造体の光学的特性を変化させる。使用においては、隠されたレベルはセキュリティ機能として可視的でない(すなわち、結合した隠されたレベルがない)が、例えば、(電)磁気的に保存された情報、目に見える微構造からなることが好ましい場合がある。光学的及び他の隠された層の両方については、通常、手順、並びに全自動認証を実施する関連装置について工夫することが可能である。
【0123】
セキュリティの更に複雑なレベルは、セキュリティの法医学的レベルである。このレベルは、通常、高価な読み出し装置にアクセスする使用者の選ばれたグループにのみ詳細に知られている。このレベルについての可能性は、NMRスキャンのような高度な分析法を用いて追跡することのできる、トレーサー分子を印刷インクに加えることである。他のオプションは、インク内容物を正確に解析すること、印刷ドットの特定のサイズ及び形状を調べることである。
【0124】
最終的に、セキュリティの生体測定レベルは、通常、例えば、人を追跡及び跡をたどるため、又は認証するために用いられる独特の情報を外観に保存することを可能にする。LCP’sの印刷工程の柔軟性のため、例えば、バーコード、シリアルナンバー、画像及び他の情報を印刷することが可能である。
【0125】
セキュリティデバイス中の添加剤の有効性は、追加の生体測定レベルとして用いることもできる。添加剤がセキュリティデバイスの全体に均一に分散されていないが、所定のパターンで分散されている場合、それは、適切な読み出し装置を用いるまで隠されている更なる情報を含み得る。これは、1つの装置を製造するための異なるインク(例えば、磁気、導電性又は光学的添加剤の追加を除き同等の組成である)を用いることにより達成することができる。
【0126】
具体例は、平面的に配列された反射基材上にネマチックなLCPインクを用いて印刷したバーコード中での磁性添加剤の局所使用である。バーコードは、一方が磁性添加剤を含むことを除き同一である2種のLCPインクを用いて印刷され、上半分は磁性添加剤を含むインクを用いて印刷され、下半分は磁性添加剤を含まないインクを用いて印刷される。現在、全体的なバーコードは複屈折しているので、バーコードは偏光子を用いて目視検査される。偏光子が、LCPの配列方向に対して平行又は直交の偏光方向を有し、偏光子がLCPの配列方向に対して45°の角度で暗くなる場合、バーコードは可視的でなくなるだろう。磁気抵抗センサーのような磁気センサーを用いることにより、上半分を磁気的に検査することができるが、下半分は磁気シグナルを与えないであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分:
a)30〜80質量%の単官能性LCP’s、
b)0〜50質量%、好ましくは50質量%未満の高官能性LCP’s、
c)0〜30質量%、好ましくは20質量%未満の液晶性不活性モノマー、
d)0〜50質量%、好ましくは30質量%未満の非液晶(単又は高)官能性モノマー、
e)0〜30質量%、好ましくは20質量%未満の非液晶性不活性モノマー、
f)0.01〜10質量%、好ましくは2質量%未満の開始剤、
g)0〜10質量%、好ましくは2質量%未満の阻害剤、
h)0.01〜50質量%、好ましくは20質量%未満、更に好ましくは10質量%未満の添加剤を含むが、成分の総量が100質量%であるセキュリティデバイスであって、
添加剤h)が常磁性、超常磁性、反磁性又はフェリ磁性粒子のような磁性添加剤を含むことを特徴とするセキュリティデバイス。
【請求項2】
前記添加剤h)が、導電性又は導電性添加剤を追加的に、又はそれのみを含むことを特徴とする、請求項1に記載のセキュリティデバイス。
【請求項3】
前記導電性又は導電性添加剤が、ナノメーター又はマイクロメーターサイズの棒、フレーク、球体、若しくはそうでなければ、金属、合金又は半導体を主成分とする材料の適切な形状の導電性粒子からなる群から選択されることを特徴とする、請求項2に記載のセキュリティデバイス。
【請求項4】
前記導電性又は導電性添加剤が、
−ポリフェニレンビニレンのような、半導電性共役ポリマー、
−好ましくはLCP’sであるオリゴチオフェンのような、半導電性液晶からなる群から選択されることを特徴とする、請求項3に記載のセキュリティデバイス。
【請求項5】
前記添加剤h)が、フォトクロミック顔料又は染料、サーモクロミック顔料又は染料、エレクトロクロミック顔料又は染料、イオノクロミック顔料又は染料、ハロクロミック顔料又は染料、ソルバトクロミック顔料又は染料、トロボクロミック顔料又は染料、並びにピエゾクロミック顔料又は染料を、追加的に又はそれのみを含むことを特徴とする、請求項1に記載のセキュリティデバイス。
【請求項6】
前記成分を、インクジェット印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、ミクロ接触印刷、ミクロ転写印刷、グラビア印刷、輪転グラビア印刷、オープンリール印刷のような、しかしこれらに限定されない印刷手段により、基材に塗布することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のセキュリティデバイス。
【請求項7】
前記成分が、線状の光重合性ポリマーを含む基材層により配列されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のセキュリティデバイス。
【請求項8】
前記成分が、複数の配列した基材の組み合わせを介して、複数のタイプの配列により配列されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載のセキュリティデバイス。
【請求項9】
前記基材が、ホログラム、逆反射層、干渉スタック反射体、蛍光層、色変化層又はフレークにより印刷された特徴のような、更なる認証機能を含むことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載のセキュリティデバイス。
【請求項10】
前記成分e)〜f)が、前記成分a)〜d)の液晶の配列を妨げないように選択されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載のセキュリティデバイス。
【請求項11】
a)、b)及びd)に由来する前記成分が官能化され、好ましくは所有する官能基の適合型のため、非常に好ましくは、同じタイプの官能基を有することにより、ポリマー構造を形成することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載のセキュリティデバイス。
【請求項12】
前記成分a)〜h)が、相分離が少なくとも重合前にのみ抑制されるが、好ましくは重合中も抑制されるように選択されることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載のセキュリティデバイス。
【請求項13】
前記デバイスが、例えば、テキスト、数字、バーコード又は映像のような情報を含むことを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載のセキュリティデバイス。
【請求項14】
前記添加剤が、テキスト、数字、バーコード又は映像のような更なる情報、場合により隠れた情報を含むパターン形状であることを特徴とする、請求項1から13のいずれか1項記載のセキュリティデバイス。

【公表番号】特表2010−520828(P2010−520828A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553066(P2009−553066)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/001924
【国際公開番号】WO2008/110342
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(509257318)テヒニッシェ ウニヴェルシテート アイントホーフェン (5)
【氏名又は名称原語表記】Technische Universiteit Eindhoven
【住所又は居所原語表記】Den Dolech 2, NL−5600 MB Eindhoven, Netherlands
【Fターム(参考)】