説明

複数の高周波(RF)出力素子を利用してプラズマ特性を制御するRF出力結合システム

【課題】 高周波(RF)プラズマ処理システムにおいて、RFエネルギーの均一性を改善する装置及び方法の改良が必要である。
【解決手段】 高周波(RF)出力結合システムが供される。当該システムは、RF出力をプラズマ処理システム内のプラズマへ結合するRF電極と、該RF電極上の複数の出力結合位置でRF出力を電気的に結合する複数の出力結合素子と、該複数の出力結合素子と結合して、RF出力信号を前記複数の出力結合素子の各々へ結合するRF出力システムを有する。前記複数の出力結合素子は、前記RF電極の中心に位置する中心素子と、前記RF電極の中心から外れた位置に設けられる周辺素子を有する。第1周辺RF出力信号は、第2周辺RF出力信号と位相が異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波(RF)出力をプラズマ処理システム内のプラズマへ結合するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(たとえばプラズマ処理装置内の)RF電極を介してRF出力を結合するとき、電圧定在波VRF(r)がRF電極表面上に生じる。電圧定在波は一般的には、電極の中心(r=0)で最大をとる動径関数(通常は方位角方向に対称)である。その電流共役IRF(r)は、r=0で最小値をとる。平坦な電極のRF波長(自由空間波長ではない)が、電極半径の約10倍の範囲内の寸法にまで短くなるときにエネルギー空間分布の問題が生じる。しかしこの相対的に平坦な電極のRF波長は依然として、10倍以外の寸法のときにも、不十分なエネルギー空間分布を発生させる恐れがある。
【0003】
RF周波数が、たとえばVHF範囲(約30MHz〜約300MHzで、たとえば100MHz)で高く、かつ、大きなウエハ(又は基板)のプラズマ処理に用いられるとき、不均一な空間エネルギー分布がすぐに現れる。たとえばrが(基板の)中心のときの電圧が、rが(基板の)端部のときの電圧よりも顕著に大きくなる。問題が電磁気学的であるため、不均一性も同様に電流共役を有する。rが端部のときのRF電流は、r=0のRF電流(RF電流はr=0で0である)よりも顕著に大きくなる。定在波のエネルギー空間分布問題は基本的には、中心で強い容量モードを引き起こす電圧の定在波効果、及び、端部で強い誘導モードを引き起こす端部表皮効果から生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような不規則な空間エネルギー分布の結果、プラズマ分布は不均一となり、その結果、基板処理特性は不規則となる。従ってRFエネルギーの均一性を改善する装置及び方法の改良が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
高周波(RF)出力結合システムが供される。当該システムは、RF出力をプラズマ処理システム内のプラズマへ結合するRF電極と、該RF電極上の複数の出力結合位置でRF出力を電気的に結合する複数の出力結合素子と、該複数の出力結合素子と結合して、RF出力信号を前記複数の出力結合素子の各々へ結合するRF出力システムを有する。前記複数の出力結合素子は、前記RF電極の中心に位置する中心素子と、前記RF電極の中心から外れた位置に設けられるm(mは2以上の整数)個の周辺素子を有する。中心RF出力信号は前記中心素子に結合される。前記中心RF出力信号は中心周波数を含む。第1周辺RF出力信号は、前記m個の周辺素子の第1周辺素子に結合される。前記第1周辺RF出力信号は、前記中心周波数とは異なる第1周辺周波数を含む。第2周辺RF出力信号は、前記m個の周辺素子の第2周辺素子に結合される。前記第2周辺RF出力信号は、前記第1周辺周波数と実質的に等しい第2周辺周波数を含む。前記第1周辺RF出力信号は、前記第2周辺RF出力信号と位相が異なる。
【0006】
高周波(RF)出力結合システムの動作方法が供される。当該方法は、プラズマ処理システム内にRF電極を供する工程を有する。前記RF電極は、RF出力を前記プラズマ処理システム内のプラズマへ結合する。当該方法はまた、前記RF電極上の複数の出力結合位置でRF出力を電気的に結合する複数の出力結合素子を供する工程をも有する。前記複数の出力結合素子は、前記RF電極の中心に位置する中心素子と、前記RF電極の中心から外れた位置に設けられるm(mは2以上の整数)個の周辺素子を有する。当該方法はさらに、前記複数の出力結合素子と結合して、RF出力信号を前記複数の出力結合素子の各々へ結合するRF出力システムを供する工程を有する。さらに中心周波数を含む中心RF出力信号は前記中心素子に結合される。前記中心周波数とは異なる第1周辺周波数を含む第1周辺RF出力信号は、前記m個の周辺素子の第1周辺素子に結合される。前記第1周辺周波数と実質的に等しい第2周辺周波数を含む第2周辺RF出力信号は、前記m個の周辺素子の第2周辺素子に結合される。当該方法は最後に前記第1周辺RF出力信号と前記第2周辺RF出力信号との間での位相差及び/又は振幅差を変化させる工程を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例の上面図である。
【図2】中心出力結合素子により生成される電場を表すグラフである。
【図3】中心出力結合素子により生成されるプラズマ密度を表す図である。
【図4】複数の周辺出力結合素子により生成される電場を表すグラフである。
【図5】複数の周辺出力結合素子により生成されるプラズマ密度を表す図である。
【図6】本発明の他の実施例の上面図である。
【図7】本発明の方法に係る実施例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に含まれ、その一部を構成する添付図面は、本発明の実施例を例示し、上述の本発明の一般的な説明及び後述の詳細な説明と共に、本発明を説明する。
【0009】
以降の議論では、Ne(r)はプラズマ密度(又は電子密度)の空間分布関数を表し、Neは明確に区別された領域内での電子のエネルギーを表す。IEDf(r)はウエハ上でのイオンエネルギー分布の空間分布関数を表す。本発明は、プラズマ処理特性−たとえばIEDf(r)の均一性−及び電子密度Ne(r)の均一性を調節するシステム及び方法を供する。本発明は、位相、周波数、及び振幅が変化する複数のRF又はVHF出力供給(結合)位置を利用して、VRF(r)つまりはIEDf(r)及びNe(r)への有害な波長の効果を克服する。
【0010】
図1は、複数の出力結合素子に結合するRF電極12を利用する開示された高周波出力結合システム10の実施例を表している。出力結合素子は、中心素子14及び複数(m個)の周辺素子16を有する。m個の周辺素子16の各々は、中心素子14から動径方向に離れた位置に設けられる。図示された実施例では、4個の周辺素子(m=4)が図示され、それぞれ16a-16dのラベルが付されているが、任意の数(m>1)が用いられて良い。中心素子14及び周辺素子16a-16dは一体となって、(供給)出力をRF電極12へ結合するのに用いられる。しかし複数の出力結合素子14と16a-16dの各々は、後述するように、振幅及び位相シフト(複素振幅)が変化するRF信号により始動する。
【0011】
この図では、4個の周辺素子16a-16dは中心素子14から動径方向に一定の距離の位置に設けられ、かつ、周辺素子16a-16dの各々は、動径方向の対称性及び方位角方向の対称性を得るように、等しい角度間隔に配置される(4個の周辺素子16a-16dは、0、π/2、π、及び3π/2ラジアンで対称となるように設けられる)。これらの周辺素子16a-16dは、Ne(r)の均一性を改善するように中心素子14と併用される。
【0012】
それに加えて、周辺素子16は、角度位置(脚)あたり1つの素子に限定される必要はない。たとえば一部の実施例では、中心素子14から様々な距離での所与の角度位置又は動径方向の長さで複数の周辺素子16を設けることが望ましいと考えられる。たとえば追加の周辺素子16eは0ラジアンの脚上に設けられて良く、かつ、追加の周辺素子16fはπラジアンの脚上に設けられて良い(図1では、任意の追加の素子16e-16fは破線で表されている)。追加の周辺素子16e,16fは同一の位置に設けられても良いし、又はそれぞれ異なる位置に設けられても良い。以降の議論の大半は対称性を有する配置に係るが、半導体処理システムにおいて用いられるときには、ある所望の不均一性を生じさせる非対称な配置も用いられ得ることに留意して欲しい。たとえば周辺素子16は、中心素子14から同一の動径方向の距離に設けられなくても良い。
【0013】
RF出力システム18は、複数の出力結合素子14と16に結合され、かつ、素子14と16a-16dの各々に各独立したRF出力信号を与える。上述したように、中心素子14が、プラズマ処理システム内で独立して用いられ、かつ、100MHzの正弦波信号により駆動する場合、プラズマ分布は、r=0で高密度を有し、かつ、r=端部で低密度を有する。
【0014】
使用中、中心素子14は、RF出力システム18により、中心振幅及び中心周波数を有する中心RF出力信号で始動する。この点では、周辺素子16が用いられない場合、その結果得られる上述のIEDF(r)及びNe(r)は、図2,3に示されているように、コンピュータを用いたモデル化により表されて良い。図2は、結果として得られた電圧が、電極の中心(つまり被処理基板の中心)で最高となり、かつ、端部付近で最低となることを示している。同様に、プラズマ密度Ne(r)が図3で表されている。図中、高プラズマ密度は被処理基板の中心付近に見いだされ、かつ、低密度は基板端部に見いだされる。
【0015】
図1に戻ると、それらの不均一性を改善するため、図2及び図3に図示されたIEDF(r)及びNe(r)に対して実質的に反転したIEDF(r)及びNe(r)を生成することが可能である。中心素子14により生成されたIEDF(r)及びNe(r)とその反転したものを合計する結果、IEDF(r)及びNe(r)は実質的に平坦又は均一となる。
【0016】
そのため、第1周辺素子16aは、RF出力システム18によって、第1周辺振幅、第1周辺周波数、及び第1周辺位相(第1周辺素子16aは参照位置にあるため、その位相はゼロである)で始動する。同様に、第2周辺素子16cは、RF出力システム18によって、第2周辺振幅、第2周辺周波数、及び第2周辺位相で始動する。同様の呼称(第3周辺振幅、第3周辺周波数、及び第3周辺位相等)も、他の複数の周辺素子16bと16dの各々に適用される。
【0017】
周辺素子16は、RF出力システム18によって実質的に等しい振幅で駆動されて良い(この議論を通じて、「実質的に」という語は、製造許容度、環境のばらつき又はRFドリフトから生じうる真に等価な値からのずれを含むものと解される)。しかしある状況下では、不規則性又は処理チャンバ壁に取り付けられた非対称な構造により生じるNe(r)を補償するため、周辺素子16a-16dの個々の振幅が、均一性を改善するように操作されて良い。中心素子14が始動しないことで、周辺素子16a-16dは、RF出力システム18により供給される個々の位相成分を調節することによって、rが端部のときに高くなってrが0のときに低くなるNe(r)を生成しうる。コンピュータを用いたモデル化によって表されるこの現象は図4-5に示されている。図4は、結果として得られた電圧が、電極の中心(つまり被処理基板の中心)で最低となり、かつ、端部付近で最高となることを示している。同様に、プラズマ密度Ne(r)が図5で表されている。図中、低プラズマ密度は被処理基板の中心付近に見いだされ、かつ、高密度は基板端部に見いだされる。
【0018】
一の実施例では、周辺素子16a-16dの各々は、それぞれ0、π/2、π、及び3π/2ラジアンの位相で駆動する(周辺素子16の個数mによらず、2π/mの漸進する位相シフトは許容可能な結果を生成しうる)。そのようにすることによって、個々の周辺素子16に供されるRF出力信号は、処理チャンバ内で建設的及び破壊的に結合することで、rが端部のときに高くなってrが0のときに低くなるNe(r)を与える。このように周辺素子16を動作させることによって、中心素子14を同時に始動させながら、均一性が改善されたNe(r)が生成される。角度位置の関数としてのVRFのわずかな不規則性が検出される場合、その不規則性は、周辺素子16の周辺位相を、本来の間隔であるπ/2から数度変化させることによって補正されうる。
【0019】
位相は、低出力信号発生装置を用い、低出力信号を増幅装置へ供給し、その後増幅された信号をインピーダンス整合ネットワークへ接続することによって操作されうる。続いて増幅されてインピーダンス整合された複数の信号の各々は、複数の出力結合素子14と16を解してRF電極12へ結合されて良い。あるいはその代わりに、単一の高出力信号は、複数の回路素子を一体として用いて、又は、信号源と、RF電極12及び素子14と16との間での可変ケーブル長を利用することによって分裂及び位相シフトされて良い。当業者がすぐに分かるような他の手法が、適切な設計事項に基づいて選択されても良い。
【0020】
複数の素子14と16を利用するこれまでの例が切れ目のない電極について記載されてきたが、本発明のシステム及び方法は、プラズマ処理特性のさらなる可変性を実現するため、区分化された電極を含むように修正されても良い。たとえばRF電極12は、中心素子14が存在する中心区分と、各々が少なくとも1つの周辺素子を含む1つ以上の周辺区分を含むように修正されて良い。
【0021】
図6に図示されたシステム10’を参照すると、複数の区分を有する電極12’の一の実施例は、中心素子14に属する中心区分12aと、複数の周辺素子16に属する3つの周辺区分12b1、12b2、及び12b3を有する。この例では、9個の周辺素子が存在する(つまりm=9)。ここで周辺区分12b1、12b2、及び12b3の各々には3つの素子16が存在する。3つの周辺素子16g-16i(m1=3)は、第1動径距離r1に設けられる。周辺素子16g-16iの各々は、r1の周辺に対して非対称に設けられる。周辺素子16g-16iの各々は、それぞれ周辺区分12b1-12b3の区分け線で囲まれた範囲の中央に位置する。
【0022】
それに加えて、6つの周辺素子16j-16o(m2=6)は、第2動径距離r2に設けられる。周辺素子16j-16oの各々は、r2の周辺に対して対称に設けられる(2π/6の増分)。16jと16k、16lと16m、及び16nと16oの各対は、それぞれ周辺区分12b1-12b3の区分け線15で囲まれた範囲の中央に位置する。システム10’は、複数の素子14と16j-16oと結合するRF出力システムを有する。
【0023】
一の実施例では、システム10’のRF出力システム18は、中心素子14に中心周波数を与え、かつ、複数の周辺素子16j-16oに共通の周辺周波数を与えて良い。それに加えて、中心素子14に印加されるRF信号の位相は任意であって良い一方で、複数の周辺素子16j-16oの各々に印加されるRF信号の位相シフトはそれぞれ、2π/m1及び2π/m2の割合で漸進的に増大して良い。この実施例では、m= m1+ m2である。m1はr1に位置する周辺素子の個数(つまり3)を表し、かつ、2π/m1はr1での位相又は角度の間隔(つまり2π/3ラジアン)を決定する。m2はr2に位置する周辺素子の個数(つまり6)を表し、かつ、2π/m2はr2での位相又は角度の間隔(つまり2π/6ラジアン)を決定する。その結果、この典型的実施例では、周辺素子16g-16iはそれぞれ、0、2π/3、及び4π/3ラジアンの位相で駆動する一方で、周辺素子16j-16oはそれぞれ、0、π/3、2π/3、π、4π/3、及び5π/3ラジアンで駆動する。図示されているように、位相(角度間隔)が、2π/mxを利用することによって各動径位置で決定されて良い。ここでxは、素子16が設けられる動径位置の数である。よって角度間隔は各動径位置で等しい間隔をとるが、すべての周辺素子mについて必ずしも等しくなくてよい。あるいはその代わりに、すべての周辺素子mは、動径位置によらず−つまり半径の脚上での位置によらず−等しい間隔の角度間隔で設けられて良い。よって図6の9個の周辺素子16j-16oは、角度間隔2π/9で9つの各対応する半径の脚に沿って設けられて良い。様々な周波数、位相、振幅、及び機械的又は電気的回転を含むように、システム10及び上述の図1の議論で言及した構成の変数の各々は有利となるようにシステム10’に適用されて良い。
【0024】
上述のシステム10の動作方法が、図7のフローチャート内に記載されている。30では、RF電極12がプラズマ処理システム内に供される。ここでRF電極12は、プラズマ処理システム内のプラズマにRF出力を結合する。32では、RF電極12上の複数の出力結合位置でRF出力を電気的に結合する複数の出力結合素子が供される。複数の出力結合素子は、RF電極12の中心に設けられた中心素子14と、RF電極12の中心から外れた位置に設けられたm(m>1)個の周辺素子16を有する。34では、RF出力システム18は、複数の出力結合素子用に供され、かつ、複数の出力結合素子の各々へRF出力信号を結合する。
【0025】
当該方法はさらに、36において、中心周波数を含むRF出力信号を中心素子14へ結合する工程、38において、第1周辺周波数を含む第1周辺RF出力信号を、m個の周辺素子のうちの第1周辺素子16aに結合する工程、及び、40において、前記第1周辺周波数と実質的に等しい第2周辺周波数を含む第2周辺RF出力信号を、前記m個の周辺素子のうちの第2周辺素子16cに結合する工程を有する。当該方法は最後に、42において、前記第1周辺RF出力信号と前記第2周辺RF出力信号との間での位相差及び/又は振幅差を変化させる工程を有する。
【0026】
複数の変数が、結果として得られるNe(r)を改善するように調節されて良い。たとえばVRF(r)を平坦(すなわち均一)に調節するため、中心素子14は、複数の周辺素子16へ供される周波数とは異なる中心周波数によって任意の位相で始動して良い。一般的には、RF出力システムにより複数の周辺素子16a-16dの各々へ供される各対応する周波数は実質的に等しい。しかし中心素子14と複数の周辺素子16a-16dとの間の周波数が、実質的に同一であることも許される場合、中心素子14からの放出は、複数の周辺素子16a-16dからの放出に意図しない影響を及ぼし、逆に、複数の周辺素子16a-16dからの放出も中心素子14からの放出に意図しない影響を及ぼす恐れがある(つまりクロストークすなわち共チャネル干渉が起こりうる)。この現象を防止するため、RF出力システム18により中心素子14へ供給される周波数が、複数の周辺素子16a-16dへ供給される周波数と約1%以上異なる場合には、クロストークの危険性はない。たとえば中心素子14は101MHzで始動し、かつ、周辺素子16a-16dは100MHzで始動しうる一方で、許容可能な結果を生成する。それに加えて5%又は10%の変化は、ある配置においては許容可能な結果を与えうる。その結果、5つの複素振幅(中心素子14の中心振幅及び中心位相と、周辺素子16a-16dの各周辺振幅及び周辺位相)が合計されることで、平坦なVRF(r)つまりは平坦なIEDf(r)が得られる。
【0027】
同様に、中心素子14の中心振幅は、周辺素子16a-16dの周辺振幅から独立に調節されて良い。中心素子14の適切な振幅と周辺素子16a-16dの適切な周辺振幅が、平坦なVRF(r)つまりは平坦なIEDf(r)が得られるように数学的に計算されうる一方で、それらの理論値からのずれが必要となることも考えられ得る。たとえばある半導体処理手順中、IEDf(r)においてある程度の非対称性(しかし中心素子単独の動作から生じる深刻な勾配よりも小さい)を有することが望ましい場合もあり得る。そのような状態では、RF出力システム18により中心素子14へ供される振幅は、RF出力システム18により複数の周辺素子16a-16dへ供される振幅から独立して調節されうるし、逆に、RF出力システム18により複数の周辺素子16a-16dへ供される振幅は、RF出力システム18により中心素子14へ供される振幅から独立して調節されうる。同様に、処理チャンバ内部での物理的構造又は変化した処理環境は結果として、数学的モデルで説明されないIEDf(r)の不規則性を生じさせた。その結果、IEDf(r)の不均一性は、中心素子14又は複数の周辺素子16a-16dの振幅を調節することによって、基板処理中にその場で調節されうる。中心素子14と周辺素子16a-16dとの間でのそのような独立した調節は、複数の周辺素子16a-16d間の振幅の個別の調節と共に実現されうる。
【0028】
RF信号(たとえば電圧、電流等)は、少なくとも1つのRF複素振幅により特徴付けられてよく、かつ、複数の複素振幅の重ね合わせを含んでよいことに留意して欲しい。RF出力結合素子14又は16a-16dのうちの少なくとも1つと結合するRF信号は、RF出力により第1周波数で発生し、かつ、第1RF複素振幅により特徴付けられて良い。
RF出力結合素子のうちの少なくとも1つと結合するRF信号は、第2周波数でのRF出力をさらに有し、かつ、第2RF複素振幅により特徴付けられて良い。
【0029】
一部の構成では、第2周波数は第1周波数の調和周波数(参照周波数の整数倍)であって良い。
【0030】
複数の周辺素子16を追加することで、IEDf(r)及びNe(r)において局在化した乱れが導入される恐れがある。しかしそれらの乱れの影響は、得られたVRF(r)を機械的又は電気的に回転させることによって緩和させることができる。VRF(r)を電気的に回転させるため、複数の周辺素子16a-16dの各々は、PINダイオード又は他の適切なRF切り換えネットワークを用いることによって、時間的なパターンで選択的に始動されるか又は始動されないようにしてよい。あるいはその代わりに他の実施例がVRF(r)を電気的に回転させるのに用いられても良い。最初に図1に図示されているように、複数の固定された導体22a-22dが、中心素子14に対して対称であって、複数の周辺素子16a-16dの各々に隣接して設けられる。複数の周辺素子16a-16dは連続的に始動される一方で、複数の導体22a-22dの各々は、インピーダンス負荷24を介してグランド(ゼロ電位)へ選択的に接続及び切断される。図1では、素子22のすべては1つにつなげられているため、素子22のすべてを分離して制御することができない。導体22a-22dの各々をグランドに接続することは、導体に隣接する周辺素子16を始動させないことに等しい。
【0031】
機械的な回転は、物理的にRF電極12を回転させるか、又は物理的に基板を回転させることによって実現されて良い。あるいはその代わりに、上で用いた固定された導体22a-22dと同様の可動導体26が、選択的に始動されるか、又は選択的にグランドに接続される一方で、可動導体26は、中心素子14又は複数の周辺素子16a-16dに対して機械的に回転する。これは、回転又は並進によって実現されて良い。選択的に始動されるか、又は選択的にグランドに接続されるかによらず、可動導体26は、VRF(r)に影響を及ぼし、かつ、動くことで局在化した不規則性を変位させる。電気的回転と機械的回転の両方により、不規則性は、基板上の局在化した影響を緩和するように、方位角方向に拡げられる(分配される)。
【0032】
VHFスペクトルの上限(つまり300MHz)に接近するとき、表皮効果が支配的になる。従って上部VHF範囲(100〜300MHz)のRF出力信号が中心素子14に結合されるとき、VRF(端部)は非常に高くなり、かつ、複数の周辺素子16a-16dが、VRF(中心)を上げることは難しくなる。その状況では、基板付近の主要なDC電源が中心のNe(r)を上げるので、RF電極12は、(DCバイアスを導入することによって)陰極として構成されうる。続いて複数の周辺素子16a-16dは、平坦なVRF(r)及び平坦なIEDf(r)を維持するのに利用されて良い。
【0033】
反対に中心素子14が、VHFスペクトルの下限(つまり30MHz)に接近する周波数で始動されるとき、定在波特性が支配的になる。その構成では、下部VHF範囲(30〜99MHz)のRF出力信号によって、中心Ne(r)は非常に高くなり、かつ、複数の周辺素子16a-16dは、中心Ne(r)を下げようとすることで中心電圧を減少させるように実装される。しかしある状況下では、VRF(r)が実質的に不均一となるように、中心電圧を十分に下げる必要がある(中心のイオンエネルギーが低すぎるときに不均一なIEDf(r)は生じる)。それらの状況下では、平坦なNe(r)を実現するため、システム10は、最初に、概して平坦なIEDf(r)を得るのに複数の周辺素子16a-16dを実装することを必要とし、続いて、周辺に誘導結合プラズマを生成するのにRF電極12の周囲に隣接して設けられた埋め込みRFインダクタ20の利用を必要とする。RFインダクタが結合したプラズマは、端部Ne(r)を補い、かつ、平坦なNe(r)を与える。
【0034】
RF電極12が、上に基板が存在する下部電極を有しうる一方で、複数のRF出力結合素子が結合するRF電極は、たとえば基板と下部電極に対向する上部電極をも有して良い。同様に、実施例は、環状基板−たとえば半導体ウエハ−を処理するための環状電極を表しているが、他の形状−たとえば正方形、長方形等−も考えられる。さらに本発明の例がVHF用途に焦点を当てて説明されているが、本発明の装置及び方法は、選択された波長が電極のサイズと比較して約1桁大きい(つまり意図しない「波長効果」が存在する)高周波容量結合プラズマ(CCP)と共に用いられても良い。
【符号の説明】
【0035】
10 高周波(RF)出力結合システム
12 RF電極
14 中心素子
16 周辺素子
18 RF出力システム
22 固定された導体
24 インピーダンス負荷
26 可動導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波(RF)出力結合システムであって:
RF出力をプラズマ処理システム内のプラズマへ結合するRF電極;
前記RF電極上の複数の出力結合位置でRF出力を電気的に結合する複数の出力結合素子;
該複数の出力結合素子と結合して、RF出力信号を前記複数の出力結合素子の各々へ結合するRF出力システム;
を有し、
前記複数の出力結合素子は、前記RF電極の中心に位置する中心素子と、前記RF電極の中心から外れた位置に設けられるm(mは2以上の整数)個の周辺素子を有し、
中心周波数を含む中心RF出力信号は前記中心素子に結合され、
前記中心周波数とは異なる第1周辺周波数を含む第1周辺RF出力信号は、前記m個の周辺素子の第1周辺素子に結合され、
前記第1周辺周波数と等しい第2周辺周波数を含む第2周辺RF出力信号は、前記m個の周辺素子の第2周辺素子に結合され、
前記第1周辺RF出力信号は、前記第2周辺RF出力信号と位相が異なる、
RF出力結合システム。
【請求項2】
前記第1周辺RF出力信号が、2π/mに等しい位相差で前記第2周辺RF出力信号と異なる、請求項1に記載のRF出力結合システム。
【請求項3】
前記第1周辺素子と前記第2周辺素子が、動径方向において第1半径位置に位置し、かつ、方位角方向において等間隔の角度間隔に位置する出力結合位置に設けられる、請求項2に記載のRF出力結合システム。
【請求項4】
動径方向において第2半径位置に設けられ、かつ、方位角方向において等間隔の角度間隔で設けられる前記m個の周辺素子の第3周辺素子と第4周辺素子をさらに有する、請求項3に記載のRF出力結合システム。
【請求項5】
前記第1周辺素子と前記第3周辺素子が同一の第1半径脚上に設けられ、かつ、
前記第2周辺素子と前記第4周辺素子が同一の第2半径脚上に設けられる、
請求項4に記載のRF出力結合システム。
【請求項6】
前記第2半径位置が前記第1半径位置と同一で、かつ、
前記第1周辺素子、前記第2周辺素子、前記第3周辺素子、及び前記第4周辺素子が、π/2の等しい角度間隔で方位角方向に設けられている、
請求項4に記載のRF出力結合システム。
【請求項7】
前記m個の周辺素子が、動径方向において同一の半径位置に位置し、かつ、方位角方向において等間隔の角度間隔に位置する出力結合位置に設けられる、請求項1に記載のRF出力結合システム。
【請求項8】
前記m個の周辺素子のうちの少なくとも2つが、動径方向において各異なる半径位置に位置する出力結合位置に設けられる、請求項1に記載のRF出力結合システム。
【請求項9】
前記第1周辺周波数が、前記中心周波数の10%以下だけ前記中心周波数と異なる、請求項1に記載のRF出力結合システム。
【請求項10】
前記第1周辺周波数が、前記中心周波数の5%以下だけ前記中心周波数と異なる、請求項1に記載のRF出力結合システム。
【請求項11】
前記中心RF出力信号、前記第1周辺RF出力信号、及び前記第2周辺RF出力信号のうちの少なくとも1つがそれぞれ、前記中心RF出力信号、前記第1周辺RF出力信号、及び前記第2周辺RF出力信号とは異なる他の周波数での出力を含む、請求項1に記載のRF出力結合システム。
【請求項12】
前記他の周波数はそれぞれ、前記中心RF出力信号、前記第1周辺RF出力信号、及び前記第2周辺RF出力信号の調和周波数である、請求項11に記載のRF出力結合システム。
【請求項13】
前記RF出力システムが、前記RF電極を用いた基板の処理中、前記中心RF出力信号、前記第1周辺RF出力信号、若しくは前記第2周辺RF出力信号の振幅及び/又は位相を時間の関数として変化させる、請求項1に記載のRF出力結合システム。
【請求項14】
前記RF電極が複数の区分を有する、請求項1に記載のRF出力結合システム。
【請求項15】
前記RF電極が非環状形状を有する、請求項1に記載のRF出力結合システム。
【請求項16】
前記RF電極の周囲に隣接して設けられるRFインダクタをさらに有する、請求項1に記載のRF出力結合システム。
【請求項17】
高周波(RF)出力結合システムの動作方法であって:
プラズマ処理システム内にRF電極を供する工程であって、前記RF電極は、RF出力を前記プラズマ処理システム内のプラズマへ結合する、工程;
前記RF電極上の複数の出力結合位置でRF出力を電気的に結合する複数の出力結合素子を供する工程であって、前記複数の出力結合素子は、前記RF電極の中心に位置する中心素子と、前記RF電極の中心から外れた位置に設けられるm(mは2以上の整数)個の周辺素子を有する、工程;
前記複数の出力結合素子と結合して、RF出力信号を前記複数の出力結合素子の各々へ結合するRF出力システムを供する工程;
中心周波数を含む中心RF出力信号を前記中心素子に結合する工程;
前記中心周波数とは異なる第1周辺周波数を含む第1周辺RF出力信号を前記m個の周辺素子の第1周辺素子に結合する工程;
前記第1周辺周波数と実質的に等しい第2周辺周波数を含む第2周辺RF出力信号を前記m個の周辺素子の第2周辺素子に結合する工程;並びに、
前記第1周辺RF出力信号と前記第2周辺RF出力信号との間での位相差及び/又は振幅差を変化させる工程;
を有する方法。
【請求項18】
前記RF出力信号が機械的又は電気的に回転する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記RF電極が負の直流によりバイアス印加される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記変化させる工程が、前記プラズマ処理システム内で基板を処理する間に時間の関数として実行される、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−105750(P2013−105750A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−252396(P2012−252396)
【出願日】平成24年11月16日(2012.11.16)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)