説明

複数ノズルを備えた吸入療法装置

圧縮ガスとともに動作する噴霧ノズルの効率を向上すべく、本発明は、吸入療法装置のための噴霧装置を開示する。噴霧装置は、圧縮ガス具体的には圧縮空気を供給する手段と(6,6a)、噴霧化対象流体具体的には治療液体を供給する手段(10)と、供給された圧縮ガスが出現するいくつかの圧縮ガス出口開口(2)と、出現した圧縮ガスに起因して噴霧化対象流体が出現するいくつかの流体出口開口(3)とを含む。噴霧装置は、少なくとも3つの圧縮ガス出口開口(2)が列をなして配置され、圧縮ガス出口開口(2)の1つは各場合において、少なくとも2つの流体出口開口(3)に割り当てられて、対応する圧縮ガス出口開口とともに噴霧ノズルを形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体、具体的には治療効果のある液体、を噴霧する吸入療法のためのネブライザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体または粉末成分を噴霧化する吸入療法装置のためのネブライザノズルが従来より長きにわたり知られている。当該装置においては、圧縮空気またはその他の圧力媒体がネブライザノズルに供給されることにより噴霧化が行われる。特許文献1には、かかるネブライザノズルが開示されている。開示のネブライザノズルは基本構造を示し、圧力媒体がノズルの中心に配置するためのノズル、その近傍に配置された吸引チャネルを有する。供給された圧縮空気が、圧力媒体チャネルの出口開口から出てくると、噴霧化対象の液体が吸引チャネルを通じて吸引されて圧縮空気出口エリアにて噴霧化される。この基本構造を有するネブライザノズルは時を経てさらに発展改良され、付加的要素が加えられている。ネブライザノズルを改良すべく、特許文献1は、圧力媒体用の出口開口に対向するガス流制御部をすでに開示している。これは、出口開口の方を向いたくさび形表面を有する。ネブライザノズル、またはネブライザノズルを含む吸入療法装置の効率を向上させる手段は、例えば特許文献2または特許文献3のようなその他の公報からも知られている。
【特許文献1】独国特許出願公告第1147355号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0170715(A)号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0261649(A)号明細書
【発明の開示】
【0003】
したがって、こうしたノズルの構造に関しては豊富な経験を利用することができる。さらに、例えば可搬式コンプレッサのような適切な圧縮ガス源が開発され、時を経て継続的に最適化されている。
【0004】
本発明はさらなる改良、具体的にはノズルネブライザの効率をさらに高めること、を目的とする。
【0005】
本目的は、請求項1の特徴を有するネブライザ装置によって達成される。有利な構成は下位の請求項に見出すことができる。
【0006】
本発明は、実施例によって図面を参照して、以下にさらに詳細に説明される。
【0007】
図1は、本発明に係るネブライザ装置1の概略的かつ簡易的な図を示す。ここでは、圧縮ガス出口開口2および対応する流体出口開口3の配置を具体的に示す。図1に不図示のさらなる詳細は、この後さらに与えられる残りの図面の記載から明らかである。
【0008】
図1に明らかなように、複数の(ただし少なくとも3つの)開口3が、本発明に係るネブライザ装置1に設けられる。これらの開口から、装置に供給された圧縮ガスが出現できる。これらの開口は列をなして配置される。このため、本発明に係るネブライザ装置1は、図1から明らかなように細長い基本形状を有する。圧縮ガス出口開口2のそれぞれに配置されるのは、少なくとも2つの開口3であり、噴霧化対象流体は開口3から出現できる。図1に示す例では、流体出口開口3は、圧縮ガス出口開口2と列をなして配置される。すなわち、図1に示す例では、圧縮ガス出口開口2および2つの流体出口開口3は直線をなして配置される。この列は、図1にも示されるように、圧縮ガス出口開口2の列と垂直に配置されるのが好ましい。
【0009】
供給された圧縮ガスが圧縮ガス出口開口2から出現すると、流体出口開口へ供給される流体は噴霧化され、出口開口2、3の前方の領域でエアロゾルを形成する。圧縮ガス出口開口2のそれぞれは、そこに配置された流体出口開口3とともに、準独立なネブライザノズルを形成する。本発明に係るネブライザ装置1の効率に関し驚くべきことに、その複数のネブライザノズル2、3は、単一の圧縮ガス出口開口の面積が本発明に係る複数の圧縮ガス出口開口2の総面積に相当するように構成された単一のネブライザノズルの効率よりも全体的に優れる。この点は、計算例によって以下で明らかにされる。
【0010】
既知のタイプの典型的なネブライザノズルでは、例えば圧縮ガス出口開口の直径は0.48mmなので、圧縮ガスのための出口面積は0.181mmとなる。圧縮ガス出口開口はさらに、円周が1.51mmである。本発明に係るネブライザ装置では、例えば個々の圧縮ガス出口開口は直径が0.2mmなので、出口面積は0.031mm、出口開口の円周は0.63mmとなる。ほぼ同じノズル面積を与えるべく、およそ5(または6)の直径0.2mmの個々のノズルが、本発明に係るネブライザ装置において列をなして配置される。個々のノズルの従来型ノズルの出口面積に対する面積比は、上述の例では、5.84:1(=0.181/0.031)となる。圧縮ガスの出口のための当該面積を保持することで、いくつかの利点が達成される。例えば、従来型の単一ノズルのネブライザの経験を利用することができる。これにより、既に利用可能な、実験的に確立された値を、構造上使用することができる。さらに、本発明に係るネブライザ装置は、従来より用いられている圧縮ガス源(具体的には入手可能なコンプレッサ)とともに使用することができる。本発明に係るネブライザ装置においては、圧縮ガスの出口に対してほぼ同じ圧縮ガス出口面積を利用できるので、コンプレッサに適合させる必要がない。
【0011】
本発明に係るネブライザ装置1の圧縮ガス出口開口2がほぼ等しい面積であるにもかかわらず、本発明に係るノズル配置の構成により、噴霧化効率が向上する。本発明によれば、これは、流体/圧縮ガス接触領域を拡大することによって、不変の有効ノズル面積において達成できる。この接触領域は、より小さな直径のノズルの数を増やした結果としての、ノズル噴射と噴霧化対象液体との間にある出口開口2の円周によって実質的に決定される。有効ノズル面積が同じままで接触領域が明らかに増えれば、単一ノズルのシステムと比べた場合のエネルギー消費が不変であっても、増えた接触領域により効率が向上する。すなわち、より多くの液体が噴霧化される。
【0012】
既に上述したように、圧縮ガス出口開口2の総面積を従来型ノズルと等しくすることで、入手可能なコンプレッサシステムを変更なしで、本願発明に係るネブライザ装置1とともに使用することもできる。しかし、向上した効率ゆえに、従来型システムと同じ効率を達成しながらも、より小さな全ノズル面積のネブライザ装置を実現することもできる。これは、それに応じたより小さなコンプレッサとともに動作することができる。この場合、より小さなコンプレッサはサイズも小さくなるので、実質的にコンプレッサとネブライザとからなる治療システムの可搬性がさらに向上する。
【0013】
図2は、噴霧化対象流体を貯蔵するための流体容器4の中にある本発明に係るネブライザ装置1を示す。図2の断面図に明らかなように、ここに示される本発明に係るネブライザ装置1は、内本体5を有する。内本体5の中には圧縮ガスチャネルが形成される。圧縮ガスチャネル6は、装置の接続片8に取り付けられた圧縮ガスホース7を介して供給される圧縮ガスを分散させるべく使用される。本発明に係るネブライザ装置1の内本体5内の圧縮ガスチャネル6は、圧縮ガス出口開口2に向かって開口している。図2には、断面図ゆえに、圧縮ガス出口開口2の1つのみが示されている。図2に示されるように、本発明に係るネブライザ装置1の内本体5は、図示の実施例では流体容器4および接続片8と一体的に形成される。
【0014】
例えばスリーブまたはフードのような外本体9が、本発明に係るネブライザ装置1の内本体5に配置される。図2に明らかなように、外本体9および内本体5は、円錐形に構成された表面において互いに接触し、外本体9は内本体5に支持される。図2の断面図に示される流体チャネル10は、断面平面内にある。容器に貯蔵された流体は、流体チャネル10を通して流体出口開口3へ供給される。この目的のために、流体チャネル10はそれぞれが流体出口開口3から容器4の貯蔵エリア11内へ延びている。この構成ゆえに、本発明に係るネブライザ装置1は、ベンチュリの原理に従って作用する。圧縮ガス出口開口から出現する圧縮ガスは流体チャネルを通して容器に貯蔵された液体を吸引する。これにより、液体は流体出口開口にて出て、出現する圧縮ガスによって噴霧化される。
【0015】
接続片の延長を形成する圧縮ガスチャネル6に加え、それを横断して本発明に係るネブライザ装置1の長手方向に延びる圧縮ガスチャネル6aも図2から明らかである。これは、本発明に係るノズル開口2の配置に対応する。この圧縮ガスチャネル6aは、圧縮ガス出口開口2に通じて図2に示される圧縮ガスチャネル断面に対応するその他の圧縮ガスチャネルとともに、圧縮ガスを本発明に係る複数のネブライザノズルに供給する。
【0016】
図3Aは、本発明に係るネブライザ装置を簡略的な上面図で示す。ここでは、4つの流体出口開口3が、圧縮ガス出口開口2のそれぞれに対して配置される。本発明のこの実施例では、当該配置は、圧縮ガス出口開口2の列の方向に対して対角線で横切る。圧縮ガス出口開口2はそれぞれ、4つの対応する流体出口開口3とともに、この配置においても独立なノズルを形成する。流体出口開口3の数はさらに多くてよい。
【0017】
図3Bは、本発明に係るネブライザ装置1の構成を簡略的な上面図で示す。ここでは、流体出口開口3は細長いスロットの形状で実現される。圧縮ガス出口開口2の2つの側面のそれぞれに1つのスロットが配置される。スロットの長手軸は、図示の実施例において、圧縮ガス出口開口2が配置される直線に対して平行に延びる。スロットの長さは、かなりの程度まで自由に選択できるが、より長いスロットの場合は、本発明に係る個々のノズルが例えベンチュリの原理に従って流体を有効に噴霧化して動作するべくスロットの幅を狭くする必要がある。
【0018】
図4は、ノズル開口の簡単な概略図を示し、圧縮ガス出口開口2の測定値の選択を説明するためのものである。以下の表は、位置aからeまでのそれぞれにおける圧縮ガス出口開口の直径に値を与える。距離AからDに対する値は、2、3ミリメートルから数ミリメートルまでの程度である。正確な値は、個々の場合ごとに、とりわけ流体出口開口の数および直径に応じて、決定される。
【表1】

【0019】
表1から明らかなように、本発明の有利な実施例によれば、ノズル直径サイズは、ノズルが同じ直径とならない場合、圧縮ガス出口開口2の列の中心に向かって増加する。
【表2】

【0020】
表2から明らかなように、本発明のさらに有利な実施例によれば、圧縮ガス出口開口2の列のノズル直径サイズは、流体の所望の噴霧化に関して、または本発明に係るネブライザ装置が使用される吸入療法装置の寸法に関して、かなりの程度自由に構成できる。
【0021】
表の値は単なる例示として与えられる。値は、個々の場合ごとに、例えば実験によって決定する必要がある。これにより、噴霧化対象流体の特性を考慮することもできる。
【0022】
図2に示されるように、本発明に係るネブライザ装置は、ノズル開口2に対向して配置されたガス流制御部12を有する。ノズル開口の直線配置ゆえに細長いネブライザ装置の基本形状を考慮すると、ガス流制御部12もまた、図5Aに示されるように細長い形状で構成される。ノズル開口に面する側面では、ガス流制御部12は平坦表面、くさび形表面12a(図5A参照)、丸まった表面、またはその他の適切な形状に構成された表面を有するのが有利である。しかし、本発明に係るネブライザ装置1の個々のノズルに対してそれぞれ配置されるバッフルロッド13を設けてもよい(図5B参照)。これは、圧縮ガス出口開口2に対向して配置される。開口に面する側面では、バッフルロッドは、尖った表面13a(図5B参照)または丸まった表面を有するのが有利である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るネブライザ装置の実施例を概略図として簡易的に示す。
【図2】本発明に係るネブライザ装置の実施例の断面図を流体容器に関して示す。
【図3A】流体出口開口の異なる構成の簡略図を示す。
【図3B】流体出口開口の異なる構成の簡略図を示す。
【図4】寸法と配置を説明するためのノズル位置表現を示す。
【図5A】ガス流制御部またはバッフルロッドの構成を示す。
【図5B】ガス流制御部またはバッフルロッドの構成を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮ガス、具体的には圧縮空気、を供給する手段(6、6a)と、
噴霧化対象流体、具体的には治療効果のある液体、を供給する手段(10)と、
供給された圧縮ガスが出現する複数の圧縮ガス出口開口(2)と、
前記出現した圧縮ガスによって噴霧化対象流体が出現する複数の流体出口開口(3)と
を含む吸入療法装置のためのネブライザ装置であって、
少なくとも3つの圧縮ガス出口開口(2)は列をなして配置され、
少なくとも2つの流体出口開口(3)は、前記圧縮ガス出口開口(2)のそれぞれに対して配置されて、前記対応する圧縮ガス出口開口とともにネブライザノズルを形成するネブライザ装置。
【請求項2】
前記複数の圧縮ガス出口開口(2)は同じ直径を有する、請求項1に記載のネブライザ装置。
【請求項3】
前記複数の圧縮ガス出口開口(2)の少なくとも一部は異なる直径を有する、請求項1に記載のネブライザ装置。
【請求項4】
前記複数の圧縮ガス出口開口(2)は、複数の圧縮ガス出口開口の列の中心へ向かうに従ってより大きな直径を有する、請求項3に記載のネブライザ装置。
【請求項5】
前記複数の圧縮ガス出口開口(2)は、複数の圧縮ガス出口開口の列の端においてより大きな直径を有する、請求項3に記載のネブライザ装置。
【請求項6】
複数の圧縮ガス出口開口の列の、記複数の圧縮ガス出口開口の直径は、前記列の中心に対して対称に配置される、請求項3から5のいずれか一項に記載のネブライザ装置。
【請求項7】
ガス流制御部(12)が前記複数の圧縮ガス出口開口(2)に対向して設けられる、請求項1から6のいずれか一項に記載のネブライザ装置。
【請求項8】
前記ガス流制御部(12)は、前記複数の圧縮ガス出口開口に面する、くさび形のまたは丸まった表面を有する、請求項6に記載のネブライザ装置。
【請求項9】
前記圧縮ガス出口開口(2)に対向して配置されるバッフルロッド(13)が、前記圧縮ガス出口開口(2)のそれぞれに対して設けられる、請求項1から6のいずれか一項に記載のネブライザ装置。
【請求項10】
前記バッフルロッド(13)は、前記圧縮ガス出口開口に面する、尖ったまたは丸まった表面(13a)を有する、請求項9に記載のネブライザ装置。
【請求項11】
前記複数の流体出口開口(3)は円形である、請求項1から10のいずれか一項に記載のネブライザ装置。
【請求項12】
前記複数の流体出口開口(3)は複数のスロットである、請求項1から11のいずれか一項に記載のネブライザ装置。
【請求項13】
前記複数のスロット(3)は、複数の圧縮ガス出口開口(2)の列に対して平行に延びる、請求項12に記載のネブライザ装置。
【請求項14】
前記複数の流体出口開口まで延びる流体チャネル(10)が設けられる、請求項1から13のいずれか一項に記載のネブライザ装置。
【請求項15】
前記複数の圧縮ガス出口開口(2)は、0.4mmよりも小さな直径を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載のネブライザ装置。
【請求項16】
前記複数の圧縮ガス出口開口(2)は、0.1mmから0.4mmまでの直径を有する、請求項15に記載のネブライザ装置。
【請求項17】
前記複数の圧縮ガス出口開口(2)は、0.1mmから0.3mmの直径を有する、請求項16に記載のネブライザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2009−533108(P2009−533108A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504586(P2009−504586)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際出願番号】PCT/EP2007/002030
【国際公開番号】WO2007/118557
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(505475046)パリ ゲーエムベーハー シュペツィアリステン フューア エフェクティブ インハレツィオーン (7)
【氏名又は名称原語表記】PARI GMBH SPEZIALISTEN FUR EFFEKTIVE INHALATION