説明

複数個の梃子枕を伴う軸沿い長孔を有するホールカッタ

略円筒状の鋸身と、その鋸身に設けられた切削エッジと、その鋸身の側壁に貫通形成された1個又は複数個の軸沿い長孔と、を有するホールカッタを提案する。軸沿い長孔は、そこから鋸身内に梃子を差し込める構成である。各軸沿い長孔には、切削エッジから離隔した軸沿い位置を占める第1梃子枕や、第1梃子枕に比べ切削エッジから更に離隔した軸沿い位置を占める第2梃子枕を設け、可能なら第1及び第2梃子枕に挟まれた軸沿い位置を占める第3梃子枕も設ける。梃子例えばスクリュードライバを軸沿い長孔内に差し込み、個別の梃子枕を支点にして動かすと、その梃子の働きでスラグが鋸身内から排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2010年1月13日付米国特許出願第12/687065号及び2011年1月13日付米国特許出願第13/006080号に基づく優先権主張を伴っている。両特許出願は係属中であり、その全内容をこの参照を以て本願に繰り入れることにする。
【0002】
本発明はホールカッタ、特にその側壁に設けられた梃子枕付の孔にスクリュードライバ等のツールを差し込み、それを梃子にして内部のワークピーススラグを取り除くことが可能なホールカッタに関する。
【背景技術】
【0003】
ホールカッタ例えばホールソーは、木材、金属、石壁等の素材に丸い孔をあけるのに使用されるカッタの一種である。一般的なホールカッタでは、略円筒状で側壁となる鋸身の一端に鋸歯付で円形の切削エッジが、そのカッタの回転でワークピースが切削されるように設けられる一方、その切削エッジから見て鋸身の逆側の端にはキャップが配される。このキャップには、通常、そのホールカッタをドリルに連結して駆動するのに役立つ機構、例えば心棒と連結するためのネジ山や孔が設けられる。切削エッジが円形であるので、使用時には、ワークピースに円形の孔があく一方、そのワークピースから円形のスラグが発生する。このワークピーススラグは、通常、ワークピースへの孔あけ後にホールカッタ内中空部に留まるので、次回孔あけ以前にホールカッタ内から取り除く必要がある。
【0004】
ホールカッタ内のスラグを除去する手段としては、従来から、梃子例えばスクリュードライバを差し込める孔例えばスロットをカッタの側壁に設ける、という手段が採られている。これを利用すればユーザの手作業でスラグを除去できるものの、時間がかかるしユーザに課される負担も甚だしくなる。しかも、ホールカッタ内に引っかかっているスラグや、スラグ除去用の孔乃至スロットからずれた位置にあるスラグは、カッタの鋸身内から除去するのが難しい。例えば、歪やひびが生じていてホールカッタ内にきつく引っかかっているスラグである。また、粘着性又は接着性の残留物を残すタイプのワークピース例えば木材の切削で生じるスラグも除去しにくい。更に、ワークピース厚の違いによるスラグ厚及びホールカッタ内スラグ位置の違い、即ち厚手のワークピースから生じるスラグが厚手でカッタの鋸身内に深く入り込むのに対して薄手のワークピースから生じるスラグが薄手で切削エッジ付近に留まるといった違いもあるので、ツールで働きかけてもスラグがカッタ内から“ひょい”と出てくるとは限らない。スラグ自体、ホールカッタ内で短距離摺動、捻転、傾斜等、緩慢乃至漸進的な動きを呈するものである。そして、従来からホールカッタの側壁に設けられてきた孔は比較的短尺のスロットであるので、それらを使用し除去できるのは薄手スラグ及び厚手スラグのうち一方だけである。即ち、双方を除去することはできず、中間厚スラグの除去も恐らくは不可能である。また、従来型ホールカッタとしては、軸方向及び角度方向に沿い相互間隔をとりつつ比較的短尺な孔を複数個設けたものも知られている。この構成では、スクリュードライバ等を梃子にしてホールカッタ外にスラグを排出させるに当たり、その梃子の差込先を孔から孔へと変えねばならない。更に、スラグ厚やホールカッタ内スラグ位置によっては、そのスラグを好適に動かすことができず、スラグ除去作業の困難性や所要時間が増すこととなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここに、本発明の目的のうち一つは、従来技術における上掲の諸問題、諸難点のうち少なくとも1個を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1実施形態に係るホールカッタは、略円筒状の鋸身と、その鋸身に設けられた切削エッジと、鋸身内のワークピーススラグを除去可能な梃子例えばスクリュードライバをそこから鋸身内に差し込めるよう鋸身に貫通形成された1個又は複数個の軸沿い長孔と、軸沿い長孔内に面するよう鋸身に設けられワークピーススラグを鋸身内から梃子で除去する際にその梃子と連携する複数個の梃子枕と、を有し、当該複数個の梃子枕が、切削エッジから離隔した軸沿い位置を占める第1梃子枕と、第1梃子枕に比べ切削エッジから更に離隔した軸沿い位置を占める第2梃子枕と、を含むものである。好ましくは、第1及び第2梃子枕に挟まれた軸沿い位置を占めるように第3梃子枕を設ける。
【0007】
本実施形態を採る大径ホールカッタでは、互いに異なる角度位置を占めるよう複数個の軸沿い長孔を設けることができる。逆に、本実施形態を採る小径ホールカッタでは、軸沿い長孔の個数を1個にするのが望ましい。小径ホールカッタとは例えばその直径が約1+7/16インチ以下のもの、大径ホールカッタとは例えばその直径が約1+1/2インチ以上のもののことである(1インチ=約2.5×10-2m)。その直径が約1+7/16インチ以下のホールカッタであれば、ホールカッタの軸に対し略平行な向きで1個又は複数個の軸沿い長孔を設けるのが望ましい。その直径が約1+1/2インチ以上のホールカッタであれば、ホールカッタの軸に対し鋭角をなす向きで複数個の軸沿い長孔を設けるのが望ましい。
【0008】
本実施形態では、軸沿い長孔の一端又はその近傍に第1梃子枕、他端又はその近傍に第2梃子枕を設けるのが望ましい。第3梃子枕は、第1及び第2梃子枕のほぼ中間に当たる位置に設けるのが望ましい。
【0009】
本実施形態では、第2梃子枕が第1梃子枕と異なる角度位置及び軸沿い位置を占め、第3梃子枕がそれら第1及び第2梃子枕で挟まれた角度位置及び軸沿い位置を占めるようにするのが望ましい。軸沿い長孔は、切削エッジから離隔した軸沿い位置に第1端、第1端に比べ切削エッジから更に離隔した軸沿い位置に第2端を有し、第2端の角度位置が、切削エッジによる切削の方向即ちホールカッタの回転方向に沿い第1端より後方を占める構成にするのが望ましい。その軸沿い長孔は、鋸身の軸に対し鋭角をなす方向に沿い延びるスロットとするのが望ましい。その鋭角は約30°以上、できれば約35〜60°の範囲内とするのが望ましい。
【0010】
本実施形態では、切削エッジから第1梃子枕までの軸沿い距離たる第1距離、第2梃子枕までの軸沿い距離たる第2距離、並びに第3梃子枕までの軸沿い距離たる第3距離を、順に、約1/2〜1インチの範囲内、約1+1/2〜2インチの範囲内の値、約1〜1+1/2インチの範囲内にすると共に、第2梃子枕が第1梃子枕と異なる角度位置を占め、第3梃子枕がそれら第1及び第2梃子枕で挟まれた角度位置を占めるようにするのが望ましい。第1梃子枕に係る第1距離、第3梃子枕に係る第3距離、並びに第2梃子枕に係る第2距離は、順に、その厚みが約1/2インチ以下、約1インチ以下、約1+1/2インチ以下の厚みを有するワークピーススラグを梃子で除去できるよう設定するのが望ましい。
【0011】
本実施形態では、その切削エッジから軸沿い長孔の第1端までの軸沿い距離を約15/100〜3/8インチの範囲内にするのが望ましい。切削エッジは、刃溝を挟み並ぶ一群の刃先で形成された複数個の鋸歯を有する構成にするのが望ましく、切削エッジから第1端までの軸沿い距離を測る際の基準は、(i)その切削エッジに備わる刃溝のうち最も深いもの、又は(ii)その切削エッジに備わる鋸歯のうち目立てされていないものの刃先で形成される平面、にするのが望ましい。
【0012】
本実施形態では、各梃子枕の表面が切削エッジに対し略平行な構成にするのが望ましい。その梃子枕の表面は直線的、湾曲付又はその組合せにするのが望ましい。更に、各梃子枕を、対応する軸沿い長孔の縁のうち非作用端寄りの縁上、即ち切削エッジから見て鋸身の逆側にある端寄りの縁上に設けるのが望ましい。例えば、各梃子枕を、対応する軸沿い長孔の縁のうち非作用端寄りの縁上に形成された窪みを伴う構成にするのが望ましい。
【0013】
本発明の第2実施形態に係るホールカッタは、略円筒状の鋸身と、その鋸身に設けられた切削エッジと、ワークピーススラグを鋸身内から除去可能な梃子をそこから鋸身内に差し込めるよう鋸身に貫通形成された1個又は複数個の軸沿い長孔と、第1厚み範囲内の厚みを有するワークピーススラグを鋸身内から梃子で除去する際にその梃子と連携するよう軸沿い長孔内に面し鋸身に設けられた第1構成部分と、第2厚み範囲内の厚みを有するワークピーススラグを鋸身内から梃子で除去する際にその梃子と連携するよう軸沿い長孔内に面し鋸身に設けられた第2構成部分と、を有し、第1構成部分に比べ第2構成部分の方が切削エッジからの軸沿い距離が大きく、第2厚み範囲が第1厚み範囲より厚手寄りのものである。できれば、第1及び第2厚み範囲に挟まれた第3厚み範囲内の厚みを有するワークピーススラグを鋸身内から梃子で除去する際にその梃子と連携するよう、第1及び第2構成部分に挟まれた軸沿い位置に第3構成部分を設けるのが望ましい。
【0014】
本実施形態では、第1、第2及び第3構成部分それぞれを梃子枕にするのが望ましい。第2構成部分は第1構成部分と異なる角度位置を占めるように設け、第3構成部分はそれら第1及び第2構成部分で挟まれた角度位置を占めるように設けるのが望ましい。例えば第3構成部分を第1及び第2構成部分のほぼ中間に当たる軸沿い位置及び角度位置に設けるのが望ましい。また、その軸沿い長孔を、軸沿いに延びるスロットにすることが望ましい。
【0015】
本実施形態では、その軸沿い長孔が、切削エッジから離隔した軸沿い位置に第1端、第1端に比べ切削エッジから更に離隔した軸沿い位置に第2端を有し、第2端の角度位置が、切削エッジによる切削の方向即ちホールカッタの回転方向に沿い第1端より後方の構成にするのが望ましい。例えば、切削エッジから第1構成部分までの軸沿い距離たる第1距離、第2構成部分までの軸沿い距離たる第2距離、並びに第3構成部分までの軸沿い距離たる第3距離を、順に、約1/2〜1インチの範囲内、約1+1/2〜2インチの範囲内、約1〜1+1/2インチの範囲内とし、第2構成部分が第1構成部分と異なる角度位置、第3構成部分がそれら第1及び第2構成部分で挟まれた角度位置を占めるようにするのが望ましい。第1、第3及び第2構成部分は、順に、その厚みが約1/2インチ以下、約1インチ以下、約2インチ以下の厚みを有するワークピーススラグを梃子で除去できる構成にするとよい。第1、第2及び第3構成部分それぞれの一部又は全体が切削エッジに対し略平行な構成にするのが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のホールカッタによれば、ワークピーススラグをホールカッタ内からより迅速且つ容易に除去可能な実用的手段を提供することができる。本発明のホールカッタによれば、更に、互いに別の軸沿い位置、或いは互いに別の軸沿い位置及び角度位置に梃子枕複数個があるため、様々な厚みのスラグに対し梃子枕の位置が揃いやすくなる。そして、本発明のホールカッタによれば、同じ軸沿い長孔の内縁上に梃子枕複数個があるため、その軸沿い長孔から梃子例えばスクリュードライバを引き抜くことなく、ユーザがそれら梃子枕を使用しスラグをカッタ外に排出させることができる。
【0017】
本発明やその好適な実施形態に係るホールカッタには、これら以外にも様々な目的及び効果がある。そうした目的及び効果をより速やかにご理解頂けるよう、以下、別紙図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態に関し説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るホールカッタで使用される鋸身の円筒化前側面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係るホールカッタの斜視図である。
【図3】図2に示したホールカッタで使用される鋸身の円筒化前側面図である。
【図4】本発明の更に他の実施形態に係る小径ホールカッタで使用される鋸身の円筒化前側面図である。
【図5】本発明の更に他の実施形態に係る小径ホールカッタで使用される鋸身の円筒化前側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に、本発明の一実施形態に係るホールカッタで使用される鋸身10を示す。本願でいう「ホールカッタ」は木材製や金属製のワークピースに孔をあける道具、例えばホールソー(冠鋸)のことである。図1に示したのはその鋸身10の平面形状である。本件技術分野で習熟を積まれた方々(いわゆる当業者)であれば本願による開示から容易に理解できる通り、これを丸める等して略円筒状にしたものが、ホールカッタの製造に使用される。その鋸身10やそれにより形成される側壁12はホールカッタ回転軸Xを芯とする略円筒状となる。その鋸身10の一端には、回転軸Xに対し略直交する方向に沿い切削エッジ14が設けられており、その逆側の端にはリム16が設けられている。そのリム16には、図示しないが、ホールカッタの対応する端を閉止すべくキャップが固着されることとなる。その端、即ちエッジ14から見てホールカッタの逆側にあり、リム16を備えると共にその上にキャップが装着される端のことを、本願ではホールカッタの「非作用端」と呼んでいる。いわゆる当業者には理解できる通り、そのキャップには、そのホールカッタを心棒に連結して電動ドリル等の動力ツールで駆動することができるよう、ネジ孔付ハブ及びピン孔が設けられる。他方、エッジ14上には、図示の如く刃溝を挟み刃先が並ぶように複数個の鋸歯が設けられている。いわゆる当業者であれば本願による教示から容易に理解できる通り、こうしたエッジ14に代え、既知の又は今後開発される他形態の鋸歯乃至切削エッジを設けてもよい。同様に、金属シートを丸める等して円筒状にした鋸身10に熔接等の手段でキャップを装着する手法に代え、既知の又は今後開発される他手法でホールカッタを製造してもよい。例えば、回転、絞り、成形等の手法でエンドキャップを側壁12に一体化させてもかまわない。
【0020】
本実施形態では、鋸身10の側壁12に2個の軸沿い長孔乃至スロット18が貫通形成されている。図示の通り、円筒状の鋸身10におけるスロット18の角度位置は互いに異なっている。本実施形態では、それらスロット18間の角度間隔がどちら周りでも等しく、約180°の間隔とされている。また、スロット18の軸沿い寸D5=D2−D4は、約1+1/8〜1+4/5インチの範囲内にするのが望ましいところ、ここでは約1+1/3インチとされている。スロット18の周沿い寸Lは、約2/5〜1+4/5インチの範囲内にするのが望ましいところ、本実施形態では約1+1/5インチとされている。後に詳示する通り、どのスロット18も、鋸身10内からワークピーススラグを取り除くためのレバー、例えばスクリュードライバを挿入できるように構成されている。
【0021】
ホールカッタの側壁12を貫通する軸沿い長孔乃至スロット18の形成個数は、そのカッタのサイズによって変わってくる。一般論としては、その直径が大きいホールカッタの方が、円筒状の鋸身10に形成可能なスロット18の個数が多くなる。例えば、ホールカッタの直径が約9/16〜13/16インチと小さめならそのカッタの軸Xに対し略平行な向きでスロットを1個設けるのが望ましく、約7/8〜約1+7/16インチと大きめなら軸Xに対し略平行な向きでスロットを2個設けるのが望ましく、約1+1/2〜3+3/8インチと更に大きめなら軸Xに対し鋭角をなす向きで大開口のスロットを2個設けるのが望ましく、そして約3+1/2〜6インチと更に大きめなら軸Xに対し鋭角をなす向きで大開口のスロットを4個設けるのが望ましい。また、本実施形態では、そのホールカッタの軸X周りで略等間隔をなすよう2個の軸沿い長孔乃至スロット18が約180°の角度間隔で形成されている。いわゆる当業者であれば本願による教示から容易に理解できる通り、本発明を実施するに当たっては、スロットが3個なら約120°、4個なら約90°といった具合に、複数個のスロットを略均一な角度間隔で形成するのが望ましい。無論、いわゆる当業者であれば本願による教示から容易に理解できる通り、スロット間隔が均一でない形態や、同一ホールカッタ上の孔乃至スロットが同じ形状やサイズでない形態でも、本発明を実施することができる。
【0022】
本実施形態では、図示の通り各軸沿い長孔乃至スロット18に3個の梃子枕20A〜20Cが均一な軸沿い間隔及び角度間隔で設けられている。但し、いわゆる当業者であれば本願による教示から容易に理解できる通り、スロットに備わる梃子枕の個数が3個未満の形態や4個以上の形態でも本発明を実施することができる。梃子枕20A〜20Cは鋸身10の側壁12に設けられた丸み付陥入端面であり、対応するスロット18の縁のうち、ホールカッタの非作用端に面する方乃至近い方の縁上に位置している。図示の通り、梃子枕20A〜20Cが延びる向きは、ホールカッタ回転軸Xに対し略直交、即ち切削エッジ14に対し略平行である。従って、ありふれたツール例えばスクリュードライバをスロット18内に差し込み、個別の梃子枕20A〜20C内に滑り込ませて止め、その梃子枕20A〜20Cを支点に梃子として使用することで、鋸身10内のワークピーススラグを引き寄せることや押し出すことができる。また、各梃子枕20A〜20Cの幅W1は、ありふれたツール乃至器具、例えば2号スクリュードライバをはじめとする一般的なスクリュードライバの長尺シャフトを支えうるよう設定されている。即ち、2号スクリュードライバを支えるのに必要な幅乃至クリアランスが約0.27インチであることから、各梃子枕20A〜20Cは約1/4インチ以上、具体的には約1/4〜1/3インチの範囲に属する幅W1に亘り窪ませてある。図示の通り、各梃子枕20A〜20Cの窪み面はエッジ14に対し略平行であり、スロット18の縁のうちエッジ14から遠い方の縁上に位置している。加えて、各梃子枕20A〜20Cの窪み面は、梃子枕20A〜20Cの各端に側縁乃至リップ21が生じ、梃子となるツールがそのリップ21の働きで梃子枕20A〜20C内に保持されるよう、対応するスロット18の対応する縁上に設けられている。そのリップ21の向きは、ここではエッジ14に対し略直交、即ちホールカッタの回転軸Xに対し略平行である。各梃子枕20A〜20Cがこうした構成、向き及び位置であることは、梃子枕20A〜20Cにツールを接触させ、梃子枕20A〜20Cを支点にそのツールを梃子として用い鋸身10内のワークピーススラグを引き寄せる等して外に出す上で、都合がよいことである。即ち、梃子枕20A〜20Cの表面又はその一部がエッジ14に対し略平行で、エッジ14から見てスロット18を挟み逆側の縁上にあるため、梃子となるツールでエッジ14とは逆の側からスラグに働きかけ、そのスラグを鋸身10内から排出させることができる。
【0023】
本実施形態では、各スロット18の梃子枕20A〜20Cとその向かいにある側縁23との間の最小幅W2が、ありふれたツール例えば2号スクリュードライバを、梃子枕20A〜20Cのうち1個から他の1個へと軸沿いに摺動させうるように設定されている。この最小幅W2は、約1/4インチ以上、例えば約1/4〜1/3インチの範囲内とするのが望ましいところ、ここでは約0.27インチとされている。また、本実施形態で各スロット18の側縁23にほとんど凹凸がなく直線的であることは、そのスロット18内にツールを差し込み、差し込んだツールを摺動させ、その摺動で(例えば梃子枕20A〜20Cのうちいずれかから他へと)スロット18越しにチップ乃至ダストを排出させスラグを徐々に取り出す上で都合がよいことである。いわゆる当業者であれば本願による開示から容易に理解できる通り、ここで述べた構成、向き、位置及び寸法は一例であり、梃子枕や軸沿い長孔乃至スロットの構成、向き、位置及び寸法は既知の又は今後認識される他の構成、向き、位置及び寸法にすることもできる。
【0024】
本実施形態では、第1梃子枕20Aが切削エッジ14から離隔した軸沿い位置を占め、第2梃子枕20Cが第1梃子枕20Aに比べエッジ14から更に離隔した軸沿い位置、即ちホールカッタの非作用端乃至リム16に近接した軸沿い位置を占め、第3梃子枕20Bが梃子枕20A・20C間に挟まれた軸沿い位置を占めている。具体的には、第1梃子枕20Aが軸沿い長孔乃至スロット18の一端乃至その近傍、第2梃子枕20Cが第1梃子枕20Aから見てスロット18の逆側の端乃至その近傍、第3梃子枕20Bが梃子枕20A及び20Cのほぼ中間に位置している。
【0025】
本実施形態では、切削エッジ14から第1梃子枕20Aまでの軸沿い距離たる第1距離D1、第2梃子枕20Cまでの軸沿い距離たる第2距離D2、並びに第3梃子枕20Bまでの軸沿い距離たる第3距離D3が、順に、約1/2〜1インチの範囲内、約1+1/2〜2インチの範囲内、約1〜1+1/2インチの範囲内となっている。第2梃子枕20Cは第1梃子枕20Aと異なる角度位置、第3梃子枕20Bは梃子枕20A及び20Cに挟まれた角度位置を占めている。第1距離D1、第3距離D3及び第2距離D2がこうした値であるので、第1梃子枕20A、第3梃子枕20B及び第2梃子枕20Cを用い、順に、その厚みが約1/2インチ以下のワークピーススラグ、約1インチ以下のスラグ(例.3/4インチ厚合板のスラグ)、約1+1/2インチ以下のスラグ(例.2×4ワークピースのスラグ)を梃子の作用で除去することができる。距離D1〜D3を測る際の基準面としては、エッジ14で規定される平面、具体的には目立てされていない鋸歯の刃先間で形成される面が使用されている。無論、いわゆる当業者であれば本願による開示から容易に理解できる通り、エッジ14からホールカッタの諸部位までの距離例えば梃子枕20A〜20Cまでの距離を、既知の又は今後認識されるそれ以外の線乃至事物、例えば切削エッジの鋸歯に備わる刃溝のうち最も深いものの基部を基準にして測ることもできる。
【0026】
本実施形態のホールカッタを使用し、厚手のスラグ(例.2×4ワークピースのスラグ)即ち鋸身10内に深く入り込んだスラグを取り除く際には、ユーザは、軸沿い長孔乃至スロット18のうち1個にツールを差し込み、スラグのキャップ(図示せず)側即ち鋸身10内奥側の側面にそのツールの先端を接触させ、切削エッジ14から最も遠くの軸沿い位置を占める第2梃子枕20Cを選んでそこにそのツールの先端をあてがい、そして第2梃子枕20Cを支点、ツールを梃子として用いそのツールの根元に力を加えることで、スラグをエッジ14側更には鋸身10外に追いやればよい。第2梃子枕20Cを支点とする梃子でスラグを取り除けなかった場合、ユーザは、同じスロット18内でエッジ14により近い中間的な軸沿い位置を占める第3梃子枕20Bに支点を移した上で、そのツールを梃子として用い、スラグを更にエッジ14寄り即ちカッタ外寄りに追いやればよい。同様に、中間位置の第3梃子枕20Bを支点とする梃子でもなおスラグを取り除けなかった場合、ユーザは、そのスロット18内に留めたまま同じ要領でツールを移動させ、エッジ14寄りにある第1梃子枕20Aを支点として用いることで、スラグを更にエッジ14寄り即ちカッタ外寄りに追いやればよい。図示の通り、どのスロット18にも複数個の梃子枕20A〜20Cが備わっているので、差し込んだ先のスロット18内にツールを留めたまま、スラグに対し、鋸身10外に徐々に追いやる等の作用を及ぼすことができる。
【0027】
本実施形態では、梃子枕20A〜20Cの軸沿い位置及び角度位置が互いに異なっており、切削エッジ14寄りの第1梃子枕20Aが軸沿い長孔乃至スロット18の第1端22即ちエッジ14に最も近い端、第2梃子枕20Cがスロット18の第2端24即ち逆側の端、そして第3梃子枕20Bが梃子枕20A・20C間に位置している。ホールカッタ直径が十分に大きいことから、図示の如く、その軸Xに対し鋭角Aをなす向きで2個のスロット18が設けられている。即ち、図中の各スロット18がホールカッタ軸Xに対し鋭角Aをなしている。この鋭角Aは約30°以上、例えば約35〜60°の範囲内にするのが望ましいところ、本実施形態では約60°とされている。図示の通り、各スロット18の傾きは、ホールカッタによる切削が進むに従いエッジ14から退く傾向の傾きである。ホールカッタのエッジ14から各スロット18の第1端22までの軸沿い距離即ち第4距離D4は、約15/100〜3/8インチの範囲内となっている。こうした構成では、第1に、各スロット18の第1端(インレット端)22がエッジ14寄りにあるため、エッジ14で生じたチップ乃至ダストがそこからスロット18内に入りやすくなると同時に、鋸身10内からチップやダストを容易に退け排出させやすくなる。第2に、スロット18が上掲の如く斜行しているため、切削動作に伴うホールカッタの回転につれチップがスロット18内を伝い流れることから、エッジ14や鋸身10内からチップを引き離すことができる。第3に、この鋸身10では、各スロット18のインレット端22とエッジ14との狭間に堅固又は略堅固な管状部分26が生じる形態をスロット18のうちエッジ14寄りの部分がとっているため、鋸身10の強度が高くホールカッタ製造中の加熱でも歪まないことに加え、切削動作中に加わる力に耐えうる強固なホールカッタを得ることができる。それでいて、第4距離D4が上述の如く約15/100〜3/8インチの範囲内であることからわかる通り、鋸身10の管状部分26がかなり狭いので、エッジ14で生じたチップやダストをスロット18経由で鋸身10内から逃がすことができる。
【0028】
図2及び図3に、本発明の他の実施形態に係るホールカッタ100を示す。このカッタ100に備わる略円筒状の鋸身110は図1を参照して説明した鋸身10と略同一の構成であるので、その構成部分を参照する符号としては、類似構成部分のそれに「1」を冠したものが使用されている。この鋸身110が上掲の鋸身10と大きく異なる点は、その梃子枕120A〜120Cの形状である。図示の通り、それら梃子枕120A〜120Cは、軸沿い長孔乃至スロット118に、直線的部分を伴う陥入端面としてではなく、切削エッジ114に対し略平行な方向に沿い角度的に拡がる湾曲付部分乃至円弧状部分を伴った陥入端面として設けられている。梃子枕120A〜120Cの湾曲面は、大雑把には、図3から好適に読み取れる通り、カッタ100の回転軸Xに対し略直交する方向に沿い角度的に拡がっており、またエッジ114から遠ざかる方向に延び頂点に達した後にエッジ114側に戻るという要領で湾曲している。即ち、梃子枕120A〜120Cを湾曲させることで、その上に刃溝状の部分があり、その刃溝状部分の最深部がホールカッタ100の非作用端乃至リム16の最寄りに位置するような、縁乃至面が形成されている。使用に当たっては、図1に示した実施形態に倣い、規格化されているフィリップス(登録商標)2号スクリュードライバ等のツールを湾曲のある梃子枕120A〜120C内にあてがい、その梃子枕120A〜120Cを中心にして枢動させることで、梃子の作用により鋸身110外にワークピーススラグを追いやればよい。スクリュードライバの長尺シャフト等、ありふれたツール乃至器具を挿入可能とするため、梃子枕120A〜120Cの曲率半径乃至幅W1を十分に広くすべきところ、本実施形態ではその幅W1が約1/4〜1/3インチの範囲内に設定されている。このように湾曲のある梃子枕120A〜120Cは、スクリュードライバのシャフト等、一般的なツールの形状に近い形状となる点で有利である。加えて、個々の梃子枕120A〜120Cに湾曲があるとその梃子枕120A〜120C内でツールが側方から支持されるため、スラグを梃子の働きで取り除く際に、滑落、摺動等によってツールが梃子枕120A〜120Cから脱落する恐れも少なくなる。いわゆる当業者であれば本願による開示から容易に理解できる通り、ここで述べた梃子枕形状及び梃子枕寸法は一例であり、既知の又は今後認識されることとなる他の様々な形状乃至寸法にすることもできる。
【0029】
本実施形態で使用される鋸身110が上掲の鋸身10と異なる第2の点は、軸沿い長孔乃至スロット118の向きが異なることである。図2及び図3に示す如く、この鋸身110に備わるスロット118が鋸身軸Xに対し呈する鋭角Aは、図1に示した鋸身10に備わる軸沿い長孔乃至スロット10で生じるそれに比べ小さく、約47°となっている。
【0030】
図2に示す如く、このホールカッタ100では、鋸身110のリム116にキャップ117を熔接することで、非作用端の一部が形成されている。そのキャップ117には、心棒と螺合するネジ孔を有する中心ハブ128、心棒に備わるドライブピンと係合するようハブ128周りに略等間隔で形成された複数個のドライブピン孔130、ハブ128を挟み対をなすよう約180°の相互間隔で設けられた広角孔132等が設けられている。孔132の寸法及び位置は、ワークピーススラグ除去用のツール例えばスクリュードライバをその孔132から挿入できるように設定されている。
【0031】
図4に、本発明の更に他の実施形態に係るホールカッタ200を示す。このカッタ200に備わる略円筒状の鋸身210は図1〜図3を参照して説明した鋸身10及び110と略同一の構成であるので、その構成部分を参照する符号としては、類似構成部分のそれに「2」を冠したもの又はその冒頭の「1」を「2」に置き換えたものが使用されている。この鋸身210が上掲の鋸身10及び110と大きく異なる点は、軸沿い長孔乃至スロット218がホールカッタ回転軸Xに対し略平行に延びていることである。これは、この鋸身210が小径ホールカッタ200用であるため、スロット218を設けうるスペースが上掲の大径ホールカッタにおけるそれに比べ狭く、ホールカッタ回転軸Xに対する鋭角傾斜を付すことができないからである。こうした構成の鋸身210は、その直径が約7/8〜1+7/16インチの範囲に属するホールカッタの製造に適している。また、更に小径なホールカッタ、例えば約13/16インチ以下の直径を有するものの製造には、スロット形状が図3でのそれと同じだがスロット個数が1個に留まる鋸身が適している。
【0032】
鋸身210の更なる相違点としては梃子枕220A〜220Cの形状がある。図示の通り、第1梃子枕220Aは、軸沿い長孔乃至スロット218から横方向に延び切削エッジ214に対し略平行に、しかし鋸身210による切削の進行につれてエッジ214から僅かに退く傾向を以て拡がる曲面のほか、ホールカッタ回転軸Xに対し略平行な単一の側縁221を有している。中間位置にある第3梃子枕220Bは、スロット218から横方向に延びエッジ214に対し略平行に、しかし鋸身210による切削の進行につれてエッジ214から僅かに退く傾向を以て拡がる曲面のほか、第1梃子枕220Aのそれと同じく単一でホールカッタ回転軸Xに対し略平行だが直線的ではなく湾曲付の側縁222を有している。第2梃子枕220Cはスロット218の第2端224にあり、図示の如く、鋸身210による切削の方向に対し略平行に延びる曲面のほか、鋸身210の回転軸Xに対し略平行でスロット218の第2端224にとっても側縁となる2個の側縁221を有している。第1梃子枕220Aや中間位置にある第3梃子枕220Bの幅W2は、約2/10〜1/2インチの範囲内が望ましいところ、本実施形態では約1/4〜3/8インチの範囲内とされている。2号スクリュードライバ等の直径に比し第1梃子枕220Aや中間位置にある第3梃子枕220Bが狭めでよいのは、スクリュードライバシャフトの一部分だけが梃子枕220A及び220B内に収まればよいため、即ち残りの部分をスロット218内にはみ出させてかまわないためである。他方、第3梃子枕220Cの幅W1は、2号スクリュードライバを差し込めるよう約0.27インチ以上とするのが望ましい。
【0033】
上掲のホールカッタ100に対するホールカッタ200の相違点としては、更に、各軸沿い長孔乃至スロット218に備わる第1端(インレット端)222の形状がある。図示の通り、第1梃子枕220Aの側縁221が回転軸Xに対し略平行に且つ直線的に延びていることである。しかも、各スロット218の第1端222に2個ずつ備わる湾曲付部分のうち、第1梃子枕220Aの側縁221に連なる第1の湾曲付部分の曲率半径R1が一通り又は複数通りの小さな値であるのに対して、スロット218を挟み側縁221の向かい側にあり側縁223に連なる第2の湾曲付部分の曲率半径R2が一通り又は複数通りの大きな値となっている。図示の通り、後者即ち曲率半径R2が大きめな部分では、スロット218の縁が、鋸身210による切削の進行につれ切削エッジ214から退く傾向の傾斜を呈することとなる。加えて、然るべき位置にある第1梃子枕220Aに、回転軸Xに対し略水平な側縁221が連なっているため、スロット218への入口である第1端222が比較的広く、切削エッジ214からのチップ乃至ダストがスロット218内に流入しやすくなっている。この端222即ちインレット端の幅は、スロット218の最小幅、即ち第2端(アウトレット端)224における幅W1に対し約1+1/4〜1+1/2倍にするのが望ましいところ、本実施形態では約1+1/3倍以上とされている。
【0034】
図5に、本発明の更に他の実施形態に係るホールカッタ300を示す。このカッタ300に備わる略円筒状の鋸身310は図4を参照して説明した鋸身210と略同一の構成であるので、その構成部分を参照する符号としては、類似構成部分に付された符号の冒頭にある「2」を「3」に置き換えたものが使用されている。この鋸身310が図4に示した鋸身210と大きく異なる点は、軸沿い長孔乃至スロット318が3個ではなく2個の梃子枕320A及び320Cを備えていることである。本実施形態に係る鋸身310は、その直径が約7/8〜1+7/16インチの範囲に属するホールカッタを製造するのに適している。更に小径のホールカッタ、例えばその直径が約13/16インチ以下のものには、図5に示したものと同形状のスロットを1個だけ備える鋸身が適している。また、切削エッジ314から第2梃子枕320Cまでの軸沿い距離D2は、約1+1/2〜2インチの範囲内にするのが望ましい。先に注記した通り、第2梃子枕320Cの位置をこうした範囲内にすることで、2×4、2×6、2×8等をはじめとする“2×”サイズの木材で生じるスラグ、例えば約1+5/8インチ以下のスラグを好適に取り除くことができる。
【0035】
本発明に係るホールカッタには、本発明の譲受人を譲受人とし、この参照を以てそれによる開示全てが本願の一部となる係属中の特許出願によって開示又は提案されたホールカッタ、具体的には「被覆付ホールカッタ」(Coated Hole Cutter)と題する未付番の米国特許出願(代理人側整理番号97309.00203)、「鋸歯ピッチ対鋸身厚比が小さなホールカッタ」(Hole Cutter With Minimum Tooth Pitch to Blade Body Thickness Ratio)と題する未付番の米国特許出願(代理人側整理番号97309.00205)、「押出成形型キャップ付ホールカッタ」(Hole Cutter With Extruded Cap)と題する未付番の米国特許出願(代理人側整理番号97309.00196)、「チップ排出孔付ホールカッタ」(Hole Cutter With Chip Egress Aperture)と題する未付番の米国特許出願(代理人側整理番号97309.00206)、「ホールソー」(Hole Saw)と題する未付番の米国意匠特許出願(代理人側整理番号97309.00209)、並びに「ホールソー」(Hole Saw)と題する未付番の米国意匠特許出願(代理人側整理番号97309.00212)に備わる構成部分のうち幾つかを盛り込むことも可能である。
【0036】
いわゆる当業者であれば本願による教示から容易に理解できる通り、上述のものもそれ以外のものも含め本発明の諸実施形態には、別紙特許請求の範囲で定義される本発明の技術的範囲から逸脱しない様々な変形乃至改良を施すことができる。例えば、ホールカッタの製造に際し採用可能な素材、形状、寸法は多様であり、既知の又は今後認識される様々な種類乃至組合せの素材で切削エッジ等を形成することができる。その切削エッジは、相応しい用途が異なる専用型、複数用途型、汎用型等の鋸歯パターン等、既知の又は今後開発される任意の形態、パターン、配置、形状等にすること、例えば任意乃至様々な鋸歯パターン、ピッチパターン乃至目立てパターンで切削用の鋸歯を設けることができる。また、ホールカッタの鋸身に設ける軸沿い長孔の個数は1個でも複数個でもよいし、軸沿い長孔間で角度位置や軸沿い位置を揃えることもずらすことも可能である。更に、本発明のホールカッタは、様々な切削分野乃至様々なワークピース素材、例えば木材、金属、プラスチック、複合材、樹脂、石材、織物、発泡材等を対象にして使用することができる。また、軸沿い長孔が切削エッジ、側壁のリム又はキャップに達する構成や、切削エッジ・リム乃至キャップ間が軸沿い長孔でつながる構成にすることもできる。更に、各梃子枕の長さや幅を梃子枕間又は軸沿い長孔間で同一にしても別々にしてもかまわない。また、カッタ回転軸に対し直交する方向及びカッタの周方向に対し、梃子枕の表面が直線的に延びない構成でもよい。即ち、梃子枕の表面は湾曲面、湾曲付面、直線的面、傾斜面又はその組合せのいずれでもよい。更に、軸沿い長孔の側縁が軸に沿い直線的に延びず、角度幅のある傾斜の付いた軸沿い長孔乃至スロットが形成されると共に、その孔の端部の表面が丸みを帯びたコーナを介しより外寄りの梃子枕につながる構成でもよい。即ち、軸沿い長孔の側縁は湾曲面、湾曲付面、直線的面、傾斜面又はその組合せのいずれでもよく、その孔の側縁と端部の表面とその外寄りにある梃子枕との交差は直角、鈍角又は鋭角をなす交差でも丸みを欠き又は帯びたコーナでもよい。同様に、梃子枕同士をつなぐ縁の表面が非直線的で、梃子枕に対するつながりを曲率半径群で記述できない構成にしてもよい。即ち、梃子枕同士をつなぐ縁の表面は湾曲面、湾曲付面、直線的面、傾斜面又はその組合せのいずれでもよく、梃子枕に対するつながり方は直角、鈍角又は鋭角をなす交差でも丸みを欠き又は帯びたコーナでもよい。また、孔の縁に別の面を付加し又はそこから除去すること、例えば梃子枕に連なる縁や梃子枕間の縁にそうした面を付加し又はそこから除去することも可能である。そして、軸沿い長孔乃至スロットにおける梃子枕又はそれに類する面の個数を上掲の諸実施形態と異なる個数にすることや、同じホールカッタに備わる軸沿い長孔乃至スロット間で梃子枕の種類や個数を違えることが可能である。これらを踏まえ、本発明の好適な実施形態に関するこれまでの詳細な説明については、要旨限定ではなく例示であると捉えられたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒状の鋸身と、その鋸身に設けられた切削エッジと、ワークピーススラグを鋸身内から除去可能な梃子をそこから鋸身内に差し込めるよう鋸身に貫通形成された1個又は複数個の軸沿い長孔と、軸沿い長孔内に面するよう鋸身に設けられワークピーススラグを鋸身内から梃子で除去する際にその梃子と連携する複数個の梃子枕と、を有し、当該複数個の梃子枕が、切削エッジから離隔した軸沿い位置を占める第1梃子枕と、第1梃子枕に比べ切削エッジから更に離隔した軸沿い位置を占める第2梃子枕と、を含むホールカッタ。
【請求項2】
請求項1記載のホールカッタであって、第1梃子枕と第2梃子枕の軸沿い位置に挟まれた軸沿い位置を占める第3梃子枕を有するホールカッタ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のホールカッタであって、互いに異なる軸沿い位置を占める複数個の軸沿い長孔を有するホールカッタ。
【請求項4】
請求項1又は2記載のホールカッタであって、軸沿い長孔の一端又はその近傍に第1梃子枕、他端又はその近傍に第2梃子枕があるホールカッタ。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか一項記載のホールカッタであって、第3梃子枕が第1及び第2梃子枕のほぼ中間に当たる位置を占めるホールカッタ。
【請求項6】
請求項4記載のホールカッタであって、第2梃子枕が第1梃子枕から離隔した軸沿い位置及び角度位置を占め、第3梃子枕がそれら第1及び第2梃子枕で挟まれた角度位置及び軸沿い位置を占めるホールカッタ。
【請求項7】
請求項1又は2記載のホールカッタであって、その軸沿い長孔が、切削エッジから離隔した軸沿い位置にある第1端と、第1端に比べ切削エッジから更に離隔した軸沿い位置にある第2端と、を有し、第2端の角度位置が、切削エッジによる切削の方向即ちホールカッタの回転方向に沿い第1端より後方であるホールカッタ。
【請求項8】
請求項7記載のホールカッタであって、その軸沿い長孔が、鋸身の軸に対し鋭角をなす方向に沿い延びるスロットであるホールカッタ。
【請求項9】
請求項8記載のホールカッタであって、その鋭角が約30°以上のホールカッタ。
【請求項10】
請求項9記載のホールカッタであって、その鋭角が約35〜60°の範囲内であるホールカッタ。
【請求項11】
請求項7記載のホールカッタであって、切削エッジから第1梃子枕までの軸沿い距離たる第1距離、第2梃子枕までの軸沿い距離たる第2距離、並びに第3梃子枕までの軸沿い距離たる第3距離が、順に、約1/2〜1インチの範囲内、約1+1/2〜2インチの範囲内の値、約1〜1+1/2インチの範囲内であり、第2梃子枕が第1梃子枕から離隔した角度位置を占め、第3梃子枕がそれら第1及び第2梃子枕で挟まれた角度位置を占めるホールカッタ。
【請求項12】
請求項7記載のホールカッタであって、第1梃子枕に係る第1距離、第3梃子枕に係る第3距離、並びに第2梃子枕に係る第2距離が、順に、その厚みが約1/2インチ以下、約1インチ以下、約1+1/2インチ以下の厚みを有するワークピーススラグを梃子で除去できるよう設定されたホールカッタ。
【請求項13】
請求項7記載のホールカッタであって、その切削エッジから軸沿い長孔の第1端までの軸沿い距離が約15/100〜3/8インチの範囲内であるホールカッタ。
【請求項14】
請求項13記載のホールカッタであって、その切削エッジが、刃溝を挟み並ぶ一群の刃先で形成された複数個の鋸歯を有し、切削エッジから第1端までの軸沿い距離を測る際の基準が、(i)その切削エッジに備わる刃溝のうち最も深いもの、又は(ii)その切削エッジに備わる鋸歯のうち目立てされていないものの刃先で形成される平面、であるホールカッタ。
【請求項15】
請求項1又は2記載のホールカッタであって、各梃子枕の表面が切削エッジに対し略平行なホールカッタ。
【請求項16】
請求項15記載のホールカッタであって、梃子枕の表面が直線的、湾曲付又はその組合せであるホールカッタ。
【請求項17】
請求項16記載のホールカッタであって、切削エッジから見て鋸身の逆側の端に非作用端があり、各梃子枕が、対応する軸沿い長孔の縁のうち非作用端寄りの縁上に形成されたホールカッタ。
【請求項18】
請求項15記載のホールカッタであって、各梃子枕が、対応する軸沿い長孔の縁のうち非作用端寄りの縁上に形成された窪みを伴うホールカッタ。
【請求項19】
請求項1又は2記載のホールカッタであって、各梃子枕が、切削エッジに対し略平行な第1面、並びに当該第1面に対し略直交する1個又は複数個の第2面を含め、複数個の面を有するホールカッタ。
【請求項20】
請求項1又は2記載のホールカッタであって、その軸沿い長孔の最小幅が、2号スクリュードライバを差し込める約0.27インチであるホールカッタ。
【請求項21】
略円筒状の鋸身と、その鋸身に設けられた切削エッジと、ワークピーススラグを鋸身内から除去可能な梃子をそこから鋸身内に差し込めるよう鋸身に貫通形成された1個又は複数個の軸沿い長孔と、第1厚み範囲内の厚みを有するワークピーススラグを鋸身内から梃子で除去する際にその梃子と連携するよう軸沿い長孔内に面し鋸身に設けられた第1構成部分と、第2厚み範囲内の厚みを有するワークピーススラグを鋸身内から梃子で除去する際にその梃子と連携するよう軸沿い長孔内に面し鋸身に設けられた第2構成部分と、を有し、第1構成部分に比べ第2構成部分の方が切削エッジからの軸沿い距離が大きく、第2厚み範囲が第1厚み範囲より厚手寄りのホールカッタ。
【請求項22】
請求項21記載のホールカッタであって、第1及び第2厚み範囲に挟まれた第3厚み範囲内の厚みを有するワークピーススラグを鋸身内から梃子で除去する際にその梃子と連携するよう、第1及び第2構成部分に挟まれた軸沿い位置に第3構成部分を有するホールカッタ。
【請求項23】
請求項22記載のホールカッタであって、第2構成部分が第1構成部分に比べ更に離隔した角度位置を占め、第3構成部分がそれら第1及び第2構成部分で挟まれた角度位置を占めるホールカッタ。
【請求項24】
請求項22記載のホールカッタであって、第1、第2及び第3構成部分それぞれが梃子枕であるホールカッタ。
【請求項25】
請求項23記載のホールカッタであって、第3構成部分が第1及び第2構成部分のほぼ中間に当たる軸沿い位置及び角度位置を占めるホールカッタ。
【請求項26】
請求項21記載のホールカッタであって、その軸沿い長孔が、軸沿いに延びるスロットであるホールカッタ。
【請求項27】
請求項21又は22記載のホールカッタであって、その軸沿い長孔が、切削エッジから離隔した軸沿い位置にある第1端と、第1端に比べ切削エッジから更に離隔した軸沿い位置にある第2端と、を有し、第2端の角度位置が、切削エッジによる切削の方向即ちホールカッタの回転方向に沿い第1端より後方であるホールカッタ。
【請求項28】
請求項22記載のホールカッタであって、切削エッジから第1構成部分までの軸沿い距離たる第1距離、第2構成部分までの軸沿い距離たる第2距離、並びに第3構成部分までの軸沿い距離たる第3距離が、順に、約1/2〜1インチの範囲内、約1+1/2〜2インチの範囲内、約1〜1+1/2インチの範囲内であり、第2構成部分が第1構成部分から離隔した角度位置を占め、第3構成部分がそれら第1及び第2構成部分で挟まれた角度位置を占めるホールカッタ。
【請求項29】
請求項28記載のホールカッタであって、第1、第3及び第2構成部分が、順に、その厚みが約1/2インチ以下、約1インチ以下、約2インチ以下の厚みを有するワークピーススラグを梃子で除去できるよう設定されたホールカッタ。
【請求項30】
請求項22記載のホールカッタであって、第1、第2及び第3構成部分それぞれの一部又は全体が切削エッジに対し略平行なホールカッタ。
【請求項31】
請求項21又は22記載のホールカッタであって、その鋸身が、互いに異なる角度位置に貫通形成された複数個の軸沿い長孔を有するホールカッタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−517149(P2013−517149A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549101(P2012−549101)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2011/021217
【国際公開番号】WO2011/088269
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(505333849)アーウィン インダストリアル トゥール カンパニー (15)
【Fターム(参考)】