説明

複数年単位で計画を立てるハードフロアにおけるワックスがけの施工方法

【課題】 コストを削減したワックスがけの方法を提供する。
【解決手段】
ハードフロアーにワックスをかける方法であって、床上から天井方向へ厚さ4μでコーティングし、乾いた後に再度4μでコーティングを行い、それを繰り返す工程からなり、トータルで4μを5層の積層させることを特徴とする。前記5層の積層されたワックスのうち、人間が踏む表面から約2層分を剥離し、再度、4μを2層コーティングすることを特徴とする。この施工方法を年間4回繰り返すことを特徴する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コストを削減したワックスがけの方法に関する。とりわけ、石材を除く、木床、コンクリート、塩化ビニール製等のハードフロア(以下、単に「ハードフロア」という。)におけるワックスがけの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、ハードフロアの清掃は、ウルトラハイスピード(UHS)と呼ばれる方法で、ワックスを研磨し、光沢の復元を行うバフィングマシンという機械を用いることが多い。このバフィングは、1分間に1000から3000回転するのが一般的である。このことで、通行等によりこすれて傷づいたハードフロアの表面を鏡のような光沢に戻す。これを光沢復元作業という。
【0003】
現在、公共施設などの清掃請負契約は、1年間ごとの、入札制度を採用している。清掃業者がかかるコストは、たとえば、契約金が700万円として、年間約200万円の装備が必要となり、人件費を入れると利益が残らないのが、現状である。
一方、東大病院などの広い施設は800床ほどあり、清掃機械が建物ごとに必要となるが契約が1年であり継続の保証がないため、リースは期待できない。そのため清掃機械を購入すると、1年間ごとの入札制度なので、2年後の入札で落とせないと、使用した機械の行き場がない。機械の法人税法上の耐用年数は5年であり、せっかくの設備投資が生かされない。
【0004】
しかしながら、清掃ではなく、建築の施工になると資産を保存・維持するという点から、1年間ごとの入札制度はない。
そこで、ハードフロアケアについては、清掃という従来の概念を捨て、施工という新たな概念の下、ワックスを何層も積層させることで、従来の清掃の概念を変えることを提案する。
すなわち、ハードフロアケアについては、一定の積層を資産価値のあるベースコートとして定義付け、このベースコートの剥離は5年間ごとに行うことで、複数年の作業とし、1年単位の作業とはしないことにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−248434号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
塩化ビニールなどの床においては、通常、1回のワックスがけにつき、2μの厚さのワックスを2層塗布する。そうするとワックスの合計厚さは4μとなる。しかしながら、4μの厚さでは、1か月の間に、人間の歩行等によりワックスが部分的にはげてしまい、床の表面が露出してしまう。このため、1か月ごとに、全面にわたって再び4μのワックスをかける必要が生じてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
毎月ワックスをかけることは人件費の増加につながる。毎月のワックス施工を避けるために、初回に4μの厚さのワックスを5層塗布する。そうするとワックスの合計厚さは20μとなり、1か月の間に、人間の歩行等によりワックスの表面の一部がはがれても床の表面が露出することがなく、1か月ごとにワックスをかける必要は生じない。
【0008】
本発明は、ハードフロアーにワックスをかける方法であって、床上から天井方向へ厚さ4μでコーティングし、乾いた後に再度4μでコーティングを行い、それを繰り返す工程からなり、トータルで4μを5層の積層させることを特徴とするハードフロアーのワックスがけの施工方法である。
【0009】
本発明は、さらに、前記5層の積層されたワックスのうち、人間が踏む表面から約2層分を洗剤や水と洗浄用パッドでのこすり洗い(スクラビング)によりはがし取り、再度、4μを2層コーティングすることを特徴とするハードフロアのワックスがけの施工方法である。
結果として、従前より、ワックスの使用量が減るので、環境保護につながる。
【0010】
本発明は、また、前記施工方法を年間4回繰り返し、このことを合計5年以上繰り返すことを特徴する、施工方法である。
結果として、従前、1年ごとの入札制度から、施工という考えを導入することにより、複数年の清掃という考えを導入できることになる。
【発明の効果】
【0011】
毎月ワックスをかける必要がなくなるため、コストの削減につながる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
従来の方法によるワックスがけでは、厚さ2μのワックスを2層塗布し合計厚さ4μとする。そうすると、上述したように、1か月ごとにワックスをかける必要が生じる。1回のワックスがけに4人費やす現場では、1年で合計48人(4人×12回)の人員が必要となることが分かる。
【0013】
一方、本発明の方法では、初回に厚さ4μのワックスを5層塗布し合計厚さ20μとする。本発明の方法では、厚さ12μの下層3層をベース層とし、ベース層については、はげることなく常に12μの厚さを保つことを基本とする。それに対し、厚さ8μの上層2層については、人間の歩行等によりワックスがはげることを許容する。
【0014】
厚さ8μの上層2層がはげるのには3か月かかることが推測されている。このため、上層2層のワックスがけは3か月ごとに行えばよいことが分かる。
【0015】
1か月ごとにワックスをかける場合には、ワックス表面の光沢が常に保たれている。しかし3か月ごとにワックスをかける場合には時間の経過とともに、ワックス表面の光沢が失われる。この光沢復元作業は、ワックスをかけない月に1回行えば十分である。つまりバフィング光沢復元作業は、年に8回必要となる。
【0016】
ワックスを塗らずに光沢復元作業にかかる作業量は1回につき、1回のワックスがけの3分の1で足りるので、4人×1/3=1.33人必要である。
よって、本発明の方法によるワックスがけと光沢復元作業にかかる人員は、1回のワックスがけに4人費やす現場では、1年で合計27人(4人×4回+1.33人×8回)必要となることが分かる。
【0017】
以上より、従来の方法では年に48人の人員が必要であるのに対し、本発明の方法では年に27人の人員が必要であることから、人件費の大幅な削減が達成される。
【0018】
使用するワックスの量については、従来の方法では48μ(4μ×12回)必要であるのに対し、本発明の方法では44μ(20μ×1回+8μ×3回)必要であり、ほぼ同等である。
【0019】
ワックスがけ作業においては、ワックスをかける前にまず洗剤を用いて床の清掃を行う。従来の方法では毎月ワックスがけを行うので、洗剤使用量は年に12回である。これに対し、本発明の方法では、ワックスがけは年に4回であるので、洗剤使用量は年に4回である。よって、洗剤の使用量では本発明の方法は従来の方法に比べて少なくてすむ。
【0020】
また、従来の方法と本発明の方法ともに、定期的に床に塗布したワックスを全層にわたって、剥離剤を用いて削り取る作業が必要である。この作業をハクリという。従来の方法では、1年ごとにハクリ作業を行う必要がある。それに対し、本発明の方法では、上述したように、厚さ12μの下層3層のベース層は常にはげることがなく5年間以上持続するために、ハクリ作業は5年ごとで十分である。よって、剥離剤の使用量でも本発明の方法は従来の方法に比べて少なくてすむ。剥離剤は普通、弱アルカリ性溶剤のものが多いため、本方法によりその使用量が1/5になることにより省CO効果は大きい。
【0021】
以上述べた従来の方法と本発明の方法による、必要な人員及び、ワックス、洗剤、剥離剤の使用量の比較を、表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
表1より、本発明の方法は従来の方法に比べて、人件費と材料費の両面でコスト削減が達成できることが分かる。もちろん、この実施の形態は1つの例であって、清掃場所ごとに、その特性に応じた計画を立てることが必要である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、清掃業界という産業で利用の可能性がある。これまで、効率を追求しない傾向にあった清掃業界について、効率の良い結果をもたらすことが期待される。
【0025】
さらに、健常者においても重労働であるワックスの塗布作業が、より容易に効率よく光沢復元できるようになるため、近い将来、身体機能障害者・身体障害者・知的障害者が、この発明の清掃方法を使用することで、これらの者が、社会参加の機会を得ることの意義は大きいと考える。つまり、健常者と同じように、作業が行える時代が来ることが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードフロアーにワックスをかける方法であって、床上から天井方向へ厚さ4μでコーティングし、乾いた後に再度4μでコーティングを行い、それを繰り返す工程からなり、トータルで4μを5層の積層させることを特徴とするハードフロアーのワックスがけの施工方法。
【請求項2】
前記5層の積層されたワックスのうち、人間が踏む表面から約2層分を剥離し、再度、4μを2層コーティングすることを特徴とする請求項1記載のハードフロアのワックスがけの施工方法。
【請求項3】
請求項2記載の施工方法を年間4回繰り返し、前記繰り返しを5年間以上行うことを特徴する、施工方法。


【公開番号】特開2011−32770(P2011−32770A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181202(P2009−181202)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(500167135)東栄部品株式会社 (4)
【Fターム(参考)】