説明

複数条植えの苗移植機

【課題】比較的簡単な構成で苗送り装置が作動するときに苗押圧力を減少させることができる苗押さえ具を備えた複数条植えの苗移植機を提供すること。
【解決手段】苗載台51の苗送りベルト51b側に設けた該苗送りベルトのカム75を含む駆動装置の駆動がフェンス部51dを貫通する伝達機構Aを介して左右の苗載部51c上に位置する苗押さえ具71に伝達され、圃場への苗送り操作中は伝達機構Aの作動で苗押さえ具71の苗押圧力が減少する構成としたので、苗押さえ具71による抵抗で苗送りベルト51bの苗送りが不適正になるようなことを防くごとができる。また、共通の伝達機構Aで複数の苗載部51c上の苗押さえ具71の苗押圧力を変更させることができると共に、伝達機構Aから苗押さえ具71の各苗載部51c上の部分への伝達ロスが少なくなり、苗押さえ具71の各苗載部51c上の部分における押圧状態の適正化が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数条植えの苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の苗移植機には、苗植付装置で苗の植え付け時以外のときは苗載台上の苗マットが、苗載台から落下しないように苗マットを押さえ付ける押さえ部材を備えた構成が開示されている。
【特許文献1】特公昭57−22285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、比較的簡単な構成で苗送り装置が作動するときに苗押圧力を減少させることができる苗押さえ具を備えた複数条植えの苗移植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の上記課題は、次の解決手段により解決される。
すなわち、苗を載せる苗載部(51c)をフェンス部(51d)を隔てて前進方向に向かって左右に複数備える苗載台(51)と、該苗載部(51c)上の苗をその下端部にある苗取口(51a)へ送る各々の苗送り装置(51b)と、該苗送り装置(51b)に対向して苗載台(51)上の苗を苗送り装置(51b)側へ押圧する苗押さえ具(71)と、前記苗取口(51a)に供給された苗を取り出して圃場へ植え付ける各々の苗植付装置(52)とを備える複数条植えの苗移植機において、苗載台(51)の苗送り装置(51b)側に設けた駆動装置の駆動がフェンス部(51d)を貫通して設けた伝達機構(A)を介して該伝達機構(A)の左右の苗載部(51c)上に位置する苗押さえ具(71)に伝達され、前記伝達機構(A)の作動で前記苗押さえ具(7)の苗押圧力が減少する構成とした複数条植えの苗移植機である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、苗送り装置(51b)が作動するときに苗押さえ具(71)の苗押圧力を減少させると、苗押さえ具(71)による抵抗で苗送り装置(51b)の苗送りが不適正になるようなことを防止できると共に、前記駆動装置と苗送り装置(51b)とが苗載台(51)に対して同じ側に配置されて機体をコンパクトに構成できる。
【0006】
また、フェンス部(51d)を貫通する伝達機構(A)を介して該伝達機構(A)の左右の苗載部(51c)上に位置する苗押さえ具(71)に伝達される構成としたので、共通の伝達機構(A)で複数の苗載部(51c)上の苗押さえ具(71)の苗押圧力を変更させることができると共に、伝達機構(A)から苗押さえ具(71)の各苗載部(51c)上の部分への伝達ロスが少なくなり、苗押さえ具(71)の各苗載部(51c)上の部分における押圧状態の適正化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施例について説明する。
図1及び図2は本発明の一実施例の乗用型苗移植機の側面図と平面図である。この乗用型苗移植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
なお、本明細書では苗移植機の前進方向を向いて左右方向をそれぞれ左、右と言い、前進方向を前、後退方向を後と言うことにする。
【0008】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10、10及び左右一対の後輪11、11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13、13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13、13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10、10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸(図示せず)を支点にして後輪ギヤケース18、18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18、18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11、11が取り付けられている。
【0009】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、第一ベルト伝動装置21及びHST23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13、13に伝達されて前輪10、10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18、18に伝達されて後輪11、11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構27によって施肥装置5へ伝動される。
【0010】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10、10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35の一部は格子状部分35aになっており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0011】
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38、38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。
【0012】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41、41を備えている。これらリンク40、41、41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム45の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダを油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0013】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61、…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62、…でフロート55、56、56の左右両側に取り付けた施肥ガイド63、…まで導き、施肥ガイド63、…の前側に設けた作溝体64、…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込むようになっている。電動モータ66で駆動のブロア67で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ68を経由して施肥ホース62、…に吹き込まれ、施肥ホース62、…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0014】
苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口51a、…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a、…に供給する苗送りベルト51b、…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a、…に供給された苗を苗植付具52aで圃場に植付ける苗植付装置52、…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ53、53等を備えている。苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56、56がそれぞれ設けられている。これらフロート55、56、56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55、56、56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52、…により苗が植付けられる。各フロート55、56、56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が上下動検出機構57により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0015】
図3には苗載台51の一部断面を示す側面図を図4には苗載台51の平面図を示す。苗載台51の苗マット(図示せず)を載置する苗載部51cの側には上下方向に並んだ複数の苗マットの各条(本実施例では6条)の両側に仕切状のフェンス部51dが設けられている。そのため、苗取口51aにある苗マットから苗植付具52aにより苗が摘み取られて圃場に植え付けられると、その上段にある苗マットがフェンス部51dに沿って下方の苗植付具52aの対向位置に降りてくる構成になっている。
【0016】
なお、苗マットの送り量の制御は次のような構成で行う。
図5には苗載台51の側面図を示し、図6には苗載台51の平面図を示すが、苗送りセンサ120を苗送りベルト51bの側面に設け、苗送りベルト51bの伝動軸109に設けた一方向クラッチ121と苗送りロッド124を介して苗送りベルト51bを作動させる苗送りモータ123を設けることで、苗送りベルト51bの作動量を前記センサ120で検知して苗送量が所定値となるよう、苗送りモータ123の揺動量を制御する。
【0017】
また、苗載台51の苗マットの上方には苗押さえ具71が設けられている。苗押さえ具71は苗載台51の上端部側に該苗載台51より離れた上方位置に回動軸71aを備えたロッド状の部材であり、該回動軸71aから苗載台51に向けて伸びる部分71bと苗載台51の近くで折れ曲がり、苗載台51に配置される苗マット上を下方に向けて伸びる部分71cとその下端部の折曲部71dから構成され、折曲部71dはプレート部材72の端部に連結している。該プレート部材72の中央には回動支点72aが設けられ、苗押さえ具71の連結部とは該回動支点72aを挟んで、その反対側のプレート部材72の端部に後述の苗押さえ具71の駆動装置(カム75を含む苗植付具伝動ギヤケース143内の駆動機構)により駆動されるロッド73と連結している。
なお、苗押さえ具71がその回動軸71aとは3条分ずつ一体的に設けられている。
【0018】
苗押さえ具71の前記駆動装置は苗載台51の苗送りベルト51bの取付部側にあり、前記ロッド73がフェンス部51dを貫通して、前記駆動装置の駆動部材と連結している。前記連結部材はロッド73の端部に連結した折曲アーム74と該アーム74に当接する駆動カム75とからなる。
【0019】
前記折曲アーム74の折曲部に回動支点74aを設けており、図示しない駆動装置(カム75を含む苗植付具伝動ギヤケース143内の駆動機構)の駆動により駆動カム75が回転して折曲アーム74が、その回動支点74aを中心に回転することにより、機体進行方向に向かって左右にある複数のロッド73が苗載部51cより突き出る方向(機体背面側)とその反対方向(機体前面側)に上下する構成である。
【0020】
駆動カム75、折曲アーム74、ロッド73及びプレート部材72をまとめて伝達機構Aと呼ぶことにすると、駆動カム75が回転することにより折曲アーム74、ロッド73及びプレート部材72からなる伝達機構Aを介して苗押さえ具71が、その回動軸71aを中心の回動することで各列毎の苗載部51c上の苗マットを押さえる方向又は苗マットから離れる方向に回動する。こうして駆動カム75を回転させることで、必要なときに苗押さえ具71は苗マットを押さえつけることができる。
この苗押さえ具71は苗載台51の3条分毎に設けられているので、3条分の苗マット毎に必要な場合に苗を押さえつけることができる。
また、苗載台51を貫通してロッド73を備えた伝達機構Aの作動で苗押さえを作動させる事が出来るので機体の振動等があっても苗マットを苗載部51c上に安定して保持できる。
【0021】
さらに、上記構成により、苗送りベルト51bが作動するときに苗押さえ具71の苗押圧力を減少させると、苗押さえ具71による抵抗で苗送りベルト51bの苗送りが不適正になるようなことを防止できる。
【0022】
また、苗押さえ具71の作動量については、苗取出口51a側での作動量が苗載台51の上段側より大きくなるように、苗押さえ具71の回動軸71aを前記上段側の位置すなわち苗取出口51aから離れた位置に設け、伸びる部分71bと折曲部71cを折曲状にすることで、苗マットの量が多いときに、苗押さえ具71の作動があっても、苗載台51の上段側の苗マットの影響を受けないので苗送りが安定する。
【0023】
また、前記駆動装置(苗植付具伝動ギアケース143)の駆動カム75と苗送りベルト51bとが苗載台51に対して同じ側に配置されているので機体をコンパクトに構成できる。
【0024】
さらに、フェンス部51dを貫通する伝達機構Aを介して該伝達機構Aの左右の苗載部51c上に位置する苗押さえ具71に回動力が伝達される構成としたので、共通の伝達機構Aで複数の苗載部51c上の苗押さえ具の苗押圧力を変更させることができると共に、伝達機構Aから苗押さえ具71の各苗載部51c上の部分への伝達ロスが少なくなり、苗押さえ具71の各苗載部51c上の部分における押圧状態の適正化が図れる。
【0025】
また、苗押さえ具71が苗マットの床部(床土)に当たって保持される構成とすると、苗の床土の厚みに拘わらず特に下端側で常に苗には付勢力をかけることができる。
【0026】
図7には図3の苗押さえ具設置部の拡大図を示すが、苗押さえ具71による苗マットの押さえ過ぎを規制するストッパとして折曲アーム74が当接する位置に苗載台51に固着した部材77を設けた構成とすることができる。
【0027】
前記した苗押さえ具71のストッパがないと、苗押さえ具71の位置に苗がないとき苗載台51と苗押さえ具71の隙間が少なくなり、苗補給がしずらいが、折曲アーム74にストッパとなる部材77を設けることにより苗載台51上に苗が無い時、苗載台51と苗押さえ具71に隙間ができ、苗補給が安易になる。
【0028】
また、苗押さえ具71による苗押さえの高さ調整をロッド73の先端部に設けた複数個(図7では3個)の穴73a・・・のいずれかにプレート部材72を固定することで行う。この調整は苗載台51の背面側(後側)のスペースの広い部分で行えるので調整が容易となる。また、プレート部材72の下端部は二股状になっており、苗押さえ具71の下端部を挟み込んでいるのでプレート部材72がその中央部に設けた回動支点72aを中心に回動することで苗押さえ具71の上下移動ができる。
また、苗押さえ具71の作動量の調節とその作動解除をプレート部材72の回動支点72aの変更で行えるようにした。
【0029】
プレート部材72の回動支点72aは苗載台51に取り付けられたプレート支持部材76に設けられた穴76a、76b、76c・・を複数個(図7では3個)設け、該穴76a、76b、76c・・のいずれかをプレート部材72の回動中心とするためにピン留めすることで前記作動高さの調整又はその作動解除ができる。
【0030】
また苗押さえの調節は図面左側(一段目)の穴76aはピッチを大きくし、2段目の穴76bはピッチを微量にすることにより苗床土高さの適応性が拡がり、また苗押さえ(苗保持)の確実化が可能となり操作性が従来技術より向上する。さらに穴76cをプレート部材72の回動支点にすると苗押さえ具71が常に苗の床部に接触しない状態となり、苗押さえの解除ができる。
【0031】
また、図8に苗植付部4の構成を示す側面図と図9に図8の苗植付部の一部平面図を示すが、植付部4の支持フレーム170aから水平方向に伸びる支持フレーム170bに設けた苗取り量変更レバーガイド171の適切なレバー位置を選択するように苗取り量変更レバー169を操作することで常に適切な苗取り量になるよう調節することができる。
【0032】
苗取り量変更レバー169の操作に連動するケーブル173を前記プレート部材72の回動支点72aに連結しておき、該プレート部材72の回動支点72aと苗載台51との間をスプリング175で連結している。
【0033】
従って、苗取り量変更レバー169の操作量に応じて、前記プレート部材72の回動支点72aの苗載台51からの高さを変更することで、苗押さえ具71の苗押さえの作動量を苗取量に比例させ、苗取量が少ない時には少なく苗取量が多い時は多くすることができる。苗押さえの作動量が苗取量と比例することにより、苗取量が多くて苗送り量が多いときでも確実に苗送りができ、苗送りが安定する。
【0034】
また、図10に本実施例の苗植付装置の動力伝動機構図を、図11に前記動力伝動機構の要部をF−F線断面矢視図を示す。
植付伝動ケース159の苗植付具伝動ギアケース143内のベベルギア機構(図示せず)により伝動軸140にエンジン動力が伝達される。植付畦クラッチ141が係合するとスプロケット162とチェーン148を介してそれぞれの苗植付具52aの爪(図示せず)が駆動される。
【0035】
前記スプロケット162にはカム80が設けられており、該カム80に当接する位置に苗送りカム81を備えた回動軸82が植付伝動ケース159に回動自在に支持されている。回動軸82の両端には苗送りアーム83,83が該軸82と一体的に設けられており、この中央に苗送りカム81を備えており、該回動軸82が6条植の田植機では3個設けられている。該アーム83,83のいずれかが、苗載台51の伝動軸109で駆動されるローラ110により作動する苗送りベルト51bの苗送り従動アーム112に当たり、51bを所定量駆動させる。
【0036】
また、苗植付具伝動ギアケース143から伸びる常時回転しているリードカム軸144に設けた溝144aに内周部に中心軸方向へ向けて設けられたリードカム146の突起部が係合しながらリードカム146が左右に移動する。リードカム146と苗載台51が連動しているのでリードカム146が左右に移動すると苗載台51も左右に移動する。
【0037】
また、リードカム146が左右に移動することで、前記アーム83,83のいずれかが(縦)苗送りベルト51bの苗送り従動アーム112に当たり、伝動軸109が駆動されて2条分の苗送りベルト51bを苗の1回の植え付け分だけ動かすことができる。
【0038】
上記構成で定位置停止クラッチである植付畦クラッチ141が「切」の時に、エンジン動力がスプロケット162に伝達しない場合には、苗送りアーム83の駆動用のカム81がスプロケット162に設けたカム80に当たることで、苗送りアーム83を押し上げることを防ぐことができるように、前記カム80とカム81の相互の配置の位相関係を構成する。もしカム80が作動しない状態で、該カム80により駆動用カム81が苗送りアーム83を押し上げた位置でこれらの作動部材が停止する相互の配置の位相関係を構成すると、苗送りアーム83が苗送りベルト51bの苗送り従動アーム112に干渉することになるので無理な負荷がこれらの部材に掛かり、壊れる原因になる。
上記したカム80とカム81の相互の配置の位相関係の構成で、従来、植付用と苗送用と別々にあった畦クラッチを一つのクラッチ141で兼ねることができる。
【0039】
また図12には図10に示す植付畦クラッチ141の拡大図を示すが、伝動軸140とスプロケット162の回転軸163を係合させるために、常時伝動軸140と係合させる方向に付勢しているスプリング135の付勢力に抗してスプロケット162を伝動軸140方向に摺動させないようにカム136の動きを止めているピン137を伝動軸140とは直交する方向に対して少し斜めに向けて移動させる構成にした。
【0040】
従来はカム136に対しピン137は垂直方向に移動させる構成であったので、ピン137の先はテーパ状になっていたが、本実施例のような構成にするとピン137のテーパ加工が不要となるので、その分コストダウンが図れる。
【0041】
本実施例の苗移植機の苗載台51の左右への移動用のレール138には潤滑油すなわちオイルを欠かせないが、本実施例では図13(a)の平面図と図13(b)の側面図に示すように苗載台51の裏面側にオイルタンク139を取付け、該タンク139から下方に向けてオイルが流れるパイプ139aを設け、該パイプ139aの先端にオリフィス穴を設けることで一定量のオイルを自然落下させる。
【0042】
前記パイプ139aはレール138上の苗載台構成部材134を貫通する穴に差し込みのパイプ139aの先端にオリフィス穴から常時レール138にオイルを自然落下させることができる。
【0043】
図14にはオイルタンク139の構造を側面図(図14(a))と正面図(図14(b))に示すが、オイルタンク139内に設けた凹部139bの先端に円内に拡大図で示す十字のスリット139cを入れ、また空気抜き孔139dを別の箇所に設ける。市販の油差しのノズルを凹部139bに入れて、油さしに圧力をかけるだけでタンク139内に給油できる。十字スリット139cに直接油差しノズルが入らない大きさの穴にし、十字スリット139cを変形させないため、水等の浸入がない。また、苗載台51の後側に前記スリット139cを設けて、苗載台の後側からオイルタンク139内へ給油できる構成とすると、その給油が簡単である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の苗植付装置は、苗の植付間隔と植付状態を適宜に変更して多様な苗の植え付けができる苗植付作業機に装着して利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施例の乗用型田植機の側面図である。
【図2】図1の乗用型田植機の平面図である。
【図3】図1の乗用型田植機の苗植付装置の苗押し具の作動機構を示す側面図である。
【図4】図3の苗押し具の作動機構を示す平面図である。
【図5】図1の乗用型田植機の苗植付装置の作動機構を説明するための側面図である。
【図6】図5の苗植付装置の作動機構を説明するための平面図である。
【図7】図3の一部拡大図である。
【図8】図1の乗用型田植機の苗植付装置の構成を示す側面図である。
【図9】図8の苗植付部の一部平面図である。
【図10】図1の乗用型田植機の苗植付装置の作動機構を説明するための平面図である。
【図11】図10の苗植付装置の作動機構を説明するための要部F−F線断面矢視図である。
【図12】図10の苗植付装置の植付畦クラッチの構成図である。
【図13】図10の苗植付装置のレール給油部の平面図(図13(a))と側面図(図13(b))である。
【図14】図10の苗植付装置のレール給油装置の側面図(図14(a))と平面図(図14(b))である。
【符号の説明】
【0046】
1 乗用型苗移植機 2 走行車体
3 昇降リンク装置 4 苗植付部
5 施肥装置 10 前輪
11 後輪 12 ミッションケース
13 前輪ファイナルケース 15 メインフレーム
18 後輪ギヤケース 20 エンジン
21 第一ベルト伝動装置 23 HST
25 植付クラッチケース 26 植付伝動軸
27 施肥伝動機構 30 エンジンカバー
31 座席 32 フロントカバー
34 ハンドル 35 フロアステップ
35a 格子状部分 36 リヤステップ
38 予備苗載台 40 上リンク
41 下リンク 42 リンクベースフレーム
43 縦リンク 44 連結軸
45 スイングアーム 46 昇降油圧シリンダ
50 伝動ケース 51 苗載台
51a 苗取出口 51b 苗送りベルト
51c 苗載部 51d フェンス部
52 苗植付装置 52a 苗植付具
53 線引きマーカ 55 センターフロート
56 サイドフロート 57 上下動検出機構
60 肥料ホッパ 61 繰出部
62 施肥ホース 63 施肥ガイド
64 作溝体 66 伝動モータ
67 ブロア 68 エアチャンバ
71 苗押さえ具 71a 回動軸
71b 伸びる部分 71c、71d 折曲部
72 プレート部材 72a プレート部材回動支点
73 ロッド 73a 穴
74 折曲アーム 74a 回動支点
75 駆動カム 76 プレート支持部材
76a、76b、76c、 穴 77 部材
80 カム 81 苗送りカム
82 回動軸 83 苗送りアーム
109 伝動軸 110 ローラ
112 苗送り従動アーム 120 センサ
121 一方向クラッチ 123 苗送りモータ
124 苗送りロッド 134 苗載台構成部材
135 スプリング 136 カム
137 ピン 138 レール
139 オイルタンク 139a パイプ
139b 凹部 139c 十字のスリット
139d 空気抜き孔 140 伝動軸
141 植付畦クラッチ
143 苗植付具伝動ギヤケース
144 リードカム軸 144a 溝
146 リードカム 148 チェーン
159 植付伝動ケース 162 スプロケット
163 回動軸 169 苗取り量変更レバー
170a、170b 支持フレーム
171 苗取り量変更レバーガイド
173 ケーブル
175 スプリング A 伝達機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗を載せる苗載部(51c)をフェンス部(51d)を隔てて前進方向に向かって左右に複数備える苗載台(51)と、該苗載部(51c)上の苗をその下端部にある苗取口(51a)へ送る各々の苗送り装置(51b)と、該苗送り装置(51b)に対向して苗載台(51)上の苗を苗送り装置(51b)側へ押圧する苗押さえ具(71)と、前記苗取口(51a)に供給された苗を取り出して圃場へ植え付ける各々の苗植付装置(52)とを備える複数条植えの苗移植機において、
苗載台(51)の苗送り装置(51b)側に設けた駆動装置の駆動がフェンス部(51d)を貫通して設けた伝達機構(A)を介して該伝達機構(A)の左右の苗載部(51c)上に位置する苗押さえ具(71)に伝達され、前記伝達機構(A)の作動で前記苗押さえ具(7)の苗押圧力が減少する構成としたことを特徴とする複数条植えの苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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