説明

複数色の毛髪を植設してなるかつらおよびその製造方法

【課題】複数色の毛髪をかつら外縁部や内側部に形成された区画に一定の配列順に従って植設し、微細なグラデーション効果や立体感や一体感及び自然感を得るようにした複数色の毛髪を植設してなるかつらを提供する。
【解決手段】 外周線と該外周線の内側に所定の間隔を介してほぼ同心に形成される内周線との間に形成される外縁部3と、前記内周線の内側に形成される内側部3´とを有し、これらの外縁部3、内側部3´に複数色の毛髪を決められた配列順に順次植設するための植設区画を仮想形成し、この植設区画内に明暗の相違する毛髪を一定の配列順によって植設する。例えば、D,M,L(Dは3色の中でも最も暗い色、Lは3色の中で最も明るい色、MはDとLとの間の明るさをもつ色)の区画を設定してこの配列順に従って植設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数色の毛髪を植設するかつらに係り、特に、微細なグラデーション効果や立体感及び装着者の自毛との一体感を持たせて自然感を向上させる複数色の毛髪を植設してなるかつらに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のかつらは、合成樹脂からなる人工皮膚やネットによって形成されたかつらベースに基本的に一色の人工毛髪又は人毛が植設されていた。また、かつらでカラーグラデーションなどのおしゃれ感覚を所望する場合には、例えば、「特許文献1」に開示されているように、複数色の毛髪を混合する所謂ブレンドミックスした状態でランダムに植設する方法や、「特許文献2」のようにかつらの所定部位ごとに指定された色の毛髪を植設してグラデーション効果を持たせる方法が広く行われている。更に、かつらの所定の位置に基本色とは異なる色の毛髪をポイント的に植設する方法も行われている。
【特許文献1】特開昭63−196705号公報(全文)
【特許文献2】実用新案登録第3075364号公報(全文)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
「特許文献1」のように複数色の毛髪を混合した所謂ブレンドミックスしたものをランダムに植設する方法の場合、混合する割合や色によってはかつらに植設した時に毛髪全体の分散が不十分になり、色の偏りが発生して見栄えが悪くなったり、思い通りの色やグラデーションを表現することが困難である問題点がある。
一方、「特許文献2」のようにかつらの所定部位ごとに指定された色の毛髪を植設する場合、かつらの中で所定部位の境界付近は毛色の差が大きくなりグラデーション効果が得られない問題点がある。また、このような方法で所望のグラデーション効果を得ようとする時には、所定部位の間隔をかなり細く設定し、かつ植設する毛髪の色も多数必要となる。更に、かつらの所定の位置に基本色とは異なる色の毛髪をポイント的に植設する方法の場合、植設する基本色とポイントで植設する毛髪の色、ポイントで植設する位置のバランスが悪いと、付け毛をしているように見えてしまい、見た目が悪くなる問題点がある。
【0004】
また、前記何れの方法も、複数の毛色が混在する場合には植設されている毛髪の中で明るい色の毛髪が目立ち、他の色の毛髪が隠れて沈んでしまい所望のグラデーション効果が十分にでなかった。また、かつら全体の立体感が失われ、他人から外見でかつらの装着をしていることが判り易い問題点がある。その上、現代は老若男女を問わず頭髪にヘアカラーを入れたり、脱色したりしている人が多いが、ヘアカラー及び脱色での処理ムラ、あるいは頭髪へのダメージの差により多色の毛髪が混在している状態となっている。このような人がかつらを装着する場合には、自毛とかつらに植設されている毛髪との差異を薄めるためにかなり微細な範囲で所定の位置に多数の色の毛髪を植設する必要があって、このような場合に従来の技術では前記のようにかつら装着者が満足するかつらは得られない。
【0005】
本発明は、以上の問題点を解決するものであり、かつらベースに複数色の毛髪を植設するにあたり、かつらベースを一定の規則に従い分画し、各色の毛髪を所定区画に植設することにより、微細なカラーグラデーション、立体感、外観上自然なかつらが所望通り制御できる複数色の毛髪を植設してなるかつらを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以上の目的を達成するために、請求項1の発明は、軟質合成樹脂の人工皮膚、又は合成樹脂のネットからなるかつらベースにおいて、
該かつらベースの外周線と該外周線の内側に所定の間隔を介してほぼ同心に形成される内周線との間に形成される外縁部と、前記内周線の内側に形成される内側部とを有し、複数色の毛髪を決められた配列順に順次植設するための植設区画を前記外縁部及び前記内側部に仮想形成するかつらであって、前記植設区画が前記外縁部に一定の間隔で形成される前記外縁部区画と前記内側部に縦横に形成される内側部区画とからなり、植設する前記毛髪が前記外縁部区画に前記配列順に植設される毛髪と、前記内側部区画に斜め方向に同一色の毛髪を順次植設される毛髪とからなることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2の発明は、 前記外縁部及び前記内側部に仮想形成する植設区画の個々の大きさが、一辺が0.5〜2.0cmのほぼ矩形であることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3の発明は、 前記複数色の毛髪が、2色、3色または4色のいずれか1つの色の組み合わせであることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、前記植設する毛髪を、相対的に一番明るい色の毛髪を前記かつらベースの前記外縁部の前頭部中心に位置する前記植設区画に植設することを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、前記植設する毛髪の色の配列順が、前記外縁部においては、前記かつらベースの前頭部中心に位置する前記植設区画に相対的に一番明るい色の毛髪を配置し、該植設区画を起点に左右対称に相対的明るい色の毛髪から順に繰り返しに配列され、他方、内側部においては、前記かつらベースの前頭部から後頭部にかけて相対的に明るい色の毛髪から順に繰り返し配列されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明は、前記外縁部及び前記内側部がネットからなるかつらベースで、該ネットの稜線である結び糸に植設される毛髪が前記植設区画に対応する種類の色の毛髪からなることを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明は、前記外縁部及び前記内側部がネットからなるかつらベースで、該ネットの稜線である結び糸が前記植設区画と重なり合うかつらでは、この結び糸に植設される毛髪が重なり合う前記内側部区画の色と同一色の毛髪を前記植設区画の下端部及び右端部に植設するものからなることを特徴とする。
【0013】
請求項8の発明は、前記外縁部及び前記内側部がネットからなるかつらベースで、該ネットの稜線である結び糸が前記植設区画と重なり合うかつらでは、この結び糸に植設される毛髪が重なり合う前記外縁部区画の色と同一色の毛髪を前記植設区画の下端部、右端部および上端部に植設するものからなることを特徴とする。
【0014】
請求項9の発明は、前記外縁部及び内側部がネットからなるかつらベースで、該ネットの稜線である結び糸が前記植設区画と重なり合うかつらでは、この結び糸に植設される毛髪が重なり合う植設区画がない外縁部においては、斜め下の植設区画の色と同一色の毛髪を下端部、右端部および上端部に植設するものからなることを特徴とする。
【0015】
請求項10の発明は、かつらベースの外周線と該外周線と該外周線の内側に所定の間隔を介してほぼ同心に形成される内周線との間に形成される外縁部と、前記内周線の内側に形成される内側部とを有し、複数色の毛髪を決められた配列順に順次植設するための植設区画を前記外縁部及び前記内側部に仮想形成するかつらであって、前記植設区画が、前記外縁部に一定間隔で形成される外縁部区画と上記内側部に縦横に形成される内側部区画とからなり、植設する前記毛髪が、前記外縁部区画に前記配列順に植設される毛髪と、前記内側部区画に斜め方向に同一色の毛髪を順次植設される毛髪とからなり、前記複数色の毛髪が、相対的に明るい色から順番に配列される複数色の毛髪を植設してなるかつらの製造方法である。

【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1の複数色の毛髪を植設してなるかつらによれば、毛髪がかつらベースの外縁部や内側部に仮想形成された区画に植設され、その植設方法として複数色の毛髪を一定の配列順及び配列方向によって植設するものからなり、従来技術と全く異なるグラデーション効果,立体感,一体感,自然感を持たせることができる。
【0017】
また、本発明の請求項2の複数色の毛髪を植設してなるかつらによれば、かつらベースの外縁部と内側部に仮想形成された区画の大きさを一辺が0.5〜2.0cmのほぼ矩形とするものからなり、前記の効果を確実に上げることができる。また、請求項3のかつらによれば、かつらベースに植設する複数色の毛髪において、色の種類が2色、3色または4色のいずれか1つの色の組み合わせにすることにより前記効果を確実にあげることができる。

【0018】
また、本発明の請求項4の複数色の毛髪を植設してなるかつらによれば、相対的に一番明るい色の毛髪をかつらベースの外縁部の前頭部中心に位置する植設区画に植設することにより前述とほぼ同一の効果を上げることができる。
【0019】
また、本発明の請求項5の複数色の毛髪を植設してなるかつらベースによれば、前記植設する毛髪の色の配列順が、前記外縁部においては、前記かつらベースの前頭部中心に位置する前記植設区画に相対的に一番明るい色の毛髪を配置し、該植設区画を起点に左右対称に相対的明るい色の毛髪から順に繰り返しに配列され、他方、内側部においては、前記かつらベースの前頭部から後頭部にかけて相対的に明るい色の毛髪から順に繰り返し配列されているから本発明の効果を確実に上げることができる。
【0020】
本発明の請求項6の複数色の毛髪を植設してなるかつらベースによれば、
外縁部および内側部がネットからなるかつらベースで、稜線である結び糸が前記植設区画と重なり合うかつらでは、この結び糸に植設される毛髪が前記植設区画に対応する種類の色の毛髪からなり、人工皮膚によるかつらベースの場合とほぼ同一の効果を上げることができる。
【0021】
本発明の請求項7の複数色の毛髪を植設してなるかつらベースによれば、外縁部および内側部がネットからなるかつらベースで、稜線である結び糸が前記植設区画と重なり合うかつらでは、この結び糸に植設される毛髪が重なり合う前記内側部区画の色と同一の色の毛髪を前記植設区画の下端部及び右端部に植設するから人工皮膚によるかつらベースの場合と同一の効果を上げることができる。
【0022】
本発明の請求項8の複数色の毛髪を植設してなるかつらベースによれば、
外縁部および内側部がネットからなるかつらベースで、稜線である結び糸が前記植設区画と重なり合うかつらでは、この結び糸に植設される毛髪が重なり合う前記外縁部区画の色と同一の色の毛髪を前記植設区画の下端部、右端部および上端部に植設することにより人工皮膚によるかつらベースの場合とほぼ同一の効果を上げることができる。
【0023】
本発明の請求項9の複数色の毛髪を植設してなるかつらベースによれば、
外縁部および内側部がネットからなるかつらベースで、稜線である結び糸が前記植設区画と重なり合うかつらでは、この結び糸に植設される毛髪が重なり合う前記植設区画がない外縁部で、斜め下の前記植設区画の色と同一の毛髪を下端部、右端部および上端部に植設することにより人工皮膚によるかつらベースの場合とほぼ同じく効果を上げることができる。
【0024】
本発明の請求項10の複数色の毛髪を植設してなるかつらベースの製造法によれば、毛髪がかつらベースの外縁部と内側部に仮想形成された区画に植設され、その植設方法として複数色の毛髪を一定の配列順及び配列方向によって植設するものからなり、さらに相対的に明るい色の毛髪から順に繰り返し配列されるから従来技術と全く異なるグラデーション効果、立体感、一体感及び自然観を持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の複数色の毛髪を植設してなるかつらの実施の形態について図面を参照して詳述する。
【0026】
まず、かつらベースに各色の毛髪を植設する位置(以下、区画と称す)を設定することから始める。最初に例えば、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂製のシートを加熱してかつら装着者頭部形状の雌型を作製し、そこに図1に示すように外周線1を記入する。次にこの外周線1の内側に例えば1.5cmの間隔をおいて外周線1とほぼ同形状の内周線2に記入し、外周線1と内周線2に挾まれた部分を外縁部3とする。区画の間隔は0.5〜2.0cmの範囲が好ましい。
【0027】
この間隔が0.5cm以下では区画ごとに植設する毛髪が少なくなるため植設をした各色の毛髪のメリハリが無くなってしまい、植設する毛髪の色によっては付け毛をしているように見えてしまうため所望のグラデーション効果が得られない。またこの間隔が2.0cm以上の場合は、区画ごとに植設した毛髪群の色の差だけが目立ってしまい所望のグラデーション効果が得られないのである。
【0028】
このように形成された外縁部3に毛髪を植設する区画を設定する。なお、内周線2の内側を内側部3′とする。
第1段階は、図2で示すようにかつら前頭部から後頭部にかけての長さを2等分する線を記入し、これを横中心線4とする。次いでかつら左部から右部にかけての長さを2等分する線を記入し、これを縦中心線5とし、横中心線4及び縦中心線5が交差する点を中心点6とする。
【0029】
第2段階は、図3に示すように外縁部3と縦中心線5がかつら前頭部の内周線2と交わる点7を起点として直線距離で左右0.75cmの位置に印8a,8bを付ける。そして中心点6と8a,8bとを直線9a,9bで結び、この直線9a,9bを外縁部3内に延長し直線10a,10bを求める。この作業で外周線1,内周線2,10a,10bで囲まれた部分を区画11とする。
【0030】
第3段階は、上記のように設定した区画11を中心として区画11に隣接する区画を順次設定していく。図4に示すように区画11の設定時に付けた印8aから左側に直線で1.5cmの位置に印12aを付ける。同様に印8bから右側に直線で1.5cmの位置に印12bを付ける。次に中心点6と12a,12bとを直線13a,13bで連結し、この直線13a,13bを外縁部3まで延長し、直線14a,14bを求める。この作業で外周線1,内周線2,10a,14aで囲まれた部分を区画15,外周線1,内周線2,10b,14bで囲まれた部分を区画16とする。
【0031】
同様に前記第3段階の作業を繰り返して外縁部3上に同様に区画を設定し、かつらの後頭部に差し掛かった時に図5で示すように区画21a′,21b′の端部の印21a,21bの直線距離21が3cm以下になった時点で区画の設定作業を終了する。
【0032】
次に、第4段階として内側部3′の区画設定を行う。まず最初にかつらの前頭部から後頭部にかけての縦線を記入していく。図6に示すように、縦中心線5を起点として左右に0.75cmの位置に印を付けて内周線2の位置まで直線17a,17bを記入する。続いて直線17a,17bを起点として左右1.5cmの位置に印を付けて内周線2の位置まで直線18a,18bを記入する。この作業を繰り返して、図7のようにかつらの左右の内周線2と記入した直線22a′,22b′との直線距離が22a,22bが1.5cm以下になった時点で縦線記入を終了する。
【0033】
第5段階としてかつらの左部から右部にかけての横線を記入していく。図8に示すように、横中心線4を起点として上下に0.75cmの位置に印を付けて内周線2の位置まで直線19a,19bを記入する。続いて直線19a,19bを起点として左右1.5cmの位置に印を付けて内周線2の位置まで直線20a,20bを記入する。この作業を繰り返して、図9のようにかつらの上下の内周線2と記入した直線23a′,23b′との直線距離23a,23bが1.5cm以下になった時点で横線記入を終了する。
【0034】
このように前記第1段階から第5段階の作業を行うことで、図9に示すような1.5cm角の格子状の区画が設定される。実施例において、1.5cmの間隔で区画を設定したが、これに拘らず所望する間隔で区画を設定しても問題なく、区画の形状も正方形だけでなく長方形に設定することが可能である。
【実施例1】
【0035】
次に、かつらに仮想形成した区画への毛髪の植設方法を説明する。
本実施例では、3色の毛髪を植設する場合について説明するが、勿論、これに限定するものではない。3色の中で最も暗い色である毛髪を暗色毛髪群D、最も明るい色である毛髪を明色毛髪群Lとし、前記暗色毛髪群Dと明色毛髪群Lとの間の明るさの毛髪を中間色毛髪群Mとする。例えば、中間色毛髪群Mを自毛に近い色にした場合には自毛より明るい色が明色毛髪群L、自毛より暗い色が暗色毛髪群Dとなる。これら毛髪群の配列順はL、M、Dの順で行う。
【0036】
まず、かつらの装着者の頭部雌型に成型した熱可塑性合成樹脂製シート上に前記図9に示した区画を仮想形成する。次に、図10に示すように、この区画の外縁部3の前頭部の区画11にLを記入する。次に、図11に示すように区画11を中心として区画15にM,区画16にM,区画24にD,区画25にDと記入する。即ち、区画11,15,24がL、M,Dの配列になり、区画11、16,25がL、M、Dの配列となる。同様にL,M、Dの配列順に従って外縁部3の区画内にL、M、Dの符号を記入していくと、図11が作成される。
【0037】
次に、内側部3′の区画11の下側に隣接する区画26及びこの区画26の下側に隣接する区画27に、図12に示すように、M及びDを記入し、L,M,Dの配列順に従って区画11から真直に下がる区画内にL、M、Dの符号を後頭部まで順次記入していくと図13のように作成される。
【0038】
次に、図13に示す区画11を起点として右斜め下の区画28に図14に示すように、明色毛髪群Lと記入し、同様に区画28の右斜め下の区画29をLと記入して順次この作業を繰り返すことによって右肩下がりに位置する区画に明色毛髪群Lを記入していく。続いて区画26を起点として右斜め下の区画30に中間色毛髪群Mと記入し、同様に右肩下がりの位置でMを記入していく。続いて区画27を起点として、左斜め上の区画32にDと記入する。同様にかつら前部部からかつら後頭部にかけてL、M,Dの順で、縦中心線5を挟んで右側部分は右肩下がり、縦中心線5を挟んで左側部分は左肩上がりとなるように記入作業を繰り返して順に記入していくと図14のように作成される。

【0039】
図14に示す前述の毛色記入作業でまだ記入されていない内側部3′のかつら右前部分3a(点線部)とかつら左後部分3b(点線部)の記入を行う。最初にかつら右前部分3a(点線部)の記入作業を行う。まず、図15に示すように区画28の右に隣接している区画33にDと記入し、区画33がDとなる理由は、区画28は前述の毛色記入作業でLと記入されており、上述のように縦中心線を挟んで右側部分は右肩下がりとするように毛色の記入作業を繰り返した結果、区画34にはLと記入されており、縦方向の配列順はLMDとあるので区画33はDとなる。同様に区画35、36はLMDの配列順の法則に従えば区画35はM、区画36はDとなる。同様にLMDの配列順の法則に従い、図15に示すように残りの区画に記入作業を繰り返す。

【0040】
次に、かつら左後部分3bの記入作業を行う。
かつらの縦中心線5上の最後部区画37に記入した毛色によって、左に隣接する区画38に記入する毛色が異なる。区画37がLの場合、区画38はMとなる。区画37がMの場合、区画38はDとなる。区画37がDの場合、区画38はLとなる。本例では、区画37はMであるため、左に隣接している区画38はDとなる。この理由は、区画37がMと記入されており、前述のように縦中心線5を挟んで左側部分は左肩上がりとするように毛色の記入作業を繰り返した結果、区画39にはMと記入されており、縦方向の配列順はLMDとあるので区画38はDとなる。同様に区画40,41はLMDの配列順の法則に従えば区画40はD、区画41はLとなる。同様にLMDの配列順に従い、図15に示すように残りの区画に前述と同様に記入作業を繰り返す。図16に示したものは全ての区画へ毛色の記入が終了した完成図である。
【0041】
区画の設定において、外縁部と内側部を設けている理由は、区画11に記入したLを中心として左右対称に外縁部の区画の毛色を記入することにより、植設したかつらの毛髪をどの方向からみても、かつらの端部における毛色の配列が揃っており、より自然なグラデーションを出すことができる。外縁部の区画を設けず内側部のみの区画を設けて毛髪を植設した場合、内側部における左右の毛色が異なるため不自然に見えてしまうからである。
【0042】
区画の毛色の配列順をL,M,Dとする理由は、まず外縁部の区画の毛色を決めるための起点となる区画11をLとしているため、毛髪群の配列の選択肢はL,M,Dか、又はL,D,Mとなり、もし配列をL,M,Dとした場合、前頭部付近の外縁部の毛髪の色が区画11のLから区画15,16のDと変わることにより色の差が大きくなり、かつらを装着したときに前頭部が部分的に目立ってしまう可能性があるが、この配列順をL,D,Mとした場合は、Lとした区画11から少しずつ色が暗くなっていくような配列順であることと、区画11の毛髪の色Lと区画11の両隣に隣接する区画15及び区画16の毛髪の色Mとが混ざり合い、より自然なグラデーションを出すことができるからである。
【0043】
また、内側部においては、図17に示した内側部の拡大図のように、区画の毛色は縦方向にLMDLMDと記入され、同一色の区画を斜めに記入するように設定している。もし、図18に示した内側部の拡大図のように、同一色の区画を真横に配置するように設定した場合、縦方向にDとLが隣接する部位45を真横に配置することになり、各毛色群の色の毛色の差が目立ってしまい見た目を損なう可能性がある。そこで、図17に示すように、同一色の区画を斜めに配置するように設定することにより、縦方向にD、Lが隣接する部位42の左隣の縦方向に隣接している部位43がLとM、部位42の右隣の縦方向に隣接している部位44がMとDとなり、この左隣の部位43または右隣の部位44の毛色の差は部位42におけるDとLの毛色の差よりも少なく、DとLが隣接する部位42における毛色の差を両隣に位置する部位43,44の存在で柔らげることができるため、自然なグラデーション効果を出すことができる。
【0044】
各毛色を植設する区画は、前記のように記入すればL,M,Dの各区画はほぼ均等になるが、同一色が右肩下がりになるように配置すると、どのようなスタイルにも対応ができる。植設する毛色については、前記の3色に限定されるものではなく、何色でも使用することが可能であるが、5色以上の毛色を使用すると、区画に記入する毛色が増えて多数の毛色が混ざることによってブレンドミックスしたものをランダムに植設した場合の状態と変わらなくなってしまい、グラデーション効果を出すことにつながらないため、使用する毛色は2色から4色であることが望ましい。また、本実施例では、微細なカラーグラデーション効果を出すことによって外観上自然なかつらを作るためにL,M,Dの配列順にて毛色の配置に規則性を持たせているが、例えば、LMLMDやMMDLDなど他の配列順にすることにより、かつらに植設する毛髪のL,M,Dの割合を好みに応じて変えることも可能である。
【0045】
次に、記入した毛色の記入に基づいて毛髪の植設を行う場合は、熱硬化性樹脂からなる装着者頭部型の上に前記記入作業により、毛色の記入が終了したかつら装着者頭部の雌型に成型したポリ塩化ビニルを所定の位置に合わせて貼り合わせる。次に、更にその上に、かつらベースを配置してさらに植設する区画を確認しながらかつらベースの所定の位置に所定の色の毛髪を植設する。
【0046】
本発明において、2色の毛髪を植設する場合の区画の配列を図19に示す。この図19は、相対的に暗い色である毛髪を暗色毛髪群Dとし、相対的に明るい色である毛髪を明色毛髪群Lとした場合において毛髪群の配列順をL,Dの順にして植設する場合の実施例であり、この区画設定により自然なグラデーション効果を出すことができる。
【0047】
本発明において、4色の毛髪を植設する場合の植設区画の配列を図20に示す。この図20は、4色のなかでも最も暗い色である毛髪を暗色毛髪群Dとし、最も明るい色である毛髪を明色毛髪群Lとし、その他の暗色毛髪群Dと明色毛髪群Lとの間の明るさを持つ毛髪のうち相対的に暗い色である毛髪を中間色毛髪群Mとし、前記明色毛髪群Lと中間色毛髪群Mとの間の明るさの毛髪を明中間毛髪群MLとした場合において毛髪群の配列順をL,ML、M、Dの順にして植設する場合の実施例であり、この区画設定により自然なグラデーション効果を出すことができる。
【0048】
複数色の毛髪を所定割合で植設することにより、ブレンドミックスに見られるような毛髪の分散不十分による色の偏りが発生せず、思い通りの色や微細なグラデーション効果を正確に表現できる。また、微細なグラデーション効果による見た目の立体感により自然感を向上させることができるため、他人からかつらを装着していることが判りにくくなる利点がある。予め、植設を行う毛色区画を設定することにより、従来のように植設する際に所定部位を細かく指示する必要がなくなり、植設する毛髪の色数を最小限に抑えてグラデーション効果を出すことができる。
【実施例2】
【0049】
前記の実施例1では、かつらの内側部3′が軟質合成樹脂の人工皮膚からなるかつらベースについて説明したが、かつらとしてはネットからなるものも多い。実施例2は、このネットのかつらの場合についての複数色の毛髪を植設するかつらについて説明する。
【0050】
まず、図21のかつらはネットのネット目46が正方形の場合であって区画と45°で交差するものが示され、図22はネット目46が菱形であって区画と傾斜して交差するものが示されている。これらの場合には図21及び図22に示すように区画の境界線とネット目46とが重なり合っておらず、ネット目46にはそのネット目46のある位置の区画の色と同一色の毛髪を稜線に植設することができる。
【0051】
一方、図23及び図24の場合はネットのネット目46が区画の境界線に正確に重なり合ったものが示されている。この場合には、まず、図23の内側部においては重なり合っている区画の色と同一の色の毛髪が下端部及び右端部に植設される。一方、図24に示すように、外縁部では重なり合っている区画の色と同一の色の毛髪が下端部,右端部及び上端部に植設される。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上の説明では、軟質合成樹脂の人工皮膚または合成樹脂からなるネットを外縁部や内側部に形成するかつらについて説明したが、かつら形状や外縁部形態、内側部形態は各種のものが存在する。しかし、これらに対しても前記と同様に植設区画を設定して毛髪を植設することが可能であり、本発明の利用範囲は極めて広い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】乃至
【図20】本発明かつらベースの外縁部や内側部に形成するかつらの毛髪の植設方法を順次説明するための模式的平面図である。
【図21】乃至
【図24】本発明のかつらベースがネットである外縁部や内側部に形成するかつらの毛髪の植設方法を順次説明するための模式的平面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 外周線
2 内周線
3 外縁部
3′ 内側部
4 横中心線
5 縦中心線
6 中心点
7 点
8 印
9、10 直線
11 区画
12 点
13、14 直線
15、16 区画
17〜20 直線
21 直線距離
21 区画
22 直線距離
22 直線
23 直線距離
23 直線
24〜41 区画
42〜45 部位
46 ネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質合成樹脂の人工皮膚、又は合成樹脂のネットからなるかつらベースにおいて、
該かつらベースの外周線と該外周線の内側に所定の間隔を介してほぼ同心に形成される内周線との間に形成される外縁部と、前記内周線の内側に形成される内側部とを有し、
複数色の毛髪を決められた配列順に順次植設するための植設区画を前記外縁部及び前記内側部に仮想形成するかつらであって、前記植設区画が、前記外縁部に一定の間隔で形成される前記外縁部区画と前記内側部に縦横に形成される内側部区画とからなり、
植設する前記毛髪が、前記外縁部区画に前記配列順に植設される毛髪と、前記内側部区画に斜め方向に同一色の毛髪を順次植設される毛髪とからなることを特徴とする複数色の毛髪を植設してなるかつら。
【請求項2】
前記外縁部及び前記内側部に仮想形成する前記植設区画の個々の大きさが、一辺を0.5〜2.0cmとしたほぼ矩形であることを特徴とする請求項1に記載の複数色の毛髪を植設してなるかつら。
【請求項3】
前記複数色の毛髪が、2色、3色または4色のいずれか1つの色の組み合わせであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の複数色の毛髪を植設してなるかつら。
【請求項4】
前記植設する毛髪を相対的に一番明るい色の毛髪を前記外縁部の前頭部中心に位置する前記植設区画に植設することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3記載のいずれか1つの複数色の毛髪を植設してなるかつら。
【請求項5】
前記植設する毛髪の色の配列順が、前記外縁部においては、前記かつらベースの前頭部中心に位置する前記植設区画に相対的に一番明るい色の毛髪を配置し、該植設区画を起点に左右対称に相対的に明るい色の毛髪から順に繰り返しに配列され、他方、前記内側部においては、前記かつらベースの前頭部から後頭部にかけて相対的に明るい色の毛髪から順に繰り返し配列されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載のいずれか1つの複数色の毛髪を植設してなるかつら。
【請求項6】
前記外縁部及び前記内側部がネットからなるかつらベースで、該ネットの稜線である結び糸に植設される毛髪が前記植設区画に対応する種類の色の毛髪からなることを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載のいずれか1つである複数色の毛髪を植設してなるかつら。
【請求項7】
前記外縁部及び前記内側部がネットからなるかつらベースで、該ネットの稜線である結び糸が前記植設区画と重なり合うかつらでは、この結び糸に植設される毛髪が重なり合う前記内側部区画の色と同一色の毛髪を前記植設区画の下端部及び右端部に植設するものからなることを特徴とする請求項1乃至5に記載のいずれか1つである複数色の毛髪を植設してなるかつら。
【請求項8】
前記外縁部及び前記内側部がネットからなるかつらベースで、該ネットの稜線である結び糸が前記植設区画と重なり合うかつらでは、この結び糸に植設される毛髪が、重なり合う前記外縁部区画の色と同一色の毛髪を前記植設区画の下端部、右端部および上端部に植設するものからなることを特徴とする請求項1乃至5に記載のいずれか1つである複数色の毛髪を植設してなるかつら。
【請求項9】
前記外縁部及び内側部がネットからなるかつらベースで、該ネットの稜線である結び糸が前記植設区画と重なり合うかつらでは、この結び糸に植設される毛髪が重なり合う植設区画がない前記外縁部においては、斜め下の植設区画の色と同一色の毛髪を下端部、右端部および上端部に植設するものからなることを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載のいずれか1つである複数色の毛髪を植設してなるかつら。
【請求項10】
軟質合成樹脂の人工皮膚、又は合成樹脂のネットからなるかつらベースにおいて、
該かつらベースの外周線と該外周線の内側に所定の間隔を介してほぼ同心に形成される内周線との間に形成される外縁部と、前記内周線の内側に形成される内側部とを有し、
複数色の毛髪を決められた配列順に順次植設するための植設区画を前記外縁部及び前記内側部に仮想形成するかつらであって、前記植設区画が前記外縁部に一定の間隔で形成される外縁部区画と上記内側部に縦横に形成される内側部区画とからなり、
植設する前記毛髪が前記外縁部区画に前記配列順に植設される毛髪と、前記内側部区画に斜め方向に同一色の毛髪を順次植設される毛髪とからなり、前記複数色の毛髪が、相対的に明るい色から順番に配列されることを特徴とする複数色の毛髪を植設してなるかつらの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−9338(P2007−9338A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−187842(P2005−187842)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000126676)株式会社アデランス (49)