説明

複数部材の接合構造

【課題】複数部材同士を、正規の姿勢に安価に接合することができる複数部材の接合構造を提供する。
【解決手段】複数部材の接合構造100は、第1平面部111を直角に貫通する第1貫通孔112が形成された第1部材110と、第2平面部121を直角に貫通する第2通孔122が形成された第2部材120と、第1貫通孔112および第2貫通孔122に挿入され、第1平面部111と第2平面部121とを接合する接合用ボルト130と、を有している。第1貫通孔112は、所定の正規中心Aから所定の正規半径の仮想正規円113を仮定した際、仮想正規円113上の位置Bに分散配置された接合用ボルト130に正規中心Aから最も近い位置Cで接するように形成され、第2貫通孔122は、同様に分散配置された接合用ボルト130に正規中心Aから最も遠い位置Dで接するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数部材の接合構造、特に、土木・建築や機械における構造材(構造物)を構成する部材同士を接合する、複数部材の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、地盤に立坑や横抗(トンネル)を構築する際、複数の波状鋼板を接合した筒状体が構築されている。そして、かかる筒状体を補強(補剛を含む)するために、複数のH形鋼のウエブを筒状体に接合すると共に、H形鋼のフランジ同士を互いに接合した環状の補強体(補強リングに同じ)が設置されている。
このとき、H形鋼のフランジは、立坑の内側と地山側との両側にそれぞれ配置される内側継手板と地山側継手板とを介して接合されるため、地山側継手板の取り付け作業(地山側フランジ同士の接合作業に同じ)が困難になるという問題があった。
そこで、かかる問題を解消するために、地山側継手板をフランジ高さより大きな高さにして、地山側フランジの下方に突出させ、地山側継手板に形成されたボルト貫通孔を立坑の内側から直接視認可能、すなわち、ボルトを視認しながらの接合作業を可能にする発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−3781号公報(第3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された発明は、立坑内において、補強部材であるH形鋼同士の接合を容易かつ迅速にするという顕著な効果を奏するものの、地上において、H形鋼の地山側フランジに、地山側継手板をボルト/ナットを用いて設置するため、ボルトとボルト貫通孔とのクリアランスに起因するガタによって、地山側継手板が正規の位置に設置されないという新たな問題が生じていた。
【0005】
なお、2部材同士を、互いの位置関係を正確に接合するには、一般的に位置決めピンと位置決め孔、あるいは位置決めストッパーと位置決め当接面、等の技術が周知されている。
しかしながら、かかる周知技術を前記補強体に適用しようとすると、一方の部材に位置決めピンを正確に設置したり、他方の部材に位置決め孔を正確に加工したりする必要が生じるため、製造コストが上昇するという問題があった。また、位置決めピンを位置決め孔に嵌入する作業が困難なため、施工時間が延長するという問題があった。さらに、設置された位置決めピンをハンドリング中に、あるいは、位置決め孔に嵌入している位置決めピンを施工中に(一方の部材の姿勢が変動した際)、損傷させるという問題があった。
そして、位置決めストッパーと位置決め当接面の技術においても、同様の問題があった。
【0006】
本発明は、前記周知技術における問題を解決するものであって、複数部材同士を、正規の姿勢に、しかも安価に接合することができる複数部材の接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る複数部材の接合構造は、第1平面部が形成された第1部材と、前記第1平面部に当接する第2平面部を具備する第2部材と、前記第1平面部と前記第2平面部とを接合する少なくとも3本の接合用ボルトと、該接合用ボルトに螺合する接合用ナットと、を有する複数部材の接合構造であって、
前記第1部材には、前記第1平面部に直角で前記第1部材を貫通し、前記接合用ボルトが挿入自在な第1貫通孔が形成され、
前記第2部材には、前記第2平面部に直角で前記第2部材を貫通し、前記接合用ボルトが挿入自在な第2貫通孔が形成され、
前記第1貫通孔は、前記第1部材に所定の正規中心から所定の正規半径の仮想正規円を仮定した際、該仮想正規円上に分散配置された前記接合用ボルトに前記正規中心から最も遠い位置で接するように形成され、
前記第2貫通孔は、前記仮想正規円上に分散配置された前記接合用ボルトに前記正規中心から最も近い位置で接するように形成されていることを特徴とする。
【0008】
(2)また、前記(1)において、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔が、前記分散配置された接合用ボルトに所定のクリアランスを介して接することを特徴とする。
【0009】
(3)また、前記(1)または(2)において、前記第1部材または前記第2部材の一方または両方に、第3部材が接合されることを特徴とする。
【0010】
(4)また、前記(3)において、面状構造物に前記第1部材および第4部材が設置され、前記第1部材に接合された前記第2部材を、前記第4部材に連結することによって、前記第1部材、前記第2部材および前記第4部材からなる連結体が前記面状構造物を補強することを特徴とする。
【0011】
(5)さらに、本発明に係る複数部材の接合構造は、円弧状に形成された第1H形鋼と第2H形鋼とが連結手段によって連結され、前記第1H形鋼のウエブおよび前記第2H形鋼のウエブに面状構造物の端部が接続された、複数部材の接合構造であって、
前記連結手段が、少なくともスペーサー、継手板および連結板を具備し、
前記第1H形鋼のフランジのうち凸面側に位置する第1フランジの端部に、前記スペーサーおよび前記継手板を設置するための少なくとも3本の第1ボルトが、それぞれ貫通する第1フランジ孔が形成され、
前記第2H形鋼のフランジのうち凸面側に位置する第2フランジの端部に、前記連結板を設置するための第2ボルトが貫通する第2フランジ孔と、前記継手板と前記連結板とを連結するための第3ボルトが貫通する第3フランジ孔と、が形成され、
前記連結板は、前記第2フランジの端部に当接する第2フランジ当接範囲と、該第2フランジ当接範囲に形成された前記第2ボルトが貫通する第2連結孔と、前記第2フランジの高さ方向に突出して形成された連結突出範囲と、該連結突出範囲に形成された前記第3ボルトが貫通する第3連結孔と、を具備し、
前記スペーサーは、前記第1フランジの端部に当接する略矩形状であって、前記第1ボルトが貫通するスペーサー孔を具備し、
前記継手板は、前記スペーサーに当接するスペーサー当接範囲と、該スペーサー当接範囲に形成された少なくとも3本の第1ボルトがそれぞれ貫通する第1継手孔と、前記フランジの長手方向および高さ方向に突出する継手突出範囲と、該継手突出範囲に形成された前記第3ボルトが貫通する第3継手孔と、を具備し、
前記第1フランジ孔は、前記第1フランジに所定の正規中心から所定の正規半径の仮想正規円を仮定した際、該仮想正規円上に分散配置された前記第1ボルトに前記正規中心から最も遠い位置で接するように形成され、
前記第1継手孔は、前記仮想正規円上に分散配置された前記第1ボルトに前記正規中心から最も近い位置で接するように形成されていることを特徴とする。
【0012】
(6)さらに、本発明に係る複数部材の接合構造は、円弧状に形成された複数のH形鋼が連結手段によって連結され、前記H形鋼のウエブに面状構造物の端部が接続された、複数部材の接合構造であって、
前記連結手段が、少なくともスペーサー、継手板および連結板を具備し、
前記H形鋼のフランジのうち凸面側に位置するフランジの一方の端部に、前記スペーサーおよび前記継手板を設置するための少なくとも3本の第1ボルトが、それぞれ貫通する第1フランジ孔が形成され、
前記H形鋼のフランジのうち凸面側に位置するフランジの他方の端部に、前記連結板を設置するための第2ボルトが貫通する第2フランジ孔と、前記継手板と前記連結板とを連結するための第3ボルトが貫通する第3フランジ孔と、が形成され、
前記連結板は、前記第2フランジの端部に当接する第2フランジ当接範囲と、該第2フランジ当接範囲に形成された前記第2ボルトが貫通する第2連結孔と、前記第2フランジの高さ方向に突出して形成された連結突出範囲と、該連結突出範囲に形成された前記第3ボルトが貫通する第3連結孔と、を具備し、
前記スペーサーは、前記第1フランジの端部に当接する略矩形状であって、前記第1ボルトが貫通するスペーサー孔を具備し、
前記継手板は、前記スペーサーに当接するスペーサー当接範囲と、該スペーサー当接範囲に形成された少なくとも3本の第1ボルトがそれぞれ貫通する第1継手孔と、前記フランジの長手方向および高さ方向に突出する継手突出範囲と、該継手突出範囲に形成された前記第3ボルトが貫通する第3継手孔と、を具備し、
前記第1フランジ孔は、前記フランジに所定の正規中心から所定の正規半径の仮想正規円を仮定した際、該仮想正規円上に分散配置された前記第1ボルトに前記正規中心から最も遠い位置で接するように形成され、
前記第1継手孔は、前記仮想正規円上に分散配置された前記第1ボルトに前記正規中心から最も近い位置で接するように形成されていることを特徴とする。
【0013】
(7)また、前記(5)または(6)において、前記第1フランジ孔が、前記分散配置された第1ボルトに前記正規中心から最も遠い位置で接するに替えて、前記分散配置された第1ボルトに前記正規中心から最も近い位置で接すると共に、前記継手孔が、前記分散配置された第1ボルトに前記正規中心から最も近い位置で接するに替えて、前記分散配置された第1ボルトに前記正規中心から最も遠い位置で接することを特徴とする。
【0014】
(8)また、前記(5)乃至(7)の何れかにおいて、前記第1フランジ孔および前記継手孔が、前記分散配置された第1ボルトに所定のクリアランスを介して接することを特徴とする。
【0015】
(9)また、前記(5)において、前記継手板に、前記第1フランジの上縁に当接するストッパーが設置されることを特徴とする。
【0016】
(10)また、前記(6)において、前記継手板に、前記フランジの上縁に当接するストッパーが設置されることを特徴とする。
【0017】
(11)また、前記(5)乃至(7)の何れかにおいて、前記面状構造物が、複数枚の波状鋼板を互いに接合して形成された断面円弧状または断面円環状であることを特徴とする。
【0018】
(12)さらに、前記(5)における円弧状に形成された第1H形鋼と第2H形鋼とに替えて、第1H形鋼または第2H形鋼の一方が直線状に形成されていることを特徴とする。
【0019】
(13)さらに、前記(6)における円弧状に形成された複数のH形鋼に替えて、直線状に形成されたH形鋼と円弧状に形成されたH形鋼とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
(i)本発明に係る複数部材の接合構造は前記連結手段を有するから、以下の効果を奏する。すなわち、前記第1部材には、前記第1平面部に直角で前記第1部材を貫通し、前記接合用ボルトが挿入自在な第1貫通孔が形成され、一方、前記第2部材には、前記第2平面部に直角で前記第2部材を貫通し、前記接合用ボルトが挿入自在な第2貫通孔が形成されている。
そして、前記第1貫通孔は、前記第1部材に所定の正規中心から所定の正規半径の仮想正規円を仮定した際、該仮想正規円上に分散配置された前記接合用ボルトに前記正規中心から最も遠い位置で接するように形成され、一方、前記第2貫通孔は、前記仮想正規円上に分散配置された前記接合用ボルトに前記正規中心から最も近い位置で接するように形成されている。
【0021】
したがって、接合用ボルトに接合用ナットを螺合して締め込み、第1平面部と第2平面部とを互いに当接させたとき、接合用ボルトは第1平面部および第2平面部に対して直角になって、第1貫通孔と接合用ボルトとの当接位置および接合用ボルトと第2貫通孔との当接位置は、それぞれの大きさ(内径または外径)に関わらず、正規中心からの同一の放射線上に位置する。
このとき、接合用ボルトは分散配置されているから、一方の部材は他方の部材の正規中心に向かって引き寄せられ、すなわち、接合用ボルトのそれぞれにおいて、第1貫通孔と第2貫通孔とは正規中心からの放射方向に並ぶように移動するから、互いに正規の姿勢において接合される(これについては、別途詳細に説明する)。
なお、第1貫通孔と第2貫通孔とが正規中心からの放射方向に並ぶように移動するには、第1平面部および第2平面部が文字通り平面(断面直線状)に限定されるものではないから、本発明において、第1平面部および第2平面部は、円筒面の一部あるいは球面の一部を含むものである。
【0022】
また、第1貫通孔や第2貫通孔の内径を、接合用ボルトの外径に対して十分大きくして、第1部材と第2部材とが離れた状態における接合用ボルトの挿入を容易にしても、前記のように、第1平面部と第2平面部とが当接したときには、両者は正規の姿勢に確実に保持されるから、姿勢精度と共に、作業性が向上する。
また、前記周知技術のような、位置決めピンや位置決め孔を設置することによる問題や、位置決めピンを位置決め孔に嵌入する作業をすることによる問題や、位置決めピンの損傷等の問題は、当然に生じない。
【0023】
なお、本発明において分散配置とは、円周上の等角配置だけでなく、接合用ボルトにそれぞれ正規中心方向の力が作用したとき、これらの作用した力(ベクトル)の合力を0(ゼロ)にすることができるような配置形態を意味している。
なお、本発明は、第1部材および第2部材の形状や大きさを限定するものではない。また、接合用ボルトは、第1貫通孔や第2貫通孔に当接(摺動)する範囲が円筒であってもよく、さらに、第1貫通孔および第2貫通孔に挿入される円筒ピンと、第1平面部と第2平面部とを接合させる連結手段との2部品によって形成されてもよい。
なお、本発明は第1部材および第2部材の形状や大きさを限定するものではなく、たとえば、一方または両方が平板、あるいは断面L字材や断面H字材等であってもよい。
【0024】
(ii)また、第1貫通孔および第2貫通孔が接合用ボルトに所定のクリアランスを介して接する。このため、第1貫通孔または第2貫通孔の一方または両方の位置が僅かに変位した場合(加工精度が悪化した場合)であっても、第1部材と第2部材とを略正規の姿勢に接合することができる。このとき、接合用ボルトの軸心は第1平面部および第2平面部の法線方向に同じであって、倒されることがないから、接合用ボルトは曲げられることがなく、ネジ山の変形が防止または低減される。
【0025】
(iii)また、第1部材または第2部材の一方または両方に第3部材が接合されるから、前記効果を奏すると共に、第1部材は第2部材と第3部材と接合する継手とし機能し、あるいは、第2部材は第1部材と第3部材と接合する継手とし機能する。なお、本発明は、第3部材との接合形態を限定するものではなく、機械的手段(ボルト/ナット、コッタ等)、冶金的手段(溶接)、化学的手段(接着剤)等、何れであってもよい。
なお、本発明は第1部材等の形状や大きさを限定するものではないから、たとえば、第1部材または第3部材の一方または両方を断面L字材や断面H字材等にして、第2部材を平板にしてもよい。
【0026】
(iv)また、第1部材および第4部材が面状構造物に設置され、第1部材、第2部材および第4部材からなる連結体(補強体に相等する)によって、面状構造物が補強されるから、面状構造物自体の強度や剛性を低くしても、連結体が設置された面状構造物全体(複数部材の接合構造に同じ)は、所定の強度や剛性を有するものにすることができる。よって、構造物全体を安価、且つ、迅速に施工することが可能になる。
【0027】
(v)さらに、本発明に係る複数部材の接合構造は前記連結手段を有するから、以下の効果を奏する。すなわち、H形鋼の地山側のフランジの一方の端部において正規中心から正規半径の仮想正規円上に前記第1ボルトが分散配置された際、該分散配置された第1ボルトに前記正規中心から最も遠い位置で接する第1フランジ孔が前記フランジに形成され、一方、継手板には、前記分散配置された第1ボルトに前記正規中心から最も近い位置で接する第1継手孔が前記継手板に形成されている。
したがって、第1ボルトに第1ナットを螺合して締め込み、フランジ、スペーサーおよび継手板を互いに当接させたとき、第1ボルトはフランジに対して直角になって、第1フランジ孔と第1ボルトとの当接位置および第1ボルトと継手孔との当接位置は、それぞれの大きさ(内径または外径)に関わらず、正規中心からの同一の放射線上に位置する。
【0028】
このとき、第1ボルトは分散配置されているから、継手板は前記フランジの正規中心に向かって引き寄せられ、前記フランジに対して(分散配置された第1ボルトとの関係において)正規の姿勢に確実に保持される。
また、フランジ孔や第1ボルト孔の内径を、第1ボルトの外径に対して十分大きくして、フランジと継手板とが離れた状態における第1ボルトの挿入を容易にしても、前記のように、フランジ、スペーサーと継手板とが当接したときには、継手板は正規の姿勢に確実に保持されるから、姿勢精度と共に、作業性が向上する。
なお、本発明において分散配置とは、円周上の等角配置だけでなく、第1ボルトにそれぞれ正規中心方向の力が作用したとき、これらの作用した力(ベクトル)の合力を0(ゼロ)にすることができるような配置形態を意味している。
【0029】
(vi)また、第1フランジ孔および第1継手孔が第1ボルトに所定のクリアランスを介して接する。このため、第1フランジ孔または継手孔の一方または両方の位置が僅かに変位した場合(加工精度が悪化した場合)であっても、前記フランジ、スペーサー板および継手板を互いに当接することができる。このとき、第1ボルトの軸心は前記フランジ等の法線方向に同じであって、倒されることがないから、作業が容易であって、第1ボルトのネジ山が損傷することもない。
(vii)また、継手板にH形鋼のフランジ(地山側フランジ)の上縁に当接するストッパーが設置されるから、継手板の設置作業が容易になる。
【0030】
(viii)また、面状構造物が、複数枚の波状鋼板を互いに接合して形成された断面円弧状または断面円環状であるから、面状構造物自体の強度や剛性を低くしても、第1H形鋼等が設置された構造物全体(複数部材の接合構造に同じ)としては、補強されて所定の強度や剛性を有することができる。よって、構造物全体を安価、且つ、迅速に施工することが可能になる。なお、円弧状とは、曲率半径が相違する複数の面部分が接合されたような歪んだ円弧を含む。
【0031】
(ix)さらに、第1H形鋼または第2H形鋼の一方が直線状に形成されているから、あるいは、直線状に形成されたH形鋼と円弧状に形成されたH形鋼とを有するから、当該複数部材の接合構造が設置される面状構造物の形状の自由度が増す。すなわち、たとえば、一部に直線状(平面状)部分を有する小判形の面状構造物にも設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態1に係る複数部材の接合構造を説明する、側面視の断面図および位置決め原理を説明する平面図。
【図2】本発明の実施の形態2に係る複数部材の接合構造(立坑)を示す断面図。
【図3】本発明の実施の形態3に係る複数部材の接合構造(補強体)を説明する、一部(第1H形鋼、第2H形鋼)を模式的に示す側面図。
【図4】図3に示す複数部材の接合構造の一部(連結手段)を示す斜視図。
【図5】図3に示す複数部材の接合構造の構成部材を分離して示す斜視図。
【図6】図3に示す複数部材の接合構造の構成部材を分離して示す斜視図。
【図7】図3に示す複数部材の接合構造の地上における事前組立状況を説明する断面図。
【図8】図3に示す複数部材の接合構造の連結手段における、継手板の位置決めの原理を説明するための模式的に示す側面図。
【図9】実施例の位置決め状況を模式的に示す側面図。
【図10】本発明の実施の形態4に係る複数部材の接合構造(補強体)を説明する側面図。
【図11】本発明の実施の形態5に係る複数部材の接合構造の一部(連結手段)を模式的に示す斜視図。
【図12】図11に示す複数部材の接合構造の一部(継手板)のバリエーションを模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1に係る複数部材の接合構造を模式的に示すものであって、(a)は側面視の断面図、(b)は位置決め原理を説明する模式的に示す平面図である。 図1において、複数部材の接合構造100は、第1平面部111が形成された第1部材110と、第1平面部111に当接する第2平面部121を具備する第2部材120と、第1平面部111と第2平面部121とを接合する少なくとも3本の接合用ボルト130a、130b、130cと、接合用ボルト130a、130b、130cに螺合する接合用ナット140a、140b、140cと、を有する。
なお、以下、共通する内容については符号の添え字「a、b、c」の記載を省略して説明する。
【0034】
第1部材110には、第1平面部111に直角で第1部材110を貫通し、接合用ボルト130が挿入自在な第1貫通孔112が形成されている。このとき、第1貫通孔112は、第1部材110に所定の正規中心Aから所定の正規半径の仮想正規円113を仮定した際、仮想正規円113上の位置Bに分散配置された接合用ボルト130に正規中心Aから最も近い位置Cで接するように形成されている。
なお、正規中心Aを通過する基準センターラインに対して、正規中心Aと接合用ボルト130aの中心Baを結ぶ線は正規角度θaをなし、同様に、正規中心Aと接合用ボルト130bの中心Bbを結ぶ線は正規角度θbをなし、正規中心Aと接合用ボルト130cの中心Bcを結ぶ線は正規角度θcをなす。
一方、第2部材120には、第2平面部121に直角で第2部材120を貫通し、接合用ボルト130が挿入自在な第2貫通孔122が形成されている。このとき、第2貫通孔122は、第2部材120に所定の正規中心Aから所定の正規半径の仮想正規円123を仮定した際、仮想正規円123上の位置B(仮想正規円113の位置Bに一致する)に分散配置された接合用ボルト130に正規中心Aから最も遠い位置Dで接するように形成されている。
【0035】
(位置決め原理)
すなわち、接合用ボルト130のねじ山径の半分を「RB」と、正規中心Aを中心とした所定の正規半径の半径を「RS」とすると、第1貫通孔112は接合用ボルト130に正規中心Aから最も近い位置Cで接するから、正規中心Aから位置Cまでの距離は「RS−RB」となる。そして、第1貫通孔112の内周の半径を「R1」とすると、第1貫通孔112の正規中心Aからの距離は「RS−RB+R1」となる。
同様に、第2貫通孔122は接合用ボルト130に正規中心Aから最も遠い位置Dで接するから、正規中心Aから位置Dまでの距離は「RS+RB」となる。そして、第2貫通孔122の内周の半径を「R2」とすると、第2貫通孔122の正規中心Aからの距離は「RS+RB−R2」となる。
【0036】
(位置決め動作)
第1貫通孔112の内周の半径を「R1」および第2貫通孔122の内周の半径を「R2」は、いずれも接合用ボルト130のねじ山径の半分を「RB」より大きいから、第1平面部111と第2平面部121とを離した状態で、接合用ボルト130を第1貫通孔112および第2貫通孔122に挿入することは容易である。すなわち、第1貫通孔112と第2貫通孔122との位相が相違する(たとえば、第1平面部111の法線方向から眺めたとき、両者の中心が一致していない)場合であっても、接合用ボルト130はそれぞれ第1平面部111に対して傾いて、第1貫通孔112および第2貫通孔122に挿入される。
【0037】
さらに、第1貫通孔112および第2貫通孔122に挿入された接合用ボルト130に接合ナット140を螺合して、第1平面部111と第2平面部121とを近づけ、やがて当接すると、第1貫通孔112は接合用ボルト130に正規中心Aから近い位置で当接し、一方、第2貫通孔122は接合用ボルト130に正規中心Aから遠い位置で当接し、接合用ボルト130は第1平面部111(第2平面部121に同じ)に対して直角になる。
このとき、第1部材において仮定した仮想正規円113の中心と、第2部材において仮定した仮想正規円123の中心とは一致し、仮想正規円113と仮想正規円123とは重なることになる。よって、第1貫通孔112と第2貫通孔122との相対位置が一義的に規定されるから、第1部材と第2部材とは正規位置に配置されることになる。
【0038】
なお、接合用ボルト130は、ネジ部分が第1貫通孔112または第2貫通孔122の一方または両方に挿入されてもよいし、ネジ部分が挿入されないで、円筒状部分が第1貫通孔112または第2貫通孔122の一方または両方に挿入されるものであってもよい。
また、本発明は、前記位置決め原理を満たすものであれば接合用ボルト130の本数を3本に限定するものではない。このとき、接合用ボルト130は、それぞれに正規中心Aの方向の力が作用したとき、これらに作用した力(ベクトル)の合力を0(ゼロ)にすることができる位置に配置される。
【0039】
また、第1平面部111と第2平面部121とが当接した際、第1平面部111(第2平面部121に同じ)に対して直角になった接合用ボルト130が、第1貫通孔112の内周または第2貫通孔122の内周の一方との間に所定のクリアランスが形成される形態に設計したものであってもよい。
このとき、実際の施工では、接合用ボルト130が第1貫通孔112の内周および第2貫通孔122の内周に当接するから、かかる所定のクリアランスの分だけ、第1部材と第2部材の位置は偏位して(ズレて)いる。すなわち、かかる偏位が実際の使用において支障が無い場合、かかるクリアランスを設計上設けることによって、第1貫通孔や第2貫通孔の形成位置にバラツキが生じた場合(加工精度が悪化した場合)でも、接合用ボルト130に曲げ力が作用しないようにすることができる。
【0040】
また、本発明は、第1部材110および第2部材120の形状や大きさを限定するものではなく、それらの一方または両方に、第3部材が接合されてもよい。
さらに、第1部材110が面状構造物に設置され、第4部材が該面状構造物に設置され、第1部材に接合された第2部材を、前記第4部材に連結することによって、第1部材、第2部材および第4部材からなる連結体が、前記面状構造物を補強するようにしてもよい。
【0041】
[実施の形態2:立坑]
図2は本発明の実施の形態2に係る複数部材の接合構造を模式的に示すものであって、(a)は左半分が外観を右半分が断面を示す側面図、(b)は一部を拡大して示す断面図である。なお、図2は複数部材の接合構造として立坑を例示するものであって、構成を模式的にかつ誇張して描いているから、その構成部材の数量や大きさ、あるいは波形形状等は、図示する形態に限定するものではない。
図2において、立坑1は、地盤に形成された掘削孔8の内部に設置されるものであって、複数の円弧状の波状鋼板2を互いに接合して形成された筒状体(面状構造物に相等する)3と、筒状体3を補強する補強体(連結体に相等する)4と、を有する。
そして、補強体4は、複数のH形鋼5と、H形鋼5の地山側フランジ5a同士および立坑内側フランジ5b同士を連結する連結手段(これについては、別途詳細に説明する)と、を有し、該連結手段によって環状に形成されている。また、H形鋼5のウエブ5cには、筒状体3の端部3f(フランジ等)が接続されている。
【0042】
[実施の形態3:補強体]
図3〜図6は本発明の実施の形態3に係る複数部材の接合構造を説明するものであって、図3の(a)は一部(第1H形鋼)を模式的に示す側面図、図3の(b)は一部(第2H形鋼)を模式的に示す側面図、図4は一部(連結手段)を模式的に示す斜視図、図5および図6はそれぞれ構成部材を分離して模式的に示す斜視図である。
実施の形態3は、複数部材の接合構造として補強体4を例示するものであって、複数のH形鋼5(以下、説明の便宜上、第1H形鋼10、第2H形鋼20と称す)とが連結手段6によって相互に環状に連結されたものである(図2および図4参照)。なお、図4において、第1H形鋼10のウエブ13および第2H形鋼20のウエブ23には筒状体3の端部3fが接続されているが、理解を容易にするため、筒状体3を描いていない。
【0043】
(事前組立)
図3の(a)において、地上における事前組立によって、第1H形鋼10の地山側フランジ(筒状体3の外面側のフランジに同じ)11の一方の端部には継手板40aが、第1ボルトB1および第1ナットN1によって設置され、他方の端部には継手板40bが、第1ボルトB1および第1ナットN1によって設置され、第1補強部材4aが形成される。
図3の(b)において、地上における事前組立によって、第2H形鋼20の地山側フランジ21の一方の端部には連結板50aが、第2ボルトB2および第2ナットN2によって設置され、他方の端部には継手板40bが、第1ボルトB1および第1ナットN1によって設置され、第2補強部材4bが形成される。
なお、継手板40aと継手板40b、および連結板50aと連結板50bとは、面対称の形態であるから、以下、添え字「a、b」の記載を省略して説明する。
【0044】
(本組立)
図4に示すように掘削孔内において、第1補強部材4aと第2補強部材4bとが連結手段6によって連結される。すなわち、継手板40と連結板50とが第3ボルトB3および第3ナットN3によって連結されている。また、第2H形鋼20の地山側フランジ21と継手板40と連結板50との3枚が、第6ボルトB6および第6ナットN6によって一体化されている。さらに、第1H形鋼10の立坑内側フランジ12と第2H形鋼20の立坑内側フランジ22とが、内側連結板60によって連結されている。
つまり、連結手段6は、スペーサー30、継手板40、連結板50、内側連結板60、および第1ボルトB1および第1ナットN1等から構成される。
【0045】
(第1H形鋼、第2H形鋼)
図5の(a)において、第1H形鋼10の地山側フランジ11および立坑内側フランジ12の両端部には、それぞれウエブ13を跨いで正方配置された第1フランジ孔H11(第1ボルトB1が貫通自在)および第4フランジ孔H14(第4ボルトB4が貫通自在)が形成されている。
図5の(b)において、第2H形鋼20の地山側フランジ21の端部には、ウエブ23の一方側(上側)に第2フランジ孔H22(第2ボルトB2が貫通自在)とウエブ23の他方側(下側)に第6フランジ孔H26(第6ボルトB6が貫通自在)が形成されている。また、第2H形鋼20の立坑内側フランジ22には、第5フランジ孔H25(第5ボルトB5が貫通自在)が形成されている。
【0046】
(スペーサー)
図6の(a)において、スペーサー30は、地山側フランジ11の端部に当接する略矩形状であって、第1フランジ孔H11と同様に正方配置されたスペーサー孔31(第1ボルトB1が貫通自在)が形成されている。なお、スペーサー30の板厚は、連結板50の板厚に略同一である。
【0047】
(継手板)
図6の(b)において、継手板40が、スペーサー30に当接するスペーサー当接範囲41と、第1H形鋼10の端部から長手方向およびフランジ高さ方向の両方に向けて突出した継手突出範囲45(連結板50に当接する)とを具備している。
そして、スペーサー当接範囲41には、正方配置された第1継手孔H41(第1ボルトB1が貫通する)が形成されている。また、継手突出範囲45には、正方配置された第6継手孔H46(第6ボルトB6が貫通する)および第3継手孔H43(第3ボルトB3が貫通する)が形成されている。
このとき、継手板40に正方配置された第1継手孔H41の中心間距離(辺の長さまたは対角線の長さ)は、地山側フランジ11に正方配置された第1フランジ孔H11の中心間距離より短くなっている(これについは、別途詳細に説明する)。
【0048】
(連結板)
図6の(c)において、連結板50が、第2H形鋼20の地山側フランジ21の端部に当接する第2フランジ当接範囲52と、フランジ高さ方向に突出する連結突出範囲54(継手板40の継手突出範囲45が当接する)と、を具備している。
そして、第2フランジ当接範囲52には、地山側フランジ21に形成された第2フランジ孔H22および第6フランジ孔H26に対応した第2連結孔H52(第2ボルトB2が貫通する)および第6連結孔H56(第6ボルトB6が貫通する)が形成されている。さらに、連結突出範囲54には第3連結孔H53(第3ボルトB3が貫通する)が形成されている。
【0049】
(内側連結板)
図6の(d)において、内側連結板60が、第1H形鋼10の立坑内側フランジ12の端部に当接する第1内側フランジ当接範囲61と、第2H形鋼20の立坑内側フランジ22の端部に当接する第2内側フランジ当接範囲62と、を具備している。
そして、第1内側フランジ当接範囲61に第4フランジ孔H14に対応した第4フランジ孔H64が形成され、第2内側フランジ当接範囲62に第5フランジ孔H25に対応した第5フランジ孔H65(第5ボルトB5が貫通自在)が形成されている。
【0050】
(実施例)
図7は、本発明の実施の形態3に係る複数部材の接合構造の地上における事前組立状況を説明する断面図であって、(a)は事前組立初期、(b)は(a)の一部を拡大して示す事前組立初期、(c)は事前組立終期、(d)は(c)の一部を拡大して示す事前組立終期である。
このとき、第1H形鋼の地山側フランジ11に形成された第1フランジ孔H11の中心は、一辺の長さが65mmの正方形の角に位置し、その内径が25mmである。一方、継手板40に形成された第1継手孔H41の中心は、一辺の長さが60mmの正方形の角に位置し、その内径が23mmである。そして、第1ボルトB1は「M20」である。
【0051】
図7の(a)および(b)において、地山側フランジ11、スペーサー30および継手板40はそれぞれの間に隙間を空けて対向している。このとき、第1フランジ孔H11の孔間隔よりも第1継手孔H41の孔間隔は狭くなっているから、第1ボルトB1がそれぞれの孔の中心に挿入された場合、第1ボルトB1同士は平行になることがない。
図6の(c)および(d)において、第1ボルトB1に第1ナットN1を螺合して締め込むと、地山側フランジ11に継手板40は除々に近接し、ついにはスペーサー30を挟圧して三者は一体化されている。そして、第1ボルトB1は、第1フランジ孔H11の中心および第1継手孔H41の中心から変位して、第1フランジ孔H11の内周または第1継手孔H41に当接して、地山側フランジ11等に対して直角、すなわち、それぞれの第1ボルトB1は互いに、平行になっている。
【0052】
このとき、第1ボルトB1の中心は、第1フランジ孔H11の中心を結ぶ一対の対角線上にある。また、該対角線の交点を正規中心とすると、第1ボルトB1は、該対角線と第1フランジ孔H11の内周とが交差する正規中心に近い位置と、該対角線と第1継手孔H41の内周とが交差する正規中心に遠い位置と、に当接している。すなわち、第1ボルトB1および第1ナットN1は、地山側フランジ11と継手板40とを近接する際、継手板40を正規中心寄りに4方向から引き寄せ、ついに、正規の姿勢に確実に設置している。
【0053】
さらに、連結板50に形成された第3連結孔H53の中心は、一辺の長さが65mmの正方形の角に位置し、その内径が25mmである。
一方、継手板40に形成された第3継手孔H43および第6継手孔H46は、一辺の長さが65mmの正方形の角に位置し、上下方向が25mmで、長手方向(水平方向)が30mmの長孔である。
したがって、前記のように、地上において、第1補強部材10に継手板40が容易かつ確実に、正規の姿勢に設置されているから、掘削孔8内において、補強体4を組み立てる際、施工が容易になっている。仮に、水平方向の施工誤差があっても、これを前記長孔によって吸収することが可能になっている。
【0054】
(位置決めの原理)
図8は、本発明における連結手段6について、継手板40の位置決めの原理を説明する模式的に示す側面図である。なお、本発明は第1ボルトB1の本数は3本以上であればその本数を限定するものではないから、以下、3本の場合について説明する。
図8において、3本の第1ボルトB1(外周の半径をRBとする)は、正規中心Aを中心とした所定の正規半径(RS)の仮想正規円(一点鎖線にて示す)上に分散配置されている。そして、第1フランジ孔H11の内周(内径の半径をRFとする)が第1ボルトB1に正規中心Aから最も近い位置Cで接している。すなわち、第1フランジ孔H11の中心は、正規中心からの放射線上にあって、正規中心Aから距離「RS−RB+RF」に位置している。
【0055】
一方、第1継手孔H41の内周(内径の半径をRTとする)が第1ボルトB1に正規中心Aから最も遠い位置Dで接している。すなわち、第1継手孔H41の中心は、正規中心からの放射線上にあって、正規中心Aから距離「RS+RB−RT」に位置している。
すなわち、正規位置に分散配置された3本の第1ボルトB1によって、第1フランジ孔H11と第1継手孔H41との相対位置は、一義的に決定されるから、地山側フランジ11に対して継手板40は正規の姿勢に維持されることになる。
【0056】
(実施例の位置決め状況)
図9は、前記実施例の位置決め状況を模式的に示すものであって、図8に説明する位置決めの原理に基づいて各寸法を記載した側面図ある。
図9において、実施例は、内径25mmの第1フランジ孔H11が一辺の長さが65mmの正方形の角に位置し、内径23mmの第1継手孔H41が一辺の長さが60mmの正方形の角に位置している。
したがって、それぞれの対角線の交点を正規中心Aとすると、正規中心Aから放射方向で、該放射線と第1フランジ孔H11の内周とが交差する正規中心Aに近い位置Cは、正規中心Aから「距離33.46mm」にあり、該放射線と第1継手孔H41の内周とが交差する正規中心Aに遠い位置Dは、正規中心Aから「距離53.93mm」ある。
そして、両者の間には「53.93−33.46=20.47(mm)」の間隔が形成され、該間隔に第1ボルトB1(M20、山径=20mm)が配置されている。
【0057】
すなわち、第1ボルトB1の中心Bは正規中心Aから「(53.93+33.46)/2=43.70(mm)」の距離にあり、第1フランジ孔H11の内周および第1継手孔H41の内周に片側「(20.47−20.00)/2=0.24(mm)」のクリアランスを空けて接している。このことは、第1ボルトB1が第1フランジ孔H11の内周に当接した場合、第1継手孔H41の内周との間に「0.47mm」のクリアランスができ、第1ボルトB1が第1継手孔H41の内周に当接した場合、第1フランジ孔H11の内周との間に「0.47mm」のクリアランスができることに同じである。
したがって、第1フランジ孔H11または第1継手孔H41の内径や位置の精度が悪化して、正規に形成されていない場合であっても、第1ボルトB1は、地山側フランジ11等に対して直角の姿勢を維持しながら(倒れることなく)、継手板40を正規位置に配置することができる。
【0058】
なお、前記原理の説明から明らかなように、内径23mmの第1フランジ孔H11を一辺の長さが60mmの正方形の角に位置し、内径25mmの第1継手孔H41を一辺の長さが65mmの正方形の角に位置しても、同様の作用効果が得られる。また、正方形の角の位置に替えて、長方形や台形の角の位置であってもよい。
さらに、前記クリアランス値は「0.24mm」に限定するものではなく、加工精度等に応じて適宜選定されるものである。また、第1継手孔H41および第1継手孔H41の内径の大きさ、あるいは第1ボルトB1のサイズについても、作業性や継手強度等を考慮して選定されるものである。また、第1ボルトB1は、第1継手孔H41および第1継手孔H41の内径にネジの無い範囲(首下)において当接したり、ボルトに替えて、両端部の所定範囲に雄ネジが形成された丸棒であったりしてもよい。
【0059】
[実施の形態4]
(複数部材の接合構造:補強体)
図10は本発明の実施の形態4に係る複数部材の接合構造を説明する側面図である。実施の形態4は複数部材の接合構造として補強体(図示しない)を例示するものであって、実施の形態3と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図10において、補強体を形成する第3補強部材4cは、第1H形鋼10の一方の端部に継手板40が設置され、第1H形鋼10の他方の端部に連結板50が設置されたものである。すなわち、実施形態2に示す第1補強部材4aと第2補強部材4bとを、1本の第1H形鋼10に集約したものに同じである。
したがって、地上における事前組立において、一種類の第3補強部材4cのみを形成するだけでよい。そして、掘削孔8内における本組立作業は、実施の形態3に同じであり、実施の形態3と同じ作用効果が得られる。
【0060】
[実施の形態5:補強体]
図11および図12は本発明の実施の形態5に係る複数部材の接合構造を説明するものであって、図11は一部を模式的に示す斜視図、図12は一部(継手板)のバリエーションを模式的に示す斜視図である。
図11において、複数部材の接合構造として補強体を例示するものであって、継手板40のスペーサー当接範囲41の上側縁にストッパー70が設置されている。ストッパー70はスペーサー30を跨いで、地山側フランジ11の上縁に当接している。
したがって、地上において事前組立をする際、ストッパー70を地山側フランジ11の上縁に当接した状態で、第1ボルトB1を第1継手孔H41に挿入することができるから、作用が容易になる。また、前記当接によって、継手板40のフランジ高さ方向の位置が正規位置に配置されるから、第1ボルトB1に第1ナットN1を螺合して締め込んだ際、継手板40は長手方向に位置調整されることになる。
【0061】
図12の(a)において、継手板40のスペーサー当接範囲41の上側縁には、2箇所にストッパー70a、70bが設置されている。したがって、事前組立作業がさらに容易になる。
図12の(b)において、継手板40のスペーサー当接範囲41の上側縁に追加して、地山側フランジ11の下縁に当接するストッパー70cが設置されている。したがって、ストッパー70aを地山側フランジ11の上縁に、ストッパー70cを地山側フランジ11の下縁に当接させることによって、継手板40の傾動が防止されるから、事前組立作用がさらに容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は以上の構成であるため、本発明の一実施例として、立坑内における組立作業を例にすると、複数部材の接合構造を形成する補強部材を地上において事前組立する作業が容易になると共に、連結手段を構成する継手板の設置精度が向上するから、迅速かつ容易になる。よって、立坑やトンネルにおけるものに限定されることなく、各種構造物の補強手段として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 立坑
2 波状鋼板
3 筒状体
4 補強体
4a 補強部材
4b 補強部材
4c 補強部材
5 H形鋼
5a 地山側フランジ
5b 立坑内側フランジ
5c ウエブ
6 連結手段
8 掘削孔
9 地上
10 第1H形鋼
11 地山側フランジ
12 立坑内側フランジ
13 ウエブ
20 第2H形鋼
21 地山側フランジ
22 立坑内側フランジ
23 ウエブ
30 スペーサー
31 スペーサー孔
40 継手板
41 スペーサー当接範囲
45 継手突出範囲
50 連結板
52 フランジ当接範囲
54 連結突出範囲
60 内側連結板
61 第1内側フランジ当接範囲
62 第2内側フランジ当接範囲
70 ストッパー
A 正規中心
B 中心(第1ボルト)
B1 第1ボルト
B2 第2ボルト
B3 第3ボルト
B4 第4ボルト
B5 第5ボルト
B6 第6ボルト
H11 第1フランジ孔
H14 第4フランジ孔
H22 第2フランジ孔
H25 第5フランジ孔
H26 第6フランジ孔
H64 第4フランジ孔
H65 第5フランジ孔
H41 第1継手孔
H43 第3継手孔
H46 第6継手孔
H52 第2連結孔
H53 第3連結孔
H56 第6連結孔
100 接合構造
110 第1部材
111 第1平面部
112 第1貫通孔
113 仮想正規円
120 第2部材
121 第2平面部
122 第2貫通孔
123 仮想正規円
130 接合用ボルト
140 接合ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1平面部が形成された第1部材と、前記第1平面部に当接する第2平面部を具備する第2部材と、前記第1平面部と前記第2平面部とを接合する少なくとも3本の接合用ボルトと、該接合用ボルトに螺合する接合用ナットと、を有する複数部材の接合構造であって、
前記第1部材には、前記第1平面部に直角で前記第1部材を貫通し、前記接合用ボルトが挿入自在な第1貫通孔が形成され、
前記第2部材には、前記第2平面部に直角で前記第2部材を貫通し、前記接合用ボルトが挿入自在な第2貫通孔が形成され、
前記第1貫通孔は、前記第1部材に所定の正規中心から所定の正規半径の仮想正規円を仮定した際、該仮想正規円上に分散配置された前記接合用ボルトに前記正規中心から最も遠い位置で接するように形成され、
前記第2貫通孔は、前記仮想正規円上に分散配置された前記接合用ボルトに前記正規中心から最も近い位置で接するように形成されていることを特徴とする複数部材の接合構造。
【請求項2】
前記第1貫通孔および前記第2貫通孔が、前記分散配置された接合用ボルトに所定のクリアランスを介して接することを特徴とする請求項1記載の複数部材の接合構造。
【請求項3】
前記第1部材または前記第2部材の一方または両方に、第3部材が接合されることを特徴とする請求項1または2記載の複数部材の接合構造。
【請求項4】
面状構造物に前記第1部材および第4部材が設置され、
前記第1部材に接合された前記第2部材を、前記第4部材に連結することによって、前記第1部材、前記第2部材および前記第4部材からなる連結体が前記面状構造物を補強することを特徴とする請求項3記載の複数部材の接合構造。
【請求項5】
円弧状に形成された第1H形鋼と第2H形鋼とが連結手段によって連結され、前記第1H形鋼のウエブおよび前記第2H形鋼のウエブに面状構造物の端部が接続された、複数部材の接合構造であって、
前記連結手段が、少なくともスペーサー、継手板および連結板を具備し、
前記第1H形鋼のフランジのうち凸面側に位置する第1フランジの端部に、前記スペーサーおよび前記継手板を設置するための少なくとも3本の第1ボルトが、それぞれ貫通する第1フランジ孔が形成され、
前記第2H形鋼のフランジのうち凸面側に位置する第2フランジの端部に、前記連結板を設置するための第2ボルトが貫通する第2フランジ孔と、前記継手板と前記連結板とを連結するための第3ボルトが貫通する第3フランジ孔と、が形成され、
前記連結板は、前記第2フランジの端部に当接する第2フランジ当接範囲と、該第2フランジ当接範囲に形成された前記第2ボルトが貫通する第2連結孔と、前記第2フランジの高さ方向に突出して形成された連結突出範囲と、該連結突出範囲に形成された前記第3ボルトが貫通する第3連結孔と、を具備し、
前記スペーサーは、前記第1フランジの端部に当接する略矩形状であって、前記第1ボルトが貫通するスペーサー孔を具備し、
前記継手板は、前記スペーサーに当接するスペーサー当接範囲と、該スペーサー当接範囲に形成された少なくとも3本の第1ボルトがそれぞれ貫通する第1継手孔と、前記フランジの長手方向および高さ方向に突出する継手突出範囲と、該継手突出範囲に形成された前記第3ボルトが貫通する第3継手孔と、を具備し、
前記第1フランジ孔は、前記第1フランジに所定の正規中心から所定の正規半径の仮想正規円を仮定した際、該仮想正規円上に分散配置された前記第1ボルトに前記正規中心から最も遠い位置で接するように形成され、
前記第1継手孔は、前記仮想正規円上に分散配置された前記第1ボルトに前記正規中心から最も近い位置で接するように形成されていることを特徴とする、複数部材の接合構造。
【請求項6】
円弧状に形成された複数のH形鋼が連結手段によって連結され、前記H形鋼のウエブに面状構造物の端部が接続された、複数部材の接合構造であって、
前記連結手段が、少なくともスペーサー、継手板および連結板を具備し、
前記H形鋼のフランジのうち凸面側に位置するフランジの一方の端部に、前記スペーサーおよび前記継手板を設置するための少なくとも3本の第1ボルトが、それぞれ貫通する第1フランジ孔が形成され、
前記H形鋼のフランジのうち凸面側に位置するフランジの他方の端部に、前記連結板を設置するための第2ボルトが貫通する第2フランジ孔と、前記継手板と前記連結板とを連結するための第3ボルトが貫通する第3フランジ孔と、が形成され、
前記連結板は、前記第2フランジの端部に当接する第2フランジ当接範囲と、該第2フランジ当接範囲に形成された前記第2ボルトが貫通する第2連結孔と、前記第2フランジの高さ方向に突出して形成された連結突出範囲と、該連結突出範囲に形成された前記第3ボルトが貫通する第3連結孔と、を具備し、
前記スペーサーは、前記第1フランジの端部に当接する略矩形状であって、前記第1ボルトが貫通するスペーサー孔を具備し、
前記継手板は、前記スペーサーに当接するスペーサー当接範囲と、該スペーサー当接範囲に形成された少なくとも3本の第1ボルトがそれぞれ貫通する第1継手孔と、前記フランジの長手方向および高さ方向に突出する継手突出範囲と、該継手突出範囲に形成された前記第3ボルトが貫通する第3継手孔と、を具備し、
前記第1フランジ孔は、前記フランジに所定の正規中心から所定の正規半径の仮想正規円を仮定した際、該仮想正規円上に分散配置された前記第1ボルトに前記正規中心から最も遠い位置で接するように形成され、
前記第1継手孔は、前記仮想正規円上に分散配置された前記第1ボルトに前記正規中心から最も近い位置で接するように形成されていることを特徴とする、複数部材の接合構造。
【請求項7】
前記第1フランジ孔が、前記分散配置された第1ボルトに前記正規中心から最も遠い位置で接するに替えて、前記分散配置された第1ボルトに前記正規中心から最も近い位置で接すると共に、前記継手孔が、前記分散配置された第1ボルトに前記正規中心から最も近い位置で接するに替えて、前記分散配置された第1ボルトに前記正規中心から最も遠い位置で接することを特徴とする請求項5または6記載の複数部材の接合構造。
【請求項8】
前記第1フランジ孔および前記継手孔が、前記分散配置された第1ボルトに所定のクリアランスを介して接することを特徴とする請求項5乃至7の何れかに記載の複数部材の接合構造。
【請求項9】
前記継手板に、前記第1フランジの上縁に当接するストッパーが設置されることを特徴とする請求項5記載の複数部材の接合構造。
【請求項10】
前記継手板に、前記フランジの上縁に当接するストッパーが設置されることを特徴とする請求項6記載の複数部材の接合構造。
【請求項11】
前記面状構造物が、複数枚の波状鋼板を互いに接合して形成された断面円弧状または断面円環状であることを特徴とする請求項5乃至10の何れかに記載の複数部材の接合構造。
【請求項12】
前記円弧状に形成された第1H形鋼と第2H形鋼とに替えて、第1H形鋼または第2H形鋼の一方が直線状に形成されていることを特徴とする請求項5記載の複数部材の接合構造。
【請求項13】
前記円弧状に形成された複数のH形鋼に替えて、直線状に形成されたH形鋼と円弧状に形成されたH形鋼とを有することを特徴とする請求項6記載の複数部材の接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−261261(P2010−261261A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114361(P2009−114361)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000231110)JFE建材株式会社 (150)