説明

複数階建て集合住宅の構築方法

【課題】集合住宅内のスペースの有効利用を図る。
【解決手段】貯湯槽2及び水道メーター4は、該貯湯槽2の周囲のメンテナンス用の空間Bの一部と該水道メーター4のメンテナンス用の空間Bの一部とが重なるように配置されているため、該貯湯槽2及び該水道メーター4のためのスペース(つまり、該貯湯槽2及び該水道メーター4の配置のために必要なスペースとメンテナンスのために必要なスペースの合計)を狭くすることが出来、集合住宅内のスペースの有効利用を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の住戸を有する複数階建ての住宅(本明細書において“複数階建て集合住宅”とする)の構築方法に係り、詳しくは、貯湯槽を備えた複数階建て集合住宅の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベランダや共用廊下に貯湯槽を配置し、該貯湯槽に貯めておいた湯を浴室やキッチンや暖房器具に供給して使用するようにした複数階建て集合住宅については、種々の構造のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年、ガスコンロ等のガス器具を全て電気器具に置き換えてガスを一切使用しないようにしたオール電化マンションが防火上等の理由から注目されつつあるが、そのようなオール電化マンションにおいては、深夜電力を使って沸かした湯を貯湯槽に貯えるようになっている。また、このようなオール電化マンションの対極にはオールガス化マンションが存在するが、このオールガス化マンションにおいては、所定の熱(発電ユニット等からの熱)で沸かした湯を貯湯槽に貯えるようになっている。さらに、オール電化でもオールガス化でも無いマンション(つまり、電気・ガスを併用したマンション)においても貯湯槽を備えたものがある。
【0004】
図5は、貯湯槽の配置状態の一例を示す正面図であり、符号100は、共用廊下101に配置された貯湯槽を示し、符号102は、住戸のドアを示す。なお、貯湯槽100を共用廊下101ではなくベランダ(不図示)に配置した集合住宅もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−254548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、共用廊下101やベランダに貯湯槽100を配置した場合には、その分、スペースが狭くなってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上述のような問題を解消することのできる複数階建て集合住宅の構築方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、図2乃至図4に例示するものであって、住戸(A)に供給する湯を貯めておくための貯湯槽(2)を少なくとも1つの階に設置する貯湯槽設置工程(図1の符号S6参照)と、該貯湯槽(2)を収容する筐体(3)を設置する筐体設置工程(図1の符号S8参照)と、を備えて複数階建て集合住宅(1)を構築する、複数階建て集合住宅の構築方法において、
前記筐体(3)に収容される位置に少なくとも1つの設備機器(4,7,P,P,P,P)を設置する設備機器設置工程(図1の符号S7参照)、を備え、
前記貯湯槽(2)と前記設備機器(4,7,P,P,P,P)とは、該貯湯槽(2)の周囲のメンテナンス用の空間(B)の一部と、該設備機器(4,7,P,P,P,P)の周囲のメンテナンス用の空間(B,B,B)の一部とが重なるように設置されてなることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記設備機器とは、水道メーター(4)、電気メーター(7)、水道本管(P)、ガス本管(P)及び電気配線用配管(P)であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、図4に例示するものであって、請求項1に係る発明において、前記設備機器とは水道メーター(4)であり、
床スラブ(5)を上下に貫通してなる第1貫通孔(5a)を、前記筐体(3)に収容される部分に形成する第1貫通孔形成工程(図1の符号S1参照)と、
該第1貫通孔(5a)を通って落下する湯及び/又は水を排出するための配水管(6a)を、前記第1貫通孔(5a)の下側に配置する第1配管工程(図1の符号S4参照)と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に係る発明において、床スラブ(5)を上下に貫通してなる第2貫通孔(図3の符号5b参照)を、前記筐体(3)に収容される部分に形成する第2貫通孔形成工程(図1の符号S2参照)と、
水道本管(P)、ガス本管(P)、及び電気配線用配管(P)の少なくとも1つを前記第2貫通孔(5b)に挿通させて配置する第2配管工程(図1の符号S5参照)と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明において、前記複数階建て集合住宅(1)を構築するための資材を前記第2貫通孔(5b)を介して搬送する資材搬送工程(図1の符号S3参照)を、前記第2配管工程(S5)を実施する前に実施することを特徴とする。
【0013】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0014】
請求項1及び2に係る発明によれば、前記貯湯槽の周囲のメンテナンス用の空間の一部と、前記設備機器の周囲のメンテナンス用の空間の一部とが重なるように設置されているため、それらのメンテナンス用空間が重ならないようにする場合に比べて、前記貯湯槽及び前記設備機器のためのスペース(つまり、該貯湯槽及び該設備機器の配置のために必要なスペースとメンテナンスのために必要なスペースの合計)を狭くすることが出来、集合住宅内のスペースの有効利用を図ることができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、前記貯湯槽や前記水道メーターのための排水口や配水管を1つずつ設ける必要が無くて共用化できるため、その分、作業を簡素化することができる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、第2貫通孔や設備機器や貯湯槽を前記筐体内にまとめて配置することが出来る。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、第2貫通孔を介して資材を搬送することができ、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明に係る複数階建て集合住宅の構築方法の手順の一例を示すフローチャート図である。
【図2】図2は、本発明に係る構築方法により構築した集合住宅の構造の一例を示す平面図である。
【図3】図3は、貯湯槽及び水道メーター等の配置位置の一例を示す拡大平面図である。
【図4】図4は、図2のC−C矢視図である。
【図5】図5は、貯湯槽の配置状態の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1乃至図4に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
本発明に係る複数階建て集合住宅の構築方法は、図2乃至図4に符号1で例示するような複数階建て集合住宅(複数の住戸を有する複数階建ての住宅)を構築する方法である。
【0021】
本発明に係る複数階建て集合住宅の構築方法は、図1乃至図4に例示するものであって、
・ 湯(住戸A内の浴室やキッチンや暖房器具等に供給する湯)を貯めておくための貯湯槽2を少なくとも1つの階(例えば、共用廊下やベランダ)に設置する貯湯槽設置工程S6と、
・ 該貯湯槽2を収容する筐体3を設置する筐体設置工程S8と、
・ 該筐体3に収容される位置に少なくとも1つの設備機器4,7,P,P,P,Pを設置する設備機器設置工程S7と、
を備えている。そして、図3に詳示するように、前記貯湯槽2と前記設備機器4,7,P,P,P,Pとは、該貯湯槽の周囲のメンテナンス用の空間Bの一部と、該設備機器の周囲のメンテナンス用の空間B,B,Bの一部とが重なるように設置されている。ここで、設備機器とは、水道メーター4、電気メーター7、水道本管P、ガス本管P、及び電気配線用配管Pである。また、貯湯槽の周囲のメンテナンス用の空間B、並びに設備機器の周囲のメンテナンス用の空間B,B,Bとは、貯湯槽や設備機器のメンテナンスのために手や工具を入れるための隙間のことである。
【0022】
なお、図3に示す例では、前記貯湯槽2の四方の内の一方(図面上では左方)に壁部Dが配置され、残りの三方に筐体3が配置されていて、これらの壁部Dと筐体3とによって前記貯湯槽2や前記水道メーター4等が囲繞されるように構成されているが、もちろんこれに限られるものではない。例えば、前記貯湯槽2の四方の内の二方に構造材(壁部や柱)が配置されているような場合には残りの二方に筐体を配置すれば良く、前記貯湯槽2の四方の内の三方に構造材が配置されているような場合には残りの一方に筐体を配置すれば良く、前記貯湯槽2の周りに構造材が配置されていないような場合には前記貯湯槽2の四方全部に筐体を配置すると良い。また、図1に示す例では、前記貯湯槽設置工程S6→前記設備機器設置工程S7→前記筐体設置工程S8の順で実施されているが、これら3つの工程の順序はどのような順序で実施しても良い。さらに、前記貯湯槽2は全ての階の全ての住戸に配置されることが好ましいが、もちろんこれに限られるものではなく、少なくとも1つの階の1つの住戸に設置されていれば足りる。
【0023】
本発明によれば、前記貯湯槽のメンテナンス用の空間Bの一部と、前記設備機器のメンテナンス用の空間B,B,Bの一部とが重なるように設置されているため、それらのメンテナンス用空間B,B,…が重ならないようにする場合に比べて、前記貯湯槽2及び前記設備機器4,…のためのスペース(つまり、該貯湯槽2及び該設備機器4,…の配置のために必要なスペースとメンテナンスのために必要なスペースの合計)を狭くすることが出来、集合住宅内のスペースの有効利用を図ることができる。
【0024】
ところで、前記設備機器を水道メーター4とすると共に、
・ 床スラブ(図4の符号5参照)を上下に貫通してなる第1貫通孔5aを、前記筐体3に収容される部分(つまり、該筐体3に囲繞されて隠される部分)であって前記貯湯槽2及び前記水道メーター4からこぼれ落ちた湯や水が流れてくる部分に形成する第1貫通孔形成工程S1と、
・ 該第1貫通孔5aを通って落下する湯及び/又は水を排出するための排水管6aを、前記第1貫通孔5aに連通するようにその下側に配置する第1配管工程S4と、
を実施するようにしても良い。前記貯湯槽2や前記水道メーター4のメンテナンスや交換を行う場合には該貯湯槽2や該水道メーター4から湯や水がこぼれ落ちることがあるが、その湯や水は前記第1貫通孔5a及び前記配水管6aを通って排出されることとなる。そして、上述のように第1貫通孔形成工程S1と第1配管工程S4を実施した場合には、前記貯湯槽2や前記水道メーター4のための排水口や配水管を1つずつ設ける必要が無くて共用化できるため、その分、作業を簡素化することができる。
【0025】
一方、
・ 床スラブ(図4の符号5参照)を上下に貫通してなる第2貫通孔(図3の符号5b参照)を、前記筐体3に収容される部分(つまり、該筐体3に囲繞されて隠される部分)に形成する第2貫通孔形成工程S2と、
・ 水道本管P、ガス本管P、及び電気配線用配管Pの少なくとも1つを前記第2貫通孔5bに挿通させて配置する第2配管工程S5と、
を実施するようにしても良い。そのようにした場合には、第2貫通孔5bや設備機器4,…や貯湯槽2を前記筐体3内にまとめて配置することが出来る。
【0026】
また一方、資材(つまり、前記複数階建て集合住宅1を構築するための資材)を前記第1貫通孔5a及び/又は前記第2貫通孔5bを介して搬送する資材搬送工程S3を、前記第1配管工程S4及び/又は前記第2配管工程S4を実施する前に実施するようにしても良い。つまり、前記第1貫通孔5a及び前記第2貫通孔5bの少なくとも一方又は両方を、集合住宅構築中は資材搬送用の開口(いわゆる駄目穴)として使用し、集合住宅構築後は排水口や配管類(例えば、水道本管Pやガス本管Pや電気配線用配管Pなど)を挿通させる開口として使用すると良い。駄目穴は、集合住宅の構築が完了する時点で閉塞されるのが一般的であるが、該駄目穴を排水用の開口や配管類を挿通させる開口として使用する場合には、該駄目穴を閉塞する必要が無く、排水用の開口等を別途穿設する必要も無く、作業を簡素化することができる。また、第1貫通孔5aや第2貫通孔5bを介して資材を搬送することができ、作業効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 複数階建て集合住宅
2 貯湯槽
3 筐体
4 水道メーター(設備機器)
5 床スラブ
5a 第1貫通孔
5b 第2貫通孔
6a 配水管
7 電気メーター(設備機器)
A 住戸
貯湯槽のメンテナンス用の空間
水道メーターのメンテナンス用の空間
電気メーターのメンテナンス用の空間
配管のメンテナンス用の空間
水道本管(設備機器)
ガス本管(設備機器)
電気配線用配管(設備機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住戸に供給する湯を貯めておくための貯湯槽を少なくとも1つの階に設置する貯湯槽設置工程と、該貯湯槽を収容する筐体を設置する筐体設置工程と、を備えて複数階建て集合住宅を構築する、複数階建て集合住宅の構築方法において、
前記筐体に収容される位置に少なくとも1つの設備機器を設置する設備機器設置工程、を備え、
前記貯湯槽と前記設備機器とは、該貯湯槽の周囲のメンテナンス用の空間の一部と、該設備機器の周囲のメンテナンス用の空間の一部とが重なるように設置されてなる、
ことを特徴とする複数階建て集合住宅の構築方法。
【請求項2】
前記設備機器とは、水道メーター、電気メーター、水道本管、ガス本管及び電気配線用配管である、
ことを特徴とする請求項1に記載の複数階建て集合住宅の構築方法。
【請求項3】
前記設備機器とは水道メーターであり、
床スラブを上下に貫通してなる第1貫通孔を、前記筐体に収容される部分に形成する第1貫通孔形成工程と、
該第1貫通孔を通って落下する湯及び/又は水を排出するための配水管を、前記第1貫通孔の下側に配置する第1配管工程と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の複数階建て集合住宅の構築方法。
【請求項4】
床スラブを上下に貫通してなる第2貫通孔を、前記筐体に収容される部分に形成する第2貫通孔形成工程と、
水道本管、ガス本管、及び電気配線用配管の少なくとも1つを前記第2貫通孔に挿通させて配置する第2配管工程と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の複数階建て集合住宅の構築方法。
【請求項5】
前記複数階建て集合住宅を構築するための資材を前記第2貫通孔を介して搬送する資材搬送工程を、前記第2配管工程を実施する前に実施する、
ことを特徴とする請求項4に記載の複数階建て集合住宅の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−36267(P2013−36267A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174680(P2011−174680)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)