説明

複数項目測定用基盤装置

【課題】 コンパクトに形成され、かつ複数個の独立した適用部に、被検液をスムーズに導入する。また供給部及び適用部等の構成部分を型整形によって容易に形成できるようにする。
【解決手段】 被険液を複数項目の測定ないし試験等に適用するために、基盤に1個の供給部と複数個の適用部を有し、基盤11を平盤状とし、1個の供給部12に対して複数個の適用部16…を配置するとともに、被検液の移動する連通路18、19により供給部12と各適用部16…を通じさせ、さらに被検液の流れを円滑化するために、通気部20を流れの終末部に設ける。基盤11の一面に他面に通じる供給部12を開口し、かつ他面には被検液の浸透可能な浸透部材21を配置する内凹部を供給部12に形成し、内凹部の周囲に反応部材22−1…を配置する外凹部を形成し、被検液の流出を防止するシール部材23により基盤11の他面側を閉塞する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検液を複数項目の測定ないし試験等に適用するために、基盤に、1個の供給部と複数個の適用部を有する複数項目測定用基盤装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば血液中の成分に対して複数項目にわたる測定ないし試験等を実施するために、従来は一方向に処理するほかなく、従って複数個の装置を必要とした。これに対し、実用新案登録第3079968号のものでは、2種類以上のリガンドを簡便に検出する装置を開示している。しかし、隔壁によって区分された複数個の漏斗状部分に夫々被検液を供給する必要がある上、リガンドの受容体を隔離して固定するための膜部材は1枚であり、独立していないため隔離したはずの受容体もしくは被検液の独立性が保証されない、という問題がある。
【0003】
また、特開2004−279158号は、検体を1回滴下するだけで複数個の開口部に検体を導入することの可能な装置と方法を開示しているのみならず、複数個の開口部の上部に開口部に同時に検体を導入するための単一のアダプターを備えることを記載してい
る。しかし同号の装置及び方法では検体をアダプターから複数個の開口部に流れ下らせる手段を取っており、このため複数個の開口部の上部にアダプターを備える必要があり、必然的に上下寸法の大きい構造とならざるを得ないので、装置形態としては大型化する傾向がある。また、複数個の開口部に対して膜部材を1枚使用する点、前記の考案の場合と共通である。
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3079968号
【特許文献2】特開2004−279158号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、極くコンパクトに形成することができ、かつ複数個の独立した適用部に、被検液をスムーズに導入することができるようにすることである。また本発明の他の課題は、平盤状の形態を持つ基盤に対して、供給部及び適用部などの構成部分を、例えば型成形によって提供可能なものとし、それによって複雑な構造を容易に形成できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため、本発明は、被検液を被複数項目の測定ないし試験等に適用するために、基盤に、1個の供給部と複数個の適用部を有する複数項目測定用基盤装置について、基盤は平盤状の形態を持ち、1個の供給部に対して複数個の適用部を配置するとともに、被検液の移動する連通路により供給部と各適用部を通じさせ、さらに被検液の流れを円滑化するために、通気部を流れの終末部に設けるという手段を講じたものである。
【0007】
本発明の装置において、基盤は、平盤状の形態を持っており、この平盤状の基盤に対して供給部と、1個の供給部に対して複数個の配置を取る適用部等が設けられる。供給部は、被検液をそこへ供給する部分であり、必要量の被検液を受容し得る容積を持つ空所の形態を取る。これに対して適用部は、被検液を供給部から受け入れる部分であり、被検液に対する測定ないし試験等に使用する試薬等を受容し得る容積を持つ空所の形態を取る。
【0008】
供給部と適用部とは、被検液の移動のために連通路によって通じている。このような構成を取るので、複数個の適用部は、相互に独立しており、供給部に対して連通路だけを通して通液可能な構成を取ることになる。供給部と連通路のみによって通じている適用部
は、いわゆる袋小路状となるので、供給部に被検液を滴下しても、袋小路内部の空気を圧縮するだけで流れが滞るおそれがある。そこで、本発明では、流れの終末部、例えば適用部の先方に通気部を設け、空気を外部へ放出可能とすることにより被検液の流れを円滑化する。
【0009】
上記の構成を有する本発明の複数項目測定用基盤装置は、平盤状の基盤の内部構造として、1個の供給部に対する複数個の適用部と連通部を設け、適用部からは外部へ通じる通気部を開口し、全体をカード状のものとしてコンパクトに形成することができる。しか
し、それのみならず、1個の供給部に対する複数個の適用部と連通部等を平盤状の基盤の表面構造として設けることができ、後の方法の場合、表面構造をシール手段によって閉塞することにより、前の方法の場合と実質的に同じ構造となる。成形型の構造の複雑さやそれに伴うコスト上昇を考慮すると後の方法の方が有利である。
【0010】
平板状の基盤の表面構造として、本発明を構成する後の方法の場合、以下のような構成を取り得る。即ち、基盤の一面に、他面に通じる供給部が開口しており、他面側には被検液の浸透可能な浸透部材を配置する内凹部を供給部に形成するとともに、内凹部の周囲には反応部材を配置する外凹部を形成し、内凹部に浸透部材を配置し、かつ外凹部に反応部材を配置した状態において、被検液の流出を防止するシール部材により基盤の他面側を閉塞した構成とすると良い。この構成により平面的に複雑な形態を低コストで型成形可能となり、シール部材の並用によって液漏れのおそれもない。なお基盤はプラスチック成形によって製造することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は以上の如く構成されかつ作用するものであるから、平盤状の形態により極くコンパクトに形成され、複雑な構造形態のものでも容易に型成形することができ、機能的には通気部により被検液をスムーズに適用部に導入可能であり、目的箇所以外へ被検液を移動させることもない等、顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図1は上面図、図3は下面図を示しており、基盤11の上面に、下面に通じる供給部12が開口しており、開口部周りに短い筒状の立ち上がり部13が設けられている。基盤11の下面には、縁部に立ち下がり部14が形成されており、このため基盤14の下面には、相対的に底の上がった、或いは上方へへこんだ凹面部15が広範囲にわたって設けられている。
【0013】
例示の装置の場合、基盤11を貫通している1個の供給部12を中心として、その周囲に適用部16が4箇所、等間隔で設けられている。基盤11の下面側には、被検液の浸透可能な浸透部材を配置する内凹部として上方へへこんだ部分が設けられている。17は内凹部の周縁段部を示す。この点は図5に詳細に示されており、内凹部の周囲には反応部材を配置する外凹部として同様に上方へへこんだ部分すなわち適用部16が設けられてい
る。そして供給部12と各適用部16…とは連通路18としての溝状の部分によって通じている。
【0014】
さらに、被検液の流れの終末部に当たる、適用部16よりも外方の箇所に、空気流通を確保して被検液の流れを円滑化する通気部20を設けている。例示の通気部20は、供給部12を中心とする適用部16の半径方向外方に位置しており、適用部16とは外連通路19によって通じている。例示の外連通路19は、空気抜きである通気部20と適用部16とを通じる1箇所の溝状の凹部であるが、外連通路19及び通気部20は1個の適用部16について1箇所に限られず、複数箇所設けても良い。
【0015】
図7は図6のVII−VII線断面を示しており、同図には、本発明に係る複数項目測定用基盤装置10の使用状態が示されている。図7に示したものでは、基盤11の供給部下面における周縁段部17に浸透部材21を配置し、適用部16に反応部材22−1、22−2…を配置し、さらにシール部材23を基盤11の凹面部15に貼り重ねることによって基盤11の他面側を閉塞するとともに底を形成しており、複数個の適用部16…に配置する反応部材22−1、22−2…には夫々異なる種類の測定ないし試験等を行うための試薬等を配置しておくことができる。
【0016】
よって、供給部12に、例えば血液を被検液24として滴下すると、それは、浸透し終わるまでの間は立ち上がり部13内に溜め置かれ浸透部材21に浸透する。浸透部材21として例えば血漿分離紙を使用した場合、血漿が連通路18、19を通過して複数個の適用部16に流出して行く。この血漿の流れは、流路終末が大気に通じているので滞ることなく、適用部内の反応部材22−1、22−2…に浸透して行く。かくして反応部材22−1、22−2…に予め浸透している試薬と血漿との反応が起こり、所期の測定、試験等が行われることになる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の装置は、例えば3×4センチメートル程度の小型に形成可能であり、郵送も可能な血液検査キットやインフルエンザの自己診断の用途などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る複数項目測定用基盤装置の1実施例を示す上面図。
【図2】図1に対する正面図。
【図3】同じく下面図。
【図4】同じく右側面図。
【図5】同じく基盤左半分の断面図。
【図6】本発明装置の要部を拡大して示す平面図。
【図7】図6のVII−VII線断面図。
【符号の説明】
【0019】
10 本発明に係る基盤装置
11 基盤
12 供給部
13 立ち上がり部
14 立ち下がり部
15 凹面部
16 適用部
17 周縁段部
18、19 連通路
20 通気部
21 浸透部材
22−1、22−2… 反応部材
23 シール部材
24 被検液


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検液を複数項目の測定ないし試験等に適用するために、基盤に、1個の供給部と複数個の適用部を有する複数項目測定用基盤装置であって、基盤は平盤状の形態を持ち、1個の供給部に対して複数個の適用部を配置するとともに、被検液の移動する連通路により供給部と各適用部を通じさせ、さらに被検液の流れを円滑化するために、通気部を流れの終末部に設けた複数項目測定用基盤装置。
【請求項2】
基盤の一面に、他面に通じる供給部が開口しており、他面側には被検液の浸透可能な浸透部材を配置する内凹部を供給部に形成するとともに、内凹部の周囲には反応部材を配置する外凹部を形成し、内凹部に浸透部材を配置し、かつ外凹部に反応部材を配置した状態において、被検液の流出を防止するシール部材により基盤の他面側を閉塞した構成を有する請求項1記載の複数項目測定用基盤装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−329872(P2006−329872A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−155940(P2005−155940)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(399032813)株式会社 ベセル (3)