説明

複素環ケトンの製造方法

【解決手段】
式(I)又は(Ia)
【化1】


の複素環ケトンを製造する方法であって、式(II)
【化2】


で表される複素環化合物を、式(III)
【化3】


で表されるα,β−不飽和カルボン酸、又は式(IV)
【化4】


で表される無水物と反応させ、各式中R1及びR2はそれぞれ水素又はC1−C40炭素含有基であるか、R1とR2が共同で環式基を形成し、R3はC1−C40炭素含有基、Xは周期表第16族元素又は二価窒素基−(N−R4)−、R4は過ハロゲン化C1−C40炭素含有基又はC1−C40オルガノスルホニル基の電子吸引性基である複素環ケトンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)又は(Ia)
【0002】
【化1】

の複素環ケトンを製造する方法であって、
式(II)
【0003】
【化2】

で表される複素環化合物を、式(III)
【0004】
【化3】

で表されるα,β−不飽和カルボン酸、又は
式(IV)
【0005】
【化4】

で表される無水物と反応させ、各式中
1は水素又はC1−C40炭素含有基を意味し、
2は水素又はC1−C40炭素含有基を意味し、又は
1とR2とが共同で環式基を形成し、
3はC1−C40炭素含有基を意味し、
Xが周期表第16族元素、又は二価窒素基−(N−R4)−を意味し、R4が過ハロゲン化C1−C40炭素含有基及びC1−C40オルガノスルホニル基からなる群から選択された電子吸引性基である複素環ケトンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0006】
置換複素環ケトンは、オレフィン重合用の複素環メタロセン触媒を製造するための重要な出発物質である(J. Am. Chem. Soc., Vol.123 No. 20, 4763-4773)。置換基を有する複素環ケトンを出発材料として、キラルな複素環式アンサメタロセンが得られる。同生成物は特異的な立体形状を有するオレフィンの重合において使用される高い活性を有する触媒の遷移金属成分として特に重要である(WO98/22486号公報)。
【0007】
例えば配位子を有する化合物を置換により変更すると、メタロセンの触媒特性を所望の形態に変更することができる。これにより、アンサ−ビスインデニルメタロセンに関して観察されているように(Chem. Rev. 2000, No. 4)、ポリマーの収率、分子量分布、タクチシティー、及び融点を所望の程度変化させることができる。
【0008】
シクロペンタ[b]チオフェン及びシクロペンタ[b]ピロールは、キラルな複素環アンサ−メタロセンを合成する場合の重要なリガンド前駆体である。シクロペンタ[b]チオフェン及びシクロペンタ[b]ピロールの双方は対応の複素環ケトンから製造される。硫黄含有環状ケト化合物を構成可能な例には、スーパーポリリン酸(super-polyphosphoric acid)の存在下のチオフェンとメタクリル酸との反応がある(J. Am. Chem. Soc., Vol. 123, No. 20, 4763-4773)。
【0009】
しかしながら、メタクリル酸と、2−メチルチオフェン又は大きな置換基を有する種々の2,3−二置換チオフェンと、の反応は、スーパーポリリン酸の存在下での公知の反応条件下では対応の複素環ケトンが得られないか、又は所望の複素環ケトンが得られたとしても収量が不十分となる。
【0010】
ベンゾチオフェンを、五酸化リンのメタンスルホン酸溶液とメタクリル酸との混合物に室温にて添加することによる置換シクロペンタ[b]ベンゾチオフェンの合成法は公知である(Organometallics, Vol. 21, No. 14, 2002, 2842-2855)。
【0011】
【特許文献1】WO98/22486号公報
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc., Vol.123 No. 20, 4763-4773
【非特許文献2】Chem. Rev. 2000, No. 4
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は
公知方法の不具合を回避し、新規な複素環ケトンが製造可能であり、かつ公知の複素環ケトンを経済的に製造可能な、簡単、効果的かつ経済的な、複素環ケトンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明者等は式(I)又は式(Ia)で示される複素環ケトンを製造するための、冒頭に記載した方法を見出した。同方法では、少なくとも1種類の有機強酸と少なくとも一種類の水吸収剤とを含む液体反応溶液にて反応を行い、ここで用いる有機強酸は式(III)で示されるカルボン酸よりも酸性度が強い。また、同反応は式(II)の複素環化合物を、式(III)のα,β−不飽和カルボン酸と一緒に、又は式(IV)で示される無水物と一緒に、上述の液体反応媒体に同時に添加することにより行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
式(I)中、
1は水素又はC1−C40炭素含有基、例えばC1−C40アルキル基、C1−C10フルオロアルキル基、C1−C12アルコキシ基、C6−C40アリール基、C1−C10フルオロアルキル基、C1−C12アルコキシ基、C6−C40アリール基、C2−C40へテロ芳香族基、C6−C10フルオロアリール基、C6−C10アリールオキシ基、C3−C18トリアルキルシリル基、C2−C20アルケニル基、C2−C20アルキニル基、C7−C40アリールアルキル基、又はC8−C40アリールアルケニル基である。R1は水素、環式、分岐状又は非分岐C1−C20、好ましくはC1−C8アルキル基、C2−C12、特にC4−C8−ω−アルケン−1−イル、C6−C22、好ましくはC6−C14アリール基、又はアルキル基中の炭素原子数が1〜10、好ましくは1〜4であり、アリール基中の炭素原子数が6〜22、好ましくは6〜10のアリールアルキル基を意味する。特に好ましいR1基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、5−ヘキセン−1−イル、7−オクテン−1−イル、フェニル、2−トリル、3−トリル、4−トリル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、3,5−ジ−(tert−ブチル)−フェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,3,4−トリメチルフェニル,1−ナフチル、2−ナフチル、フェナントリル、p−イソプロピルフェニル、p−tert−ブチルフェニル、p-s-ブチルフェニル、p−シクロヘキシルフェニル、p−トリメチルシリルフェニル、ベンジル又は2−フェニルエチル、特にメチル、i−プロピル、5−ヘキセン−1−イル、フェニル、ナフチル、2−3,5−ジ(tert−ブチル)フェニル、p−tert−ブチルフェニル又はベンジルを意味する。
【0015】
2は水素又はC1−C40炭素含有基、例えばC1−C40アルキル基、C1−C10フルオロアルキル基、C1−C12アルコキシ基、C6−C40アリール基、C2−C40へテロ芳香族基、C6−C10フルオロアルキル基、C6−C10アリールオキシ基、C3−C18トリアルキルシリル基、C2−C20アルケニル基、C2−C20アルキニル基、C7−C40アリールアルキル基、又はC8−C40アリールアルケニル基である。R2は水素、環式、分岐状又は非分岐C1−C20、好ましくはC1−C8アルキル基、C6−C22、好ましくはC6−C14アリール基、又はアルキル基中の炭素原子数が1〜10、好ましくは1〜4であり、かつアリール基中の炭素原子数が6〜22、好ましくは6〜10のアリールアルキル基を意味する。特に好ましいR2基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、フェニル、2−トリル、3−トリル、4−トリル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、3,5−ジ−(tert−ブチル)フェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,3,4−トリメチルフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、フェナントリル、p−イソプロピルフェニル、p−tert−ブチルフェニル、p−ビフェニル、p−s−ブチルフェニル、p−シクロヘキシルフェニル、p−トリメチルシリルフェニル、ベンジル又は2−フェニルエチル、特に水素、メチル、i−プロピル、フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、3,5−ジ−(tert−ブチル)フェニル、p−ビフェニル、p−tert−ブチルフェニル又はベンジルを意味する。
【0016】
1とR2とは共同で環式基を形成してもよく、この環式基は単環式であっても多環式基であってもよく、飽和していても不飽和であってもよい。R1とR2とが共同で無置換の1,3−ブタジエン−1,4−ジイル基、又は一箇所又は二箇所の末端置換基を有する1,3−ブタジエン1,4−ジイル基(末端の置換基はR2と同様の意味を有してもよい)を形成すると更に好ましい。1,3−ブタジエン−1,4−ジイル基上の末端基としてはメチル及びエチルが好ましい。
【0017】
3はC1−C40炭素含有基、好ましくはC1−C40アルキル基、C1−C10フルオロアルキル基、C6−C40アリール基、C2−C40へテロ芳香族基、
6−C10フルオロアリール基、C7−C40アリールアルキル基、又は
3−C18トリアルキルシリル基である。R3は、環式、分岐状又は非分岐C1−C20、C6−C22、好ましくはC6−C14アリール基、又はアルキル基中の炭素原子数が1〜10、好ましくは1〜4であり、アリール基中の炭素原子数が6〜22、好ましくは6〜10のアリールアルキル基、又は置換2−及び3−チエニル基、置換2−及び3−フリル基、及び置換ピロール−2−及び3−イル基からなる群から選択されるC4−C24へテロ芳香族基(置換された五員環へテロ芳香族基は2位と5位に水素原子を有さず、1,3,4位においては同一又は異なる置換基を有するか無置換であり、五員環へテロ芳香族基の置換基は同一又は異なるC1−C20炭化水素、例えばC1−C20、好ましくはC1−C4アルキル基、又はC6−C20、好ましくはC6−C10アリール基、特にメチル、エチル、フェニルである)である。更に好ましいR3基の例は、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、シクロヘキシル及びフェニルであり、メチル又はフェニルであると特に好ましい。
【0018】
Xは周期表第16族元素、例えば酸素、硫黄、セレン又はテルル、好ましくは硫黄又はセレン、特に硫黄、又は二価窒素基−(N−R4)−を意味し、R4が過ハロゲン化C1−C40炭素含有基、例えば過フッ化C1−C40アルキル基又は過フッ化C6−C22アリール基、及びC1−C40オルガノスルホニル基、例えばC1−C20アルキルスルホニル基又はC6−C14アリールスルホニル基からなる群から選択された電子吸引性基である。好ましいR4基の例は、トリフルオロメチル、n−ノナフルオロブチル、ペンタフルオロフェニル、ヘプタフルオロナフチル、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−トリルスルホニル又はトリフルオロメチルスルホニルである。Xが硫黄であると極めて好ましい。
【0019】
本発明において「アルキル」とは、特に他の説明がない限り、直鎖状、又は一つ、もしくは場合により複数の分岐を有する飽和炭化水素を含み、環状基も含まれる。好ましくはC1−C18アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、イソヘキシル、sec−ブチル又はtert−ブチルである。
【0020】
本発明において「アルケニル」とは、1つ又は場合によりこれ以上の集積又は共役等のC−C二重結合を有する、直鎖状、又は一つ又は場合により複数の分岐を有する炭化水素基を含む。好ましくはC2−C12−ω−アルケン−1−イル基、例えばビニル、アリル、3−ブテン−1−イル、5−ヘキセン−1−イル、7−オクテン−1−イル、及び9−デセン−1−イルが挙げられる。
【0021】
本発明において「アリール」とは、特に他の説明がない限り、芳香族基、又は場合により縮合ポリ芳香族炭化水素基を意味する。これらの基は場合により、直鎖又は分岐状のC1−C18アルキル、C1−C18アルコキシ、C2−C10アルケニル、又はC3−C15アルキルアルケニルによる単一又は複数の置換を有していてもよい。置換又は無置換アリールの好ましい例は、特にフェニル、2−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−エチルフェニル、4−プロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−tert−ブチルフェニル、4−メトキシフェニル、1−ナフチル、9−アントリル、9−フェナントリル、3,5−ジメチルフェニル、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル、又は4−トリフルオロメチルである。
【0022】
本発明において「ヘテロ芳香族基」とは、芳香族炭化水素基の1個以上の炭素原子が、窒素、リン、酸素又は硫黄原子又はこれらの組み合わせに代替されているものを意味する。ヘテロ芳香族基は場合により直鎖状又は分岐状のC1−C18アルキル、C2−C10アルケニル、又はC6−C10アリールにより一回又は複数回置換されていてもよい。好ましい例としては、チエニル、フリル、ピロリル、ピリジル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリミジニル、ピラジニル等、並びにこれらのメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、及びtert−ブチル基に置換された誘導体である。
【0023】
本発明における特に好ましい実施の形態では、R3がメチルを、Xが硫黄を、R1及びR2がそれぞれ上記定義を有する。
【0024】
本発明の方法は、少なくとも1種類の有機強酸と少なくとも1種類の水吸収剤とを含む液体反応媒体中で反応が行われ、使用する有機強酸の酸性度が、式(III)で示されるカルボン酸よりも高く、式(II)の複素環化合物を、式(III)のα,β−不飽和カルボン酸又は式(IV)の無水物と共に上述の液体反応媒体に同時に添加することにより反応が行われることを特徴とする。反応成分を予め混合物として調製し、これを液体反応媒体に添加することが好ましい。
【0025】
本発明の方法で使用可能な有機強酸の酸性度は式(III)で表されるカルボン酸の酸性度よりも高い。有機強酸の具体例は、過ハロゲン化カルボン酸、例えばトリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸又はパーフルオロプロピオン酸、又はハロゲン化されていてもよいC1−C18アルキルスルホン酸である。本発明の方法では、C1−C8−、特にC1−C4アルキルスルホン酸を用いると好ましい。好ましい例はメタンスルホン酸、トリフルメタンスルホン酸及びエタンスルホン酸、特にメタンスルホン酸である。
【0026】
水吸収剤は、酸性反応媒体中の反応水を、モレキュラーシーブの場合は物理的に、五酸化リンの場合は化学的に結合可能である必要がある。本発明の方法では水吸収剤として五酸化リンを用いることが好ましい。
【0027】
液体反応媒体は、有機強酸及び水吸収乾燥剤の他に、不活性溶媒、例えばアルカン又はハロゲン化アルカンを含んでもよい。適するアルカンの例はペンタン、ヘキサン、ヘプタン及びドデカンであり、適するハロゲン化アルカンの例は塩化メチル及び1,2−ジクロロエタンである。
【0028】
本発明の方法は、メタンスルホン酸と五酸化リンとの混合物を50質量%を超過する量で含む液体反応媒体中で行われると好ましい。メタンスルホン酸と五酸化リンとの混合物を90質量%を超過する量で含む液体反応媒体が特に好ましく使用される。式(II)、(III)及び(IV)で示される出発成分は、上記の液体反応媒体の成分とはみなさない。
【0029】
本発明の方法では、式(II)の複素環化合物対、式(III)のα,β−不飽和カルボン酸のモル割合は、一般に5:1〜1:100の範囲とされ、2:1〜1:3であると好ましく、1.1:1〜1:1.5であると特に好ましい。式(III)のα,β−不飽和カルボン酸の代わりに式(IV)の無水物を用いる場合、本発明の方法において、式(IV)の無水物1モルは式(III)のカルボン酸2モルに対応する。
【0030】
本発明の方法に用いられる式(II)の複素環化合物対、液体反応媒体の質量割合は、一般に1:2〜1:1000、好ましくは1:3〜1:50、更に好ましくは1:5〜1:35の範囲である。
【0031】
本発明の方法では、水吸収剤対、有機強酸の質量割合は1:99〜25:75の範囲であると好ましい。五酸化リンとメタンスルホン酸の場合、質量割合は、5:95〜15:85の範囲であると好ましい。
【0032】
本発明の反応温度は、一般に20〜200℃、好ましくは50〜110℃、特に60〜90℃の範囲とされる。反応温度20℃では、転化率が非常に低く、60℃では十分な転化率が得られる。更に、110℃では所望の反応生成物の最大転化率を超えた。
【0033】
本発明の方法は、一般には大気圧下で行われるが、通常は減圧下又は高圧下にて行うことも可能である。最良の形態で反応を行うためには、反応条件下で、液体反応媒体中に反応対象材料が一緒に存在することのみが重要である。
【0034】
式(II)、(III)及び(IV)の出発材料は公知であり、市販されているが、文献に記載された方法により製造することも可能である。例えば2,3−二置換チオフェンは、J. Chem. Soc., Perkin 1, 22, (1976), 2344に記載の方法で製造可能である。
【0035】
本発明の方法は、高収率、高時空収率とされ、かつ反応混合物からの単離と、その結果得られた反応生成物の後処理が簡単であるという顕著な特徴を有する。
【0036】
以下の実施例により本発明を更に説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
一般的事項
質量分析器5973(El,70eV)を有する機器、Hewlett Packard 6890を用いてマススペクトルを測定した。140℃で撹拌しながら、164.3gの五酸化リンを975.7gの市販のポリリン酸(Aldrich)に完全に溶解することにより、Super-PPA(スパーポリリン酸)を製造した。市販のEaton試薬を用いた(Aldrich製、五酸化リンのメタンスルホン酸溶液、7.5質量%)。
【0038】
[実施例1]
2,5−ジメチル−4,5−ジヒドロシクロペンタ[b]チオフェン−6−オンの合成
150gの2−メチルチオフェン(1.5モル)と157.5gのメタクリル酸(1.8モル)の混合物を80℃にて、30分間で、1500mlのEaton試薬に添加した。温度は78℃〜83℃の範囲であった。添加終了後、反応混合物を更に5分間撹拌し、次いで3000mlの水と500mlのジクロロメタンを含む激しく撹拌された状態の混合物に徐々に注入した。有機相を取り出し、硫酸マグネシウムで乾燥した。回転式蒸発器で溶媒を留去し、263.5gの粗生成物を得た。GC−MS分析により測定した純度は88.2%であった。粗生成物の一部(79g)を蒸留した(92℃、0.02torr)。56.5g(76%)の生成物が、約9:1(チオフェン−6−オン:チオフェン−4−オン)の割合の2種類の異性体混合物として得られた。
主異性体の1HNMR(CDCl3):δ6.8(s、1H)、3.2(dd、1H)、2.95(m、1H)、2.5(s、3H)、2.4(m、1H)、1.25(d、3H)、EIMS:m/z(%)165([M+]、72)、151(100)、123(23)、97(11)、69(15)
【0039】
[比較例A]
2,5−ジメチル−4,5−ジヒドロシクロペンタ[b]チオフェン-6-オンの合成
100gの2−メチルチオフェン(1.02mol)と104mlのメタクリル酸(1.22mol)を200mlのジクロロメタン中に含む溶液を、1000gのスーパーPPAに、80℃にて30分間で滴下した。この後、反応混合物を80℃にて3時間撹拌した。暗赤色混合物が得られ、これを1000gの粉砕した氷に注入し、ポリリン酸が完全に溶解するまで撹拌した。水性層をそれぞれ400mlのジクロロメタン/ヘキサン溶媒混合物(30容量部/70容量部)で2度抽出した。得られた有機相を合わせて、これを炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。回転式蒸発器で溶媒を除去した後、136gの粗生成物を得た。粗生成物(90℃、0.1torr)を蒸留することにより、76g(46%)の生成物を得た。
【0040】
[実施例2]
2,5−ジメチル−3−ナフタレン−1−イル−4,5−ジヒドロシクロペンタ[b]チオフェン−6−オン(2)の合成
5gの2−メチル−3−ナフタレン−1−イルチオフェン(0.022mol)及び2.1mlのメタクリル酸(0.025mol)の混合物を、125mlのEaton試薬に、80℃にて15分間添加した。更に5分経過後、反応混合物を氷水に注入すると
沈殿生成物が得られた。300mlのジクロロメタンを添加して沈殿生成物を溶解した。有機相を除去し、炭酸水素ナトリウムの飽和溶液でこれを洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を除去した後、5gの生成物(2)を得た。GC分析の結果、生成物(2)は純度99%の単一の異性体として存在することがわかった。
1HNMR(CDCl3):δ7.8−8.0(t、2H)、7.3−7.6(m、5H)、2.8−3.0(m、2H)、2.2−2.4(m、1H)、2.3(s、3H)、1.25(d、3H)、EIMS:m/z(%)292([M+]、100)、277(62)、263(15)、249(16)、235(15)、215(8)、202(9)、189(6)、165(9)
【0041】
[比較例B]
2,5−ジメチル−3−ナフタレン−1−イル−4,5−ジヒドロシクロペンタ[b]チオフェン−6−オン(2)合成試験
5gの2−メチル−3−ナフタレン−1−イルチオフェン(0.022mol)と2.5mlのメタクリル酸(0.03mol)の、60mlのジクロロメタン溶液を、300gのスーパーPPAに70℃にて添加し、20時間撹拌した。GC−MS分析を行うと、反応混合物中には出発材料のみが存在し、生成物(2)が全く得られていないことがわかった。
【0042】
[実施例3]
5−メチル−2−フェニル−3−o−トリル−4,5−ジヒドロシクロペンタ[b]チオフェン−6−オン(3)の合成
31.8gの2−フェニル−3−o−トリル−チオフェン(0.127mol)と13.3molのメタクリル酸(0.157mol)の混合物を、500mlのEaton試薬に、約80℃にて30分間で添加した。添加が完全に終了した後、反応混合物を更に5分間撹拌し、次いで粉砕した氷に徐々に添加した。300mlのジクロロメタンを添加して反応生成物を溶解した。有機相を取り出し、炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液でこれを洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を除去した後、39gの生成物(3)を得た。GC−MS分析の結果、生成物(3)は純度95%の単一の異性体からなることがわかった。
1HNMR(CDCl3):δ7.0−7.3(m、4H)、2.8−3.1(m、2H)、2.2−2.4(m、1H)、1.9(s、3H)、1.25(dd、3H)、EIMS:m/z(%)318([M+]、100)、303(39)、275(16)、261(11)、247(6)、228(8)、215(13)、202(6)、189(6)、165(6)
【0043】
[比較例C]
5−メチル−2−フェニル−3−o−トリル−4,5−ジヒドロシクロペンタ[b]チオフェン−6−オン(3)合成試験
5gの2−フェニル−3−o−トリルチオフェン(0.02mol)と2.5mlのメタクリル酸(0.03mol)の混合物を、75gのスパー−PPAに90℃にて添加し、5時間撹拌した。GC−MS分析を行うと、反応混合物中には出発材料のみが存在し、生成物(3)が5%未満であることがわかった。
【0044】
[実施例4]
2−メチル−1,2-ジヒドロベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン−3−オンの合成
13.4gのベンゾ[b]チオフェン(0.10mol)と9.04molのメタクリル酸(0.105mol)の混合物を、134gのEaton試薬に、65℃にて添加した。反応混合物を65℃にて1時間撹拌し、次いで150mlの水中に注入した。水性層をジクロロメタン/ヘキサン溶媒混合物(30容量部/70容量部)で2度抽出した。得られた有機相を合わせて、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下に溶媒を除去した後、14.7g(72.8%)の粗生成物を得た。GC分析の結果、生成物は約33:1(チオフェン−3−オン:チオフェン−1−オン)の割合の2種類の異性体を含むことがわかった。
EIMSのM+(C1210OS):202.0(実測値)、202.27(理論値)
【0045】
[比較例D]
2−メチル−1,2−ジヒドロベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン−3−オンの合成
66.9gのベンゾ[b]チオフェン(0.5mol)と46.3gのメタクリル酸(0.537mol)の60mlのジクロロメタン中の溶液を、1000gのスーパー−PPAに、70℃にて20分にて滴下した。滴下中の温度を65〜70℃に維持した。塩化メチレンを留去した。2時間反応後の反応混合物を粉砕した氷に注入し、ポリリン酸が完全に溶解するまで撹拌した。水性層をジクロロメタン/ヘキサン溶媒混合物(30容量部/70容量部)で抽出した。得られた有機相を合わせて、これを炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液と、水とで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下に溶媒を除去した後、79.8gの暗橙色の油(71%)を得た。
1HNMR,2種類の異性体(CD2Cl2):δ7.2−8.2(m、4H)、2.6−3.4(m、3H)、1.3(m、3H)。
【0046】
[実施例5]
2−メチル−8−フェニル−1,2−ジヒドロベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン−3−オンの合成
10gの4−フェニルベンゾ[b]チオフェン(47.6mmol)と4.8mlのメタクリル酸(56.6mol)の混合物を、100mlのEaton試薬に、添加中の温度80℃にて30分で添加した。反応混合物を60℃に冷却し、激しく撹拌しながら400mlの水に徐々に添加した。250mlのジクロロメタンを添加すると、沈殿した生成物が溶解した。相を分離させた後、炭酸水素ナトリウムの飽和溶液と、水とで有機相を洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を除去すると、12gの生成物が得られた。GC分析の結果、生成物は純度90%であり、約7:3(チオフェン−3−オン:チオフェン−1−オン)の割合の2種類の異性体混合物を含むことがわかった。
主異性体の1HNMR(CDCl3):δ7.8(d、1H)、7.2−7.5(m、7H)、2.85(m、1H)、2.7(d、1H)、2.05(2、1H)、1.1(d、3H)、EIMS:m/z(%)287([M+]、100)、263(65)、249(13)、234(21)、221(47)、202(16)、189(9)、176(6)、163(8)、151(3)、139(3)。
【0047】
[比較例E]
2−メチル−8−フェニル−1,2−ジヒドロベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン−3−オン合成試験
76.2gの4−フェニルベンゾ[b]チオフェン(0.36mol)と37.5mlのメタクリル酸(0.44mol)の、50mlのジクロロメタン中の溶液を、80℃に加熱したスーパー−PPA1000gに滴下し、80℃にて5時間撹拌した。暗赤色混合物を1000gの粉砕した氷に添加し、ポリリン酸が完全に溶解するまで撹拌した。水性層をそれぞれ400mlのジクロロメタン/ヘキサン溶媒混合物(30/70容量部)で二度抽出した。GC−MS分析を行うと、有機相中には出発材料のみが存在し、所望の生成物は痕跡すらも含まれていないことがわかった。
【0048】
以下の表1に、実施例1〜5と比較例A〜Eとの比較結果を示す。
【0049】
【表1】

【0050】
[実施例6]
2,5−ジメチル−4,5−ジヒドロシクロペンタ[b]チオフェン−6−オンの合成試験
2−メチルチオフェン対、Eaton試薬の質量割合と、反応温度を変化させ、実施例1と同様の方法で種々の実験を行った。これらの結果を表2に記載する。
【0051】
【表2】

【0052】
a)添加中の温度は、発熱反応であること、及び反応対象成分が高濃度であることにより、110℃まで上昇した。
*)GC分析のみにより収率を測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)又は(Ia)
【化1】

の複素環ケトンを製造する方法であって、
式(II)
【化2】

で表される複素環化合物を、式(III)
【化3】

で表されるα,β−不飽和カルボン酸、又は
式(IV)
【化4】

で表される無水物と反応させ、該反応を、少なくとも1種類の有機強酸と、少なくとも1種類の水吸収剤とを含む液体反応媒体中で行い、前記有機強酸は式(III)のカルボン酸よりも酸性度が強く、前記反応は式(II)の複素環化合物を、式(III)のα,β−不飽和カルボン酸又は式(IV)の無水物と一緒かつ同時に、前記液体媒体に添加し、各式中
1は水素又はC1−C40炭素含有基を意味し、
2は水素又はC1−C40炭素含有基を意味し、又は
1とR2とが共同で環式基を形成し、
3はC1−C40炭素含有基を意味し、
Xは周期表第16族元素、又は二価窒素基−(N−R4)−を意味し、R4は過ハロゲン化C1−C40炭素含有基及びC1−C40オルガノスルホニル基からなる群から選択された電子吸引性基であることを特徴とする、複素環ケトンの製造方法。
【請求項2】
Xが硫黄を意味することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
有機強酸がC1−C8アルキルスルホン酸であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
水吸収剤が五酸化リンであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
液体反応媒体の少なくとも50質量%がメタンスルホン酸と五酸化リンとの混合物から構成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
式(II)の複素環化合物対、式(III)のα,β−不飽和カルボン酸のモル比が5:1〜1:100の範囲にあることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
式(II)の複素環化合物対、液体反応媒体の質量割合が1:2〜1:1000の範囲にあることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
水吸収剤対、有機強酸の質量割合が1:99〜25:75の範囲にあることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
反応を20℃〜200℃の温度範囲において行うことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)又は(Ia)
【化1】

の複素環ケトンを製造する方法であって、
式(II)
【化2】

で表される複素環化合物を、式(III)
【化3】

で表されるα,β−不飽和カルボン酸、又は
式(IV)
【化4】

で表される無水物と反応させ、該反応を、少なくとも1種類の有機強酸と、少なくとも1種類の水吸収剤とを含む液体反応媒体中で行い、前記有機強酸は式(III)のカルボン酸よりも酸性度が強く、前記反応は式(II)の複素環化合物を、式(III)のα,β−不飽和カルボン酸又は式(IV)の無水物と一緒かつ同時に、前記液体媒体に添加し、前記反応は50℃〜100℃の温度範囲において行われ、
各式中
1は水素又はC1−C40炭素含有基を意味し、
2は水素又はC1−C40炭素含有基を意味し、又は
1とR2とが共同で環式基を形成し、
3はC1−C40炭素含有基を意味し、
Xは周期表第16族元素、又は二価窒素基−(N−R4)−を意味し、R4は過ハロゲン化C1−C40炭素含有基及びC1−C40オルガノスルホニル基からなる群から選択された電子吸引性基であることを特徴とする、複素環ケトンの製造方法。
【請求項2】
Xが硫黄を意味することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
有機強酸がC1−C8アルキルスルホン酸であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
水吸収剤が五酸化リンであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
液体反応媒体の少なくとも50質量%がメタンスルホン酸と五酸化リンとの混合物から構成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
式(II)の複素環化合物対、式(III)のα,β−不飽和カルボン酸のモル比が5:1〜1:100の範囲にあることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
式(II)の複素環化合物対、液体反応媒体の質量割合が1:2〜1:1000の範囲にあることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
水吸収剤対、有機強酸の質量割合が1:99〜25:75の範囲にあることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。

【公表番号】特表2006−511609(P2006−511609A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502543(P2005−502543)
【出願日】平成15年12月17日(2003.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2003/014358
【国際公開番号】WO2004/056796
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(500585878)バーゼル、ポリオレフィン、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング (35)