説明

複素環薬剤化合物及びその調製法と用途

【発明の詳細な説明】
本発明は医学分野で有用な新規のモルホリノール化合物、その調製方法、及びそれらとその調製物を含む薬物製剤、医学分野におけるその化合物の利用、そしてそれらの新規の化学的中間体とその調製法に関する。
ヨーロツパ特許出願第0170430号は、式

(式中、Yは水素又はフツ素であり、Rは水素又はアルキル(C1-4)である)の化合物及びその塩、そして薬学分野で広く受け入れられている抗欝剤活性を測定する方法(例えば齧歯類でのテトラベナジン誘導鎮静試験)により証明されるそれらの抗欝剤活性を開示している。
本発明によれば、式(I)


の(2,3,5)モルホリノールが、その(+−)−(2*,3*,5*)ラセミ体、及びその塩と共に与えられ、驚くべきことにこれらもまた抗欝剤活性を示し、その活性は上記のテトラベナジン試験で上記ヨーロツパ特許中に特定された化合物よりも著しく強いことがわかつた。
幸いなことにこれらのモルホリノールは、治療量の範囲で有意の運動刺激を引き起こさず、実質的に前痙攣性(proconvulsant)活性を示さない。
式(I)において、Xは水素、1から6個の炭素原子を有するアルキル、又は3から6個の炭素原子を有するシクロアルキル又は−CH2−X1基(ここでX1は3から6個の炭素原子を有するシクロアルキルである)である。
Xが3から6個の炭素原子を有するアルキルである時、この基は直鎖であるか又は分岐鎖である。
特に明記していない場合は、ここで「式(I)の化合物」は一般的に、上記の(2,3,5)化合物及び(+−)−(2*,3*,5*)ラセミ体をいみする。
本発明は(2,3,5)−対掌体を実質的に含まない(2,3,5)化合物又はその塩を意味する。またここで「実質的に含まない」とは前者が後者の5%(w/w)以下であることを意味する。
式(I)の好適な化合物は、Xが水素又は1から6個(特に1から4個、最も好ましくは1又は2個)の炭素原子を有するアルキルである化合物、及びその塩である。
特に好適なものは式(I a)の(2,3,5)化合物

(化学的に(2,3,5)−2−(3,5−ジフルオロフエニル)−3,5−ジメチル−2−モルホリノールと呼ばれる)及びその塩、そして(+−)−(2*,3*,5*)ラセミ体(化学的に(+−)−(2*,3*,5*)−2−(3,5−ジフルオロフエニル)−3,5−ジメチル−2−モルホリノールと呼ばれる)及びその塩である。
当然理解されるように構造式(I)と(I a)はそれぞれの化合物の2次元の構造を示すのみであり、3次元の立体構造ではない。
式(I)の化合物とその塩は、類似の構造の化合物の合成法に関する公知の方法により調製される。参考のためこれらに関する標準的な文献を以下に記載する:1) 「有機化学における保護基」(“Rrotective Groups in Organic Chemistry")、ジエイ・エフ・ダブリユー、マコーミー(J.F.W.McOmie)編、プレナム出版(Plenum Press)(1973年)ISBN 0−306−30717−0;2) 「有機合成法の概論」(“Compendium of Organic Synthetic Methods")、アイ・テイー・ハリソンとエス・ハリソン(I.T.Harrison and S.Harrison)編、ウイリーインターサイエンス(Wiley Interscience)、第1巻(1971年)、ISBN 0−471−35550−X、第2巻(1974年)ISSBN 0−471−35551−8及び第3巻(エル・エス・ヘゲダスとエル・ウエード(L.S.Hegedus and L.Wade)編)(1977年)、ISBN 0−471−36752−4;そして3) ロツドの「炭素化合物の化学」(Rod's“Chemistry of Carbon Compounds")第2版、エルセビア出版社(Elsevier Publishing Company)。
上記の文献はすべて参考のため本明細書に引用してある。
1. 1つの方法は適当なキラリテイを有するアルコール(II)(ここでXは式(I)で定義したものである)と、ケトン(III)(ここでLは遊離する原子又は基(例えばクロロ、ブロモ、ヨード)である)と反応させることよりなる。この反応は溶媒(アセトニトリル、ジクロロメタン、エタノールまたはメタノール)中で、20℃から40℃の範囲の温度で実施することが便利である。


ラセミ体(化合物(II))を使用してこの反応を実施すると、式(I)の(+−)−(2*,3*,5*)ラセミ体が得られ、(R)−アルコールは選択的に(2,3,5)化合物を与える。
2. Xが水素以外の化合物は、式(I)(式中、Xは水素である)の対応する化合物と、試薬(IV)
X2−L1 (IV)
(式中、X2は式(I)で定義した水素以外の基Xであり、L1は例えばハロ(例えばクロロ、ブロモ、またはヨード)のような遊離する原子又は基である)と反応させることによつても得られる。この反応は溶媒(アセトニトリル、ジクロロメタン、エタノールまたはメタノール)中で、20℃から100℃の範囲の温度で実施することが便利である。
3. (2,3,5)化合物はまた、対応する(+−)−(2*,3*,5*)ラセミ体の分別によつても得られる。これは適当な溶媒(例えば水性エタノール)中で、光学活性を有する酸(例えば(+)−又は(−)−酒石酸−塩酸塩又は(+)−又は(−)−ジベンジル−L−又はD−酒石酸一塩酸塩)で(+−)−(2*,3*,5*)ラセミ体のジアステレオマー塩を形成させ、適当な(ジアステレオマー)塩を再結晶させ、このモルホリノール遊離塩基を単離する、従来法により得られる。
式(I)の化合物とその薬剤として許容される塩は、鬱病と同定されるヒトの鬱病の治療に使用され、その治療法は、式(I)の化合物又は薬剤として許容されるその塩の抗欝剤として有効な、非毒性(投与)量(好ましくは単回投与型で)を投与することよりなる。
該化合物とその塩による治療が特に有用な鬱病状態とは、「精神障害の診断と統計学的マニユアル」(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)第3版−改定版、アメリカ精神科協会(American Psychiatric Association)、ワシントン・デイー・シー(Washington,D.C.)(1987年)(DSM−III−R)中の情動障害(affective disorders)として分類されるものであり、気分障害(mood disorders)(DSM−III−R,296.2Xから296.6X)を含み、他の特定の情動障害(301.13と300.40)、そして特に特定されない相極型及び欝病性の障害(296.70と311.00)が含まれる。
これらの化合物と塩のヒトの病気の治療における他の用途には以下の症状の治療があり、その分類は(記載されている場合は)DSM−III−Rで採用されているものである:−不安症、恐怖症(300.00,300.21,300.23そして300.29)、不安神経症(300.01,300.02そして300.30)及び外傷後のストレス症(309.89)。
−注意欠乏症(attention deficit disorders)(314.00と314.01)。
−食事障害、神経性食欲不振症(307.10)と病的大食(307.51)。
−性格障害、境界の性格異常(301.83)を含む。
−性的機能障害、性欲低下症(302.71)、女性の性的刺激障害又は男性の勃起障害(302.72)、女性の抑圧されたオーガズム(302.73)、男性の抑圧されたオーガズム(302.74)、早漏(302.75)、性交疼痛(302.76)、膣痙(306.51)、及び他に明記されていない性機能障害(302.70)。
−頭痛、片頭痛、筋肉収縮そして混合頭痛(片頭痛と筋肉収縮の組合せ)。
−睡眠発作−脱力発作症候群、異常な眠気が特徴的な症状であり、しばしば睡眠発作(一見耐え難い睡眠の要求であり、普通約15分間又はそれ以下の時間続き、感情の表現に関連して短時間の筋肉の緊張の喪失(脱力発作)を伴う)の形を取る。
この化合物と塩はさらにヒトの薬として以下の用途に使用される:−不正な薬物乱用を止めた後の禁断症状を緩和する−モルヒネ又は類似のアヘン性鎮痛剤に誘導される鎮痛作用の増強(例えば末期症状の癌患者の保護と治療)
−眠気を誘導するベンゾジアゼピン精神安定剤の投与による機能障害と眠気を防ぐ;該化合物又は塩と上記のベンゾジアゼピンの同時投与の適当な適応症にはa)機能障害や眠気が好ましくないときの不安と欝病が混合している場合の治療、b)機能障害や眠気が好ましくないときの不安の治療、−ベンゾジアゼピン精神安定剤投与後による記憶喪失を防ぐ−エタノール吸引による急性の精神機能障害の回復−例えば分娩後又は高プロラクチン血症の乳汁漏出症における乳汁分泌の抑制、高プロラクチン血症に起因する無月経症、そして乳癌の治療におけるプロラクチン放出又は分泌の抑制−良性の老衰に伴う記憶喪失及び他の記憶疾患の治療。
前記の適応症のそれぞれに対して、式(I)の化合物又はその塩(塩基として計算)の非経口(皮下、筋肉内、静脈投与を含む)投与の好適な投与量は、1日当り体重1kgにつき0.05mgから10mgの範囲であり、最も好ましい投与量は0.1mgから5mgの範囲である。経口投与、肛門投与、局所投与(頬内と舌下を含む)、又は経皮投与の場合は、式(I)の化合物又はその塩(塩基として計算した)の好適な投与量は、1日当り体重1kgにつき0.05mgから20mgの範囲であり、最も好ましい投与量は0.1mgから10mgの範囲である。
当然理解できるように正確な投与量は多くの臨床因子(例えば患者の年齢や問題の症状とその重症度)により異なる。
非経口(皮下、筋肉内、静脈投与を含む)投与、経口投与、肛門投与、局所投与(頬内と舌下を含む)の、式(I)の化合物又はその塩の好適な投与量は、1mgから200mgの範囲であり、さらに好ましい単回投与量は5mgから150mgの範囲であり、最も好ましい単回投与量は10mgから100mgである。
上記の投与量はすべて塩基の重さで示してあるが、式(I)の化合物は、その薬剤として許容される塩の形で投与することが好ましい。
式(I)の化合物又はその塩は1日4回投与することが好ましいが、これは治療される患者、及び医師の判断により変更される。
活性化合物(即ち式(I)の化合物又はその薬剤として許容される塩)は原料化学物質として単独に投与することもできるが、許容される担体とともに式(I)の化合物(又はその薬剤として許容される塩)よりなる薬物製剤として投与することもできる。
担体は製剤の他の成分と融和性があり、投与される者に有害でないという意味で、許容できるものでなければならない。
活性化合物は製剤の5から95重量%よりなることが便利である。
製剤は、経口、肛門、局所(頬内と舌下を含む)、非経口(皮下、筋肉内そして静脈投与を含む)、又は経皮投与に適するものでなければならない。
製剤は単回投与の形で与えることが便利であり、薬学の分野の公知の任意の技術により調製することができる。すべての方法は、活性化合物を1つ又はそれ以上の副成分と接触させる段階を含む。一般的に製剤は活性化合物を、液体担体又は細かく粉砕した固形担体又はその両方と均一かつ密接に接触させることにより、そして必要な場合は生成物を形作ることにより調整できる。
経口投与に適した本発明の製剤は、各々があらかじめ決められた量の活性化合物を含有する独立した単位(例えばカプセル剤、カシエ剤、錠剤又はトローチ剤)として;散剤又は粒剤(マイクロカプセル型又は時間放出型を含む)として;又は水性液体又は非水性液体中の懸濁液又は溶液(例えばシロツプ剤、エリキシル剤、乳剤又は水薬)として与えられる。
錠剤は、随時1つ又はそれ以上の副成分とともに、圧縮又は成形により作られる。圧縮錠剤は、自由な流動形の活性成分(例えば、随時結合剤、分解物質、潤沢剤、不活性希釈剤、界面活性剤又は分散剤とともに混合される散剤又は粒剤)を、適当な機械の中で圧縮して調製される。粉末化した活性化合物と適当な担体との混合物よりなる成形した錠剤は、適当な機械の中で成形することにより作成される。
肛門投与に適した製剤は、従来の担体(例えばカカオ油脂、水素添加脂肪又は水素添加脂肪カルボン酸)とともに坐剤として与えられる。
口への局所投与(例えば頬内、又は舌下)に適した製剤は、香りのついたベース(例えばシヨ糖とアラビアゴム又はトラガカントゴム)中の活性化合物よりなるトローチ剤、及びゼラチンとグリセリン、又はシヨ糖とアラビアゴムをベースにした活性化合物よりなる芳香製剤がある。
非経口投与に適した製剤は、目的の患者の血液と等張の活性化合物の無菌の水性調製物よりなることが便利である。この製剤は単回投与型容器又は複数回投与型容器(例えば密封したアンプルやバイアル)中で与えられ、使用直前に無菌の液体担体(例えば水)を加えればよいような凍結乾燥型で保存される。別の可能性として活性化合物はリポソームの形で与えられる。
経皮投与に適した製剤は、投与される者の表皮に長期間密着して保持されるように適合させた別別のパツチ(patch)として与えることができる。このようなパツチは、随時緩衝化した(例えば該化合物に対して0.1から0.2M濃度の)水溶液として活性化合物を含むことが適当である。特にその1つの可能性として、活性化合物はイオントフオレーシス(iontophoresis)(フアーマシユーチカルリサーチ(Pharmaceutical Research)第3/6巻、318頁(1986年)に一般的に記載されている)によりパツチから供給することができる。
本発明の製剤は、前記の成分以外にさらに、希釈剤、緩衝剤、香味剤、結合剤、分解剤、界面活性剤、シツクナー(thickner)、潤沢剤、保存剤(抗酸化剤を含む)などより適宜選択される、1つ又はそれ以上の副成分を含む。
医学の分野で使用するときは、式(I)の化合物の塩は薬剤として許容されるものでなければならないが、薬剤として許容されない塩でも、対応する遊離の塩やその薬剤として許容される塩を調製するのに便利に使用することができるため、本発明の範囲に含まれる。
このような薬剤として許容される塩としては以下のものがあるが、これらに限定されるものではない:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、蟻酸、マロン酸、コハク酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、スルフアミン酸、エタンスルホン酸及びベンゼンスルホン酸。
NMRスペクトルと他の物理化学的データは、記載の環状(即ちモルホリノール)構造を有する式(I)及び(I a)の化合物に一致する。しかし(まだ定義されていないが)ある条件下では、それらは少なくとも一部は、以下の2次元的に示した式の対応する非環状互変体として存在する。


従つて本明細書においては式(I)と式(I a)は上記互変体を含むと考えるべきである。
以下の実施例で本発明を例示するが、これらは決して本発明を限定するものではない。
実施例1(+−)−2(*,3*,5*)−2−(3,5−ジフルオロフエニル)−3,5−ジメチル−2−モルホリノール塩酸塩 500mlのジエチルエーテル中の3,5−ジフルオロベンゾニトリル(アルドリツチケミカル社(Aldrich Chemical Co.)、ミルウオーキー、ウイスコンシン州53233)(50.0g、0.36モル)の溶液に、0℃でジエチルエーテル中の臭化エチルマグネシウムの溶液(3.0M溶液の135ml、0.41モル)を滴下して加えた。反応混合液を3時間還流した後、氷浴中で冷却し、100mlの6N塩酸中で加水分解した。混合液を蒸気浴上で0.5時間加熱した。pHを酸性(リトマス)にし、水層をジエチルエーテルで抽出して2層を分離した。抽出物を合わせ、乾燥(硫酸ナトリウム)し、真空中で濃縮して、61.3g(理論値の91%)の粗3′,5′−ジフルオロプロピオフエノンを得た。
500mlのジオキサンに臭素(52.7g、0.33モル)を滴下して調製した二臭化ジオキサン溶液を、500mlのジオキサン中の3′,5′−ジフルオロプロピオフエノン(56.0g、0.33モル)の溶液に滴下して加えた。室温で一晩撹拌後、反応混合液を2.5リツトルの水に注いだ。水溶液をジクロロメタンで抽出した。抽出物を乾燥(硫酸ナトリウム)し、真空中で濃縮して、粗2−ブロモ−3′,5′−ジフルオロプロピオフエノンを得た。クーゲルロア(Kugelrohr)装置で60−32℃の沸点で0.3mmHgで蒸留した後の生成物、2−ブロモ−3′,5′−ジフルオロプロピオフエノンは屈折率がnd21.1゜=1.5273を有していた。
元素分析;C9H7BrF2O(分子量249.06)の計算値:C,43.40%;H,2.83%。
実測値:C,43.53%;H,2.88%。
NMR−1H:(DMSO−d6)δ1.91(d,3H,CH3)、5.14(q,1H,CH)、7.02−7.55(芳香族性水素)。
アセトニトリル(100ml)中の2−ブロモ−3′,5′−ジフルオロプロピオフエノン(25.0g、0.10モル)の溶液に、アセトニトリル(100ml)中のd1−2−アミノ−2−プロパノール)(8.3g、0.11モル)(アルドリツチケミカル社(Aldrich Chemical Co.)、ミルウオーキー、ウイスコンシン州53233)と2,6−ルチジン(15.0g、0.14モル)の溶液を加えた。室温で6日間撹拌後、得られた固体を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄し、乾燥して(+−)−(2*,3*,5*)−2−(3,5−ジフルオロフエニル)−3,5−ジメチル−2−モルホリノール臭化水素酸塩を得た。エタノール−ジエチルエーテル混合液から試料を再結晶して白色の固体を得た。融点228−229℃dec。
元素分析;C12H16BrF2NO2(分子量324.16)の計算値:C,44.46%;H,4.98%:N,4.32%。実測値:C,44.35%;H,5.00%;N,4.30%。
水の中の(+−)−(2*,3*,5*)−2−(3,5−ジフルオロフエニル)−3,5−ジメチル−2−モルホリノール臭化水素酸塩(8.0g、0.02モル)を、水酸化ナトリウムの50%水溶液で塩基性にし、ジエチルエーテルで抽出した。このジエチルエーテル溶液を乾燥(炭酸カリウム)し、減圧下で濃縮して遊離の塩基を得た。ヘキサンで再結晶後の融点は140−142℃であつた。遊離の塩基をジエチルエーテルに溶解し、エーテルを含んだ塩化水素で処理した。この塩酸塩をエタノール−ジエチルエーテル混合液から再結晶し、(+−)−(2*,3*,5*)−2−(3,5−ジフルオロフエニル)−3,5−ジメチル−2−モルホリノール塩酸塩を白色の結晶として得た。融点228−229℃dec。
元素分析;C12H16ClF2NO2(分子量279.71)の計算値:C,51.52%;H,5.77%;N,5.01%。実測値:C,51.46%;H,5.82%;N,5.00%。
NMR−1H:(DMSO−d6)δ0.96(d,3H,CH3)、1.21(d,3H,CH3)、3.44(広いマルチプレツト、2H,CH)、3.85(マルチプレツト、2H、CH2)、7.17−7.32(芳香属性水素)、7.63(d,1H,OH)、8.77と10.33(広い、2H,HClとNH)。
実施例2(2,3,5)−2−(3,5−ジフルオロフエニル)−3,5−ジメチル−2−モルホリノール塩酸塩 3′,5′−ジフルオロプロピオフエノン(56.0g、0.33モル)に、ジオキサン(500ml)中の二臭化ジオキサン(81.8g、0.33モル)溶液を加えた。反応混合液を実施例1のように処理して粗2−ブロモ−3′,5′−ジフルオロプロピオフエノン(83.9g)を得た。
アセトニトリル(60ml)中の2−ブロモ−3′,5′−ジフルオロプロピオフエノン(22.4g、0.09モル)の溶液に、アセトニトリル(100ml)中のR−(−)−2−アミノ−1−プロパノール(アルドリツチケミカル社(Aldrich Chemical Co.)、ミルウオーキー、ウイスコンシン州53233)(7.5g、0.1モル)と2,6−ルチジン(11.8g、0.11モル)の溶液を加えた。反応混合液を実施例1のように処理して、(2,3,5)−2−(3,5−ジフルオロフエニル)−3,5−ジメチル−2−モルホリノール臭化水素酸塩を得た。エタノール−ジエチルエーテル混合液から試料を再結晶して白色の固体を得た。融点240−241℃。
元素分析;C12H16BrF2NO2(分子量324.16)の計算値:C,44.46%;H,4.98%;N,4.32%。実測値:C,44.45%;H,5.00%;N,4.24%。〔α〕D20=+34.6゜(95%エタノール、C=0.687)
水の中の(2,3,5)−2−(3,5−ジフルオロフエニル)−3,5−ジメチル−2−モルホリノール臭化水素酸塩(7.5g、0.023モル)の溶液を、水酸化ナトリウムの40%水溶液で塩基性にし、ジエチルエーテルで抽出した。このジエチルエーテル層を合わせて、食塩水で洗浄し、乾燥(炭酸カリウム)し、減圧下で濃縮して遊離の塩基を得た。ヘキサンからの再結晶後の融点113−115℃。〔α〕D20=+65.3゜(c=0.658、95%エタノール、)。
NMR−1H:(DMSO−d6)δ0.68(d,3H,CH3)、0.93(d,3H,CH3)、1,84(広い,1H,NH)、2.82(br q,1H,CH)、2.97(br m,1H,CH)、3.49(m、2H、CH2)、6.46(s,1H,OH)、7.10−7.20(芳香属性水素)。
この遊離塩基をジエチルエーテルに溶解し、エーテルを含んだ塩化水素で処理した。この塩酸塩をエタノール−ジエチルエーテル混合液から再結晶して、(2,3,5)−2−(3,5−ジフルオロフエニル)−3,5−ジメチル−2−モルホリノール塩酸塩を白色結晶として得た。融点255−257℃。
元素分析;C12H16ClF2NO2(分子量279.71)の計算値:C,51.52%;H,5.77%;N,5.01%。実測値:C,51.62%;H,5.76%;N,4.98%。
〔α〕D20=+42.1゜(95%エタノール、C=0.687)
NMR−1H:(DMSO−d6)δ0.97(d,3H,CH3)、1.20(d,3H,CH3)、3.49(広いマルチプレツト、2H,CH)、3.83(鋭いマルチプレツト、2H、CH2)、7.17−7.34(芳香属性水素)、7.62(s,1H,OH)、8.75と10.10(広い、2H,HClとNH)。
実施例3(2,3,5)−2−(3,5−ジフルオロフエニル)−3,4,5−トリメチル−2−モルホリノール塩酸塩、4分の1水和物 水(100ml)とジエチルエーテル(100ml)の混合液中の(2,3,5)−2−(3,5−ジフルオロフエニル)−3,5−ジメチル−2−モルホリノール塩酸塩(実施例2)(10.0g、0.036モル)の冷却した懸濁液に、水酸化ナトリウムを50%水溶液として液が塩基性になるまで加えた。層を分離し、水層をジエチルエーテルで抽出した。抽出液を合わせ乾燥(炭酸カリウム)し、濾過し、減圧下で濃縮して(2,3,5)−2−(3,5−ジフルオロフエニル)−3,5−ジメチル−2−モルホリノールを得た(8.7g)。アセトニトリル(50ml)中のこの塩基(8.7g、0.036モル)とヨウ化メチル(7.7g、0.054モル)の混合液を、ウイートン(Wheaton)加圧ビン中に入れ、蒸気浴中の水浴で48時間加温した。次にヨウ化メチル(7.7g、0.054モル)をさらに加え、混合液をさらに5日間加温した。次に反応混合液を減圧下に濃縮して、残渣をジエチルエーテルと水酸化ナトリウム(1N水溶液)間で分配させた。エーテル層を乾燥(硫酸ナトリウム)し、濾過し、減圧下に濃縮した。溶出液として酢酸エチル:エタノール(95:5)を用いて、残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフイーで精製し、(2,3,5)−2−(3,5−ジフルオロフエニル)−3,4,5−トリメチル−2−モルホリノールを得た。これをジエチルエーテルに溶解し、ジエチルエーテル中1.0Mの塩化水素の溶液を加えた。得られた塩を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄し、アセトニトリル:ジエチルエーテル混合液から再結晶して、標題の化合物を白色の結晶として得た。融点212−214℃eff。
〔α〕D20=+50.35゜(C=0.727、95%エタノール)
元素分析;C13H18ClF2NO2・1/4H2O(分子量298.25)の計算値:C,52.35%;H,6.25%;N,4.70%;H2O,1.51%。実測値:C,52.48%;H,6.24%N,4.71%;H2O,1.34%。
NMR−1H:(DMSO−d6/D2O)δ1.01(d,3H,CH3)、1.26(d,3H,CH3)、2.76(s,3H,CH3)、3.55(広いマルチプレツト、2H,CH),3.90(鋭いマルチプレツト、2H、CH2)、7.19−7.30(芳香属性水素)
実施例4(+−)−(2*,3*,5*)−2−(3,5−ジフルオロフエニル)−3,4,5−トリメチル−2−モルホリノール塩酸塩 これは(+−)−(2*,3*,5*)−2−(3,5−ジフルオロフエニル)−3,5−ジメチル−2−モルホリノール塩酸塩(実施例1)から、実施例3と同様の方法を使用して調製した。生成物は白色の固体として得られた。融点191−193℃eff。
元素分析;C13H18ClF2NO2(分子量293.74)の計算値:C,53.15%;H,6.18%;N,4.77%。実測値:C,53.05%;H,6.22%;N,4.75%。
NMR−1H(DMSO−d6/D2O)δ1.02(d,3H,CH3)、1.27(d,3H,CH3)、2.77(s,3H,CH3)、(広いマルチプレツトはHODのピークの下)、3.93(鋭いマルチプレツト、2H,CH2)、7.20−7.29(芳香属性水素)
実施例5(2,3,5)−2−(3,5−ジフルオロフエニル)−4−エチル−3,5−ジメチル−2−モルホリノール塩酸塩、1水和物 これは(2,3,5)−2−(3,5−ジフルオロフエニル)−3,5−ジメチル−2−モルホリノール塩酸塩(実施例2)を、実施例3と同様の方法でヨウ化メチルの代わりにヨウ化エチルを使用して調製した。生成物は白色の固体として得られた。融点169−172℃。
〔α〕D20=+46.36゜(C=0.701、95%エタノール)
元素分析;C14H20ClF2NO2・H2O(分子量325.78)の計算値:C,51.61%;H,6.81%;N,4.30%。実測値:C,51.61%;H,6.82%;N,4.30%。
NMR−1H:(DMSO−d6)δ0.98(d,3H,CH3)、1.14(t,3H,CH3)、1.24(d,3H,CH3)、3.24(m,2H,CH)、3.60(広いトリプレツト,1H,CH)、3.72(広いマルチプレツト,1H,CH)、3.96(鋭いマルチプレツト、2H、CH2)、7.26−7.33(芳香族水素)、7.83(d,1H,OH)、9.83(m,1H,HCl)。
実施例6:抗テトラベナジン試験 ベルニエーテル(Vernier)らの方法(フアーストハネマンシンポジウムオンサイコソマテイツクメデイシン(First Hahnemann Symposium on Psychosomatic Medicine)、ノデイムとモイエ(Nodim and Moyer)編、リーアンドフエビガー(Lea amd Febiger)発行、フイラデルフイア、1962年の改良法を使用して、テトラベナジン誘導性の鎮静の防止を測定した。
それぞれ12匹のCDlの雄よりなる群のマウスに、生理食塩水中の式(I)の化合物の塩酸塩又は生理食塩水のみを、腹腔内に(i.p.)投与した。30分後各マウスにテトラベナジン塩酸塩の溶液を注射した(i.p.、35mg/kg)。テトラベナジン注射の30分後、各マウスの探査行動のレベルを調べ、ベルニエール(Vernier)らの定義した任意のスケールを改変したものを使用して点数をつけた。表1においてED50値として報告した結果は、試験した動物の50%においてテトラベナジンの効果を逆転させるのに必要な試験化合物の量である。


実施例7:製剤A. 錠剤

乳糖、コーンスターチそして式(I)の化合物を一緒に混合し、結合剤(アルコール性溶液中のポリビニルピロリドン)とともに顆粒化して粒剤を作る。
顆粒を16−20メツシユのスクリーンに通し、空気乾燥し、微粉化シリカゲルで潤沢化し、圧縮して錠剤にする。次に必要な場合はフイルムコートを適用する。
B. カプセル剤

上記の成分を混合し、2ピースのハードゼラチンカプセルに充填する。
C. 非経口投与式(I)の化合物 25mg (薬剤として許容される塩として) (塩基として計算)
注射用無菌水で 1.0mlとする 無菌条件下で式(I)の化合物の薬剤として許容される塩を無菌水に溶解して1.0mlとする。このような溶液を密封した無菌アンプルに入れて単回服用型とするか、又は複数回投与用に無菌バイアスに入れる。製剤を複数回投与用の容器に充填する場合は、静菌剤(例えば0.2から0.5%w/vのフエノール)を添加することが好ましい。
D. 坐剤 式(I)の化合物の塩酸塩(50mg、塩基として計算)を250mgの軟らかくした又は溶融したカカオ油脂と混合し、鋳型の中で冷却し成形して坐剤を作る。
実施例8:毒性 (2,3,5)−2−(3,5−ジフルオロフエニル)−3,5−ジメチル−2−モルホリノール塩酸塩(実施例2)を単回経口投与したネズミは、抗テトラベナジン試験で経口ED50の100倍量を加えても、死んだものはなかつた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】式(I)


(式中、Xは水素、1から6個の炭素原子を有するアルキル、又は3から6個の炭素原子を有するシクロアルキル又は−CH2−X1基(ここでX1は3から6個の炭素原子を有するシクロアルキルである)である)の(2,3,5)化合物、及びその塩。
【請求項2】(2,3,5)−対掌体を実質的に含まない、特許請求の範囲第1項に記載の(2,3,5)化合物及びその塩。
【請求項3】特許請求の範囲第1項に記載の式(I)の(+−)−(2*,3*,5*)ラセミ化合物、及びその塩。
【請求項4】特許請求の範囲第1項から第3項までのいずれか1項に記載の化合物(ここでXは水素又は1から6個の炭素原子を有するアルキルである)、及びその塩。
【請求項5】(2,3,5)−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−3,5−ジメチル−2−モルホリノール及びその塩。
【請求項6】(+−)−(2*,3*,5*)−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−3,5−ジメチル−2−モルホリノール及びその塩。
【請求項7】(2,3,5)−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−3,4,5−トリメチル−2−モルホリノール及びその塩。
【請求項8】(+−)−(2*,3*,5*)−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−3,4,5−トリメチル−2−モルホリノール及びその塩。
【請求項9】(2,3,5)−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−4−エチル−3,5−ジメチル−2−モルホリノール及びその塩。
【請求項10】特許請求の範囲第1項から第9項までのいずれか1項に記載の化合物の塩。
【請求項11】特許請求の範囲第1項から第9項までのいずれか1項に記載の化合物の薬剤として許容される塩。
【請求項12】特許請求の範囲第1項から第9項までのいずれか1項に記載の化合物の塩酸塩。
【請求項13】特許請求の範囲第1項から第9項までのいずれか1項に記載の化合物、又は薬剤として許容されるその塩を含むヒトの精神障害に治療に使用される薬剤。
【請求項14】特許請求の範囲第1項から第9項までのいずれか1項に記載の化合物、又は薬剤として許容されるその塩を含むヒトの鬱病の治療に使用される薬剤。
【請求項15】経口投与に適合する特許請求の範囲第13項または第14項に記載の薬剤。
【請求項16】カプセル剤又は錠剤の形である、特許請求の範囲第15項に記載の薬剤。
【請求項17】特許請求の範囲第1項から第9項までのいずれか1項に記載の化合物、又は薬剤として許容される塩を混合する特許請求の範囲第15項又は第16項に記載の、薬剤の調製方法。
【請求項18】特許請求の範囲第1項から第9項までのいずれか1項に記載の化合物の調製方法であって、a)適当なキラリティ(chirality、掌性)を有するアルコール(II)(式中、Xは式(I)で定義したものである)と、ケトン(III)


(式中、Lは遊離する原子又は基である)とを反応させた後、その生成物を適宜その遊離塩基または塩に変換することによりなる、上記方法。
【請求項19】特許請求の範囲第1項から第9項までのいずれか1項に記載の化合物の調製方法であって、b)Xが水素以外であるとき、対応する式(I)(式中、Xは水素である)の化合物と試薬(IV)
X2−L1 (IV)
(式中、X2は式(I)で定義した水素以外の基Xであり、L1は遊離する原子又は基である)とを反応させた後、その生成物を適宜その遊離塩基または塩に変換することによりなる、上記方法。
【請求項20】特許請求の範囲第1項から第9項までのいずれか1項に記載の化合物の調製方法であって、c)(2,3,5)化合物については、対応する(+−)−(2*,3*,5*)ラセミ体を分別した後、その生成物を適宜その遊離塩基または塩に変換することによりなる、上記方法。
【請求項21】特許請求の範囲第18項から第20項までのいずれか1項に記載の方法で調製された、特許請求の範囲第1項から第9項までのいずれか1項に記載の化合物、又はその塩。

【特許番号】第2873076号
【登録日】平成11年(1999)1月8日
【発行日】平成11年(1999)3月24日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−293476
【出願日】平成2年(1990)10月30日
【公開番号】特開平3−206084
【公開日】平成3年(1991)9月9日
【審査請求日】平成9年(1997)4月11日
【早期審査対象出願】早期審査対象出願
【出願人】(999999999)ザ ウェルカム ファウンデーション リミテッド
【参考文献】
【文献】欧州公開170430(EP,A1)
【文献】欧州公開139590(EP,A2)