説明

複製可能なDNA、アミノ酸配列、コリネ型微生物、シャトルベクター及びL−アミノ酸の製造方法

【課題】 L−アミノ酸、特にL−リシンの改善された発酵による新規の製造方法の提供。
【解決手段】 accDA−遺伝子をコードするヌクレオチド配列を少なくとも含有する、コリネバクテリウム由来の、コリネ型微生物中で複製可能な非組換え又は組換えDNA。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明の対象はaccDA−遺伝子をコードするヌクレオチド配列及び、遺伝子accDAが強化されたコリネ型バクテリアの使用下にL−アミノ酸、特にL−リシンの発酵による製造方法である。
【0002】
【従来の技術】L−アミノ酸、特にL−リシンは動物飼料、医薬品及び製剤工業において使用される。
【0003】このアミノ酸をコリネ型バクテリア、特にコリネバクテリウム グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)の株の発酵により製造することは公知である。著しく重要なために、常に製造方法の改善がなされている。方法の改善には、発酵工業的手段、例えば撹拌及び酸素の提供又は培養基の組成、例えば発酵の間の糖濃度、又は例えばイオン交換クロマトグラフィーによる製品形のための後処理又は微生物自体の固有の機能特性が該当する。
【0004】この微生物の機能特性の改善のために、突然変異、選択及び突然変異体選択の方法を利用する。このように、抗生物質、例えばリシン−類似体のS−(2−アミノエチル)−システインに対して耐性であるか又は調節的に重要なアミノ酸に対する栄養要求体であり、かつL−アミノ酸を産生する株が得られる。
【0005】数年来、個々のアミノ酸−生合成を増幅しかつL−リシン−産生に関する影響を調査することにより、コリネバクテリウムのアミノ酸産生株の株の改善のために同様に組換えDNA−技術の方法が用いられた。これについての概要文献は特に、Kinoshita ("Glutamic Acid Bacteria", in: Biology of Industrial Microorganisms, Demain and Solomon (Eds.), Benjamin Cummings, London, UK, 1985, 115-142), Hilliger (BioTec 2, 40-44 (1991)), Eggeling (Amino Acids 6:261-272 (1994)), Jetten und Sinskey (Critical Reviews in Biotechnology15, 73-103 (1995))及び Sahm et al. (Annuals of the New York Academy of Science 782, 25-39 (1996))である。
【0006】酵素 アセチル−CoA カルボキシラーゼはアセチル−CoAのマロニル−CoAへのカルボニル化を触媒する。Escherichia coliの酵素は4つのサブユニットからなる。accB−遺伝子はビオチン−カルボキシル−キャリアタンパク質をコードし、accC−遺伝子はビオチン−カルボキシラーゼをコードし、遺伝子accA及びaccDはトランスカルボキシラーゼ(Cronan and Rock, Biosynthesis of Membrane lipids. in: Escherichia coli and Salmonella typhimurium (ed F.C. Neidhardt), 1996, pp 612-636, American Society for Microbiology)をコードする。アシル−基をアシル−CoAの形にカルボキシル化する酵素の特性のために、これはアシル−CoA−カルボキシラーゼと表される。
【0007】コリネバクテリウム グルタミクムのaccBC−遺伝子のヌクレオチド配列は、Jaeger et al. (Archives of Microbiology 166, 76-82 (1996))により決定され、欧州分子生物学ラボラトリーズ(European Molecular Biologies Laboratories, EMBL, Heidelberg, Deutschland)のデータバンクで受入番号U35023として一般に入手可能である。accBC−遺伝子はアセチル−CoA カルボキシラーゼのサブユニットをコードし、これはビオチン−カルボキシル−キャリアタンパク質−ドメイン及びビオチン−カルボキシラーゼ−ドメインを有する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、L−アミノ酸、特にL−リシンの改善された発酵による新規の製造方法を提供することであった。
【0009】L−アミノ酸は、動物飼料、医薬品及び製剤工業において使用される。従って、L−アミノ酸の改善された新規の製造方法を提供することは一般的に重要である。
【0010】以後、L−リシン又はリシンと述べた場合、塩基だけでなく、塩、例えばリシン−モノヒドロクロリド又はリシン−スルフェートをも意味する。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の対象は、配列番号1に記載されたaccDA−遺伝子をコードするヌクレオチド配列を少なくとも含有する、コリネ型微生物中で複製可能なコリネバクテリウム由来の有利に組換えられたDNAである。
【0012】同様に、(i) 配列番号1に示されたヌクレオチド配列、(ii) 遺伝コードの同義性(Degeneration)の範囲内で配列(i)に相当する少なくとも1つの配列、又は(iii) 配列(i)又は(ii)に対する相補的配列とハイブリダイズする少なくとも1つの配列、及び場合により(iv) (i)において機能的に中立なセンス突然変異(Sinnmutation)を有する請求項1記載の複製可能なDNAも対象である。
【0013】同様に、前記の複製可能なDNAを導入することにより形質転換された、コリネ型微生物、特にコリネバクテリウム族も本発明の対象である。
【0014】本発明はさらに、特にL−アミノ酸を産生し、かつaccDA−遺伝子をコードするヌクレオチド配列を強化した、特に過剰発現させたコリネ型バクテリアの使用下でのL−アミノ酸の発酵による製造方法に関する。
【0015】最終的に、本発明の対象は、コリネ型バクテリア中でのアシル−CoA−カルボキシラーゼを、新規の本発明によるaccDA−遺伝子及び公知のaccBC−遺伝子を共通に過剰発現させることにより強化する方法でもある。
【0016】「強化」の概念は、本願明細書において、相応するDNAによりコードされる微生物中の1以上の酵素の細胞内活性を、例えば1以上の遺伝子のコピー数を高めるか、強力なプロモータを使用するか、又は高い活性を有する相応する酵素をコードする遺伝子を使用するか、場合によりこれらの手法を組み合わせることにより高めることである。
【0017】本発明の対象である微生物は、グルコース、サッカロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、糖蜜、デンプン、セルロースから又はグリセリン及びエタノールからL−アミノ酸を製造することができる。代表的なコリネ型バクテリア、特にコリネバクテリウム族が挙げられる。コリネバクテリウム族において、特に専門分野においてL−アミノ酸を産生する能力が公知であるコリネバクテリウム グルタミクムの種が挙げられる。
【0018】コリネバクテリウム族、特にコリネバクテリウム グルタミクムの種の適当な株は公知の野生形:Corynebacterium glutamicum ATCC13032Corynebacterium acetoglutamicum ATCC15806Corynebacterium acetoacidophilum ATCC13870Corynebacterium thermoaminogenes FERM BP-1539Brevibacterium flavum ATCC14067Brevibacterium lactofermentum ATCC13869 及びBrevibacterium divaricatum ATCC14020及びその野生形から製造されたL−アミノ酸を産生する突然変異種並びに株、例えば:Corynebacterium glutamicum FERM-P 1709Brevibacterium flavum FERM-P 1708Brevibacterium lactofermentum FERM-P 1712Corynebacterium glutamicum FERM-P 6463 及びCorynebacterium glutamicum FERM-P 6464である。
【0019】本発明者はC.グルタミクムから新規のaccDA−遺伝子を単離することに成功した。accDA−遺伝子又はC.グルタミクムの他の遺伝子の単離のために、まずE.coli中にこの微生物の遺伝子ライブラリーを構築した。遺伝子ライブラリの構築は一般に公知の教書及びハンドブックに記載されている。例として、Winnacker: Gene und Klone, Eine Einfuehrung in die Gentechnologie(Verlag Chemie, Weinheim, Deutschland, 1990)の教書又はSambrook et al.: Molecular Cloning, A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)のハンドブックが挙げられる。周知の遺伝子ライブラリーはE.coli K−12株W3110であり、この株はKohara et al. (Cell 50, 495 -508 (1987))によりλ−ベクターに構築された。Bathe et al. (Molecular andGeneral Gentics, 252: 255 - 265, 1996)は、コスミドベクターSuperCos I (Wahl et al., 1987, Proceedings of the National Academy of Sciences USA, 84: 2160-2164)を用いてE. coli K-12株NM554(Raleigh et al., 1988, NucleicAcids Research 16: 1563-1575)中に構築したC. glutamicum ATCC13032の遺伝子ライブラリーを記載している。Boermann et al. (Molecular Microbiology 6(3), 317-326)はコスミドpHC79()の使用下でのC. glutamicum ATCC13032の遺伝子ライブラリーを記載している(Hohn und Collins, Gene 11, 291-298 (1980))。E. coli中でのC. glutamicumの遺伝子ライブラリーの製造のために、プラスミド例えばpBR322(Bolivar, Life Sciences, 25, 807-818 (1979))又はpUC9(Viera et al., 1982, Gene, 19: 259-268)を使用することもできる。宿主として、特に制限欠損及び組換え欠損のE. coli−株が適している。これについての例はDH5αmcrであり、これはGrant et al. (Proceedings of the National Academy of Sciences USA, 87 (1990) 4645-4649)により記載されている。コスミドを用いてクローニングした長いDNA断片は、引き続き再度、配列決定のために通常適したベクター中でサブクローニングされ、引き続き配列決定され、これは例えばSanger et al. (Proceedings of the National of Sciences of the United States of America USA, 74: 5463-5467, 1977)により記載されている。
【0020】このように、C. glutamicumの遺伝子accDAをコードする新規のDNA配列が得られ、これを配列番号1として本発明の対象である。配列番号2中にaccDA−遺伝子のコード領域(cds)が記載されている。さらに、このDNA−配列から上記の方法を用いて相応するタンパク質のアミノ酸配列が誘導される。配列番号3中にはaccDA−遺伝子産物の生じるアミノ酸配列が示されている。
【0021】配列番号1から遺伝コードの同義性により生じるコードするDNA−配列は同様に本発明の対象である。同様に配列番号1又は配列番号1の一部とハイブリダイズするDNA−配列も本発明の対象である。専門分野において、さらに保存的アミノ酸交換(konservative Aminosaeureaustausche)、例えばグリシンとアラニンとの交換又はアスパラギン酸とグルタミン酸とのタンパク質中での交換がセンス突然変異(sense mutations)として公知であり、これはタンパク質の活性の根本的変化を引き起こさない、つまり機能的に中立である。さらに、タンパク質のN−末端及び/又はC−末端での変化はその機能を本質的に損なわないか、それどころか安定化できることは公知である。この記載は、当業者にはBen-Bassat et al. (Journal of Bacteriology 69: 751-757 (1987))、O' Regan et al.(Gene 77: 237-251 (1989)、Sahin-Toth et al. (Protein Sciences 3: 240-247(1994))、Hochuli et al. (Bio/Technology 6: 1321-1325 (1988))及び遺伝子工学及び分子生物学の公知の教書において見出すことができる。相応する方法で配列番号3から得られたアミノ酸配列も本発明の対象である。
【0022】発明者はコリネ型バクテリアがaccDA−遺伝子の過剰発現により改善された方法でL−リシンを産生することを見出した。
【0023】過剰発現の達成のために、相当する遺伝子のコピー数を高めるか、構造遺伝子の上流に存在するプロモータ領域及びレギュレータ領域又はリボゾーム結合領域を突然変異させることができる。構造遺伝子の上流に組み込まれた発現カセットも同様に作用する。誘導可能なプロモータによって、付加的に発酵によるL−リシン−産生の進行において発現を向上させることもできる。m−RNAの寿命の延長のための措置によって同様に発現は改善される。さらに、酵素タンパク質の分解の阻害により同様に酵素活性が強化される。この遺伝子又は遺伝子構築物はプラスミドの形で多様なコピー数で存在するか、又は染色対中に統合されて増幅されることができる。また、さらに該当する遺伝子の過剰発現は培地組成及び培養操作によって達成することができる。
【0024】また、これについては、当業者は特にMartin et al. (Bio/Technology 5, 137-146 (1987))、Guerrero et al. (Gene 138, 35-41 (1994))、Tsuchiya und Morinaga (Bio/Technology 6, 428-430 (1988))、Eikmanns et al. (Gene 102, 93-98 (1998))、欧州特許(EPS)第0472869号明細書、米国特許代4601893号明細書、Schwarzer and Puehler (Bio/Technology 9, 84-87 (1991)、Reinscheid et al. (Applied and Enviromental Microbiology 60, 126-132 (1994))、LaBarre et al. (Journal of Bacteriology 175, 1001-1007 (1993)、特許出願明細書WO96/15246、Malumbres et al. (Gene 134, 15-24 (1993))、特開平10−229891号公報、Jensen and Hammer (Biotechnologyand Bioengineering 58, 191-195 (1998))、Makrides (Microbiological Reviews 60: 512-538 (1996))及び遺伝子工学及び分子生物学の公知の教書に見ることができる。
【0025】プラスミドを用いてaccDA−遺伝子を過剰発現させることができるプラスミドの例は、pZ1accDA(図1)であり、これはMH20−22B/pZ1accDA中に含まれる。プラスミドpZ1accDAはプラスミドpZ1(Menkel et al., Applied and Enviromental Microbiology 55(3), 684-688 (1989))に基づく、accDA−遺伝子を有するE. col - C. glutamicum シャトルベクターである。C. glutamicum中で複製可能な他のプラスミドベクター、例えばpEKEx1(Eikmanns et al., Gene 102: 93-98 (1991))又はpZ8−1(欧州特許第375889号明細書)も同様に使用可能である。
【0026】発明者はさらに、本発明による新規のaccDA−遺伝子に対して付加的に公知のaccBC−遺伝子の付加的過剰発現により、コリネ型バクテリアがアシル−CoA−カルボキシラーゼの産生を改善することを見出した。プラスミドを用いてaccDA−遺伝子及びaccBC−遺伝子を一緒に過剰発現できるプラスミドの例は、pEK0accBCaccDA(図2)である。プラスミドpEK0accBCaccDAは、プラスミドpEK0(Eikmanns et al., Gene 102,93-98, (1991))に基づく、accBC−遺伝子及びaccDA−遺伝子を有するE. coli - C. glutamicum シャトルベクターである。C. glutamicum中で複製可能な他のプラスミドベクター、例えばpEKEx1(Eikmanns et al., Gene102: 93-98 (1991)又はpZ8−1(欧州特許第0375889号明細書)も同様に使用することができる。
【0027】付加的に、L−アミノ酸の産生のために、accDA−遺伝子の他に生合成経路の1種以上の酵素を過剰発現させることが有利である。
【0028】・ 同時に、ジヒドロジピコリネート−シンターゼをコードするdapA−遺伝子を過剰発現させる(EP−B 0197335)又は・ 同時に、S−(2−アミノエチル)−システイン−耐性を媒介するDNA−断片を増幅する(EP−A 0088166)。
【0029】さらに、accDA−遺伝子の過剰発現の他に不所望の副反応を遮断することがL−アミノ酸、特にL−リシンの産生にとって有利である(Nakayama: "Breeding of Amino Acid Producing Micro-organisms", in: Overproduction of Microbial Products, Krumphanzl, Sikyta, Vanek (eds.), Academic Press, London, UK, 1982)。
【0030】本発明により製造された微生物は連続的又は断続的に、バッチ法(batch)又はフィードバッチ法(fed batch)又は繰り返しフィードバッチ法(repeated fed batch)で、L−リシンを製造する目的で培養することができる。公知の培養法に関する総括はChmiel (Bioprozesstechnik 1. Einfuehrung in die Bioverfahrenstechnik (Gustav Fischer Verlag, Stuttgart, 1991))の教書において又はStorhas (Bioreaktoren und periphere Einrichtungen (Vieweg Verlag, Braunschweig/Wiesbaden, 1994))の教書において記載されている。
【0031】使用すべき培養基は、適当な方法でそれぞれの株の要求を満たさなければならない。多様な微生物の培地の記載は、ハンドブック「Manual of Methods for General Bacteriology」, der American Society for Bacteriology (WashingtonD.C., USA, 1981)に記載されている。炭素源として、糖及び炭水化物、例えばグルコース、サッカロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、糖蜜、デンプン及びセルロース、油及び脂肪、例えば大豆油、ひまわり油、落花生油及びココナッツ油、脂肪酸、例えばパルミチン酸、ステアリン酸及びリノール酸、アルコール、例えばグリセリン及びエタノール及び有機酸、例えば酢酸を使用することができる。この材料は個々に又は混合して使用することができる。窒素源として、有機窒素含有化合物、例えばペプトン、酵母抽出物、肉抽出物、麦芽抽出物、トウモロコシ膨潤水、大豆粉及び尿素又は無機化合物、例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム及び硝酸アンモニウムを使用することができる。この窒素源は個々に又は混合して使用することができる。リン源はリン酸、リン酸水素カリウム又はリン酸水素にカリウム又は相応するナトリウム含有塩を使用することができる。この培養基は、さらに成長に必要な金属塩、例えば硫酸マグネシウム又は硫酸鉄を含有しなければならない。最後に、必須の成長物質、例えばアミノ酸及びビタミンを前記の物質に対して付加的に使用することができる。培養基にさらに適当な前駆物質を添加することもできる。前記の使用物質は1回だけの添加物の形で培養に添加されるか又は適当な方法で培養期間中に供給することができる。
【0032】培養のpH−コントロールのために塩基性化合物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアもしくはアンモニア水又は酸性化合物、例えばリン酸又は硫酸を適当な方法で添加する。起泡の発生をコントロールするために、消泡剤、例えば脂肪酸ポリグリコールエステルを使用することができる。プラスミドの安定性を維持するために培地に適当な選択作用する物質、例えば抗生物質を添加することができる。好気性条件下を維持するために、酸素又は酸素含有混合物、例えば空気を培養中へ導入する。培養の温度は通常20℃から45℃、有利に25℃〜40℃である。この培養は所望のL−アミノ酸の最大値が達成するまで続けられる。この目的は通常10時間〜160時間の間に達成される。
【0033】L−リシンの分析は、Spackman et al.(Analytical Chemistry, 30, (1958),1190)に記載されたように、アニオン交換クロマトグラフィーと、それに引き続くニンヒドリン誘導化によって行われる。
【0034】次の微生物をブタペスト条約に従ってDeutsche Sammlung fuer Mikrorganismen und Zellkulturen (DSMZ, Braunschweig, Deutschland)に寄託した:Corynebacterium glutamicum株 DSM5715/pZ1accDAをDSM 12785として、Corynebacterium glutamicum株 DSM5715/pEK0accBCaccDAをDSM 12787として。
【0035】本発明による方法は、コリネ型バクテリアを用いたL−アミノ酸、L−ホモセリン、L−トレオニン、L−イソロイシン及びL−メチオニンの発酵による製造のために、特にL−リシンの製造のために用いられる。
【0036】
【実施例】本発明を次に実施例により詳説する。
【0037】例1accDA−遺伝子のクローニング及び配列決定C. glutamicum ATCC 13032の遺伝子ライブラリーを、コスミドpHC79(Hohn and Collins, Gene 11, 291-298 (1980))の使用下で、Boermann et al.(Molecular Microbiology 6(3), 317-326)に記載されたように製造した。
【0038】選択されたコスミドを制限酵素EcoRI及びXhoIを用いてこの制限酵素の製造元(Boehringer Mannheim)の記載に従って消化させた。生じたDNA−断片を、同様に制限酵素EcoRI及びXhoIで処理したベクターpUC18(Norrander et al. (1983) Gene 26: 101-106)と混合し、T4−DNA−リガーゼで処理した後にE. coli株DH5αmcr(Grant et al. (1990) Proceedings of the National Academy of Sciences, USA, 87: 4645-4645)中で、Sambrook et al. (Molecular Cloning a Laboratory Manual (1989) Cold Spring Harbour Laboratories)に記載されたようにクローニングした。形質転換体の選択は、Sambrook et al. (Molecular Cloning a Laboratory Manual (1989) Cold Spring Harbour Laboratories)に記載されているように、アンピシリン50μg/mlを含有するLB−寒天上で選択することにより行った。形質転換体からプラスミド−DNAを単離し、これをpUCaccDAとした。引き続きPromega社(Heidelberg, Deutschland)のこの目的のために用いるキット(Erase-a-Base)を用いてエキソヌクレアーゼIII−消化を介してサブクローンを製造した。これをSanger et al.によるジデオキシ−鎖分解法(Proceeding of the National Academy of Sciences USA (1977) 74: 5463-5467)により配列決定した。その際、オート−リード−シーケンジング−キット(Auto-Read Sequencing kit)を使用した(Amersham Pharmacia Biotech, Uppsala, Schweden)。ゲル電気泳動による分析を、Amersham Pharmacia Biotech(Uppsala, Schweden)社の自動的レーザー−蛍光−シーケンサー装置(A. L. F.)を用いて行った。得られたヌクレオチド配列をプログラムパケットHUSAR(Release 4.0, EMBL, Heidelberg,Deutschland)を用いて分析した。このヌクレオチド配列を配列番号1に記載した。このヌクレオチド配列の分析は1473個の塩基対のオープンリーディングフレームを示し、このフレームをaccDA−遺伝子とした。C. glutamicumからのaccDA−遺伝子は484個のアミノ酸のポリペプチドをコードした。
【0039】例2Corynebacterium glutamicum中のaccDA−遺伝子の発現accDA遺伝子をC. glutamicum中の発現のためにベクターpZ1(Menkelet al. (1989) Applied and Enviromental Microbiology 55: 684-688)中にサブクローンした。このために、プラスミドpUCaccDA(例1参照)を制限酵素ClaIで切断した。生じた1.6kbのサイズの断片を例1に記載したと同様に単離し、クレノウ−ポリメラーゼ及びアルカリ性ホスファターゼで処理し、連結のためにpZ1を使用した。このベクターをまずScaIで線状化した。この連結物でE.coli DH5αmcr(Grant et al. (1990) Proceedings of the National Academy of Sciences, USA, 87: 4645-4645)を形質転換し、この形質転換体をカナマイシン含有(50μg/ml)LB−寒天上で選択した。それにより7.7kbのサイズのシャトルベクターpZ1accDA(図1)が得られた。これを、Haynes (FEMS Microbiol. Letters (1989) 61: 329-334)に記載されたようにエレクトロポレーションを用いて、株DSM5715中へ導入し、その際、この形質転換体をLBHIS−寒天上で選択した(Liebl et al., FEMS Microbiology Letters 1989, 65: 299-304)。このように、C. glutamicum株DSM5715/pZ1accDAが得られた。
【0040】例3株DSM5715/pZ1accDAを用いたL−リシンの製造株DSM5715/pZ1accDAを、培地CgIII(Keilhauer et al.1993, Journal of Bacteriology 175: 5595-5603)、生産培地CgXII(Keilhauer et al. 1993, Journal of Bacteriology 175: 5595-5603)中で予備培養することにより培養した。4%グルコース及びカナマイシンスルフェート50mg/lを添加した。
【0041】48時間インキュベーションした後、光学密度を660nmで及び生成されたL−リシンの濃度を測定した。表1中にこの試験の結果を示した。
【0042】
【表1】


【0043】例4accBC及びaccDAの一緒の発現(i) 発現ベクターpEK0accBCaccDAの構築accBC含有プラスミドpWJ71(Jaeger et al., Archives of Microbiology (1996) 166: 76-82)を制限酵素AgeI及びSmaIを用いて消化し、引き続きクレノウ−ポリメラーゼ及びアルカリ性ホスファターゼで処理した。これに平行して、プラスミドpUCaccDAをEcoRI/XhoIで消化し、引き続きクレノウポリメラーゼ及びアルカリ性ホスファターゼで実施した。Sambrook et al.(Molecular Cloning a Laboratory Manual (1989) Cold Spring Harbour Laboratories)に記載されたようにアガロースゲルから分別単離を実施することにより、2.1kbのサイズのaccDAを有する断片を単離した。これを、前記したように準備したベクターpWJ71と連結した。生じたプラスミドから4.6kbのサイズのaccBCaccDA−含有断片をKpnI/SalI消化により切断し、アガロースゲル電気泳動により分別単離した。この断片をC. glutamicum/E. coli シャトルベクターpEK0(Eikmanns et al. (1991) Gene 102: 93-98)と連結するために、pEK0を制限酵素KpnI及びSalIで消化し、引き続きクレノウポリメラーゼ及びアルカリ性ホスファターゼを用いて処理を実施した。こうして準備されたベクターを4.6kbのサイズのaccBCaccDA−含有断片と連結した。生じたベクターpEK0accBCaccDAを図2に記載した。このベクターをエレクトロポレーションを用いて例2に記載したと同様に株ATCC13032中へ導入した。このように、C. glutamicum株ATCC13032/pEK0accBCaccDAが得られた。
【0044】(ii) アシル−CoA カルボキシラーゼ活性の測定株C. glutamicum ATCC13032/pEK0accBCaccDAを、培地CGIII(Keilhauer et al. 1993, Journal of Bacteriology 175: 5595-5603)中での予備培養の後に備置CGXII(Kailhauer et al. (Journal of Bacteriology (1993) 175: 5595-5603)に記載)中に摂取した。この細胞を遠心分離により収穫し、細胞ペレットを60mMのトリス−HCl(pH7.2)で洗浄し、セルフ−バッファ(selben Puffer)中に再懸濁させた。細胞分解物に10分間の超音波処理を行った(Branson-Sonifier W-250, Branson Sonic PowerCo, Danbury, USA)。引き続き細胞の破片を4℃で30分間遠心分離することにより分離した。酵素試験の反応バッチは反応容量1ml中で60mMのトリス−HCl(pH7.2)、65mMのKHCO3、1mMのATP、1.5mMのMgCl2、4mMのアシルCoA(裁量でアセチル−CoA又はプロピオニル−CoA)及び粗製抽出物4mgを含有した。この試験バッチから30℃でインキュベートし、15秒、30秒、45秒及び60秒後に試料100μlを取り出し、そのマロニル−CoAもしくはメチルマロニル−CoA濃度をHPLC−分析により測定した(Kimura et al. (1997) Journal of Bacteriology 179: 7098-7102)。表2に示したように、株C. glutamicum ATCC13032/pEK0accBCaccDAは、対照株がアセチル−CoA及びプロピオニル−CoAによるわずかなアシル−CoAカルボキシラーゼ−活性を有するのに対して、アセチル−CoA及びプロピオニル−CoAにより高いアシル−CoAカルボキシラーゼ−活性を示した。
【0045】表2:C. glutamicum中のアシル−CoAカルボキシラーゼ比活性(μmol/分及びmgタンパク質)
【0046】
【表2】


【0047】
配列表<110> Degussa-Huels AGForschungszentrum-Juelich GmbH<120> 複製可能なDNA、アミノ酸配列、コリネ型微生物、シャトルベクター及びL−アミノ酸の製造方法<130> 990042BT<140><141><160> 3<170> PatentIn Ver. 2.1<210> 1<211> 2123<212> DNA<213> Corynebacterium glutamicum<220><221> gene<222> (508)..(1980)<223> accDA<400> 1
【0048】
【外1】


【0049】
【外2】


【0050】
【外3】


【0051】
<210> 2<211> 1473<212> DNA<213> Corynebacterium glutamicum<220><221> CDS<222> (1)..(1473)<223> accDA<400> 2
【0052】
【外4】


【0053】
【外5】


【0054】
【外6】


【0055】
【外7】


【0056】
<210> 3<211> 491<212> PRT<213> Corynebacterium glutamicum<400> 3
【0057】
【外8】


【0058】
【外9】


【0059】
【外10】


【図面の簡単な説明】
【図1】プラスミドpZ1accDAのマップを示す図。
【図2】プラスミドpEK0accBCaccDAのマップを示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 配列番号1に記載されたaccDA−遺伝子をコードするヌクレオチド配列を少なくとも含有する、コリネバクテリウム由来の、コリネ型微生物中で複製可能な非組換え又は組換えDNA。
【請求項2】(i) 配列番号1に記載されたヌクレオチド配列、(ii) 遺伝コードの同義性の範囲内で配列(i)に相当する少なくとも1つの配列、又は(iii) 配列(i)又は(ii)に対する相補的配列とハイブリダイズする少なくとも1つの配列、及び場合により(iv) (i)において機能的に中立なセンス突然変異を有する、請求項1記載の複製可能なDNA。
【請求項3】 請求項1又は2記載のヌクレオチド配列から誘導される、配列番号3に記載されたタンパク質のアミノ酸配列。
【請求項4】 請求項1又は2記載の1種以上の複製可能なDNAを導入することにより形質転換されたコリネ型微生物。
【請求項5】 コリネバクテリウム グルタミクム中でDSM12785の名称のもとで寄託された図1に記載された制限マップを特徴とするシャトルベクター pZ1accDA。
【請求項6】 accDA−遺伝子又はこれをコードするヌクレオチド配列を強化した、特に過剰発現させたバクテリアを使用することを特徴とするコリネ型バクテリアの発酵によるL−アミノ酸の製造方法。
【請求項7】 さらに、所望のL−アミノ酸の生合成経路の他の遺伝子を強化したバクテリアを使用する、請求項6記載の方法。
【請求項8】 所望のL−アミノ酸の生成を減少させる物質代謝経路の少なくとも一部が遮断されているバクテリアを使用する、請求項6記載の方法。
【請求項9】 プラスミドベクターで形質転換された株を使用し、このプラスミドベクターがaccDA−遺伝子をコードするヌクレオチド配列を有する、請求項6又は7記載の方法。
【請求項10】 コリネバクテリウム グルタミクム中でDSM12785の名称のもとで寄託されたプラスミドベクター pZ1accDAで形質転換されたバクテリアを使用する、請求項8記載の方法。
【請求項11】 L−アスパラギン酸、L−アスパラギン、L−ホモセリン、L−トレオニン、L−イソロイシン及びL−メチオニンを製造するコリネ型バクテリアを使用する、請求項6から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】 L−リシンを製造するコリネ型バクテリアを使用する、請求項6から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】 accAD遺伝子に対して付加的にaccBC−遺伝子を過剰発現させる、請求項6から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】 ジヒドロジピコリネート−シンターゼをコードするdapA−遺伝子を同時に過剰発現させる、請求項6記載の方法。
【請求項15】 S−(2−アミノエチル)−システイン−耐性を媒介するDNA−断片を同時に増幅する、請求項6記載の方法。
【請求項16】 次の工程:a) 少なくともaccDA−遺伝子を強化した、所望のL−アミノ酸を産生するコリネ型バクテリアを発酵させる工程、b) 培地中で又はバクテリアの細胞中で所望のL−アミノ酸を富化させる工程、及びc) 所望のL−アミノ酸を単離する工程、を実施することを特徴とする請求項6から15までのいずれか1項記載のLアミノ酸の発酵による製造方法。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【公開番号】特開2001−8693(P2001−8693A)
【公開日】平成13年1月16日(2001.1.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−153547(P2000−153547)
【出願日】平成12年5月24日(2000.5.24)
【出願人】(599020003)デグサ−ヒュルス アクチェンゲゼルシャフト (2)
【出願人】(599000142)フォルシュングスツェントルム ユーリッヒ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (8)