説明

複輪のリム構造

【課題】アクスルに対する複輪の位置決め作業を短時間で済ませることができ、アクスルへの複輪の取り付けに際して、車輪の脱落を生じさせない複輪のリム構造の提供。
【解決手段】車両のアクスルの両端のそれぞれに取り付けられ、外輪1と内輪2とから成ると共に、外輪1のアクスル固定用のボルト孔10を有する外輪リム3と、内輪2のアクスル固定用のボルト孔15を有する内輪リム5とを、外輪1及び内輪2をアクスルに取り付ける以前に、それぞれのボルト孔10,15を一致させた状態で互いに固定する固定手段を備え、この固定手段は、外輪リム3に形成した貫通孔である固定用孔11と、内輪lに形成したねじ孔16と、固定用孔11に挿通され、ねじ孔16と螺合して外輪リム3と内輪リム5とを一体に締結するボルト17とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械、自動車等の車両に備えられるアクスルの端部に取り付けられ、外輪と内輪から成る複輪のリム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として、特許文献1に示されるものがある。この特許文献1には、外輪と内輪から成る複輪の取り付け構造が示されている。この特許文献1に示されるような複輪は一般に、周方向に沿って複数本植設されたボルトを有するアクスルの端部において、内輪に備えられる内輪リムに形成された複数のボルト孔のそれぞれを、上記ボルトに嵌め合わせるようにしてこの内輪をアクスルに保持させ、次いで外輪に備えられる外輪リムに形成された複数のボルト孔のそれぞれを、上記ボルトに嵌め合わせるようにしてこの外輪をアクスルに保持させ、この状態において上述のボルトにナットを螺合させて締結することにより、これらの内輪と外輪から成る複輪を固定するようにしてある。
【特許文献1】実公平6−5201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した特許文献1に示される技術も含めて従来は、アクスルの端部において複輪をアクスルに取り付けるに際し、アクスルに設けられた複数本のボルトと内輪リムのボルト孔とを適合させるようにアクスルに対して内輪を位置決めする作業と、内輪をアクスルに保持させた後に、アクスルに設けられた複数本のボルトに外輪リムのボルト孔を適合させるようにアクスルに対して外輪を位置決めする作業とが必要になり、作業時間がかかる。
【0004】
また、アクスルに内輪を保持させた後に、外輪を保持させるに際し、アクスルに保持させた内輪は揺動しやすくなっているために、外輪が内輪の一部に接触した際などにアクスルから内輪が脱落してしまう懸念があり、この内輪と外輪から成る複輪をアクスルに取り付ける作業が煩雑になりやすい。
【0005】
これらのことから、従来技術は、アクスルに対する複輪の取り付け作業の能率向上を見込めない問題があった。
【0006】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、アクスルに対する複輪の位置決め作業を短時間で済ませることができると共に、アクスルへの複輪の取り付けに際して、車輪の脱落を生じさせない複輪のリム構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、車両のアクスルの端部に取り付けられ、外輪と内輪とから成る複輪のリム構造において、上記外輪の上記アクスル固定用のボルト孔を有する外輪リムと、上記内輪の上記アクスル固定用のボルト孔を有する内輪リムとを、上記外輪及び上記内輪を上記アクスルに取り付ける以前に、それぞれの上記ボルト孔を一致させた状態で互いに固定する固定手段を備えたことを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明は、アクスルに取り付ける以前に、固定手段によって外輪と内輪とが互いに固定されて成る複輪を形成できる。したがって、アクスルの端部において、この複輪を取り付ける際には、この一体化された複輪に備えられる内輪リム、外輪リムそれぞれのボルト孔と、アクスルの端部のボルトとを適合させる位置決め作業だけ済み、このアクスルに対する複輪の位置決め作業を短時間で済ませることができる。また、一体化された複輪をアクスルに取り付けるに際し、アクスルのボルトに内輪リム、外輪リムのボルト孔を嵌め合わせさえすれば、車輪の脱落を生じる懸念はない。
【0009】
また本発明は、上記発明において、上記固定手段は、上記外輪リムに形成した貫通孔である固定用孔と、上記内輪リムに形成したねじ孔と、上記固定用孔に挿通され、上記ねじ孔と螺合して上記外輪リムと上記内輪リムとを一体に締結するボルトとを含むことを特徴としている。
【0010】
このように構成した本発明は、ボルトを外輪リムの固定用孔を挿通させて内輪リムのねじ孔と螺合させることにより、容易に外輪と内輪とを互いに固定できる。この場合例えば、内輪リムのねじ孔が上に位置するように内輪を所定の場所に寝かせた状態で、外輪リムの固定用孔が内輪リムのねじ孔に適合するように、外輪を内輪の上に載置し、ボルトを外輪リムの固定用孔を挿通させて内輪リムのねじ孔と螺合させて締結すればよい。このようにすれば、内輪の揺動等を生じることなく容易に外輪と内輪とを互いに固定できる。
【0011】
また本発明は、上記発明において、上記外輪リムは上記固定用孔を有するものの上記ねじ孔を有さず、上記内輪リムは上記ねじ孔を有するものの上記固定用孔を有しないことを特徴としている。このように構成した本発明は、外輪リムと内輪リムとを、固定用孔あるいはねじ孔の有無によって容易に区別することができる。
【0012】
また本発明は、上記発明において、上記外輪リムと上記内輪リムのそれぞれが、上記固定用孔と上記ねじ孔の双方を有することを特徴としている。このように構成した本発明は、外輪リムと内輪リムのリム構造が同じであるので、製作が簡単である。
【0013】
また本発明は、上記発明において、上記アクスルの軸方向に沿う上記外輪リムのオフセット寸法と、上記内輪リムのオフセット寸法を同じ寸法に設定したことを特徴としている。このように構成した本発明は、車両の幅寸法、すなわちアクスルの両端のそれぞれに複輪を取り付けた場合の一対の複輪の外側面間の寸法が一つに限られるときに有効である。
【0014】
また本発明は、上記発明において、上記アクスルの軸方向に沿う上記外輪リムのオフセット寸法と、上記内輪リムのオフセット寸法とを互いに異ならせた寸法に設定したことを特徴としている。このように構成した本発明は、通常どおりアクスルに内輪リムが内側位置に、外輪リムが外側位置になるように一対の複輪を取り付けたときの車両の幅寸法、すなわちアクスルの両端のそれぞれに複輪を取り付けた場合の一対の複輪の外側面間の寸法と、これとは逆に、アクスルに上述の外輪リムを上述の内輪リムに代えて内側に配置し、上述の内輪リムを上述の外輪リムに代えて外側に配置した複輪を取り付けたときの一対の複輪の外側面間の寸法とを異ならせることができる。すなわち、2つの異なる車両の幅寸法に対応可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、アクスルに取り付ける前に、内輪と外輪とを一体に固定して複輪とする固定手段を備えたことから、アクスルに対してこの一体化した複輪を位置決めすればよく、この位置決め作業を短時間で済ませることができる。また、アクスルに対して一体化した複輪を取り付けるので、このアクスルへの取り付けに際して車輪の脱落を生じる懸念がない。これらのことから、従来に比べてアクスルに対する複輪の取り付け作業の能率向上を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下,本発明に係る複輪のリム構造を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。
【0017】
[第1実施形態]
図1は本発明に係る複輪のリム構造の第1実施形態を示す図で、(a)図は縦断面図、(b)図は(a)図のA1矢視に相応する正面図、(c)図は(a)図のB1矢視に相応する正面図である。
【0018】
この第1実施形態は、車両の幅寸法、すなわちアクスルの両端のそれぞれに複輪を取り付けた場合の一対の複輪の外側面間の寸法が一つに限られるときに有効な実施形態である。
【0019】
図1の(a)図に示すように、この複輪は、外側に配置される外輪1と、内側に配置される内輪2から成っている。外輪1は、外輪リム3と、この外輪リム3に取り付けられる外側タイヤ4とから成っている。内輪2は、内輪リム5と、この内輪リム5に取り付けられる内側タイヤ6とから成っている。
【0020】
外輪リム3は、図1の(a)図に示すように、外側タイヤ4が嵌着されるリング部7と、このリング部7に固定されるディスク部8とを備えている。ディスク部8は、図1の(b)図に示すように、中央部分に図示しないアクスルのハブケースが挿通する大径孔9を有すると共に、この大径孔9を囲むように周方向に複数のボルト孔10を備えている。このボルト孔10のそれぞれには、アクスルのハブケースの周囲に植設された複数本の図示しないボルトが挿入されるようになっている。また、同図1の(b)図に示すように、ディスク部8の中心線上にあって、ディスク部8の中心に対して対称な位置に、一対の貫通孔すなわち固定用孔11を形成してある。これらの固定用孔11は、例えば隣り合うボルト孔10間の中央に、それぞれ形成してある。
【0021】
内輪リム5は、例えば外輪リム3と同じオフセット寸法に設定してあり、図1の(a)図に示すように、内側タイヤ6が嵌着されるリング部12と、このリング部12に固定されるディスク部13とを備えている。ディスク部13は、図1の(c)図に示すように、中央部分に図示しないアクスルのハブケースが挿通する大径孔14を有すると共に、この大径孔14を囲むように周方向に複数のボルト孔15を備えている。このボルト孔15にも、アクスルのハブケースの周囲に植設された複数本の図示しないボルトが挿入されるようになっている。また、上述した外輪3のディスク部8に形成した一対の固定用孔11のそれぞれと適合する位置に、すなわちディスク部13の中心線上であって、ディスク部13の中心に対して対称な位置に、一対のねじ孔16を形成してある。これらのねじ孔16は、例えば隣り合うボルト孔15間の中央に、それぞれ形成してある。
【0022】
さらに、図1の(a)図に示すように、一対の固定用孔11のそれぞれに挿通され、一対のねじ孔16のそれぞれ該当するものに螺合する一対のボルト17を備えている。これらのボルト17によって外輪リム3のディスク部8と内輪リム5のディスク部13とが一体に締結されている。
【0023】
このように締結した状態では、外輪リム3のディスク部8と内輪リム5のディスク部13との接合面のそれぞれから、外側タイヤ4の中心までのオフセット寸法、内側タイヤ6の中心までのオフセット寸法は、同図1の(a)図に示すように共に等しい寸法aとなっている。
【0024】
本実施形態は、外輪1のアクスル固定用のボルト孔10を有する外輪リム3と、内輪2のアクスル固定用のボルト孔15を有する内輪リム5とを、外輪1及び内輪2を図示しないアクスルに取り付ける以前に、それぞれのボルト孔10,15の該当するものどうしを一致させた状態で互いに固定する固定手段を備えている。この固定手段は、外輪リム3のディスク部8に形成した上述の一対の固定用孔11と、内輪リム5のディスク部13に形成した上述の一対のねじ孔16と、固定用孔11に挿通され、ねじ孔16と螺合して外輪リム3のディスク部8と内輪リム5のディスク部13とを一体に締結する上述の一対のボルト17とから成っている。
【0025】
上述のように、外輪リム3のディスク部8は、固定用孔11のみを有し、内輪リム5のディスク部13はねじ孔16のみを有している。
【0026】
上述した第1実施形態のリム構造を備えた外輪1と内輪2とから成る複輪は、1つの図示しないアクスルに対して一対形成される。アクスルの一方の端部においては、このアクスルに備えられる図示しないハブケースが内輪リム5の大径孔14と外輪リム3の大径孔9に挿通され、アクスルに備えられる図示しない複数本のボルトのそれぞれが、内輪リム5のボルト孔15と外輪リム3のボルト孔10のそれぞれ該当するものに挿入される。この状態において、外輪1の外側から上述した図示しないボルトのそれぞれにナットが嵌め込まれ、このナットを回転させることによって、この外輪1と内輪2から成る複輪が図示しないアクスルの一方の端部に取り付けられる。図示しないアクスルの他方の端部においても、外輪1を外側に、内輪2を内側に位置させた状態で、同様にして複輪が取り付けられる。
【0027】
上述のように、第1実施形態は、図示しないアクスルに取り付けられる以前に、固定用孔11、ねじ孔16、及びボルト17から成る固定手段によって、外輪1と内輪2とが互いに固定されて成る複輪を形成できる。したがって、図示しないアクスルの端部において、この複輪を取り付ける際には、この一体化された複輪に備えられる内輪リム5、外輪リム3のそれぞれのボルト孔15,10と、アクスルの端部の図示しないボルトとを適合させる位置決め作業だけで済み、このアクスルに対する位置決め作業を短時間で済ませることができる。また、一体化された複輪をアクスルに取り付けるに際し、アクスルの図示しないボルトに内輪リム5、外輪リム3のボルト孔15,10を嵌め合わせさえすれば、車輪の脱落を生じる懸念はない。これらのことから、この第1実施形態は、アクスルに対する外輪1と内輪2とから成る複輪の取り付け作業の能率向上を実現できる。
【0028】
また、この第1実施形態によれば、ボルト17を外輪リム3の固定用孔11を挿通させて内輪リム5のねじ孔16と螺合させることにより、容易に外輪1と内輪2とを固定できる。この場合例えば、内輪リム5のねじ孔16が上に位置するように内輪2を所定の場所に寝かせた状態で、外輪リム3の固定用孔11が内輪リム5のねじ孔16に適合するように、外輪1を内輪2の上に載置し、ボルト17を外輪リム3の固定用孔11を挿通させて内輪リム5のねじ孔16と螺合させて締結すればよい。このようにすれば、内輪2の揺動等を生じることなく容易に外輪1と内輪2とを固定できる。
【0029】
また、内輪リム5はねじ孔16のみを有し、外輪リム3は固定用孔11のみを有することから、外輪リム3と内輪リム5とを、固定用孔11あるいはねじ孔16の有無によって容易に区別することができる。
【0030】
[第2実施形態]
図2は本発明に係る複輪のリム構造の第2実施形態を示す図で、(a)図は縦断面図、(b)図は(a)図のA2矢視に相応する正面図、(c)図は(a)図のB2矢視に相応する正面図である。
【0031】
この第2実施形態は、車両の幅寸法、すなわちアクスルの両端のそれぞれに複輪を取り付けた場合の一対の複輪の外側面間の寸法が、大小二つの異なった寸法のうちの小さく設定されるときのみに適用可能な実施形態である。
【0032】
この第2実施形態の複輪を構成する内輪2は、上述した第1実施形態の内輪2と例えば同じものである。外輪1aは外輪リム3aのオフセット寸法を除けば、上述した第1実施形態の外輪1と同等の構成にしてある。
【0033】
すなわち、この第2実施形態の外輪1aも、図2の(a)図に示すように、第1実施形態におけるのと同等の外輪リム3a、外側タイヤ4aを備え、外輪リム3aはリング部7aとディスク部8aを備えている。ディスク部8aには、図2の(b)図に示すように、大径孔9aと、複数のボルト孔10aと、一対の固定用孔11aとを形成してある。また、外輪リム3aの固定用孔11aと、内輪リム5の一対のねじ孔16とを適合させた状態で、固定用孔11aに挿入され、ねじ孔16と螺合する一対のボルト17を備えている。この第2実施形態でも、一対の固定用孔11aと、一対のねじ孔16と、一対のボルト17とによって外輪1aと内輪2とを互いに固定する固定手段が構成されている。
【0034】
この第2実施形態では特に、外輪リム3aのオフセット寸法を内輪リム5のオフセット寸法に比べて小さく設定してある。すなわち、外輪リム3aのディスク部8aと、内輪2のディスク部13との接合面から内輪2の内側タイヤ6の中心までのオフセット寸法aに比べて、上述の接合面から外輪1の外側タイヤ4aの中心までのオフセット寸法bが小さくなっている。
【0035】
このような外輪1aと内輪2から成る複輪を、図示しないアクスルの両端のそれぞれに取り付けた場合には、車両の幅寸法を比較的小さく設定することができる。
【0036】
このように構成した第2実施形態も、一対の固定用孔11a、一対のねじ孔16、及び一対のボルト17から成る固定手段を備えたことから、上述の第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0037】
[第3実施形態]
図3は本発明に係る複輪のリム構造の第3実施形態を示す図で、(a)図は縦断面図、(b)図は(a)図のA3矢視に相応する正面図、(c)図は(a)図のB3矢視に相応する正面図である。
【0038】
この第3実施形態は、車両の幅寸法、すなわちアクスルの両端のそれぞれに複輪を取り付けた場合の一対の複輪の外側面間の寸法が、大小二つの異なった寸法のうちの大きく設定されるときのみに適用可能な実施形態である。
【0039】
この第3実施形態の複輪を構成する外輪1は、上述した第1実施形態の外輪1と例えば同じものである。内輪2aは内輪リム5aのオフセット寸法を除けば、上述した第1実施形態の内輪2と同等の構成にしてある。
【0040】
すなわち、この第3実施形態の内輪2aも、図3の(a)図に示すように、第1実施形態におけるのと同等の内輪リム5a、内側タイヤ6aを備え、内輪リム5aは、リング部12aとディスク部13aを備えている。ディスク部13aには、図3の(c)図に示すように、大径孔14aと、複数のボルト孔15aと、一対のねじ孔16aとを形成してある。また、外輪リム3の一対の固定用孔11と、内輪リム5aの一対のねじ孔16aとを適合させた状態で、固定用孔11に挿入され、ねじ孔16aと螺合する一対のボルト17を備えている。この第3実施形態でも、一対の固定用孔11と、一対のねじ孔16aと、一対のボルト17とによって外輪1と内輪2aとを互いに固定する固定手段が構成されている。
【0041】
この第3実施形態では特に、内輪リム5aのオフセット寸法を外輪リム3のオフセット寸法に比べて小さく設定してある。すなわち、外輪リム3のディスク部8と、内輪リム5aのディスク部13aとの接合面から外輪1の外側タイヤ4の中心までのオフセット寸法aに比べて、上述の接合面から内輪2aの内側タイヤ6aの中心までのオフセット寸法bが小さくなっている。
【0042】
このような外輪1と内輪2aから成る複輪を、図示しないアクスルの両端のそれぞれに装着させた場合には、上述の第2実施形態に比べて車両の幅寸法を大きく設定することができる。
【0043】
このように構成した第3実施形態も、一対の固定用孔11、一対のねじ孔16a、及び一対のボルト17から成る固定手段を備えたことから、上述した第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0044】
[第4実施形態]
図4は本発明に係る複輪のリム構造の第4実施形態を示す図で、(a)図は縦断面図、(b)図は(a)図のA4矢視に相応する正面図、(c)図は(a)図のB4矢視に相応する正面図、図5は図4に示す第4実施形態をアクスルに取り付けた状態を示す要部縦断面図である。
【0045】
この第4実施形態は、車両の幅寸法、すなわちアクスルの両端のそれぞれに複輪を取り付けた場合の一対の複輪の外側面間の寸法が、大小二つの異なった寸法を取り得るときの、大小の双方に適用可能な実施形態である。そして特に、この第4実施形態は、車両の幅寸法を大きく設定する場合の実施形態である。
【0046】
この第4実施形態の複輪を構成する外輪1b及び内輪2bの基本構成は、上述した第1実施形態の外輪1及び内輪2と同等である。異なる点は、内輪リム5bのオフセット寸法と、内輪リム5bのディスク部13bに固定用孔16c及びねじ孔16bを形成した点と、外輪リム3bのディスク部8bにねじ孔11cと固定用孔11bを形成した点である。
【0047】
すなわち、この第4実施形態の外輪1bも、図4の(a)図に示すように、第1実施形態におけるのと同等の外輪リム3b、外側タイヤ4bを備え、外輪リム3bは、リング部7bとディスク部8bを備えている。ディスク部8bには、図4の(b)図に示すように、大径孔9bと、複数のボルト孔10bと、一対の固定用孔11bとを備えている。そして特に、このディスク部8bは、一対のねじ孔11cも備えている。
【0048】
これらの一対のねじ孔11cは、ディスク部8bの中心線8b1に対して、角度Y傾けた中心O1を通る線8b2上にあって、隣り合うボルト孔10bの間の中央にそれぞれ形成してある。また、上述した一対の固定用孔11bは、ディスク部8bの中心線8b1に対して、上述の線8b2と対称となる線8b3上にあって、隣り合うボルト孔10b間の中央にそれぞれ形成してある。これにより、一対の固定用孔11bのうちの同図4の(b)図の下側に示される固定用孔11bは、中心線8b1に対して同図4の(b)図の下側に示されるねじ孔11cと対称に位置している。また、一対の固定用孔11bのうちの同図4の(b)図の上側に示される固定用孔11bは、中心線8b1に対して同図4の(b)図の上側に示されるねじ孔11cと対称に位置している。
【0049】
また、この第4実施形態の内輪2bも、図4の(a)図に示すように、第1実施形態におけるのと同等の内輪リム5b、内側タイヤ6bを備え、内輪リム5bはリング部12bとディスク部13bを備えている。ディスク部13bには、図4の(c)に示すように、大径孔14bと、複数のボルト孔15bと、一対のねじ孔16bを備えている。そして特に、このディスク部13bは一対の固定用孔16cも備えている。
【0050】
これらの一対の固定用孔16cは、ディスク部13bの中心線13b1に対して、角度Y傾けた中心O2を通る線13b2上にあって、隣り合うボルト孔15b間の中央にそれぞれ形成してある。また、上述した一対のねじ孔16bは、ディスク部13bの中心線13b1に対して、上述の線13b2と対称となる線13b3上であって、隣り合うボルト穴15b間の中央にそれぞれ形成してある。これにより、一対のねじ孔16bのうちの同図4の(c)図の下側に示されるねじ孔16bは、中心線13b1に対して同図4の(c)図の下側に示される固定用孔16cと対称に位置している。また、一対のねじ孔16bのうちの同図4の(c)図の上側に示されるねじ孔16bは、中心線13b1に対して同図4の(c)図の上側に示される固定用孔16cと対称に位置している。
【0051】
すなわち、図4の(b)図に示す外輪リム3bのディスク部8bの面と、図4の(c)図に示す内輪リム5bのディスク部13bの面とは、それぞれ対応する位置に、同等の複数のボルト孔10b,15b、同等の一対の固定用孔11b,16c、同等の一対のねじ孔11c,16bを有する同一形状に設定してある。
【0052】
また、この第4実施形態は、第1実施形態におけるのと同様に、外輪リム3bの一対の固定用孔11bと、内輪リム5bの一対のねじ孔16bとを適合させた状態で、固定用孔11bに挿入され、ねじ孔16bと螺合する一対のボルト17を備えている。この第4実施形態では、一対の固定用孔11bと、一対のねじ孔16bと、一対のボルト17とによって、外輪1bと内輪2bとを互いに固定する固定手段が構成されている。
【0053】
すなわち、この第4実施形態では、図4の(a)図に示すように、一対のボルト17のそれぞれが、外輪1bの外輪リム3bのディスク部8bに形成した固定用孔11bに挿通され、内輪2bの内輪リム5bのディスク部13bに形成したねじ孔16bに螺合することによって、外輪1bと内輪2bとが一体に固定される。
【0054】
また、外輪リム3bのオフセット寸法を内輪リム5bのオフセット寸法に比べて大きく設定してある。すなわち、外輪リム3bのディスク部8bと、内輪リム5bのディスク部13bとの接合面から内輪2bの内側タイヤ6bの中心までのオフセット寸法bに比べて、上述の接合面から外輪1bの外側タイヤ4bの中心までのオフセット寸法aが大きくなっている。
【0055】
このような外輪1bと内輪2bからなる一対の複輪のそれぞれの大径孔9b,14bに、図5に示すように、アクスル20の両端を形成するハブケース21のそれぞれを挿入させ、アクスル20の図示しないボルトを一対の複輪のそれぞれのボルト穴10b,15bに挿入させ、ボルトに螺合させた図示しないナットで締結して、アクスル20の両端のそれぞれに複輪を取り付けた場合には、車両の幅寸法を比較的大きい寸法L1とすることができる。
【0056】
このように構成した第4実施形態も、一対の固定用孔11b、一対のねじ孔16b、及びボルト17から成る固定手段を備えたことから、上述した第1実施形態と同等の作用効果が得られる。
【0057】
[第5実施形態]
図6は本発明に係る複輪のリム構造の第5実施形態を示す図で、(a)図は縦断面図、(b)図は(a)図のA5矢視に相応する正面図、(c)図は(a)図のB5矢視に相応する正面図、図7は図6に示す第5実施形態をアクスルに取り付けた状態を示す要部縦断面図である。
【0058】
この第5実施形態は、車両の幅寸法、すなわちアクスルの両端のそれぞれに複輪を取り付けた場合の一対の複輪の外側面間の寸法が、大小二つの異なった寸法を取り得るときの、大小の双方に適用可能な実施形態である。そして特に、この第5実施形態は、車両の幅寸法を小さく設定する場合の実施形態である。
【0059】
この第5実施形態にあっては、図4に示した第4実施形態の複輪を構成する外輪1bを内輪として採用し、上述の第4実施形態の内輪2bを外輪として採用したものである。すなわち、第4実施形態の外輪1bと内輪2bとを逆に配置したものである。
【0060】
この第5実施形態の外輪(第4実施形態の内輪2bに相当)と内輪(第4実施形態の外輪1bに相当)とは、外輪リムのディスク部(第4実施形態のディスク部13bに相当)に形成した固定用孔16cのそれぞれに挿入され、ねじ孔11cのそれぞれと螺合する一対のボルト17によって一体に固定されている。すなわち、この第5実施形態では、一対の固定用孔16cと、一対のねじ孔11cと、一対のボルト17とによって、外輪(第4実施形態の内輪2bに相当)と内輪(第4実施形態の外輪1bに相当)とを互いに固定する固定手段が構成されている。
【0061】
このような外輪(第4実施形態の内輪2bに相当)と内輪(第4実施形態の外輪1bに相当)から成る複輪を、図7に示す様に、アクスル20aの両端のハブケース21aを介してそれぞれ取り付けた場合には、車両の幅寸法を、図5の寸法L1よりも小さい寸法L2とすることができる。
【0062】
このように構成した第5実施形態も、一対の固定用孔16c、一対のねじ孔11c、及びボルト17から成る固定手段を備えたことから、上述した第1実施形態と同等の作用効果が得られる。
【0063】
また特に、上述した第4実施形態及び第5実施形態にあっては、1種類の外輪リム3b及び1種類の内輪リム5bを用意しておくことにより、2つの異なる車両の幅寸法に対応可能になっている。すなわち、2つの異なる車両の製造を考慮した場合に、製作するリムの種類を上述した第2,第3実施形態における場合に比べて半減させることができ、これにより、リムの製作費を安くすることができると共に、部品管理等における取扱いが容易となる。
【0064】
なお、上述した第1実施形態において、第4,第5実施形態に備えられるねじ孔11c、及び固定用孔16cと同等のものを備えた構成にしてもよい。
【0065】
すなわち、図1の(b)図に示す外輪リム3に一対の固定用孔11の他に、一対のねじ孔を設け、内輪リム5に一対のねじ孔16の他に一対の固定用孔を設け、これらの外輪リム3に設けられる固定用孔11及びねじ孔の位置関係を、例えば図4の(b)図に示すものと同等に設定し、内輪リム5に設けられるねじ孔16および固定用孔の位置関係を、例えば図4の(c)図に示すものと同等に設定した構成にしてもよい。
【0066】
このように構成した場合には、第1実施形態では車両の幅寸法が一つに限られるときにも、外輪リム3と内輪リム5の2種類のリムが必要であったものを、単に1種類のリムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る複輪のリム構造の第1実施形態を示す図で、(a)図は縦断面図、(b)図は(a)図のA1矢視に相応する正面図、(c)図は(a)図のB1矢視に相応する正面図である。
【図2】本発明に係る複輪のリム構造の第2実施形態を示す図で、(a)図は縦断面図、(b)図は(a)図のA2矢視に相応する正面図、(c)図は(a)図のB2矢視に相応する正面図である。
【図3】本発明に係る複輪のリム構造の第3実施形態を示す図で、(a)図は縦断面図、(b)図は(a)図のA3矢視に相応する正面図、(c)図は(a)図のB3矢視に相応する正面図である。
【図4】本発明に係る複輪のリム構造の第4実施形態を示す図で、(a)図は縦断面図、(b)図は(a)図のA4矢視に相応する正面図、(c)図は(a)図のB4矢視に相応する正面図である。
【図5】図4に示す第4実施形態をアクスルに取り付けた状態を示す要部縦断面図である。
【図6】本発明に係る複輪のリム構造の第5実施形態を示す図で、(a)図は縦断面図、(b)図は(a)図のA5矢視に相応する正面図、(c)図は(a)図のB5矢視に相応する正面図である。
【図7】図6に示す第5実施形態をアクスルに取り付けた状態を示す要部縦断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1,1a,1b 外輪
2,2a,2b 内輪
3,3a,3b 外輪リム
4,4a,4b 外側タイヤ
5,5a,5b 内輪リム
6,6a,6b 内側タイヤ
7,7a,7b リング部
8,8a,8b ディスク部
9,9a,9b 大径孔
10,10a,10b ボルト孔
11,11a,11b 固定用孔(固定手段)
11c ねじ孔(固定手段)
12,12a,12b リング部
13,13a,13b ディスク部
14,14a,14b 大径孔
15,15a,15b ボルト孔
16,16a,16b ねじ孔(固定手段)
16c 固定用孔(固定手段)
17 ボルト(固定手段)
20,20a アクスル
21,21a ハブケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のアクスルの端部に取り付けられ、外輪と内輪とから成る複輪のリム構造において、
上記外輪の上記アクスル固定用のボルト孔を有する外輪リムと、上記内輪の上記アクスル固定用のボルト孔を有する内輪リムとを、上記外輪及び上記内輪を上記アクスルに取り付ける以前に、それぞれの上記ボルト孔を一致させた状態で互いに固定する固定手段を備えたことを特徴とする複輪のリム構造。
【請求項2】
上記請求項1記載の発明において、
上記固定手段は、上記外輪リムに形成した貫通孔である固定用孔と、上記内輪リムに形成したねじ孔と、上記固定用孔に挿通され、上記ねじ孔と螺合して上記外輪リムと上記内輪リムとを一体に締結するボルトとを含むことを特徴とする複輪のリム構造。
【請求項3】
上記請求項2記載の発明において、
上記外輪リムは上記固定用孔を有するものの上記ねじ孔を有さず、上記内輪リムは上記ねじ孔を有するものの上記固定用孔を有さないことを特徴とする複輪のリム構造。
【請求項4】
上記請求項2記載の発明において、
上記外輪リムと上記内輪リムのそれぞれが、上記固定用孔と上記ねじ孔の双方を有することを特徴とする複輪のリム構造。
【請求項5】
上記請求項3または4記載の発明において、
上記アクスルの軸方向に沿う上記外輪リムのオフセット寸法と、上記内輪リムのオフセット寸法を同じ寸法に設定したことを特徴とする複輪のリム構造。
【請求項6】
上記請求項3または4記載の発明において、
上記アクスルの軸方向に沿う上記外輪リムのオフセット寸法と、上記内輪リムのオフセット寸法とを互いに異ならせた寸法に設定したことを特徴とする複輪のリム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−218897(P2006−218897A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−31865(P2005−31865)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)