説明

覆工コンクリートの養生装置及び養生方法

【課題】 養生区間の覆工コンクリートを容易に、短時間で、効率良く養生する。
【解決手段】 覆工コンクリート42の内面側に間隔をおいて設けられて、覆工コンクリート42の内面との間に空間25を形成する養生シート21と、空間25のトンネルの長手方向の両端部をシールする第1シール部材22と、空間25のトンネルの周方向の両端部をシールする第2シール部材23と、養生シート21のトンネルの周方向の端部又は養生シート21の頂部に沿ってトンネルの長手方向に延びるように設けられるとともに、空間25に連通する複数の送気口を有する送気管30と、養生シート21の頂部又はトンネルの周方向の端部に沿ってトンネルの長手方向に延びるように設けられるとともに、空間25に連通する複数の排気口を有する排気管34と、送気管30及び排気管34を介して空間25との間で加湿された空気を循環させる加湿器29とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの覆工コンクリートの養生装置及び養生方法に関し、特に、トンネルの内壁面に打設した覆工コンクリートを養生させる覆工コンクリートの養生装置及び養生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トンネルの新設工事においては、工期や経済性の観点から、所要強度を確認した上で、覆工コンクリートの打設翌日に型枠を取り外すことが標準とされている。このため、現場の環境条件によっては、型枠の取り外し後に、コンクリート表面の急激な乾燥や温度降下が生じる場合があり、覆工コンクリートのひび割れ発生の原因の一つとなっている。
【0003】
上記のような覆工コンクリートのひび割れ発生の問題を回避するため、覆工コンクリートの表面を直接散水して養生する方法がある。しかし、このような方法は、散水設備や排水設備が必要となるばかりでなく、散水付近では、路盤の泥濘化や視界不良により、工事車両の通行の安全性が損なわれる。また、一定期間、常時コンクリート表面を濡らした状態に保たなければならないため、その管理に多大な労力を要する。さらに、散水する水の温度が低く過ぎる場合には、コンクリート表面を急激に冷すことになり、温度応力の発生や強度発現の低下を引き起こす原因となる。
【0004】
一方、特許文献1には、トンネル内を長手方向に移動可能な移動式架台と、移動式架台に支持されるとともに、トンネルの内壁面に打設された覆工コンクリートとの間に空間を形成するシートと、空間のトンネルの長手方向の両端を閉塞する妻材と、空間内に設けられる複数の超音波加湿器とを備えた覆工コンクリートの養生装置が記載されている。
【0005】
このような構成の養生装置にあっては、養生区間の覆工コンクリートの位置まで移動式架台を移動させ、その位置において、シートによって覆工コンクリートとの間に半円筒形状の空間を形成し、この半円筒形状の空間のトンネルの長手方向の両端を妻材によって閉塞し、超音波加湿器を作動させて空間内に水蒸気を充満させることにより、覆工コンクリートを所定の湿潤状態で養生させている。
【特許文献1】特開2000−73696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような構成の覆工コンクリートの養生装置にあっては、空間の内部に超音波加湿器を配置して、各超音波加湿器の作動により、空間内に周方向の両端部から頂部方向への水蒸気の流れを形成することで、空間内に水蒸気を充満させているが、空間内の全体を均一な湿度に保ち、覆工コンクリートの全体を所定の湿潤状態に保つためには、各超音波加湿器の設置位置、及び各超音波加湿器からの水蒸気の吹出量、吹出方向等の調整に熟練を要し、経験の浅い作業者では養生空間を均一な状態にし、覆工コンクリートを所定の湿潤状態に保つことが難しい。
【0007】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、熟練を要することなく、養生空間を均一な状態にし、覆工コンクリートを所定の湿潤状態に保つことができる、覆工コンクリートの養生装置及び養生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、本発明は、トンネルの内壁面に打設した覆工コンクリートの養生装置であって、該覆工コンクリートの内面側に間隔をおいて設けられて、前記覆工コンクリートの内面との間に空間を形成する養生シートと、該空間の該トンネルの長手方向の両端部をシールする第1シール部材と、前記空間の前記トンネルの周方向の両端部をシールする第2シール部材と、該養生シートの前記トンネルの周方向の端部又は前記養生シートの頂部に沿って前記トンネルの長手方向に延びるように設けられるとともに、前記空間に連通する複数の送気口を有する送気管と、前記養生シートの頂部又は前記トンネルの周方向の端部に沿って前記トンネルの長手方向に延びるように設けられるとともに、前記空間に連通する複数の排気口を有する排気管と、該送気管及び該排気管を介して前記空間との間で加湿された空気を循環させる加湿器とを備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明の覆工コンクリートの養生装置によれば、養生シートと第1シール部材と第2シール部材とによって覆工コンクリートの内面との間に形成された空間内に、加湿器によって加湿された空気を循環させることにより、空間内を所定の湿度に保つことができ、覆工コンクリートを所定の湿潤状態に保つことができる。
この場合、加湿器の作動により、空間内に加湿された空気を循環させることで、空間内を所定の湿度に保つことができるので、熟練を要することなく、空間内を所定の湿度に保つことができ、覆工コンクリートを所定の湿潤状態に保つことができる。
【0010】
さらに、本発明において、前記送気管の各送気口には、前記空間内への空気の送気量を調整するダンパーがそれぞれ設けられ、前記排気管の各排気口には、前記空間からの空気の排気量を調整するダンパーがそれぞれ設けられていることとしてもよい。
【0011】
本発明の覆工コンクリートの養生装置によれば、各送気口のダンパーを調整して各送気口から空間内への空気の送気量を調整し、各排気口のダンパーを調整して空間内から各排気口を介しての空気の排気量を調整することにより、空間の全体に加湿された空気をより均一に循環させることができ、空間内の全体を均一な状態とすることができ、覆工コンクリートの全体を均一にムラのない状態で養生することができる。
【0012】
さらに、本発明において、前記養生シートに第1シール部材、及び第2シール部材が設けられており、前記養生シートを支持している架台フレームが前記トンネルの長手方向に移動可能であることとしてもよい。
【0013】
本発明の覆工コンクリートの養生装置によれば、養生シート、第1シール部材、及び第2シール部材を架台フレームを介してトンネル長手方向に移動させることができるので、養生シート、第1シール部材、及び第2シール部材の養生区間形成のための組み立て解体作業を大きく省略化することができる。
【0014】
さらに、本発明において、前記第1シール部材及び前記第2シール部材は、膨張、収縮変形可能な袋状をなすものであって、内部に気体を充填して膨張変形させることにより、前記空間の長手方向の両端部及び周方向の両端部がシールされ、内部から気体を排出させて収縮変形させることにより、前記空間の長手方向の両端部及び周方向の両端部のシール状態が解除されることとしてもよい。
【0015】
本発明の覆工コンクリートの養生装置によれば、第1シール部材及び第2シール部材の内部に気体を供給して膨張変形させることにより、空間の長手方向の両端部及び周方向の両端部をシールでき、第1シール部材及び第2シール部材の内部から気体を排出させて収縮変形させることにより、空間の長手方向の両端部及び周方向両端部のシール状態を解除することができるので、養生区間の形成において最も手間のかかる作業を短時間で行うことができる。
【0016】
さらに、本発明において、前記架台フレームは、前記トンネルの底部に設けられたガイドレールによって前記トンネルの長手方向に移動可能に案内されていることとしてもよい。
【0017】
本発明の覆工コンクリートの養生装置によれば、ガイドレールに沿って架台フレームを移動させることにより、架台フレームと一体に養生シート、第1シール部材、及び第2シール部材を移動させることができるので、養生空間の任意の養生区間への移動及び位置決めを容易に行うことができる。
【0018】
さらに、本発明において、前記架台フレームは、前記養生シートを支持するアーチ形フレームを備え、該アーチ形フレームは、複数の短材をヒンジを介して互いに連結し、隣接する短材間をヒンジを介して互いに屈曲自在とした多角形構造をなしていることとしてもよい。
【0019】
本発明の覆工コンクリートの養生装置によれば、架台のアーチ形フレームを短材連結による多角形構造としたので、断面形状や大きさの異なるトンネルに対応することが可能となる。
【0020】
さらに、本発明において、前記加湿器は、超音波加湿器であることとしてもよい。
【0021】
本発明による覆工コンクリートの養生装置によれば、超音波加湿器により効率良く加湿された空気を発生させることができる。
【0022】
さらに、本発明において、前記加湿器は、自動運転可能に構成されていることとしてもよい。
【0023】
本発明の覆工コンクリートの養生装置によれば、空間の湿度に応じて加湿器が作動又は作動が停止することになるので、省エネルギー化及び省力化を図ることができる。
【0024】
さらに、本発明は、トンネルの内壁面に打設した覆工コンクリートの養生方法であって、請求項1から8の何れか1項に記載の覆工コンクリートの養生装置を用い、養生空間の湿度を均一に保つことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
以上、説明したように、本発明の覆工コンクリートの養生装置及び養生方法によれば、熟練を要することなく、覆工コンクリートを均一に所定の湿潤状態に保つことで、覆工コンクリートの養生を効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図4には、本発明による覆工コンクリートの養生装置の第1の実施の形態が示されている。図1は全体の縦断面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は図1の送気管及び排気管のB矢視図、図4は図3の側面図である。
【0027】
すなわち、本実施の形態の覆工コンクリートの養生装置1は、トンネルの内壁面に打設した覆工コンクリート42の養生に有効なものであって、図1及び図2に示すように、養生区間の覆工コンクリート42の内面との間に密閉されたアーチ形状の空間25を形成する養生シート21、第1シール部材22、及び第2シール部材23と、養生シート21、第1シール部材22、及び第2シール部材23を支持するとともに、トンネルの長手方向に移動可能な架台フレーム2と、空間25内に加湿された空気を循環させる加湿手段28とを備えている。
【0028】
架台フレーム2は、図1及び図2に示すように、養生シート21、第1シール部材22、及び第2シール部材23を支持するフレーム本体4と、フレーム本体4の上部に設けられる作業足場13とを備え、トンネルの底部に敷設されている一対のガイドレール18によって長手方向に移動可能に案内されている。
【0029】
フレーム本体4は、トンネルの長手方向に所定の間隔ごとに配置される複数の門形フレーム5と、各門形フレーム5の外側に一体に設けられる複数のアーチ形フレーム9と、複数の門形フレーム5及び複数のアーチ形フレーム9をトンネルの長手方向に一体に連結する複数の架材10とから構成されている。
【0030】
門形フレーム5は、一対の縦フレーム6、6と、両縦フレーム6、6の上端間を連結する横フレーム7と、各縦フレーム6の下端からトンネルの内面方向に張り出る張出材8とから構成され、門形フレーム5の張出材8の上部、横フレーム7の中央部、及び両端部に、アーチ形フレーム9の各部がそれぞれ溶接、ねじ止め等の連結手段によって一体に連結されている。
【0031】
フレーム本体4のアーチ形フレーム9の外周側に後述する養生シート21及び第1シール部材22が接着剤等の取付手段によって一体に取り付けられ、門形フレーム5の張出材8の先端に後述する第2シール部材23が接着剤等の取付手段によって一体に取り付けられている。
【0032】
作業足場13は、トンネルの長手方向に間隔をおいて配置される一対の門形フレーム5、5と、一対の門形フレーム5、5の上端部間及び下端部間をトンネルの長手方向に連結する架材10と、一対の門形フレーム5、5及び上端部の一対の架材10、10の上部に設けられる天板14と、天板14とトンネルの底部との間に架け渡される昇降用の階段15とを備え、天板14の上部に後述する加湿手段28の加湿器29が設置されている。
【0033】
架台フレーム2のフレーム本体4の各門形フレーム5の縦フレーム6の下端にはそれぞれ車輪17が設けられるとともに、作業足場13の各門形フレーム5の縦フレーム6の下端にもそれぞれ車輪17が設けられ、これらの車輪17は、トンネルの底部の一対のガイドレール18、18によって転動可能に案内され、これにより、架台フレーム2と一体に養生シート21、第1シール部材22、及び第2シール部材23がトンネルの長手方向に移動可能に構成されている。
【0034】
養生シート21は、シート表面に結露が生じにくく、かつ、気密性を有する材料から形成されるシート状をなすものであって、本実施の形態においては、養生シート21として、発泡ポリエチレン付両面ポリエチレンシートと気泡緩衝シートの複合構造を材料としている。養生シート21は、フレーム本体4のアーチ形フレーム9の外周面に取り付けられて、養生区間の覆工コンクリート42の内面との間にアーチ状の空間25を形成するようになっている。
なお、養生シート21は、シート表面に結露が生じにくく、かつ、気密性を有する材料であれば特に制限はなく、周知の各種の材料を用いることができる。
【0035】
第1シール部材22は、フレーム本体4の長手方向の両端部のアーチ形フレーム9の外周面に取り付けられて、空間25の長手方向(トンネルの長手方向)の両端部をシールするようになっている。
【0036】
第2シール部材23は、フレーム本体4の短手方向(トンネルの周方向)の両端部に設けられて、空間25の短手方向(トンネルの周方向)の両端部をシールするようになっている。
【0037】
養生シート21と第1シール部材22と第2シール部材23との協働により、覆工コンクリート42との間に密閉された空間25が形成されるようになっている。
【0038】
なお、第1シール部材22は、養生シート21の長手方向の両端部に接着剤、熱融着等の接合手段によって気密に接合され、第2シール部材は23、養生シート21の短手方向の両端部に接着剤、熱融着等の接合手段によって気密に接合されている。
【0039】
第1シール部材22、及び第2シール部材23は、合成ゴム、合成樹脂等から形成される膨張、収縮変形可能な袋状をなすものであって、内部に気体(例えば、空気)を充填することにより、円形断面のアーチ形に膨張変形し、又は円形断面の棒状に膨張変形し、空間25の長手方向の両端部又は周方向の両端部をシールし、内部から気体を排出させることにより、収縮変形して空間25の長手方向の両端部又は周方向の両端部のシール状態を解除する。
【0040】
第1シール部材22、及び第2シール部材は、空気供給管(図示せず)を介してコンプレッサー等の空気供給源に接続され、空気供給源の作動によって空気供給管を介して第1シール部材22及び第2シール部材23の内部に空気を充填することで第1シール部材22及び第2シール部材23が膨張変形する。
【0041】
なお、本実施の形態においては、セントル40(覆工コンクリート42を打設する型枠)の作業足場41が配置される部分も含めて養生区間としているため、養生区間の覆工コンクリート42の内面と養生シート21との間に形成される空間25をトンネルの長手方向に第1空間26と第2空間27(セントル40の作業足場41に対応する部分)の2つに分割し、第1空間26の長手方向の両端部及び第2空間27の長手方向の両端部にそれぞれ第1シール部材22を設け、第1空間26の周方向の両端部及び第2空間27の周方向の両端部にそれぞれ第2シール部材23を設け、第1空間26と第2空間27を独立した状態で形成している。
【0042】
加湿手段28は、作業足場13の天板14の上部に設置される加湿器29(超音波加湿器)と、フレーム本体4の門形フレーム5の張出材8の上部に敷設される送気管30と、加湿器29と送気管30との間に設けられる送風機33と、フレーム本体4のアーチ形フレーム9の中央部の下方に吊設される排気管34とを備え、加湿器29及び送風機33の作動により、加湿器29で加湿された空気が送気管30を介して空間25内に供給され、空間25内に供給された空気が空間25内から排気管34に排出され、排気管34から加湿器29に戻り、加湿器29で加湿調整されて、再び送気管30を介して空間25内に供給される。
【0043】
加湿器29は、自動運転可能に構成され、空間25の湿度に応じて運転が制御され、空間25内の湿度を一定に保つようになっている。また、加湿器29を超音波加湿器とすることにより、加湿された空気を効率良く発生させることができる。
【0044】
送気管30は、図1及び図2に示すように、フレーム本体4の張出材8の上部に、フレーム本体4の略全長に亘るように敷設されるとともに、一端がフレーム本体4の端部(図1中、左端部)から上方に引き出されて、作業足場13の上部に設置されている加湿器29の送気口に接続されている。
【0045】
排気管34は、図1及び図2に示すように、フレーム本体4のアーチ形フレーム9の中央部の下方に、フレーム本体4の略全長に亘るように吊設されるとともに、一端がフレーム本体4の端部(図1中、左端部)から下方に引き出されて、作業足場13の上部に設置されている加湿器29の吸引口に接続されている。
【0046】
図3及び図4に示すように、送気管30には、送気管30の内部に連通する複数の送気口である送気ダクト32が送気管30の全長に亘って所定の間隔ごとに、かつ、覆工コンクリート42の内面に向けて突出した状態で設けられ、各送気ダクト32の先端が養生シート21を貫通して空間25内の周方向の端部に連通している。
【0047】
各送気ダクト32には、各送気ダクト32の開口面積を調整するダンパー(図示せず)がそれぞれ設けられ、このダンパーによって各送気ダクト32の開口面積を調整することにより、長手方向で損失抵抗の異なる各ダクトからの送気を均一な状態に揃えることができる。
【0048】
送気管30は、図4に示すように、第1送気管30a、第2送気管30b、及び第3送気管30cを伸縮継手31を介して相互に屈曲可能、かつ分割可能に連結したものであって、トンネル内を移動させる際に、伸縮継手31の部分で屈曲させることにより、又は分割することにより、カーブの部分においてもトンネル内を容易に移動させることができる。
【0049】
図3及び図4に示すように、排気管34のフレーム本体4に対応する部分には、排気管34の内部に連通する複数の排気口である排気ダクト36が排気管33の全長に亘って所定の間隔ごとに、かつ、覆工コンクリート42の内面に向けて突出した状態で設けられ、各排気ダクト36の先端が養生シート21を貫通して空間25内の頂部に連通している。
【0050】
各排気ダクト36には、各排気ダクト36の開口面積を調整するダンパー(図示せず)がそれぞれ設けられ、このダンパーによって各排気ダクト36の開口面積を調整することにより、長手方向で異なる養生空気の循環状態を均一に整えることができる。
【0051】
排気管34は、図4に示すように、第1排気管34a、第2排気管34b、及び第3排気管34cを伸縮継手35を介して相互に屈曲可能、かつ分割可能に連結したものであって、トンネル内を移動させる際に、伸縮継手35の部分で屈曲させることにより、又は分割することにより、カーブの部分においてもトンネル内を容易に移動させることができる。
【0052】
そして、上記のように構成した本実施の形態による養生装置1を用いてトンネルの内壁面に打設した覆工コンクリート42を養生させるには、以下の(1)〜(3)の手順に従う。
【0053】
(1)養生装置1をトンネルの長手方向に移動させて養生区間に位置決めし、養生区間の覆工コンクリート42の内面に養生シート21を対向させ、覆工コンクリート42の内面と養生シート21との間にアーチ状の空間25(第1空間26及び第2空間27)を形成する。
【0054】
(2)空気供給源を作動させて、各第1シール部材22及び各第2シール部材23に空気を充填して膨張変形させ、第1空間26の長手方向の両端部、及び第2空間27の長手方向の両端部を各第1シール部材22でそれぞれシールし、第1空間26の周方向の両端部、及び第2空間27の周方向の両端部を各第2シール部材23でそれぞれシールし、覆工コンクリート42の内面と養生シート21との間に密閉された第1空間26及び第2空間27を形成する。
【0055】
(3)加湿手段28の加湿器29及び送風機32を作動させて、加湿器29で加湿調整した空気を送気管30及び送気ダクト32を介して第1空間26及び第2空間27内に周方向の両端部から供給し、この空気を第1空間26及び第2空間27内の周方向の両端部から頂部方向に流し、第1空間26及び第2空間27の頂部から排気ダクト36を介して排気管34内に排出させ、排気管34を介して加湿器29に戻し、加湿器29で加湿調整した後に、加湿器29から再び送気管30及び送気ダクト32を介して第1空間26及び第2空間27内に供給する。
【0056】
(4)空気供給源を停止させて、第1シー部材22及び第2シール部材23を収縮変形させ、第1空間26の長手方向の両端部、及び第2空間27の長手方向の両端部の各第1シール部材22によるシール状態、及び第1空間26の周方向の両端部、及び第2空間27の周方向の両端部の各第2シール部材23によるシール状態を解除し、養生装置1をトンネルの長手方向に移動させる。
【0057】
そして、上記の(1)〜(4)の手順を繰り返し行い、加湿器29と第1空間26及び第2空間27との間で送気管30、送気ダクト32、排気ダクト36、及び排気管34を介して加湿された空気を循環させることにより、第1空間26及び第2空間27内が所定の湿度に保たれ、第1空間26及び第2空間27に対応する覆工コンクリート42の部分が所定の湿潤状態に保たれることになる。
【0058】
この場合、送気ダクト32及び排気ダクト36及び加湿器29は、密閉された空間側に結露水が生じにくい方法をとることにより、密閉区間内を効率良く加湿することができる。
【0059】
上記のように構成した本実施の形態による養生装置1にあっては、トンネルの長手方向に養生装置1を移動させて養生区間に位置決めして、養生区間の覆工コンクリート42の内面と養生シート21との間に密閉された空間25(第1空間26及び第2空間27)を形成し、空間25(第1空間26及び第2空間27)と加湿手段28の加湿器29との間で加湿された空気を循環させることにより、空間25(第1空間26及び第2空間27)内の全体を均一に所定の湿度に保ち、空間25(第1空間26及び第2空間27)に対応する覆工コンクリート42の表面をムラなく所定の湿潤状態に保つことができる。
【0060】
従って、養生区間の覆工コンクリート42の養生に熟練を要することなく、経験の浅い作業者であっても、養生区間の覆工コンクリート42をムラなく所定の湿潤状態に保つことができる。また、養生装置1を養生区間に位置決めし、空気供給源を作動させて第1シール部材22及び第2シール部材23を膨張変形させて、空間25(第1空間26及び第2空間27)の長手方向の両端部及び周方向の両端部をシールすることで、養生区間の覆工コンクリート42の内面と養生シート21との間に密閉された空間25(第1空間26及び第2空間27)を形成することができるので、養生装置1の養生区間への設置、撤去を容易に、短時間で行うことができ、覆工コンクリート42の養生を効率良く行うことができる。
【0061】
さらに、加湿手段28の送気管30及び排気管34を空間25(第1空間26及び第2空間27)の長手方向の全長に亘るように設け、送気管30に全長に亘って所定の間隔ごとに送気ダクト32を設け、排気管34に全長に亘って所定の間隔ごとに排気ダクト36を設け、各送気ダクト32を空間25(第1空間26及び第2空間27)の周方向の両端部(足元部)に連通し、各排気ダクト36を空間25(第1空間26及び第2空間27)の頂部に連通し、各送気ダクト32に空気の送気量を調整するダンパーを設け、各排気ダクト36に空気の排気量を調整するダンパーを設けたので、各ダンパーを調整することにより、空間25(第1空間26及び第2空間27)に対応する覆工コンクリート42の全体に加湿された空気を均一に作用させることができる。従って、覆工コンクリート42の全体を均一な所定の湿潤状態に保つことができる。
【0062】
図5〜図7には、本発明による覆工コンクリートの養生装置の第2の実施の形態が示されている。図5は全体の概略縦断面図、図6は図5のC−C線断面図、図7は図5のD−D線断面図である。
【0063】
すなわち、本実施の形態の養生装置1は、架台フレーム2をフレーム本体4のみによって構成し、作業足場をなくしたものであって、その他の構成は前記第1の実施の形態に示すものと略同様である。
【0064】
この場合、フレーム本体4は、トンネルの長手方向に所定の間隔ごとに配置される複数のアーチ形フレーム9と、各アーチ形フレーム9の内面側に垂直に設けられる一対の補強フレーム11、11と、複数のアーチ形フレーム9の外側に密着した状態に配置される架材10とによって構成し、各アーチ形フレーム9の長手方向の両端部にトンネルの中央方向に張り出る張出材8を一体に設け、この張出材8の上部に送気管30及び送風機32を配置している。また、一対の補強フレーム11、11の上部に天板12を配置し、この天板12の上部に加湿手段28の加湿器29を配置している。さらに、各アーチ形フレーム9を、複数の短材9aをヒンジ9bを介して互いに連結した多角形構造とし、隣接する短材9a、9a間をヒンジ9bを介して互いに屈曲可能に構成し、断面形状や大きさの異なるトンネルに適用可能に構成している。
【0065】
上記のように構成した本実施の形態による養生装置1にあっても、前記第1の実施の形態に示すものと同様の作用効果を奏する他に、作業足場及び門形フレームをなくしているので、内部空間を広くすることができ、工事車両の通行を容易にすることができ、覆工コンクリート42の養生をより効率良く行うことができる。また、アーチ形フレーム9を短材9aをヒンジ9bを介して互いに連結した多角形構造とし、隣接する短材9a、9a間をヒンジ9bを介して互いに屈曲可能に構成しているので、断面形状や大きさの異なるトンネルに対応することが可能となる。
【0066】
図8及び図9には、本発明による覆工コンクリートの養生装置の第3の実施の形態が示されている。図8は全体の概略横断面図、図9は図8のE−E線断面図である。
【0067】
すなわち、本実施の形態の養生装置1は、架台フレーム2をフレーム本体4のみによって構成し、作業足場をなくしたものであって、その他の構成は前記第1の実施の形態に示すものと略同様である。
【0068】
この場合、フレーム本体4は、トンネルの長手方向に所定の間隔ごとに配置されるアーチ形フレーム9と、複数のアーチ形フレーム9をトンネルの長手方向に一体に連結する複数の架材10とによって構成し、各アーチ形フレーム9の長手方向の両端部にトンネルの中央方向に張り出る張出材8を一体に設け、この張出材8の上部に送気管30及び加湿手段28の加湿器29を配置している。
【0069】
そして、上記のように構成した本実施の形態による養生装置にあっても、前記第1の実施の形態に示すものと同様の作用効果を奏する他に、作業足場及び門形フレームをなくしているので、内部空間を広くすることができ、工事車両の通行を容易にすることができ、覆工コンクリート42の養生をより効率良く行うことができる。
【0070】
なお、前記各実施の形態においては、円筒状養生空間の下端部に送気管30を敷設し、上部に排気管34を吊設したが、この配置は逆であってもよい。また、送気管30を一方の下端部に排気管34を他方の下端部に敷設しても同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明による覆工コンクリートの養生装置の第1の実施の形態の全体を示した縦断面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1の送気管及び排気管のB矢視図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】本発明による覆工コンクリートの養生装置の第2の実施の形態の全体を示した縦断面図である。
【図6】図5のC−C線断面図である。
【図7】図5のD−D線断面図である。
【図8】本発明による覆工コンクリートの養生装置の第3の実施の形態の縦断面図である。
【図9】図8のE−E線断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 養生装置 2 架台フレーム
4 フレーム本体 5 門形フレーム
6 縦フレーム 7 横フレーム
8 張出材 9 アーチ形フレーム
9a 短材 9b ヒンジ
10 架材 11 補強フレーム
12 天板 13 作業足場
14 天板 15 階段
17 車輪 18 ガイドレール
21 養生シート 22 第1シール部材
23 第2シール部材 25 空間
26 第1空間 27 第2空間
28 加湿手段 29 加湿器
30 送気管 30a 第1送気管
30b 第2送気管 30c 第3送気管
31、35 伸縮継手 32 送気ダクト
33 送風機 34 排気管
34a 第1排気管 34b 第2排気管
34c 第3排気管 36 排気ダクト
40 セントル 41 作業足場
42 覆工コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの内壁面に打設した覆工コンクリートの養生装置であって、
該覆工コンクリートの内面側に間隔をおいて設けられて、前記覆工コンクリートの内面との間に空間を形成する養生シートと、該空間の該トンネルの長手方向の両端部をシールする第1シール部材と、前記空間の前記トンネルの周方向の両端部をシールする第2シール部材と、
該養生シートの前記トンネルの周方向の端部又は前記養生シートの頂部に沿って前記トンネルの長手方向に延びるように設けられるとともに、前記空間に連通する複数の送気口を有する送気管と、
前記養生シートの頂部又は前記トンネルの周方向の端部に沿って前記トンネルの長手方向に延びるように設けられるとともに、前記空間に連通する複数の排気口を有する排気管と、
該送気管及び該排気管を介して前記空間との間で加湿された空気を循環させる加湿器とを備えていることを特徴とする覆工コンクリートの養生装置。
【請求項2】
前記送気管の各送気口には、前記空間内への空気の送気量を調整するダンパーがそれぞれ設けられ、前記排気管の各排気口には、前記空間からの空気の排気量を調整するダンパーがそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の覆工コンクリートの養生装置。
【請求項3】
前記養生シートに第1シール部材、及び第2シール部材が設けられており、前記養生シートを支持している架台フレームが前記トンネルの長手方向に移動可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の覆工コンクリートの養生装置。
【請求項4】
前記第1シール部材及び前記第2シール部材は、膨張、収縮変形可能な袋状をなすものであって、内部に気体を充填して膨張変形させることにより、前記空間の長手方向の両端部及び周方向の両端部がシールされ、内部から気体を排出させて収縮変形させることにより、前記空間の長手方向の両端部及び周方向の両端部のシール状態が解除されることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の覆工コンクリートの養生装置。
【請求項5】
前記架台フレームは、前記トンネルの底部に設けられたガイドレールによって前記トンネルの長手方向に移動可能に案内されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の覆工コンクリートの養生装置。
【請求項6】
前記架台フレームは、前記養生シートを支持するアーチ形フレームを備え、該アーチ形フレームは、複数の短材をヒンジを介して互いに連結し、隣接する短材間をヒンジを介して互いに屈曲自在とした多角形構造をなしていることを特徴とする請求項3から5の何れか1項に記載の覆工コンクリートの養生装置。
【請求項7】
前記加湿器は、超音波加湿器であることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の覆工コンクリートの養生装置。
【請求項8】
前記加湿器は、自動運転可能に構成されていることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の覆工コンクリートの養生装置。
【請求項9】
トンネルの内壁面に打設した覆工コンクリートの養生方法であって、
請求項1から8の何れか1項に記載の覆工コンクリートの養生装置を用い、養生空間の湿度を均一に保つことを特徴とする覆工コンクリートの養生方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−156133(P2010−156133A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334414(P2008−334414)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】