説明

覆砂工法

【課題】周辺水域に白濁を生じることなく、覆砂を確実に固結させることができる覆砂工法を提供する。
【解決手段】河川、湖沼及び海域等の公共水域等の公共水域の底質を覆う覆砂材として、高炉水砕スラグと、予め造粒処理が施された製鋼スラグ(造粒製鋼スラグ)及び/又は予め炭酸化処理が施された製鋼スラグ(炭酸化製鋼スラグ)との混合物を使用する。その際、覆砂材中の高炉水砕スラグ量と製鋼スラグ量(造粒製鋼スラグ及び炭酸化製鋼スラグの総量)との質量比(高炉水砕スラグ/製鋼スラグ)が、(3/7)〜(7/3)となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉水砕スラグと製鋼スラグとにより水域の底質を覆い、更にこれらを固結させることにより、底質に含有されている汚染物質を封じ込めて水域への汚染拡散を防止する覆砂工法に関する。
【背景技術】
【0002】
河川、湖沼及び海域等の公共水域の水底に存在する原地盤及び堆積物等の底質中には、例えば、リン及び硫化水素等のように赤潮・青潮の発生の原因となる富栄養化物質、有害重金属、ダイオキシン類等の汚染物質が含まれていることがある。
【0003】
このような底質中の汚染物質の拡散による水質汚染を防止する方法の一つとして、海砂及び山砂等の天然砂で底質を覆う方法、いわゆる覆砂工法が知られている。また、従来、天然砂の替わりに鉄鋼副産物である高炉水砕スラグを利用する技術も開発されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0004】
高炉スラグは、銑鉄を製造する高炉で溶融された鉄鉱石における鉄以外の成分で、副原料の石灰石及びコークス中の灰分と共に分離回収される副産物であり、銑鉄1tあたり約300kg生成する。高炉から取り出されたスラグは約1500℃程度の溶融状態であるが、冷却の方法によって、高炉水砕スラグと高炉徐冷スラグとに分別される。高炉水砕スラグは、溶融高炉スラグに加圧水を噴射する等して急激に冷却することによって生成されるガラス質(非晶質)の粒状スラグである。一方、高炉徐冷スラグは、溶融高炉スラグを直接ドライピットに放流するか、又は樋から一度トーピードカーに移して遠方の屋外のヤードまで運搬し、そこで放流された後、自然放冷と適度の散水とにより冷却されたものであり、結晶質の岩石状のスラグである。
【0005】
特許文献1には、ダイオキシン類を含有する底質を、高炉水砕スラグに製鋼スラグ及び/又は天然砂を添加した混合物で被覆する水質汚染の防止方法が開示されている。この特許文献1に記載の方法では、製鋼スラグは高炉水砕スラグの水硬性を向上させるアルカリ刺激材として使用しているが、製鋼スラグを混合してpHを上げ過ぎると周辺水域に白濁が生じることがある。そこで、特許文献1には、白濁を避けるには高炉徐冷スラグを使用すればよいことが記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、高炉水砕スラグの潜在水硬性をアルカリ刺激によって発現させて固結させ、透水係数が低い固結層で底質を覆う技術が提案されている。なお、潜在水硬性とは、セメントのように水と混合するだけで固結する自硬性は有していないが、アルカリ、硫酸塩等の存在下では水和反応を起こして硬化する性質をいう。
【0007】
【特許文献1】特開2004−195456号公報
【特許文献2】特開2004−285560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の方法の場合、前述したように高炉徐冷スラグを使用することで、水中投入時及びその後に発生する白濁を回避することはできるが、高炉徐冷スラグを使用すると固結促進作用が不十分となり、固結力が弱くなるという問題点がある。
【0009】
また、特許文献2に記載の方法の場合、高炉水砕スラグは自己のアルカリ性による固結力が不十分であるため、高炉水砕スラグを単独で使用すると固結力が弱くなるという問題点がある。また、特許文献2では、水中投入時の白濁防止に関しては何ら検討されていない。
【0010】
更に、前述のいずれの技術においても、高炉水砕スラグのアルカリ刺激材として製鋼スラグを使用した場合、水中投入時のpH上昇に伴う白濁を回避し、更に高炉水砕スラグを確実に固結させることは困難である。即ち、従来、水中投入時に白濁することがなく、且つ高炉水砕スラグを確実に固結させることができる覆砂工法は実現されていない。
【0011】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、周辺水域に白濁を生じることなく、覆砂を確実に固結させることができる覆砂工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る覆砂工法は、底質を覆砂材で覆って前記底質中に含まれる汚染物質の拡散を防止する覆砂工法において、前記覆砂材として、高炉水砕スラグと、予め造粒処理又は炭酸化処理が施された製鋼スラグとを、前記高炉スラグと前記製鋼スラグとの質量比(高炉水砕スラグ/製鋼スラグ)が(3/7)〜(7/3)となるように混合したものを使用することを特徴とする。
【0013】
本発明においては、高炉水砕スラグのアルカリ刺激材として、造粒処理又は炭酸化処理により、表面が安定化されると共に大粒化された製鋼スラグを添加しているため、pHの急激な上昇及び微粉末による懸濁の発生が抑制される。
【0014】
この覆砂工法では、前記炭酸化処理として、未処理の製鋼スラグを自転式ミキサーに投入し、前記自転式ミキサーを0.5〜24時間回転させながらその内部に炭酸ガスを吹き込む処理を行うことができる。
【0015】
また、前記造粒処理として、未処理の製鋼スラグ:10質量部、高炉水砕スラグ、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、建設汚泥、粘土及びシリカヒュームからなる群から選択された少なくとも1種のポラゾン物質:2〜5質量部及び水:0.5〜2質量部を自転式ミキサーに投入し、これらを前記自転式ミキサーにより3〜10分間攪拌混合した後、1週間以上養生する処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の覆砂工法によれば、高炉水砕スラグに造粒スラグ又は炭酸化スラグを混合した覆砂材を使用しているため、周辺水域の白濁を回避することができると共に、覆砂を所望の固結状態とすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0018】
本発明の覆砂工法は、鋼副産物である高炉水砕スラグと製鋼スラグとの混合物である覆砂材を底質上に投入し、製鋼スラグのアルカリ刺激によって高炉水砕スラグを固結させることにより、底質を透水係数が低い固結層により覆う方法である。そして、本発明の覆砂工法においては、製鋼スラグとして、造粒処理した造粒製鋼スラグ及び/又は炭酸化処理した炭酸化製鋼スラグを使用しており、これらの製鋼スラグの覆砂材中の含有量を30〜70質量%としている。
【0019】
本発明の覆砂工法において使用する高炉水砕スラグは、水と反応して固結する自硬性は弱いが、アルカリ性の高い製鋼スラグ等の存在下では水和反応を起こして硬化する潜在水硬性を有しており、高炉の溶融状態で銑鉄と分離された溶融スラグを分離直後に急冷処理することにより製造される炉前水砕スラグ及び屋外まで運搬して急冷することにより製造される炉外水砕スラグのいずれでもよい。
【0020】
また、高炉水砕スラグの水砕処理後の処理方法については、水砕製造後に未加工のものでもよく、又は破砕による粒度調整したものでもよい。なお、エージング期間については特段の定めはない。更に、水中投入時に海底の浮泥へのめり込みを防止するため、高炉水砕スラグの最大粒径は5mm以下とすることが好ましく、また、微粉末による水中投入時の懸濁を防止するため、粒径が75μm以下の微粒子の含有率を全体の1.5質量%以下とすることが望ましい。
【0021】
一方、本発明の覆砂工法において高炉水砕スラグと混合して使用される製鋼スラグは、高炉で製造された銑鉄から不用な成分を除去し、靭性及び加工性がある鋼とする製鋼工程において生成される転炉スラグ、溶銑予備処理スラグ及び転炉2次精錬スラグ、又はスクラップを電気炉で直接溶解して鋼を製造する際に生成する電気炉酸化スラグ及び電気炉還元スラグがあり、このような製鋼スラグは高炉水砕スラグの固結を促進するためのアルカリ刺激材としての機能を有する。
【0022】
これらの製鋼スラグは、一般に、ふるいによる分級を行った状態のままでは粒径が75μm以下の微粒子の含有率が高く、水中投入時に懸濁を生じることがある。例えば、このような微粒子を含む製鋼スラグを海水に投入した場合、投入時にpHが急上昇し、海水中に大量に存在するマグネシウムイオンが水酸化マグネシウムとして沈殿して周辺水域が白濁する。そこで、本発明の覆砂工法においては、製鋼スラグとして、表面を安定化させると共に微粒子成分を大粒化させる安定処理を実施したものを使用する。具体的には、安定化処理として造粒処理又は炭酸化処理を行った製鋼スラグを使用する。これにより、海中投入時における周辺水域のpHの急激な上昇を抑制することができる。なお、本発明において使用する製鋼スラグは、前述の高炉水砕スラグと同様に、その最大粒径を5mm以下とすることが望ましい。
【0023】
造粒処理は、製鋼スラグに、ポゾラン物質及び少量の水を加えて撹拌混合した後、この混合物を所望の期間養生する処理であり、このような処理を施したものを造粒製鋼スラグという。その際、使用するポラゾン物質としては、例えば、高炉水砕スラグ、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、建設汚泥、粘土及びシリカヒューム等が挙げられる。この造粒処理を行うと、製鋼スラグとポゾラン物質とが反応して水和物が生成し、この水和物により製鋼スラグの表面が部分的に被覆されて安定化すると共に、水和物によるバインダー効果によって主に製鋼スラグに含まれる微粒が大粒化又は大粒の粒子表面に結合する。これにより、覆砂材に添加しても、周辺水域との反応による急激なpHの上昇及び微粉末による懸濁の発生を防止することができる。
【0024】
造粒処理の具体的な方法としては、例えば、攪拌翼のついたミキサー又はコンクリートミキサー等の自転式のミキサーに、最大粒径が5mm以下になるように分級した製鋼スラグ10質量部に対して、高炉水砕スラグ、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、建設汚泥、粘土及びシリカヒュームからなる群から選択された少なくとも1種のポゾラン物質を2〜5質量部、水を0.5〜2質量部を投入し、3〜10分間攪拌混合した後、これらの混合物を1週間以上養生させる方法等がある。
【0025】
このとき、製鋼スラグ10質量部に対して添加されるポゾラン物質が2質量部未満、又は水が0.5質量部未満の場合、反応が未成熟となり、製鋼スラグが水和物により十分に被覆されないことがある。よって、製鋼スラグ10質量部に対するポゾラン物質の添加量は2質量部以上で、且つ水の添加量は0.5質量部以上とすることが好ましい。また、製鋼スラグ10質量部に対して、ポゾラン物質の添加量が5質量部を超えるか、又は水の添加量が2質量部を超えると、反応が飽和してしまうことがある。よって、製鋼スラグ10質量部に対するポゾラン物質の添加量は5質量部以下で、且つ水の添加量は2質量部以下とすることが好ましい。更に、攪拌時間が3分間未満の場合、十分に攪拌されないことがあり、また、攪拌時間が10分間を超えると、反応が飽和してしまうことがある。よって、攪拌時間は3〜10分間とすることが望ましい。そして、この混合物の養生期間は、1週間以上であることが望ましく、これにより、十分な水和反応による被覆効果を得ることができる。
【0026】
なお、造粒処理を行った後の製鋼スラグ、即ち、造粒製鋼スラグは、前述の高炉水砕スラグと同様に、75μm以下である粒子の含有量が全体の1.5質量%以下であることが望ましい。
【0027】
一方、炭酸化処理は、所望の含水比に調整した製鋼スラグを、静置又は攪拌した状態に保持して炭酸ガスを吹き込む処理であり、このような処理を施したものを炭酸化製鋼スラグという。炭酸化処理を行うと、製鋼スラグから溶出する水酸化カルシウムと、炭酸ガスが水に溶解することにより生じた炭酸イオンとが反応して安定な炭酸カルシウムが生成し、この炭酸カルシウムによって製鋼スラグの表面が部分的に安定化される共に製鋼スラグに含まれる微粉末が団粒化される。これにより、覆砂材に添加しても、周辺水域との反応による急激なpHの上昇及び微粉末による懸濁の発生を防止することができる。
【0028】
炭酸化処理の具体的な方法としては、例えば、製鋼スラグを回転式コンクリートミキサー等の自転式ミキサーに投入し、0.5〜24時間程度の間、ミキサーを回転させながらその内部に炭酸ガスを吹き込むか、又は、含水比が5〜15質量%となるように調整した製鋼スラグを回転式コンクリートミキサー等の自転式ミキサーに投入し、0.5〜24時間程度の間、ミキサーを回転させながらその内部に炭酸ガスを吹き込む方法等がある。
【0029】
このとき、処理時間(回転時間)が0.5時間未満の場合、製鋼スラグの表面を部分的に安定化させることができなかったり、製鋼スラグに含まれる微粉末を団粒化させることができなかったりすることがある。よって、処理時間は0.5時間以上とすることが望ましい。なお、処理時間が24時間を超えると、製鋼スラグ表面の安定化は状態が飽和し、コスト的にも見合わないため、処理時間の上限は24時間とすることが望ましい。
【0030】
そして、本発明の覆砂工法においては、前述した高炉水砕スラグと、造粒製鋼スラグ及び/又は炭酸化製鋼スラグとを混合した覆砂材を使用する。その際、覆砂材中の高炉水砕スラグ量と製鋼スラグ量との比(高炉水砕スラグ/製鋼スラグ)が(3/7)〜(7/3)の範囲内になるようにする。即ち、覆砂材中の製鋼スラグ含有量(造粒製鋼スラグ及び炭酸化製鋼スラグの両方を含む場合はその総含有量)が30〜70質量%になるようにする。覆砂材の製鋼スラグ含有量が70質量%を超えるか、又は30質量%未満である場合、投入初期における固結前の段階での締固めが不良となり、製鋼スラグ粒子間の間隙が大きくなるため、透水係数が大きくなる。その結果、投入初期における封じ込め効果が低下する。なお、覆砂材の製鋼スラグ含有量が上述の範囲から外れていても、固結することにより天然砂よりも高い封じ込め効果が得られることがあるが、その場合でも投入初期における封じ込め効果が劣っているため、本発明の範囲外とする。
【0031】
なお、この覆砂材を海底中への投入する際は、予め本発明の範囲内の比率で高炉水砕スラグと造粒製鋼スラグ及び/又は炭酸化製鋼スラグとを混合しておき、底開式の船又はトレミー管により水中に投入することができる。
【0032】
本発明の覆砂工法においては、未処理の製鋼スラグよりも表面が安定で、微粒子成分が少ない造粒製鋼スラグ及び/又は炭酸化製鋼スラグを使用しているため、水中投入時の周辺水域のpH上昇速度を低下させることができると共に、微粒子成分による懸濁を防止することができる。また、水中投入後はpHが徐々に上昇するため、覆砂を所望の固結状態とすることができる。その結果、周辺水域に白濁を生じさせずに、覆砂を確実に固結させることができる。
【0033】
特に、ダイオキシン類は、存在形態がイオンとして溶存しているのではなく、主に懸濁粒子に吸着して存在しているため、その汚染経路はダイオキシンが吸着している底質の巻上げ及び魚介類による摂取から始まり、食物連鎖により伝播していくことが考えられる。その対策工法としての覆砂は、原位置で封じ込める安価な工法として位置づけられるが、本発明の覆砂工法は、更に、低質を覆う覆砂材を確実に固結させることができるため、従来の覆砂工法に比べて、より安全性を高めることができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0035】
本発明の第1実施例として、高炉水砕スラグに、アルカリ刺激材として造粒製鋼スラグ(実施例1)、炭酸化製鋼スラグ(実施例2)又は未処理の製鋼スラグ(比較例1)を混合した覆砂材及び高炉スラグを添加していない覆砂材(比較例2)を用意し、海水中で高炉水砕スラグを固結させる際のpH上昇及び白濁現象について確認した。図1は横軸に投入後の時間をとり、縦軸に海水のpHをとって、覆砂材投入後のpHの経時変化を示すグラフ図であり、図2は横軸に養生日数をとり、縦軸に一軸圧縮強さをとって、覆砂層の固結強度及び透水係数の経時変化を示すグラフ図である。なお、実施例1、実施例2及び比較例1の覆砂材における高炉水砕スラグと各製鋼スラグとの質量比(高炉水砕スラグ:各製鋼スラグ)は7:3とした。
【0036】
海水の白濁はpHが9.5〜9.6以上となったときに発生するが、図1に示すように、高炉水砕スラグを単独で使用した比較例2の覆砂材は、pHの上昇はほとんど見られず、白濁は発生しなかった。一方、未処理の製鋼スラグと高炉水砕スラグとを混合した比較例1の覆砂材は、投入直後に海水中のpHが急上昇し、海水中のマグネシウムイオンが沈殿析出して白濁が発生した。これに対して、高炉水砕スラグに造粒製鋼スラグを混合した実施例1の覆砂材、炭酸化製鋼スラグを混合した実施例2の覆砂材は、投入後の海水のpH上昇は緩慢で、施工後24時間後にも白濁を生じていなかった。即ち、実施例1及び2の覆砂材では、投入後24時間以内に覆砂層が形成され、投入直後の白濁は防止されていた。
【0037】
また、図2に示すように、高炉水砕スラグに製鋼スラグを添加した実施例1、実施例2及び比較例1の覆砂材により形成された覆砂層は、養生日数が経過するに従い一軸圧縮強さが増加し、十分固結が進んでいたが、高炉水砕スラグ単独で使用した比較例2の覆砂材により形成した覆砂層は、28日経過した後でも固結が不十分であった。
【0038】
次に、本発明の第2実施例として、高炉水砕スラグと造粒製鋼スラグ又は炭酸化製鋼スラグとを、本発明の範囲内で混合比を変えて混合した実施例11〜16の覆砂材、山砂単独の比較例1の覆砂材、高炉スラグ単独の比較例12の覆砂材、高炉スラグと未処理の製鋼スラグとを5:5で混合した比較例13の覆砂材、造粒製鋼スラグ又は炭酸化製鋼スラグの含有量が30質量%未満の比較例14の覆砂材、造粒製鋼スラグ又は炭酸化製鋼スラグの含有量が70質量%を超えている比較例15の覆砂材を作製し、ダイオキシンにより汚染された底質(ダイオキシン濃度:100pg−TEQ/kg)上に施工し、白濁現象、固結状態及び28日経過後の水質について調査した。その結果を下記表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
上記表1に示すように、実施例11〜16の覆砂材は、山砂を使用した比較例11の覆砂材、高炉水砕スラグを単独で使用した比較例12の覆砂材に比べて高い封じ込め性能が得られた。また、実施例11〜16の覆砂材は、高炉水砕スラグと未処理の製鋼スラグとの混合物である比較例13の覆砂材と比べても遜色のない封じ込め性能が確認され、更に、この比較例13の覆砂材のように投入直後に白濁が発生することはなかった。更にまた、高炉水砕スラグと造粒製鋼スラグ又は炭酸化製鋼スラグとの配合比が本発明の範囲から外れる比較例14,15の覆砂材は、投入直後の白濁発生はなく、28日後の固結も確認されたが、投入初期における締固めが不良であったため、封じ込め効果が低く、実施例11〜16の覆砂材を使用した場合に比べて、周辺水域のSS、溶存ダイオキシン濃度及び懸濁性ダイオキシン濃度が高かった。よって、投入直後の白濁防止及び投入から28日後の固結を共に達成し、更に汚染物質の封じ込め効果が優れていた覆砂材は、本発明の範囲内の実施例11〜16のみであった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】横軸に経過時間をとり、縦軸にpHをとって、覆砂材投入後の周辺水域のpHの経時変化を示すグラフ図である。
【図2】横軸に養生日数をとり、縦軸に一軸圧縮強さをとって、覆砂層の固結強度及び透水係数の経時変化を示すグラフ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底質を覆砂材で覆って前記底質中に含まれる汚染物質の拡散を防止する覆砂工法において、
前記覆砂材として、高炉水砕スラグと、予め造粒処理又は炭酸化処理が施された製鋼スラグとを、前記高炉水砕スラグと前記製鋼スラグとの質量比(高炉水砕スラグ/製鋼スラグ)が(3/7)〜(7/3)となるように混合したものを使用することを特徴とする覆砂工法。
【請求項2】
前記炭酸化処理として、未処理の製鋼スラグを自転式ミキサーに投入し、前記自転式ミキサーを0.5〜24時間回転させながら、その内部に炭酸ガスを吹き込む処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の覆砂工法。
【請求項3】
前記造粒処理として、未処理の製鋼スラグ:10質量部、高炉水砕スラグ、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、建設汚泥、粘土及びシリカヒュームからなる群から選択された少なくとも1種のポラゾン物質:2〜5質量部及び水:0.5〜2質量部を自転式ミキサーに投入し、これらを前記自転式ミキサーにより3〜10分間攪拌混合した後、1週間以上養生する処理を行うことを特徴とする請求項1記載の覆砂工法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−126838(P2007−126838A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−318767(P2005−318767)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】