説明

視覚訓練システムおよびプログラム

【課題】スポーツパフォーマンス向上に必要な視覚機能を多面的に高度に訓練することを可能とする視覚訓練システムおよびプログラムを提供する。
【解決手段】瞬時に多くのターゲットを認知する瞬間視(42)、移動するターゲットに視線を速く正確に向ける眼球運動(44)、多くのターゲットから必要なものだけを視認する選択反応(46)、および所与の情報を速く正確に認知し結果を判断する知覚判断(48)の各訓練種目を提供する。これらの訓練課題において、視認すべきターゲットが、所定の位置や軌道ではなく、無作為の位置や軌道をとり、軌道は、直線に限らず曲線にもなり、複数のターゲットを使用するので、高い訓練効果を期待できる。訓練の難易度は、訓練レベル選択部(62)により所定の訓練レベルの中から選択できる。ターゲットの数および移動速度などは、パラメータ設定部70により設定可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚的な情報を認知する能力を向上させるための視覚訓練システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、サッカーのシュートや野球のバッティングなど、スポーツにおいて一般に技術を要する動作(スポーツパフォーマンス)は、眼で得た情報(視覚情報)を脳で処理することにより次の動作を決めるという過程(即ち、認知、思考および意志決定)を経て得られる最終的なパフォーマンスである。この過程は、普段の練習では意識されることのない部分であるが、パフォーマンス向上のためには非常に重要である。したがって、この過程で求められる視覚情報を認知する能力を向上させる必要があるため、動体視力などの視覚機能または能力を向上させるための視覚訓練がいろいろ提案されている。
【0003】
例えば、配列された発光ダイオードの輝点を移動させることにより、眼球運動を誘起するように構成された動体視力訓練装置及び表示装置がある(特許文献1参照)。また、モータで回転する2つの回転円盤を移動物を付けたベルトで繋ぎ、これらを窓付きの箱に収め、窓から見える移動物を目で追うことにより動体視力を鍛える動体視力トレーニングマシン(特許文献2参照)などがある。
しかし、これら2つの従来技術においては、視認すべきターゲット(例えば、特許文献1では輝点、特許文献2では移動物)は、1つに限定され、所定の軌道上を移動するのみである。このように、従来の視覚訓練方式は、スポーツパフォーマンスに重要な視覚能力の極一部しか訓練することができないという点に問題がある。
【特許文献1】特開2000−57586号公報
【特許文献2】特開2004−160114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の問題点を鑑みるに、視覚訓練システムにおいて、
(1)視認すべきターゲットが、所定の位置や軌道ではなく、無作為の位置や軌道をとることができ、
(2)軌道は、直線に限らず、円弧のような曲線を成すことができ、
(3)ターゲットの数は、1つに限定されず、複数とることができ、また、
(4)複数のターゲットから必要なターゲットに限定して視認する訓練が提供でき、
れば好都合である。
したがって、本発明は、これらを可能とすることによりスポーツパフォーマンス向上に必要な視覚機能を多面的に訓練することができる視覚訓練システムおよびプログラムを提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、表示手段を備えたコンピュータにロードして実行することにより、該コンピュータに視覚訓練機能を実現させる視覚訓練プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一面において、表示手段を備えたコンピュータにロードして実行することにより、該コンピュータに視覚訓練機能を実現させる視覚訓練プログラムを与える。
本発明の視覚訓練プログラムは、視認すべき対象である少なくとも1つの「第1の文字」を前記表示手段のランダムな位置に所定の「第1の期間」だけ表示した後、前記の少なくとも1つの「第1の文字」に対応する文字を利用者に入力させる瞬間視訓練手順と、視認すべき対象である少なくとも1つの「第2の文字」の各々を、前記表示手段の表示部分の縁のランダムな1点から他のランダムな点へと所定の「第2の期間」に直線的または曲線的に移動させた後、前記の少なくとも1つの「第2の文字」に対応する文字を利用者に入力させる眼球運動訓練手順とを前記コンピュータに実行させることを特徴とする。
本発明の視覚訓練プログラムによれば、視認すべきターゲットが、所定の位置や軌道ではなく、無作為の位置や軌道をとることができ、軌道は、直線に限らず、円弧のような曲線を成すことができるので、スポーツパフォーマンス向上に必要な視覚機能を多面的に訓練することができる。
【0006】
本発明の視覚訓練プログラムは、視認すべき対象が、「第1の方法」で表示された文字と「第2の方法」で表示された文字との何れであるかを前記利用者に知らせ、前記「第1の方法」で表示された少なくとも1つの「第3の文字」と前記「第2の方法」で表示された少なくとも1つの「第3の文字」との各々を、前記表示手段の表示部分の縁のランダムな1点から他のランダムな点へと所定の「第3の期間」に直線的または曲線的に移動させた後、前記の少なくとも1つの「第3の文字」に対応する文字を利用者に入力させる選択反応訓練手順を前記コンピュータにさらに実行させるように構成してもよい。
この視覚訓練プログラムによれば、複数のターゲットから必要なターゲットに限定して視認する訓練が提供できるので、やはり、スポーツパフォーマンス向上に必要な視覚機能を多面的に訓練することが可能となる。
【0007】
本発明の視覚訓練プログラムは、少なくとも1種類以上の大きさの上下左右方向の「単頭矢印」および「双頭矢印」をランダムに所定の「第4の期間」だけ表示した後、1対の同じ方向を示す「単頭矢印」の方向を上下左右の矢印キーを用いて前記利用者に入力させる知覚判断訓練手順を前記コンピュータにさらに実行させるように構成してもよい。
【0008】
本発明の視覚訓練プログラムは、複数の所定の訓練レベルの1つを前記利用者に選択させる訓練レベル選択手順を前記コンピュータにさらに実行させるように構成してもよい。
本発明の視覚訓練プログラムは、前記の各訓練レベルにおいて、前記「第1および第2の文字」の数、および前記「第1および第2の期間」の長さを利用者が変更することを可能とする第1のパラメータ設定手順を前記コンピュータにさらに実行させるように構成してもよい。
【0009】
本発明の視覚訓練プログラムは、前記の各訓練レベルにおいて、前記「第3の文字」の数、および前記「第3の期間」の長さを利用者が変更することを可能とする第2のパラメータ設定手順を前記コンピュータにさらに実行させるように構成してもよい。
本発明の視覚訓練プログラムは、前記の各訓練レベルにおいて、前記「第4の期間」の長さを利用者が変更することを可能とする第3のパラメータ設定手順を前記コンピュータにさらに実行させるように構成してもよい。
好ましい実施形態においては、前記「第1の方法」は、赤で塗りつぶした円内に白抜きで表示するものであり、前記「第2の方法」は、青で塗りつぶした円内に白抜きで表示するものである。
【0010】
本発明の視覚訓練プログラムは、訓練の成績をグラフで表示または印字するグラフ出力手順を前記コンピュータにさらに実行させるように構成してもよい。
本発明は、別の面において、上述の視覚訓練プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体を与える。
【0011】
本発明は、さらに別の面において、視覚情報を認知する能力を向上させるための視覚訓練システムを与える。本発明の視覚訓練システムは、その中核部を成す制御部と、前記制御部に対する二次記憶手段と、処理結果を表示する表示手段と、前記二次記憶手段にインストールされ、前記中核部により実行されることにより、本視覚訓練システムに視覚訓練機能を実現させる視覚訓練プログラムとからなり、且つ前記視覚訓練プログラムは、視認すべき対象である少なくとも1つの「第1の文字」を前記表示手段のランダムな位置に所定の「第1の期間」だけ表示した後、前記の少なくとも1つの「第1の文字」に対応する文字を利用者に入力させる瞬間視訓練手順と、視認すべき対象である少なくとも1つの「第2の文字」の各々を、前記表示手段の表示部分の縁のランダムな1点から他のランダムな点へと所定の「第2の期間」に直線的または曲線的に移動させた後、前記の少なくとも1つの「第2の文字」に対応する文字を利用者に入力させる眼球運動訓練手順とを前記制御部に実行させることを特徴とする。
【0012】
本発明の視覚訓練システムによれば、視認すべきターゲットが、所定の位置や軌道ではなく、無作為の位置や軌道をとることができ、軌道は、直線に限らず、円弧のような曲線を成すことができるので、スポーツパフォーマンス向上に必要な視覚機能を多面的に訓練することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の視覚訓練システムまたはプログラムによれば、視認すべきターゲット(例えば、表示される文字)が、所定の位置や軌道ではなく、無作為の位置や軌道をとることができる。軌道は、直線に限らず、円弧のような曲線を成すことができる。ターゲットの数は、1つに限定されず、複数とることができる。また、複数のターゲットから必要なターゲットに限定して視認する訓練が提供できる。与えられた情報を速く正確に認知し、結果を判断する能力を向上させることができる。したがって、本発明によれば、スポーツパフォーマンス向上に必要な視覚機能を多面的に訓練することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態例と添付図面により本発明を詳細に説明する。
なお、複数の図面に同じ要素を示す場合には同一の参照符号を付ける。
図2は、本発明の好ましい実施形態による視覚訓練システムのハードウェア構成を示す略ブロック図である。図1において、本発明の好ましい実施形態による視覚訓練システム1は、ハードウェアの観点からは、例えば、CRT、LCD、PDPなどのグラフィック表示可能な表示装置20と後述の視覚訓練プログラムが記録されたCD、DVDなどの光ディスクを読むことができる光ディスク駆動装置16を備えた通常のパーソナルコンピュータ(PC)でよい。PC本体10は、周知のようにPC全体を制御する中央制御部12と処理に必要な種々のプログラムやデータを格納するためのハードディスク(HD)14を備える。さらに、視覚訓練システム1は、利用者がデータを入力するためのキーボード(図示せず)、マウス(図示せず)などの入力装置30を備える。
【0015】
図3は、図2に示した光ディスク40に記録され、視覚訓練システム1にインストールされて中央制御部12により実行される視覚訓練プログラム40aの構成を示すブロック図である。好ましい実施形態では、図3に示すように、視覚訓練プログラム40aは、3つの動作モード、即ち、視覚訓練システム1の各利用者が訓練に使用するトレーニングモードおよびテストモード、ならびに各利用者の個人情報をIDとパスワードで管理する管理モードの何れかのモードで実行される。
【0016】
図3において、視覚訓練プログラム40aには、トレーニングモードとテストモードの両モードで使用される瞬間視トレーナ42(請求項の「瞬間視訓練手順」に対応する)、眼球運動トレーナ44(請求項の「眼球運動訓練手順」に対応する)、選択反応トレーナ46(請求項の「選択反応訓練手順」に対応する)および知覚判断トレーナ48(請求項の「知覚判断訓練手順」に対応する)が含まれる。ここで、瞬間視とは、瞬時に多くの対象物(情報)を認知する能力であり、瞬間的に敵の位置を把握することや一瞬でシュートコースを確認したりする能力である。眼球運動とは、視線を対象物に向ける速さと正確性の能力である。選択反応とは、多くの対象物から必要な対象物だけを視認する能力である。知覚判断とは、すべての情報を速く、正確に認知し、結果を判断する能力である。
【0017】
トレーニングモードでは、上述の瞬間視、眼球運動、選択反応および知覚判断の4つの訓練課題から任意の訓練課題を選択して行うことができる。テストモードでは、4つの訓練課題を順に例えば10問ずつ(本実施の形態の場合、計40問)行う。テストが終了すると、「正解数」と「回答率」を表示し、テスト結果を自動的に保存する。
【0018】
また、視覚訓練プログラム40aは、テストモードで実行されるサブプログラムとして、テスト結果保存部50およびテスト結果グラフ表示・印刷部52を含む。テスト結果保存部50は、テストモードにおいて上述の4つの訓練に対するテストを終了するたびに、テスト結果を自動的に保存するほか、所定のコマンドにより、テスト結果をCSV形式(カンマ区切りテキスト形式)などで保存できるので、例えばエクセル(登録商標)などのようにCSV形式のデータを処理できる表計算ソフトなどを用いて、テスト結果の高度な解析が可能となる。図8は、テストモードで行ったテストの結果をテスト結果グラフ表示・印刷部52によりグラフ表示した画面例を示す図である。同図に示すように、上述の4つの訓練種目およびその平均の中から選択した任意の項目について、回答時間の成績および正解率の成績をグラフ表示することができる。これらのグラフは、年別や月別など種々の表示方法が可能である。
【0019】
さらに、視覚訓練プログラム40aは、管理モードで実行されるサブプログラムとして、視覚訓練システム1で視覚訓練を受けるメンバーの情報を管理するメンバー管理部60および上述の4つのトレーナ42、44、46および48の難易度を決定するパラメータを変更するためのパラメータ設定部70を含む。本発明の視覚訓練プログラム40aでは、訓練の難易度を年齢クラスにより序列化した複数の訓練レベルに分類される。例えば、小学校低学年、小学校高学年、中学、高校、大学・一般およびアスリートに対応する訓練レベルを予め設定しておく。メンバー管理部60は、このような所定の訓練レベルを利用者ごとに設定することを可能とする訓練レベル選択部62を含む。
【0020】
図9は、パラメータ設定部70を実行した際に表示される画面の一例を示す図である。図9から分かるように、視覚訓練システム1または視覚訓練プログラム40aによれば、瞬間視、眼球運動/選択反応、および知覚判断の各訓練種目(図9では、眼球運動/選択反応を例にとった)に対して、上述の6つのトレーニングレベル(図9では、「高校」レベルを例にとった)ごとに、その訓練種目に関係するパラメータを変更することができる。例えば、眼球運動/選択反応では、眼球運動で使用(または表示)されるA〜Zのアルファベットの文字数、選択反応で使用される丸付き数字の数、開始前の時間(後述する)、終了後の時間(後述する)、回答制限時間(後述する)などを変更・設定することができる。
【0021】
以下、本発明の中心を成す上述の4つのトレーナを中心に、視覚訓練プログラム40aの動作を説明する。
4種類の訓練課題は、訓練内容は異なるが課題の進行は同じ手順で行われる。
図10は、各訓練課題の進行手順の流れを示すフローチャートである。図10において、まず、ステップ80において、課題の始まりを示す初期画面を表示装置20に表示する。この初期画面には、「瞬間視」、「眼球運動」、「選択反応」および「知覚判断」などの訓練の種類、訓練の概要の他に、開始ボタンが含まれる。
判断ステップ81において、開始ボタン81がクリックされるまで待機し、クリックされた場合(YESの場合)、ステップ82において、表示装置20の画面をクリアし、所定の期間(開始前の時間)待機する。待機後、ステップ83において、所定の期間にわたり、その時の訓練種目に応じた静止画または動画を提示する。即ち、利用者に訓練課題を課す。ステップ83の終了後、ステップ84において、表示装置20の画面をクリアし、所定の期間(終了後の時間)待機する。待機後、ステップ85において、回答入力画面(図示せず)を表示し、回答の入力を受け付ける。
【0022】
回答入力画面には、回答の入力が終了した旨の意思表示を視覚訓練システム1にするためのボタン(例えば、OKボタンなど)を含めるものとする。判断ステップ86において、所定の回答制限時間が経過したか否かを判断し、経過していない場合(NOの場合)、さらなる判断ステップ87において、OKボタンがクリックされたか否かを判断する。ステップ87の判断結果がNOの場合、判断ステップ86に戻り、YESの場合、判断ステップ88において、入力された回答が正解か否かを判断し、正解ならば(YESの場合)、ステップ89において、正解の旨を表示して、現在の訓練課題を終了する。判断ステップ88において、不正解と判断された場合(NOの場合)、ステップ90において、不正解の旨を表すメッセージまたは記号と正解とを表示して、現在の訓練課題を終了する。
【0023】
次に、本発明によるステップ83の動作を4つの訓練種目毎に詳細に説明する。
図4は、瞬間視のトレーニングのステップ83において表示装置20に所定の短い期間(請求項の第1の期間に対応する)に表示される画面例を示す図である。瞬間視では、A〜Zまでのアルファベット(請求項の第1の文字に対応する)をランダムに一瞬表示する。このように、本発明によれば、表示位置が無作為に変化して予測できないので、従来の方式より高度な視覚能力を要求される。上述の訓練レベルによって表示される文字数や時間が異なる。これらの文字数や時間は、パラメータ設定部70により設定を変更することができる。
【0024】
図5は、眼球運動のトレーニングのステップ83において表示装置20に所定の短い期間(請求項の第2の期間に対応する)に表示される動画像の一例を示す図である。眼球運動のトレーニングでは、例えばA〜Zまでのアルファベット(請求項の第2の文字に対応する)の1つ以上の文字の各々を、表示装置20の表示部分の4片のランダムな1点から他のランダムな点へと所定の短い期間に直線的または曲線的に移動させる。表示される文字は、同時に出現することもあれば、僅かな時間差をとって出現することもある。このように、本発明によれば、複数の文字がランダムに、あらゆる方向へ移動するので、従来の方式より高度な視覚能力を要求され、視覚能力向上に効果的である。上述の訓練レベルによって表示される文字数や表示時間(即ち、移動速度)が異なる。これらの文字数や表示時間は、パラメータ設定部70により設定を変更することができる。
【0025】
図6は、選択反応のトレーニングのステップ83において表示装置20に所定の短い期間(請求項の「第3の期間」に対応する)に表示される動画像の一例を示す図である。選択反応のトレーニングでは、複数の文字(請求項の「第3の文字」に対応する)を2通りの方法(請求項の「第1の方法」および「第2の方法」に対応する)で表示し、これらの文字を眼球運動トレーニングと同じ要領で移動させる。例えば、図6の例では、白抜きの丸の中に書いた数字(7,9)と黒丸の中に白抜きで書かれた数字(5,8)をランダムに表示、移動させている。本実施の形態では、白色の丸の中に黒色で数字を書くことが第1の方法に対応し、黒丸の中に白抜きで数字を書くことが第2の方法に対応する。
なお、本明細書でいう「第1の方法」および「第2の方法」とは、一例として白と黒とで下地の色と数字とを示したが、一般的には、第1の方法として赤色で塗りつぶした丸の中に白色の文字を示し、第2の方法として青色で塗りつぶした丸の中に白色の文字を示す、というように、対照的な2通りの表示方法をいう。
利用者は、ステップ80で指定された方法で表示された文字のみをステップステップ85で回答することになる。表示される文字は、同時に出現することもあれば、僅かな時間差をとって出現することもある。このように、本発明によれば、2通りの方法で表示された複数の文字がランダムに、あらゆる方向へ移動し、予め指定された方法で表示された文字のみを回答しなければならないので、従来の方式より一層高度な視覚能力を要求され、複数のターゲットを選択的に認識する視覚能力の向上に効果的である。上述の訓練レベルにより、表示される文字数や表示時間(即ち、移動速度)は異なる。これらの文字数や表示時間も、パラメータ設定部70により設定を変更することができる。
【0026】
図7は、知覚判断のトレーニングのステップ83において表示装置20に所定の期間(請求項の「第4の期間」に対応する)に表示される画面例を示す図である。知覚判断のトレーニングでは、少なくとも1種類以上の大きさの上下左右方向の「単頭矢印」(↑↓←→)および「双頭矢印」(⇔)をランダムに所定の期間だけ表示する。この表示には、同じ大きさで同じ方向を指す「単頭矢印」が1組のみ存在するものとし、利用者は、ステップ85において、その1組の矢印の向きと一致する矢印キー(↑↓←→)で回答することになる。この場合、「双頭矢印」や同じ方向を指す3つの「単頭矢印」は対象外とする。この知覚判断トレーニングによれば、与えられた情報を速く正確に認知し、結果を判断する能力を向上させることが可能となる。
【0027】
以上述べたように、本発明による視覚訓練システムまたは視覚訓練プログラムによれば、視認すべきターゲットが、所定の位置や軌道ではなく、無作為の位置や軌道をとり、軌道は、直線に限らず、円弧のような曲線にもなり、複数のターゲットが使用されるので、従来の視覚訓練方式より高度な視覚訓練を提供することができる。また、複数のターゲットから必要なターゲットに限定して視認する訓練、および与えられた情報を速く正確に認知し、結果を判断する能力を向上させる訓練を提供することもできる。したがって、本発明によれば、スポーツパフォーマンス向上に必要な視覚機能を多面的に訓練することができる。
【0028】
以上は、本発明の説明のために実施の形態の例を掲げたに過ぎない。したがって、本発明の技術思想または原理に沿って上述の実施の形態に種々の変更、修正または追加を行うことは、当業者には容易である。
例えば、好ましい実施形態では、視認すべきターゲットとして文字を用いたが、文字に限らず種々の記号を用いてもよい。
眼球運動および選択反応のトレーニングにおいては、ターゲットを表示画面の端から端へと移動させた。しかし、ターゲットの移動の始点および終点は、必ずしも表示画面の辺上にある必要はなく、表示画面の任意の点から任意の点に移動させてもよいことは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によれば、従来の視覚訓練方式より高度な視覚訓練を提供することができ、複数のターゲットから必要なターゲットに限定して視認する訓練や与えられた情報を速く正確に認知し、結果を判断する能力を向上させる訓練を提供することもできる。また、スポーツパフォーマンス向上に必要な視覚機能を多面的に訓練することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】スポーツにおいて競技者が発揮するパフォーマンスの出現過程を概念的に表した図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態による視覚訓練システムのハードウェア構成を示す略ブロック図である。
【図3】図2の視覚訓練システムにインストールされて実行される視覚訓練プログラムの構成の概要を示す図である。
【図4】瞬間視のトレーニングにおいて表示装置20に所定の短い期間に表示される画面例を示す図である。
【図5】眼球運動のトレーニングにおいて表示装置20に所定の短い期間に表示される動画像の一例を示す図である。
【図6】選択反応のトレーニングにおいて表示装置20に所定の短い期間に表示される動画像の一例を示す図である。
【図7】知覚判断のトレーニングにおいて表示装置20に所定の期間に表示される画面例を示す図である。
【図8】テストモードで行ったテストの結果をグラフ表示した画面例を示す図である。
【図9】各トレーニングレベル(「高校」レベルを例に取った)におけるパラメータを変更する画面の例を示す図である。
【図10】各訓練課題の進行手順の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
1 視覚訓練システム
10 コンピュータ(PC)本体
12 中央制御部
14 ハードディスク装置
16 光ディスク駆動装置
20 表示装置
30 入力装置
40 光ディスク
40a 視覚訓練プログラム
42 瞬間視トレーナ
44 眼球運動トレーナ
46 選択反応トレーナ
48 知覚判断トレーナ
50 テスト結果保存部
52 テスト結果グラフ表示・印刷部
60 メンバー管理部
62 訓練レベル選択部
70 パラメータ設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示手段を備えたコンピュータにロードして実行することにより、該コンピュータに視覚訓練機能を実現させる視覚訓練プログラムであって、
前記視覚訓練プログラムは、
視認すべき対象である少なくとも1つの第1の文字を前記表示手段のランダムな位置に所定の第1の期間だけ表示した後、前記の少なくとも1つの第1の文字に対応する文字を利用者に入力させる瞬間視訓練手順と、
視認すべき対象である少なくとも1つの第2の文字の各々を、前記表示手段の表示部分の縁のランダムな1点から他のランダムな点へと所定の第2の期間に直線的または曲線的に移動させた後、前記の少なくとも1つの第2の文字に対応する文字を利用者に入力させる眼球運動訓練手順と、
を前記コンピュータに実行させることを特徴とする視覚訓練プログラム。
【請求項2】
視認すべき対象が、第1の方法で表示された文字と第2の方法で表示された文字との何れであるかを前記利用者に知らせ、前記第1の方法で表示された少なくとも1つの第3の文字と前記第2の方法で表示された少なくとも1つの第3の文字との各々を、前記表示手段の表示部分の縁のランダムな1点から他のランダムな点へと所定の第3の期間に直線的または曲線的に移動させた後、前記の少なくとも1つの第3の文字に対応する文字を利用者に入力させる選択反応訓練手順を前記コンピュータにさらに実行させることを特徴とする請求項1に記載の視覚訓練プログラム。
【請求項3】
少なくとも1種類以上の大きさの上下左右方向の単頭矢印および双頭矢印をランダムに所定の第4の期間だけ表示した後、1対の同じ方向を示す単頭矢印の方向を上下左右の矢印キーを用いて前記利用者に入力させる知覚判断訓練手順を前記コンピュータにさらに実行させることを特徴とする請求項1または2記載の視覚訓練プログラム。
【請求項4】
複数の所定の訓練レベルの1つを前記利用者に選択させる訓練レベル選択手順を前記コンピュータにさらに実行させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の視覚訓練プログラム。
【請求項5】
前記の各訓練レベルにおいて、前記第1および第2の文字の数、および前記第1および第2の期間の長さを利用者が変更することを可能とする第1のパラメータ設定手順を前記コンピュータにさらに実行させることを特徴とする請求項4に記載の視覚訓練プログラム。
【請求項6】
前記の各訓練レベルにおいて、前記第3の文字の数、および前記第3の期間の長さを利用者が変更することを可能とする第2のパラメータ設定手順を前記コンピュータにさらに実行させることを特徴とする請求項4に記載の視覚訓練プログラム。
【請求項7】
前記の各訓練レベルにおいて、前記第4の期間の長さを利用者が変更することを可能とする第3のパラメータ設定手順を前記コンピュータにさらに実行させることを特徴とする請求項4に記載の視覚訓練プログラム。
【請求項8】
前記第1の方法は、赤で塗りつぶした円内に白抜きで表示するものであり、前記第2の方法は、青で塗りつぶした円内に白抜きで表示するものであることを特徴とする請求項2に記載の視覚訓練プログラム。
【請求項9】
訓練の成績をグラフで表示または印字するグラフ出力手順を前記コンピュータにさらに実行させることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の視覚訓練プログラム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の視覚訓練プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体。
【請求項11】
視覚情報を認知する能力を向上させるための視覚訓練システムであり、
本視覚訓練システムの中核部を成す制御部と、
前記制御部に対する二次記憶手段と、
処理結果を表示する表示手段と、
前記二次記憶手段にインストールされ、前記中核部により実行されることにより、本視覚訓練システムに視覚訓練機能を実現させる視覚訓練プログラムとからなり、且つ
前記視覚訓練プログラムが、
視認すべき対象である少なくとも1つの第1の文字を前記表示手段のランダムな位置に所定の第1の期間だけ表示した後、前記の少なくとも1つの第1の文字に対応する文字を利用者に入力させる瞬間視訓練手順と、
視認すべき対象である少なくとも1つの第2の文字の各々を、前記表示手段の表示部分の縁のランダムな1点から他のランダムな点へと所定の第2の期間に直線的または曲線的に移動させた後、前記の少なくとも1つの第2の文字に対応する文字を利用者に入力させる眼球運動訓練手順とを前記制御部に実行させることを特徴とする視覚訓練システム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図10】
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【図1】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−68579(P2007−68579A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255747(P2005−255747)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(504459630)株式会社スポ研 (1)
【出願人】(505026985)有限会社チャイルドライク・アンド・スポーツ (1)