説明

視野角及び色特性に優れたECB−LCD

本発明は、第1の基板と、第2の基板と、当該第1の基板と当該第2の基板との間に介在される正の誘電率異方性を有する液晶を含みセルのギャップが1〜5μmでありECBモードで駆動される液晶セルと、を含む液晶パネルと;上記第1の基板の上部に位置し第1の吸収軸を有する第1の偏光素子と;上記第2の基板の下部に位置し第2の吸収軸を有する第2の偏光素子と;上記第1の基板と上記第1の偏光素子との間に介在される第1の液晶フィルムと;上記第2の基板と上記第2の偏光素子との間に介在される第2の液晶フィルムと;を含み、上記第1の液晶フィルムは、第1の基材と、当該第1の基材の一面にネマチック液晶が面上方向から厚さ方向に最大傾斜角が20〜90°となるようにスプレイ配向してなる第1の液晶層と、を含み、上記第2の液晶フィルムは、第2の基材と、当該第2の基材の一面にネマチック液晶が水平配向してなる第2の液晶層と、を含む、ECB−LCD装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半透過反射型ECB−LCDに関し、より詳細には、視野角と色特性に優れ、生産コストの低いECB−LCDに関する。
【背景技術】
【0002】
ECB−LCD(Electrically Controllable Briefringence Liquid Crystal Display)は、電気的に液晶の複屈折を調節する液晶表示装置である。一般に、従来のECB−LCDは、透過部と反射部とからなる半透過反射型からなり、当該透過部は、暗い環境でバックライトを用いて画面が見られるように構成されており、反射部は、明るい環境で外光を用いて画面が見られるように構成されている。
【0003】
このような半透過反射型LCDは、透過モードと反射モードにおいて光が同一の光路を通るように構成されなければならず、このため、液晶パネルと偏光板との間に無色性円偏光子(AQWF、Achromatic Quarter Wave Film)が付着される。上記無色性円偏光子は、相違する位相差値及び光軸を有する二枚の位相差フィルムを組み合わせて形成されることができ、この際、上記二枚の位相差フィルムは、光軸が約30〜80°の角度をなすように付着される。
【0004】
しかしながら、このような従来のECB−LCDは、光源側偏光板に付着される位相差フィルムと視聴者側偏光板に付着される位相差フィルムがなす角度がそれぞれ異なり、位相差フィルム間の夾角が非常に大きいため、単板で積層して製作する場合、フィルムの損失が非常に大きく、工程が複雑で不良率が高く、製作コストが高いという問題があった。
【0005】
従来技術の場合、一般に位相差フィルムの光軸が縦軸方向に製作され、偏光板と位相差フィルムの光軸がなす角度で裁断し合板して製作する過程を経る。例えば、偏光板の吸収軸に対し、第一の位相差フィルム(λ/2)が15°をなし、第二の位相差フィルム(λ/4)が75°をなす場合、当該二枚のフィルムをそれぞれ光軸が15°及び75°となるように裁断しなければならない。この際、裁断角度が偏光板の吸収軸に対してそれぞれ15°及び75°となるため、多数のフィルム損失が生じ、原材料コスト及び製造コストが上昇するようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決するためのもので、構造が単純で製作が容易であり、生産コストが低く、且つ視野角特性及び色特性に優れたECB−LCDを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によると、第1の基板と、第2の基板と、当該第1の基板と当該第2の基板との間に介在される正の誘電率異方性を有する液晶を含みセルのギャップが1〜5μmでありECBモードで駆動される液晶セルと、を含む液晶パネルと;上記第1の基板の上部に位置し第1の吸収軸を有する第1の偏光素子と;上記第2の基板の下部に位置し第2の吸収軸を有する第2の偏光素子と;上記第1の基板と上記第1の偏光素子との間に介在される第1の液晶フィルムと;上記第2の基板と上記第2の偏光素子との間に介在される第2の液晶フィルムと;を含み、上記第1の液晶フィルムは、第1の基材と、当該第1の基材の上にネマチック液晶が面上方向から厚さ方向に最大傾斜角が20〜90°となるようにスプレイ配向してなる第1の液晶層と、を含み、上記第2の液晶フィルムは、第2の基材と、当該第2の基材の上にネマチック液晶が水平配向してなる第2の液晶層と、を含む、ECB−LCD装置を提供する。
【0008】
上記第1の基材及び/又は上記第2の基材は、一軸性位相差フィルム、負の二軸性位相差フィルム又は等方性フィルムであることができる。上記一軸性位相差フィルムは、例えば、一軸延伸COP(Cyclo Olefin Polymer)フィルム、一軸延伸PC(Polycarbonate)フィルム及び一軸延伸アクリレートフィルムからなる群から選択される1重であり、上記二軸性位相差フィルムは、例えば、二軸延伸COP(Cyclo Olefin Polymer)フィルム、一軸延伸TAC(TriAcetyl Cellulose)フィルム、二軸延伸PC(Polycarbonate)フィルム及び二軸延伸PMMAフィルムからなる群から選択される1重であり、上記等方性フィルムは、例えば、無延伸COP(Cyclo Olefin Polymer)フィルム、無延伸アクリレートフィルム及び無延伸PMMAフィルムからなる群から選択される1重であることができる。
【0009】
上記第1の基材及び/又は上記第2の基材として一軸性位相差フィルムを用いる場合、当該一軸性位相差フィルムは、550nmの波長で面上位相差値が200〜300nm程度であることが好ましい。
【0010】
上記第1の基材及び/又は上記第2の基材として負の二軸性位相差フィルムを用いる場合、当該二軸性位相差フィルムは、550nmの波長で面上位相差値が200〜300nm程度であり、厚さ方向位相差値が−5〜−100nm程度であることが好ましい。
【0011】
上記第1の液晶層の面上位相差値は、50〜150nm程度であることが好ましく、上記第2の液晶層の面上位相差値は、50〜150nm程度であることが好ましい。
【0012】
この場合、上記第1の基材の光軸と上記第1の液晶層の光軸がなす角度は、40〜80°又は−40〜−80°程度であることが好ましく、上記第2の基材と第2の液晶層の光軸がなす角度は、40〜80°又は−40〜−80°程度であることが好ましい。
【0013】
上記第1の基材と上記第1の液晶層との間及び/又は上記第2の基材と上記第2の液晶層との間には、配向膜がさらに含まれることができ、この際、当該配向膜は、アクリル系配向膜や、ポリノルボルネン系シアネート又はポリイミド系シアネートを含む光配向膜であることができる。
【0014】
上記第1の偏光素子と上記第1の液晶フィルムとの間及び上記第2の偏光素子と上記第2の液晶フィルムとの間には、内部保護フィルムが挿入されることができる。
【0015】
本発明の他の実施形態によると、第1の基板と、第2の基板と、当該第1の基板と当該第2の基板との間に介在される正の誘電率異方性を有する液晶を含みセルのギャップが1〜5μmでありECBモードで駆動される液晶セルと、を含む液晶パネルと;上記第1の基板の上部に位置し第1の吸収軸を有する第1の偏光素子と;上記第2の基板の下部に位置し第2の吸収軸を有する第2の偏光素子と;上記第1の基板と上記第1の偏光素子との間に介在される第1の液晶フィルムと;上記第2の基板と上記第2の偏光素子との間に介在される第2の液晶フィルムと;を含み、上記第1の液晶フィルムは、550nmの波長で面上位相差値が200〜300nmの一軸性位相差フィルムからなる第1の基材と、当該第1の基材の上にネマチック液晶が面上方向から厚さ方向に最大傾斜角が20〜90°となるようにスプレイ配向してなり当該第1の基材の光軸と40〜80°又は−40〜−80°の角度をなす光軸を有し面上位相差値が50〜150nmの第1の液晶層と、を含み、上記第2の液晶フィルムは、550nmの波長で面上位相差値が200〜300nmの一軸性位相差フィルムからなる第2の基材と、当該第2の基材の上にネマチック液晶が水平配向してなり当該第2の基材の光軸と40〜80°又は−40〜−80°の角度をなす光軸を有し面上位相差値が50〜150nmの第2の液晶層と、を含む、ECB−LCD装置を提供する。
【0016】
上記第1の偏光素子と上記第1の液晶フィルムとの間及び上記第2の偏光素子と上記第2の液晶フィルムとの間には、内部保護フィルムが挿入されることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のECB−LCDは、その構造が単純で製作が容易であり、生産コストが低くて価格競争力に優れ、且つ従来に比べて視野角及び色特性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のECB−LCDの構造を示す図である。
【図2】本発明の実施例1のECB−LCDの視野角特性を示す図である。
【図3】本発明の実施例2のECB−LCDの視野角特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
【0020】
図1には、本発明のECB−LCDの構成が概略的に示されている。図1に示されるように、本発明のECB−LCDは、液晶パネル10と、第1の偏光素子20と、第2の偏光素子30と、第1の液晶フィルム40と、第2の液晶フィルム50と、を含んでなる。
【0021】
本発明のECB−LCDの各構成要素を詳述する。
【0022】
(1)液晶パネル10
本発明の液晶パネル10は、ECBモードで作動される半透過反射型液晶パネルで、当該技術分野で用いられる一般のECBモードの半透過反射型液晶パネルであれば特に制限されるものではない。
【0023】
例えば、本発明の液晶パネル10は、一定の間隔をおいて対向配置される第1及び第2の基板12、16と、当該第1の基板12と当該第2の基板16との間に介在される液晶セル14と、を含んでなり、この際、上記第1及び第2の基板12、16には上記液晶セル14を駆動するための電極等の動作素子が形成され、上記液晶セル14には正の誘電率異方性(Δε>0)を有する液晶が注入され、上記液晶セル14のギャップは1〜5μm程度であることができる。
【0024】
(2)第1の偏光素子20及び第2の偏光素子30
第1の偏光素子20は、上記液晶パネル10の第1の基板12の上部に位置し、第2の偏光素子30は、上記液晶パネル10の第2の基板16の下部に位置する。上記第1の偏光素子20及び上記第2の偏光素子30は、上記液晶セル14の駆動に応じて特定方向に偏光された光を透過させるか又は遮断することにより明又は暗を具現するようにするためのもので、当該第1の偏光素子の吸収軸と当該第2の偏光素子の吸収軸は、一般に80〜120°の角度をなすように配置される。
【0025】
本発明において、上記第1の偏光素子20及び上記第2の偏光素子30は、保護フィルムなしに偏光フィルムのみからなっていても良く、偏光素子の一面又は両面に保護フィルムが付着されていても良い。この際、上記保護フィルムとしては、当該技術分野で一般に用いられる保護フィルム、例えば、TACフィルム、PEフィルム、PETフィルム等を用いることができる。
【0026】
(3)第1の液晶フィルム40及び第2の液晶フィルム50
第1の液晶フィルム40及び第2の液晶フィルム50は、半透過反射機能を具現すると共にECB−LCDの視野角及び色特性を補償するための補償フィルムである。上記半透過反射機能は、λ/2位相差板とλ/4位相差板とを組み合わせることで具現されることができる。一方、一般にECB−LCDの場合、暗状態で傾斜角で光漏れが生じて視野角特性が低下するが、このような光漏れは、傾斜角で液晶セルと偏光板とが直交していないことから生じる。このような光漏れが生じると、明暗比が低下し色変化を誘発して視野角特性が落ちる。したがって、本発明では、偏光素子と液晶セルとの間に、視野角補償機能を行うことができる第1の液晶フィルム40と第2の液晶フィルム50とを挿入することにより、上述した問題点を解決した。
【0027】
本発明では、2種の液晶フィルムを用い、便宜上、第1の偏光素子と第1の基板との間に挿入される液晶フィルムを第1の液晶フィルムといい、第2の偏光素子と第2の偏光板との間に挿入される液晶フィルムを第2の液晶フィルムという。
【0028】
まず、第1の液晶フィルム40について説明する。上記第1の液晶フィルム40は、上述したように第1の基板12と第1の偏光素子20との間に介在され、第1の基材42と当該第1の基材42の一面に形成される第1の液晶層44とからなる。
【0029】
上記第1の基材42は、正の一軸性位相差フィルム、負の二軸性位相差フィルム及び等方性フィルムのいずれか一つからなることができる。なお、上記正の一軸性位相差フィルムとは、x軸方向の屈折率をn、y軸方向の屈折率をn、z軸方向の屈折率をnというと、n>n=nを満足するフィルムをいい、上記負の二軸性位相差フィルムとは、n>n>nを満足するフィルムをいい、上記等方性フィルムとは、n=n=nを満足するフィルムをいう。
【0030】
この際、上記一軸性位相差フィルムとしては、例えば、一軸延伸COP(Cyclo Olefin Polymer)フィルム、一軸延伸PC(Polycarbonate)フィルム又は一軸延伸アクリレートフィルムを用いることができる。上記第1の基材として一軸性位相差フィルムを用いる場合、当該一軸性位相差フィルムは、550nmの波長で面上位相差値が200〜300nm程度であることが好ましい。
【0031】
上記二軸性位相差フィルムとしては、例えば、二軸延伸COP(Cyclo Olefin Polymer)フィルム、一軸延伸TAC(TriAcetyl Cellulose)フィルム、二軸延伸PC(Polycarbonate)フィルム又は二軸延伸PMMAフィルムを用いることができる。上記第1の基材として二軸性位相差フィルムを用いる場合、当該二軸性位相差フィルムは、550nmの波長で面上位相差値が200〜300nm程度であり、厚さ方向位相差値が−5〜−100nm程度であることが好ましい。
【0032】
上記等方性フィルムとしては、例えば、無延伸COP(Cyclo Olefin Polymer)フィルム、無延伸アクリレートフィルム又は無延伸PMMAフィルムを用いることができる。
【0033】
上記第1の液晶層44は、上記第1の基材42の上にネマチック液晶をスプレイ配向して形成される。スプレイ配向したネマチック液晶では、ディレクター(director)が厚さ方向に連続的に変わるため、液晶ディレクターの配向が定義できるパラメーターが要求される。スプレイ配向したネマチック液晶のプレチルト角(pretilt angle)をθといい、最大傾斜角(maxium tilt angle)をθといい、プレチルト角と最大傾斜角との間にネマチック液晶分布を記述するディレクタープロファイル係数をαといい、液晶層がディレクター分布の異なるN個の層からなると仮定すると、上記第1の液晶層は、下記式1で定義されることができる。
【0034】
[数1]
θ(i)=(d×i/N)α×(θ−θ)+θ
【0035】
上記式1中、θ(i)は、厚さによる傾斜角の変化を示すためのもので、0からdまでをN個の層に分ける時、i番目層における傾斜角分布を意味する。例えば、θ(3)は、液晶層をN個の層に分ける時、3番目層における傾斜角分布を意味する。
【0036】
上記式1では、α値が1であれば、液晶のディレクター分布(液晶分子の傾斜角分布)が一定の線形分布を示し、1より小さければ、液晶のディレクター分布が初期には緩やかに上昇し最大傾斜角近傍では急激に変化することを示し、1より大きければ、液晶のディレクター分布が初期には急激に変化し最大傾斜角近傍では緩やかに変化することを示す。
【0037】
上記液晶のディレクター分布は、ECB−LCDの視野角補償フィルムの光特性を決め、角度による位相差分布及び各視野角における光軸を決める重要な値である。
【0038】
本発明において、上記第1の液晶層は、液晶のチルト角が面上方向から厚さ方向に最大傾斜角θが20°以上、好ましくは20〜90°程度となるようにスプレイ配向することが好ましい。上記最大傾斜角が20°未満の場合は、視野角補償機能が微弱であるためである。
【0039】
また、上記第1の液晶層は、平均傾斜角が35°以上、好ましくは35〜90°となるようにスプレイ配向することが好ましい。ここで、平均傾斜角とは、プレチルト角、中間傾斜角及び最大傾斜角の平均値をいう。例えば、1μmでコーティングされた液晶フィルムを三つの層に分ける場合、プレチルト角を2°、第一の層の傾斜角を3°、第二の層の傾斜角を4°、第三の層の傾斜角を5°とすると、平均傾斜角は、(2+3+4+5)/4=3.5°である。上記平均傾斜角が35°未満であると、ECB−LCDの視野角補償機能が顕著に低下する。
【0040】
また、上記第1の液晶層は、50〜150nm程度の面上位相差値を有することが好ましく、上記第1の基材の光軸と上記第1の液晶層の光軸がなす角度は、40〜80°又は−40〜−80°程度であることが好ましい。上記第1の液晶層の面上位相差値及び光軸が上記値の範囲を満足する場合、無色性円偏光子(AQWF、Achromatic Quarter Wave Film)の機能を円滑に行うことができるためである。
【0041】
この際、上記面上位相差値(Rin)は、下記式2で定義される値である。下記式2中、dは、液晶層の厚さ、nは、x軸方向の屈折率、nは、y軸方向の屈折率を意味する。
【0042】
[数2]
in=d×(n−n
【0043】
次に、第2の液晶フィルム50について説明する。上記第2の液晶フィルム50は、第2の基板16と第2の偏光素子30との間に介在され、第2の基材52と当該第2の基材52の一面に形成される第2の液晶層54とからなる。
【0044】
上記第2の基材52は、上述した第1の基材42と同様に正の一軸性位相差フィルム、負の二軸性位相差フィルム及び等方性フィルムのいずれか一つからなることができ、当該正の一軸性位相差フィルム、当該負の二軸性位相差フィルム及び当該等方性フィルムの詳細は、上述した第1の基材と同様である。
【0045】
上記第2の液晶層54は、ネマチック液晶が水平配向してなり、正の面上位相差値を有する。上記第2の液晶層54の面上位相差値は、第2の基材の種類等に応じて変わるが、一般に50〜150nm程度であることが好ましい。
【0046】
基材に応じて、無色性円偏光板が作られる適正値は少しずつ変わるが、無色性円偏光子が作られる位相差の範囲は50〜150nmとほぼ同一である。
【0047】
この場合、上記第2の基材の面上方向の光軸と上記第2の液晶層の光軸がなす角度は、±40〜±80°程度であることが好ましい。
【0048】
上記第1の液晶フィルム及び上記第2の液晶フィルムは、それぞれ基材と液晶層との間に液晶層に配向を与えるための配向膜をさらに含むことができる。本発明では、便宜上、第1の基材と第1の液晶層との間に挿入される配向膜を第1の配向膜といい、第2の基材と第2の液晶層との間に挿入される配向膜を第2の配向膜という。上記第1の配向膜及び/又は上記第2の配向膜としては、当該技術分野で一般に用いられる配向膜、例えば、ラビング配向膜や光配向膜を用いることができ、より具体的には、アクリル系配向膜等のラビング配向膜や、ポリノルボルネン系シアネート又はポリイミド系シアネートを含む光配向膜等を用いることができる。
【0049】
上記のように構成された本発明のECB−LCD装置の場合、基材フィルム上に液晶層が形成された液晶フィルムを補償フィルムとして用いるため、従来のように二枚の位相差フィルムを角度を合わせて合板する工程を行う必要がなく、その結果、従来に比べて製造が容易であり製造コストも低いという長所がある。また、上記のように構成された本発明のECB−LCDは、従来のECB−LCDに比べて視野角及び色特性に優れている。
【実施例】
【0050】
以下、具体的な実施例を示して本発明をより詳細に説明する。
【0051】
<実施例1>
バックライト/第1の偏光素子/第1の内部保護フィルム/第1の液晶フィルム/ECB−LCDパネル/第2の液晶フィルム/第2の内部保護フィルム/第2の偏光素子の順に配列されたECB−LCDの正面コントラスト比及び視野角特性を第1の液晶フィルムと第2の液晶フィルムの基材及び液晶層の面上位相差値により測定した。
【0052】
上記第1の内部保護フィルムとしては、厚さ方向位相差値が−30nmである厚さ50μmのTACフィルムを用い、上記第1の液晶フィルムとしては、厚さ270nmの一軸延伸COPフィルム(第1の基材)上に液晶をスプレイ配向したフィルムを用いた。この際、上記第1の偏光素子と上記第1の基材の光軸は−15°、上記第1の基材と上記第1の液晶層の光軸は60°の角度をなすように構成されている。
【0053】
上記第2の内部保護フィルムとしては、厚さ方向位相差値が−30nmである厚さ50μmのTACフィルムを用い、上記第2の液晶フィルムとしては、厚さ270nmの一軸延伸COPフィルム(第2の基材)上にネマチック液晶を水平配向したフィルムを用いた。この際、上記第2の偏光素子と上記第2の基材の光軸は67.5°、上記第2の基材の光軸と上記第2の液晶層の光軸は−67.5°の角度をなすように構成されている。
【0054】
なお、上記液晶パネルの液晶セルの位相差値は、330nmであり、当該位相差値は、550nmの波長を用いて測定した。
【0055】
測定結果を下記表1−1〜表1−5に示した。なお、図2は、本実施例1のECB−LCDにおける視野角特性を示すもので、動径角0〜360°、方位角0〜80°の範囲における明暗比が示されている。破線(−・−・−)で表示された部分は、明暗比が10:1以上の領域である。
【0056】
【表1−1】

【0057】
【表1−2】

【0058】
【表1−3】

【0059】
【表1−4】

【0060】
【表1−5】

【0061】
<実施例2>
バックライト/第1の偏光素子/第1の液晶フィルム/ECB−LCDパネル/第2の液晶フィルム/第2の偏光素子の順に配列されたECB−LCDの正面コントラスト比及び視野角特性を第1の液晶フィルムと第2の液晶フィルムの基材及び液晶層の面上位相差値により測定した。
【0062】
上記第1の液晶フィルムとしては、厚さ270nmの一軸延伸COPフィルム(第1の基材)上に液晶をスプレイ配向(第1の液晶層)したフィルムを用いた。この際、上記第1の基材は、上記第1の偏光素子の吸収軸に対して光軸が67.5°となるように配置され、上記第1の液晶層の光軸は、上記第1の偏光素子の吸収軸と同様に配置された。
【0063】
上記第2の液晶フィルムとしては、厚さ270nmの一軸延伸COPフィルム(第2の基材)上にネマチック液晶を水平配向(第2の液晶層)したフィルムを用いた。この際、上記第2の基材は、光軸が上記第2の偏光素子の吸収軸に対して15°の角度をなすように配置され、上記第2の液晶層は、光軸が上記第2の基材の光軸に対して60°の角度をなすように配置された。
【0064】
なお、上記液晶パネルの液晶セルの位相差値は、330nmであり、当該位相差値は、550nmの波長を用いて測定した。
【0065】
測定結果を下記表2−1〜表2−7に示した。なお、図3は、本実施例2のECB−LCDにおける視野角特性を示すもので、動径角0〜360°、方位角0〜80°の範囲における明暗比が示されている。破線(−・−・−)で表示された部分は、明暗比が10:1以上の領域である。
【0066】
【表2−1】

【0067】
【表2−2】

【0068】
【表2−3】

【0069】
【表2−4】

【0070】
【表2−5】

【0071】
【表2−6】

【0072】
【表2−7】

【0073】
<比較例>
比較のために、従来の補償フィルムを用いた場合のECB−LCDの正面明暗比(正面CR)及び視野角を測定した。この際、上部偏光板の上に配置される補償フィルムとしては、面上位相差値が270nmである1/2波長板と面上位相差値が110nmである1/4波長板との組合体を用い、下部偏光板の下に配置される補償フィルムとしては、面上位相差値が270nmである1/2波長板とスプレイ配向した液晶フィルムからなる1/4波長板との組合体を用いた。この際、上記上部偏光板の上に配置される補償フィルムにおいて、1/2波長板と1/4波長板の光軸は60°の角度をなすように配置され、上記下部偏光板の下に配置される補償フィルムにおいて、1/2波長板と1/4波長板の光軸は67.5°をなすように配置された。
【0074】
上記のような従来の補償フィルムを用いるECB−LCDの正面明暗比(正面CR)は、237:1であり、視野角特性は、下記表3に示す通りである。
【0075】
【表3】

【0076】
上記表1〜表3に示すように、実施例1及び2のECB−LCDは、比較例のECB−LCDに比べて同等以上の光学特性を有し、位相差フィルムと液晶フィルムとを一体化することにより、裁断損失を最小化し生産コストを節減することができるようにした。
【符号の説明】
【0077】
10 液晶パネル
20 第1の偏光素子
30 第2の偏光素子
40 第1の液晶フィルム
50 第2の液晶フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、第2の基板と、当該第1の基板と当該第2の基板との間に介在される正の誘電率異方性を有する液晶を含みセルのギャップが1〜5μmでありECBモードで駆動される液晶セルと、を含む液晶パネルと、
前記第1の基板の上部に位置し第1の吸収軸を有する第1の偏光素子と、
前記第2の基板の下部に位置し第2の吸収軸を有する第2の偏光素子と、
前記第1の基板と前記第1の偏光素子との間に介在される第1の液晶フィルムと、
前記第2の基板と前記第2の偏光素子との間に介在される第2の液晶フィルムと
を含み、
前記第1の液晶フィルムは、第1の基材と、当該第1の基材の一面にネマチック液晶が面上方向から厚さ方向に最大傾斜角が20〜90°となるようにスプレイ配向してなる第1の液晶層と、を含み、
前記第2の液晶フィルムは、第2の基材と、当該第2の基材の一面にネマチック液晶が水平配向してなる第2の液晶層と、を含む、ECB−LCD装置。
【請求項2】
前記第1の基材又は前記第2の基材は、一軸性位相差フィルム、負の二軸性位相差フィルム又は等方性フィルムである、請求項1に記載のECB−LCD装置。
【請求項3】
前記一軸性位相差フィルムは、一軸延伸COP(Cyclo Olefin Polymer)フィルム、一軸延伸PC(Polycarbonate)フィルム及び一軸延伸アクリレートフィルムからなる群から選択される1重である、請求項2に記載のECB−LCD装置。
【請求項4】
前記負の二軸性位相差フィルムは、二軸延伸COP(Cyclo Olefin Polymer)フィルム、一軸延伸TAC(TriAcetyl Cellulose)フィルム、二軸延伸PC(Polycarbonate)フィルム及び二軸延伸PMMAフィルムからなる群から選択される1重である、請求項2に記載のECB−LCD装置。
【請求項5】
前記二軸性位相差フィルムは、550nmの波長で面上位相差値が200〜300nmであり、厚さ方向位相差値が−5〜−100nmである、請求項4に記載のECB−LCD装置。
【請求項6】
前記等方性フィルムは、無延伸COP(Cyclo Olefin Polymer)フィルム、無延伸アクリレートフィルム及び無延伸PMMAフィルムからなる群から選択される1重である、請求項2に記載のECB−LCD装置。
【請求項7】
前記一軸性位相差フィルムは、550nmの波長で面上位相差値が200〜300nmである、請求項2に記載のECB−LCD装置。
【請求項8】
前記第1の液晶層及び前記第2の液晶層は、550nmの波長で面上位相差値が50〜150nmである、請求項1に記載のECB−LCD装置。
【請求項9】
前記第1の基材と前記第1の液晶層の光軸がなす角度が40〜80°又は−40〜−80°である、請求項1に記載のECB−LCD装置。
【請求項10】
前記第2の基材と前記第2の液晶層の光軸がなす角度が40〜80°又は−40〜−80°である、請求項1に記載のECB−LCD装置。
【請求項11】
前記第1の基材と前記第1の液晶層との間には、第1の配向膜が含まれる、請求項1に記載のECB−LCD装置。
【請求項12】
前記第2の基材と前記第2の液晶層との間には、第2の配向膜が含まれる、請求項1に記載のECB−LCD装置。
【請求項13】
前記第1の配向膜又は前記第2の配向膜は、アクリル系配向膜である、請求項11又は12に記載のECB−LCD装置。
【請求項14】
前記第1の配向膜又は前記第2の配向膜は、光配向膜である、請求項11又は12に記載のECB−LCD装置。
【請求項15】
前記光配向膜は、ポリノルボルネン系シアネート又はポリイミド系シアネートを含む、請求項14に記載のECB−LCD装置。
【請求項16】
前記第1の偏光素子と前記第1の液晶フィルムとの間及び前記第2の偏光素子と前記第2の液晶フィルムとの間には、内部保護フィルムが挿入される、請求項1に記載のECB−LCD装置。
【請求項17】
前記第1の液晶層は、液晶の平均傾斜角が35°以上である、請求項1に記載のECB−LCD装置。
【請求項18】
第1の基板と、第2の基板と、当該第1の基板と当該第2の基板との間に介在される正の誘電率異方性を有する液晶を含みセルのギャップが1〜5μmでありECBモードで駆動される液晶セルと、を含む液晶パネルと、
前記第1の基板の上部に位置し第1の吸収軸を有する第1の偏光素子と、
前記第2の基板の下部に位置し第2の吸収軸を有する第2の偏光素子と、
前記第1の基板と前記第1の偏光素子との間に介在される第1の液晶フィルムと、
前記第2の基板と前記第2の偏光素子との間に介在される第2の液晶フィルムと
を含み、
前記第1の液晶フィルムは、550nmの波長で面上位相差値が200〜300nmの一軸性位相差フィルムからなる第1の基材と、当該第1の基材の上にネマチック液晶が面上方向から厚さ方向に最大傾斜角が20〜90°となるようにスプレイ配向してなり当該第1の基材の光軸と40〜80°又は−40〜−80°の角度をなす光軸を有し面上位相差値が50〜150nmの第1の液晶層と、を含み、
前記第2の液晶フィルムは、550nmの波長で面上位相差値が200〜300nmの一軸性位相差フィルムからなる第2の基材と、当該第2の基材の上にネマチック液晶が水平配向してなり当該第2の基材の光軸と40〜80°又は−40〜−80°の角度をなす光軸を有し面上位相差値が50〜150nmの第2の液晶層と、を含む、ECB−LCD装置。
【請求項19】
前記第1の偏光素子と前記第1の液晶フィルムとの間及び前記第2の偏光素子と前記第2の液晶フィルムとの間には、内部保護フィルムが挿入される、請求項18に記載のECB−LCD装置。
【請求項20】
前記第1の液晶層は、液晶の平均傾斜角が35°以上である、請求項18に記載のECB−LCD装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−521531(P2013−521531A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556033(P2012−556033)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【国際出願番号】PCT/KR2011/005241
【国際公開番号】WO2012/008802
【国際公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】