説明

視野計、及び視野計の制御方法

【課題】再検査の時間を短くし、被検者や検者の負担を軽減する。
【解決手段】本発明に係る視野計1は、個々の視標表示箇所に関連づけて被検者の固視状態を検知する固視状態検知手段5を備えており、再検査の要否の判定は各視標毎に行うようになっている。したがって、ある視標に関して固視状態の不良が検知されたとしても、その視標が呈示された箇所につき再検査を行えば足りるので、検査全体を最初からやり直す場合に比べて、被検者や検査者の負担は軽くて済み、検査時間も短くて済み、検査効率を上げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者に所定の固視点を固視させた状態で視野を測定するように構成された視野計に関する。
【背景技術】
【0002】
緑内障や糖尿病網膜症といった眼の病気に掛かった場合は視野が狭くなったり欠けたりするということは知られている。そこで、そのような病気を発見するための装置として、様々な構造の視野計が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような視野計を使った視野検査を正確に行うには、被検者が固視標を固視し続けていることが重要となるが、視野検査開始から終了まで同じ箇所(固視標)を固視し続けることは被検者(特に、高齢者や、眼疾患を有する人)にとって大きな負担であり、被検者が固視標から眼を外してしまうこともある。
【0004】
そこで、被検者の固視状態を測定するための装置として種々の構造のものが提案されると共に(例えば、特許文献2及び3参照)、その固視状態を示すグラフが視野検査の結果と共に表示されたりしている。図4は、その一例としてハンフリー視野計の検査結果表に表示される瞳孔位置変化グラフの一例を示す図である。縦軸には固視標からの瞳孔のズレ量(眼球の回転角:deg)を取り、横軸には視野検査開始からの時間を取っている。そして、検者がこのようなグラフを見て視野検査時の固視状態の良否を判断し、固視状態が不良であると判断した場合には視野検査全体をやり直すということが行われていた。つまり、時間帯Hの固視不良で再検査が必要と判断した場合には、H及びHの全ての時間帯の検査をやり直すことが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−272685号公報
【特許文献2】特公昭62−9330号公報
【特許文献3】特公平4−3213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の再検査方法では、固視不良が一部だけであるにもかかわらず(図4の符号H参照)、全体(つまり、同図の符号H+H)の検査をやり直していたため、固視状態が良好であったときの視野検査データ(時間帯Hの視野検査データ)が無駄になってしまうという問題があった。また、再検査の時間も長くなって被検者及び検者に負担をかけてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上述の問題を解消することのできる視野計、及び視野計の制御方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、図1及び図2に例示するものであって、被検者に所定の固視点を固視させた状態で視野を測定するように構成された視野計(1)において、
複数の視標呈示箇所に所定の輝度の視標を順次呈示する視標呈示手段(2)と、
呈示される視標を視認した被検者により操作される操作手段(3)と、
前記視標呈示手段(2)及び前記操作手段(3)からの信号に基づき被検者の視野を判定する視野判定手段(4)と、
個々の視標呈示箇所に関連付けて被検者の固視状態を順次検知する固視状態検知手段(5)と、
視野の再検査を必要とする固視状態であるか否かの基準となる基準値を設定する基準値設定手段(6)と、
前記固視状態検知手段(5)により順次検知される各固視状態と前記基準値設定手段(6)により設定された基準値との比較により個々の視標呈示箇所につき再検査が必要か否かを判定する再検査判定手段(7)と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記再検査判定手段(7)が、前記固視状態検知手段(5)が固視状態を検知できなかった視標呈示箇所については“再検査を要する”と判定することを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記再検査判定手段(7)が“再検査を要する”と判定した視標呈示箇所に関して前記視標呈示手段(2)を制御して視標を再呈示させ、該視標呈示手段(2)及び前記操作手段(3)からの信号に基づき被検者の視野を前記視野判定手段(4)に判定させることによって視野の再検査を行う再検査実行手段(8)、を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記固視状態検知手段(5)が順次検知した固視状態をそれぞれの視標呈示箇所に関連付けて表示してなる固視状態判別図を出力する判別図出力手段(9)、を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発明において、前記基準値設定手段(6)は、前記基準値を手動で変更できるように構成されたことを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発明において、前記再検査判定手段(7)は、前記基準値(図3(b) の破線B参照)を超えた固視状態がほぼ連続して所定回数以上検知された場合に(符号E参照)“固視状態が該基準値を超え始めた時点(符号F参照)”を再検査開始時点と判定し、その後、前記基準値を下回る固視状態がほぼ連続して所定回数以上検知された場合に(符号E参照)“固視状態が該基準値を下回り始めた時点(符号F参照)”を再検査終了時点と判定する手段であることを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記固視状態検知手段(5)が順次検知した固視状態をそれぞれの視標呈示箇所に関連付けて表示してなる固視状態判別図を出力する判別図出力手段(9)、を備え、
該判別図出力手段(9)は、前記再検査判定手段(7)が“再検査を要する”と判定した箇所と“再検査を要しない”と判定した箇所とを区別できるように前記固視状態判別図を出力することを特徴とする。
【0015】
請求項8に係る発明は、被検者に所定の固視点を固視させた状態で視野を測定するように構成された視野計(1)において、
複数の視標呈示箇所に所定の輝度の視標を順次呈示する視標呈示手段(2)と、
呈示される視標(A)を視認した被検者により操作される操作手段(3)と、
前記視標呈示手段(2)及び前記操作手段(3)からの信号に基づき被検者の視野を判定する視野判定手段(4)と、
個々の視標呈示箇所に関連付けて被検者の固視状態を順次検知する固視状態検知手段(5)と、
前記固視状態検知手段(5)が順次検知した固視状態を時系列的に表示してなる固視状態判別図を出力する判別図出力手段(9)と、
該固視状態判別図において再検査を行う時間帯を指定するための再検査指定手段(不図示)と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項9に係る発明は、視標呈示手段(2)が複数の視標呈示箇所に所定の輝度の視標を順次呈示する工程と、
呈示される視標を視認した被検者により操作手段(3)が操作されて出力された信号、及び前記視標呈示手段(2)からの信号に基づき視野判定手段(4)が被検者の視野を判定する工程と、
個々の視標呈示箇所に関連付けて固視状態検知手段(5)が被検者の固視状態を順次検知する工程と、
視野の再検査を必要とする固視状態であるか否かの基準となる基準値を基準値設定手段(6)が設定する工程と、
前記固視状態検知手段(5)により順次検知される各固視状態と前記基準値設定手段(6)により設定された基準値との比較により個々の視標呈示箇所につき再検査が必要か否かを再検査判定手段(7)が判定する工程と、
を備えたことを特徴とする視野計(1)の制御方法に関する。
【0017】
請求項10に係る発明は、請求項9に係る発明において、前記再検査判定手段(7)が“再検査を要する”と判定した視標呈示箇所に関して再検査実行手段(8)が前記視標呈示手段(2)を制御して視標を再呈示させる工程と、
該視標呈示手段(2)及び前記操作手段(3)からの信号に基づき被検者の視野を前記視野判定手段(4)に判定させることによって視野の再検査を行う工程と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項11に係る発明は、請求項9に係る発明において、前記固視状態検知手段(5)が順次検知した固視状態をそれぞれの視標呈示箇所に関連付けて表示してなる固視状態判別図を判別図出力手段(9)が出力する工程、を備え、
前記判別図出力手段(9)は、前記再検査判定手段(7)が“再検査を要する”と判定した箇所と“再検査を要しない”と判定した箇所とを区別できるように前記固視状態判別図を出力することを特徴とする。
【0019】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0020】
請求項1乃至11に係る発明によれば、個々の視標呈示箇所に関連付けて個別に再検査の要否が判定される。つまり、信頼性の高い測定ポイントと、信頼性の低い測定ポイントを区別できる。したがって、再検査が必要とされた視標呈示箇所につき再検査を行えば良いので、従来のように検査全体を最初からやり直す場合に比べて被検者や検査者の負担は軽くて済み、検査時間も短くて済み、検査効率が良くなるという効果がある。また、従来のように、固視状態が良好であったときの視野検査データが無駄になってしまうようなことも無い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明に係る視野計の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明に係る視野計(特に、視標呈示手段)の構成の一例を示す模式図である。
【図3】図3(a) 〜(c)は、固視状態判別図の一例をそれぞれ示す図である。
【図4】図4は、ハンフリー視野計の検査結果表に表示される瞳孔位置変化グラフの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1乃至図3に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
本発明に係る視野計は、所定の固視点(例えば、図2に例示するような視野ドーム20Bの中心点)を被検者に固視させた状態で視野を測定(視野検査)するように構成されている。この視野計は、例えば、図1及び図2に符号1で例示するものであって、前記固視点の周辺の複数の箇所(本明細書においては“視標呈示箇所”とする)に所定の輝度の視標Aを順次呈示する視標呈示手段2を備えている(詳細は後述する)。
【0024】
そして、この視野計1にはプッシュスイッチ等の操作手段3が設けられていて、呈示される視標Aを視認した際に被検者が該操作手段3を操作でき、視認した旨の信号を送信するように構成されている。
【0025】
また、本発明に係る視野計1は、前記視標呈示手段2及び前記操作手段3からの信号に基づき被検者の視野を判定する視野判定手段4を備えており、それぞれの視標呈示箇所について被検者が視標を視認できたか否かを判定できるようになっている。この視野判定手段4は、視野検査の種類(スクリーニング検査や閾値検査やイソプター検査など)に応じた判定を行うように構成すると良い。
【0026】
さらに、本発明に係る視野計1は、
・ 個々の視標呈示箇所に関連付けて被検者の固視状態を順次検知する固視状態検知手段5と、
・ 視野の再検査を必要とする固視状態であるか否かの基準となる基準値を設定する基準値設定手段6と、
・ 前記固視状態検知手段5により順次検知される各固視状態と前記基準値設定手段6により設定された基準値との比較により個々の視標呈示箇所につき再検査が必要か否かを判定する再検査判定手段7と、
を備えている。
【0027】
本発明によれば、個々の視標呈示箇所に関連付けて個別に再検査の要否が判定される。つまり、信頼性の高い測定ポイントと、信頼性の低い測定ポイントを区別できる。したがって、再検査が必要とされた視標呈示箇所につき再検査を行えば良いので、従来のように検査全体を最初からやり直す場合に比べて被検者や検査者の負担は軽くて済み、検査時間も短くて済み、検査効率が良くなるという効果がある。また、従来のように、固視状態が良好であったときの視野検査データが無駄になってしまうようなことも無い。
【0028】
なお、本発明に係る視野計を用いれば、固視不良箇所が無くなるまで何度も再検査することが可能であるが、本明細書においては、説明の便宜上、
・ 最初の視野検査
・ その後に行う再検査
の2回の検査についてのみ説明することとする。そして、同じく説明の便宜上、最初の視野検査を“初回検査”と称することとし、固視不良箇所につき行う次の検査を“再検査”と称することとし、それらの区別が不要な場合は単に“視野検査”と称することとする。
【0029】
ところで、初回検査中に被検者が瞼を閉じてしまったような場合には前記固視状態検知手段5は固視状態を検知できないが(図3(c) の符号G,G参照)、そのように固視状態が検知できなかった視標呈示箇所については前記再検査判定手段7が“再検査を要する”と判定するようにすると良い。
【0030】
また、前記再検査判定手段7が“再検査を要する”と判定した視標呈示箇所に関して視野の再検査を行う再検査実行手段8を設けておくと良い。具体的には、該再検査実行手段8による再検査は、
・ 前記再検査判定手段7が“再検査を要する”と判定した視標呈示箇所に関して前記視標呈示手段2を制御して視標を再呈示させ、
・ 該視標呈示手段2及び前記操作手段3からの信号に基づき被検者の視野を前記視野判定手段4に判定させる、
ことによって実行すると良い。
【0031】
ところで、必要とされる検査精度(視野検査の精度)はその検査の目的(種類)によって異なる。そこで、前記基準値設定手段6は(固定の基準値を設定するではなく)基準値を手動で変更できるようにしておいて、検査の目的や種類によって検者が基準値を選択できるようにすると良い。その場合の基準値設定手段6としては、
・ ボリュームつまみ等のスイッチや、
・ モニター画面上に表示されるユーザーインターフェースや、
・ その他の公知手段、
を挙げることができる。
【0032】
一方、上述の固視状態検知手段5による検知結果を示す図(つまり、各視標呈示箇所に関する固視状態が分かるような図であり、前記固視状態検知手段5が順次検知した固視状態をそれぞれの視標呈示箇所に関連付けて表示してなる図。本明細書においては“固視状態判別図”とする。)をモニター10やプリンター(不図示)に出力する判別図出力手段9、を設けておくと良い。図3(a) は、そのような固視状態判別図の一例を示す図(棒グラフ)であり、縦軸には固視標からの瞳孔のズレ量(眼球の回転角:deg)を取り、横軸には視野検査開始(つまり、初回検査の開始)からの時間を取っている(つまり、前記固視状態検知手段5が順次検知した固視状態を時系列的に表示している)。固視不良発生時間(初回検査の開始からの時間)が分かれば、その時間に視標を呈示した箇所が特定されることとなる。なお、図中の破線Bはズレ量に関する基準値(前記基準値設定手段6により調整される基準値)を示す。盲点の一般的な大きさは直径で5°程度なので、基準値Bはその半分(半径)の2.5°程度にしておくと良い。
【0033】
また、前記基準値設定手段6による基準値の手動設定は初回検査を行う前の段階で行っても良いが、初回検査を行った後で再検査を行う前に前記固視状態判別図を見ながら行っても良い。つまり、
・ 該固視状態判別図を見ながら検者が前記基準値設定手段6を手動操作して基準値Bを調整し(矢印C参照)、
・ 前記再検査実行手段8は前記視標呈示手段2を制御して所定の箇所(つまり、前記再検査判定手段7が“再検査を要する”と判定した視標呈示箇所)に視標を再呈示させ、
・ 該視標呈示手段2及び前記操作手段3からの信号に基づき被検者の視野を前記視野判定手段4に判定させる、
ようにすると良い。図3(a) の検知結果の場合には、符号D及び符号Dで示す部分(時間帯)でズレ量が基準値Bを超えているので、前記再検査実行手段8は、その時間帯D,Dに視標が呈示された箇所に関して視標の再呈示を行い、上述のような再検査を実行することとなる。
【0034】
図3(a) においては、前記基準値設定手段6により手動調整される基準値は縦軸のズレ量(眼球の回転角)に関するものとしたが、横軸の時間に関して基準値を設定するようにしても良い。すなわち、検者がこのグラフを見ながら何らかの操作手段(つまり、固視状態判別図において再検査を行う時間帯を指定するための再検査指定手段)を操作して
・ 再検査を開始させる時点(時間に関しての基準値であり、例えば、D,D)と
・ 再検査を終了させる時点(時間に関しての基準値であり、例えば、D,D)と
を指定できるようにしておき、前記再検査実行手段8が、前記視標呈示手段2を制御して、その時間帯(D〜D,及びD〜D)に視標を呈示した箇所に視標を再呈示して上述のような再検査を実行するようにしても良い。また、縦軸の基準値を調整するか横軸の基準値を調整するかを選択できる選択手段(例えば、スイッチや、モニター画面上に表示されるユーザーインターフェースなど)を設けておいて、検者がそれを選択できるようにすると良い。
【0035】
なお、前記再検査判定手段7は、
・ 前記基準値を超えた固視状態がほぼ連続して所定回数以上検知された場合に(例えば、図3(b) の符号E参照)“固視状態が該基準値を超え始めた時点(例えば、同図に符号Fで示す時点)”を再検査開始時点と判定し、
・ その後、前記基準値を下回る固視状態がほぼ連続して所定回数以上検知された場合に(例えば、図3(b) の符号E参照)“固視状態が該基準値を下回り始めた時点(例えば、同図に符号Fで示す時点)”を再検査終了時点と判定する
ようにすると良い。図3(a) のような方法の場合には、ズレ量が基準値Bを超えている全ての視標呈示箇所に関して再検査が実行されることとなって再検査に時間が掛かってしまう場合もあるが、図3(b)
のような方法を採れば再検査の時間を短縮できるという効果がある。
【0036】
ところで、図3(a) 〜(c) に示す固視状態判別図では縦軸に眼球の回転角を取り横軸に時間を取っているが、他の形式の固視状態判別図を出力するようにしても良い。固視状態を示す何らかの値を縦軸に取り、視標呈示箇所が分かるような何らかの値を横軸に取っても良い。さらには、棒グラフ以外のグラフとしても良く、グラフではなく表としても良い。つまり、固視状態判別図は、
・ 1番目の視標を呈示した際の固視状態
・ 2番目の視標を呈示した際の固視状態



というように、各視標を呈示した際の固視状態をその視標呈示箇所と関連付けて表わすグラフや表であれば良い。
【0037】
一方、上述した判別図出力手段9を設けておいて、該判別図出力手段9が、
・ 前記再検査判定手段が“再検査を要する”と判定した箇所と
・ “再検査を要しない”と判定した箇所と
を区別できるように前記固視状態判別図を出力するようにすると良い。区別する方法としては、例えば、固視状態不良の箇所をハイライト表示するようにすると良い。
【0038】
なお、上述の固視状態検知手段5は、被検者の前眼部を撮影して連続的な画像を取得する撮影部(例えば、赤外CCD)にて構成すると良い。また、該固視状態検知手段5は、前記撮影部の他に、該撮影部が取得した画像を処理して被検者の瞳孔を抽出すると共にその瞳孔中心を求める画像処理部を備えていても良い。さらには、該固視状態検知手段5は、前記撮影部及び前記画像処理部の他に、基準位置(つまり、被検者が固視標を正確に固視している場合の瞳孔中心位置)に対する瞳孔中心のズレ量を算出するズレ量算出部を備えていても良い。
【0039】
一方、本発明に係る、視野計の制御方法は、
・ 視標呈示手段2が複数の視標呈示箇所に所定の輝度の視標を順次呈示する工程と、
・ 呈示される視標を視認した被検者により操作手段3が操作されて出力された信号、及び前記視標呈示手段2からの信号に基づき視野判定手段4が被検者の視野を判定する工程と、
・ 個々の視標呈示箇所に関連付けて固視状態検知手段5が被検者の固視状態を順次検知する工程と、
・ 視野の再検査を必要とする固視状態であるか否かの基準となる基準値を基準値設定手段6が設定する工程と、
・ 前記固視状態検知手段5により順次検知される各固視状態と前記基準値設定手段6により設定された基準値との比較により個々の視標呈示箇所につき再検査が必要か否かを再検査判定手段7が判定する工程と、
を備える。
【0040】
この場合、
・ 前記再検査判定手段7が“再検査を要する”と判定した視標呈示箇所に関して再検査実行手段8が前記視標呈示手段2を制御して視標を再呈示させる工程と、
・ 該視標呈示手段2及び前記操作手段3からの信号に基づき被検者の視野を前記視野判定手段4に判定させることによって視野の再検査を行う工程と、
を備えていても良い。また、前記固視状態検知手段5が順次検知した固視状態をそれぞれの視標呈示箇所に関連付けて表示してなる固視状態判別図を判別図出力手段9が出力する工程、を備え、前記判別図出力手段9は、前記再検査判定手段7が“再検査を要する”と判定した箇所と“再検査を要しない”と判定した箇所とを区別できるように前記固視状態判別図を出力するようにしても良い。
【0041】
以下、図2に示す視標呈示手段2の構成について簡単に説明する。
【0042】
図中の符号20は、被検者の視野中に視標Aを呈示する視標呈示部を示し、符号21は、該視標Aの呈示箇所を変更する呈示箇所変更部を示し、符号22は、該視標Aの輝度を設定する輝度設定部を示す。
【0043】
図示の視標呈示部20は、視標を投影するための投影光学系20Aと、該投影光学系20Aにより視標が投影される投影部材20Bとにより構成されているが、被検者の視野中に視標を呈示するものであればどのような構造でも良い。例えば、複数のLEDを配置しておいて、それを選択的に点灯させるようにしたものでも良い。また、図2に示す投影部材20Bは半球ドーム状の形状(視野ドーム)をしているが、もちろんこれに限られるものではなく、半球面以外の曲面を有する形状としても、或いは、平面を有する形状としても良い。
【0044】
また、図2に示すように、投影光学系20Aと投影部材20Bとにより視標呈示部20を構成する場合には、呈示箇所変更部21は、前記投影光学系20Aの構成要素(例えば、符号211,212に示すプロジェクター・ミラー)の位置を変更する駆動手段(不図示)等により構成すると良い。これに対し、上述のように、複数のLEDにより視標呈示部を構成した場合には、いずれのLEDを点灯させるかを呈示箇所変更部により制御するようにすると良い。なお、投影光学系及びLEDのいずれを用いた場合においても、呈示箇所の変更のための指示は、
・ 検査する者が検査中にディスプレイを見ながらタッチペンやマウスやキーボード等を用いて手動で行うようにしても、
・ 予め作成されていたプログラムで自動的に行うようにしても、
どちらでも良い。
【0045】
さらに、図2に示す輝度設定部22は、
・ 回転自在に支持されると共に、減衰度の異なる複数のフィルターを有するターレット221,222と、
・ 該ターレット221,222の位置を変更するための駆動機構223と、
により構成されているが、他の構成としても良い。
【符号の説明】
【0046】
1 視野計
2 視標呈示手段
3 操作手段
4 視野判定手段
5 固視状態検知手段
6 基準値設定手段
7 再検査判定手段
8 再検査実行手段
9 判別図出力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者に所定の固視点を固視させた状態で視野を測定するように構成された視野計において、
複数の視標呈示箇所に所定の輝度の視標を順次呈示する視標呈示手段と、
呈示される視標を視認した被検者により操作される操作手段と、
前記視標呈示手段及び前記操作手段からの信号に基づき被検者の視野を判定する視野判定手段と、
個々の視標呈示箇所に関連付けて被検者の固視状態を順次検知する固視状態検知手段と、
視野の再検査を必要とする固視状態であるか否かの基準となる基準値を設定する基準値設定手段と、
前記固視状態検知手段により順次検知される各固視状態と前記基準値設定手段により設定された基準値との比較により個々の視標呈示箇所につき再検査が必要か否かを判定する再検査判定手段と、
を備えたことを特徴とする視野計。
【請求項2】
前記再検査判定手段は、前記固視状態検知手段が固視状態を検知できなかった視標呈示箇所については“再検査を要する”と判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の視野計。
【請求項3】
前記再検査判定手段が“再検査を要する”と判定した視標呈示箇所に関して前記視標呈示手段を制御して視標を再呈示させ、該視標呈示手段及び前記操作手段からの信号に基づき被検者の視野を前記視野判定手段に判定させることによって視野の再検査を行う再検査実行手段、
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の視野計。
【請求項4】
前記固視状態検知手段が順次検知した固視状態をそれぞれの視標呈示箇所に関連付けて表示してなる固視状態判別図を出力する判別図出力手段、
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の視野計。
【請求項5】
前記基準値設定手段は、前記基準値を手動で変更できるように構成された、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の視野計。
【請求項6】
前記再検査判定手段は、前記基準値を超えた固視状態がほぼ連続して所定回数以上検知された場合に“固視状態が該基準値を超え始めた時点”を再検査開始時点と判定し、その後、前記基準値を下回る固視状態がほぼ連続して所定回数以上検知された場合に“固視状態が該基準値を下回り始めた時点”を再検査終了時点と判定する手段である、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の視野計。
【請求項7】
前記固視状態検知手段が順次検知した固視状態をそれぞれの視標呈示箇所に関連付けて表示してなる固視状態判別図を出力する判別図出力手段、を備え、
該判別図出力手段は、前記再検査判定手段が“再検査を要する”と判定した箇所と“再検査を要しない”と判定した箇所とを区別できるように前記固視状態判別図を出力する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の視野計。
【請求項8】
被検者に所定の固視点を固視させた状態で視野を測定するように構成された視野計において、
複数の視標呈示箇所に所定の輝度の視標を順次呈示する視標呈示手段と、
呈示される視標を視認した被検者により操作される操作手段と、
前記視標呈示手段及び前記操作手段からの信号に基づき被検者の視野を判定する視野判定手段と、
個々の視標呈示箇所に関連付けて被検者の固視状態を順次検知する固視状態検知手段と、
前記固視状態検知手段が順次検知した固視状態を時系列的に表示してなる固視状態判別図を出力する判別図出力手段と、
該固視状態判別図において再検査を行う時間帯を指定するための再検査指定手段と、
を備えたことを特徴とする視野計。
【請求項9】
視標呈示手段が複数の視標呈示箇所に所定の輝度の視標を順次呈示する工程と、
呈示される視標を視認した被検者により操作手段が操作されて出力された信号、及び前記視標呈示手段からの信号に基づき視野判定手段が被検者の視野を判定する工程と、
個々の視標呈示箇所に関連付けて固視状態検知手段が被検者の固視状態を順次検知する工程と、
視野の再検査を必要とする固視状態であるか否かの基準となる基準値を基準値設定手段が設定する工程と、
前記固視状態検知手段により順次検知される各固視状態と前記基準値設定手段により設定された基準値との比較により個々の視標呈示箇所につき再検査が必要か否かを再検査判定手段が判定する工程と、
を備えたことを特徴とする視野計の制御方法。
【請求項10】
前記再検査判定手段が“再検査を要する”と判定した視標呈示箇所に関して再検査実行手段が前記視標呈示手段を制御して視標を再呈示させる工程と、
該視標呈示手段及び前記操作手段からの信号に基づき被検者の視野を前記視野判定手段に判定させることによって視野の再検査を行う工程と、
を備えたことを特徴とする請求項9に記載の、視野計の制御方法。
【請求項11】
前記固視状態検知手段が順次検知した固視状態をそれぞれの視標呈示箇所に関連付けて表示してなる固視状態判別図を判別図出力手段が出力する工程、を備え、
前記判別図出力手段は、前記再検査判定手段が“再検査を要する”と判定した箇所と“再検査を要しない”と判定した箇所とを区別できるように前記固視状態判別図を出力する、
ことを特徴とする請求項9に記載の、視野計の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−206105(P2011−206105A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74142(P2010−74142)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)