親局装置、通信システム及び下りデータ転送制御方法
【課題】 OLTからONUへ転送する一群のデータの転送時間を短く抑えつつ、その転送データの下り回線占有帯域をも小さくできるPONシステムを提供する。
【解決手段】 このPONシステムはDBAを適用しており、ONUはDBA周期で上り方向の送信を行う。また、ONUは、OLTからのフレームを所定数連続(1フレームの場合を含む)して受信する毎にACKを返信する。OLTがONUへ転送するデータの全体サイズと、DBA周期と、1フレーム当たりに盛り込むデータ量とを少なくとも固定値とし、OLTからONUへ転送が許容される1秒当たりの上限フレーム数を変化させながら、データ全体の転送時間を算出し、上限フレーム数を小さい値から大きな値へ変化させた場合に、算出される転送時間が収束したと捉えられる変化ポイントの上限フレーム数を求め、この変化ポイントの上限フレーム数を、OLTからONUへのデータ転送時に制限として設定する。
【解決手段】 このPONシステムはDBAを適用しており、ONUはDBA周期で上り方向の送信を行う。また、ONUは、OLTからのフレームを所定数連続(1フレームの場合を含む)して受信する毎にACKを返信する。OLTがONUへ転送するデータの全体サイズと、DBA周期と、1フレーム当たりに盛り込むデータ量とを少なくとも固定値とし、OLTからONUへ転送が許容される1秒当たりの上限フレーム数を変化させながら、データ全体の転送時間を算出し、上限フレーム数を小さい値から大きな値へ変化させた場合に、算出される転送時間が収束したと捉えられる変化ポイントの上限フレーム数を求め、この変化ポイントの上限フレーム数を、OLTからONUへのデータ転送時に制限として設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親局装置、通信システム及び下りデータ転送制御方法に関し、例えば、動的帯域割当(DBA:Dynamic Bandwidth Allocation)で上り送信タイミングを制御する受動光ネットワーク(PON:Passive Optical Network)システムに適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
PONシステムは、一般的に、図11のようなレイヤ構成をとる。OLT(Optical Line Terminal;光加入者線局内装置)は、OAM(Operation Administration and Management;保守・運用・監視)レイヤプロトコルを用いて、ONU(Optical Network Unit;光加入者線宅内装置)の保守・運用・監視機能を提供する(非特許文献1参照)。OAMレイヤは、上位レイヤに対してOAMPDU(PDUはProtocol Data Unit)を用いたサービスを提供する。上位レイヤは、OAMレイヤのサービスを利用して、対向ノード間でOAMPDUの送受信を行い、保守・運用・監視機能を実現する。OAMPDUの送信には、毎秒10フレームという送信数上限が規定されており、連続的なOAMPDUの送信による回線帯域の占有を抑止している。
【0003】
上り時分割のPONシステムでは、上り帯域割り当てをDBA機能により実現している(非特許文献2参照)。OLTに実装されるDBA機能により、ONU毎の上りフレーム送信タイミングが制御される。OLTのDBA機能は、DBA周期毎に、全てのONUに対して上りフレーム送信タイミングを指示する。この結果、各ONUからの上り送信フレームの衝突を回避でき、また、上り帯域制御のポリシーに従ったONU毎の帯域割り当て(フレーム送信時間の割り当て)を実現できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】IEEE 802.3ah Clause.57
【非特許文献2】IEEE 802.3av
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、OLTからONUへ多量のOAMに係る一群のデータを送信しなければならないことも生じる。例えば、ONUのソフトウェアを更新する処理において、OLTからONUへ更新ソフトウェアを転送することをOAMレイヤ(OAMPDU)機能を用いて行いたい場合もある。OAMPDUの送信は毎秒10フレーム以内とする送信制限は、下り回線帯域の占有をガードする上で有効な反面、ONUへの更新ソフトウェア転送のような多量のデータ転送には時間を要してしまう。また、更新ソフトウェアを分割し、分割データ部分が挿入されている下りフレームをOLTからONUへ転送する毎に、ONUからOLTへACKを送信しなければならず、DBA周期が割り当てる上り回線もかなりの影響を受けてしまう。逆に、データ転送時間を短縮するために送信制限を解除すると、ONUへの更新ソフトウェア転送で下り回線帯域を占有する可能性があり、ユーザ帯域を減少させてしまう。
【0006】
そのため、子局装置へ転送する一群のデータの転送時間を短く抑えつつ、その転送データの下り回線占有帯域をも小さくできる親局装置、通信システム及び下りデータ転送制御方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明は、親局装置が中継装置を介して複数の子局装置の中のいずれかの子局装置にデータをフレーム単位に送信すると共に、上記フレームを予め定められている所定数連続して受信した上記子局装置が、上記親局装置が動的に帯域を割り当てる方式で決定した動的帯域割当周期に従って受信応答フレームを、上記中継装置経由で、上記親局装置に返信する通信システムの上記親局装置が該当する親局装置において、当該親局装置が上記子局装置へ転送するデータの全体のサイズと、上記動的帯域割当周期と、1つのフレーム当たりに盛り込むデータ量とを少なくとも固定値とし、当該親局装置から上記子局装置へ転送が許容される所定時間当たりの上限フレーム数を変化させながら、上限フレーム数の各値毎に、転送すべきデータ全体を転送できる転送時間を算出し、上限フレーム数を小さい値から大きな値へ変化させた場合に、算出される転送時間が収束したと捉えられる変化ポイントの所定時間当たりの上限フレーム数を求め、この変化ポイントの所定時間当たりの上限フレーム数を、当該親局装置は、自装置から上記子局装置へのデータ転送時に制限として設定する制限設定部を有することを特徴とする。
【0008】
第2の本発明は、親局装置が中継装置を介して複数の子局装置の中のいずれかの子局装置にデータをフレーム単位に送信すると共に、上記フレームを予め定められている所定数連続して受信した上記子局装置が、上記親局装置が動的に帯域を割り当てる方式で決定した動的帯域割当周期に従って受信応答フレームを、上記中継装置経由で、上記親局装置に返信する通信システムにおいて、上記親局装置が、第1の本発明の親局装置であることを特徴とする。
【0009】
第3の本発明は、親局装置が中継装置を介して複数の子局装置の中のいずれかの子局装置にデータをフレーム単位に送信すると共に、上記フレームを予め定められている所定数連続して受信した上記子局装置が、上記親局装置が動的に帯域を割り当てる方式で決定した動的帯域割当周期に従って受信応答フレームを、上記中継装置経由で、上記親局装置に返信する通信システムの下りデータ転送制御方法において、上記親局装置は、自装置が上記子局装置へ転送するデータの全体のサイズと、上記動的帯域割当周期と、1つのフレーム当たりに盛り込むデータ量とを少なくとも固定値とし、自装置から上記子局装置へ転送が許容される所定時間当たりの上限フレーム数を変化させながら、上限フレーム数の各値毎に、転送すべきデータ全体を転送できる転送時間を算出し、上限フレーム数を小さい値から大きな値へ変化させた場合に、算出される転送時間が収束したと捉えられる変化ポイントの所定時間当たりの上限フレーム数を求め、この変化ポイントの所定時間当たりの上限フレーム数を、自装置から上記子局装置へのデータ転送時に制限として設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の親局装置、通信システム及び下りデータ転送制御方法によれば、子局装置へ転送する一群のデータの転送時間を短く抑えつつ、その転送データの下り回線占有帯域をも小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態におけるOLTの機能的構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態において、ONUソフトウェアの転送処理が起動された際に実行されるOAMレイヤ処理部の処理を示すフローチャートである。
【図3】第1の実施形態が前提としているOAMレイヤ上のデータ転送モデルを示すシーケンス図である。
【図4】図3のモデルを適用し、毎秒当たりの下り送信フレーム制限数と、演算で求めた転送時間と演算で求めた転送帯域との関係を示すグラフ(その1)である。
【図5】図3のモデルを適用し、毎秒当たりの下り送信フレーム制限数と、演算で求めた転送時間と演算で求めた転送帯域との関係を示すグラフ(その2)である。
【図6】図3のモデルを適用し、毎秒当たりの下り送信フレーム制限数と、演算で求めた転送時間と演算で求めた転送帯域との関係を示すグラフ(その3)である。
【図7】第1の実施形態において、毎秒当たりの下り送信フレーム制限数を決定する第1の具体的方法を示すフローチャートである。
【図8】第1の実施形態において、毎秒当たりの下り送信フレーム制限数を決定する第2の具体的方法の説明図である。
【図9】第2の実施形態におけるOLTの機能的構成を示すブロック図である。
【図10】第2の実施形態が前提としている一般化したトラフィックモデルを示すシーケンス図である。
【図11】PONシステムにおける一般的なレイヤ構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(A)第1の実施形態
以下、本発明による親局装置、通信システム及び下りデータ転送制御方法の第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。第1の実施形態の通信システムはPONシステムであり、第1の実施形態の親局装置はOLTである。
【0013】
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態におけるOLT10の機能的構成を示すブロック図である。図1において、OLT10は、OAMレイヤ処理部11、OAMフレーム生成部12、主信号フレーム生成部13、送信フレーム多重部14、受信フレーム多重分離部15、OAMフレーム終端部16及び主信号フレーム終端部17を有する。
【0014】
OAMレイヤ処理部11は、保守・運用・監視機能に係るOAMレイヤ処理を実行するものである。OAMレイヤ処理部11は、例えば、CPUと、CPUが実行するソフトウェアを中心に構成されている。OAMレイヤ処理部11は、いずれか若しくは全てのONU(図示せず)に与えるOAMに係るデータ(OAMPDU)が生じたときには、OAMフレーム生成部12に与える。ここで、OAMレイヤ処理部11がOAMフレーム生成部12に与えるデータ頻度は、一群のデータのデータサイズなどに基づいて、後述するように決定されたOAM送信フレーム制限数以内に収まるようになされている。
【0015】
OAMフレーム生成部12は、OAMPDUにオーバヘッドなどを付加してOAMフレームを生成して送信フレーム多重部14に与えるものである。
【0016】
主信号フレーム生成部13は、OLT10の上位装置から与えられたいずれか若しくは全てのONU(図示せず)に与えるユーザデータ(主信号)にオーバヘッドなどを付加して主信号フレームを生成して送信フレーム多重部14に与えるものである。
【0017】
送信フレーム多重部14は、OAMフレーム生成部12から与えられたOAMフレームと主信号フレーム生成部13から与えられた主信号フレームとを時分割多重して、下り方向の送出フレームとして出力するものである。このような時分割多重されたフレームは、当該OLT10内において光信号に変換されて下り方向の共通光ファイバに送出される。
【0018】
各ONUが送出し、光スプリッタ(図示せず)を介して、上り方向の共通光ファイバに導入された光信号でなるフレームは、当該OLT10において電気信号に変換されて、受信フレーム多重分離部15に与えられる。受信フレーム多重分離部15は、時分割多重されている受信フレームを、そのオーバヘッドに基づいて、OAMフレームか主信号フレームか判別し、受信したOAMフレームをOAMフレーム終端部16に与え、受信した主信号フレームを主信号フレーム終端部17に与える。
【0019】
OAMフレーム終端部16は、受信したOAMフレームからオーバヘッドを取り除くなどの終端処理を行い、得られたOAMに係るデータをOAMレイヤ処理部11に与えるものである。なお、受信するOAMフレームの中には、ACKフレームのようなペイロードを含まないものもあり、このような場合には、ACKフレームを受信したことがOAMフレーム終端部16からOAMレイヤ処理部11に通知される。
【0020】
主信号フレーム終端部17は、受信した主信号フレームからオーバヘッドを取り除くなどの終端処理を行い、得られたユーザデータ(主信号)を当該OLT10の上位装置へ向けて送出するものである。
【0021】
(A−2)第1の実施形態の動作
OLT10のOAMレイヤ処理部11が実行するOAMレイヤ処理として、一群の多量データをあるONUに送出する処理がある。例えば、ONUにおけるCPUが実行するソフトウェアを更新した場合において、更新前後の差分ではなく、更新されたソフトウェア全体を転送する場合、OAMレイヤ処理部11は、一群の多量データをONUに送出することになる(なお、更新での差分を転送する場合でもデータ量が多量になることが生じる)。このようなONUへのソフトウェア(以下、ONUソフトウェアと呼ぶ)の転送処理は、上位装置又は図示しない保守端末によって、OAMレイヤ処理部11(若しくはOAMレイヤ処理部11に接続するメモリ)に転送すべきONUソフトウェアが準備された後において起動される。
【0022】
図2は、ONUソフトウェアの転送処理が起動された際に実行されるOAMレイヤ処理部11の処理を示すフローチャートである。
【0023】
OAMレイヤ処理部11は、転送処理が起動されるとまず、ONUソフトウェアのデータサイズを確認した後(ステップ100)、ONUソフトウェアを、各OAMフレームのペイロードに盛り込むデータ量ずつに分割し(OAMPDU化)、転送する全フレーム数を把握する(ステップ101)。また、その時点での上り方向の転送用のDBA周期を取り込む(ステップ102)。全フレーム数やDBA周期などを利用して、OAM送信フレーム制限数を定めて設定し(ステップ103)、転送を開始する(ステップ104)。そして、転送すべき全フレーム数の転送完了を確認して、図2に示す一連の処理を終了する(ステップ105)。
【0024】
上述したように、従来においては、OAM送信フレーム制限数Mは、10フレーム/秒というように固定値であった。この第1の実施形態では、ONUソフトウェアのデータサイズ(従って、転送する全フレーム数)やDBA周期などに応じて、OAM送信フレーム制限数Mを動的に定めていることを特徴としている。
【0025】
以下、ステップ103におけるOAM送信フレーム制限数Mの決定方法を説明する。OAM送信フレーム制限数Mは、当然に、下り方向のONUソフトウェアの転送時間と転送帯域の関係から決定される。
【0026】
OAMレイヤでのONUソフトウェアの転送時間と転送帯域は、一般的に、以下の理論値算出モデルに従う。まず最初に、各種パラメータを説明する。
【0027】
送信する全フレーム数(単位はフレーム)Tは、下り転送データであるONUソフトウェアのデータサイズを、1つのOAMフレーム当たりのデータ長で割った値の整数値への切り上げで定義できる。
【0028】
OAM送信フレーム制限数(単位はフレーム/秒)Mは、毎秒当たりの下りOAMフレームの送信許可上限数であり、第1の実施形態の場合、この送信フレーム制限数Mを決定する。ここで、パラメータM1は、1秒間の下りOAM送信フレーム制限数であって、単位がフレームである点がパラメータMと異なっている。
【0029】
送信フレーム数(単位はフレーム/秒)Sを、毎秒当たりの下りOAMフレームの送信可能数とする。第1の実施形態の場合、OLT10がONUに対して、1つのOAMフレームを送出する毎に、ONUがOLT10に対してACKを返信し、この返信を受けて、OLT10が次のOAMフレームの送信に進むことを前提としている(後述する図3参照)。そのため、送信フレーム数Sは、ACKの上り送信可能数(=1秒÷DBA周期)に応じた値をとる。すなわち、上り方向のフレーム送信はDBA周期毎に可能となるため、上りACK受信に同期する下り方向のフレーム送信タイミングも、DBA周期に依存することになる。よって、1秒当たりに送信可能な下りOAMフレーム数Sは、1秒当たりの上りACK送信可能数に依存する。ここで、パラメータS1は、1秒間の下りOAMフレーム送信数であって、単位がフレームである点がパラメータSと異なっている。
【0030】
なお、送信フレーム数Sは、DBA周期によって定まる下りOAMフレームの送信可能数であるので、送信フレーム制限数Mより大きい値をとる可能性もある。
【0031】
ONUソフトウェアの転送時間は、(1)式又は(2)式で表すことができる。ONUソフトウェアの転送帯域は、(3)式〜(6)式で表すことができる。なお、(3)式〜(6)式における1フレームのビット数は、1つのOAMフレームのビット数であるのでペイロード(データ部分)のビット数とオーバヘッドのビット数との和である。また、(1)式において、TをMで割っているのは、毎秒当たりの下りOAMフレームの送信可能数である送信フレーム数Sが、OAM送信フレーム制限数Mを超えているため、OAM送信フレーム制限数Mの制限を受けているためである。
【0032】
S>Mの場合
転送時間(秒)=(T/M)の整数部分+((T/M1)の余り)/S …(1)
S≦Mの場合
転送時間(秒)=T/S …(2)
S>MかつT>M1の場合
転送帯域(bps)=M×(1フレームのビット数) …(3)
S>MかつT≦M1の場合
転送帯域(bps)=(T×(1フレームのビット数))/1秒 …(4)
S≦MかつT>S1の場合
転送帯域(bps)=S×(1フレームのビット数) …(5)
S≦MかつT≦S1の場合
転送帯域(bps)=(T×(1フレームのビット数))/1秒 …(6)
今、OAMレイヤ上のデータ転送を、図3に示すようにモデル化する。すなわち、ONUソフトウェアを512バイト長毎に分割し、オーバヘッドを付加して550バイト長のOAMフレームを生成してOLT10からONU20へ転送し、ONU20は、下りのOAMフレームを受信する毎に、64バイト長のACKフレームをOLT10に返信するとする。
【0033】
この場合、全フレーム数Tは、ONUソフトウェアのデータサイズを512バイトで割った値の整数値への切り上げ値となる。送信フレーム数Sは、1フレーム×(1/DBA周期)となる。1フレームのビット数は、550バイト×8ビット=4400ビットとなる。
【0034】
図3のモデルを適用し、毎秒当たりの下り送信フレーム制限数Mと、(1)式又は(2)式を適用した転送時間と、(3)式〜(6)式のいずれかを適用した転送帯域との関係を演算してグラフ化すると、図4〜図6に示すようになる。ここで、上りフレームの送信タイミングはDBA周期で決定されるため、DBA周期をパラメータとし、DBA周期が700μsecの場合(図4)と、DBA周期が1400μsecの場合(図5)と、DBA周期が2100μsecの場合(図6)とを演算している。また、ONUソフトウェアのデータサイズが、200キロバイト、500キロバイト、700キロバイト、1000キロバイトの4パタンについて演算している。
【0035】
図4〜図6より、転送時間と転送帯域は、毎秒の送信フレーム制限数Mを増大させていっても、あるレベル以上で変化が収束することが分かる。これは、毎秒の送信フレーム制限数Mが増加していくと、あるレベル以上で、上り方向のACKの送信数がDBA周期に依存して制限されるためであると思われる。この状態においては、該当するDBA周期に対するデータ転送時の下り占有帯域(転送帯域)は最大値を取る。
【0036】
以上の特性に着目すると、下り方向の転送時間に対して、効率的に下り方向の転送帯域を使用するOAM送信フレーム制限数Mを決めることができる。すなわち、転送時間が所定時間(例えば数秒程度)に収束してくるポイント(送信フレーム制限数Mの値)に着目し、このポイントに送信フレーム制限数Mを設定して下り方向の転送帯域の使用を抑えることで、OAMフレーム数についての送信制限なしで転送時間の最小値を実現するよりも、転送時間に対して下り方向の転送帯域を効率的に使用することが可能となる。
【0037】
例えば、DBA周期が700μsでデータサイズ700キロバイトの場合に、毎秒300フレーム近辺に送信フレーム制限数Mを設定したとする。このような設定のケースを送信フレーム制限数Mの設定がないケースと比較すると、どちらもデータ転送時間はほぼ同じレベルの時間感覚が得られるのに対して、下り方向の転送帯域(の占有)は、毎秒300フレーム近辺に送信フレーム制限数Mを設定したケースの方が、送信フレーム制限数の設定がないケースと比べて1/4程度になる。
【0038】
以上のような考え方に従って、上述した図2のステップ103で、送信フレーム制限数Mを決定すれば良い。以上のような考え方に従っていれば、具体的な決定方法は限定されるものではないが、以下に具体的な決定方法を二例挙げる。
【0039】
図7は、送信フレーム制限数Mの決定方法の一例を示すフローチャートである。OAMレイヤ処理部11は、図7に示す処理を開始するとまず、送信フレーム制限数Mを1500フレームに設定し、ステップ101で把握した全フレーム数やステップ102で取り込んだDBA周期などを適用して、送信フレーム制限数Mが1500フレームの場合の転送時間を算出して基準転送時間TREFとして保持する(ステップ150)。ここでは、送信フレーム制限数Mの設定がないケースの転送時間を、送信フレーム制限数Mが1500フレームの場合の転送時間で近似することとしている。
【0040】
次に、OAMレイヤ処理部11は、パラメータmを初期値(例えば10)に設定する(ステップ151)。
【0041】
そして、毎秒mフレーム数が送信フレーム制限数Mに設定されたとして、そのときの転送時間Tmを演算し(ステップ152)、得られた転送時間Tmを、許容転送時間の上限値TUP(例えば10秒)と比較する(ステップ153)。
【0042】
得られた転送時間Tmが許容転送時間の上限値TUPを超えていると、OAMレイヤ処理部11は、パラメータmを1インクリメントして(ステップ154)、上述したステップ152に戻る。ここでは、パラメータmを1ずつ増大させる場合を示したが、送信フレーム制限数Mを早く決定できるように、2ずつ増大させるようにしても良く、さらには、更新単位を3以上のいずれかの値にするようにしても良い。
【0043】
得られた転送時間Tmが許容転送時間の上限値TUP以下であると、OAMレイヤ処理部11は、得られた転送時間Tmの基準転送時間TREFに対する比を求め(ステップ155)、得られた比が閾値(例えば、1.2)以下か否かを判別する(ステップ156)。この判別は、収束状態になったか否かの判別を意味している。この判別に比ではなく、差分を利用するようにしても良い。
【0044】
得られた比が閾値を超えていると、OAMレイヤ処理部11は、ステップ154に移行して、送信フレーム制限数Mの候補値mを切り換える。これに対して、得られた比が閾値以下であると、OAMレイヤ処理部11は、毎秒mフレーム数を送信フレーム制限数Mに決定して(ステップ157)、メインルーチン(図2)に戻る。
【0045】
図8は、送信フレーム制限数Mを決定する具体的な決定方法の第2例の説明図である。この第2例は、全フレーム数(若しくはデータサイズ)が取り得る範囲を複数の部分範囲に分割すると共に、DBA周期が取り得る範囲を複数の部分範囲に分割し、両部分範囲の組み合わせ毎に、予め送信フレーム制限数Mの値を定めておく。図8は、このような両部分範囲の組み合わせ毎に予め定めておいた送信フレーム制限数Mの値を示している。
【0046】
これから転送しようとするONUソフトウェアに係る全フレーム数が属する部分範囲と、現時点で適用することに決まっているDBA周期が属する部分範囲を認識し、認識した2つの部分範囲の組み合わせで定まる送信フレーム制限数Mの値を取り出し、送信フレーム制限数Mとして設定する。
【0047】
(A−3)第1の実施形態の効果
第1の実施形態によれば、データ転送時間が所定時間(数秒程度)に収束してくるOAM送信フレーム制限数をOLT10のOAMレイヤに適用するようにしたので、一群のOAMレイヤのデータの転送時に、転送時間の短縮化と、下り方向の回線帯域(転送帯域)の占有抑止とを効果的に両立させることができる。
【0048】
(B)第2の実施形態
次に、本発明による親局装置、通信システム及び下りデータ転送制御方法の第2の実施形態を、図面を参照しながら説明する。第2の実施形態の通信システムもPONシステムであり、第2の実施形態の親局装置もOLTである。
【0049】
第2の実施形態のOLTは、ユーザデータ(主信号)の下り転送においても、第1の実施形態と同様に下り送信フレーム制限数を適用し、固定値ではなく、転送時間や転送帯域の双方を考慮して定めようとしたものである。
【0050】
図9は、第2の実施形態におけるOLT10Aの機能的構成を示すブロック図である。図9において、第2の実施形態のOLT10Aは、識別用情報抽出部21、トラフィック識別部22、該当データ転送モデル検索部23及び下り送信フレーム制限数データベース24を有する。
【0051】
識別用情報抽出部21は、OLT10Aの上位装置からONUへのトラフィック(主信号のトラフィックであっても良い)について、その導通データからトラフィックパタンを識別するための情報を抽出してトラフィック識別部22に与えるものである。トラフィック識別部22は、識別用情報抽出部21からの情報に基づいて、トラフィックパタンを識別するものである。トラフィックパタンの識別方法としては、例えば、サービスクラス振り分け論理を適用してトラフィックパタンを識別する方法や、TCPポート番号によってトラフィック情報を把握して識別する方法を挙げることができる。
【0052】
該当データ転送モデル検索部23は、トラフィック識別部22によって識別されたトラフィックパタンに該当(対応)するデータ転送モデル(後述する図10参照)を特定し、特定したデータ転送モデルをキーとして下り送信フレーム制限数データベース24を検索するものである。
【0053】
下り送信フレーム制限数データベース24は、データ転送モデル毎に、送信フレーム制限数の情報を格納しているものである。ここで、データ転送モデルに対して送信フレーム制限数は1対1に対応するものではなく、例えば、1つのデータ転送モデルに対して、複数の送信フレーム制限数が格納され、今回の下り方向の通信に係るパラメータ(例えば、データサイズやDBA周期)に応じた送信フレーム制限数が取り出せるようになされている(図8参照)。
【0054】
上述した第1の実施形態では、OAMレイヤ上のONUソフトウェアの転送をモデル化した図3に示すトラフィックモデルを適用していた。この第2の実施形態では、図10に示すような一般化したトラフィックモデルを適用する。図10のトラフィックモデルは、ペイロードがFsバイトで、それにオーバヘッドを付けたバイト数がFosのフレームをNフレーム連続してONUに送信した後に、Faバイトを有するACKフレームがONUから返信されるモデルである。この図9における各種パラメータN、Fs、Fos、Faに具体的な値を当てはめたものが1つのデータ転送モデルとなっている。
【0055】
図10のトラフィックモデルを適用した場合、このモデルのパラメータは、次のように表される。
【0056】
送信する全フレーム数(単位はフレーム)Tは、下り転送データのトータルサイズ(データサイズ)を、1つのフレーム当たりのデータ長Fsバイトで割った値の整数値への切り上げで定義できる。また、毎秒当たりの下りフレームの送信可能数である送信フレーム数(単位はフレーム/秒)Sは、Nフレーム×(1/DBA周期)で定義される。さらに、1フレームのビット数は、Fosバイト×8ビットとなる。
【0057】
第2の実施形態の場合、第1の実施形態に比較して適用するパラメータの値は異なるが、第1の実施形態と同様に、送信フレーム制限数Mの値を増大させていった場合において、転送時間が所定時間(例えば数秒程度)に収束してくるポイントを把握し、このポイントの送信フレーム制限数Mの値を、データサイズやDBA周期の組合せごとに、下り送信フレーム制限数データベース24に格納しておくようにすれば良い(図8参照)。なお、下り送信フレーム制限数データベース24から取り出す方法に代え、図7を用いて説明したように、収束ポイントの送信フレーム制限数Mの値を、探索するようにしても良い。この場合の候補値の増大単位は、例えば、Nフレームの倍数とすることが好ましい。また、どの転送時においても、データサイズとDBA周期が同じようになるトラフィックがある場合には、データ転送モデルに対し、送信フレーム制限数を1対1で対応付けるようにしても良い。
【0058】
OLT10Aの上位装置からONUへのトラフィックが新たに生じると、OLT10Aの識別用情報抽出部21によって、新たなトラフィックの導通データからトラフィックパタンを識別するための情報が抽出され、トラフィック識別部22によって、トラフィックパタンが識別される。該当データ転送モデル検索部23においては、トラフィック識別部22によって識別されたトラフィックパタンに該当(対応)するデータ転送モデルが特定され、特定されたデータ転送モデルをキーとして下り送信フレーム制限数データベース24がアクセスされ、新たなトラフィックに係るデータサイズやDBA周期に応じた下り送信フレーム制限数が取り出される。そして、OLT10AからONUへの新たなトラフィックの転送は、取り出された送信フレーム制限数の制限下で実行される。
【0059】
第2の実施形態によれば、制御対象トラフィックのデータ転送モデルを各々定義し、毎秒当たりの下りフレーム送信数上限を決めるようにしたので、トラフィック毎の下り方向のデータ転送速度に対する効率的な下り転送帯域(割り当て帯域)を決定することができる。
【0060】
(C)他の実施形態
第2の実施形態では、OLT10Aがトラフィックパタンを識別するものを示したが、上述したようなサービスクラス振り分け論理やTCPポート番号によるトラフィック情報の把握(トラフィック識別)では、OLT以外の装置による識別結果をOLTに通知するようにしても良い。例えば、実際に、ネゴシエーションプロトコルを終端する装置であるONUが、トラフィックを識別して、OLTにトラフィック情報を通知し、OLTが当該トラフィッククラスに対して該当する下り送信フレーム制限数を決定して適用するようにしても良い。
【0061】
上記各実施形態では、本発明をPONシステムに適用した場合を示したが、PONシステムと同様な構成の1対多通信システムであれば本発明を適用することができる。例えば、伝送路を通過する通信信号が光信号でなく電気信号の通信システムに対しても本発明を適用することができ、また、伝送路が光ファイバではなく光を通す空間の場合であっても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
10、10A…OLT、11…OAMレイヤ処理部、12…OAMフレーム生成部、13…主信号フレーム生成部、14…送信フレーム多重部、15…受信フレーム多重分離部、16…OAMフレーム終端部、17…主信号フレーム終端部、21…識別用情報抽出部、22…トラフィック識別部、23…該当データ転送モデル検索部、24…下り送信フレーム制限数データベース。
【技術分野】
【0001】
本発明は、親局装置、通信システム及び下りデータ転送制御方法に関し、例えば、動的帯域割当(DBA:Dynamic Bandwidth Allocation)で上り送信タイミングを制御する受動光ネットワーク(PON:Passive Optical Network)システムに適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
PONシステムは、一般的に、図11のようなレイヤ構成をとる。OLT(Optical Line Terminal;光加入者線局内装置)は、OAM(Operation Administration and Management;保守・運用・監視)レイヤプロトコルを用いて、ONU(Optical Network Unit;光加入者線宅内装置)の保守・運用・監視機能を提供する(非特許文献1参照)。OAMレイヤは、上位レイヤに対してOAMPDU(PDUはProtocol Data Unit)を用いたサービスを提供する。上位レイヤは、OAMレイヤのサービスを利用して、対向ノード間でOAMPDUの送受信を行い、保守・運用・監視機能を実現する。OAMPDUの送信には、毎秒10フレームという送信数上限が規定されており、連続的なOAMPDUの送信による回線帯域の占有を抑止している。
【0003】
上り時分割のPONシステムでは、上り帯域割り当てをDBA機能により実現している(非特許文献2参照)。OLTに実装されるDBA機能により、ONU毎の上りフレーム送信タイミングが制御される。OLTのDBA機能は、DBA周期毎に、全てのONUに対して上りフレーム送信タイミングを指示する。この結果、各ONUからの上り送信フレームの衝突を回避でき、また、上り帯域制御のポリシーに従ったONU毎の帯域割り当て(フレーム送信時間の割り当て)を実現できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】IEEE 802.3ah Clause.57
【非特許文献2】IEEE 802.3av
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、OLTからONUへ多量のOAMに係る一群のデータを送信しなければならないことも生じる。例えば、ONUのソフトウェアを更新する処理において、OLTからONUへ更新ソフトウェアを転送することをOAMレイヤ(OAMPDU)機能を用いて行いたい場合もある。OAMPDUの送信は毎秒10フレーム以内とする送信制限は、下り回線帯域の占有をガードする上で有効な反面、ONUへの更新ソフトウェア転送のような多量のデータ転送には時間を要してしまう。また、更新ソフトウェアを分割し、分割データ部分が挿入されている下りフレームをOLTからONUへ転送する毎に、ONUからOLTへACKを送信しなければならず、DBA周期が割り当てる上り回線もかなりの影響を受けてしまう。逆に、データ転送時間を短縮するために送信制限を解除すると、ONUへの更新ソフトウェア転送で下り回線帯域を占有する可能性があり、ユーザ帯域を減少させてしまう。
【0006】
そのため、子局装置へ転送する一群のデータの転送時間を短く抑えつつ、その転送データの下り回線占有帯域をも小さくできる親局装置、通信システム及び下りデータ転送制御方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明は、親局装置が中継装置を介して複数の子局装置の中のいずれかの子局装置にデータをフレーム単位に送信すると共に、上記フレームを予め定められている所定数連続して受信した上記子局装置が、上記親局装置が動的に帯域を割り当てる方式で決定した動的帯域割当周期に従って受信応答フレームを、上記中継装置経由で、上記親局装置に返信する通信システムの上記親局装置が該当する親局装置において、当該親局装置が上記子局装置へ転送するデータの全体のサイズと、上記動的帯域割当周期と、1つのフレーム当たりに盛り込むデータ量とを少なくとも固定値とし、当該親局装置から上記子局装置へ転送が許容される所定時間当たりの上限フレーム数を変化させながら、上限フレーム数の各値毎に、転送すべきデータ全体を転送できる転送時間を算出し、上限フレーム数を小さい値から大きな値へ変化させた場合に、算出される転送時間が収束したと捉えられる変化ポイントの所定時間当たりの上限フレーム数を求め、この変化ポイントの所定時間当たりの上限フレーム数を、当該親局装置は、自装置から上記子局装置へのデータ転送時に制限として設定する制限設定部を有することを特徴とする。
【0008】
第2の本発明は、親局装置が中継装置を介して複数の子局装置の中のいずれかの子局装置にデータをフレーム単位に送信すると共に、上記フレームを予め定められている所定数連続して受信した上記子局装置が、上記親局装置が動的に帯域を割り当てる方式で決定した動的帯域割当周期に従って受信応答フレームを、上記中継装置経由で、上記親局装置に返信する通信システムにおいて、上記親局装置が、第1の本発明の親局装置であることを特徴とする。
【0009】
第3の本発明は、親局装置が中継装置を介して複数の子局装置の中のいずれかの子局装置にデータをフレーム単位に送信すると共に、上記フレームを予め定められている所定数連続して受信した上記子局装置が、上記親局装置が動的に帯域を割り当てる方式で決定した動的帯域割当周期に従って受信応答フレームを、上記中継装置経由で、上記親局装置に返信する通信システムの下りデータ転送制御方法において、上記親局装置は、自装置が上記子局装置へ転送するデータの全体のサイズと、上記動的帯域割当周期と、1つのフレーム当たりに盛り込むデータ量とを少なくとも固定値とし、自装置から上記子局装置へ転送が許容される所定時間当たりの上限フレーム数を変化させながら、上限フレーム数の各値毎に、転送すべきデータ全体を転送できる転送時間を算出し、上限フレーム数を小さい値から大きな値へ変化させた場合に、算出される転送時間が収束したと捉えられる変化ポイントの所定時間当たりの上限フレーム数を求め、この変化ポイントの所定時間当たりの上限フレーム数を、自装置から上記子局装置へのデータ転送時に制限として設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の親局装置、通信システム及び下りデータ転送制御方法によれば、子局装置へ転送する一群のデータの転送時間を短く抑えつつ、その転送データの下り回線占有帯域をも小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態におけるOLTの機能的構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態において、ONUソフトウェアの転送処理が起動された際に実行されるOAMレイヤ処理部の処理を示すフローチャートである。
【図3】第1の実施形態が前提としているOAMレイヤ上のデータ転送モデルを示すシーケンス図である。
【図4】図3のモデルを適用し、毎秒当たりの下り送信フレーム制限数と、演算で求めた転送時間と演算で求めた転送帯域との関係を示すグラフ(その1)である。
【図5】図3のモデルを適用し、毎秒当たりの下り送信フレーム制限数と、演算で求めた転送時間と演算で求めた転送帯域との関係を示すグラフ(その2)である。
【図6】図3のモデルを適用し、毎秒当たりの下り送信フレーム制限数と、演算で求めた転送時間と演算で求めた転送帯域との関係を示すグラフ(その3)である。
【図7】第1の実施形態において、毎秒当たりの下り送信フレーム制限数を決定する第1の具体的方法を示すフローチャートである。
【図8】第1の実施形態において、毎秒当たりの下り送信フレーム制限数を決定する第2の具体的方法の説明図である。
【図9】第2の実施形態におけるOLTの機能的構成を示すブロック図である。
【図10】第2の実施形態が前提としている一般化したトラフィックモデルを示すシーケンス図である。
【図11】PONシステムにおける一般的なレイヤ構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(A)第1の実施形態
以下、本発明による親局装置、通信システム及び下りデータ転送制御方法の第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。第1の実施形態の通信システムはPONシステムであり、第1の実施形態の親局装置はOLTである。
【0013】
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態におけるOLT10の機能的構成を示すブロック図である。図1において、OLT10は、OAMレイヤ処理部11、OAMフレーム生成部12、主信号フレーム生成部13、送信フレーム多重部14、受信フレーム多重分離部15、OAMフレーム終端部16及び主信号フレーム終端部17を有する。
【0014】
OAMレイヤ処理部11は、保守・運用・監視機能に係るOAMレイヤ処理を実行するものである。OAMレイヤ処理部11は、例えば、CPUと、CPUが実行するソフトウェアを中心に構成されている。OAMレイヤ処理部11は、いずれか若しくは全てのONU(図示せず)に与えるOAMに係るデータ(OAMPDU)が生じたときには、OAMフレーム生成部12に与える。ここで、OAMレイヤ処理部11がOAMフレーム生成部12に与えるデータ頻度は、一群のデータのデータサイズなどに基づいて、後述するように決定されたOAM送信フレーム制限数以内に収まるようになされている。
【0015】
OAMフレーム生成部12は、OAMPDUにオーバヘッドなどを付加してOAMフレームを生成して送信フレーム多重部14に与えるものである。
【0016】
主信号フレーム生成部13は、OLT10の上位装置から与えられたいずれか若しくは全てのONU(図示せず)に与えるユーザデータ(主信号)にオーバヘッドなどを付加して主信号フレームを生成して送信フレーム多重部14に与えるものである。
【0017】
送信フレーム多重部14は、OAMフレーム生成部12から与えられたOAMフレームと主信号フレーム生成部13から与えられた主信号フレームとを時分割多重して、下り方向の送出フレームとして出力するものである。このような時分割多重されたフレームは、当該OLT10内において光信号に変換されて下り方向の共通光ファイバに送出される。
【0018】
各ONUが送出し、光スプリッタ(図示せず)を介して、上り方向の共通光ファイバに導入された光信号でなるフレームは、当該OLT10において電気信号に変換されて、受信フレーム多重分離部15に与えられる。受信フレーム多重分離部15は、時分割多重されている受信フレームを、そのオーバヘッドに基づいて、OAMフレームか主信号フレームか判別し、受信したOAMフレームをOAMフレーム終端部16に与え、受信した主信号フレームを主信号フレーム終端部17に与える。
【0019】
OAMフレーム終端部16は、受信したOAMフレームからオーバヘッドを取り除くなどの終端処理を行い、得られたOAMに係るデータをOAMレイヤ処理部11に与えるものである。なお、受信するOAMフレームの中には、ACKフレームのようなペイロードを含まないものもあり、このような場合には、ACKフレームを受信したことがOAMフレーム終端部16からOAMレイヤ処理部11に通知される。
【0020】
主信号フレーム終端部17は、受信した主信号フレームからオーバヘッドを取り除くなどの終端処理を行い、得られたユーザデータ(主信号)を当該OLT10の上位装置へ向けて送出するものである。
【0021】
(A−2)第1の実施形態の動作
OLT10のOAMレイヤ処理部11が実行するOAMレイヤ処理として、一群の多量データをあるONUに送出する処理がある。例えば、ONUにおけるCPUが実行するソフトウェアを更新した場合において、更新前後の差分ではなく、更新されたソフトウェア全体を転送する場合、OAMレイヤ処理部11は、一群の多量データをONUに送出することになる(なお、更新での差分を転送する場合でもデータ量が多量になることが生じる)。このようなONUへのソフトウェア(以下、ONUソフトウェアと呼ぶ)の転送処理は、上位装置又は図示しない保守端末によって、OAMレイヤ処理部11(若しくはOAMレイヤ処理部11に接続するメモリ)に転送すべきONUソフトウェアが準備された後において起動される。
【0022】
図2は、ONUソフトウェアの転送処理が起動された際に実行されるOAMレイヤ処理部11の処理を示すフローチャートである。
【0023】
OAMレイヤ処理部11は、転送処理が起動されるとまず、ONUソフトウェアのデータサイズを確認した後(ステップ100)、ONUソフトウェアを、各OAMフレームのペイロードに盛り込むデータ量ずつに分割し(OAMPDU化)、転送する全フレーム数を把握する(ステップ101)。また、その時点での上り方向の転送用のDBA周期を取り込む(ステップ102)。全フレーム数やDBA周期などを利用して、OAM送信フレーム制限数を定めて設定し(ステップ103)、転送を開始する(ステップ104)。そして、転送すべき全フレーム数の転送完了を確認して、図2に示す一連の処理を終了する(ステップ105)。
【0024】
上述したように、従来においては、OAM送信フレーム制限数Mは、10フレーム/秒というように固定値であった。この第1の実施形態では、ONUソフトウェアのデータサイズ(従って、転送する全フレーム数)やDBA周期などに応じて、OAM送信フレーム制限数Mを動的に定めていることを特徴としている。
【0025】
以下、ステップ103におけるOAM送信フレーム制限数Mの決定方法を説明する。OAM送信フレーム制限数Mは、当然に、下り方向のONUソフトウェアの転送時間と転送帯域の関係から決定される。
【0026】
OAMレイヤでのONUソフトウェアの転送時間と転送帯域は、一般的に、以下の理論値算出モデルに従う。まず最初に、各種パラメータを説明する。
【0027】
送信する全フレーム数(単位はフレーム)Tは、下り転送データであるONUソフトウェアのデータサイズを、1つのOAMフレーム当たりのデータ長で割った値の整数値への切り上げで定義できる。
【0028】
OAM送信フレーム制限数(単位はフレーム/秒)Mは、毎秒当たりの下りOAMフレームの送信許可上限数であり、第1の実施形態の場合、この送信フレーム制限数Mを決定する。ここで、パラメータM1は、1秒間の下りOAM送信フレーム制限数であって、単位がフレームである点がパラメータMと異なっている。
【0029】
送信フレーム数(単位はフレーム/秒)Sを、毎秒当たりの下りOAMフレームの送信可能数とする。第1の実施形態の場合、OLT10がONUに対して、1つのOAMフレームを送出する毎に、ONUがOLT10に対してACKを返信し、この返信を受けて、OLT10が次のOAMフレームの送信に進むことを前提としている(後述する図3参照)。そのため、送信フレーム数Sは、ACKの上り送信可能数(=1秒÷DBA周期)に応じた値をとる。すなわち、上り方向のフレーム送信はDBA周期毎に可能となるため、上りACK受信に同期する下り方向のフレーム送信タイミングも、DBA周期に依存することになる。よって、1秒当たりに送信可能な下りOAMフレーム数Sは、1秒当たりの上りACK送信可能数に依存する。ここで、パラメータS1は、1秒間の下りOAMフレーム送信数であって、単位がフレームである点がパラメータSと異なっている。
【0030】
なお、送信フレーム数Sは、DBA周期によって定まる下りOAMフレームの送信可能数であるので、送信フレーム制限数Mより大きい値をとる可能性もある。
【0031】
ONUソフトウェアの転送時間は、(1)式又は(2)式で表すことができる。ONUソフトウェアの転送帯域は、(3)式〜(6)式で表すことができる。なお、(3)式〜(6)式における1フレームのビット数は、1つのOAMフレームのビット数であるのでペイロード(データ部分)のビット数とオーバヘッドのビット数との和である。また、(1)式において、TをMで割っているのは、毎秒当たりの下りOAMフレームの送信可能数である送信フレーム数Sが、OAM送信フレーム制限数Mを超えているため、OAM送信フレーム制限数Mの制限を受けているためである。
【0032】
S>Mの場合
転送時間(秒)=(T/M)の整数部分+((T/M1)の余り)/S …(1)
S≦Mの場合
転送時間(秒)=T/S …(2)
S>MかつT>M1の場合
転送帯域(bps)=M×(1フレームのビット数) …(3)
S>MかつT≦M1の場合
転送帯域(bps)=(T×(1フレームのビット数))/1秒 …(4)
S≦MかつT>S1の場合
転送帯域(bps)=S×(1フレームのビット数) …(5)
S≦MかつT≦S1の場合
転送帯域(bps)=(T×(1フレームのビット数))/1秒 …(6)
今、OAMレイヤ上のデータ転送を、図3に示すようにモデル化する。すなわち、ONUソフトウェアを512バイト長毎に分割し、オーバヘッドを付加して550バイト長のOAMフレームを生成してOLT10からONU20へ転送し、ONU20は、下りのOAMフレームを受信する毎に、64バイト長のACKフレームをOLT10に返信するとする。
【0033】
この場合、全フレーム数Tは、ONUソフトウェアのデータサイズを512バイトで割った値の整数値への切り上げ値となる。送信フレーム数Sは、1フレーム×(1/DBA周期)となる。1フレームのビット数は、550バイト×8ビット=4400ビットとなる。
【0034】
図3のモデルを適用し、毎秒当たりの下り送信フレーム制限数Mと、(1)式又は(2)式を適用した転送時間と、(3)式〜(6)式のいずれかを適用した転送帯域との関係を演算してグラフ化すると、図4〜図6に示すようになる。ここで、上りフレームの送信タイミングはDBA周期で決定されるため、DBA周期をパラメータとし、DBA周期が700μsecの場合(図4)と、DBA周期が1400μsecの場合(図5)と、DBA周期が2100μsecの場合(図6)とを演算している。また、ONUソフトウェアのデータサイズが、200キロバイト、500キロバイト、700キロバイト、1000キロバイトの4パタンについて演算している。
【0035】
図4〜図6より、転送時間と転送帯域は、毎秒の送信フレーム制限数Mを増大させていっても、あるレベル以上で変化が収束することが分かる。これは、毎秒の送信フレーム制限数Mが増加していくと、あるレベル以上で、上り方向のACKの送信数がDBA周期に依存して制限されるためであると思われる。この状態においては、該当するDBA周期に対するデータ転送時の下り占有帯域(転送帯域)は最大値を取る。
【0036】
以上の特性に着目すると、下り方向の転送時間に対して、効率的に下り方向の転送帯域を使用するOAM送信フレーム制限数Mを決めることができる。すなわち、転送時間が所定時間(例えば数秒程度)に収束してくるポイント(送信フレーム制限数Mの値)に着目し、このポイントに送信フレーム制限数Mを設定して下り方向の転送帯域の使用を抑えることで、OAMフレーム数についての送信制限なしで転送時間の最小値を実現するよりも、転送時間に対して下り方向の転送帯域を効率的に使用することが可能となる。
【0037】
例えば、DBA周期が700μsでデータサイズ700キロバイトの場合に、毎秒300フレーム近辺に送信フレーム制限数Mを設定したとする。このような設定のケースを送信フレーム制限数Mの設定がないケースと比較すると、どちらもデータ転送時間はほぼ同じレベルの時間感覚が得られるのに対して、下り方向の転送帯域(の占有)は、毎秒300フレーム近辺に送信フレーム制限数Mを設定したケースの方が、送信フレーム制限数の設定がないケースと比べて1/4程度になる。
【0038】
以上のような考え方に従って、上述した図2のステップ103で、送信フレーム制限数Mを決定すれば良い。以上のような考え方に従っていれば、具体的な決定方法は限定されるものではないが、以下に具体的な決定方法を二例挙げる。
【0039】
図7は、送信フレーム制限数Mの決定方法の一例を示すフローチャートである。OAMレイヤ処理部11は、図7に示す処理を開始するとまず、送信フレーム制限数Mを1500フレームに設定し、ステップ101で把握した全フレーム数やステップ102で取り込んだDBA周期などを適用して、送信フレーム制限数Mが1500フレームの場合の転送時間を算出して基準転送時間TREFとして保持する(ステップ150)。ここでは、送信フレーム制限数Mの設定がないケースの転送時間を、送信フレーム制限数Mが1500フレームの場合の転送時間で近似することとしている。
【0040】
次に、OAMレイヤ処理部11は、パラメータmを初期値(例えば10)に設定する(ステップ151)。
【0041】
そして、毎秒mフレーム数が送信フレーム制限数Mに設定されたとして、そのときの転送時間Tmを演算し(ステップ152)、得られた転送時間Tmを、許容転送時間の上限値TUP(例えば10秒)と比較する(ステップ153)。
【0042】
得られた転送時間Tmが許容転送時間の上限値TUPを超えていると、OAMレイヤ処理部11は、パラメータmを1インクリメントして(ステップ154)、上述したステップ152に戻る。ここでは、パラメータmを1ずつ増大させる場合を示したが、送信フレーム制限数Mを早く決定できるように、2ずつ増大させるようにしても良く、さらには、更新単位を3以上のいずれかの値にするようにしても良い。
【0043】
得られた転送時間Tmが許容転送時間の上限値TUP以下であると、OAMレイヤ処理部11は、得られた転送時間Tmの基準転送時間TREFに対する比を求め(ステップ155)、得られた比が閾値(例えば、1.2)以下か否かを判別する(ステップ156)。この判別は、収束状態になったか否かの判別を意味している。この判別に比ではなく、差分を利用するようにしても良い。
【0044】
得られた比が閾値を超えていると、OAMレイヤ処理部11は、ステップ154に移行して、送信フレーム制限数Mの候補値mを切り換える。これに対して、得られた比が閾値以下であると、OAMレイヤ処理部11は、毎秒mフレーム数を送信フレーム制限数Mに決定して(ステップ157)、メインルーチン(図2)に戻る。
【0045】
図8は、送信フレーム制限数Mを決定する具体的な決定方法の第2例の説明図である。この第2例は、全フレーム数(若しくはデータサイズ)が取り得る範囲を複数の部分範囲に分割すると共に、DBA周期が取り得る範囲を複数の部分範囲に分割し、両部分範囲の組み合わせ毎に、予め送信フレーム制限数Mの値を定めておく。図8は、このような両部分範囲の組み合わせ毎に予め定めておいた送信フレーム制限数Mの値を示している。
【0046】
これから転送しようとするONUソフトウェアに係る全フレーム数が属する部分範囲と、現時点で適用することに決まっているDBA周期が属する部分範囲を認識し、認識した2つの部分範囲の組み合わせで定まる送信フレーム制限数Mの値を取り出し、送信フレーム制限数Mとして設定する。
【0047】
(A−3)第1の実施形態の効果
第1の実施形態によれば、データ転送時間が所定時間(数秒程度)に収束してくるOAM送信フレーム制限数をOLT10のOAMレイヤに適用するようにしたので、一群のOAMレイヤのデータの転送時に、転送時間の短縮化と、下り方向の回線帯域(転送帯域)の占有抑止とを効果的に両立させることができる。
【0048】
(B)第2の実施形態
次に、本発明による親局装置、通信システム及び下りデータ転送制御方法の第2の実施形態を、図面を参照しながら説明する。第2の実施形態の通信システムもPONシステムであり、第2の実施形態の親局装置もOLTである。
【0049】
第2の実施形態のOLTは、ユーザデータ(主信号)の下り転送においても、第1の実施形態と同様に下り送信フレーム制限数を適用し、固定値ではなく、転送時間や転送帯域の双方を考慮して定めようとしたものである。
【0050】
図9は、第2の実施形態におけるOLT10Aの機能的構成を示すブロック図である。図9において、第2の実施形態のOLT10Aは、識別用情報抽出部21、トラフィック識別部22、該当データ転送モデル検索部23及び下り送信フレーム制限数データベース24を有する。
【0051】
識別用情報抽出部21は、OLT10Aの上位装置からONUへのトラフィック(主信号のトラフィックであっても良い)について、その導通データからトラフィックパタンを識別するための情報を抽出してトラフィック識別部22に与えるものである。トラフィック識別部22は、識別用情報抽出部21からの情報に基づいて、トラフィックパタンを識別するものである。トラフィックパタンの識別方法としては、例えば、サービスクラス振り分け論理を適用してトラフィックパタンを識別する方法や、TCPポート番号によってトラフィック情報を把握して識別する方法を挙げることができる。
【0052】
該当データ転送モデル検索部23は、トラフィック識別部22によって識別されたトラフィックパタンに該当(対応)するデータ転送モデル(後述する図10参照)を特定し、特定したデータ転送モデルをキーとして下り送信フレーム制限数データベース24を検索するものである。
【0053】
下り送信フレーム制限数データベース24は、データ転送モデル毎に、送信フレーム制限数の情報を格納しているものである。ここで、データ転送モデルに対して送信フレーム制限数は1対1に対応するものではなく、例えば、1つのデータ転送モデルに対して、複数の送信フレーム制限数が格納され、今回の下り方向の通信に係るパラメータ(例えば、データサイズやDBA周期)に応じた送信フレーム制限数が取り出せるようになされている(図8参照)。
【0054】
上述した第1の実施形態では、OAMレイヤ上のONUソフトウェアの転送をモデル化した図3に示すトラフィックモデルを適用していた。この第2の実施形態では、図10に示すような一般化したトラフィックモデルを適用する。図10のトラフィックモデルは、ペイロードがFsバイトで、それにオーバヘッドを付けたバイト数がFosのフレームをNフレーム連続してONUに送信した後に、Faバイトを有するACKフレームがONUから返信されるモデルである。この図9における各種パラメータN、Fs、Fos、Faに具体的な値を当てはめたものが1つのデータ転送モデルとなっている。
【0055】
図10のトラフィックモデルを適用した場合、このモデルのパラメータは、次のように表される。
【0056】
送信する全フレーム数(単位はフレーム)Tは、下り転送データのトータルサイズ(データサイズ)を、1つのフレーム当たりのデータ長Fsバイトで割った値の整数値への切り上げで定義できる。また、毎秒当たりの下りフレームの送信可能数である送信フレーム数(単位はフレーム/秒)Sは、Nフレーム×(1/DBA周期)で定義される。さらに、1フレームのビット数は、Fosバイト×8ビットとなる。
【0057】
第2の実施形態の場合、第1の実施形態に比較して適用するパラメータの値は異なるが、第1の実施形態と同様に、送信フレーム制限数Mの値を増大させていった場合において、転送時間が所定時間(例えば数秒程度)に収束してくるポイントを把握し、このポイントの送信フレーム制限数Mの値を、データサイズやDBA周期の組合せごとに、下り送信フレーム制限数データベース24に格納しておくようにすれば良い(図8参照)。なお、下り送信フレーム制限数データベース24から取り出す方法に代え、図7を用いて説明したように、収束ポイントの送信フレーム制限数Mの値を、探索するようにしても良い。この場合の候補値の増大単位は、例えば、Nフレームの倍数とすることが好ましい。また、どの転送時においても、データサイズとDBA周期が同じようになるトラフィックがある場合には、データ転送モデルに対し、送信フレーム制限数を1対1で対応付けるようにしても良い。
【0058】
OLT10Aの上位装置からONUへのトラフィックが新たに生じると、OLT10Aの識別用情報抽出部21によって、新たなトラフィックの導通データからトラフィックパタンを識別するための情報が抽出され、トラフィック識別部22によって、トラフィックパタンが識別される。該当データ転送モデル検索部23においては、トラフィック識別部22によって識別されたトラフィックパタンに該当(対応)するデータ転送モデルが特定され、特定されたデータ転送モデルをキーとして下り送信フレーム制限数データベース24がアクセスされ、新たなトラフィックに係るデータサイズやDBA周期に応じた下り送信フレーム制限数が取り出される。そして、OLT10AからONUへの新たなトラフィックの転送は、取り出された送信フレーム制限数の制限下で実行される。
【0059】
第2の実施形態によれば、制御対象トラフィックのデータ転送モデルを各々定義し、毎秒当たりの下りフレーム送信数上限を決めるようにしたので、トラフィック毎の下り方向のデータ転送速度に対する効率的な下り転送帯域(割り当て帯域)を決定することができる。
【0060】
(C)他の実施形態
第2の実施形態では、OLT10Aがトラフィックパタンを識別するものを示したが、上述したようなサービスクラス振り分け論理やTCPポート番号によるトラフィック情報の把握(トラフィック識別)では、OLT以外の装置による識別結果をOLTに通知するようにしても良い。例えば、実際に、ネゴシエーションプロトコルを終端する装置であるONUが、トラフィックを識別して、OLTにトラフィック情報を通知し、OLTが当該トラフィッククラスに対して該当する下り送信フレーム制限数を決定して適用するようにしても良い。
【0061】
上記各実施形態では、本発明をPONシステムに適用した場合を示したが、PONシステムと同様な構成の1対多通信システムであれば本発明を適用することができる。例えば、伝送路を通過する通信信号が光信号でなく電気信号の通信システムに対しても本発明を適用することができ、また、伝送路が光ファイバではなく光を通す空間の場合であっても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
10、10A…OLT、11…OAMレイヤ処理部、12…OAMフレーム生成部、13…主信号フレーム生成部、14…送信フレーム多重部、15…受信フレーム多重分離部、16…OAMフレーム終端部、17…主信号フレーム終端部、21…識別用情報抽出部、22…トラフィック識別部、23…該当データ転送モデル検索部、24…下り送信フレーム制限数データベース。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親局装置が中継装置を介して複数の子局装置の中のいずれかの子局装置にデータをフレーム単位に送信すると共に、上記フレームを予め定められている所定数連続して受信した上記子局装置が、上記親局装置が動的に帯域を割り当てる方式で決定した動的帯域割当周期に従って受信応答フレームを、上記中継装置経由で、上記親局装置に返信する通信システムの上記親局装置が該当する親局装置において、
当該親局装置が上記子局装置へ転送するデータの全体のサイズと、上記動的帯域割当周期と、1つのフレーム当たりに盛り込むデータ量とを少なくとも固定値とし、当該親局装置から上記子局装置へ転送が許容される所定時間当たりの上限フレーム数を変化させながら、上限フレーム数の各値毎に、転送すべきデータ全体を転送できる転送時間を算出し、上限フレーム数を小さい値から大きな値へ変化させた場合に、算出される転送時間が収束したと捉えられる変化ポイントの所定時間当たりの上限フレーム数を求め、この変化ポイントの所定時間当たりの上限フレーム数を、当該親局装置は、自装置から上記子局装置へのデータ転送時に制限として設定する制限設定部を有することを特徴とする親局装置。
【請求項2】
上記制限設定部は、これから転送するトラフィックに係る、上記全体サイズと、上記動的帯域割当周期と、1つのフレーム当たりに盛り込むデータ量とに基づいて、転送開始直前に、変化ポイントの所定時間当たりの上限フレーム数の探索演算を実行することを特徴とする請求項1に記載の親局装置。
【請求項3】
上記制限設定部は、トラフィックの種別毎に、予め算出しておいた変化ポイントの所定時間当たりの上限フレーム数を格納している格納部を内蔵し、これから転送するトラフィックの種別を検出して、適用する上限フレーム数を把握することを特徴とする請求項1に記載の親局装置。
【請求項4】
親局装置が中継装置を介して複数の子局装置の中のいずれかの子局装置にデータをフレーム単位に送信すると共に、上記フレームを予め定められている所定数連続して受信した上記子局装置が、上記親局装置が動的に帯域を割り当てる方式で決定した動的帯域割当周期に従って受信応答フレームを、上記中継装置経由で、上記親局装置に返信する通信システムにおいて、
上記親局装置が、請求項1〜3のいずれかに記載の親局装置であることを特徴とする通信システム。
【請求項5】
親局装置が中継装置を介して複数の子局装置の中のいずれかの子局装置にデータをフレーム単位に送信すると共に、上記フレームを予め定められている所定数連続して受信した上記子局装置が、上記親局装置が動的に帯域を割り当てる方式で決定した動的帯域割当周期に従って受信応答フレームを、上記中継装置経由で、上記親局装置に返信する通信システムの下りデータ転送制御方法において、
上記親局装置は、自装置が上記子局装置へ転送するデータの全体のサイズと、上記動的帯域割当周期と、1つのフレーム当たりに盛り込むデータ量とを少なくとも固定値とし、自装置から上記子局装置へ転送が許容される所定時間当たりの上限フレーム数を変化させながら、上限フレーム数の各値毎に、転送すべきデータ全体を転送できる転送時間を算出し、上限フレーム数を小さい値から大きな値へ変化させた場合に、算出される転送時間が収束したと捉えられる変化ポイントの所定時間当たりの上限フレーム数を求め、この変化ポイントの所定時間当たりの上限フレーム数を、自装置から上記子局装置へのデータ転送時に制限として設定することを特徴とする下りデータ転送制御方法。
【請求項1】
親局装置が中継装置を介して複数の子局装置の中のいずれかの子局装置にデータをフレーム単位に送信すると共に、上記フレームを予め定められている所定数連続して受信した上記子局装置が、上記親局装置が動的に帯域を割り当てる方式で決定した動的帯域割当周期に従って受信応答フレームを、上記中継装置経由で、上記親局装置に返信する通信システムの上記親局装置が該当する親局装置において、
当該親局装置が上記子局装置へ転送するデータの全体のサイズと、上記動的帯域割当周期と、1つのフレーム当たりに盛り込むデータ量とを少なくとも固定値とし、当該親局装置から上記子局装置へ転送が許容される所定時間当たりの上限フレーム数を変化させながら、上限フレーム数の各値毎に、転送すべきデータ全体を転送できる転送時間を算出し、上限フレーム数を小さい値から大きな値へ変化させた場合に、算出される転送時間が収束したと捉えられる変化ポイントの所定時間当たりの上限フレーム数を求め、この変化ポイントの所定時間当たりの上限フレーム数を、当該親局装置は、自装置から上記子局装置へのデータ転送時に制限として設定する制限設定部を有することを特徴とする親局装置。
【請求項2】
上記制限設定部は、これから転送するトラフィックに係る、上記全体サイズと、上記動的帯域割当周期と、1つのフレーム当たりに盛り込むデータ量とに基づいて、転送開始直前に、変化ポイントの所定時間当たりの上限フレーム数の探索演算を実行することを特徴とする請求項1に記載の親局装置。
【請求項3】
上記制限設定部は、トラフィックの種別毎に、予め算出しておいた変化ポイントの所定時間当たりの上限フレーム数を格納している格納部を内蔵し、これから転送するトラフィックの種別を検出して、適用する上限フレーム数を把握することを特徴とする請求項1に記載の親局装置。
【請求項4】
親局装置が中継装置を介して複数の子局装置の中のいずれかの子局装置にデータをフレーム単位に送信すると共に、上記フレームを予め定められている所定数連続して受信した上記子局装置が、上記親局装置が動的に帯域を割り当てる方式で決定した動的帯域割当周期に従って受信応答フレームを、上記中継装置経由で、上記親局装置に返信する通信システムにおいて、
上記親局装置が、請求項1〜3のいずれかに記載の親局装置であることを特徴とする通信システム。
【請求項5】
親局装置が中継装置を介して複数の子局装置の中のいずれかの子局装置にデータをフレーム単位に送信すると共に、上記フレームを予め定められている所定数連続して受信した上記子局装置が、上記親局装置が動的に帯域を割り当てる方式で決定した動的帯域割当周期に従って受信応答フレームを、上記中継装置経由で、上記親局装置に返信する通信システムの下りデータ転送制御方法において、
上記親局装置は、自装置が上記子局装置へ転送するデータの全体のサイズと、上記動的帯域割当周期と、1つのフレーム当たりに盛り込むデータ量とを少なくとも固定値とし、自装置から上記子局装置へ転送が許容される所定時間当たりの上限フレーム数を変化させながら、上限フレーム数の各値毎に、転送すべきデータ全体を転送できる転送時間を算出し、上限フレーム数を小さい値から大きな値へ変化させた場合に、算出される転送時間が収束したと捉えられる変化ポイントの所定時間当たりの上限フレーム数を求め、この変化ポイントの所定時間当たりの上限フレーム数を、自装置から上記子局装置へのデータ転送時に制限として設定することを特徴とする下りデータ転送制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−48378(P2013−48378A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186277(P2011−186277)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(503262509)株式会社オー・エフ・ネットワークス (62)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(503262509)株式会社オー・エフ・ネットワークス (62)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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