説明

親水性樹脂の製造方法

【課題】種々の樹脂を材料として、親水性樹脂を製造可能な方法を提供すること。
【解決手段】炭素−水素結合を有する樹脂に、下記一般式(1)(式中、R、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基又はシアノ基であり、mは1からから500の整数であり、nは1から200の整数である)で示される繰り返し単位を有する表面改質剤を反応させることにより課題を解決する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性樹脂の製造方法に関するものであり、例えば液体クロマトグラフィー用充填材に使用される球状(粒子状)の親水性樹脂をはじめとして、シート状の親水性樹脂の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィーでは、粒状の親水性樹脂(親水性の表面を有する球状(粒子状)の樹脂)が使用されることがある。このような親水性の球状(粒子状)樹脂は、一般に、親水性官能基を有する重合性単量体と架橋性単量体を共重合させて製造するか、反応性官能基を有する重合性単量体と架橋性単量体を共重させて樹脂を形成させた後、樹脂表面の反応性官能基を極性を有する官能基へ変換して製造する。例えば特許文献1には、アクリルアミド又はその誘導体、p−スチレンスルホン酸又はその塩、そして(メタ)アクリル酸又はその塩を重合性単量体として使用する親水性樹脂の製造方法が、特許文献2にはグリシジル基を有するスチレンを重合性単量体として使用し、形成させた重合体のグリシジル基を水酸基を有する化合物と反応させることにより親水性球状(粒子状)樹脂を製造する方法がそれぞれ開示されている。
【0003】
しかし特許文献1又は特許文献2の方法では、樹脂を製造する際に使用する単量体が制限され、スチレンとジビニルベンゼンを共重合する場合には適用できない。また特許文献1又は特許文献2では水系分散媒中での懸濁重合又はシード粒子を利用した乳化重合を利用するが、親水性樹脂を製造すべく親水性単量体を用いると水相に親水性単量体が移行して樹脂形成に関与しない等して、十分な親水性をもった樹脂を得ることができないことがある。
【0004】
親水性樹脂を製造する他の方法として、特許文献3には、親水性を有する表面改質剤を添加して重合性単量体を重合させ、親水性樹脂を製造する方法が開示されている。
しかし特許文献3の方法では、重合反応時にラジカルを発生する表面改質剤を添加することから、重合反応に表面改質剤が関与してしまい、例えば液体クロマトグラフィー用充填材の製造にこの方法を利用しようとしても、粒子径、粒子強度、粒子の細孔特性等、製造される樹脂の種々の特性を制御することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04−132705号公報
【特許文献2】特開昭62−290703号公報
【特許文献3】特開2006−265477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の第一の目的は、種々の樹脂を材料として、親水性樹脂を製造可能な方法を提供することにある。本発明の第二の目的は、樹脂に対して十分な親水性を付与することができ、また所望により親水性の度合いを制御し得る親水性樹脂の製造方法を提供することにある。そして本発明の第三の目的は、重合反応に関与する材料を用いることなく、従って液体クロマトグラフィー用充填材を製造する場合においては、製造される親水性球状(粒子状)樹脂の粒子径、粒子強度及び細孔特性等の種々の特性を容易に制御することが可能な親水性樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らによって完成された、前記目的を達成する本発明は、炭素−水素結合を有する樹脂に、下記一般式(1)(式中、R、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基又はシアノ基であり、mは1からから500の整数であり、nは1から200の整数である)で示される繰り返し単位を有する表面改質剤を反応させることを特徴とする、親水性樹脂の製造方法である。
【0008】
【化1】

【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、炭素−水素結合(C−H結合)を有する樹脂について適用することができる。C−H結合を有する樹脂としては、例えば以下(1)から(12)に例示した中から選択される重合性単量体の重合によって形成された樹脂や(1)から(12)に例示した中から選択される2種以上の重合性単量体の共重合によって形成された樹脂等、種々の樹脂を例示することができる。また本発明を適用する樹脂は、このような単量体を重合又は共重合するに際し、必要に応じて架橋性単量体を添加して製造した樹脂であっても良い。より具体的には、例えばスチレンと架橋性単量体であるジビニルベンゼンの共重合により形成された樹脂を例示することができる。なお以下でいう「(メタ)アクリ」は、アクリ又はメタクリを意味するものである。また、以下の(1)から(12)に例示した重合性単量体には、それ自体が親水性を有するものが含まれ、その重合によって形成された樹脂自体が親水性を示す場合がある。そのような場合であっても、より親水性を向上する目的で本発明を適用することに制限はない。
(1)α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン,3,4−ジクロロスチレン又はクロロメチルスチレン等のスチレン系重合性単量体。
(2)塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル又は弗化ビニル等のハロゲン化ビニル系重合性単量体。
(3)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル又は酪酸ビニル等のビニル系重合性単量体。
(4)アクリロニトリル等の不飽和ニトリル系重合性単量体。
(5)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸n=オクチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸フェニル又はα−クロロアクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体。
(6)ブタジエン又はイソプレン等の共役ジエン系重合性単量体。
(7)ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル又はビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系重合性単量体。
【0010】
(8)ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン又はメチルイソプロペニルケトン等のケトン系重合性単量体。
(9)その他、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール等の各種の官能基を有する単官能性単量体。
(10)(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル又は(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸系重合性単量体。
(11)N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物系重合性単量体。
(12)その他、マレイン酸、フマル酸又はビニルナフタレン塩等の重合性単量体。
前記した架橋性単量体としては、例えばジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールトリアクリレート、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル又はジビニルサルファイト等の多官能性単量体を例示することができる。なお架橋性単量体は、2種以上が添加されても良く またその添加量に関しては特に制限はない。
本発明を実施することにより、親水性の樹脂を製造することができるが、本発明でいう「親水性樹脂の製造」とは、親水性を有していない樹脂を材料として親水性を有する樹脂を製造すること以外に、所定の親水性を示す樹脂を材料としてその親水性が向上した樹脂を製造することも含まれる。本発明により樹脂の親水性が向上したか否かは、本発明によって製造された樹脂と本発明を適用する前の樹脂の極性を比較することにより判断することができる。具体的には、例えば樹脂によるトルエン、フェノール及びカテコールの保持比を比較する等すれば良く、より具体的には、例えば樹脂を粒子化して任意の液体クロマトグラフィー用カラムに充填し、クロロホルムに溶解したトルエン、フェノール又はカテコールを通液し、それぞれの保持時間の比を算出して比較する等すれば良い。
【0011】
本発明は、上記したような重合性単量体を重合又は共重合することによって形成された樹脂に対して適用される。ここでいう「樹脂」には、後に種々の形状の製品に成形するための、例えばペレット状等の中間製品としての形状のものや、例えば液体クロマトグラフィー用充填材として使用するための球状(粒子状)のもの等、重合の過程で、又は重合後の成形工程を経て、最終製品の形状に成形されたものでも良い。
【0012】
本発明は、以上に説明した樹脂を下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有する表面改質剤と反応させることにより、親水性の樹脂を製造する。ここで、式1中、R、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基又はシアノ基であり、mは1からから500の整数であり、nは1から200の整数である。
【0013】
本発明で使用する表面改質剤としては、前記条件を満たせば特に制限はないが、中でもR、R、R、Rのいずれかが低級アルキル基であり、他のいずれかがシアノ基であるものが好ましい。低級アルキル基としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル又はブチル等の炭素数1から4のアルキル基を例示できる。mについては、繰り返し単位が少ないと付与される親水性が不足することがあり、またmが大きくなっても、それに見合った親水性の付与は望みにくいため、10から200の範囲が好ましく、50から100の範囲が特に好ましい。nについてもmと同様、繰り返し単位が少ないと付与される親水性が低くなることがあり、またmが大きくなっても、それに見合った親水性の付与が望みにくいために、1から50の範囲が好ましく、5から20の範囲が特に好ましい。また表面改質剤としては、数平均分子量が小さいと付与される親水性が低くなることがあり、また数平均分子量があまりに大きいと、樹脂と媒体中で反応させる際の分散性が悪化し、反応の効率が低下するため、数平均分子量が2000から100000のものが好ましく、数平均分子量が5000から50000のものが特に好ましい。
【0014】
表面改質剤は水系媒体中で樹脂と反応させる。反応に使用する表面改質剤の量に特に制限はないが、使用量が少ないと付与される親水性が低くなることがあり、また大量に使用しても使用量に見合った親水性の付与は望みにくいため、樹脂の効率的な製造のために樹脂100重量部に対して0.1から200重量部用いることが好ましく、樹脂100重量部に対して1から100重量部用いることが特に好ましい。
【0015】
本発明で使用する表面改質剤は、例えば、アゾ基含有ジカルボン酸クロライドとポリオキシエチレンとを無触媒又は三級アミン触媒の存在下に脱水縮合試薬を用いて重縮合させる方法等により製造することができる。
【0016】
樹脂と表面改質剤との反応は、例えば、まず反応フラスコ等に水系媒体と樹脂を入れておき、ここに直接又は予め水又はメタノール、1,4−ジオキサン等の有機溶剤に溶解させた表面改質剤を添加する。次に、フラスコ内を窒素、アルゴン又はヘリウム等の不活性ガスで置換し、樹脂、表面改質剤及び溶媒から成る混合液を好ましくは25℃から120℃、より好ましくは50℃から100℃に過熱する。その後、反応フラスコ中の溶媒をロータリーエバポレータ等によって除去し、真空乾燥機等を使用して真空条件下で好ましくは25℃から120℃、より好ましくは50℃から100℃に加熱する。表面改質処理を完了した後は、樹脂を水に混和可能な有機溶剤中に分散させ、水及び有機溶剤で洗浄し、必要に応じて乾燥等すれば良い。
【0017】
表面改質剤と樹脂との反応の際には、表面改質剤を効果的に樹脂表面に効率的に導入して親水性を高めるため、必要に応じてラジカル開始剤を添加することが好ましい。ラジカル開始剤に特に制限はなく、樹脂の種類や使用する表面改質剤と樹脂の比率、反応温度等の諸条件に応じて適宜決定することができる。例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパ−オキシジカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’−アジビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系化合物等が挙げられる。
【0018】
本発明を適用した樹脂は、親水性が付与され又は向上された樹脂として、そのまま種々の目的に使用することができる。例えば液体クロマトグラフィー用充填材について述べれば、重合性単量体をシード重合等に供して重合する過程で球状(粒子状)樹脂を形成し、後に本発明適用することによって親水性が付与され又は向上した充填材の基材とすることができるので、その後必要に応じてイオン交換基を付加等すれば良い。また後に一定の形状に成形する樹脂に適用した場合には、本発明を適用することによって親水性が付与され又は向上した樹脂を公知の手法によって任意の形状に成形することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の樹脂の製造方法によれば、炭素−水素結合を有する樹脂に対し、親水性を付与し又は親水性を向上することが可能となる。本発明を液体クロマトグラフィー用充填材である球状樹脂に適用する場合には、水系媒体中への分散性に優れた親水性充填材を簡便に製造することができる。液体クロマトグラフィー用充填材以外にも、本発明は、レオロジーコントロール剤や艶消し剤等の塗料を形成する樹脂、インクや接着剤等に使用される微細な樹脂、LCDスペーサーや銀塩フィルム用表面保護コーティング材等として使用される樹脂、磁気テープ用フィルムの改質剤として使用される樹脂、感熱紙走行安定剤等として使用される樹脂、抗原抗体反応検査用の容器や固相として使用される樹脂、滑り剤として使用される樹脂、体質顔料等の化粧品分野で使用される樹脂、不飽和ポリエステル等の樹脂の低収縮化剤として使用される樹脂、紙や歯科材として使用される樹脂、アンチブロッキング剤として使用される樹脂、光拡散剤として使用される樹脂、マット化剤として使用される樹脂、そして他の樹脂に混入することによってその改質を図るための樹脂など、臨床診断、電子材料を含む一般の工業分野において使用されるさまざまな樹脂について、親水性を付与したり、親水性を向上することが可能である。
【0020】
本発明は、重合性単量体の重合又は共重合によって形成された樹脂に対して、その形成後に親水性を付与し又は親水性を向上するものである。この結果本発明では、樹脂を形成する重合の際に使用可能な重合性単量体が制限されることがない。例えば液体クロマトグラフィー用充填材では、一般にイオン交換用充填材等に使用されているポリスチレンとジビニルベンゼンを共重合させた樹脂が多用されているが、親水性を付与しようと当該樹脂中の芳香環部位や残存しているビニル基との化学反応を利用しても反応性が低く、十分な親水性を付与できなかったり、当該反応が固−液間での反応であるため過激な反応条件によって樹脂の構造が破壊される可能性がある。しかし本発明によれば、ポリスチレンとジビニルベンゼンを共重合させた樹脂に対しても、共重合後に表面改質剤を反応させるという極めて簡便な操作により、樹脂構造を破壊することなく、十分な親水性を付与できるようになる。
【0021】
また更に本発明によれば、反応温度、反応時間、反応に供する表面改質剤の量等を制御することにより、樹脂と表面改質剤との反応を制御することが可能である。従って、単に親水性を付与する以上に、意図するレベルの親水性を付与するということも可能になる。これにより、例えば液体クロマトグラフィー用充填材に親水性を付与する場合等には、親水性の度合いを微調整することによって用途に最適化された充填材を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施例に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【実施例】
【0023】
以下に示す実施例は本発明の実施の一形態であり、本発明を限定するものではない。
【0024】
実施例1
(1)シード粒子の製造
撹拌器、コンデンサー、温度計、窒素ガス導入管を備えた容器に、水220.0重量部を投入し、メタクリル酸ベンジル30.0重量部、チオグリコール酸2−エチルヘキシル1.50重量部を加えて攪拌した後、容器内に窒素ガスを導入して窒素雰囲気とした。容器に、更に過硫酸カリウム1.20重量部を水25.0重量部に溶解した溶液を投入し、70℃で16時間、重合反応を行った。放冷後、固形分濃度9.7重量%の、球状の重合体(以下、シード粒子という)を得た。得られたシード粒子はその平均粒子径が0.68μm(変動係数は5.2%)であった。
【0025】
(2)シード重合
重合性単量体として95重量%ジビニルベンゼン160.1重量部を用い、これにトルエン252.9重量部、2,2’−アゾビス−2,4−-ジメチルバレロニトリル1.80重量部、ドデシル硫酸ナトリウム1.50重量部及びイオン交換水416.3重量部とを混合し、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製)で乳化した。
【0026】
次いで2重量%のポリビニルアルコール(クラレ(株)製、商品名ポバール224)水溶液1200重量部、に上記で得たシード粒子の分散液37.5重量部を加えて分散させた後、上記で調製した乳化液を加え、室温16時間撹拌して乳化液中の油滴をシード粒子に吸収させた。
【0027】
その後、撹拌しながら70℃になるまで加熱し、該温度で8時間反応させ、樹脂粒子を得た。この樹脂粒子を単離後、1,4−ジオキサン1000重量部中に分散し、超音波浴中で1時間撹拌し、シード粒子由来の重合物を抽出、除去して、樹脂粒子を単離した。得られた樹脂の粒度分布をコールターカウンター(コールター社製)で測定したところ、平均粒子径は3.3μmであった。
【0028】
(3)表面改質剤による処理
(2)で得られた樹脂60.0重量部(乾燥重量)、表面改質剤(前記一般式(1)においてR1及びR3がメチル基、R2及びR4がシアノ基であり、mが約90、nが約7、数平均分子量は約30000)4.8重量部、1,4−ジオキサン1000重量部を容器へ投入し、窒素雰囲気下で100℃となるまで加熱して該温度で16時間撹拌した。放冷後、メタノールで洗浄を行い、球状の樹脂を得た。
【0029】
(4)親水性の評価
親水性の評価は以下の方法で樹脂粒子表面の極性を比較することで評価した。評価すべき樹脂粒子を内径4.6mm、長さ100mmのステンレス製カラムに充填し、評価用カラムを調製した。このカラムをHPLCシステム(東ソー(株)製CCP&8020シリーズ)に接続し、評価用測定試料としてトルエン、フェノール又はカテコールをクロロホルムに溶解したものを使用した。溶離液にはクロロホルムを使用した。
カラムへの通液時の流速は0.5mL/minとし、カラムの温度は40℃とした。分離された各成分は254nmの吸光度を測定することにより検出した。トルエンの保持時間に対するフェノール、カテコールの保持時間の比を算出し、比較することにより、表面極性の評価を実施した。保持時間の比が大きいものが、より極性が高く、より親水性であることを示す。
【0030】
実施例2
表面改質剤を9.6重量部使用したこと以外は実施例1と同様にして樹脂粒子を得た。
【0031】
実施例3
表面改質剤を24.0重量部使用したこと以外は実施例1と同様にして樹脂粒子を得た。
【0032】
実施例4
実施例1で使用した表面改質剤を48.0重量部使用したこと以外は実施例1と同様にして樹脂粒子を得た。
【0033】
比較例1
表面処理をしないこと以外は実施例1と同様にして球状の樹脂を得た。
【0034】
実施例5
重合性単量体としてメチルメタクリレート39.0重量部及びジエチレングリコールジメタクリレート54.4重量部を用い、これにクロロベンゼン93.0重量部、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル0.60重量部、ドデシル硫酸ナトリウム0.50重量部及びイオン交換水187.5重量部を混合し、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製)で処理した。
【0035】
2重量%のポリビニルアルコール(クラレ(株)製 ポバール224)水溶液400重量部に実施例1で得たシード粒子の分散液7.40重量部を加えて分散させた後、上記で調製した乳化液を加え、室温にて添加し16時間撹拌を行い、乳化液中の油滴をシード粒子に吸収させた。
【0036】
その後、撹拌しながら70℃になるまで加熱し、該温度で8時間反応させ、樹脂粒子を得た。この樹脂粒子を単離後、1,4−ジオキサン1000重量部中に分散し、超音波浴中で1時間撹拌し、シード粒子由来の重合物を抽出、除去して、樹脂粒子を単離した。得られた樹脂の粒度分布をコールターカウンター(コールター社製)で測定したところ、平均粒子径は3.5μmであった。
【0037】
上記で得られた樹脂10.0重量部(乾燥重量)、実施例1で使用したのと同一の表面改質剤1.6重量部、1,4−ジオキサン200重量部を容器へ投入し、窒素雰囲気下にて100℃になるまで加熱して該温度で16時間撹拌した。放冷後、メタノール洗浄を行い、球状の樹脂を得た。
【0038】
比較例2
樹脂粒子の表面処理をしないこと以外は実施例5と同様にして球状の樹脂を得た。
【0039】
実施例及び比較例で製造した樹脂の親水性を評価した結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】

上記表1からは、上記実施例において表面処理を行った樹脂では表面極性が増大し、樹脂の親水性が向上したことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素−水素結合を有する樹脂に、下記一般式(1)(式中、R、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基又はシアノ基であり、mは1からから500の整数であり、nは1から200の整数である)で示される繰り返し単位を有する表面改質剤を反応させることを特徴とする、親水性樹脂の製造方法。
【化1】

【請求項2】
前記樹脂がスチレンとジビニルベンゼンが共重合した樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の親水性樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記表面改質剤を樹脂100重量部に対して0.1から200重量部反応させることを特徴とする請求項1に記載の樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2012−117014(P2012−117014A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270533(P2010−270533)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】