説明

親水性被覆を具備する蒸気生成デバイス

本発明は、親水性被覆を具備する蒸気室を有する蒸気生成デバイスに関する。親水性被覆は、酸性リン酸塩合成物とホウ素、好ましくは金属元素を持つホウ素の塩とを有する。被覆は、蒸気処理を促進し、はく離に耐性がある。本発明は、蒸気生成デバイスの蒸気室内の親水性被覆を生じる方法と、蒸気生成デバイスを有するアイロンとにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性被覆を具備する蒸気室を有する蒸気生成デバイスに関する。本発明は、更に、蒸気生成デバイスの蒸気室内に親水性被覆を供給する方法に関する。特に本発明は、親水性被覆を具備する蒸気室を有する、スチームアイロンに関する。
【背景技術】
【0002】
1気圧100℃を上回る加熱水は、蒸気に変わる。スチームアイロンのような蒸気生成デバイスにおいて、水は、蒸気を生成するために、熱い表面に付与される。しかしながら、蒸気は表面と水滴との間に絶縁層を形成でき、これによって、水の蒸発を事実上遅くする。水滴は、蒸気に蒸発する代わりに、表面にはねる傾向がある。この効果は、ライデンフロースト効果と呼ばれ、160℃を超えると概して発生する。この効果は、例えばスチームアイロンで観察される。
【0003】
さまざまな方法が、例えばリブのような蒸気室の特別な構造体を供給することから蒸気室の表面にコーティングを使用するまでの範囲にわたって、ライデンフロースト効果を防止するために提案された。適切な蒸気プロモータ被覆は、親水性で適度に断熱である。被覆の適度な断熱特徴は、水が熱いアルミニウム基板に触れるのを防止する。いくらかの水が表面に触れるとき、表面はライデンフロースト効果温度より下まで効果的に直接クールダウンされる。好ましくは、また、斯様な蒸気プロモータ被覆は、ある程度の多孔性を持つ。蒸気プロモータ被覆の親水性特徴によって、導入された水は、蒸気室の表面にわたって容易に拡がる。適切な蒸気プロモータ被覆は、良好な濡れ、多孔質構造体への水の吸収及び高い表面粗さの組合せを提供する。
【0004】
冒頭に記載されたタイプの蒸気生成デバイスは、米国特許US5,060,406から既知である。既知のデバイス(スチームアイロン)は、主に二酸化ケイ素、充填材及び酸性リン酸塩合成物、特にモノフォニックのアルミニウムリン酸塩からなる、蒸気プロモータ被覆を具備する。比較的かなりの量の充填材の存在のため、既知の被覆混合物は、非常に粘着性で、噴霧技術で容易に付与できない。モノフォニックのアルミニウムリン酸塩は、水溶性で、乾燥で、実質的に不溶性無機被覆に硬化でき、更に、米国特許US5,060,406に使用された二酸化ケイ素のコロイド状混合物に対する酸性安定剤として作用する。さらに、モノフォニックのアルミニウムリン酸塩は、低いpHを持ち、したがってアルミニウム基板をエッチングし、被覆とアルミニウム基板との間の接着力を高める。従って、主にモノフォニックのアルミニウムリン酸塩単独に基づいて、蒸気プロモータ被覆が蒸気室表面に付与できるならば望ましいだろう。しかしながら、斯様な被覆は、あまりにもろくて、従って、小さな厚み、通常は1ミクロン未満だけ付与できる。とりわけ、これは、斯様な小さな厚みはライデンフロースト効果の発生の危険度を増大するので、望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
要約すると、既知の蒸気プロモータ被覆は、ライデンフロースト効果を所望のレベルまで引き下げるが、特に、高い湿度及び比較的高い温度を持つ環境において、あまりに粘着性であるか、又はあまりにもろい。この脆さは剥片の蒸気室被覆からの剥がれを生じさせ、前記剥片は蒸気口を通じてアイロンを出る。
【0006】
上述の課題を解決することが、本発明の目的である。この目的のために、特に、暖かく湿った環境の内部応力により影響されない蒸気室被覆を具備するスチームアイロンを供給することが、本発明の目的である。他の目的は、ライデンフロースト効果により影響されない蒸気室被覆を供給することである。他の目的は、スチームアイロンの蒸気室内に斯様な蒸気プロモータ被覆を付与する発明の方法を供給することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの及び他の目的は、酸性リン酸塩合成物を有する親水性被覆を具備する蒸気室を有する蒸気生成デバイスによって達成され、当該被覆はホウ素、好ましくは金属元素を持つホウ素の塩を更に有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明によるスチームアイロンの一部を断面とした部分的な立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明によると、親水性被覆を具備する蒸気室を有する蒸気生成デバイスが供給される。親水性被覆は、ホウ素だけでなく酸性リン酸塩合成物を有する。好ましい実施例において、親水性被覆は、金属元素を持つホウ素の塩だけでなく、酸性リン酸塩合成物を有する。酸性リン酸塩合成物とホウ素、好ましくは金属元素を持つホウ素の塩との組み合わされた使用は、硬化後、優れた湯気を立てるパフォーマンスを持つ被覆を生じる。特に、本発明の被覆は、蒸気プロモータ被覆の大部分の望ましい特徴を示し、ライデンフロースト効果をより高い温度へシフトするだけでなく、多孔質構造体に拡がる良好な水及び良好な濡れ挙動を示す。
【0010】
本発明による被覆の他の効果は、被覆の充填材の量が今までの既知の被覆の充填剤の量より低くできることである。被覆を粒子で満たすことは、スチーム特性を改善するが、また、硬化されていない被覆の粘性を増大する。これは、被覆の困難なアプリケーションを導き、噴霧の好適な方法が適用できない。本発明の被覆は、容易に噴霧可能である。
【0011】
本発明の好ましい実施例において、蒸気生成デバイスは、金属元素がアルカリ金属元素であるということを特徴とする。何れかのアルカリ金属元素が原則として用いられるが、好適な元素はナトリウム、リチウム及びカリウムのグループから選択される。蒸気プロモータ被覆組成物の安定性が改善されなければならない場合、リチウムの使用が特に好まれる。さらに、リチウムの使用はまた、蒸気プロモータ被覆の強さを改善することが確認された。
【0012】
本発明によると、親水性蒸気室被覆は、酸性リン酸塩合成物を有する。これは、リン酸塩が少なくとも単独でプロトン化される(HPO2―又は、HPO)金属―リン酸塩合成物を意味すると理解されるべきである。適切な合成物の例は、MgHPO及びZn(HPOである。蒸気室被覆の酸性リン酸塩合成物は、アルミニウム基板との良好な粘着を供給する。
【0013】
この点で、アルミニウムリン酸塩合成物、特にアルミニウム三リン酸塩(Al(HPO))が非常に好適に使用できることが示された。これらの合成物は、蒸気室被覆内に、結合剤として役に立つ追加の充填材と共に用いられる。蒸気室被覆内のアルミニウムリン酸塩の存在は、斯様な被覆が特に水に溶解しないことを確実にすることが分かった。
【0014】
好ましい効果を作るために、蒸気プロモータ被覆のホウ酸塩の量は、好ましくは乾燥被覆の組成物全体の1から40重量%の間にある(被覆組成物内の水は、実質的に除去されている)。より好ましくは、ホウ酸塩の量は、5から30重量%の間、最も好ましくは8から20重量%の間にある。
【0015】
機械的特性、特に被覆の力は、充填材を加えることにより改善できる。従来技術で既知の何れかの充填材は、アルミナ又は二酸化ケイ素のような金属酸化物粒子、及び雲母、カオリン鉱物等のような粒子を含んで使用される。本発明の他の好ましい実施例において、蒸気生成デバイスの親水性被覆は、アルミナ粒子を有する。これらの粒子は、市販のアルミニウムリン酸塩溶液内にある過剰なリン酸を取り出せるので、より良好な被覆を得ると考えられている。
【0016】
改良された機械的特性を持つ被覆を作るために、蒸気プロモータ被覆の充填材の量は、好ましくは乾燥被覆の組成物全体の5から60重量%の間にある(被覆組成物内の水は、実質的に除去されている)。より好ましくは、充填材の量は、10から40重量%の間にあり、最も好ましくは15から25重量%の間にある。被覆のパフォーマンスは、追加された金属酸化物を被覆溶液に加えることにより最適化できる。
【0017】
本発明は、蒸気生成デバイスの蒸気室内に親水性被覆を作る方法にも関する。当該方法は、酸性リン酸塩合成物と金属元素を持つホウ素の塩との混合物を準備するステップと、前記混合物を蒸気室に導入するステップと、親水性被覆を形成するために高い温度で前記混合物を硬化させるステップとを有する。混合物を蒸気室に導入するステップは、好ましくは噴霧により実施される。
【0018】
特に、当該方法は、ホウ酸がアルカリ金属水酸化物が加えられる水に溶かされることを特徴とする。適切な金属水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム及び水酸化カリウムであり、水酸化リチウムが最も好適なアルカリ性合成物である。その後、この溶液(すなわち、泥漿)は、酸性リン酸塩合成物の溶液に混ぜられる。その後、結果として生じる(半透明の)溶液は、通常増大された粘性を持って、アルミニウム基板に付与され、高い温度で硬化され親水性の蒸気室の被覆となる。実質的に不溶性の多孔性アルミニウム・ホウ素を含有するリン酸塩被覆が得られる。得られた被覆は、はく離及び/又は他の不利な効果の発生なしに、蒸気の形成を促進する。
【0019】
本発明による被覆の付加的な効果は、広範囲にわたる厚みの適切な被覆が得られるということである。本発明の被覆組成物の好ましいレオロジー、特にその比較的低い粘性のため、むしろ薄い被覆が容易に適用できる。よって、被覆層厚さは、使用される蒸気プロモータ物質の特定タイプに依存して、調整できる。厚い無孔被覆層は、高温までライデンフロースト効果を防止するだろう。しかしながら、層があまりに厚い場合は、層を通る熱伝導が、あまりに多く蒸発率を制限する。特に、低い温度及び高い添加率では、水が、蒸気生成デバイスから漏れる。被覆層があまりに薄い場合は、低温での蒸発率が高くなる。しかしながら、この場合、蒸気生成デバイスは、よりライデンフロースト効果を起こしやすく、表面に触れている水がはねて、高温で蒸気生成デバイスの吐出に至る。多孔質被覆層のため、低温(より良い拡がりのため)及び高温両方での高い蒸発率が達成できる。層厚は、被覆物質の機械的特性によりさらに制限されてもよい。被覆層が特定の臨界厚みを超える場合、はく離が発生する。一般的に言えば、好ましい被覆層厚は、1から100ミクロンの間、より好ましくは、20から80ミクロンの間、最も好ましくは30から60ミクロンの間で変化する。
【0020】
被覆とアルミニウム基板との間の接着を改善するために、アルミニウムは、有機溶剤及び/又はサンドブラストのような機械的手段ですすぐことによりきれいにできる。アルミニウム表面の濡れはまた、界面活性剤を被覆混合物に加えることにより改善できる。
【0021】
混合物の硬化は、高い温度で実行され、特定の硬化温度が被覆の組成物に依存している。硬化されていない被覆が、オーブン、又は赤外線、超音波等のような他の加熱源での加熱による硬化温度までもたらされる。しかしながら、硬化の好適な方法は、蒸気室表面自体を暖めるステップを有する。このようにして、被覆は内部からその外面まで硬化され、作成された被覆の特性に有益な効果を持つ。被覆の内面はアルミニウム基板に最も近い面であり、外面がアルミニウム基板から最も離れた面である。被覆組成物のあまりに速い乾燥/硬化は、硬化被膜の沸騰跡となる。従って、被覆組成物の付与の前に底板を予熱することが好まれる。
【0022】
本発明は、限定されることなく、添付された図及び以下の例によってより詳細に説明されるだろう。
【0023】
図1に示されるスチームアイロンは、下側3上のステンレス鋼の薄い層を具備するアルミニウム底板2により底部側で閉じられるハウジング1から成る。底板は、内側に直立リブ4を具備し、当該直立リブ4上にアルミニウムプレート5は、蒸気室6が底板2の内部とプレート5との間に形成されるように備えられる。蒸気室6は、弾性シリコン・ゴム7により封止される。スチームアイロンは、水タンク8を更に有する。ポンピング機構9によって、タンク8からの水は、アイロンをかけられる衣服に直接噴霧できる。ポンピング機構10によって、水は蒸気室6にタンク8からポンプで汲み出され、よって蒸気出力を増大させる。この水は、プレート5の開口を通って蒸気室6の底部に行く。蒸気室6の底部は、親水性蒸気室被覆11を具備する。親水性被覆11は、以下の実施例で説明されるように、製造され供給される。
【0024】
すべての例示的において、水性懸濁液は、単純混合により、示された成分でできた。このように得られた懸濁液は、その後蒸気室6の底部に付与され、その後厚くされた。このようにして、親水性蒸気室被覆11(図1)が得られる。水ともはや反応しないような安定で不溶性合成物が形成されるまで、酸性HPO2―イオンが金属及び酸化物と反応するので、蒸気室6のアルミニウム底部への付着が強化される。モノフォニックのアルミニウムリン酸塩(MAP)において、AlとPとの比は、1:3である。市販のMAPは、存在するリン酸の量において、よって、AlとPとの比において異なる。例において、シグマ―オールドリッチからの市販のMAPは、AlfaAesar(登録商標)からの工業銘柄のように使われた。
【0025】
例I−ホウ素の量の影響
実験のこのセットにおいて、MAPの蒸気に対する抵抗及び固有の不溶性のホウ素の量の影響が分析された。表1に示されるように、様々な量のホウ酸が、MAPに溶けた。ホウ酸含有量の増加と共に、付加的な水の増量が、MAPにホウ酸を溶かすために必要だった。ホウ素の比較的低い量ですでに、本発明の利点が、観察された。アルミニウム底板に付与され220℃で硬化されたとき、純粋なMAPは、被覆層の劣化を示した。対照的に、ホウ素変更されたMAPの分解又は溶解は、すべてのホウ素含有量に対して観察されるわけではなかった。

【0026】
例II−アルカリの量の影響
実験のこのセットにおいて、被覆の可溶性のアルカリの量の影響が分析された。MAP内のホウ酸の可溶性が制限されるにつれて、添加されたアルカリはホウ酸を事前に溶かして、結果として生じる溶液をMAPに加えるために用いられ、よって、ホウ酸を溶かす付加的な水の量が低くなり、調製時間が短縮される。実験において、2グラムのホウ酸が、8グラムの水の特定の量のアルカリ水酸化物(表2及び3に示されるように)と混合された。ホウ酸が溶けた。いくつかの場合において、結果として生じるホウ酸塩が、再び沈殿した。結果として生じる溶液又は泥漿は、20グラムのMAPに加えられた。いくらかのゲル粒子が生ずるが、撹拌する間に、これらは再び溶けることが観察された。より高い量のアルカリで、ゲルが形成された。被覆溶液は、スチームアイロンの蒸気室に付与され、220℃で硬化された。被覆の溶解は、水をしたたらせて220℃でテストされて、視覚的に検査された。
【0027】
LiOH(表2及び表3)の場合、添加できる明確な範囲が観察された。これらの実験は、8グラムの水に2グラムのホウ酸及び0.4グラムのLiOH.HOの溶液と20グラムのMAPを混合することにより行われた。結果として生じる混合物は、わずかに曇っていて、低い粘性であった。蒸気室への付与及び220℃での後続の乾燥は、良好な蒸気処理になった。0.4グラムより下で、ホウ酸は、水に溶解しなかった。1グラムを上回って、ホウ酸塩が加えられるときに、MAPはゲル化し始めた。MAPがpHの変化に影響されることは知られている。一般に、ベースをMAPに加えることは、MAPの沈殿となるだろう。付加できるアルカリの量は、MAPにある遊離リン酸の量に依存している。この場合、MAPの使用される技術的な等級が、おそらくリン酸のより大きい量の存在のため、LiOHのより高い量をとれることが観察された。一般に、ホウ酸を事前に溶かすために、できるだけアルカリを使用しないことが好ましい。


【0028】
LiOHの代わりにNaOHを加えるとき(表4)、範囲がより制限されたにもかかわらず、同様の結果が見出された。これらの実験において、2グラムのBOHが、0.4グラムのNaOHを持つ8グラムの水に溶かされた。この溶液は、20グラムのMAP(50%)に入れてかき混ぜられた。結果として生じる混合物(Al:P:B:Na=1:3:1:0.31)は、蒸気室に付与されて、底板の直接の加熱により、220℃で乾燥された。はく離又は被覆劣化なしの良好な蒸気処理が観察された。


【0029】
水酸化カリウムが溶液(表6及び7)に加えられる場合、ゲル化に対する感度があまりに高く、使用可能な溶液を得ることができなかった。等モル濃度の量のKOHで、ホウ酸塩は沈殿する。沈殿したホウ酸塩はMAPに加えられ、いくらかのゼリー粒子を形成し、再びゆっくり溶けた。結果として生じる層の強さは、リチウム変更されたアルミニウム・ホウ素を含有するリン酸塩の強さより小さかった。1グラムのKOHより下で、ホウ酸は、完全には溶けなかった。それより上では、MAPは、ホウ酸塩の追加に応じて、ゲル化を示した。


【0030】
本発明によると、付加できるホウ酸の量は、1:1のAl対Bの比に限定されない。より大きい量のホウ酸の追加は、可能であるが、実用的な態様で溶けたホウ酸を得るために、より大きい量のアルカリの必要性につながる。
【0031】
例III−充填材の影響
機械的強度の更なる増加は、例えば二酸化ケイ素又はアルミナで、ホウ素を含有するリン酸塩混合物を充填することにより達成できる。また、他の充填材も、被覆産業の通常の慣行に従って使用できる。充填材の追加は、適用される被覆層の蒸気処理反応の改善のためにも、有益である。これらの実験において、コロイド状二酸化ケイ素が用いられた。これらは、例えば商品名Ludox又はBindzilで市販されている。互換性の理由のために、二酸化ケイ素が正に荷電されていることが好ましい。例は、アルミニウム原子で修正された面を持つ二酸化ケイ素、Ludox―Clである。例えば負に荷電した二酸化ケイ素であるLudoxAS40の追加は、概して有益でない。
【0032】
例において、20グラムのMAPは、8グラムの水で、2グラムのホウ酸の溶液及び0.4グラムのLiOH.HOと混合された。結果として生じる混合物は、わずかに曇っていて、低い粘性であった。かき混ぜながら、4グラムのLudox―Clがゆっくり加えられ、よって、いくぶん粘性を増大させた。蒸気室への付与及び220℃の後続の乾燥は、良好な蒸気処理特性を持つ被覆となり、機械的強度を改善した。
【0033】
比較例において、4グラムのLudox―CLが、20グラムのMAPに加えられた。半透明の溶液が、蒸気室に加えられ、その後底板の直接の加熱により硬化された。被覆の保全性は、蒸気処理パフォーマンスのように低いことがわかった。
【0034】
デグッサからのアルミナAlu―C又はSyloidC809(グレイス)のようにより粗い二酸化ケイ素もまた、有効に使用できる。例において、20グラムのMAPは、8グラムの水で、2グラムのホウ酸の溶液及び0.4グラムのLiOH.HOと混合された。結果として生じる混合物は、わずかに曇っていて、低い粘性であった。15グラムの水に2.8グラムのSyloidC809の散布の追加は、半透明の溶液になる。蒸気室への付与及び220℃での後続の乾燥は、良好な蒸気処理特性を持つ被覆になり、機械的強度を改善した。
【0035】
比較例において、2.8グラムのSyloidC809(グレイスからの簡単に分散可能な二酸化ケイ素)が、15グラムの水に分散された。分散は、水内のMAP50%20グラムの溶液に加えられた。低粘性物質が、蒸気室に付与され、底板の直接加熱により硬化された。当該物質は、蒸気処理の間にはく離を示した。
【0036】
本発明の他の例において、20グラムのMAPの量は、2グラムのホウ酸の溶液及び8グラムの水の0.4グラムのLiOH.HOと混合された。結果として生じる混合物は、わずかに曇っていて、比較的低い粘性を持った。かき混ぜながら、この混合物に9.7グラムのAerodispW630(デグッサからの水のアルミナ分散)がゆっくり加えられた。蒸気室への被覆組成物の付与及び220℃での後続の乾燥は、良好な蒸気処理挙動及び良い機械的強度を呈する被覆に結果としてなった。
【0037】
ハイドロ溶解するシランの追加がまた、機械的強度を増大するために使用できる。例えばテトラ・エトキシ・シラン(TEOS)は、酸性の条件下で水と加水分解でき、形式的にSi(OH)を形成する。小さな量のアルミニウム・ホウ素を含有するリン酸塩の追加は、機械的強度を増大させる。より大きい量は、被覆物質のゲル化を引き起こす。
【0038】
例において、20グラムのMAPは、2グラムのホウ酸の溶液及び8グラムの水の0.4グラムのNaOHと混合された。1.6グラムのTEOS、1.8グラムのアルコール、0.82グラムのHO及び0.014グラムのマレイン酸が混合されて、完全な加水分解のため30分間放置された。加水分解された混合物は、ホウ素を含有するリン酸塩にかき混ぜられ、沈殿(相対的な量Al:P:B:Na:Si=1:3:1:0.31:0.25)を引き起こした。加水分解されたTEOSの量の半分だけを加えることは、溶液にいくらかの混濁を与えた。表8は、特性に関してTEOS(Si)の量の影響を示す。

【0039】
本発明による被覆組成物はまた、ホースにより鉄に接続された別個の蒸気室を持つシステム・アイロンのために使用できる。本発明は、親水性被覆を具備する蒸気室を有する蒸気生成デバイスに関する。親水性被覆は、酸性リン酸塩合成物とホウ素、好ましくは金属元素を持つホウ素の塩とを有する。被覆は、蒸気処理を促進し、はく離に耐性がある。本発明は、蒸気生成デバイスの蒸気室内の親水性被覆を生じる方法と、蒸気生成デバイスを有するアイロンとにも関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性リン酸塩合成物を有する親水性被覆を具備する蒸気室を有し、前記被覆がホウ素を有する、蒸気生成デバイス。
【請求項2】
前記被覆が金属元素を持つホウ素の塩を有する、請求項1に記載の蒸気生成デバイス。
【請求項3】
前記金属元素がアルカリ金属元素である、請求項2に記載の蒸気生成デバイス。
【請求項4】
前記アルカリ金属元素がリチウム及び/又はナトリウムである、請求項3に記載の蒸気生成デバイス。
【請求項5】
前記親水性被覆が、アルミニウムリン酸塩合成物を有する、請求項1乃至4の何れか一項に記載の蒸気生成デバイス。
【請求項6】
前記アルミニウムリン酸塩合成物が、Al(HPOである、請求項5に記載の蒸気生成デバイス。
【請求項7】
蒸気プロモータ被覆の金属元素を持つホウ素の塩の量が、好ましくは乾燥被覆の組成物全体の1から40重量%の間にある、請求項1乃至6の何れか一項に記載の蒸気生成デバイス。
【請求項8】
前記親水性被覆は、二酸化ケイ素粒子を有する、請求項1乃至7の何れか一項に記載の蒸気生成デバイス。
【請求項9】
前記親水性被覆は、アルミナ粒子を有する、請求項1乃至8の何れか一項に記載の蒸気生成デバイス。
【請求項10】
蒸気生成デバイスの蒸気室内に親水性被覆を作る方法であって、酸性リン酸塩合成物と(金属元素を持つ)ホウ素(の塩)との混合物を調製するステップと、前記混合物を前記蒸気室に導入するステップと、親水性被覆を形成するために昇温で前記混合物を硬化するステップとを有する、方法。
【請求項11】
前記混合物が前記蒸気室の面を加熱することにより前記昇温となる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の蒸気生成デバイスを有するスチームアイロン。

【図1】
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【公表番号】特表2011−509696(P2011−509696A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527586(P2010−527586)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際出願番号】PCT/IB2008/054019
【国際公開番号】WO2009/044358
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】