説明

親油性材料又は親水性材料のナノ分散方法及びナノ分散液

【課題】本発明は、親油性材料又は親水性材料を親水性溶媒又は親油性溶媒に粒径が100nm以下のナノサイズで分散する方法を提供することを目的とし、さらには界面活性剤等の分散剤を用いずに親油性材料又は親水性材料を媒体中に長時間安定的に分散させておくことが可能なナノ分散方法及びこれにより得られるナノ分散液を提供する。
【解決手段】
親油性材料又は親水性材料を分散装置に送液することにより親油性材料又は親水性材料を連続的に、親水媒体中又は親油性媒体中にナノ分散処理する工程を有する親油性材料又は親水性材料のナノ分散方法であって、前記親油性材料又は親水性材料をピンチコックされたキャピラリー流路に通液する工程を有することを特徴とする親油性材料又は親水性材料のナノ分散方法及びナノ分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親油性材料又は親水性材料をナノサイズに分散させ安定に存在させることが可能な親油性材料又は親水性材料のナノ分散方法に関し、さらには界面活性剤等の分散剤を用いずに親油性材料又は親水性材料を媒体中に長時間安定的に分散させておくことが可能なナノ分散方法に関する。また、その方法により得られるナノ分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
粒径が1〜100nm程度であるナノ粒子は、粒径が数百nm以上の粒子に比べて活性度及び反応性が飛躍的に向上し、電気的、磁気的、光学的、機械的特性が大きく変化するため、印刷材料、電子材料、化粧品材料、食品材料、医薬品材料等の分野において大きく期待されている。しかしながら、一般的に、微粒子は粒径が小さくなるに従って粒子が凝集しやすくなるため、ナノ粒子が微分散したナノ粒子分散液を製造することは困難であった。凝集した粒子を微粒化し、分散させる方法としては、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、アトライター等のメディアタイプの分散装置を用いる方法が挙げられる。しかしながら、メディアタイプの分散装置は、メディアと分散液の分離やメディアの洗浄といった煩雑な作業を必要としたり、メディアの摩滅物が異物として混入したりする等の問題があった。
【0003】
特許文献1、2には、メディアタイプの分散装置を用いない分散方法として、高圧ホモジナイザーにより、粒子分散液を溝幅1mm、深さ0.5mm程度の流路に7MPa程度の高圧で送液することにより、液体同士を衝突させたり、流体の剪断力を利用したりして粒子を分散させる方法が開示されている。しかしながら、特許文献1、2で開示されている分散方法では、数百nmまでの比較的大きなサイズの粒子の分散は可能だが、粒径が100nm以下の粒子に対しては充分な分散効果が得られないという問題があった。
【0004】
さらに近年では、環境にやさしい水媒体に、親油性ポリマー、粒径が1〜100nm程度である疎水性に表面処理無機ナノ粒子、グラフェンやカーボンナノチューブ等を分散させようとしても、これらは疎水性溶媒には分散するが、水媒体には凝集してしまい、加工性が悪化する問題点があった。そしてこれらを水媒体に分散するには、一般的には、界面活性剤等をつかうことにより、
安定な分散体にすることができる。しかし、この場合においても、残存する界面活性剤が最終のコンポジット組成物の耐水性や、耐熱性に悪影響をするという問題があった。このような技術としてマイクロノズルによって親油性媒体と親水性媒体をソープフリーで分散するものであるが、分散安定効果が低くて、短時間で分離するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−29776号公報
【特許文献2】特開2003−10663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、親油性材料又は親水性材料を親水性溶媒又は親油性溶媒に粒径が100nm以下のナノサイズで分散する方法を提供することを目的とし、さらには界面活性剤等の分散剤を用いずに親油性材料又は親水性材料を媒体中に長時間安定的に分散させておくことが可能なナノ分散方法を目的とする。
また、この方法によりナノ分散液を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、親油性材料又は親水性材料を分散装置に送液することにより親油性材料又は親水性材料を連続的に親水媒体中又は親油性媒体中にナノ分散処理する工程を有する親油性材料又は親水性材料のナノ分散方法であって、前記親油性材料又は親水性材料をピンチコックされたキャピラリー流路に通液する工程を有することを特徴とする親油性材料又は親水性材料のナノ分散方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明は、親油性材料を親水性媒体中に、又は、親水性材料を親油性媒体中にナノサイズの粒子(以下、ナノ粒子とする場合がある)分散させる方法である。また、この際に界面活性剤等の分散剤を用いない方法である。
本発明者らは、上述の課題の問題が発生する理由を、微滴粒子同士の衝突によって、再付着が起こり、大粒径成分が生成することであることをつきとめ、油滴粒子を小さく分散し、さらにその微滴粒子同士が合着がない方法を鋭意検討したところ、前記親油性材料又は親水性材料をピンチコックされたキャピラリー流路に通液する工程を行うことにより、この問題が解決できることを見出した。
【0009】
本発明のナノ分散方法では、親油性材料又は親水性材料をマイクロ流路に通液する。これにより、上記親油性材料又は親水性材料をナノサイズに分散させることができる。また、ピンチコックされたキャピラリー流路を通液させることで、凝集した粒子からなる親油性材料又は親水性材料の解砕も進むことから、粒子径の揃ったナノ粒子を含むナノエマルジョンを得ることもできる。
本明細書においてピンチコックされたキャピラリー流路とは、キャピラリー流路の途中に狭小部を設け、大きな圧力勾配が生じるようにした流路であって、該流路に通液させることで充分なせん断力を試料に与えることができる流路を意味する。
【0010】
上記ピンチコックされたキャピラリー流路の最も狭い部分(即ち、ピンチコック部分)の幅は100nm未満であることが好ましい。上記ピンチコック部分の幅が100nm以上であると、充分なせん断応力がかからずに親油性材料又は親水性材料が充分に分散しないことがある。上記ピンチコック部分の幅の下限は特に限定されないが、実質的には2nm程度が下限である。
【0011】
上記ピンチコックされたキャピラリー流路の上記ピンチコック部分の前後に接続されるキャピラリー流路部分の幅は特に限定されないが、0.5mm未満であることが好ましい。上記ピンチコックされたキャピラリー流路の上記ピンチコック部分の前後に接続されるキャピラリー流路部分の幅が0.5mm以上であると、上記ピンチコック部分の手前で液に滞留部分ができ、親油性材料又は親水性材料が充分に分散しないことがある。
【0012】
上記分散液が通過する際のピンチコックされたキャピラリー流路の圧力の好ましい下限は、ゲージ圧力で1MPaである。ピンチコックされたキャピラリー流路のゲージ圧力が1MPa未満であると、充分なせん断力を試料に与えることができずに、親油性材料又は親水性材料が充分に分散しないことがある。上記ピンチコックされたキャピラリー流路のゲージ圧力のより好ましい下限は10MPa、好ましい上限は1000MPaである。
【0013】
上記ピンチコック部分は、圧力に応答して流路幅を0nmを超えて100nm未満の範囲で自動的に調整する機構(以下、ピンチコック幅自動調整装置ともいう)を有することが好ましい。上記ピンチコック幅自動調整装置を有することで、無機ナノ粒子による目詰まりを防止できる。
【0014】
上記ピンチコック幅自動調整装置は特に限定されず、図1に示すような外部から流路に力を加えることで流路幅を調整する装置、図2に示すような弁により流路幅を調整する装置等が挙げられる。弁座の構造としては、一般的なボール弁、ダイヤフラム弁、ニードル弁等、高圧バルブの当業者の公知の構造が利用できる。図2の(a)と(b)とでは、流れの向きが異なるが、いずれの装置もピンチコック幅自動調整装置として働く。上記ピンチコック幅自動調整装置のうち市販されているものとしては、例えば、AKICO社製「HPB−450」、TESCOM社製「26−1700シリーズ」等が挙げられる。
【0015】
本発明の親油性材料又は親水性材料のナノ分散方法によれば、親油性材料又は親水性材料を、親水媒体中又は親油性媒体中にナノサイズに分散安定化することができる。特に、親油性材料表を親水性溶媒に安定的に分散する場合その産業的利用価値が大きい。
一般に、従来のコロイド化学的合成法により合成された疎水性無機ナノ粒子のような親油材料は、水系媒体をはじめとする極性溶媒に安定して分散させることは難しいが、本発明の方法によれば、コロイド化学的合成法により合成された疎水性無機ナノ粒子を水系媒体に安定して分散できる。
【0016】
親油性材料又は親水性材料は、液体・固体いずれでも良い。液体としては一般的な溶媒、モノマー等、固体としては、微粒子、ナノ粒子、カーボン系材料等が挙げられる。
【0017】
ここで、親油性材料としては、特に限定されず、親油性ポリマー、疎水性表面無機ナノ粒子、親油性モノマー、その他疎水性化合物が挙げられる。
このような材料としては、例えば、アルキルアルコール、アルカン、シクロアルカン、エステル、エーテル、不飽和アルキル、芳香族化合物、微粒子しては、無機粒子、高分子微粒子、ハイブリッド微粒子、カーボン系のグラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレン等が挙げられる。
中でも、カーボン系のグラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレン等を分散するのに好ましく用いられる。
親油性ポリマーとしては、一般に疎水性溶媒とされる溶媒に溶解ポリマーであれば何であってもよい。言い換えると水やグリセリン、エチレングリコール等の親水性溶媒とは相溶しないものである。
これらの親油性材料は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、上記ナノ粒子は、2種以上の成分を含有してもよく、コアシェル構造を形成してもよい。
【0018】
また、親水性材料としては、特に限定されず、親水性ポリマー、親水性表面無機ナノ粒子、親水性モノマー、その他親水性化合物が挙げられる。
【0019】
親水媒体としては、特に限定されず、水、アルコール、グリセリン、エチレングリコール等が挙げられる。
【0020】
親油性材料又は親水性材料を本発明のナノ分散方法によって得られるナノ分散液であって、ナノ分散液の表面はナノ分散液を形成する材料からなることを特徴とするナノ分散液もまた、本発明の一つである。
ナノ分散液を形成する材料とは、上述親油性材料又は親水性材料そのものであり、すなわち、界面活性剤等の分散液を用いずに親油性材料又は親水性材料のみがナノ分散液として媒体中に安定的に存在することができる。
【0021】
また、このナノ分散液は、親油性材料が親水性媒体中にナノサイズで分散している溶液、又は、親水性材料が親油性媒体中にナノサイズで分散している溶液である。このときの親油性材料又は親水性材料はナノ粒子として安定的に分散媒に存在している。
このようなナノ粒子の径は特に限定されないが、好ましい下限は1nm、好ましい上限は100nmである。上記分散液の粒子径が100nmよりも大きいと、ナノ粒子が数時間で沈降するようになり、分散性に問題が生じる。上記ナノ粒子の粒子径のより好ましい下限は2nm、より好ましい上限は20nmである。
【0022】
上記分散媒が親水性溶媒の場合、金属酸化物等は表面電位により分散性が決まるため、等電点は重要な因子である。等電点より離れたpHでは、一旦分散したナノ粒子は長時間安定に分散し続ける。一方、疎水的なナノ粒子の場合、例えばアルブミン等が溶媒中に存在すればそのナノ粒子を被覆して分散処理後長時間安定に分散し続ける。
【0023】
上記粒子分散液は、産業上の利用目的によって分散剤を含有しても良い。上記粒子分散液が分散剤を含有することで、ナノ分散液のナノ粒子の分散性が更に向上する。
【0024】
上記分散剤は特に限定されず、例えば、コーティング作用を有する高分子化合物や粒子表面の電価が等電点から外れるようにする低分子化合物が挙げられる。
上記コーティング作用を有する高分子化合物は特に限定されず、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、デンプン、ゼラチン等が挙げられる。
上記粒子表面の電価が等電点から外れるようにする低分子化合物としては酸又は塩基が用いられる。
上記酸又は塩基は特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、塩酸、硫酸、炭酸等が挙げられる。
【0025】
上記分散剤の配合量は、粒子の大きさや表面状態により適宜決めることができる。
【0026】
更に、上記粒子分散液は、必要に応じて、バインダー、架橋剤、紫外線吸収剤、光安定剤、フリーラジカル捕捉剤、揮発成分除去剤、スリップ剤、重合阻害剤、光開始剤、消泡剤、乳化剤、レオロジー調節添加剤(増粘剤)、難燃剤等を含有してもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、親油性材料又は親水性材料を分散装置に送液することにより親油性材料又は親水性材料を連続的に、親水媒体中又は親油性媒体中にナノ分散処理する工程を有する親油性材料又は親水性材料のナノ分散方法であって、前記親油性材料又は親水性材料をピンチコックされたキャピラリー流路に通液する工程を有することを特徴とする親油性材料又は親水性材料のナノ分散することができる。また、ナノ分散液が表面はナノ分散液を形成する材料からなるナノ分散液を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】マイクロ流路幅自動調整装置の一例を模式的に示す図である。
【図2】マイクロ流路幅自動調整装置の一例を模式的に示す図である。
【図3】本発明のナノ粒子の分散方法にて用いる実験装置の一例を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0030】
(実施例1)
(1)ナノ粒子の作製
アルゴン気流下、トリ−n−オクチルホスフィンオキシド(TOPO)(関東化学社製)7.5gに、ステアリン酸(関東化学社製)2.9g、n−テトラデシルホスホン酸(AVOCADO社製)620mg、及び、酸化カドミニウム(和光純薬工業社製)250mgを加え、370℃に加熱混合した。これを270℃まで自然冷却させた後、予めトリブチルフォスフィン(関東化学社製)2.5mLにセレン(STREM CHEMICAL社製)200mgを溶解させた溶液を加え、減圧乾燥し、TOPOで被覆されたCdSe微粒子を得た。
次いで、得られたCdSe微粒子に、TOPO15gを加えて加熱し、引き続き270℃でトリオクチルホスフィン(シグマアルドリッチ社製)10mLにジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(東京化成社製)1.1gを溶解した溶液を加え、表面にTOPOが固定された、CdSeのナノ結晶をコアとし、ZnSをシェルとするナノ粒子(以下、TOPO固定量子ドットともいう)を得た。なお、この状態の量子ドットは、トルエンやテトラヒドロフラン(THF)等の有機溶媒に可溶である。
その後、作製したTOPO固定量子ドットをTHFに溶解させて85℃に加温し、そこにエタノールに溶解させたN−[(S)−3−メルカプト−2−メチルプロピオニル]−L−プロリン(シグマアルドリッチ社製)100mgを滴下させ、12時間程度還流させた。12時間還流後、NaOH水溶液を加え、2時間、90℃で加熱してTHFを蒸発させた。得られた未精製の量子ドットを、限外濾過(Millipore社製、「Microcon」)及びセファデックスカラム(Amersham Biosciences社製、「MicroSpin G−25Columns」)を用いて精製と濃縮とを行うことで、量子ドットの表面にN−[(S)−3−メルカプト−2−メチルプロピオニル]−L−プロリンが固定された親水性量子ドットを製造した。
この粒子の作製直後(凝集前)の粒径分布を、動的光散乱法による粒径測定装置(Malvern社製、「ZETASIZER Nano Series Nano−ZS」)を用いて測定した。その結果、作製直後の粒径の標準偏差σは1.8、平均粒径(中心となる粒度分布のピーク粒径)は8.7nm、全平均粒径は43.8nm、CV値は4.1%であった。なお、全平均粒径とは、中心となる粒度分布だけでなく全粒子の平均粒径を表し、上記CV値とは下記式(1)で表されるものである。
CV値(%)=(標準偏差σ/全平均粒径)×100 (1)
【0031】
(2)粒子分散液の調製
得られたナノ粒子の濃度が1g/Lになるように蒸留水で希釈した。この溶液を40℃で2日間保持して得られた、ナノ粒子が凝集した粒子分散液を分散処理用サンプルとした。
【0032】
(3)凝集したナノ粒子の分散処理
図3に示す実験装置において、マイクロ流路幅自動調整装置としてAKICO社製「HPB−450」を用いて分散処理を行った。
得られた分散処理用サンプルを粒子分散液用タンク1に、分散剤として400mg/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加剤溶液用タンク2に導入し、表1に示す条件で凝集したナノ粒子の分散処理を行い、ナノ粒子分散液を得た。
【0033】
(実施例2、3、比較例1)
凝集したナノ粒子の分散処理において、ナノ粒子分散液が通過する流路内の圧力を表1に示した値とした以外は、実施例1と同様にして凝集したナノ粒子の分散処理を行った。
【0034】
(比較例2)
実施例1と同様にして得られた分散処理用サンプル0.1mLに分散剤として400mg/Lの水酸化ナトリウム水溶液0.9mLを加えた。分散装置による分散処理は行わなかった。
【0035】
(比較例3)
実施例1と同様にして、ナノ粒子が凝集した粒子分散液を得た。分散剤や分散装置による分散処理は行わなかった。
【0036】
(実施例4、5)
(1)ナノ粒子の作製
実施例1と同様にしてTOPO固定量子ドットを得た。
その後、作製したTOPO固定量子ドットをクロロホルムに溶解させて82℃に加温し、そこにメタノールに溶解させた2−アミノエタンチオール(シグマアルドリッチ社製)53mgを滴下させ、1時間程度還流させた。1時間還流後、反応液を回収し遠心分離を行った。得られた沈殿物をクロロホルム洗浄したのち、再度遠心分離を行い、沈殿物を得た。この沈殿物をドラフト内で乾燥後、蒸留水に溶解させた。得られた未精製の量子ドットを、限外濾過(Millipore社製、「Microcon」)及びセファデックスカラム(Amersham Biosciences社製、「MicroSpin G−25Columns」)を用いて精製と濃縮とを行うことで、量子ドットの表面に2−アミノエタンチオールが固定された親水性量子ドットを製造した。
この粒子の作製直後(凝集前)の粒径分布を、動的光散乱法による粒径測定装置(Malvern社製、「ZETASIZER Nano Series Nano−ZS」)を用いて測定した。その結果、作製直後の粒径の標準偏差σは0、平均粒径(中心となる粒度分布のピーク粒径)は7.5nm、全平均粒径は29.6nm、CV値は0%であった。
【0037】
(2)粒子分散液の調製
得られたナノ粒子の濃度が1g/Lになるように蒸留水で希釈した。この溶液を25℃で90日間保持して得られた、ナノ粒子が凝集した粒子分散液を分散処理用サンプルとした。
【0038】
(3)凝集したナノ粒子の分散処理
図3に示す実験装置において、マイクロ流路幅自動調整装置としてAKICO社製「HPB−450」を用いて分散処理を行った。
得られた分散処理用サンプルを粒子分散液用タンク1に、分散剤として1.823mg/Lの塩酸水溶液又は蒸留水を添加剤溶液用タンク2に導入し、表1に示す条件で凝集したナノ粒子の分散処理を行い、ナノ粒子分散液を得た。
【0039】
(比較例4)
実施例4と同様にして、ナノ粒子が凝集した粒子分散液を得た。分散剤や分散装置による分散処理は行わなかった。
【0040】
<評価>
実施例1〜5及び比較例1〜4で得られた(ナノ)粒子分散液中の粒子の平均粒径、粒径の標準偏差σ、CV値、及び、ピーク粒径を、動的光散乱法による粒径測定装置(Malvern社製、「ZETASIZER Nano Series Nano−ZS」)を用いて測定した。結果を表1に示した。
【0041】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、親油性材料又は親水性材料を分散装置に送液することにより親油性材料又は親水性材料を連続的に、親水媒体中又は親油性媒体中にナノ分散処理する工程を有する親油性材料又は親水性材料のナノ分散方法であって、前記親油性材料又は親水性材料をピンチコックされたキャピラリー流路に通液する工程を有することを特徴とする親油性材料又は親水性材料のナノ分散方法及びこれによって得られるナノ分散液を提供することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 粒子分散液用タンク
2 添加剤溶液用タンク
3 ポンプ
4 圧力ゲージ
5 マイクロ流路幅自動調整装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親油性材料又は親水性材料を分散装置に送液することにより親油性材料又は親水性材料を連続的に、親水媒体中又は親油性媒体中にナノ分散処理する工程を有する親油性材料又は親水性材料のナノ分散方法であって、
前記親油性材料又は親水性材料をピンチコックされたキャピラリー流路に通液する工程を有する
ことを特徴とする親油性材料又は親水性材料のナノ分散方法。
【請求項2】
ピンチコックされたキャピラリー流路の最も狭い部分(ピンチコック部分)の幅が100nm未満であり、分散液が通過する際のピンチコックされたキャピラリー流路内のゲージ圧力を1MPa以上とすることを特徴とする請求項1記載の親油性材料又は親水性材料のナノ分散方法。
【請求項3】
ピンチコックされたキャピラリー流路のピンチコック部分は、圧力に応答して流路幅を、0nmを超えて100nm未満の範囲で自動的に調整する機構を有することを特徴とする請求項1又は2記載の親油性材料又は親水性材料のナノ分散方法。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の親油性材料又は親水性材料のナノ分散方法によって得られるナノ分散液であって、ナノ分散液の表面はナノ分散液を形成する材料からなることを特徴とするナノ分散液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−183321(P2011−183321A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52289(P2010−52289)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(502165942)
【Fターム(参考)】