説明

角度調整機構付き機器

【課題】構造が簡単で位置調整が容易であり、またテーブル載置用としても吊り下げ用としても使用することの可能な角度調整機構を備えた機器を提供する。
【解決手段】角度調整機構を備えた機器は、筐体の一部に設けた部分球面状凹部または凸部2からなる固定部材接続部と、該固定部材接続部に摺動自在に嵌合する凸面または凹面を有する受け部3を備えた固定部材4と、前記固定部材接続部と前記受け部とを貫通して保持する保持手段とからなる角度調整機構を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角度を自在に調整固定できるプロジェクタ、テレビ等の光学または電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタやテレビ、カメラ等の機器を、例えば机やテーブル上に置いて使用する場合、その位置や角度を調整する必要があり、その機構としては種々のタイプが提案されているが、ボールジョイントを用いたものが機構的に簡単であり数多く提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、開口部を有する包容室を設けた胴体部と、前記胴体部の包容室内に摺動可能に包容されて配置されている球体部及びこの球体部と一体に作られて前記開口から突出して設けられ、その先端側にモニタテレビが装着されるモニタテレビ装着部を設けてなる軸部を有し、前記包容室内に保持されている前記球体部を支点とした前記摺動を伴って前記モニタテレビ装着部と共に傾倒し前記モニタテレビの位置を調整するためのボールスタッドと、前記ボールスタッドの前記球体部を挟んで前記胴体部と対向配置されているベース材と、前記胴体部を挟んで前記ベース材とねじ結合されていて、ねじを締めると前記胴体部と前記ベース材とで前記球体部を挟んで保持している力を調整可能な保持力調整手段とを備えるとともに、前記球体部の外形を非球形曲面で形成したことを特徴とするモニタテレビ用スタンドが開示されている。この技術においては、ボールスタッドの両端にボールジョイントとモニタテレビが配置された構成となっているため、モニタテレビの重量による回転モーメントをすべてボールジョイントで支持しなければならない。従って、モニタテレビが重い場合にはボールジョイントに過大な負荷がかかり、角度固定が困難になるか或いはボールジョイントの耐久性に悪影響を与える恐れがある。
【0004】
また、特許文献2においては、テーブルなどの上に機器を置いて使用する場合の位置調整を目的とした位置調整機能を有するプロジェクタが開示されている。この技術においては、筐体の底面板に伸縮脚のジョイント固定部を有し、このジョイント固定部に収納保持されるボールジョイントと、このボールジョイントに端部が挿入可能とされると共に相互に開閉可能とされる第1脚及び第2脚と、この第1脚の先端に回動可能に設けられる平板状の第1支持板と、前記第2脚の先端に回動可能に設けられる平板状の第2支持板と、前記第1脚と第2脚とを閉じて前記第1支持板と第2支持板とを接合するときに前記第1支持板及び第2支持板を前記第1脚及び第2脚と直角に固定する脚部固定部とを備えた伸縮脚を有することを特徴とするプロジェクタが開示されている。このプロジェクタでは、2本の開脚可能な脚部を有し、この脚部が開脚することによりプロジェクタを安定的に保持する機構となっており、また、レバーによりボールジョイントを規制して位置を固定する構成となっている。この技術においては脚部を開脚させるため可動部を含んでおり、またレバーによりボールジョイントを規制するための機構も必要となるため、構造が複雑で製造コストがかかり、また耐久性にも問題が出る可能性がある。
【0005】
【特許文献1】特開2001−107943号公報
【特許文献2】特開2008−160595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述の問題点を解決するため、構造が簡単で位置調整が容易であり、またテーブル載置用としても吊り下げ用としても使用することの可能な角度調整機構を備えた機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明による角度調整機構を備えた機器は、筐体の一部に設けた部分球面状凹部または凸部からなる固定部材接続部と、該固定部材接続部に摺動自在に嵌合する凸面または凹面を有する受け部を備えた固定部材と、前記固定部材接続部と前記受け部とを貫通して保持する保持手段とからなる角度調整機構を備えたことを特徴とする。
【0008】
前記固定部材接続部または前記受け部上に切り欠き部を設けることが好適である。
【0009】
また、前記保持手段が螺合部材からなることが望ましく、スプリング等の弾性付勢部材であれば尚好ましい。
【0010】
前記固定部材が机等の平面上に載置するための複数接地部を有することが好適である。
【0011】
さらに、前記固定部材接続部及び/または前記保持手段の中央部に貫通中空部を設けることもできる。
【0012】
本発明による角度調整機構を設ける機器としては、電子機器または光学機器が特に好ましいが、これらに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0013】
本発明による角度調整機構を備えた機器では、機器本体と固定部材とが球面接触で接続されており、バネ等の付勢手段により接続圧力を規制しているので、その調整により機器の角度調節とその位置での保持を容易に行うことができる。また、構造が簡単であるので製造コストが安価であり、故障等の可能性も低い。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例】
【0014】
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。図1は本発明による機器固定装置の第1の実施例を示す全体正面図である。機器本体1と機器支持部材5とは、固定部材接続部2と固定部材4とを介して接続されており、機器支持部材5に対して自在に傾斜させて保持する(図の1’が傾斜時の機器本体位置)ことができる。機器支持部材5の裏側には、複数位置に接地部6を配置し、機器支持部材5の安定性向上及び滑り止め等を向上させることができる。
【0015】
図1に示した本発明の第1の実施例の角度調整機構要部(図1のA部)を図2に示す。機器本体1の底面には固定部材接続部として部分球面状凹部2が形成されており、その中央部に保持手段貫通用穴7が設けてある。一方、固定部材4はその上部に形成された凸面状受け部3において部分球面状凹部2に嵌合しており、その頂部近傍には切り欠き部11が形成されている。部分球面状凹部2及び凸面状受け部3については、押圧部材12及びバネ15を介してボルト13が挿通され、機器本体1内部においてナット14により保持されている。
【0016】
この実施例においては、機器本体1、ボルト13、バネ15、押圧部材12及びナット14は相対的位置が固定されており、バネ15の弾性力により固定部材4に対して摩擦摺動可能に構成されている。機器本体1を前後左右に傾けようとすると、部分球面状凹部2が凸面状受け部3に対して摺動し、切り欠き部11によりボルト13の軸が規制される範囲で角度を変化させることができる。ボルト13の締め具合を調節することにより、機器の固定と角度変更を両立させることが可能であり、また締め圧力を強くすることによって、機器の位置を完全に固定することもできる。
【0017】
図3は、本発明による機器の第2の実施例を示す断面図である。上記第1の実施例においては機器本体1に固定部材接続部として部分球面状凹部2を設けたが、この実施例においては部分球面状凸部2’を形成してある。これに従って、固定部材4側の受け部も凹面状凹部3’とした。この実施例においては、第1の実施例の押圧部材12の代わりに、ボルト13の途中に段部17を設け、この段部とバネ15、ナット14とにより機器本体1を固定している。動作としては、第1の実施例と同様である。
【0018】
図4には、本発明による機器の第3の実施例を示した。この場合は機器本体1は縦長であり、底部に実施例2と同じ部分球面状凸部2’を設けた。実施例2と異なるのは、部分球面状凸部2’の頂部を円筒状に延長した接続延長部8を形成して周囲にネジを刻み、ナット14と螺合することにより、ボルト15を使用してないことである。また、接続延長部8の内部には貫通中空部16を形成することにより、機器本体と外部とを連絡することができるので、電源ケーブル等の配線を中に通すことができる。
【0019】
以上、本発明の好適な実施例について説明してきたが、本発明はテーブル等の平面上に載置するタイプの機器だけでなく、機器支持部材5の形状を変更することにより、天井等から吊り下げるタイプにも応用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明によれば、機器本体と固定部材とが球面接触で接続されており、バネ等の付勢手段により接続圧力を規制しているので、その調整により機器の角度調節とその位置での保持を容易に行うことができる。また、構造が簡単であるので製造コストが安価であり、故障等の可能性も低い。従って、種々の機器の角度調整機構として大いに貢献できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による角度調整機構を備えた機器の第1の実施例を示す正面図である。
【図2】図1に示した第1の実施例の要部を示す断面図である。
【図3】本発明による角度調整機構を備えた機器の第2の実施例の要部を示す断面図である。
【図4】本発明による角度調整機構を備えた機器の第3の実施例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 機器本体
1’ 傾斜時の機器本体
2 部分球面状凹部
2’ 部分球面状凸部
3 凹面状受け部
3’ 凸面状受け部
4 固定部材
5 機器支持部材
6 接地部
7 貫通穴
8 接続延長部
11 切り欠き部
12 押圧部材
13 ボルト
14 ナット
15 バネ
16 貫通中空部
21 取り付け部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の一部に設けた部分球面状凹部または凸部からなる固定部材接続部と、該固定部材接続部に摺動自在に嵌合する凸面または凹面を有する受け部を備えた固定部材と、前記固定部材接続部と前記受け部とを貫通して保持する保持手段とからなる角度調整機構を備えたことを特徴とする機器。
【請求項2】
前記固定部材接続部または前記受け部上に切り欠き部を設けたことを特徴とする請求項1記載の角度調整機構付き機器。
【請求項3】
前記保持手段が螺合部材からなることを特徴とする請求項1または2記載の角度調整機構付き機器。
【請求項4】
前記保持手段において、スプリング等の弾性付勢部材を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の角度調整機構付き機器。
【請求項5】
前記固定部材が机等の平面上に載置するための複数接地部を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の角度調整機構付き機器。
【請求項6】
前記固定部材接続部及び/または前記保持手段の中央部に貫通中空部を設けたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の角度調整機構付き機器。
【請求項7】
前記機器が電子機器または光学機器であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の角度調整機構付き機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−117027(P2010−117027A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313728(P2008−313728)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(505401849)株式会社世界最速試作センター (18)
【Fターム(参考)】