説明

角形撹拌槽

【課題】簡単な構造で、コーナー部等に固体物やスラリー等の停滞部が生じない角形撹拌槽を提供する。
【解決手段】前後の内側面1aと左右の内側面1bと底面1cを有する角形の撹拌槽1において、隣り合う内側面1a、1bの交わる縦コーナー線1dの所定の高さの個所からこれら隣り合う内側面1a、1bにわたって前記底面1cに至る下方に傾斜するコーナー傾斜面2を設け、前記前後の内側面1a及び前記左右の内側面1bの下方部から前記底面1cに至る側方傾斜面3、4を設け、これら側方傾斜面3、4を端部において前記コーナー傾斜面2に接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角形撹拌槽で、特にスラリー若しくは固―液の撹拌においても流動不良個所を生じない角形撹拌槽に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の角形撹拌槽として、例えば、図14及び図15の如く、長方形の撹拌槽aにおいて長手方向の両内側面bの下方部から底面cに至る傾斜面dを設け、該撹拌槽aの中心部の下方の位置に撹拌翼(図示せず)を設けた撹拌槽が知られており、又、図16の如く正方形の底板eと該底板eの周縁から上方に立ち上がる側板fとからなり、該底板eにはその中央部から該側板fに向けて放射状に延在するように上方に突出する第1突部gを設け、又更に各側板fには内方に突出し軸方向に延びる第2突部hを設け、更に、前記底板eの近傍位置に、撹拌槽i内の流体等を前記底板eに向けて送出する軸流羽根jを設け、該軸流羽根jの回転により、底板eに向けて送り出される流体等は、前記第1突部gにより側板f方向への放射方向の流れに変換し、更に、側板fにおいても第2突部hにより周方向の流れを軸方向の上方への流れに変換し、混合するようにした撹拌槽iが知られている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−154250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの従来の角形撹拌槽において、前者の撹拌槽aによれば、前記撹拌翼を回転して該撹拌槽a内の液等を撹拌したときに、該撹拌槽aのコーナー部に又撹拌槽aが左右に長く撹拌翼を複数台した場合にこれら撹拌翼の中間位置の内側面の近傍に固体物やスラリー等の停滞部が生じる問題点があり、又、後者の撹拌槽iによれば、底板eに第1突部gを設けると共に側板fに第2突部hを設けており、構造的に複雑になると共に、長方形の撹拌槽の場合にコーナー部に固体物やスラリー等の停滞部が生ずる問題点があった。
【0005】
本発明はこれらの問題点を解消し、簡単な構造で撹拌槽のコーナー部等における固体物やスラリー等の停滞部を生じない角形撹拌槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこの目的を達成すべく、第1発明は、前後の内側面と左右の内側面と底面を有する角形の撹拌槽において、隣り合う内側面の交わるコーナー線の所定の高さの個所からこれら隣り合う内側面にわたって前記底面に至る下方に傾斜するコーナー傾斜面を設けたことを特徴としており、又、第2発明は、前後の内側面と左右の内側面と底面を有する角形の撹拌槽において、前記前後の内側面を長い長内側面に形成すると共に前記左右の内側面を短い短内側面に形成して前記底面を長方形に形成し、該底面の中間部において前記長内側面にわたる突条を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、角形撹拌槽において、簡単な構造で、コーナー部に固体物やスラリー等の停滞部が生じなくなり、又、長方形の撹拌槽においては、底面の中間部で長内側面の近傍に固体物やスラリー等の停滞部が生じなくなる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1の撹拌槽の平面図である。
【図2】図1のI−I線截断面図である。
【図3】該撹拌槽のコーナー部の一部を截除した斜視図である。
【図4】実施例1の変形例の平面図である。
【図5】図5のII−II線截断面図である。
【図6】本発明の実施例2の撹拌槽の平面図である。
【図7】図6のIII−III截断面図である。
【図8】図6のIV−IV截断面図である。
【図9】突条の断面図である。
【図10】突条の変形例1の断面図である。
【図11】突条の変形例2の断面図である。
【図12】突条の変形例3の断面図である。
【図13】本発明の実施例3の撹拌槽の平面図である。
【図14】従来例の撹拌槽の平面図である。
【図15】図14のV−V截断面図である。
【図16】他の従来例の撹拌槽の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0010】
本発明の実施例1を図1乃至図3により説明する。
【0011】
図1は本発明の実施例1の撹拌槽の平面図、図2は図1のI−I線截断面図、図3は該撹拌槽のコーナー部の一部を截除した斜視図である。
【0012】
1は長方体形状の撹拌槽、1a、1aは該撹拌槽1の前後の内側面、1b、1bは該撹拌槽1の左右の内側面、1cは該撹拌槽1の底面を示し、前記前後の内側面1a、1aは水平方向に長い長内側面に形成されていると共に、前記左右の内側面1b、1bは水平方向に短い短内側面に形成され、又前記底面1cは長方形状に形成されている。
【0013】
そして図3に示す如く前記長内側面1aと前記短内側面1bとが交わる四隅のコーナー線1dにおける前記底面1cから所定の距離L1の第1点Aと、前記長内側面1aと前記底面1cとが交わる第1横角線1e及び前記短内側面1bと前記底面1cとが交わる第2角線1fにおける前記コーナー線1dからのそれぞれ所定の距離L2の第2点Bと第3点Cとを連結して前記撹拌槽1の内方に向って下方に傾斜するコーナー傾斜面2を設けた。
【0014】
更に、前記長内側面1aの下方部において、前記第1横角線1eから所定の距離L3の該長内側面1a上の第1平行線1gと該第1横角線1eから所定の距離L4の前記底面1c上の第2平行線1h間を連結して前記撹拌槽1の内方に向って下方に傾斜する長い側方傾斜面3を設けると共に、前記短内側面1bの下方部において、前記第2横角線1fから所定の距離L3の該短内側面1b上の第4平行線1kと該第2横角線1fから所定の距離L4の前記底面1c上の第4平行線1m間を連結して前記撹拌槽1の内方に向って下方に傾斜する短い側方傾斜面4を設け、前記長い側方傾斜面3と短い側方傾斜面4はそれぞれの端部において前記コーナー傾斜面2に接続して連続面に形成されている。そして、L3はL1より短いと共にL4もL2より短いので、前記側方傾斜面3、4は前記コーナー傾斜面2に部分的に交差接続する。
【0015】
次に本実施例の撹拌槽1の作用と効果を説明する。
【0016】
図1に示す如く撹拌槽1の中央部において回転軸の下端部に固定した撹拌翼5をセットし、該撹拌槽1内の液等中で該撹拌翼5を回転すると、液等は該撹拌槽1内で回転を付与されながら外方に押し出され、内側面1a、1bに沿った下方部の流れは、側方傾斜面3、4上を沿って移動し、コーナー傾斜面2によって図2の矢印の如く上方向の流れとなる。
【0017】
従って撹拌槽1内の四隅において流動不良による固体物やスラリー等の停滞が生じない。
【0018】
本実施例の変形例として、図4及び図5に示す如く、角型撹拌槽11の四隅のコーナー部において長内側面1aと短内側面1bとが直接交わらずに、これら長内側面1aと短内側面1bとが帯状で斜方向の補助側面1nを介在して接続され、更に該補助側面1nの下方部から底面1cに至る補助側方傾斜面6を設け該補助側方傾斜面6を介在して両側方傾斜面3、4とが連設されている。
【0019】
かくて、撹拌翼(図示せず)の回転に伴う内側面1a、1bに沿った下方部の流れは補助側方傾斜面6によって上方向の流れとなり、撹拌槽11の四隅において、固体物やスラリー等の流動不良による停滞が生じない。
【実施例2】
【0020】
本発明の実施例2を図6乃至図9により説明する。
【0021】
図6は本実施例2の角形撹拌槽の平面図、図7は図6のIII−III線截断面図、図8は図6のIV−IV線截断面図、図9は突条の断面図である。
【0022】
21は長方体形状の撹拌槽を示し、該撹拌槽21においてもその長内側面1aと短内側面1bの下方部から底面1cに至る長い側方傾斜面3と短い側方傾斜面4をそれぞれ設けた。
【0023】
そして長方形状の床面1cにおいて両短内側面1aからの等距離の中間位置に両長側面1b間にわたって断面が三角形状である突条7を設けた。
【0024】
5aは該突条7により区切られた左右の床面1ca、1cbの中心部の上方に垂下設置された撹拌翼を示す。
【0025】
次に本実施例の撹拌槽21の作用と効果について説明する。
【0026】
左右の床面1ca、1cbにおいて、撹拌翼5aを同時に回転すると、撹拌槽21内の液等は、底面1c上を外方に流れて図7の矢印で示す如く側方傾斜面3、4により上方への流れとなると共に、底面1cの中間部で突条7により上方への流れとなり、かくて、長方形状の底面1cにおいてその左右に撹拌翼5aが設置されていても該底面1cの中間部に固体物やスラリー等の停滞部が生ずることがない。
【0027】
尚、前記突条7について、図10の如く三角形状断面の頂部に板状の突起7aを設けた突条7Aにしてもよく、又は図11の如く三角形状断面でその両傾斜辺が中間で勾配が相違する突条7Bにしてもよく、又は図12の如く、三角形状断面でその両傾斜辺が湾曲している突条7Cでもよい。
【実施例3】
【0028】
本発明の実施例3を図13により説明する。
【0029】
図13は本発明の実施例3の撹拌槽の平面図である。
【0030】
本実施例の撹拌槽31は左右方向に長い長方体状に形成され、長方形状の底面1cにおいてその長手方向に等間隔に4区分し、各区分の境界線上で両長内側面1b間にわたって突条7を3本設けた。そして各区分の床面の中心部の上方に撹拌翼5aを設けた。
【0031】
かくて各区分の撹拌翼5aが同時に回転しても、区分間の境界線上に突条7が設けられているので、各区分において撹拌翼5aの回転による固体物やスラリー等の境界線側に向う流れは突条7により上方に向う流れとなり、かくて境界線の個所に固体物やスラリー等の停滞部が生ずることがない。
【0032】
上記実施例では、3本の突条7を設けた例を示したが、撹拌槽の長手方向の長さに応じて突条を等間隔に2本或いは4本以上設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の撹拌槽は、水処理、化学工業、食品工業等におけるスラリー或いは固液等の撹拌に利用される。
【符号の説明】
【0034】
1 撹拌槽
1a 内側面
1b 内側面
1c 底面
1d 縦コーナー線
2 コーナー傾斜面
3 側方傾斜面
4 側方傾斜面
7 突条
11 撹拌槽
21 撹拌槽
31 撹拌槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後の内側面と左右の内側面と底面を有する角形の撹拌槽において、隣り合う内側面の交わる縦コーナー線の所定の高さの個所からこれら隣り合う内側面にわたって前記底面に至る下方に傾斜するコーナー傾斜面を設けたことを特徴とする角形撹拌槽。
【請求項2】
前記前後の内側面の下方部及び又は前記左右の内側面の下方部から前記底面に至る側方傾斜面を設け、該側方傾斜面を端部において前記コーナー傾斜面に接続したことを特徴とする請求項1に記載の角形撹拌槽。
【請求項3】
前後の内側面と左右の内側面と底面を有する角形の撹拌槽において、前記前後の内側面を長い長内側面に形成すると共に前記左右の内側面を短い短内側面に形成して前記底面を長方形に形成し、該底面の中間部において前記長内側面にわたる突条を設けたことを特徴とする角形撹拌槽。
【請求項4】
前記突条は、前記底面に長手方向に等間隔に1又は複数設けたことを特徴とする請求項3に記載の角形撹拌槽。
【請求項5】
前記突条は、三角形の断面形状或いは三角形でその両傾斜辺が中間で勾配が相違する断面形状或いは三角形でその両傾斜辺が湾曲している断面形状に形成されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の角形撹拌槽。
【請求項6】
前記突条は、断面三角形に形成され、その頂点に板状の突起を突設したことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の角形撹拌槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−223728(P2012−223728A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95084(P2011−95084)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000171919)佐竹化学機械工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】