説明

角膜内皮細胞撮影装置

【課題】Z方向のアライメントが正しく行えていなくても、角膜の表面反射と角膜の内皮反射とを十分に分離することができ、鮮明な角膜内皮細胞像を得ることのできる角膜内皮細胞撮影装置を提供する。
【解決手段】被検眼Eの角膜Cに向けて斜めからスリット光を照射する角膜内皮細胞照明光学系20と、角膜Cの角膜内皮細胞からの反射光を受光して角膜内皮細胞を撮影する角膜内皮細胞撮影光学系30とを備え、この角膜内皮細胞撮影光学系30は角膜表面からの反射光を遮光するとともに角膜内皮細胞からの反射光を透過させるマスクを有する角膜内皮細胞撮影装置であって、前記マスクは、前記角膜表面からの反射光を遮光する遮光部分と、角膜内皮細胞の反射光を透過させる透過部分とに電気的な制御により分けられる液晶シャッター130である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、角膜内皮細胞を撮影するための角膜内皮細胞撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被検眼の角膜に向けて斜めからスリット光を照射するためのスリット光照明光学系と、角膜からの反射光を利用して角膜内皮細胞像を観察し且つ撮影を行うための観察撮影光学系とを有し、この観察撮影光学系の対物レンズに関して角膜内皮細胞位置と共役な位置に、角膜表面からの反射光を遮光しかつ角膜内皮細胞からの反射光を透過させるマスクを設けて、角膜内皮細胞の観察撮影を行う角膜内皮細胞撮影装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−94228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような角膜内皮細胞撮影装置にあっては、Z方向のアライメントが正しく行えていないと、角膜の表面反射と角膜の内皮反射とを十分に分離することができず、角膜内皮細胞の画像が白くボケたような状態となってしまう問題があった。
【0005】
この発明の目的は、Z方向のアライメントが正しく行えていなくても、角膜の表面反射と角膜の内皮反射とを十分に分離することができ、鮮明な角膜内皮細胞像を得ることのできる角膜内皮細胞撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、被検眼の角膜に向けて斜めからスリット光を照射するスリット光照射光学系と、前記角膜の角膜内皮細胞からの反射光を受光して角膜内皮細胞を撮影する角膜内皮細胞撮影光学系とを備え、この角膜内皮細胞撮影光学系は角膜表面からの反射光を遮光するとともに角膜内皮細胞からの反射光を透過させるマスクを有する角膜内皮細胞撮影装置であって、
前記マスクは、前記角膜表面からの反射光を遮光する遮光部分と、角膜内皮細胞の反射光を透過させる透過部分とに電気的な制御により分けられる電気マスク手段であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、Z方向のアライメントが正しく行えていなくても、角膜の表面反射と角膜内皮細胞の反射とを十分に分離することができ、鮮明な角膜内皮細胞像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明に係る角膜内皮細胞撮影装置の光学系を示した光学配置図である。
【図2】アライメント指標光束の反射状態を示した説明図である。
【図3】前眼部の表示状態を示した説明図である。
【図4】角膜におけるスリット光束の反射状態を示した説明図である。
【図5】角膜とラインセンサとの位置関係と、ラインセンサの受光量の強度分布を示した説明図である。
【図6】角膜内皮細胞撮影装置の制御系の構成を示したブロック図である。
【図7】角膜内皮細胞像とラインセンサーの受光量との関係を示す説明図である。
【図8】(A)はCCDの受光量の強度分布と液晶シャッターとCCDとの位置関係を示した説明図、(B)はアライメントがずれた場合のCCDの受光量の強度分布と液晶シャッターとCCDとの位置関係を示した説明図である。
【図9】CCDを示した平面図である。
【図10】モニタの表示画面に表示される角膜内皮像を示した説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明に係る角膜内皮細胞撮影装置の実施の形態である実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0010】
図1に示す角膜内皮細胞撮影装置100は、被検眼Eの前眼部を照明する前眼部照明光源1と、被検眼Eの前眼部を観察する前眼部観察光学系10と、被検眼Eの角膜内皮細胞S2(図4参照)を照明する角膜内皮細胞照明光学系(スリット光照射光学系)20と、角膜内皮細胞S2を撮影する角膜内皮細胞撮影光学系30とを備えている。
【0011】
前眼部観察光学系10には、X,Yアライメントを検出するためのアライメント指標を投影するアライメント指標投影光学系40と、X,Yアライメントを検出するアライメント検出光学系50とが設けられている。
【0012】
角膜内皮細胞撮影光学系30には、合焦位置検出光学系(Zアライメント検出光学系)60が設けられている。
[前眼部観察光学系]
前眼部観察光学系10は、ハーフミラー11と、対物レンズ12と、ハーフミラー13と、絞り14と、結像レンズ15と、遮光板16と、CCD(受光素子)17などとを有している。O1はその光軸である。
【0013】
アライメント指標投影光学系40は、ピンホール状のアライメント指標光源(点光源)41と、投影レンズ42とハーフミラー11とを有している。アライメント指標光源41は投影レンズ42の焦点位置に配置されている。アライメント指標光源41から射出されたアライメント指標光は投影レンズ42により平行光束とされ、この平行光束がハーフミラー11を介して被検眼Eの角膜S2(図4参照)に導かれる。
【0014】
アライメント検出光学系50は、位置検出手段としての2次元PSD(アライメント検出センサ:ポジションセンサ)51を有し、前眼部観察光学系10のハーフミラー13と対物レンズ12とハーフミラー11などを共用して構成される。
【0015】
アライメント検出センサ51は、 対物レンズ12に関して、図2に示すように角膜頂点Pと角膜曲率中心O3の略中間位置にアライメント指標光により形成された虚像Rと共役な位置に配置されている。アライメント指標光に基づく角膜反射光は、対物レンズ12に導かれる。対物レンズ12により集光された光束の一部は、ハーフミラー13によって反射され、アライメント検出センサ51上に結像される。このとき、アライメント検出センサ51上でのアライメント指標光の虚像Rの像R´(図示せず)による信号の検出位置によって、被検眼Eに対する装置本体の左右(X方向)と上下(Y方向)のズレ量が検出される。
【0016】
ここで、アライメント指標光の像R´による信号が、アライメント検出センサ51上の所定範囲内にある状態のとき、XYアライメント完了状態とする。
【0017】
前眼部照明光源1からの照明光は角膜Cにより反射され、ハーフミラー11を透過して対物レンズ12に導かれる。この対物レンズ12を透過した光束の一部は、ハーフミラー13を透過した後に結像レンズ15によりCCD17に結像される。CCD17により検出された信号はモニタ19(図6参照)に送られる。被検眼Eと角膜内皮細胞撮影装置100とのアライメントが概ね合っているとき、アライメント指標光の虚像Rによる像R´´もCCD17上に同時に形成されるので、図3に示すようにモニタ19の画面18に被検眼Eの前眼部像E´とアライメント指標光の虚像像R´´とが同時に表示される。
【0018】
図3において、符号Aは左右方向(X方向)と上下方向(Y方向)に対してのXYアライメントの許容範囲を示す円環状パターン像であり、モニタの画面の前眼部像E´と同時に表示される。その円環状パターン像を形成するための光学系については図示を省略する。
【0019】
検者は、虚像像R´´が円環状パターン像Aの範囲内に納まるように角膜内皮細胞像撮影装置100の装置本体を動かしてXYアライメントを行う。
【0020】
遮光板16は、角膜内皮細胞の観察・撮影時に前眼部観察光学系10の光路に挿入され、前眼部の観察時にその光路から離脱される。遮光板16の光路の挿入離脱は図示しないソレノイドなどで行われる。
[角膜内皮細胞照明光学系]
角膜内皮細胞照明光学系20は、観察用照明光学系120と撮影用照明光学系220とから構成され、観察用照明光学系120は観察用光源(赤外LED:照明光源)21と、スリット22と、ダイクロイックミラー23と、対物レンズ24などとを有する。O2はその光軸である。
【0021】
観察用光源21から射出された観察用光束は、スリット22を透過してダイクロイックミラー23により反射されて対物レンズ24に導かれる。対物レンズ24により集光されたスリット照明光である観察用光束は角膜Cを照明する。
【0022】
撮影用照明光学系220は、白色発光ダイオードからなる撮影用照明光源(照明光源)25と、集光鏡226と、集光レンズ26と、スリット27などとを有し、観察用照明光学系120のダイクロイックミラー23および対物レンズ24を共用して構成される。
【0023】
撮影用光源25から射出された照明光は集光レンズ26により集光される。その照明光は撮影光として用いられ、スリット27を透過してスリット照明光となり、このスリット照明光のうち可視波長域のスリット照明光がダイクロイックミラー23を透過し、可視波長域のスリット照明光が対物レンズ24に導かれる。対物レンズ24を透過したスリット照明光により角膜Cが照明される。
【0024】
ここで、角膜Cによる反射の様子を図4に示す。角膜Cからのスリット照明光による反射光束は、空気と角膜Cとの境界面であるS1、角膜内皮細胞S2、角膜実質S3からのそれぞれの反射光束R1、R2、R3に分類できる。角膜Cの表面で反射する反射光束R1の光量が最も多く、角膜内皮細胞S2で反射する反射光束R2の光量は反射光束R1の光量に較べて相対的に少なく、反射光束R3の光量は最も少ない。
[角膜内皮細胞撮影光学系]
角膜内皮細胞撮影光学系30は、対物レンズ31と、ハーフミラー32と、ミラー34と、リレーレンズ35と、液晶シャッター(電気マスク手段)130と、リレーレンズ132と、遮光板131と、ミラー36と、CCD17などとを有し、O3はこの光軸である。
【0025】
液晶シャッター130は、後述するラインセンサとCCD17と共役な位置に配置されている。
【0026】
遮光板131は、前眼部観察時に角膜内皮細胞撮影光学系30の光路に挿入され、角膜内皮細胞の観察・撮影時にその光路から離脱される。挿入離脱は図示しないソレノイドなどで行われる。
【0027】
角膜Cにより反射されたスリット照明光は、対物レンズ31に導かれる。対物レンズ31に導かれた反射光束R1、R2、R3の一部はハーフミラー32を透過し、ミラー34およびリレーレンズ35を介して液晶シャッター130に入射する。
【0028】
この液晶シャッター130は、角膜表面からの反射光の部分を遮光し、角膜内皮細胞の反射光の部分を透過するように駆動される。
【0029】
合焦位置検出光学系60は、対物レンズ31と、ハーフミラー32と、ラインセンサ61とを有している。ラインセンサ61は、角膜Cとほぼ共役位置に、且つ、図5に示すように光学的に角膜Cの厚み方向となる方向に沿って配置されている。
【0030】
ラインセンサ61上に達する角膜Cでのスリット光束の反射光束の強度分布は図5に示すようなものとなる。強度分布のピークUは角膜Cの表面での反射光束によるピークであり、ピークVは角膜内皮細胞S2での反射光束のピークである。
[制御系]
図6は角膜内皮細胞撮影装置100の制御系の構成を示すブロック図である。図6において、101はラインセンサ61の光量分布に基づいて角膜内皮細胞撮影光学系30が角膜内皮細胞S2に合焦しているかどうかを検出する合焦判断回路である。
【0031】
合焦判断回路101は、図7に示す反射光束の強度分布のピークVとラインセンサ61の中心番地Qとの離間距離に応じた合焦信号を出力し、ピークVと中心番地Qとが一致したとき合焦完了信号を出力する。
【0032】
角膜内皮細胞撮影装置100の装置本体を被検眼Eに対して離反接近させると、ピークVの番地が移動する。装置本体は、ピークVの番地Lが中心番地Qに一致したとき角膜内皮細胞に合焦されるように設定されている。すなわち、Zアライメントが完了したとき、角膜内皮細胞撮影光学系30つまり角膜内皮細胞撮影装置100は角膜内皮細胞S2に合焦される。
【0033】
102はX,Y方向のアライメントを判定するアライメント判定回路であり、このアライメント判定回路102は、アライメント検出センサ51上でのアライメント指標光の虚像R´(図示せず)による信号の検出位置に基づいて、被検眼Eの光軸と装置本体の光軸O1との左右(X方向)のズレ量と上下(Y方向)のズレ量とを判定する。
【0034】
103はCCD17上の画像に基づいて、その画像のうち角膜表面からの反射光によって形成された画像部分と角膜内皮細胞の反射光によって形成された画像部分とを判定する画像判定回路である。画像判定回路103は、判定した画像部分に基づいて液晶シャッター130を駆動させる。
【0035】
104は合焦判断回路101が出力する合焦信号やアライメント判定回路102が判定するX,Y方向のズレ量に基づいてX,Y,Zモータ201〜203を駆動させるドライバD1〜D3を制御する制御装置である。また、この制御装置104は、CCD17上の画像に基づいてモニタ19にその画像を表示させたり、図示しない操作部の操作に基づいて前眼部照明光源1,XYアライメント指標光源41,撮影用光源25,観察用光源21などの発光を制御する。
【0036】
X,Y,Zモータ201〜203は、角膜内皮細胞撮影装置100の装置本体をX,Y,Z方向へ移動させるモータである。
[動 作]
次に、上記のように構成される角膜内皮細胞撮影装置100の動作について説明する。
【0037】
先ず、前眼部照明光源1を発光させる。このとき、遮光板16は光路から退避され、遮光板131は光路に挿入される。
【0038】
前眼部照明光源1からの照明光は角膜Cにより反射され、ハーフミラー11,対物レンズ12,ハーフミラー13,絞り14および結像レンズ15を介してCCD17に達し結像される。そして、図3に示すようにモニタ19のモニタ画面18に前眼部像E′が表示される。
【0039】
次いで、アライメント指標投影光学系40のアライメント指標光源41は発光してアライメント指標光を射出する。このアライメント指標光は投影レンズ42により平行光束とされ、ハーフミラー11を介して被検眼Eの角膜Cに投影される。
【0040】
アライメント指標光に基づく角膜反射光は、対物レンズ12を通った後ハーフミラー13によって反射され、アライメント検出センサ51上にアライメント指標光による像R´(図示せず)が結像される。
【0041】
アライメント指標光の虚像Rによる像R´´もCCD17上に同時に形成されるので、図3に示すようにモニタ19の画面18に被検眼Eの前眼部像E´とアライメント指標光の虚像像R´´と円環状パターン像Aとが同時に表示される。検者は、虚像像R´´が円環状パターン像Aの範囲内に納まるように角膜内皮細胞像撮影装置100の装置本体(図示を略す)を動かして、XYアライメントを行う。
【0042】
オートアライメントモードの場合には、アライメント検出センサ51上に結像された像R′の位置から被検眼Eに対する装置本体に対するX,Y方向のズレ量をアライメント判定回路102が求め、このズレ量に応じて制御装置104はドライバD1,D2を制御して装置本体をX,Y方向へ移動させてXYアライメントを行う。
【0043】
XYアライメントが完了すると、観察用光源21から赤外光が発光されるとともに、遮光板16が光路に挿入され、遮光板131が光路から離脱される。
【0044】
観察用光源21から射出された観察用光束は、スリット22,ダイクロイックミラー23および対物レンズ24を介して図4に示すように角膜Cを赤外光のスリット照明光で照明する。
【0045】
角膜Cからのスリット照明光による反射光束は、図4に示すように角膜C表面の反射光束R1と角膜内皮細胞S2の反射光束R2と角膜実質S3の反射光束R3とを含む。
【0046】
角膜Cにより反射されたスリット照明光は対物レンズ31に導かれ、反射光束R1、R2、R3の一部はハーフミラー32で反射されてラインセンサ61に達する。
【0047】
合焦判断回路101は、ラインセンサ61の各受光素子の受光量に基づいて、図7に示す強度分布のピークVとラインセンサ61の中心番地Qとの離間距離に応じた合焦信号を出力する。
【0048】
制御装置104は、合焦信号に基づいてモニタ19に、図3に示すように、マーク15S,15P,15Maを表示する。マーク15Pとマーク15Maとの間の離間距離は、強度分布のピークVとラインセンサ61の中心番地Qとの離間距離に対応したものとなる。手動の場合、検者はモニタ19を見ながら、マーク15Pをマーク15Maに一致させるように装置本体を移動させる。
【0049】
オートアライメントモードの場合、制御装置104は、その合焦信号に基づいてドライバD3を制御してZモータ203を駆動させ、ピークVとラインセンサ61の中心番地Qとが一致するように装置本体を前後に移動させる。
【0050】
ピークVとラインセンサ61の中心番地Qとが一致したら、すなわち、合焦(Z方向アライメント)が完了したら制御装置104はZモータ203を停止させる。
【0051】
一方、ハーフミラー32を透過した反射光束R1、R2、R3は、ミラー34およびリレーレンズ35を介して液晶シャッター130に導かれる。このとき、液晶シャッター130の全面が光を透過するように制御装置104が液晶シャッター130を制御しておく。
【0052】
液晶シャッター130を透過した反射光は、リレーレンズ132を通りミラー36で反射してCCD17に達し、CCD17上に反射光束R1、R2、R3による光像が形成される。
【0053】
CCD17上に形成される光像の強度分布のグラフGは図8の(A)に示すものとなる。グラフGの横軸は角膜厚方向を示し、縦軸が光強度を示す。グラフGのピークG1が角膜Cの表面での反射光束によるピークであり、ピークG2が角膜内皮細胞S2での反射光束のピークである。
【0054】
画像判定回路103は、CCD17上に形成される光像の強度分布のグラフGを求める。
【0055】
グラフGは、例えば図9に示すようにCCD17の中心部を通る帯状の範囲F内のx方向(角膜厚方向)の各画素に対する受光量から求めるものである。つまり、y方向の数画素の受光量の平均値を求め、この平均値をx方向の各番地毎に求めてグラフGを求めるものである。y方向の画素数は1つでもよく、y方向の画素数は全画素数であってもよい。
【0056】
画像判定回路103は、さらにグラフGからピークG1とピークG2との間の谷Gaの位置を求める。すなわち、ピークG1,G2間で受光量が最小となる谷Gaの位置をCCD17の番地xaとして求める。
【0057】
図8の(A)および図9において、番地xaからCCD17の左側部分が、角膜Cの表面での反射光束R1と角膜実質の反射光束R3とを受光する部分であり、番地xaからCCD17の右側部分が角膜内皮細胞S2で反射する反射光束R2を受光する部分となる。
【0058】
画像判定回路103は、CCD17の番地xaより左側部分を遮光し、CCD17の番地xaより右側部分に反射光束R2が到達するように液晶シャッター130を駆動させる。すなわち、液晶シャッター130の左部分130aを遮光部分にし、右側部分130bを透過部分にすることにより、図8の(A)に示すように番地xaからCCD17の左側部分17aを遮光する。
【0059】
このため、CCD17は、角膜内皮細胞S2の反射光束R2のみを受光し、図10に示すように、モニタ19のモニタ画面18に角膜内皮細胞像Jが白くボケてしまうことなく鮮明に表示される。モニタ画面18の部分18aは液晶シャッター130によって遮光された部分である。
【0060】
Z方向のアライメントがずれている場合、図8の(B)に示すように、グラフG′のピークG1′とピークG2′の位置がピークG1,G2の位置から角膜厚方向へずれる。この場合も谷Ga′の位置も谷Gaからずれるが、谷Ga′の位置となるCCD17の番地xbを上記と同様に求め、液晶シャッター130の左部分130a′を遮光部分にし、右側部分130b′を透過部分にすることにより、図8の(B)に示すように番地xbからCCD17の左側部分17a′を遮光させることができる。
【0061】
このため、角膜C表面の反射光束R1と角膜実質の反射光束R3を確実に液晶シャッター130で遮光することができ、CCD17は、角膜内皮細胞S2の反射光束R2のみを受光することになり、図10に示すように、モニタ19のモニタ画面18に角膜内皮細胞像Jが白くボケてしまうことなく鮮明に表示される。
【0062】
すなわち、Z方向のアライメントが正しく行われていなくても、角膜Cの表面反射と角膜内皮細胞S2の反射とを十分に分離することができ、鮮明な角膜内皮細胞像Jを得ることができる。
【0063】
また、角膜Cの厚さによって、図8の(A)に示すグラフGのピークG1とピークG2との間の離間距離が異なってくるとともに谷Gaの位置も異なってくるが(ピークG1(U)とピークG2(V)との離間距離は角膜厚を示す。)、その谷Gaの位置を求めることにより、角膜C表面の反射光束R1と角膜実質の反射光束R3を確実に液晶シャッター130で遮光することができ、鮮明な角膜内皮細胞像Jを得ることができる。
【0064】
このようにアライメントのズレや角膜Cの厚さに拘わりなく、鮮明な角膜内皮細胞像Jを得ることができる。つまり、アライメント範囲を広くとることができ、しかも鮮明な角膜内皮細胞像Jを得ることができる。
【0065】
ところで、図8の(A)と図8の(B)の場合では、CCD17上に結像される角膜内皮細胞像Jの位置が異なるが、制御装置104は角膜内皮細胞像Jが常にモニタ画面18の中央部に表示されるようにモニタ19を制御する。
【0066】
角膜内皮細胞像Jを可視光で撮影する場合、観察用光源21の発光を停止させ、撮影用光源25から可視光である撮影用光束を発光させる。撮影用光束は、集光レンズ26で集光されてスリット27,ダイクロイックミラー23および対物レンズ24を介して図4に示すように角膜Cをスリット照明光で照明する。
【0067】
そして、上記と同様にして角膜内皮細胞S2の反射光束R2のみがCCD17上に結像され、白くボケることなく角膜内皮細胞像Jを撮影することができることになる。
【0068】
観察用光源21は白色LEDであるので、従来のようにコンデンサを充電して発光させる必要がなく、このため連続撮影が可能となる。
【0069】
また、CCD17上には角膜内皮細胞S2の反射光束R2のみが入射するので、CCD17の感度を上げることができ、画質を向上させることができる。
【0070】
上記実施例では、CCD17の光像の強度分布に基づいて液晶シャッター130の遮光部分を求めているが、ラインセンサ61の光像の強度分布に基づいて液晶シャッター130の遮光部分を求めてもよい。
【0071】
上記実施例では、液晶シャッター130を用いているが、これに限らず、電気的に光りを遮光できる部材なら何でもよい。
【0072】
この発明は、上記実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【符号の説明】
【0073】
17 CCD(受光素子)
20 角膜内皮細胞照明光学系(スリット光照射光学系)
30 角膜内皮細胞撮影光学系
61 ラインセンサ
130 液晶シャッター(電気マスク手段)
E 被検眼
C 角膜
S2 角膜内皮細胞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の角膜に向けて斜めからスリット光を照射するスリット光照射光学系と、前記角膜の角膜内皮細胞からの反射光を受光して角膜内皮細胞を撮影する角膜内皮細胞撮影光学系とを備え、この角膜内皮細胞撮影光学系は角膜表面からの反射光を遮光するとともに角膜内皮細胞からの反射光を透過させるマスクを有する角膜内皮細胞撮影装置であって、
前記マスクは、前記角膜表面からの反射光を遮光する遮光部分と、角膜内皮細胞の反射光を透過させる透過部分とに電気的な制御により分けられる電気マスク手段であることを特徴とする角膜内皮細胞撮影装置。
【請求項2】
前記電気マスク手段は、角膜内皮細胞撮影光学系の受光素子の受光量に基づいて前記遮光部分と透過部分とに分けられることを特徴とする請求項1に記載の角膜内皮細胞撮影装置。
【請求項3】
前記角膜とほぼ共役な位置に且つ該角膜の断面方向に沿って配置されたラインセンサを有し、
前記電気マスク手段は、前記ラインセンサの各受光素子の受光量に基づいて前記遮光部分と透過部分とに分けられることを特徴とする請求項1に記載の角膜内皮細胞撮影装置。
【請求項4】
前記電気マスク手段は、液晶シャッターであることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の角膜内皮細胞撮影装置。
【請求項5】
前記スリット光照射光学系の照明光源は、白色発光ダイオードであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の角膜内皮細胞撮影装置。
【請求項6】
前記ラインセンサは、角膜内皮細胞の合焦を検出するためのセンサであることを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれか1つに記載の角膜内皮細胞撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−217512(P2012−217512A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83633(P2011−83633)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)