解剖台用被剖検体カバー
【課題】 構造が簡単で、解剖台上に置かれた被剖検体から発散する有害物質や細菌の周囲へ拡散を効果的に防ぐことができるとともに、簡単な加工を施すだけで既存の解剖台にも簡単に取り付けることができ、且つ、コンパクトに折り畳むことのできる解剖台用被剖検体カバーを提供する。
【解決手段】 柔軟に屈曲可能でガスバリア性を有するシート材からなる下面が開放された箱状のカバー本体2と、前記カバー本体2の長手方向に直交する複数の面にそれぞれ配置され、当該カバー本体2の上面と両側面に外側から固定された、線材ないし棒材からなる複数のカバー枠3とを備え、それぞれのカバー枠3は、解剖台の長手方向両側縁部上面に設けられている支持孔に抜き差し自在に支持される垂直部分を左右両側に有している。
【解決手段】 柔軟に屈曲可能でガスバリア性を有するシート材からなる下面が開放された箱状のカバー本体2と、前記カバー本体2の長手方向に直交する複数の面にそれぞれ配置され、当該カバー本体2の上面と両側面に外側から固定された、線材ないし棒材からなる複数のカバー枠3とを備え、それぞれのカバー枠3は、解剖台の長手方向両側縁部上面に設けられている支持孔に抜き差し自在に支持される垂直部分を左右両側に有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解剖台上に載置された被剖検体に被せ、当該被剖検体から発生するホルマリン等の有害ガスが解剖室内へ流出・拡散することを防止するための、解剖台用被剖検体カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
医学部や歯学部においては、例えば、図13に記載されているような解剖台に被剖検体を載置して解剖の実習が行われている(特許文献1参照)。同図に示すように、解剖台a1には、被剖検体(図示せず)を載せる上面a2の両側の長辺に沿って、内側に向いた吸込スリットa3を有する一対のプリーナムボックスa4が設けられている。
【0003】
これらのプリーナムボックスa4の内部には気体の流通路が形成されていて、それぞれ吸引ダクトa5を介して解剖台a1下部に設けられた気体集合チャンバーa6に連結され、気体集合チャンバーa6はさらにフィルターを備える有害物除去部a7に連結されている。また、有害物除去部a7の下流側にはブロワー等の気体輸送装置a8が連結されている。
【0004】
解剖実習に用いられる被剖検体は、腐敗や細菌の繁殖を防ぐために、ホルマリンで処理されているため、被剖検体から発散するホルムアルデヒド等の有害物質により、実習を受ける医学生等の健康が損なわれないように、実習中は、気体輸送装置a8を駆動して、被剖検体の両側に対向する吸込スリットa2から空気とともに前記有害物質を吸引して解剖室内に拡散しないようにしている。
【0005】
そして、これらの吸込スリットa3から吸い込まれた有害物質を含んだ空気は、解剖台a1の有害物除去部a7内の図示しないフィルタで濾過されて清浄化された後、気体輸送装置a8を介して室内に放出されるようになっている。
【0006】
このような、解剖台を用いて行われる解剖実習は、長期間に亘って行われるため、実習を中断するときは、被剖検体に殺菌消毒と乾燥を防ぐ目的でエタノールを噴霧し、これをエタノールを噴霧した布で包み、その外側をさらにビニールシートで包んで、次回の実習が開始されるまで解剖台上に載置している。また、場合によっては、被剖検体が人目に触れないように、ビニールシートの上からさらに、青色のシートで覆っておくこともある。
【0007】
ところが、毎回、解剖実習後に被剖検体をビニールシート等で包む作業は、手間と時間がかかり、また、次回の実習開始時に開けたビニールシートの中から高濃度の有害物質やエタノール等が解剖室内に拡散する問題があった。
【0008】
また、ビニールシートに包まれた被剖検体を解剖台上に載置いている間に、ビニールシートの隙間から内部のエタノールが解剖室内に蒸散すると、エタノール中に含まれている水分が室内の湿度を上昇させて、雑菌を発生させる虞があった。
【0009】
一方、前述したような問題に対処するため、特許文献2に示すように、解剖台に解剖体(被剖検体)を開閉自在に覆うカバー部材を設けることが提案されている。
同文献に記載されている解剖台においては、解剖体を解剖台上に置いた状態にしておく場合に、解剖台に付属しているカバー部材を解剖台の上部側に回動して解剖体を外気と接触しないように覆って、解剖体から発生するホルマリンガス等の有害ガスの発散を抑え、同時に当該解剖体から拡散する細菌の空気感染を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−226222号公報
【特許文献2】特開2004−451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述した特許文献2に記載されている解剖台においては、解剖台の台部の両側の長辺に各2枚ずつ合計4枚の台形状カバー部材が取り付けられ、また短辺両側にそれぞれ1枚ずつ三角形状のカバー部材が取り付けられていて、これらを上方に回動して解剖台上方で屋根状に合わせて、解剖体を覆う構造になっているため、解剖台の周囲にこれらを開閉するためのスペースが必要となる問題があった。
【0012】
また、カバー部材が解剖台上方を屋根状に覆う構造上、前述した図13に示す解剖台のように、解剖台上面の両側に左右両側から空気を吸引する吸込スリットを有するプリーナムボックスを配置することができないため、カバー部材を開放して解剖体の解剖実習等を行う場合に、解剖体から発散する有害物質の吸引が不完全になって周囲に拡散してしまう虞があった。
【0013】
そこで、本発明は、前述したような従来技術における問題点を解消し、構造が簡単で、解剖台上に置かれた被剖検体から発散する有害物質や細菌の周囲へ拡散を効果的に防ぐことができるとともに、簡単な加工を施すだけで既存の解剖台にも簡単に取り付けることができ、且つ、取り外し時にはコンパクトに折り畳むことのできる解剖台用被剖検体カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的のために提供される本発明の解剖台用被剖検体カバーは、柔軟に屈曲可能でガスバリア性を有するシート材からなり、上面と、長手方向前後に対向する一対の端面と左右に対向する一対の側面とを有し、且つ下面が開放された箱状のカバー本体と、前記カバー本体の長手方向に直交する、前記一対の端面を含む複数の面にそれぞれ配置され、当該カバー本体の上面と両側面に外側から固定された、線材ないし棒材からなる複数のゲート形のカバー枠とを備えている。
【0015】
前記それぞれのカバー枠は、解剖台の長手方向両側縁部上面に設けられている複数の支持孔のそれぞれに抜き差し自在に保持される垂直部分を左右両側に有し、これらの垂直部分の下端から所定長さ上方位置には、前記支持孔内への侵入深さを規制するストッパ部材が設けられているとともに、前記カバー本体の両端面ならびに両側面の、ストッパ部材より下方部分は、カバー枠には固定されておらず、解剖台上面の周縁部を密封するように内側に折り込み可能に構成されている。
【0016】
本発明の解剖台用被剖検体カバーにおいては、カバー本体の前後一対の端面の一方には、閉塞可能な外気取込口が設けられているとともに、他方には、カバー本体内の空気を排気するための排気ホースを着脱可能で且つ前記ホースを外したときには閉塞可能な排気口が設けられていることが望ましい。また、カバー枠が左右両側の垂直部分上端からそれぞれ中央に向けて下方に傾斜した略M形状に形成されていることも望ましい。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載された発明に係る解剖台用被剖検体カバーによれば、解剖台への取り付けを容易に行うことができ、解剖台上に置かれた被剖検体から発散する有害物質や細菌の周囲へ拡散を効果的に防ぐことができる。
【0018】
また、解剖台から取り外したときには、コンパクトに折り畳むことができるため、持ち運びが容易で狭い場所に収納しておくことができる。また、簡単な加工を施すだけで既存の解剖台にも簡単に取り付けることができる。
【0019】
請求項2に記載された発明に係る解剖台用被剖検体カバーによれば、請求項1に記載された発明の効果に加えてさらに、解剖台上面に被せるカバー内の空気を吸排気できる構造になっていない解剖台であっても、カバー本体の前後一対の端面の一方に設けられた外気取込口を開放し、他方に設けられた排気口に排気ホースを連結し、排気ホースを通じてカバー本体内部の空気を吸い出すことにより、外気取込口から外気がカバー本体内部に流入し、カバー本体内部が換気されるため、被剖検体から発生してカバー本体内部に溜まったホルマリン等の有害物質をカバーを外す前に除去することができ、カバー開放時に有害物質を吸引して健康を損なう危険を回避することができる。
【0020】
請求項3に記載された発明に係る解剖台用被剖検体カバーによれば、カバー枠が左右両側の垂直部分上端からそれぞれ中央に向けて下方に傾斜した略M形状に形成されていることにより、被剖検体から発生した有害物質を含んだ水分がカバー本体上面内側に結露しても、水分が垂直な両側面を伝わって解剖台上面に流れ落ちずに、傾斜したカバー本体上面の中央側に集められるため、カバー開放前に行うカバー本体内部の換気によって、安全且つ効果的に取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る解剖台用被剖検体カバーを解剖台に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る解剖台用被剖検体カバーの1実施形態における外観を示す斜視図である。
【図3】図2に示す解剖台用被剖検体カバーを折り畳んだ状態を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る解剖台用被剖検体カバーの1実施形態を示すカバー枠位置における横断面図である。
【図5】図4の位置で被剖検体カバーを同図の右外側から見たカバー本体に対するカバー枠の取付構造を示す部分側面図である。
【図6】図5のA−A断面図である。
【図7】図5のB−B断面図である。
【図8】解剖台に設けられるカバー枠の保持構造の一部を示す斜視図である。
【図9】カバー枠の連結具の詳細構造を示す上方から見た部分図である。
【図10】図9のC−C断面図である
【図11】排気口部分を示す部分断面図であり、(A)は不使用時、(B)は、排気ホース連結時の状態をそれぞれ示す。
【図12】本発明に係る解剖台用被剖検体カバーの別の実施形態を示すカバー枠位置における横断面図である。
【図13】従来の解剖台の1例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の解剖台用被剖検体カバー(以下、被剖検体カバーという。)を解剖台に取り付けた状態を示す斜視図であって、実施形態における被剖検体カバー1は、医学部等において解剖実習後に、前述した図13に示す解剖台a1と同様な構造の解剖台A1上に載せてある被剖検体(図示せず)に被せ、次回の実習開始時まで、被剖検体から発散するホルマリン等の有害物質や細菌が解剖室内に拡散しないようにするために使用されるものである。
【0023】
図2に示すように、被剖検体カバー1は、柔軟に屈曲可能でガスバリア性を有する透明樹脂シート材からなるカバー本体2と、ステンレス製の棒材からなる複数のカバー枠3から構成されている。カバー本体2は、上面2Aと、長手方向前後に対向する一対の端面2Bと、左右に対向する一対の側面2Cとを有し、下面が開放された箱状に形成されている。
【0024】
そして、被剖検体カバー1は、前記解剖台A1から外した後、図3のように、長手方向に縮めてコンパクトに折り畳むことが可能であり、持ち運びが容易であるとともに、不使用時には、狭い場所への収納が可能になっている。
【0025】
図4は、被剖検体カバー1の、一つのカバー枠3の位置における横断面図であって、カバー枠3は、両側の垂直部分3Aと、これらの上端どうしをつなぐ水平部分3Bとからなるゲート状に形成されている。
【0026】
なお、本実施形態のものにおいては、カバー本体2への組み付けの都合上、カバー枠3は、左右対称な略L字形の2つの部分どうしを水平部分3Bの中央位置で互いに後述する連結具4で連結してゲート状に組み立てられている。
【0027】
カバー枠3は、カバー本体2の長手方向に直交する前後一対の端面を含む複数の面にそれぞれ配置されており、それぞれ、カバー本体2の上面2Aと左右の両側面2Cの外側に固定されている。図2に示すように、カバー枠3は、本実施形態のものにおいては、カバー本体2の前後の端面に配置されるものを含めて合計7つ設けられている。
【0028】
図5は、図4の位置で被剖検体カバー1を右外側から見たカバー本体2に対するカバー枠3の取付構造を示す部分側面図、図6は図5のA−A断面図、図7はB−B断面図であって、これらの図に示すように、カバー枠3は、カバー本体2の上面2Aと左右両側面2Cに沿ってこれらの外面に接着固定されている細幅の透明樹脂からなる固定帯5によって、カバー本体2に固定されている。
【0029】
すなわち、図6に示すように、固定帯5は、その幅方向両側がカバー本体2の外面に接着されており、前記固定帯5の接着されていない中央部分とカバー本体2との間に長手方向に形成されているトンネル状の隙間Sにカバー枠3が挟み込まれて固定されている。
【0030】
図7に最も明瞭に示されているように、それぞれのカバー枠3の垂直部分3Aの下端近傍位置には、鍔状のストッパ部材6が溶接固定されている。図5及び図7に示すように、カバー本体2の側面2Cのストッパ部材6より下の部分には固定帯5が無く、この部分はカバー枠3に固定されておらず、内側に折込可能なスカート部2Dを構成している。
また、カバー部材2の前後の端面2Aにおいても、ストッパ部材6の高さより下方部分は、内側に折込可能なスカート部2Dを構成している。
【0031】
また、図8に示すように、前記垂直部分3Aのストッパ部材6を貫通して下方に突出している部分Lは、解剖台A1の長手方向両側縁部上面FSに設けられている支持孔Hに挿入されて固定されている、筒状の保持スリーブSV内に抜き差し自在に差し込まれて、垂直に保持されるようになっている。
【0032】
保持スリーブSVは、その上端に有するフランジFRの下面を前記上面FSの支持孔Hの周囲に溶接固定されており、カバー枠3の垂直部分3Aを保持スリーブSV内へ差し込んだときに、ストッパ部材6の下面が前記フランジFRの上面に当接することによって、前記垂直部分3Aの保持スリーブSV内への侵入深さが規制されている。
【0033】
なお、本実施形態のものにおいては、支持孔Hに、保持スリーブSVを介して間接的にカバー枠3の垂直部分3Aを差し込み保持しているが、解剖台A1の構造によっては、支持孔H内に直接前記垂直部分3Aを差し込んで保持するようにしてもよい。
【0034】
次に、図9は、カバー枠3の水平部分3Bの中央位置に設けられている連結具の詳細構造を示す、上方から見た部分図、図10は、図9のC−C断面図であって、これらの図に示すように、左右に分割されているカバー枠3の対向するそれぞれの端面には、所定長さ互いに逆向きの雄ねじP1、P2が形成されている。
【0035】
一方、連結具4の中心部には、これらの雄ねじP1、P2にそれぞれ螺合する互いに逆向きの雌ねじ(図示を省略)が左右同軸上に形成されており、連結具4に両側からカバー枠3の雄ねじP1、P2を螺合して連結具4を一方向に回転させることにより、カバー枠3の左右両側の端面は互いに引き寄せられ、相互に押し付けられた状態で一体に固定される。
【0036】
また、連結具4を反対方向に回転させることにより、カバー枠3は、左右に2つの部分に分離することができる。なお、図示していないが、連結具4の外周面にはスパナを係合させて回転させるための係合部が形成されている。
【0037】
図1及び図2に示すように、本実施形態の被剖検体カバー1においては、カバー本体2の前側(図1に解剖台A1において被剖検体の頭側)の端面2Bには、外気取込口7が横に2つ並べて設けられている。
【0038】
外気取込口7は、カバー本体2の前側端面2Bから前方へ突出する樹脂製の短管7Aによって構成されていて、短管7A外周にチェーン7Bで連結された蓋体7Cによって閉塞可能になっている。
【0039】
また、カバー本体2の後側の端面2Bには、2つの排気口8が前側端面2Bに設けられている前記2つの外気取込口7よりも低位置に横に並べて設けられている。これらの排気口8は、図11(A)に示すように、カバー本体2の後側端面2Bから後方へ突出する前記外気取込口7と同様な樹脂製の短管8Aによって構成されていて、短管8A外周にチェーン8Bで連結された蓋体8Cによって閉塞可能になっている。
【0040】
これらの短管8Aは、図11(B)に示すように、蓋体8Cを外した状態において、排気ホース9の一端を連結できるようになっている。前記排気ホース9は、図1に示すように、被剖検体カバー1を解剖台A1の上面A2に被せた状態において、その他端をプリーナムボックスA4の後端面に設けられている吸気口A5に連結し、カバー本体2内の空気をプリーナムボックスA4側へ吸引して排気するためのものである。
なお、プリーナムボックス4A側の吸気口A5は、排気ホース9を連結しない時は、蓋体によって閉塞できるようになっている。
【0041】
次に、前述したように構成されている被剖検体カバー1の使用方法について説明する。
解剖実習が一端終了したら、解剖台Aに載置されている被剖検体に殺菌消毒と乾燥を防ぐためにエタノールを噴霧した後、これをエタノールを噴霧した布で包む。
【0042】
その後、図3に示すように折り畳んで収納されていた被剖検体カバー1の後端側のカバー枠3両側の下端を、解剖台1Aの長手方向最後端の左右両側の支持孔Hに設けられている保持スリーブSV(図4、図8参照)に差し込み、その後、被剖検体カバー1を長手方向前方に引っ張って伸ばしながら、順次、前方の左右両側の支持孔Hの保持スリーブSVに差し込んでいき、図1に示すように、被剖検体カバー1を解剖台A1の上面A2全体を覆うように取り付ける。
【0043】
さらに、カバー本体2の前後の端面2Bと左右の側面2Cのそれぞれの下方に連続して設けられているスカート部2Dを、解剖台1Aの上面A2の内側に折り込むようにして、被剖検体が載っている解剖台A1の上面A2の周囲から空気が漏れないように密封する。
【0044】
また、カバー本体2の前後の端面2Bに設けられている外気取込口7と排気口8はそれぞれ蓋体7C、8Cによって閉塞しておき、この状態で被剖検体は、次回の解剖実習が再開されるまで解剖室に保管される。
【0045】
次に、解剖実習を再開する場合には、解剖台A1に装着されている被剖検体カバー1のカバー本体2から外気取込口7の蓋体7Cと、排気口8の蓋体8Cをそれぞれ取り外すとともに、解剖台A1のプリーナムボックス4A側の吸気口A5の蓋体を外し、排気口8と吸気口A5の間を排気ホース9で連結する。
【0046】
次いで、解剖台A1に内蔵されている図示していないブロワーを駆動して、排気ホース9を介してカバー本体2内の空気を吸引し、被剖検体や、これを包んでいる布から発散してカバー本体2内に充満しているホルマリン等の有害物質やエタノールを含んだ空気を、外気取込口7からカバー本体2内に流入してくる外部の空気と置換する。
【0047】
こうして、カバー本体2内の空気が清浄化された後、ブロワーを一端停止して排気ホース9を外し、プリーナムボックス4A側の吸気口A5に蓋体を装着してから被剖検体カバー1を解剖台A1の長手方向前端側から順次外してゆく。
【0048】
被剖検体カバー1を完全に取り外した後、再び解剖台A1のブロワーを駆動し、上面A2の左右両側のプリーナムA4に設けられてる吸込スリットA3から空気の吸引を開始して解剖実習を再開する。解剖台A1から取り外した被剖検体カバー1は、図3に示すように折り畳んで、次の使用時まで所定の場所に収納しておく。
【0049】
なお、カバー本体2の内側に吸気口と排気口を有して換気を行える構造の解剖台においては、カバー本体2に前述したような外気取込口7や排気口8を設ける必要は無く、このような構造の解剖台を用いる場合には、解剖実習再開時において、被剖検体カバー1を取り外す前に、解剖台が備えている吸排気システムを駆動してカバー本体2内の有害物質を含む空気を清浄な空気と換気すればよい。
【0050】
また、カバー本体2の前後の端面2Bに外気取込口7や排気口8を設ける代わりに、これらの端面2Bの周縁部をそれぞれ隣接するカバー本体2の上面2Aと両側面2Cにファスナ等で開閉可能に連結し、被剖検体カバー1を取り外す前に、これらの端面2Bを両方とも開放してカバー本体2の前端から内部に空気を吹き込むとともに、後端から吸引して強制換気するようにしてもよい。
【0051】
次に、図12は、本発明の解剖台用被剖検体カバーの別の実施形態を示すカバー枠の位置における横断面図であって、この実施形態における被剖検体カバー1’は、カバー枠3’のみが前述した被剖検体カバー1と異なっている。
【0052】
すなわち、本実施形態のものにおいては、カバー枠3’の左右両側の垂直部分3’Aの上端からそれぞれ中央に向けて、下方に傾斜した傾斜部分3’Bを有して略M形状に形成されている。
【0053】
この被剖検体カバー1’においては、被剖検体から発生した有害物質を含んだ水分がカバー本体上面2Aの内側に結露して水滴になっても、これが垂直な両側面2Cを伝わって解剖台上面に流れ落ちずに、傾斜した上面2Aの中央側に集められるため、被剖検体カバー1’を開放する前に行うカバー本体2内部の空気の吸引排気時に蒸散して安全に除去される。
【0054】
なお、前述した各実施形態においては、カバー枠3、3’にステンレス棒材を用いているが、カバー本体2が軽量である場合には、太めのステンレス線材を用いてもよい。また、ステンレスに限らず、必要な強度が得られれば、アルミニウム等、他の素材によって製作することも可能である。
【0055】
また、前述した各実施形態においては、カバ+9+−−ー本体2の素材に透明樹脂シート材を用いているが、これに限定するものではなく、柔軟に屈曲可能でガスバリア性を有するシート材であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の解剖台用被剖検体カバーは、医学部や歯学部の解剖実習で用いる解剖台に利用できるほか、動物の解剖台にも利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1、1’ 解剖台用被剖検体カバー
2 ’ カバー本体
2A 上面
2B 端面
2C 側面
2D スカート部
3、3’ カバー枠
3A、3’A 垂直部分
3B 水平部分
3’B 傾斜部分
4 連結具
5 固定帯
6 ストッパ部材
7 外気取込口
7A 短管
7B チェーン
7C 蓋体
8 排気口
8A 短管
8B チェーン
8C 蓋体
9 排気ホース
【技術分野】
【0001】
本発明は、解剖台上に載置された被剖検体に被せ、当該被剖検体から発生するホルマリン等の有害ガスが解剖室内へ流出・拡散することを防止するための、解剖台用被剖検体カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
医学部や歯学部においては、例えば、図13に記載されているような解剖台に被剖検体を載置して解剖の実習が行われている(特許文献1参照)。同図に示すように、解剖台a1には、被剖検体(図示せず)を載せる上面a2の両側の長辺に沿って、内側に向いた吸込スリットa3を有する一対のプリーナムボックスa4が設けられている。
【0003】
これらのプリーナムボックスa4の内部には気体の流通路が形成されていて、それぞれ吸引ダクトa5を介して解剖台a1下部に設けられた気体集合チャンバーa6に連結され、気体集合チャンバーa6はさらにフィルターを備える有害物除去部a7に連結されている。また、有害物除去部a7の下流側にはブロワー等の気体輸送装置a8が連結されている。
【0004】
解剖実習に用いられる被剖検体は、腐敗や細菌の繁殖を防ぐために、ホルマリンで処理されているため、被剖検体から発散するホルムアルデヒド等の有害物質により、実習を受ける医学生等の健康が損なわれないように、実習中は、気体輸送装置a8を駆動して、被剖検体の両側に対向する吸込スリットa2から空気とともに前記有害物質を吸引して解剖室内に拡散しないようにしている。
【0005】
そして、これらの吸込スリットa3から吸い込まれた有害物質を含んだ空気は、解剖台a1の有害物除去部a7内の図示しないフィルタで濾過されて清浄化された後、気体輸送装置a8を介して室内に放出されるようになっている。
【0006】
このような、解剖台を用いて行われる解剖実習は、長期間に亘って行われるため、実習を中断するときは、被剖検体に殺菌消毒と乾燥を防ぐ目的でエタノールを噴霧し、これをエタノールを噴霧した布で包み、その外側をさらにビニールシートで包んで、次回の実習が開始されるまで解剖台上に載置している。また、場合によっては、被剖検体が人目に触れないように、ビニールシートの上からさらに、青色のシートで覆っておくこともある。
【0007】
ところが、毎回、解剖実習後に被剖検体をビニールシート等で包む作業は、手間と時間がかかり、また、次回の実習開始時に開けたビニールシートの中から高濃度の有害物質やエタノール等が解剖室内に拡散する問題があった。
【0008】
また、ビニールシートに包まれた被剖検体を解剖台上に載置いている間に、ビニールシートの隙間から内部のエタノールが解剖室内に蒸散すると、エタノール中に含まれている水分が室内の湿度を上昇させて、雑菌を発生させる虞があった。
【0009】
一方、前述したような問題に対処するため、特許文献2に示すように、解剖台に解剖体(被剖検体)を開閉自在に覆うカバー部材を設けることが提案されている。
同文献に記載されている解剖台においては、解剖体を解剖台上に置いた状態にしておく場合に、解剖台に付属しているカバー部材を解剖台の上部側に回動して解剖体を外気と接触しないように覆って、解剖体から発生するホルマリンガス等の有害ガスの発散を抑え、同時に当該解剖体から拡散する細菌の空気感染を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−226222号公報
【特許文献2】特開2004−451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述した特許文献2に記載されている解剖台においては、解剖台の台部の両側の長辺に各2枚ずつ合計4枚の台形状カバー部材が取り付けられ、また短辺両側にそれぞれ1枚ずつ三角形状のカバー部材が取り付けられていて、これらを上方に回動して解剖台上方で屋根状に合わせて、解剖体を覆う構造になっているため、解剖台の周囲にこれらを開閉するためのスペースが必要となる問題があった。
【0012】
また、カバー部材が解剖台上方を屋根状に覆う構造上、前述した図13に示す解剖台のように、解剖台上面の両側に左右両側から空気を吸引する吸込スリットを有するプリーナムボックスを配置することができないため、カバー部材を開放して解剖体の解剖実習等を行う場合に、解剖体から発散する有害物質の吸引が不完全になって周囲に拡散してしまう虞があった。
【0013】
そこで、本発明は、前述したような従来技術における問題点を解消し、構造が簡単で、解剖台上に置かれた被剖検体から発散する有害物質や細菌の周囲へ拡散を効果的に防ぐことができるとともに、簡単な加工を施すだけで既存の解剖台にも簡単に取り付けることができ、且つ、取り外し時にはコンパクトに折り畳むことのできる解剖台用被剖検体カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的のために提供される本発明の解剖台用被剖検体カバーは、柔軟に屈曲可能でガスバリア性を有するシート材からなり、上面と、長手方向前後に対向する一対の端面と左右に対向する一対の側面とを有し、且つ下面が開放された箱状のカバー本体と、前記カバー本体の長手方向に直交する、前記一対の端面を含む複数の面にそれぞれ配置され、当該カバー本体の上面と両側面に外側から固定された、線材ないし棒材からなる複数のゲート形のカバー枠とを備えている。
【0015】
前記それぞれのカバー枠は、解剖台の長手方向両側縁部上面に設けられている複数の支持孔のそれぞれに抜き差し自在に保持される垂直部分を左右両側に有し、これらの垂直部分の下端から所定長さ上方位置には、前記支持孔内への侵入深さを規制するストッパ部材が設けられているとともに、前記カバー本体の両端面ならびに両側面の、ストッパ部材より下方部分は、カバー枠には固定されておらず、解剖台上面の周縁部を密封するように内側に折り込み可能に構成されている。
【0016】
本発明の解剖台用被剖検体カバーにおいては、カバー本体の前後一対の端面の一方には、閉塞可能な外気取込口が設けられているとともに、他方には、カバー本体内の空気を排気するための排気ホースを着脱可能で且つ前記ホースを外したときには閉塞可能な排気口が設けられていることが望ましい。また、カバー枠が左右両側の垂直部分上端からそれぞれ中央に向けて下方に傾斜した略M形状に形成されていることも望ましい。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載された発明に係る解剖台用被剖検体カバーによれば、解剖台への取り付けを容易に行うことができ、解剖台上に置かれた被剖検体から発散する有害物質や細菌の周囲へ拡散を効果的に防ぐことができる。
【0018】
また、解剖台から取り外したときには、コンパクトに折り畳むことができるため、持ち運びが容易で狭い場所に収納しておくことができる。また、簡単な加工を施すだけで既存の解剖台にも簡単に取り付けることができる。
【0019】
請求項2に記載された発明に係る解剖台用被剖検体カバーによれば、請求項1に記載された発明の効果に加えてさらに、解剖台上面に被せるカバー内の空気を吸排気できる構造になっていない解剖台であっても、カバー本体の前後一対の端面の一方に設けられた外気取込口を開放し、他方に設けられた排気口に排気ホースを連結し、排気ホースを通じてカバー本体内部の空気を吸い出すことにより、外気取込口から外気がカバー本体内部に流入し、カバー本体内部が換気されるため、被剖検体から発生してカバー本体内部に溜まったホルマリン等の有害物質をカバーを外す前に除去することができ、カバー開放時に有害物質を吸引して健康を損なう危険を回避することができる。
【0020】
請求項3に記載された発明に係る解剖台用被剖検体カバーによれば、カバー枠が左右両側の垂直部分上端からそれぞれ中央に向けて下方に傾斜した略M形状に形成されていることにより、被剖検体から発生した有害物質を含んだ水分がカバー本体上面内側に結露しても、水分が垂直な両側面を伝わって解剖台上面に流れ落ちずに、傾斜したカバー本体上面の中央側に集められるため、カバー開放前に行うカバー本体内部の換気によって、安全且つ効果的に取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る解剖台用被剖検体カバーを解剖台に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る解剖台用被剖検体カバーの1実施形態における外観を示す斜視図である。
【図3】図2に示す解剖台用被剖検体カバーを折り畳んだ状態を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る解剖台用被剖検体カバーの1実施形態を示すカバー枠位置における横断面図である。
【図5】図4の位置で被剖検体カバーを同図の右外側から見たカバー本体に対するカバー枠の取付構造を示す部分側面図である。
【図6】図5のA−A断面図である。
【図7】図5のB−B断面図である。
【図8】解剖台に設けられるカバー枠の保持構造の一部を示す斜視図である。
【図9】カバー枠の連結具の詳細構造を示す上方から見た部分図である。
【図10】図9のC−C断面図である
【図11】排気口部分を示す部分断面図であり、(A)は不使用時、(B)は、排気ホース連結時の状態をそれぞれ示す。
【図12】本発明に係る解剖台用被剖検体カバーの別の実施形態を示すカバー枠位置における横断面図である。
【図13】従来の解剖台の1例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の解剖台用被剖検体カバー(以下、被剖検体カバーという。)を解剖台に取り付けた状態を示す斜視図であって、実施形態における被剖検体カバー1は、医学部等において解剖実習後に、前述した図13に示す解剖台a1と同様な構造の解剖台A1上に載せてある被剖検体(図示せず)に被せ、次回の実習開始時まで、被剖検体から発散するホルマリン等の有害物質や細菌が解剖室内に拡散しないようにするために使用されるものである。
【0023】
図2に示すように、被剖検体カバー1は、柔軟に屈曲可能でガスバリア性を有する透明樹脂シート材からなるカバー本体2と、ステンレス製の棒材からなる複数のカバー枠3から構成されている。カバー本体2は、上面2Aと、長手方向前後に対向する一対の端面2Bと、左右に対向する一対の側面2Cとを有し、下面が開放された箱状に形成されている。
【0024】
そして、被剖検体カバー1は、前記解剖台A1から外した後、図3のように、長手方向に縮めてコンパクトに折り畳むことが可能であり、持ち運びが容易であるとともに、不使用時には、狭い場所への収納が可能になっている。
【0025】
図4は、被剖検体カバー1の、一つのカバー枠3の位置における横断面図であって、カバー枠3は、両側の垂直部分3Aと、これらの上端どうしをつなぐ水平部分3Bとからなるゲート状に形成されている。
【0026】
なお、本実施形態のものにおいては、カバー本体2への組み付けの都合上、カバー枠3は、左右対称な略L字形の2つの部分どうしを水平部分3Bの中央位置で互いに後述する連結具4で連結してゲート状に組み立てられている。
【0027】
カバー枠3は、カバー本体2の長手方向に直交する前後一対の端面を含む複数の面にそれぞれ配置されており、それぞれ、カバー本体2の上面2Aと左右の両側面2Cの外側に固定されている。図2に示すように、カバー枠3は、本実施形態のものにおいては、カバー本体2の前後の端面に配置されるものを含めて合計7つ設けられている。
【0028】
図5は、図4の位置で被剖検体カバー1を右外側から見たカバー本体2に対するカバー枠3の取付構造を示す部分側面図、図6は図5のA−A断面図、図7はB−B断面図であって、これらの図に示すように、カバー枠3は、カバー本体2の上面2Aと左右両側面2Cに沿ってこれらの外面に接着固定されている細幅の透明樹脂からなる固定帯5によって、カバー本体2に固定されている。
【0029】
すなわち、図6に示すように、固定帯5は、その幅方向両側がカバー本体2の外面に接着されており、前記固定帯5の接着されていない中央部分とカバー本体2との間に長手方向に形成されているトンネル状の隙間Sにカバー枠3が挟み込まれて固定されている。
【0030】
図7に最も明瞭に示されているように、それぞれのカバー枠3の垂直部分3Aの下端近傍位置には、鍔状のストッパ部材6が溶接固定されている。図5及び図7に示すように、カバー本体2の側面2Cのストッパ部材6より下の部分には固定帯5が無く、この部分はカバー枠3に固定されておらず、内側に折込可能なスカート部2Dを構成している。
また、カバー部材2の前後の端面2Aにおいても、ストッパ部材6の高さより下方部分は、内側に折込可能なスカート部2Dを構成している。
【0031】
また、図8に示すように、前記垂直部分3Aのストッパ部材6を貫通して下方に突出している部分Lは、解剖台A1の長手方向両側縁部上面FSに設けられている支持孔Hに挿入されて固定されている、筒状の保持スリーブSV内に抜き差し自在に差し込まれて、垂直に保持されるようになっている。
【0032】
保持スリーブSVは、その上端に有するフランジFRの下面を前記上面FSの支持孔Hの周囲に溶接固定されており、カバー枠3の垂直部分3Aを保持スリーブSV内へ差し込んだときに、ストッパ部材6の下面が前記フランジFRの上面に当接することによって、前記垂直部分3Aの保持スリーブSV内への侵入深さが規制されている。
【0033】
なお、本実施形態のものにおいては、支持孔Hに、保持スリーブSVを介して間接的にカバー枠3の垂直部分3Aを差し込み保持しているが、解剖台A1の構造によっては、支持孔H内に直接前記垂直部分3Aを差し込んで保持するようにしてもよい。
【0034】
次に、図9は、カバー枠3の水平部分3Bの中央位置に設けられている連結具の詳細構造を示す、上方から見た部分図、図10は、図9のC−C断面図であって、これらの図に示すように、左右に分割されているカバー枠3の対向するそれぞれの端面には、所定長さ互いに逆向きの雄ねじP1、P2が形成されている。
【0035】
一方、連結具4の中心部には、これらの雄ねじP1、P2にそれぞれ螺合する互いに逆向きの雌ねじ(図示を省略)が左右同軸上に形成されており、連結具4に両側からカバー枠3の雄ねじP1、P2を螺合して連結具4を一方向に回転させることにより、カバー枠3の左右両側の端面は互いに引き寄せられ、相互に押し付けられた状態で一体に固定される。
【0036】
また、連結具4を反対方向に回転させることにより、カバー枠3は、左右に2つの部分に分離することができる。なお、図示していないが、連結具4の外周面にはスパナを係合させて回転させるための係合部が形成されている。
【0037】
図1及び図2に示すように、本実施形態の被剖検体カバー1においては、カバー本体2の前側(図1に解剖台A1において被剖検体の頭側)の端面2Bには、外気取込口7が横に2つ並べて設けられている。
【0038】
外気取込口7は、カバー本体2の前側端面2Bから前方へ突出する樹脂製の短管7Aによって構成されていて、短管7A外周にチェーン7Bで連結された蓋体7Cによって閉塞可能になっている。
【0039】
また、カバー本体2の後側の端面2Bには、2つの排気口8が前側端面2Bに設けられている前記2つの外気取込口7よりも低位置に横に並べて設けられている。これらの排気口8は、図11(A)に示すように、カバー本体2の後側端面2Bから後方へ突出する前記外気取込口7と同様な樹脂製の短管8Aによって構成されていて、短管8A外周にチェーン8Bで連結された蓋体8Cによって閉塞可能になっている。
【0040】
これらの短管8Aは、図11(B)に示すように、蓋体8Cを外した状態において、排気ホース9の一端を連結できるようになっている。前記排気ホース9は、図1に示すように、被剖検体カバー1を解剖台A1の上面A2に被せた状態において、その他端をプリーナムボックスA4の後端面に設けられている吸気口A5に連結し、カバー本体2内の空気をプリーナムボックスA4側へ吸引して排気するためのものである。
なお、プリーナムボックス4A側の吸気口A5は、排気ホース9を連結しない時は、蓋体によって閉塞できるようになっている。
【0041】
次に、前述したように構成されている被剖検体カバー1の使用方法について説明する。
解剖実習が一端終了したら、解剖台Aに載置されている被剖検体に殺菌消毒と乾燥を防ぐためにエタノールを噴霧した後、これをエタノールを噴霧した布で包む。
【0042】
その後、図3に示すように折り畳んで収納されていた被剖検体カバー1の後端側のカバー枠3両側の下端を、解剖台1Aの長手方向最後端の左右両側の支持孔Hに設けられている保持スリーブSV(図4、図8参照)に差し込み、その後、被剖検体カバー1を長手方向前方に引っ張って伸ばしながら、順次、前方の左右両側の支持孔Hの保持スリーブSVに差し込んでいき、図1に示すように、被剖検体カバー1を解剖台A1の上面A2全体を覆うように取り付ける。
【0043】
さらに、カバー本体2の前後の端面2Bと左右の側面2Cのそれぞれの下方に連続して設けられているスカート部2Dを、解剖台1Aの上面A2の内側に折り込むようにして、被剖検体が載っている解剖台A1の上面A2の周囲から空気が漏れないように密封する。
【0044】
また、カバー本体2の前後の端面2Bに設けられている外気取込口7と排気口8はそれぞれ蓋体7C、8Cによって閉塞しておき、この状態で被剖検体は、次回の解剖実習が再開されるまで解剖室に保管される。
【0045】
次に、解剖実習を再開する場合には、解剖台A1に装着されている被剖検体カバー1のカバー本体2から外気取込口7の蓋体7Cと、排気口8の蓋体8Cをそれぞれ取り外すとともに、解剖台A1のプリーナムボックス4A側の吸気口A5の蓋体を外し、排気口8と吸気口A5の間を排気ホース9で連結する。
【0046】
次いで、解剖台A1に内蔵されている図示していないブロワーを駆動して、排気ホース9を介してカバー本体2内の空気を吸引し、被剖検体や、これを包んでいる布から発散してカバー本体2内に充満しているホルマリン等の有害物質やエタノールを含んだ空気を、外気取込口7からカバー本体2内に流入してくる外部の空気と置換する。
【0047】
こうして、カバー本体2内の空気が清浄化された後、ブロワーを一端停止して排気ホース9を外し、プリーナムボックス4A側の吸気口A5に蓋体を装着してから被剖検体カバー1を解剖台A1の長手方向前端側から順次外してゆく。
【0048】
被剖検体カバー1を完全に取り外した後、再び解剖台A1のブロワーを駆動し、上面A2の左右両側のプリーナムA4に設けられてる吸込スリットA3から空気の吸引を開始して解剖実習を再開する。解剖台A1から取り外した被剖検体カバー1は、図3に示すように折り畳んで、次の使用時まで所定の場所に収納しておく。
【0049】
なお、カバー本体2の内側に吸気口と排気口を有して換気を行える構造の解剖台においては、カバー本体2に前述したような外気取込口7や排気口8を設ける必要は無く、このような構造の解剖台を用いる場合には、解剖実習再開時において、被剖検体カバー1を取り外す前に、解剖台が備えている吸排気システムを駆動してカバー本体2内の有害物質を含む空気を清浄な空気と換気すればよい。
【0050】
また、カバー本体2の前後の端面2Bに外気取込口7や排気口8を設ける代わりに、これらの端面2Bの周縁部をそれぞれ隣接するカバー本体2の上面2Aと両側面2Cにファスナ等で開閉可能に連結し、被剖検体カバー1を取り外す前に、これらの端面2Bを両方とも開放してカバー本体2の前端から内部に空気を吹き込むとともに、後端から吸引して強制換気するようにしてもよい。
【0051】
次に、図12は、本発明の解剖台用被剖検体カバーの別の実施形態を示すカバー枠の位置における横断面図であって、この実施形態における被剖検体カバー1’は、カバー枠3’のみが前述した被剖検体カバー1と異なっている。
【0052】
すなわち、本実施形態のものにおいては、カバー枠3’の左右両側の垂直部分3’Aの上端からそれぞれ中央に向けて、下方に傾斜した傾斜部分3’Bを有して略M形状に形成されている。
【0053】
この被剖検体カバー1’においては、被剖検体から発生した有害物質を含んだ水分がカバー本体上面2Aの内側に結露して水滴になっても、これが垂直な両側面2Cを伝わって解剖台上面に流れ落ちずに、傾斜した上面2Aの中央側に集められるため、被剖検体カバー1’を開放する前に行うカバー本体2内部の空気の吸引排気時に蒸散して安全に除去される。
【0054】
なお、前述した各実施形態においては、カバー枠3、3’にステンレス棒材を用いているが、カバー本体2が軽量である場合には、太めのステンレス線材を用いてもよい。また、ステンレスに限らず、必要な強度が得られれば、アルミニウム等、他の素材によって製作することも可能である。
【0055】
また、前述した各実施形態においては、カバ+9+−−ー本体2の素材に透明樹脂シート材を用いているが、これに限定するものではなく、柔軟に屈曲可能でガスバリア性を有するシート材であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の解剖台用被剖検体カバーは、医学部や歯学部の解剖実習で用いる解剖台に利用できるほか、動物の解剖台にも利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1、1’ 解剖台用被剖検体カバー
2 ’ カバー本体
2A 上面
2B 端面
2C 側面
2D スカート部
3、3’ カバー枠
3A、3’A 垂直部分
3B 水平部分
3’B 傾斜部分
4 連結具
5 固定帯
6 ストッパ部材
7 外気取込口
7A 短管
7B チェーン
7C 蓋体
8 排気口
8A 短管
8B チェーン
8C 蓋体
9 排気ホース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟に屈曲可能でガスバリア性を有するシート材からなり、上面と、長手方向前後に対向する一対の端面と左右に対向する一対の側面とを有し、且つ下面が開放された箱状のカバー本体と、
前記カバー本体の長手方向に直交する、前記一対の端面を含む複数の面にそれぞれ配置され、当該カバー本体の上面と両側面に外側から固定された、線材ないし棒材からなる複数のゲート形のカバー枠とを備え、
前記それぞれのカバー枠は、解剖台の長手方向両側縁部上面に設けられている複数の支持孔のそれぞれに抜き差し自在に保持される垂直部分を左右両側に有し、これらの垂直部分の下端から所定長さ上方位置には、前記支持孔内への侵入深さを規制するストッパ部材が設けられているとともに、
前記カバー本体の両端面ならびに両側面の、ストッパ部材より下方部分は、カバー枠には固定されておらず、解剖台上面の周縁部を密封するように内側に折り込み可能に構成されていることを特徴とする解剖台用被剖検体カバー。
【請求項2】
カバー本体の前後一対の端面の一方には、閉塞可能な外気取込口が設けられているとともに、他方には、カバー本体内の空気を排気するための排気ホースを着脱可能で且つ前記ホースを外したときには閉塞可能な排気口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の解剖台用被剖検体カバー。
【請求項3】
カバー枠が、左右両側の垂直部分上端からそれぞれ中央に向けて下方に傾斜した略M形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の解剖台用被剖検体カバー。
【請求項1】
柔軟に屈曲可能でガスバリア性を有するシート材からなり、上面と、長手方向前後に対向する一対の端面と左右に対向する一対の側面とを有し、且つ下面が開放された箱状のカバー本体と、
前記カバー本体の長手方向に直交する、前記一対の端面を含む複数の面にそれぞれ配置され、当該カバー本体の上面と両側面に外側から固定された、線材ないし棒材からなる複数のゲート形のカバー枠とを備え、
前記それぞれのカバー枠は、解剖台の長手方向両側縁部上面に設けられている複数の支持孔のそれぞれに抜き差し自在に保持される垂直部分を左右両側に有し、これらの垂直部分の下端から所定長さ上方位置には、前記支持孔内への侵入深さを規制するストッパ部材が設けられているとともに、
前記カバー本体の両端面ならびに両側面の、ストッパ部材より下方部分は、カバー枠には固定されておらず、解剖台上面の周縁部を密封するように内側に折り込み可能に構成されていることを特徴とする解剖台用被剖検体カバー。
【請求項2】
カバー本体の前後一対の端面の一方には、閉塞可能な外気取込口が設けられているとともに、他方には、カバー本体内の空気を排気するための排気ホースを着脱可能で且つ前記ホースを外したときには閉塞可能な排気口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の解剖台用被剖検体カバー。
【請求項3】
カバー枠が、左右両側の垂直部分上端からそれぞれ中央に向けて下方に傾斜した略M形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の解剖台用被剖検体カバー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−95872(P2012−95872A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246898(P2010−246898)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【特許番号】特許第4822470号(P4822470)
【特許公報発行日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(591108190)株式会社セフテック (5)
【出願人】(391028122)株式会社ガステック (15)
【出願人】(394008765)
【出願人】(596170697)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【特許番号】特許第4822470号(P4822470)
【特許公報発行日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(591108190)株式会社セフテック (5)
【出願人】(391028122)株式会社ガステック (15)
【出願人】(394008765)
【出願人】(596170697)
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