説明

計測装置及び計測システム

【課題】計測データを時系列で取得するための計測装置において、計測データの時間分解能を向上させる。
【解決手段】所定の物理量または物理量の変化量を検出するセンサ31と、センサの計測データを時系列で取得する計測動作中にわたって蓄積するメモリ34と、計測動作後にメモリ34に蓄積された計測データを外部へ無線で出力する計測装置と、送信された計測データを受信するとともに計測動作を開始させる指令を無線で計測装置へ出力する受信器を備え、計測装置は計測開始指令を受けて計測動作を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測データを時系列で取得するための計測装置、及びその計測装置を備えた計測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、計測データを時系列で取得するための計測装置が知られている。この種の計測装置が、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1には、テレメータ方式のリング挙動計測装置が記載されている。この計測装置は、内燃機関のピストンのピストンリングの挙動を計測する。この計測装置では、センサ及びトランスミッタがピストンに設けられ、センサの計測データがトランスミッタを介して送信アンテナから送信される。送信アンテナから送信された計測データは、受信アンテナにより受信され、信号復調器で復調される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−174207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の計測装置では、センサにより計測データを時系列で取得する計測動作中にトランスミッタから計測データが送信される。計測データはリアルタイムで送信される。このため、計測データの時間分解能が、トランスミッタの転送速度により制約され、十分な時間分解能を得ることができない場合があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、計測データを時系列で取得するための計測装置において、計測データの時間分解能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、所定の物理量又は該物理量の変化量を検出するセンサと、上記センサの計測データを時系列で取得する計測動作中に亘って該計測データを蓄積するメモリと、上記計測動作後に上記メモリに蓄積された計測データを外部へ出力するデータ出力部とを備えている計測装置。
【0008】
第1の発明では、計測動作中にセンサが出力する計測データがメモリに蓄積される。そして、メモリに蓄積された計測データが、計測動作後にデータ出力部から外部へ出力される。
【0009】
第2の発明は、第1の発明の計測装置であって、上記データ出力部が上記メモリに蓄積された計測データを無線で外部へ出力する計測装置と、上記データ出力部から送信された計測データを受信する受信器とを備え、上記受信器は、上記計測動作を開始させる計測開始指令を無線で上記計測装置へ出力し、上記計測装置は、上記計測開始指令を受けて上記計測動作を開始する計測システム。
【0010】
第2の発明では、受信器が、計測装置から計測データを受信するだけでなく、計測装置へ計測開始指令を送信する。
【0011】
第3の発明は、第1の発明において、所定の時刻に上記計測動作を開始する。
【0012】
第3の発明では、計測装置が所定の時刻になると計測動作を開始する。
【0013】
第4の発明は、第1の発明において、上記計測動作の停止中における上記センサの計測データに基づいて上記計測動作を開始するか否かを決定する。
【0014】
第4の発明では、計測動作を開始するか否かを決定するのに、計測動作の停止中におけるセンサの計測データが用いられる。例えば、センサの計測値が所定の閾値を超えた回数が所定値を超えると、計測動作の開始が決定される。
【0015】
第5の発明は、第1の発明において、駆動体(例えば、内燃機関のピストン)に設けられ、該駆動体の駆動中に上記計測動作を行う。
第5の発明では、計測装置が駆動体に設けられている。
【0016】
第6の発明は、所定の物理量又は該物理量の変化量を検出するセンサと、上記センサの計測データを時系列で取得するための計測動作中に亘って該計測データを蓄積するメモリとを備え、上記メモリが取り外し可能に構成されている計測装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、計測動作中にセンサの計測データがメモリに蓄積され、メモリに蓄積された計測データが計測動作後に外部へ出力される。計測動作中は、計測データが出力されない。リアルタイムで計測データを送信する場合とは異なり、計測データを送信する機器の制約を受けない。従って、計測データの時間分解能を向上させることが可能である。
【0018】
第2の発明では、受信器が、計測装置から計測データを受信するだけでなく、計測装置へ計測開始指令を送る。計測開始指令は無線で送られる。ところで、例えばピストン等の駆動体に計測装置を設ける場合に、受信器から計測装置へ計測開始指令を送るのに有線方式を採用すると、線路(例えばリード線)が破断する等の問題が生じるおそれがある。それに対して、第2の発明では、受信器から計測装置へ計測開始指令を送るのに無線方式を採用している。従って、駆動体に計測装置を設ける場合であっても、計測データの時間分解能を向上させつつ、信頼性の高い計測システムを構成することができる。
【0019】
第4の発明では、計測動作を開始するか否かを決定するのに、計測動作の停止中におけるセンサの計測データが用いられる。従って、センサの検出対象の状態を計測時期に反映させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、実施形態における内燃機関の縦断面図である。
【図2】図2は、実施形態における計測システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0022】
本実施形態は、本発明に係る計測装置30を備えた計測システム10である。計測システム10は、内燃機関20のピストン23のピストンリング27,28,29の挙動を計測する。計測システム10の計測装置30は、本発明の一例である。以下では、計測システム10について説明する前に、内燃機関20について説明する。
−内燃機関の構成−
【0023】
本実施形態の内燃機関20は、図1に示すように、ピストン23が往復動するレシプロタイプのエンジンである。内燃機関20は、シリンダヘッド(図示省略)とシリンダブロック22とピストン23とを備えている。シリンダブロック22には、横断面が円形のシリンダ24が形成されている。シリンダヘッド、シリンダ24及びピストン23は、燃焼室10を区画している。
【0024】
シリンダ24内には、ピストン23が往復自在に設けられている。ピストン23は、コネクティングロッド25を介して、クランクシャフト26に連結されている。クランクシャフト26は、シリンダブロック22に回転自在に支持されている。シリンダ24内においてシリンダ24の軸方向にピストン23が往復運動すると、ピストン23の往復運動がコネクティングロッド25によりクランクシャフト26の回転運動に変換される。
【0025】
ピストン23の外周面には、周方向に延びる環状溝が3本形成されている。環状溝には、それぞれピストンリング27,28,29が設けられている。ピストン23の頂面に最も近い第1ピストンリング27、及び真ん中の第2ピストンリング28は、コンプレッションリングを構成する。ピストン23の頂面から最も離れた第3ピストンリング29は、オイルリングを構成する。本実施形態では、第1ピストンリング27の挙動を計測するための計測装置30が、ピストン23に設けられている。
【0026】
なお、シリンダヘッドには、点火プラグが1つ設けられている。シリンダヘッドには、シリンダ24に対して、吸気ポート及び排気ポートが形成されている。吸気ポートには、吸気バルブとインジェクターとが設けられている。一方、排気ポートには、排気バルブが設けられている。本実施形態では、インジェクターから噴射された燃料が吸気ポートを流れる空気に供給される。
−計測システムの構成−
【0027】
計測システム10は、図2に示すように、計測装置30と読取リーダー40(受信器)とを備えている。計測装置30は、ピストン23に設けられている。なお、図2において、実線の矢印は有線を介してのデータの流れを表し、破線の矢印は無線を介してのデータの流れを表す。
【0028】
計測装置30は、センサ31とアンプ32とデジタル変換部33と計測側メモリ34と計測側通信部35とを備えている。アンプ32、デジタル変換部33、計測側メモリ34および計測側通信部35は、センサ31の取り付けられた部材または該部材と一体化された部材に取り付けられている。計測装置30は、センサ31により計測データを時系列で取得する計測動作を行う。計測装置30は、絶対時間を計測動作のトリガーとするタイマー式に構成されている。
【0029】
具体的に、計測装置30は、計測動作の開始時刻及び終了時刻を記憶している。計測装置30は、開始時刻になると計測動作を行い、終了時刻になると計測動作を終了させる。計測装置30は、計測動作中にセンサ31が所定の時間間隔で計測値を取得し、その計測値を計測データとして出力する。そして、計測装置30は、センサ31から出力された計測データをアンプ32で増幅した後に、デジタル変換部33でデジタル変換を行い、そのデジタル変換後の計測データを計測側メモリ34に記憶する。
【0030】
センサ31は、第1ピストンリング27の上下方向(ピストン23の往復方向)の動きを計測するためのギャップセンサである。センサ31は、第1ピストンリング27との距離を計測する。センサ31の計測データによれば、ピストン23の熱変形により第1ピストンリング27の挟み込み等の現象が発生しているか否かを判定することが可能になる。
【0031】
アンプ32は、センサ31の計測データを増幅する。デジタル変換部33は、アナログ信号であるアンプ32の出力データを、デジタル信号に変換する。
【0032】
計測側メモリ34は、例えばフラッシュメモリである。計測側メモリ34は、デジタル変換部33でデジタル変換された計測データを記憶する。計測側メモリ34は、計測動作中の全計測データを蓄積する。計測側メモリ34には、複数回分の計測動作の計測データを蓄積可能な容量のものが使用される。
【0033】
計測側通信部35は、計測側アンテナと通信回路とを有している。計測側通信部35は、計測側アンテナが読取リーダー40からの送信開始信号を受けると、通信回路が計測側メモリ34に蓄積された1回分の計測動作の計測データを送信する。計測側通信部35は、計測側メモリ34に蓄積された計測データを無線で読取リーダー40へ出力する。計測側通信部35は、例えばRFID(Radio Frequency Identification)タグである。計測側通信部35は、計測動作後に計測側メモリ34に蓄積された計測データを外部へ出力するデータ出力部を構成している。
【0034】
読取リーダー40は、読取側通信部41とデータ復調部42と読取側メモリ43とを備えている。読取リーダー40は、計測側通信部35から送信された計測データを受信する。
【0035】
具体的に、読取側通信部41は、計測装置30の近傍に移動させられると、送信開始信号を計測側通信部35に自動的に送信する。また、読取側通信部41は、送信開始信号を送信した後に計測側通信部35から送信される計測データを受信する。
【0036】
データ復調部42は、読取側通信部41が受信した高周波信号をデジタルデータ列の計測データに変換する。読取側メモリ43は、データ復調部42で復調された計測データを記憶する。
【0037】
読取リーダー40には、データ取り出し用のポート(例えば、USBポート)が設けられている(図示省略)。使用者は、USBケーブルを介してパーソナルコンピュータ等の電子計算機に読取リーダー40を接続することで、読取側メモリ43に蓄積された計測データを電子計算機に移動させることができる。
−実施形態の効果−
【0038】
本実施形態では、計測動作中に動いているピストン23に、センサ31と共に計測側メモリ34が設けられている。ここで、ピストン等の駆動体にセンサ31を設ける従来の計測システム10は、計測動作中にトランスミッタから計測データをリアルタイムで送信している。そのため、トランスミッタの転送速度の制約上、得られる計測データの時間分解能が足りない場合があった。それに対して、本実施形態では、ピストン23にセンサ31と共に計測側メモリ34を設けられ、計測動作中はセンサ31の計測データを計測側メモリ34に蓄積し、計測動作後にセンサ31の計測データを外部に送信している。リアルタイムで計測データを送信する場合とは異なり、計測データを送信する機器の制約を受けない。従って、計測データの時間分解能を向上させることが可能である。
−実施形態の変形例1−
【0039】
変形例1の計測装置30では、使用者が計測動作の開始を計測装置30に指示するための入力ボタンが受信器40に設けられている。読取リーダー40は、使用者が入力ボタンを操作すると、計測動作を開始させる計測開始指令を無線で計測装置30へ出力する。計測装置30は、計測開始指令を受けると計測動作を開始する。
【0040】
変形例1では、読取リーダー40が、計測装置30から計測データを受信するだけでなく、計測装置30へ計測開始指令を送る。計測開始指令は無線で送られる。従って、駆動体に計測装置30を設ける場合であっても、計測データの時間分解能を向上させつつ、信頼性の高い計測システム10を構成することができる。
【0041】
なお、受信器40に、計測動作の終了を計測装置30に指示するための入力ボタンや、計測動作の一時停止/再開を計測装置30に指示するための入力ボタンが設けられていてもよい。計測動作の一時停止を行う場合は、一時停止前と後の計測データが1つのデータとして出力される。
−実施形態の変形例2−
【0042】
変形例2の計測装置30では、計測側通信部35が計測側メモリ34に蓄積された計測データを有線(例えば、USBケーブル)で受信器40へ出力する。USBケーブルは、計測動作後に計測装置30から受信器40へ計測データを送るときに取り付けられる。一方、受信器40には、計測装置30を操作するための操作ボタン(入力部)が設けられている。受信器40は、使用者が操作ボタンを押すと、計測動作を開始させる計測開始指令を無線で計測装置30へ送信する。受信器40は、計測装置30に指令を出力する指令部を兼ねている。計測装置30は、計測開始指令を受けると計測動作を開始する。
【0043】
変形例2では、計測側メモリ34に蓄積された計測データの出力が有線で行われ、計測開始指令の送受信が無線で行われる。従って、駆動体に計測装置30を設ける場合であっても、計測データの時間分解能を向上させつつ、信頼性の高い計測システム10を構成することができる。また、計測側メモリ34に蓄積された計測データの容量が膨大な場合であっても短時間で計測データを受信器40へ送ることができる。
−実施形態の変形例3−
【0044】
変形例3の計測装置30は、計測動作の停止中におけるセンサ31の計測データに基づいて計測動作を開始するか否かを決定する。例えば、計測装置30は、センサ31の計測値が所定の閾値を超えた回数が所定値を超えると、計測動作を開始する。
【0045】
変形例3では、計測動作を開始するか否かを決定するのに、計測動作の停止中におけるセンサの計測データが用いられる。従って、センサ31の検出対象の状態を計測時期に反映させることができる。
《その他の実施形態》
【0046】
上記実施形態は、以下のように構成してもよい。
【0047】
上記実施形態について、計測側メモリ34(例えば、SDカード)が取り外しできるように計測装置30が構成されていてもよい。
【0048】
また、上記実施形態について、センサ31は、所定の物理量又は該物理量の変化量を検出するものであればよく、歪みゲージであってもよいし、温度センサ31であってもよい。また、センサ31は、タイヤの挙動(歪、温度、空気圧)を検出するものであってもよいし、駆動系のギアの挙動、モータコアの過電流を検出するものであってもよい。
【0049】
また、上記実施形態について、人体の情報(例えば、心拍数)を計測するものであってもよい。
【0050】
また、上記実施形態について、読取リーダー40のデータ構造(例えば、ビット数)に合わせて、計測側通信部35から送信されるデータを加工してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明したように、本発明は、計測データを時系列で取得するための計測装置について有用である。
【符号の説明】
【0052】
30 計測装置
31 センサ
32 計測側メモリ(メモリ)
35 計測側通信部(データ出力部)
40 読取リーダー(受信器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の物理量又は該物理量の変化量を検出するセンサと、
上記センサの計測データを時系列で取得する計測動作中に亘って該計測データを蓄積するメモリと、
上記計測動作後に上記メモリに蓄積された計測データを外部へ出力するデータ出力部とを備えている
ことを特徴とする計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の計測装置であって、上記データ出力部が上記メモリに蓄積された計測データを無線で外部へ出力する計測装置と、
上記データ出力部から送信された計測データを受信する受信器とを備え、
上記受信器は、上記計測動作を開始させる計測開始指令を無線で上記計測装置へ出力し、
上記計測装置は、上記計測開始指令を受けて上記計測動作を開始する
ことを特徴とする計測システム。
【請求項3】
請求項1において、
所定の時刻に上記計測動作を開始する
ことを特徴とする計測装置。
【請求項4】
請求項1において、
上記計測動作の停止中における上記センサの計測データに基づいて上記計測動作を開始するか否かを決定する
ことを特徴とする計測装置。
【請求項5】
請求項1において、
駆動体に設けられ、該駆動体の駆動中に上記計測動作を行う
ことを特徴とする計測装置。
【請求項6】
所定の物理量又は該物理量の変化量を検出するセンサと、
上記センサの計測データを時系列で取得するための計測動作中に亘って該計測データを蓄積するメモリとを備え、
上記メモリが取り外し可能に構成されている
ことを特徴とする計測装置。


【図1】
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【図2】
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